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2-1・異世界人との接触

 家に着く直前で真田さんに呼び出された。会わなかった日に「調子はどう?」と連絡が来たり、「一緒にご飯しよ」と呼び出されたことはあるけど、遊んだ直後に再呼び出しが来るなんて珍しい。


「何があったんだろう?」


 自転車でかっ飛ばして待ち合わせ場所の千幸せんこう高校に向かう。 


「ん?」


 正門前に藤原史弥くんが立っていた。学校になんか用が有って、誰かと待ち合わせしてるのかな?


「おう、いきなり呼び出してスマンな」

「ん?」


 僕と待ち合わせていた?僕、君と待ち合わせなんてしてないよ。いくらなんでも、藤原くんから来た電話を「真田さんからの呼び出しと勘違いした」なんて有り得ない。


「付いて来い」

「ああ・・・う、うん。はい」


 疑問だらけなんだけど、追及する根性は無し。以前と違って、少しは自分に自信が持てるようになったけど、頭ごなしに引っ張られると無条件で受け入れちゃう性分は、以前と変わらない。まぁ、以前とは違って、「藤原くんは怖いからできるだけ絡みたくない」って印象は無いけどさ。


「どこいくの?」

「来れば解る」


 駐輪場に行く余裕が無さそうなので、正門の内側に自転車を駐めてから、小走りの藤原くんを追っかける。グラウンドの端を駆け、体育館の脇を通過して裏側へ。


 え?学園物ストーリーあるあるの、体育館裏にいじめっ子グループが集結していて、「テメー生意気なんだよ」とかってリンチされるパターン?いやいや、学校生活が日常の時期ならともかく、通学しなくても良い今の時期にわざわざ学校に呼び出す意味が無い。いや、でも「卒業する前に潰しておきたかった」とか有るのかな?いやいや、僕、藤原くん達の害になるようなことしてないよね?いや、でも真田さんと仲良くしてたのが気に入らなかったのかな?


「オメーに会ってもらいたいヤツがいる」

「・・・え?」


 もしかして、この先で真田さんが待っていてコクられる?藤原くんはキューピット役?いやいや、それは無い。そもそも論として真田さんに呼び出されているんだから、藤原くんが間に入る意味が無いし、藤原くん=キューピット・・・笑いそうになるくらい似合わない。


「誰と会うの?」

「来れば解る」


 体育館に併設された体育用具室へ。中には、マットが巻かれて紐でグルグル巻きにされて、口にソフトボールを突っ込まれて、転がっている金髪の男の人がいた。


「もがもがもがぁ」


 金髪の人、口に突っ込まれたソフトボールが邪魔で、ちゃんと喋れない。外国の人?「来れば解る」って言われたけど解らない。


「この人、だれ?」


 外国人と遭遇したけど会話ができないから、通訳させるために僕に呼び出した?僕、英語はあんまり得意じゃないんだけどなぁ。


「・・・てか、なんでマットが巻いてあるの?」

「勝手にどこかに行かれたり、暴れられたら迷惑だから簀巻きにしたんだ」


 “簀巻きにする”って言葉は知っているけど、リアルで“簀巻き(マット巻き)にされた人”を見るのは初めて。さすがは藤原くん。相変わらずやることが乱暴です。


「なんで口にソフトボール?」

「大声で騒がれたら迷惑だからな」

「ああ・・・そうなんだ?」


 “猿ぐつわ”って言葉は知っているけど、リアルで“猿ぐつわをされた人(ソフトボールを突っ込まれた人)”を見るのは初めて。さすがは藤原くん。相変わらずやることが雑です。


「まずは、こいつの格好を見てくれ」


 藤原くんがグルグル巻きを解いて、金髪の人を簀巻き(マット巻き)から解放する。その人は軽装の西洋甲冑を装備していた。


「ん?コスプレ?

 千幸せんこう高校のアニメサークルやコスプレ研究会なんてあったっけ?」

「知らん」

「・・・だよね」


 属性的には“そっち系”の僕が把握していないんだから、藤原くんが知ってるわけないよね。


「無礼者っ!俺を誰だと思ってっっ・・・」

「知らねーし、うるせぇ。オマエは黙っとけ」


 金髪の人が藤原くんに掴みかかろうとしたけど、藤原くんはドスの効いた声で威嚇をしながら、跳び箱の上に置いてあった剣を握りしめて横薙ぎに振るい、金髪の人の顔の真横で寸止めにした。ビビった金髪の人が温和しくなる。


「ぬぐぐ・・・俺が本調子ならば、貴様など瞬殺を・・・」

「やれるもんならやってみろ。

 ただし、テメーが現状を把握するための手掛かりは無くなるぜ」


 金髪の人が威嚇するんだけど、如何にも「負け犬の遠吠え」って感じで、藤原くんは全く相手にしていない。


「・・・あ、あの」


 状況は全く理解できない。だけど、1年前に修羅場を経験したから解る。藤原くんの持っている剣はレプリカなんかじゃない。冷たく輝くエッジやポイントは、それが“本物”と示している。


「銃刀法違反を知らない外国人がコスプレをして、

 危険と判断した藤原くんが捕まえた?」


 それなら気が楽なんだけど、僕には嫌な予感がある。


「阿呆な外国人を警察に突き出して終わりなら、

 わざわざ早璃経由でオマエなんて呼んでねーよ」

「ああ・・・そっか、そうだよね」


 薄々は気付いていたけど、僕は真田さんに呼び出されたんじゃなくて、僕と藤原くんはお互いの連絡先を知らないから、真田さん経由で藤原くんに呼び出されたんだね。真田さんと藤原くんって直で連絡できる関係なんだ?幼馴染なんだから当然と言えば当然だよね。もしかして、頻繁に連絡取ってるのかな?でも、僕も櫻花おーちゃんとの直連絡手段があるから、藤原くん達の関係を非難はできない。まぁ、おーちゃんに、メッセージする機会なんて無いけど。


「コイツの名はツィホー。アーズマの冒険者だそうだ」

「・・・あーずま?」

「外地の城を攻略中にトラブルが発生して、現実世界に放り出されたんだとよ」

「うわぁ・・・・そ、それは・・・困ったね」


 藤原くんの情報から導き出される現実は、「異世界人のツィホーさんが現実世界に来てしまった」と「過去に異世界に行った経験がある頭の悪い外国人が、帰還をした今でも異世界ごっこをしている」のどちらかしか無い。

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