2-4・異世界人へのダメ出し①
協議すべきは「異世界人のツィホーさんをどうするか?」ってこと。更に言えば、ツィホーさんだけなら「警察に任せる」で済んだかもしれないけど、ゴブリンまで出現したこと。
「ゴブリンはマズいよね?」
「尊人の言うとおりだ。
現実世界に来たのが、倒した一匹だけってなら良いがな」
「怪物がたくさんいたらどうしよう?」
異世界にいた時は、武器や防具が身近にあった。下手なりに魔法も使えたし、特殊能力を発動できた。だからゴブリン程度なら楽勝だったけど、今は藤原くんが持ってる剣一本しかない。
「史弥、その剣どうしたの?そんなの普段から持ち歩いてたの?」
「んなわけねーだろ。ソイツ(ツィホー)の剣を借りたんだ」
「借りたの?奪い取ったの?どっち?」
「似たようなもんだ。どっちでもいいだろ!」
僕と真田さんは視線を合わせて「奪い取ったんだな」と無言の会話をする。
「そ~言えばあの人なんなの?
あたしを助ける感じで勇ましく飛び出してきたわりには何にもしなかったね」
「俺に聞かれても知らん」
「てっきり、凄い力でゴブリンを瞬殺して、
真田さんを助けてくれると思ったんだけどね」
「もしかして、あたし達が異世界で使った能力を
現実世界には持ち込めないのと同じ?」
「俺に聞かれても知らん」
「・・・かもしれないね。
確か、魔法の要素って、異世界では空気中にあるんだけど、
現実世界には存在しないんだよね?」
一定の仮説は立てられるけど、全てが予想の域を出ない。
「陽ちゃん(吉見)と武藤さんも呼ぼうか?」
3人だけだと、真田さんがいちいち藤原くんに突っ掛かるので、前向きな話がやりにくい。間に入れる人がもう少し欲しいのだ。
「五人寄れば文殊の知恵・・・だね。
頭が良い吉見なら、なんか名案を思い付いてくれるかも」
「あんま大ごとにはしたくなかったが、仕方ねーか」
真田さんが、2人に“招集”の連絡を入れる(僕は武藤さんの連絡先を、藤原くんは吉見くんの連絡先を知らない)。その後、集合までの時間を利用して、「ツィホーさんのスペック」と「どんな経緯で現実世界に来たのか?」を確認することにした。
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奥ゆかしい性格の彼は、でしゃばることなく、仲間達の為に「縁の下の力持ち」を頑張ってた。それなのに、思慮の足りない仲間達からは評価されず、一方的にパーティーを追放された。
それでもめげずに自己研磨のために単身で冒険を続け、危機一髪に陥って命を諦めかけた時に、類まれな潜在能力が開放される。
力を得た彼は、困っていた冒険初心者たちを助け、隠しても滲み出る優しさと厚い人徳を評価されて好かれ、押し掛け女房的に集まってきた冒険者たちを無下にはできず、新しいパーティーを結成する。
そして、過去のパーティーとの対立とクエスト競合。天才の彼は、自分でも気付かないうちに、昔の仲間達の実力を超えていた。広い心で過去の失言を水に流し、昔の仲間のうちの一人に手を差し伸べる。
その後、ダークファントムとの決戦。苦戦をしながら追い詰めるが、卑劣な反撃を喰らってしまい、気が付いたら現実世界にいた。
「マジュさんって人は、ツィホーさんの恋人なんですか?」
「ああ。数ある恋人の中で、最も愛する女だ」
「数ある?・・・ツィホーさんってモテモテ?」
「ああ。モテモテだ」
「へぇ~・・・凄いんですね。
真田さんに似てる人なんですか?」
「髪の色とスタイルは違うが、顔立ちと背の高さは同じくらいだ。
初見ではマジュかと思って驚いたぞ」
「あたしの方がナイスバディーってことですよね?」
真田さんが問うた直後、藤原くんが笑いを堪えた顔をしてソッポを向いた。
「マジュの方がスタイルが良い。比較にならん」
このオチはなんとなく想像できたけど、僕も笑いそうになる。
「尊人くん、この人って、温室のぬるま湯でふんぞり返ってるダメ人間だよね」
あっ!ツィホーさん、真田さんの地雷を踏んで嫌われたっぽい。
「え~~~~と・・・ツィホーさん、苦労人だと思うんだけど」
「今の話のどこでそんなふうに感じたの?
「相変わらず人を見る目がぶっ壊れてんな。
表向きの言葉通りに素直に受け入れるのは、オマエの悪い癖だ。
俺はコイツ(ツィホー)の話を聞いててイライラしてきたぞ」
「おぉ!ふーみん、たまには良いこと言うじゃん」
おや?珍しく真田さんと藤原くんの意見が合った?
「『たまに』じゃねー!いつもだ!」
「普段はロクなこと言わないじゃん!」
「俺を馬鹿にしすぎだ!」
前言撤回。真田さんと藤原くんは相変わらず反りが合わない。
「なんでダメ人間?ツィホーさんって、苦労人の努力家じゃん」
「あのさ、尊人くん。
ちょっと頑張るのを努力とは言わないの。
『僕、頑張ってますよ』をアピールすんのは承認欲求なの。
ちょっと頑張って『頑張ってますよ』は努力が苦痛な人の言い分なの。
ホントの努力ってのは、頑張って頑張って頑張って、
結果が出なくても頑張って、少しずつ積み重ねるものでしょ」
「尊人・・・
アピールが苦手で、なんでも黙々と熟すオマエなら、違いが解るだろ?
コイツ(ツィホー)の場合は、大して頑張ってもいねー。
特別扱いの力を獲得してイキってるだけだ」
「でもそれはツィホーさんの潜在能力なんだから・・・」
「尊人くんなら、急に凄い力に目覚めたらどうする?見せびらかす?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
僕は、力を行使する智人に対して見方を変えた。そして、トモは力に溺れてしまい、最終的に人望を失った。
偶発的に得た力は、いつ無くなるか解らない。力を得た理由が「他人依存」や「潜在能力」など、曖昧な解釈しかできず、得た理由を誇れない。ずっと存続されるのか、そのうち無くなるのか、それも解らない。見せびらかして注目を集めて、急に使えなくなって恥をかくのは嫌だ。
「怖いから見せびらかさない・・・かも」
力を持つのは怖いこと。以前はあまり気にしなかったけど、1年前を経て、力にやり込められる悔しさを知った。自信を持てない凄い力なのに、周りから特別扱いされるのは嫌だ。多分、僕なら周りに合わせて最低限の行使しかしない。いや、怖くてロクに行使できない。




