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回復魔法も使えます


 ギルドの外に出ていたマリィは、ギルドの中から聞こえるドッタンバッタンギシギシ暴れる音を聞きながら待ち呆けていた。


「……そろそろかな~」


 それもやがて収束し完全な静寂が訪れると、マリィはギルドの中を扉をちょっと開いて隙間からチラッと見た。


「ざっこ」


 そこには鉄製の防具の上から体のあちこちが切り刻まれ、切断面が焼けこげ異臭を放つ男達の死体が三つ転がっていた。四人いた内の一人は、最初のタブレット三昧によって既に息絶えている。


「ワーオ……凄いね……」

「でしょ」

「ってそうじゃなくて! いくら因縁をつけられたからって街中で堂々と人殺しはマズイよ!」

「そうなんだ」

「そうなんだじゃないよ! 私達捕まっちゃう! 早く回復してあげて、できるんでしょ!」

「チッ、っせーな……」


 少年は気怠そうにマリィの言葉通り、男達を回復しにかかる。流石に彼はまだ牢獄にぶち込まれる気はサラサラなさそうだ。

 ちなみに犯罪行為を目撃されなければ、彼を攫おうとした三人の男を殺したように何でもやるつもりである。


「お待ちください」


 そんな少年を制する者がいた。

 僧侶の服に身を包み、杖を手にしたうら若い女性のシスターだ。


「貴方は?」

「私は教会に勤めていた元シスターですが、今はギルドに所属している《ヒーラー》です」

「《ヒーラー》って……凄いじゃない! あ、もしかして貴方が生き返らせてくれたりするの?」

「いいえ」

「じゃあ何で……」

「あの方達は貴方を殺すつもりでした。貴方には正当性があります。それに、あの方達を生き返らせる様子ですが、生き返らせるには一人につき1万ルピもの大金が必要になります。聖職者ではありますが、あの者達を生き返らせるのにそのような大金を払う必要はありません」

「そ、そうなんだ……」


 シスターの男達に対する評価は下の下の下、それだけの所業をしてきたのだろう。


「ここを早く立ち去ることをオススメします。私達は何も見なかったことにしますから……」

「凄い言われようね」

「自業自得以外の何でもありません」

「うわきつぅ~……」


 周囲のギルドメンバーも頷く。男達が周囲からどれだけ嫌われていたのか想像が付くほどに、その顔は真剣そのものだった。

 少年は殺人という犯罪行為をしてしまったが、仮に衛兵にバレても正当性が認められれば罪は軽くなるだろう。

 だがそもそも、殺したことがバレなければそれで良いに越したはない。

 周囲の面々は少年がこの四人を殺したという事実から目を背けることにしたらしい。

 最も、衛兵に『《市民:Lv0》一人に《盗賊:Lv5》以上の四人パーティが殺されました』なんて言ったら鼻で笑われるから、面倒ごとになる前に早く逃げろという魂胆も見え隠れしている。


「ですから早く――――」

「《リザレクション》」


 少年はありがたーい助言を無視し、パパッと《回復魔法スキル100:リザレクション》を四回使った。

 男達の身体は光りに包まれ斬られた腕や足は元に戻り、心臓は再び鼓動を打つ。

 が、所々斬られた傷は完全には戻らなかった。HPを5~6程度ほど残し、あくまでも瀕死ながらも蘇生しただけに過ぎない。

 蘇生魔法と言えばRPGではお馴染みのスキルだ。

 レベル制のオンラインゲームなら回復系の職業を選び、大体Lv30と中盤辺りのレベルで覚えられるだろう。

 しかしスキル制ならばそうは行かず、《回復魔法スキル100:リザレクション》と回復魔法の中で最難関とされているスキルだ。

 ちなみに《リザレクション》を覚えなければ、レイドボスなどで『自分ヒーラーでーす』などとは口が裂けても宣言できない。


「え、キミキミ、助けちゃうの?」

「大きな町は隅から隅まで調べてみないと気が済まない」

「……どゆこと?」

「そゆこと」


 つまり、前に居た町は小さかったので無視したが、今回の町の規模はそれなりに大きいので探索する気満々らしい。なればこそ、探索を円滑に進めるべく罪という罪は綺麗サッパリ精算しちまおうとしているのだ。

 人目さえ無ければ、犯罪とバレなければ、彼はあの男達と同様死体を放置して旅を進めていただろうが、今回は町の中心部だったのが少年が蘇生魔法を使った要員だった。

 例え男達が、狂暴・凶悪な性格でこれからもギルドに害をなすとしても彼は蘇生する。

 なぜなら町の探索が円滑に進められないから。


 「え、は……? え……?」


 シスターは目の前で起きた事が信じられなかった。周囲のギャラリーも驚愕で言葉が出てこない。

 蘇生魔法と言えば長年の修行を積み、《治療者:Lv8》にならなければ習得できないからだ。他の職業でも《Lv8》というだけでもかなり貴重で、このギルドで《Lv8》ともなれば片手で数えるほどしかいない。

 ちなみにその面々は長期クエストで、一月ほど前から席を外している。

 でなければあの男達はここまで増長しなかっただろう。


「あの、今、蘇生を……?」

「……」


 少年はそれに答えず、無言でギルドを出て行った。


「あ、置いてかないでよ~!」

「ちょっと待ってください、まだ貴方には聞きたいことが!」


 マリィとシスターは少年を追いかけてギルドを後にする。


「うぅっ……あれ……ここは……」


 HP5で蘇生した男達を残して――――。


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