2-2・異世界の専門家?
1年前の事件で壊れちゃった校舎は、春休みに破壊規模の調査が行わた。1階は内装を直して窓ガラスを入れ替える。2階と3階は補強が必要。
新3年生をちゃんとした校舎から卒業させたいって配慮で、夏休み前から急ピッチで修理が始まって、秋には完成して、僕達は仮の教室(多目的室)から本来の教室に戻ることができた。
在学中に自動車免許を取得する場合は学校への届け出が必要ってことで、受験を終えた藤原くんが学校に来て、ついでに「そういえば去年の今頃に」と教室を眺めに来たら異世界人に絡まれて、「放置はヤバい」ってことで捕獲して体育用具室に隠して、今に至る。
「ああ・・・そうなんだ?」
「・・・たくっ!面倒なもんを抱え込んじまったよ」
さすがは藤原くん。度胸があると言うべきか、場慣れしていると言うべきか、判断が早いと言うべきか・・・僕が同じ状況に遭遇したら、動揺しすぎて「見なかったこと」にしそうです。
「・・・で、なんで僕を呼んだの?」
「専門家だろ、オマエ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
藤原くんから頼られるのは嬉しい。でも、最後まで戦い抜いたので途中脱落の藤原くんよりは詳しいだろうけど、僕は専門家ではない。
「とりあえず・・・ツィホーさんの話を聞こうか?」
ツィホーさんが「異世界から現実世界に来てしまった」とは考えたくない。ワンチャンだけど、「過去に異世界に行った経験がある頭の悪い外国人が、帰還をした今でも異世界ごっこをしている」の可能性はあるかもしれない。それなら、「刃物を持った不審者が学校内を彷徨いていました」と警察に通報すれば解決する。
「アーズマって、青騎士が所属している東都市ですか?」
「ああ、そうだ」
「黒騎士団のブラークさん、元気にしてますかね?」
「ブラーク?北の勇者ブラークのことか?」
「はい、そのブラークさんです。銀髪でイケメンで・・・」
「噂では聞いたことがあるが会ったことは無い」
「ああ・・・そうですか。
アーズマって、ノスと同盟を組んでますよね?」
「積極交流をしているな」
「ノスってのは、旧公爵が暗殺されて、
最近、若い公爵が跡を継いだ北都市ですよね?」
「らしいな。上層部のことはよく解らんが」
「さすがは専門家だ。
コイツ(ツィホーさん)より尊人の方が異世界事情に詳しいみてーだな」
「・・・・・・・・・」
藤原くん、僕は専門家ではありません。事態が面倒臭くなりそうなので、その評価は要らないです。
「むぅぅ!?もしや、君も異世界(現実世界)に来た同郷人か?」
「いえ・・・違います」
異世界を経験したことがある現実世界の人間って意味では「異世界(現実世界)に来た」で遠からず当たってるけど、僕は異世界人ではありません。・・・てか、会話がややこしい。ツィホーさんの視点では、異世界が現実で、現実世界が異世界になっちゃうんだね。
「えぇっと・・・
帝都や北東村に行ったことはあるんですか?」
僕、今、絶対に余計なこと聞いたよね?会話の間を埋めたい一心で、絶対に余計な質問をしてるよね?
「おぉ!俺はペイイスで生まれた。
テーレベールには二度ほど行ったことがある。
君はどこ出身なのだ?」
「玄滋津市です」
「ゲンジツシ?聞いたことのない都市だな」
「・・・ですよね」
「やはり君は同郷人なんだな。
いや~・・・こんなわけの解らん世界に放り出されて困っていたのだが、
先駆者がいたのなら少しは安心できる」
「いえ・・・違います。安心しないでください」
結論は「ギブアップ」です。藤原くんが頼ってくれたのは嬉しいけど、僕では処理できません。
「尊人でも手に負えないか。しゃーねーな。警察に突き出そう」
藤原くん、なんで僕の手になら負えると思ったの?僕、皆のおかげで最後まで戦い抜けたけど、「異世界順応ランク」は、多分、最底辺だよ。無理に決まってるじゃん。
「そ、そうだね。それが一番スッキリできそう」
ちょっと可哀想な気がするけど、放置は拙いし、何よりも養うことなんてできないんだから仕方がないよね。
でも、警察で事情を聴かれて、「モーソーワールド」だの「職業は冒険者です」なんて言ったら、頭がオカシイ、もしくは、妄想癖と扱われるんだろうな。ああ・・・どっちにしても「頭がオカシイ」か。
「どうやって説明しよう?」
「刃物を持った頭のオカシイ不審者が学校を彷徨いていたってことでいいだろ」
かなり可哀想な気がするけど、説明する手段が無いんだから仕方がないよね。
「きゃぁぁっ!」
外で悲鳴が聞こえた!真田さんの声!僕が聞き間違えるわけがない!
体育用具室の外に飛び出して確認したら、こっちに向かって走ってくる真田さんが見えた!
「真田さんっ!!」
肌の色が土色の小っちゃいオッサンに追われている!
「変質者?・・・いや、あれはっ!」
真田さんを追っているのが変質者なら、どれだけ気が楽だっただろう。・・・いやいや、それはそれで「気楽」で済ませちゃったら、人として失格なんだけどさ。
「ゴブリンか!?」
「なんでモーソーワールドのモンスターが!?」
「任せろ!モンスターに襲われた美少女を助けるのは俺のパターンだ!」
「『俺のパターン』ってなに?」
動揺する僕と藤原くんを尻目に、ツィホーさんが颯爽と飛び出して、突っ走ってくる真田さんの正面に立つ!
「誰かと思えば、マジュではないか!
俺を追ってこの世界の来たのだな!」
マジュってなに?ツィホーさんの知り合い?彼女はマジュじゃなくて真田さんだよ。マジュって人が真田さんに似てるってこと?
「無礼な少年(藤原くん)には手加減をしたが!
モンスター相手に容赦をする必要は無い!
刮目し、驚嘆して、ギャフンしろ少年たち!」
ツィホーさんがすっげーイキりながら構えて、掌を翳す!




