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銃だけじゃない!


「ねぇねぇキミの名前は?」

「……」

「えーと……昨日の戦い凄かったわね!」

「……」

「そ、それから……そう! 昨日はギルドに入りたがってたわね!」

「人の出入りが一番多かったから」

「お、反応来た来た! 適当に入ったってことは、あの町に来たのは初めてなのね」

「そう」

「ふーん……キミってもしかして、適当に歩いてる放浪者? 旅人? 冒険者?」

「分かんない」

「分かんないって……何が?」

「全部」

「全部? それって記憶喪失?」

「そんな感じで」


 適当な会話をしながら少年とマリィは最寄りの町に歩いていく。

 少年は異世界に来たばかりなので地理に詳しいマリィが先頭を切って進路を決めていた。地理に詳しいマリィを仲間にできたのは運が良かった。彼女と出会わなければ、もう数日くらいは危険な森を彷徨うことになっていただろう。危険な、というのはこの世界での定義においてだ。


「それじゃどこから来たかも覚えてないのね……可哀想……」

「覚えてる」

「え、でも記憶喪失なんでしょ?」

「そんな感じで」

「も~どっちなのよ!」

「……」


 少年は極端に口数が少なかった。

 と言うのも彼はタイピングが遅かったので、移動や戦闘の最中はとかく短い言葉で会話を繋いでいたのだ。彼はあくまでゲーム内のロールプレイをしているだけで、実際はフレンドリー且つ弁の達者な今時の若者だ。

 ならば普通に話せばよかろうとお思いだろうが、彼はあくまでもゲームのキャラクターのステータスやらアイテムやらを受け継いで異世界に転移したのだ。彼は元居た現実世界を忘れないために、わざと口数をネット内に合わせて減らしているのだ。

 とにかく口数を少なくしているので、異世界から来たなどと一から説明するのも面倒だから、記憶喪失ということにして事実を曖昧に誤魔化した。


「そういえば……昨晩のキミの武器、凄かったのね」

「でしょ?」

「この会話は食い付きが良いと……ねね、武器見せてくれない?」

「はい」


 少年は昨日火を噴いた《銃》をアイテム袋から取り出して見せる。


「いやその……できれば武器の強さを知りたいなぁって……」

「見せるのは良いけど渡したくない」

「まぁ……信用されてないのね、私って……」


 ヨヨヨと泣き出すマリィを尻目に少年はスタスタ歩いていく。


「あぁちょっと待って!」


 これっぽっちも情けをかけない少年に駆け足で追いつくマリィ。

 しかし、少年はピタリと足を止めた。マリィは自分の願いをようやく聞き届けてくれたのかと思いきや――――。


「……嘘でしょ」


 少年の眼前には昨日殺した虎の血の臭いに釣られたのか、昨日の同種族の虎に加えて、でかい熊二匹、でかい猪二匹の計5匹のモンスターが雁首揃えていた


(白銀の毛並み《シルバータイガー》、赤い爪が特徴の《切り裂き熊》、二本の牙が剣のように斬れ味が鋭い《ソードボア》)


 これらのモンスターは全て《Lv7》。

 この世界でモンスターLv7と言えば、中堅冒険者が5人で1パーティ組んでようやく一匹と対等に渡り合える指標になるLvだ。

 ちなみにマリィは《踊り子:Lv2》。やんごとなく生きてやんごとなく死ねば平均的な《Lv2》、これがこの世界の普通の人たちのレベルなのだ。


「あ……あぁ……」


 マリィは後悔した。

 幾ら少年が強いからと言って、町への近道になるルートを通るべきではなかったと。

 マリィは後悔した。

 一瞬、ほんの一瞬だけ恐怖により弛んだ膀胱が開いてしまい、股間がじんわりと濡れてしまったことを。


「逃げっ――――」

「邪魔だから逃げてね」

「何落ち着いてるの!! キミも逃げるの……ってハァッ!?!?」


 回れ右して逃げ出そうとしたマリィだったが、少年は意に介さず《銃》を取り出して何やら詠唱を始めてしまう。


「「「「「ほいっと」」」」」


 すると少年が6人に増えた――――。


「――――は?」

「これも使えんのかよ。サイコー!」







「規格外に強いわね……」

「クソ雑魚すぎんだろ」


 少年とマリィは別々の感想を口にして、また町に向かって歩き出した。

 五匹いた虎やら熊やら猪やらは既に物言わぬ亡骸になってしまい、めぼしい部位は既に少年とマリィによって剥ぎ取られている。もちろんお肉もアイテム袋に入っている。


「ねぇ、さっきパッてキミが増えたじゃない? アレどんなスキル使ったの?」

「忍術スキル30で使える《分身》。ヘイト高いから雑魚はアッチ行く。で一匹ずつ釣って殺せるようになると」

「へ、へぇ~……。忍術スキルってちょっと聞いたこと無いけれど……キミってヘイト管理もできるのね」

「多分何でもできるようなになってる。サイコー!」

「そ、そう……」


 少年はゲームの解説が好きなので、彼はこの手の話しになるとやたら饒舌になる。マリィはコロコロと変わるテンションの差にちょっと引いたが。

 原理は少年が話したとおり。

 五匹を一カ所に纏めて分身を殴らせる→一匹を遠距離から銃で釣って殺す、のループだ。ヘイト管理さえしっかりこなせば単体火力がバカでかい銃によってちょちょいのちょいであった。


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