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スキル制とレベル制の違い(1)


 鍛冶スキルを極めた少年が一生懸命叩いて強化した銃は《サスティンライフル》という名器で、5000円以上課金したプレイヤーにもれなく配られる武器。

 ゲーム内でのレートとしては『銀行に預けられる最大金額×10』という破格の値段が付いていることでも有名だ。

 最初期に課金武器として配布されたっきり、復刻ガチャにすら収録されず二度目の配布がされなかったというのが大きな理由だが、課金武器にも関わらずゲーム内で強化・改造できてしまうのが最大の強みだ。

 通常であれば、他の課金武器はゲーム内で強化・改造されない設定になっているのだが、この武器だけは例外中の例外で、バグなのか仕様なのか公式は一切口にしていないが、なんと最大まで強化できてしまい、その数値は全武器の中で一位二位を争う強さを誇っている。


 ステータスは以下の通り。



《サスティンライフル+9》


《銃》必要スキル値:100

      攻撃力:375

      耐久度:1/1


   特殊効果:『この武器は耐久度が減らない』

        『通常攻撃する度に雷属性の追加攻撃が発生する。ダメージは使用者の魔力35%に値する』

        『ガードを成功する度に最大HPの8%を回復する』

        『魔法のクールタイムを5%短縮する』

        『装備すると最大HPが10%下がる』




 この世界での攻撃力は、Lv2の一般人が装備できるブロンズソードで『攻撃力+10』。現在、世界最高レベルを誇るLv15の勇者が持っている伝説の武器として名高いエクスカリバーでさえ『攻撃力+150』。

 追加効果の方はと言えば、デメリットを差し引いてもメリットが大きく廃人垂涎物の効果が多い。

 また、《銃》は発射する《弾》の種類によってダメージが上下されるので、強力な《弾》を使えば相当なダメージが期待できるだろう。

 ブッチギリでこの銃がイカレてるのがよく分かる。


「――――っつー訳で、あの銃は唯一無二なの」

「よく分からないって事がよーく分かりました……」


 少年はモグモグと御飯を食べながらマリィに《銃》の説明をしていた。ちなみに唯一無二などとほざいていたが、彼はサスティンライフルに相当する銃を何丁も持っている。

 少年は喋り疲れたのか、お水で口の中を潤し、魚をナイフとフォークで綺麗に食べ分けていく。


「……うま」

「ね、美味しいよね、この魚」

「うん」


 二人ともお腹が空いていたので、あっという間にぺろりと平らげる。


「あ~食べた食べた」

「ご馳走様。金払って」

「えぇ~私が払うの~? ヤダなぁ~……キミ、男の子でしょ~? こーいう時って女の子を喜ばせて――――」

「払う以上に価値ある素材持ってんだろぶっ殺すぞ」

「ごめん」


 恐喝によってお代はマリィ持ちとなった。実際問題として、マリィは少年の倒したLv5モンスターの素材を幾らか分けて貰っているのだから文句は言えない。

 そして残念ながら、少年はこの世界の通貨を持っていない。彼がスキル制ゲームであくせくして貯めたお金もこの世界では無価値の玩具、異世界転移による悲しい悲しいデメリットだ。

 ちなみに食堂にやってきて、穀物、野菜、魚と彩りのよい食卓を囲んだのは少年のリクエストがあったからだ。単純にモンスターの肉ばかりでは栄養が偏ってしまうからである。

 一応、アイテム袋の中にはスキル制ゲーム産の食材も入っていたが、アレを使うとバフが付く料理になるので、ここぞという場面で使いたいという腹づもりが少年にはあった。







 お腹を満たした二人は腹ごなしの散歩も兼ねて、この町のギルドへ加入しに歩いていた。

 その最中、少年はポイッとマリィに放り投げた。何かと思えば彼の愛用している《銃》である。

 あたふたするマリィに向かって少年は一言「空に撃て」とだけ言い放った。マリィは何が何やら分からないまま、言われたとおり


に上空に銃口を向けて引き金を引いた――――。

 

「……あれ、何も起きないよ?」

「へぇ」


 が、弾は放たれず。


「使い方間違ってる?」

「合ってる」

「ここを引けばここから弾が出るんだよね?」

「そう」

「弾は入ってるんだよね?」

「うん」

「でも撃てないよ?」

「だろうね」

「え、何で? どゆこと?」

「そゆこと」


 必要スキルが《銃》であり、且つ要求されるスキル値が上限の《100》とされている。

 銃スキルを100にして、ようやくこの銃が発砲できるようになるのだ。

 少年以外の誰かがこの世界で手にしたとしても、《銃》スキルを《100》も持ち合わせていないので弾は発射されず、ただのオブジェクトとして飾られるのがオチだろう。

 ちなみに少年はこの世界で《Lv0》扱いなので、ブロンズソードすら満足に振れなかったりする。一応振れるには振れるが、切れ味を無くしたただの鈍器になってしまうだろう。

 ここら辺は相互の効かないシステムの仕様なので諦めるしかない。


「ん~よく分かんないけどキミ以外誰も使えないって事よね……。がっかり……」

「俺もだよ。クソだな」


 少年は、実はちょっぴりだけ、レベル制であるこの世界の武器を使ってみたかったという密かな望みがあったのだが、それはどうやら叶わぬ夢となりそうだ。



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