2-5・異世界人へのダメ出し②
「だよね。尊人くんならそう言うと思った」
「でもさ、それなら、野球選手とかサッカー選手とか・・・
皆の前で凄いプレイを魅せてる人、いっぱいいるよ。
それもダメなことなの?」
「一緒にするな。次元が違いすぎる。
潜在能力が無ければ話にならねーだろうけど、
あれは才能を努力で研磨し続けた結果だ。
オメーには、国民栄誉賞受賞者や二刀流を熟す大リーガーが、
コイツ(ツィホー)と同レベルに見えるのか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
見えません。「国民栄誉賞受賞者や二刀流を熟す大リーガー」はゴブリンやトロールなんて倒せないだろうけど、彼らの方が凄いって感じます。・・・いや、もしかしたら、魔法とか特別な力なんて無くても、バットやボールを武器にしてトロールをやっつけちゃうかも?
「この人が“ご都合主義でイキってるだけ”なのは決まりとして、
話を聞いてて疑問があるんだけどさ。
ツィホーさん、前のパーティーで『縁の下の力持ち』をしてたのに、
問答無用で追放されたんだよね?」
「気の毒だよね。僕、ツィホーさんに同情するよ」
ツィホーさんは、前のパーティーで仲間達のダメージが1/10に軽減される特殊効果をかけていた。だけど、過去の仲間達はその恩恵に気付かず、ツィホーさんを無能扱いして追放した。ひどい話だ。
「チゲーだろ!オマエはアホなのか?」
「・・・ん?」
皆の為に裏方に徹していたのに、一方的に追放されたツィホーさんが可哀想ではないってこと?
「前の仲間達と、最低限のコミュニケーションすら取れていないってことでしょ?
ヒドイのは過去の仲間達じゃなくてツィホーさんなの!
なんで、自分のおかげでダメージが軽減されてたって教えないの?
どんだけコミュ障なの?普段の会話は無いの?
ツィホーさんが何も言わずに脱退したせいで、
過去の仲間達のダメージは今までの10倍になったんだよね?
脱退した後でもいいから教えてあげなよ!なんで放置してんの?
過去の仲間達、絶対どっかで死ぬじゃん!死んでもいいの?
クエスト競合で過去の仲間達がモンスターに惨敗したのって、
どう考えても、ツィホーさんの所為で慢心したからでしょ!」
堰を切った勢いで、真田さんがツィホーさんにダメ出しをする。マジュさんって人と比べられた件で、だいぶ頭に来てるっぽい。
「僕もコミュニケーション取るの苦手だから、ツィホーさんの気持ちが解るかも」
「バーカ!尊人、自己評価を低く見積もる悪癖が出てるぞ」
ツィホーさんが可哀想なのでフォローをしたつもりなんだけど、直ぐに藤原くんから反論をされてしまった。
「オメーは俺にクビを宣告されても必死で喰らいついてきた。
言われっぱなしのコイツとは全然チゲーよ!」
「尊人くんは知り合いがヤバいって解ってるのに放置するような
冷酷人間じゃないでしょ!」
真田さん&藤原くんのダメ出しが続く。
「追放は、自分の役割をキチンと伝えないツィホーさん本人の所為でしょ。
徹底して会話が苦手ならそれでも仕方が無いけどさ」
「だが、新メンバーとはコミュニケーションが良好だからな。
人格が破綻している、もしくは、ツィホー万歳をしてくれる奴としか
コミュニケーションが取れないってことだ」
「冒険初心者や過去の仲間に手を差し伸べる感じの説明してるけどさ、
『言葉にはしないけど俺は優しくて器が広いぜアピール』がキモイよね」
「助けて仲間にするのがジジイばかりなら一定の説得力はあるがな。
対象は可愛い女だけだ」
「マウント取れる相手ばっかりじゃん。
しかも、自分は強くて仲間を守れるって理由で、
冒険初心者を外地に連れ出すなんて配慮不足すぎるでしょ」
「過去の仲間とクエスト競合する前に、過去の仲間が弱体化してることを伝えろ」
「パワーアップの手段が「理解不能な特別扱い」ばっかりでしょ。
これで根性だの努力と言われても、説得力が全く無いよね。
どう思う、尊人くん?」
「ああ・・・うん・・・」
ツィホーさん、凄まじい言われっぷりだ。フォローしたいんだけど、真田さん&藤原くんの言ってるのが正しいように思えて「ツィホーさんが可哀想だからそれくらいでやめよう」以外の反論ができない。
確かに、一人だけが発動させるご都合主義は「卑怯」としか思えない。全員がご都合主義を発動させたら、それはもう特別ではない。これは、一年前を経験して、僕自身も理解できたことだ。
「これで、『力を持つ責任を放棄する』まであれば完璧だけど、
今のところ『無自覚無双』を理解できないバカっぽさは無さそうだね」
努力とは簡単には結果に繋がらないけど、不貞腐れずに続けること。だから、努力は難しい。「敗北」と「立ち直る」が人を成長させる。それは自覚をしている。
ちなみに、無自覚無双が「こんなことを当然のようにできる僕は凄いでしょ」的な「ただの嫌味」ってことは、僕も解っています。
「おのれ、小僧ども!
黙って聞いていれば、好き放題を言いやがって!」
あ、ツィホーさんが怒った。そりゃ、まぁ、ほぼ全否定されてるんだから、怒るか泣くか、どっちかだろうな。僕だったら、多分、後者です。
「俺が使い物にならぬ愚物かどうか、貴様等で試してみろ!」
「おもしれー!証明してやるよ!」
挑発をされた藤原くんが立ち上がった。
「えっ!?戦うの?」
「殺しはしねーよ!睦姫達が来るまでの暇潰しだ」
「そうじゃなくて、殺されちゃうかもしれないって!」
「安心しろ!それは無い!」
藤原くんは、持っていた剣を持ち主に返すと、グラウンド整備に使うアルミレーキを手に持って軽く振り回してから構えた。
「え?藤原くん、それを武器にするの?
ツィホーさんは剣だよ!」
「問題無い!」
「真田さん!見てないで止めようよ!」
「ふーみん、こうなっちゃうと誰の言うことも聞かないからね~。
そ~ゆ~バカっぽさがダメなところなんだけどさ」
真田さんは呆れた表情で眺めている。
「ヤバそうなら大声上げて人を呼べば、大けがする前に止まるでしょ」
「・・・・・・・・・・・・・・」
最近は藤原くんのことを「口調は荒っぽいけどいい人」と思っていたんだけど、やっぱり、ちょっと怖い人かも。
藤原の根底には、「1年前の事件で最終勝利者になった尊人はある程度は信頼できる」と「早璃は巻き込みたくない」がある。
異世界の記憶が消去されていないのは、尊人、早璃、吉見、藤原、武藤の5人。当初から決めており、吉見以外はハッキリと表現していませんが、モーソー転移Ⅲの最終回時点で何となく匂わせてあります。
尊人⇔早璃は互いに「記憶残ってるな」「記憶残ってるの気付かれてるな」と解りつつ、明確な確認はしていない。理由は、尊人は記憶消去を前提にした公開告白の記憶が早璃に丸々残っているのが恥ずかしいから。あの告白は、「早璃に似合う男に育つように頑張る」という意思表示のつもりだった。早璃は、尊人が改めて告白をするのを待っているから。
尊人⇔藤原の場合、接点が少ないので尊人は確認していない。藤原は内心では尊人を認めているが、記憶があることを認めると「早璃を託した」まで認めることになってしまうので公にしていない。
尊人⇔武藤は、接点が少ないので互いに確認していない。
藤原⇔武藤は、藤原との会話の端端で察した武藤がカマをかけて白状させた。
誰とでも会話できる早璃だけが、「吉見&藤原&武藤は記憶がある」とことを明確に知っている。ただし藤原からは「そのうち自分から尊人に話すから」と口止めされている。




