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第46話 「突然やってきたXデー」③

 王国軍による連邦首都攻略作戦。その第一段階が、始まろうとしていた。連邦首都から遠く離れた空域。そこを、二つの部隊が進んでいた。一つは箒に乗った魔導部隊。もう一つは、大型輸送機によって運ばれる陸軍部隊だった。第51統合大隊は、今回の作戦において二つの異なる手段で首都へ接近する。魔導士たちは高い機動力を生かし、敵の防衛網を先に突破する。その後、輸送機で接近してきた陸軍部隊が空挺降下する。

「前方、異常なし!」

 通信が入る。

「敵航空機の姿は?」

 アリアが尋ねる。

「今のところ確認できません!」

「警戒を続けろ」

「了解!」

 アリアは先頭を飛んでいた。その後ろには、第51統合大隊第1魔導小隊。さらにその後ろには、第2魔導小隊と第3魔導小隊。今回の空挺降下地点を事前に制圧することが任務だった。

「目標地点まで、あと五分」

 リリアから通信が入る。

「分かった」

 アリアは地図を確認する。降下予定地点は、首都の北西に広がる比較的開けた地域。周辺には連邦軍の監視施設や対空陣地が存在している。ここを制圧できなければ、輸送機が近づいた瞬間に激しい対空砲火を浴びることになる。

「全員、戦闘態勢」

 アリアが告げる。

「敵防空施設を確認次第、攻撃する」

「了解!」

 第1魔導小隊と第2魔導小隊が左右へ展開する。やがて―――。

「敵施設を確認!」

 隊員の一人が叫んだ。遠くに建物が見える。さらに、その周囲には砲台。連邦軍の対空陣地だった。

「敵もこちらに気づいた!」

 別の隊員が叫ぶ。

「迎撃準備!」

 地上から対空射撃が始まった。空を砲弾が横切る。

「散開!」

 アリアの号令で、魔導士たちが左右へ分かれる。砲弾が空を切る。

「第1小隊、左側から!」

「了解!」

「第2小隊、右!」

「了解!」

「第3小隊は降下地点の制圧を優先しろ!」

 魔導士たちが一気に降下する。魔導銃へ魔力を込める。

「撃て!」

 一斉射撃。対空陣地の周囲に魔力弾が着弾する。砲台が沈黙する。

「一つ目、制圧!」

「次!」

 アリアが先頭を飛び、次の防御施設へ向かう。敵兵が応戦する。しかし、魔導士たちの機動力についていけない。空を自由に飛び回りながら、連邦軍の射線をかわしていく。

「敵、右側!」

「任せろ!」

 一人の魔導士が急旋回し、敵の機銃陣地へ攻撃を加える。

「沈黙しました!」

「そのまま次へ!」

 第1、第2魔導小隊は、あらかじめ作成された目標一覧に従って次々と攻撃していく。

 対空陣地。

 監視所。

 通信設備。

 どれも輸送機の進入にとって障害となるものだった。

「通信施設を確認!」

「破壊する!」

 魔力弾が通信施設を捉える。建物が大きく揺れ、通信アンテナが倒れる。

「敵の指揮通信、低下!」

「よし!」

 アリアは周囲を見る。

「敵航空機は?」

「まだ確認できません!」

「なら、降下地点の制圧を優先する」

「了解!」

 魔導部隊はさらに攻撃を続けた。

数十分後。

「敵防空陣地、すべて沈黙!」

「周辺の敵部隊も後退しています!」

 通信が次々と入る。アリアは地上を見下ろした。降下地点周辺は、ほぼ制圧されていた。

「これなら輸送機を入れられる」

 アリアが呟く。

「リリア」

「はい!」

「輸送機へ連絡」

「了解!」

 通信が切り替わる。

『こちら第51統合大隊、ルード少佐』

「降下地点の制圧が完了しました。進入してください」

『了解。予定進路へ入る』

 空の向こうから、輸送機が姿を現す。大型機が次々と接近してくる。

「来た‥‥‥」

 魔導士の一人が呟く。輸送機が降下地点上空へ入る。そして。

「空挺降下開始!」

 輸送機の扉が開く。陸軍兵士たちが次々と飛び降りていく。パラシュートが開く。地上へ降りていく兵士たち。

「降下部隊、確認!」

「予定通りです!」

 魔導部隊が上空から周辺を警戒する。

「敵の接近は?」

「ありません!」

「よし」

 アリアは地上へ視線を向ける。陸軍兵士たちが次々と着地し、降下地点の確保を始めている。

「陸軍部隊、降下完了!」

 ルードから通信が入る。

「これより地上部隊の配置につきます!」

「了解」

 アリアは続けて指示する。

「第1魔導小隊、第2魔導小隊は上空警戒」

「第3魔導部隊は陸軍部隊と行動をともにしろ!」

「了解!」

 やがて、すべての部隊が予定地点へ到着した。さらに別方面から進んでいた王国軍の地上部隊も、所定の位置へ到達している。首都を取り囲むように、王国軍が展開していく。

 首都の街並みがアリアたちの近くに見える。高い建物。軍事施設。王国軍から見ると、すべてが敵の防衛拠点だった。

「‥‥‥」

 アリアは首都を見つめる。ここまで来た。もう後戻りはできない。リリアが隣へ飛んでくる。

「アリア大佐」

「何?」

「全部隊、配置完了です」

「そう」

「地上部隊も準備完了」

「分かった」

 アリアは通信機を取る。各部隊の状況を一つずつ確認していく。

「第1魔導小隊」

『配置完了』

「第2魔導小隊」

『配置完了』

「第3魔導小隊」

『配置完了』

「陸軍第1小隊」

『配置完了』

「第2小隊」

『こちらも完了』

「第3小隊」

『こちらも完了』

 次々と返答が入る。アリアは頷いた。

「よし」

 遠くに見える連邦首都。その向こうには、連邦の政府中枢と軍事中枢がある。ここを制圧できればこの長い戦争を終わらせることができるかもしれない。アリアは魔導銃を握る。

「‥‥‥総員、待機」

 全員が息を潜める。通信に入るのは、各部隊の小さな報告だけ。そして王国軍総司令部から、最終命令が入った。

『全軍へ通達』

『各部隊、作戦開始準備』

『繰り返す。作戦開始準備』

 アリアは空を見上げる。そして、ゆっくりと魔導銃を構えた。

「第51統合大隊」

 通信機越しに、全員へ声を届ける。

「いよいよ始める」

「了解!」

「目標、連邦首都」

 アリアの目が、遠くの街を捉える。

「全員、生きて帰るぞ」

「はい!」

 一斉に返事が響く。

 そして王国軍による連邦首都制圧作戦が、ついに始まった。

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