↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
8/70

第8話 「中隊長と副官」①

 それから一週間。アリアとリリアは、王都の王国軍総司令部へ呼び出されていた。並んで廊下を歩く二人は正式な軍服を身につけている。

「アリア」

「何?」

「今回は何の呼び出しでしょうね」

「先日の戦闘の報告じゃない?」

「それなら二人とも呼ばれるかな?」

「分からない」

 リリアは苦笑する。

「相変わらずね」

「何が?」

「何でもない」

 やがて二人は、指定された会議室の前へ到着した。扉の前で立ち止まる。リリアが一度深呼吸した。

「緊張してる?」

「少しだけ」

「そう」

「アリア小隊長は?」

「別に」

「本当に?」

「うん」

 アリアはいつも通りだった。そして扉をノックする。

「入れ」

「失礼します」

 二人が入室する。室内には、数名の上級将校が待っていた。

「アリア中尉、リリア少尉」

「はい」

「二人とも呼び出した理由は分かるか?」

「いいえ」

 アリアが答える。将軍の一人が書類を手に取った。

「先日の戦闘以降、第15即応魔導小隊の評価は大きく上がっている」

「ありがとうございます」

「特にアリア中尉」

「はい」

「君の指揮能力について、複数の部隊から高い評価が寄せられている」

 アリアは黙って聞いている。

「そこで、以前提示した話を正式に決定した」

 将軍が一枚の辞令を取り出す。

「中尉」

「はい」

「貴官を王国魔導軍第10魔導中隊の中隊長に任命する」

 アリアの目がわずかに動いた。

「……了解しました」

「それに伴い、階級を少佐へ昇進させる」

「少佐……」

 リリアが小さく呟いた。十二歳で少佐。異例どころの話ではない。しかし、目の前の将軍たちはそれを当然のこととして扱っていた。

「第10魔導中隊は新設部隊だ」

 将軍が説明を続ける。

「現在、編成はまだ完了していない」

「はい」

「そこで貴官には、正式な着任まで三か月の猶予を与える」

「三か月?」

「その間に中隊の編成を行え」

 アリアは書類を見る。

「小隊の編成、人員配置、装備の確認。さらに各小隊の訓練計画まで、貴官自身に決めてもらう」

「了解いたしました」

「そしてもう一つ」

 将軍は隣に座っていたリリアを見る。

「リリア少尉」

「はい!」

「貴官についても辞令がある」

「小官にもですか?」

「アリア少佐の副官として、第10魔導中隊へ配属する」

 リリアが目を見開く。

「そして階級を大尉へ昇進させる」

「拝命いたします」

 リリアは思わずアリアを見る。アリアはいつも通り、落ち着いている。しかし、その目にはわずかな安心が浮かんでいた。

「……よかった」

 小さく呟く。

「アリア少佐?」

「何?」

「今、よかったって……」

「言ってない」

「言ったよ」

「気のせい」

 リリアは少し笑った。

「じゃあ、そういうことにしておく」

 将軍は二人の様子を見ながら、話を続ける。

「第10魔導中隊の正式発足は三か月後」

「それまでに、部隊の編成と教育を完了させろ」

「了解しました」

「私たちは、かなり大きな部隊を率いることになるんですね」

「そういうことだ」

 将軍は頷いた。

「これまでとは責任の重さが違う」

「……はい」

 アリアは静かに返事をする。

「三か月で、部隊を作る」

「その通りだ」

「分かりました」

 アリアは辞令を受け取った。そして深く敬礼する。

「期待している」

 将軍は二人を見て静かにうなずいた。二人が会議室を出る。しばらく二人とも無言で廊下を歩いた。先に口を開いたのはリリアだった。

「……大尉になっちゃった」

「うん」

「アリアも少佐かあ」

「うん」

「十二歳で少佐って、改めて考えるとすごいよね」

「そう?」

「そうだよ!」

 リリアは呆れたように笑う。しかし、その笑顔はすぐに真剣なものへ変わった。

「でも……三か月で中隊を作るんだよね」

「そう」

「大丈夫かな」

「大丈夫にする」

 アリアは即答した。

「私たちの中隊だから」

「……私たち?」

「うん」

 アリアはリリアを見る。

「リリア大尉にも手伝ってもらう」

「もちろん」

 リリアは笑った。

「私、アリア少佐の副官だからね」

「よろしく」

「こちらこそ、よろしくお願いします。アリア少佐」

 その呼び方に、アリアは少しだけ違和感を覚えた。昔のような関係ではない。もう二人は、同じ士官候補生でも、同じ小隊の仲間でもない。中隊長と副官。それでもアリアにとって、リリアが特別な存在であることだけは変わらなかった。

「帰ろう、リリア大尉」

「はい、アリア少佐」

 二人は並んで歩き出した。

 これから三か月。第10魔導中隊を、一から作り上げるために。

*

 翌日。

 アリアとリリアは、王都にある王国軍の施設へ向かった。第10魔導中隊の正式発足まで、残された時間は三か月。その間に中隊の編成を終え、隊員たちを教育しなければならない。そのため二人は、これまで暮らしていた基地を離れ、王都の軍施設で生活することになった。

「ここが、私たちの部屋です」

 案内された部屋の前で、リリアが鍵を受け取る。

「二人部屋なんだ」

 扉を開けると中にはベッドが二つに机が二つ、衣類を収納する棚と、小さな本棚。軍施設の部屋らしく簡素ではあるが、生活するには十分な設備が整っていた。アリアが部屋へ入る。

「悪くない」

「そうだね」

 リリアも荷物を置く。

「でも、まさか同じ部屋になるとは思わなかった」

「嫌?」

「そんなわけないでしょ」

 リリアは笑った。

「むしろ安心したよ」

「そう」

 アリアは自分の荷物を整理し始める。リリアもその隣で荷解きを始めた。

「アリア」

「何?」

「今日から、さっそく選抜だよね」

「うん」

「どんな人が来るんだろう」

「分からない」

「アリアなら、すぐ決めそう」

「能力を見ないと決められない」

「それもそうか」

 リリアは笑いながら荷物を片付けた。

最後までお読みいただきありがとうございます!始まったばかりの新作ですので、少しでも『面白い』『続きが気になる』と思ってくださったら、ページ下部にある【ブックマーク登録】や【評価の☆☆☆☆☆】で応援していただけると、執筆の凄まじい励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。