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コント集  作者: 河野吉田
PR
8/37

コント集8

コント集8



71・・・あらかじめ

72・・・ヒーローとヒール

73・・・メンタルが強い虐められっ子

74・・・海賊

75・・・拷問

76・・・寝てない

77・・・勉強してない

78・・・超能力者

79・・・催眠術

80・・・プレゼント



『あらかじめ』



・登場人物


 米山

 小川



・舞台


 料理番組のスタジオ






 明転。


 料理番組のスタジオ。キッチンとテーブルがある。テーブルの上には豚ひき肉200g、ピーマン(2個)、人参40g、溶き卵 (Mサイズ)1個、(A)パン粉大さじ2、(A)塩こしょう小さじ1/4、和風だれ(水大さじ2、しょうゆ大さじ2、料理酒大さじ1、みりん大さじ1、砂糖大さじ1)、サラダ油大さじ1がある。

 米山、小川、板付き。


小川「さぁ始まりました!ツクッテ、ツクッテ、ツクッチャッテ!第一回放送です!司会進行役の小川美幸です!そして料理研究家の!」

米山「米山です」

小川「さぁ米山先生、記念すべき放送第一回は何の料理を作るんですか?」

米山「今日は人参とピーマンの一口ハンバーグを作ります」

小川「成程!ご家庭の食卓に並べるも良し、お弁当に入れるのも良し、という事ですね!」

米山「そういう事です。そして野菜嫌いのお子様にもオススメの一品です。ちなみに今日は私は包丁を使いません」

小川「何と!それは凄いですね!では早速、材料の紹介、お願いします!」

米山「材料はこちらになります。豚ひき肉200g、ピーマン2個、人参40g、卵Mサイズ1個、パン粉大さじ2杯、塩こしょう小さじ1/4杯、水大さじ2杯、しょうゆ大さじ2杯、料理酒大さじ1杯、みりん大さじ1杯、砂糖大さじ1杯、サラダ油大さじ1杯です」

小川「米山先生、ありがとうございます!では早速調理の方に移りましょう!」

米山「まずピーマンはヘタと種を取り除き、人参は皮を剥きます。あらかじめ剥いた物がこちらになります(キッチンの下からピーマンと人参を取り出す)このピーマンと人参はみじん切りにします。あらかじめみじん切りにした物がこちらです(キッチンの下からみじん切りのピーマンと人参を取り出す)次に卵を溶きます。あらかじめ溶いた物がこちらになります。(キッチンの下から溶いた卵を取り出す)そしてボウルに豚ひき肉、先程溶いた卵、パン粉と塩こしょうを入れ、手で粘りが出るまでよくこねます。あらかじめこねた物がこちらになります。(キッチンの下から混ぜたものを取り出す)そして8等分して……」

小川「ちょちょちょ……何ですかこれ?」

米山「どうしました?」

小川「この感じがずっと続くんですか?」

米山「というと?」

小川「一切調理をしない、この流れですよ!」

米山「時間短縮の為ですよ」

小川「こんなの料理番組で聞いた事無いですよ!」

米山「あら、聞いた事ありません?『こちらあらかじめ用意しておいた物です』って」

小川「それはありますけど、こんな大量に並べるなんて聞いた事が無いって言ってんです!」

米山「たまたま私がそれが多いってだけですよ。他の人もやってます。普通ですよ、普通」

小川「そうなんですかねぇ……というかもしかして包丁使わないって……」

米山「全部これで行きます」

小川「包丁要らずの料理じゃないんですか!?」

米山「そんな事一言も言ってませんよ?私『は』使わない、と言いました」

小川「何その詐欺師みたいな言い訳。後、思ったんですけど、このままの調子で行ったらキッチン埋め尽くされちゃうけど良いんですか?」

米山「その時はその時で考えます」

小川「適当だなぁ……」

米山「余計な茶々が入りましたね」

小川「茶々て」

米山「続き行きます。こちらを8等分して丸め、平たくつぶします。あらかじめそれをした物がこちらです(キッチンの下からハンバーグの種を取り出す)こちらがハンバーグの種です。次に中火で熱したフライパンにサラダ油をひき、この種を入れて焼きます。両面に薄く焼き色がついたら蓋をして、時々返しながら弱火で7分程焼きます。あらかじめ焼いた物がこちらです(キッチンの下からハンバーグを取り出す)。あら、もう置く所がありませんね」

小川「ほら言ったじゃないですか」

米山「纏めちゃいましょう。えい(全てを一つのボウルに入れて纏め、そのボウルの下に空いたボウルを重ねる)」

小川「うわっ、大胆」

米山「ほらスッキリした。どうにかなったでしょ?」

小川「かなり力技ですけどね」

米山「続けまーす。焼いてる間に和風だれを作ります。水大さじ2杯、しょうゆ大さじ2杯、料理酒大さじ1杯、みりん大さじ1杯、砂糖大さじ1杯を混ぜます。あらかじめ混ぜた物がこちらになります(キッチンの下から和風だれを取り出す)。ハンバーグが中まで火が通ったら和風だれの材料を入れ、汁気が1/3量になるまで中火で絡めながら熱し、火から下ろします。あらかじめ火から下した物がこちらになります(キッチンの下からハンバーグを取り出す)。最後に、器に盛り付けたら完成です。あらかじめ盛り付けた物がこちらになります(キッチンの下から盛り付けたハンバーグを取り出す)」

小川「うわ、無駄ぁ……」

米山「何がです?」

小川「何、最後の?フライパンから下したやつと盛り付けたやつ、わざわざ二つに分ける必要あります?」

米山「火から下ろすのと盛り付けたやつは別物でしょう。ちゃんとレシピ通りにやった結果です」

小川「何だかなぁ……」

米山「さぁ、食べてみて下さい」

小川「分かりました……じゃあ頂きます(ハンバーグを食べる)……うん」

米山「如何ですか?」

小川「冷たい……」

米山「え?」

小川「味はともかく、冷たくてガッカリって感じです」

米山「まぁ、冷ましましたからね」

小川「出来れば温かい状態で食べたかったです」

米山「冷めても美味しい。お弁当にもピッタリじゃないですか」

小川「それはまぁ……しかしこれだけの用意、スタジオ何時入りだったんですか?」

米山「五時間前に入りでしたね」

小川「早いなぁ~!」

米山「さて、時間短縮も出来た事だし、さっき纏めた材料でハンバーグでも作りますか」

小川「どうせまた『あらかじめ用意しました』って言うんでしょ?」

米山「よく分かりましたね(キッチンの下から巨大ハンバーグを取り出す)」

小川「だから出来立てを食べさせろって言ってんですよ!何でそこまで時間短縮に拘るんですか!」

米山「時は金なり。無駄を省いて時間を短縮すれば、他にお金になる事に時間を費やせる。それって素晴らしい事じゃないですか」

小川「五時間早く来てる分、無駄な時間を過ごしたと思いますけどね」

米山「それは誤差ですよ、誤差」

小川「この撮影の二、三十分の短縮と五時間の準備じゃ割に合わないと思いますけど」

米山「もう五月蠅いなぁ。私が満足してるんだからそれで良いでしょ」

小川「米山先生がそう言うなら良いですけど」

米山「ではまた来週~」

小川「このハンバーグと種は後でスタッフの皆さんが美味しく頂きます~」




















―――終わり

『ヒーローとヒール』



・登場人物


 ヒーロー(以下『ヒロ』)

 敵のボス(以下『ボス』)



・舞台


 敵のアジト






 明転。


 敵のアジト。何も無い。

 ヒロ、ボス、板付き。向かい合ってる。


ボス「我が精鋭部隊の幹部達を全て倒し、よくぞここまで辿り着いたな。だが、お前達人間が滅びるのは変わらない。ここで朽ち果てるが良い!」

ヒロ「はぁ」

ボス「正義のヒーロー。お前はここで終わりだ!」

ヒロ「はぁ」

ボス「我が組織の糧となれ!」

ヒロ「はぁ」

ボス「さっきから何だその反応は?これから最終決戦なんだぞ?」

ヒロ「いや、今まで倒してきた怪人達には皆に聞いてたんだけどさ、アンタ、結局何がしたいの?」

ボス「何って?」

ヒロ「どの怪人も、どの幹部も、アンタの目的をあんまり把握してなかったからさ」

ボス「何だと?」

ヒロ「今だからこそ聞きたいんだけど、アンタ、地球を支配して何がしたいの?」

ボス「それは決まっているだろう。世界征服だ!」

ヒロ「具体的に何がしたいの?」

ボス「この地球を恐怖で包み込むのだ!」

ヒロ「それは概念でしょ?具体的に何がしたいの?」

ボス「えぇ……そうだな、この地球の生物全てが、安心出来る場所を無くして、常に恐怖で怯える世界に塗り替えるのだ!」

ヒロ「だからそれは概念でしょ?具体的に何がしたいのかって聞いてんの」

ボス「えぇ……そうだな……世界を闇で覆い尽くして……」

ヒロ「だから何度も言ってるけど、それは概念でしょ?」

ボス「あー!もう!じゃあこの地球から光を消して、常に夜の世界を創る!どうだ!」

ヒロ「じゃあ夜になるのを待てば良いじゃん」

ボス「いや、夜でも電気を消して、完全な闇の世界を創る!」

ヒロ「何も見えないよ?何も見えない世界で何をする気なの?」

ボス「それは……」

ヒロ「それに夜だけ支配して、昼はどうするの?」

ボス「あー……太陽を破壊して、昼も夜も無い世界を創る!」

ヒロ「寒いよ?全てが凍り付いて、アンタも生きられないよ?」

ボス「じゃあ火を起こす!」

ヒロ「明かり灯しちゃったよ。あんだけ闇に拘ってたのに。結局何がしたいの?」

ボス「…………」

ヒロ「何か言いなよ。これまで散々部下と俺達に迷惑掛けてきたんだから。何かあるだろ?自分はこういう世界に君臨したいって気持ちがさ」

ボス「…………」

ヒロ「黙ってないで何か言え」

ボス「五月蠅ぇ~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!」

ヒロ「……はぁ?」

ボス「そこまで考えてねぇよ……どれだけ俺を苦しめれば気が済むんだ……」

ヒロ「俺達は散々お前に苦しめられてきたからな。そのお返しだよ」

ボス「まさか精神攻撃で返ってくるとは思わないじゃん……怖いよ。それがヒーローのやる事か……?」

ヒロ「精神攻撃系ならお前達もいくらかやってきただろう」

ボス「そりゃそうだけど……」

ヒロ「てかさぁ、もうアンタの組織、アンタ一人しかいないけどどうすんの?」

ボス「えっ?」

ヒロ「独りぼっちで地球支配して、楽しい?」

ボス「そ、それは……」

ヒロ「もうここら辺で諦めなよ。明るい未来なんか無いよ?」

ボス「…………」

ヒロ「大体、こんな事して何のメリットがあるの?」

ボス「め、メリット?」

ヒロ「そう。今の状況、独りぼっちになって、何のメリットがあるの?」

ボス「わ、私が住みやすい世界になる……」

ヒロ「一人で?仲間も家族もいない、そんな世の中になって何が楽しいの?世界征服しても多分、数日で飽きるというか、寂しくてたまらなくなるよ?それでも良いの?」

ボス「五月蠅い五月蠅い五月蠅い!私はこの世を闇で覆い尽くすんだ!それが私の夢なんだ!」

ヒロ「何でこんな事をしようと思ったの?」

ボス「ある日、天の声が聞こえたんだ。『お前はこの世を闇で覆い尽くさなければならない。それがお前の使命だ』、とな」

ヒロ「気のせいだよ、それ」

ボス「いいや!はっきりと聞こえてきたんだ!この星は腐ってる。浄化しなければならないと!」

ヒロ「疲れてたんだよきっと。これやる前、アンタ何してたの?」

ボス「公務員」

ヒロ「て事は、役所の人?」

ボス「刑事」

ヒロ「刑事がこんな事してたの?邪な気持ちしかないやん」

ボス「この世から犯罪が消えないのであれば、それを上回る罪でこの世を統一する!それが私に与えられた使命だ!」

ヒロ「恐怖政治でしょ?もう人類そんな事やってとっくに失敗してるよ。歴史の授業で学ばなかった?」

ボス「いや、学んだけど……」

ヒロ「じゃあ馬鹿なの?それくらい常識なの分かってたなら何でこんな事したの?神にでもなったつもり?」

ボス「さっきから正論ばかり言いやがって!じゃあどうすれば良かったんだ!私はこの道でしか生きて来れなかったんだ!」

ヒロ「黙って生きるとか、政治家になって世間を変えるとか色々、正攻法はあったでしょ。それくらいの事も考えられないとか、やっぱりアンタ、馬鹿なんじゃないの?」

ボス「さっきっから馬鹿、馬鹿、言うな!私は悪の大首領だぞ!ここまで頑張って這い上がってきたんだ!お前みたいなぽっと出のヒーローとは経験も実力も違うんだ!」

ヒロ「その結果がこれなんですけどね。アンタの部下は全員倒してここまで来ましたけどね」

ボス「また正論……じゃあそういうお前は何で正義の為に闘ってるんだ?」

ヒロ「俺?」

ボス「うん。何のメリットがあってこの戦いに参加したの?」

ヒロ「給料が良いから」

ボス「金が発生するの!?」

ヒロ「勿論」

ボス「この戦いが終わったらどうするの?」

ヒロ「今後、こういう敵組織が出現した時の為の教官としてそこに就職する」

ボス「そんな繋がりが……もう良い。戦え、私と!」

ヒロ「結果は目に見えてるんですけどね」

ボス「うるさい!行くぞ!トランスフォーム!」

ヒロ「変身!」


 暗転。


 SE、闘いのボカッ、ザシュッ、ドカーン!等の音。


 明転。


 敵のアジト。

 ヒロ、ボス、板付き。ヒロ、ブレードを持って立っている。ボス、倒れている。


ボス「くそぅ……この私が敗れるとは……!」

ヒロ「そりゃそうなるでしょ。部下ばかり働かせて、ブランクがあるアンタがいきなり戦場に出てきて、強い訳が無いでしょ」

ボス「また正論……俺もここまでか……!」

ヒロ「じゃあトドメ刺すね」

ボス「一思いにやれ……!」


 ヒロ、持っているブレードでボスを斬る。


ボス「ぐわっ!(倒れる)」


 ヒロ、無言で倒れているボスにブレードでチョコチョコ刺しまくる。


ボス「イテッ!イテッ!イテェッ!おい!止めろ!」

ヒロ「やっぱりまだ生きてるか」


 ヒロ、ブレードで更に刺す。


ボス「だからイテェッて!」

ヒロ「しぶといな……ほれ、ほれ(更に刺す)」

ボス「もう止めろ!何だ!トドメも刺せないのか、このヒーローは!必殺技を使え!」

ヒロ「だって必殺技に使うエネルギーは、さっきの闘いで使い果たしちゃったんだもん。だから素のブレードでザクザク刺すしか無いんだよ」

ボス「だったら頸動脈切るとかして楽にさせて!」

ヒロ「でもヒーローとしてそういうリアルに殺すのって子供に悪影響なんだよね」

ボス「死体蹴りするのも子供には悪影響だと思うけどな!?」

ヒロ「じゃああまり教育に宜しくないけど、首の頸動脈切るね」

ボス「お、おう……(首を切られる)イテェッ!」

ヒロ「……あれ?切れない……(ゴリゴリと切る)」

ボス「イテェ、イテェ!」

ヒロ「おかしいな……あ、刃こぼれしてる」

ボス「えぇ?じゃあ俺、殺せないの?」

ヒロ「そうなるねぇ」

ボス「銃は?」

ヒロ「弾切れ」

ボス「八方塞がりか……」

ヒロ「どうしようかねぇ。首でも絞める?」

ボス「そんな地味な最期、嫌だ!」

ヒロ「えー?でももう無いよ?」

ボス「普通ヒーローがラスボス倒す時って最後は大爆発するもんでしょ?何でそれしないの?」

ヒロ「さっきも言ったけど、エネルギーを全部、使い果たしたからね」

ボス「何でエネルギー使い果たしたの?」

ヒロ「楽勝だと思って初っ端から必殺技のバズーカ使いまくったら、予想外に避けられて、仕方なく後は地味に戦ったって感じだね」

ボス「そこまで下に見られてたの!?」

ヒロ「他の幹部の方が手こずったね。前線に出て戦わない敵の王だ。部下の実力は自由に伸びて行っただろうが、お前は次第に怠けて、弱くなっていっただろうと思ってな」

ボス「何その分析。すっげぇ傷つく」

ヒロ「でも事実だろ?」

ボス「……はい」

ヒロ「さて、どうやってトドメを刺そうか……」

ボス「じゃあ私、ここで待ってるから、エネルギーの補充してきてよ」

ヒロ「待ってるって保証は?」

ボス「お前が散々そのブレードで脚やら腰やら腹やらをやられて、もう動けねぇよ」

ヒロ「そうか。じゃあちょっと待ってて」

ボス「なるはやで頼む」

ヒロ「あぁ」


 暗転。


 明転。


 敵のアジト。

 ボス、板付き。倒れている。

 ヒロ、舞台上手から登場。


ヒロ「お待たせ」

ボス「遅いじゃないか。丸二日待ったぞ」

ヒロ「色々やってたからね」

ボス「何してたの?」

ヒロ「シャワー浴びて、彼女とデートしてた」

ボス「何でこの状況でそんなのんびりしてたの?」

ヒロ「だって逃げれないんでしょ?」

ボス「まぁそうだけど。でも仮に私が回復してたらどうしてたの?」

ヒロ「大して苦戦してないし、もう一度ボコボコにしてただけ」

ボス「怖ぁ、お前……」

ヒロ「さて、エネルギーも心身も回復した事だし、やるか、トドメ」

ボス「もう二日もずっと体中痛いんだから、いっそ楽にしてくれ……」

ヒロ「今一番早く楽にする方法がダイナマイトしかないけどどうする?」

ボス「マジで爆破で死ぬの!?爆死とか嫌だよ!バズーカとやらを使ってくれ!」

ヒロ「結果的に爆発四散するんだから良いじゃん」

ボス「何の為にエネルギーを充填しに行ったんだ!栄光ある死を迎えさせてくれ!」

ヒロ「しょうがないなぁ……(舞台上手に退場)ヒロイック・パーフェクト・バズーカ!!」


 暗転。


 SE、ドカーン!


ボス「ぐわああああああああああああああああああああ!!!!!」


 間。

 SE、ドカーン。


ボス「うわああああああああああああああああああああ!!!!!」


 間。

 SE、ドカーン!


ボス「ちょっと待てええええええええええええええええ!!!!!」


 SE、ドカーン!ドカーン!と連射する。


 明転。


ボス、うつ伏せで倒れている。

ヒロ、舞台上手から登場。ブレードでボスを刺す。


ボス「イテッ!イテッ!イテェッ!止めろぉ!」

ヒロ「これでも死なないか。しぶといな」

ボス「おい!何で私は倒れないんだ!」

ヒロ「意外と丈夫に出来てるんだな。これはもう、刑務所に送るしかないな」

ボス「そんな最後は嫌だ!」

ヒロ「我儘言うな!生き延びられるだけ良かったと思え!」

ボス「これがヒーローのやる事か!」

ヒロ「我の正義は法の下にあり!」

ボス「その割には銃刀法違反してるじゃないか!」

ヒロ「正当防衛!」

ボス「過剰防衛!」

ヒロ「黙れ!普通だったら、これだけしたらもう死刑だぞ!でもそれだけ丈夫だったらきっと無期懲役で済むぞ!それで良いじゃないか!」

ボス「それじゃあ今まで散っていった仲間達に顔向け出来ないだろ!」

ヒロ「きっと仲間達はお前が生き残ってくれる事を願ってるだろう!もう一度やり直せよ、人生を!」

ボス「お前……!」

ヒロ「さぁ、行くぞ。裁判所がお前を待ってる(ボスに肩を貸して立ち上がらせる)」

ボス「お前……」

ヒロ「色んな死刑と拷問の方法をお前で試すだろうから、それだけ覚悟しておけよな」

ボス「は?どゆ事?」

ヒロ「それだけ丈夫なら、どんな殺され方でも生き残りそうだろ?どの死刑が、どの拷問がどれだけ辛いかって論文書かされるだろう」

ボス「何それ、怖い」

ヒロ「罪滅ぼしだ。頑張れ」

ボス「嫌だー!痛いの嫌だー!苦しいの嫌だー!」

ヒロ「悪の親玉の末路なんて、派手な爆発だけが終わりじゃないんだよね」

ボス「だからってこんな結果があるかぁ!」

ヒロ「丈夫なお前が悪いんじゃん」

ボス「私?私が悪いの?」

ヒロ「この件に関してだけじゃなく、全てお前が悪い」

ボス「あっ、また正論!」











―――終わり


『メンタルが強い虐められっ子』



・登場人物


 北島(教師)

 藤原(生徒・中学生)



・舞台


 学校の職員室






 明転。


 学校の職員室。机一つに椅子一つ。

 北島、板付き。


藤原「(舞台上手から登場)失礼します。北島先生いらっしゃいますか?」

北島「おう、藤原。こっちだ」

藤原「あっ、はい。ご用は何ですか?」

北島「あぁ、その事なんだが、お前、最近クラスの奴から虐められてないか?」

藤原「虐め?いや、受けてないですけど?」

北島「本当か?お前の友達の枝村から、上履きに画鋲入れられていたとか、机に落書きされていたとか」

藤原「あー、あれって虐めだったんですかね?」

北島「気付いてなかったの?」

藤原「画鋲に関しては、俺が広報委員だから、画鋲を分けてくれたのかと思っていました」

北島「机の落書きは?」

藤原「俺の寂しい机をデコレーションしてくれたんだと」

北島「心広過ぎない?絶対虐めだよそれ」

藤原「そうなんですかね?」

北島「他に何かされてないか?」

藤原「うーん……ちょっと思い付かないですね」

北島「例えば、給食に何か混ぜられたとか」

藤原「あぁ、シチューに消しゴムのカス入れられました」

北島「出た出た。それ虐めだよ」

藤原「そうなんですか?」

北島「絶対そうだって。それについてどう思ったの?」

藤原「俺、シチュー嫌いなんで、食べない理由が出来て嬉しかったです」

北島「えぇ……他は?他に何か無かったか?何か隠されたりとか?」

藤原「あー……教科書隠されました」

北島「ほら、それ。それだよ。授業大変だったろ?」

藤原「俺、教科書、全部覚えているので特に問題無かったです」

北島「マジかよ……何でどれも効いてねぇんだ……」

藤原「もう良いですか?この後、塾なんで」

北島「待て待て。お前、本当にそれで良いのか?本当に辛くないのか?」

藤原「全然?」

北島「全く堪えてない……何でそんな冷静でいられるの?」

藤原「だから、要はそれが虐めだと気付いているかどうかじゃないですか?」

北島「虐めという認識はあるのか……どっちなんだ?」

藤原「この程度なら別に虐めじゃないかなって」

北島「良いか?よく聞けよ?お前は虐められている。それを見逃す事が出来なくなる事態がきっとやってくる。そうなる前に俺はお前を助けたいんだ」

藤原「今、不便じゃないので気になさらなくて大丈夫です」

北島「アレは?この前のグループ研究の授業。アレ、グループの奴らがお前一人に全部押し付けてたろ」

藤原「あぁ、アレですか?アレ、汚い字を書かれたり、適当な文章とかグラフを書かれるくらいなら、俺、一人でやった方が気楽だったので大丈夫です」

北島「あー、アレだ。この前、当番じゃないのに帰り、一人掃除押し付けられてたろ。アレはどうだ?」

藤原「適当な掃除で不潔な虫とか出るくらいなら、俺が徹底的にやった方が気持ち良く授業を受けられるんで、別に」

北島「パン買って来いって命令されたろ。アレはどうだ?」

藤原「金は貰ってたんで、全部使い切るように、計算しながら買うのは楽しかったです」

北島「無敵じゃん、お前……」

藤原「そうなんですかねぇ?」

北島「じゃあお前にとってどんな事が虐めになるんだ?」

藤原「そうですねぇ……突然の抜き打ちテストですかね」

北島「教師側に虐めを感じちゃうんだ……何でか理由を聞いて良い?」

藤原「他の科目もあるのに、突然『ちゃんと勉強しているかどうか試す』とか、無理難題を押し付けられても困りますよね」

北島「でもそれはどの教科にも言える事であって……」

藤原「たまたま昨日はその教科を勉強してない可能性もあるのに、点数が低いと、『勉強してない』と理不尽に怒るじゃないですか。それが虐めと言わず何と言うんですか?」

北島「返す言葉も御座いません……」

藤原「じゃあもう帰っても良いですか?」

北島「あぁ。呼び出して悪かったな。でも何か気になる事があればすぐに先生に言ってくれ」

藤原「分かりました」


 暗転。


 明転。


 職員室。

 北島、板付き。


藤原「(舞台上手から登場)失礼します。北島先生いらっしゃいますか?」

北島「おう、藤原。どうした?」

藤原「あのー、これって虐めになるんでしょうか……?」

北島「おう、何があった?」

藤原「この前、西岡君が俺の机の中にゴキブリの死骸を入れてたんです」

北島「おう、立派な虐めだな」

藤原「いえ、そこじゃないんです」

北島「どういう事?」

藤原「そのゴキブリが、見た事も無い珍種だったので、お礼に俺が飼育している珍しいゴキブリを何十種類か西岡君の机の中に入れたんです」

北島「……ほう?」

藤原「そしたらそれを知らずに机の中から教科書を取り出そうとした時、うっかりそのゴキブリ達が教室中に広がっちゃって……」

北島「あぁ、何か今朝クラスで騒いでたな。アレ、お前か」

藤原「俺にとってはお礼をしただけなんですが、結果的に皆を嫌がらせちゃって……これって虐めになりますか……?」

北島「えっ、お前、今、何か虐めされてた?」

藤原「俺が受けたんじゃなくて、俺が皆を虐めちゃったんじゃないかって……」

北島「あー……でも先にゴキブリを入れられたのって、お前だよな?」

藤原「はい」

北島「まぁ、やっちゃいけないけど、やり返したなら、お互い様って事で」

藤原「でも俺にとっては嬉しいことだったし、それに俺が皆を怖がらせちゃったのは事実だし、責任取って反省文とか書いた方が良いんじゃないでしょうか……?」

北島「それ以前にお前が虐めを受けてたんだぞ?」

藤原「受け取り側がそう感じていないなら虐めではないのでは?」

北島「マジで最強じゃん、お前……」

藤原「俺、どうすればいいのでしょうか?」

北島「まぁ、虐めをした事じゃなく、皆にゴキブリで怖がらせてしまったという事では、反省文を書いて貰おうか」

藤原「はい……」


 暗転。


 明転。


 職員室。

 北島、板付き。


藤原「(舞台上手から登場)失礼します。北島先生いらっしゃいますか?」

北島「おう、藤原。どうした?」

藤原「何か、最近クラスの皆が優しいんです」

北島「良かったじゃないか」

藤原「いや、何か皆俺の事怖がっちゃってて……」

北島「何で?」

藤原「何か、あのゴキブリの騒動の一件以来、皆が俺の事を神様みたいな目で見てくるんです。触らぬ神に祟りなし、みたいな」

北島「あぁ、まぁ、アレは衝撃的だったからなぁ」

藤原「皆とにかく優しくて、怖がってるんです。俺、そういうの耐えられないから、『そんなに怯えてどうしたの?』って聞いたんです」

北島「うん」

藤原「顔を向けただけで、『ゴキブリは!ゴキブリだけは!』って顔を覆い隠して逃げていくんです」

北島「お、おう……」

藤原「皆を怖がらせてしまったのなら謝るから、いつもみたいに色々やってよ!って言っても皆逃げていくんです……俺の何がいけなかったんでしょう……」

北島「まぁ、認識の差だよね」

藤原「今まで通り皆と過ごしたいのに、皆俺の事避けて行ったり、妙に優しくしたり……今までの友情はどこにいったんだろうって思ってしまって……」

北島「今までのが友情……?」

藤原「先生からも言ってくれませんか?俺の事、虐めるの止めてくれって」

北島「あ、それを虐めだと感じちゃうんだ」




―――終わり

『海賊』



・登場人物


 船長

 副船長



・舞台


 海賊船





 明転。



 海賊船。長椅子一つに樽一つ。

 SE、ファンファーレ。

 船長、副船長、板付き。


船長「出航だ!」

副船長「おー!」

音声「おー!」


 SE、帆を張る音。


副船長「遂に宝探しに向けて、出航しましたね!」

船長「あぁ」

副船長「これからどんな困難が待ち受けていても、俺はずっと、船長に着いて行きます!」

船長「あぁ。頼りにしているぞ」

副船長「はい!さぁ、航海が始まりましたが、俺、何すれば良いですか?」

船長「そうだな、まず、肩を貸してくれ」

副船長「どうしたんですか!?病気とか怪我でもしましたか!?」

船長「酔った」

副船長「えぇ!?船酔いですか!?」

船長「あぁ」

副船長「まだ出航して五分も経ってないですよ!?」

船長「すまん。なるはやで頼む」

副船長「あ、はい……(船長に肩を貸し、長椅子まで運んであげる)だ、大丈夫ですか……?」

船長「大丈夫じゃない。ウボエー!(樽に)」

副船長「あぁ、もう(背中を擦ってあげる)」

船長「あぁ、吐いたら大分、楽になった」

副船長「全くもう。船酔いになる海賊の船長がどこにいるんですか」

船長「だって船、乗った事無いんだもん」

副船長「えぇ?船乗った事無いんですか?海育ちじゃないんですか?」

船長「山育ちでーす。海は今回、初めての試みでーす」

副船長「よくそれで海賊になろうと思いましたね」

船長「山で山羊を追いかけ回してるより、楽して稼げそうだと思ったんだもん」

副船長「楽な訳無いじゃないですか。実際こうやって船酔いしてるし」

船長「まさか船に弱いなんて誰が想像出来ただろうか」

副船長「こっちのセリフですよ」

船長「あぁ……この生活が後どれくらい続くんだろうか……」

副船長「先が思いやられますね」

船長「少しは労わってくれ」

副船長「船酔いしてる船長に対しての労わりの言葉が全く思い浮かびません」

船長「酷い。俺はずっと船長に着いて行きますって言ったじゃないか」

副船長「船に乗っただけでこんなに弱り切ってる船長を見てたら、もう心が折れそうです」

船長「おいおい、宝のありかを知ってるのは俺だぞ?俺が居なきゃこの宝探し、成功しないぞ?」

副船長「はぁ、まぁ、そうですね。というかそもそもの話、山育ちの船長がどうやって宝のありかを突き止めたんですか?」

船長「そりゃあ酒場の客の与太話を聞いてさ」

副船長「はぁ?じゃあ信頼性薄いじゃないですか」

船長「そんな事は無い。実際の海賊から聞いたんだからな」

副船長「地図はどうしたんですか?」

船長「その海賊から譲り受けた」

副船長「何そのコミュニケーション能力の高さ……てかそれじゃあその宝、その海賊が既に見付けて持ってっちゃったんじゃないですか?」

船長「あっ、その発想は無かったなぁ」

副船長「おいおいおい!どうするんですか、この航海!」

船長「どうしようね……」

副船長「後悔する前に引き返しましょう」

船長「上手い事言うね」

副船長「上手いと思ってんじゃねぇよ!」

船長「すみません」

副船長「とにかく俺、船員に伝えてきます!」

船長「何て?」

副船長「宝のありかは船長の妄言だったって事ですよ!」

船長「待て。それはマズイ」

副船長「何でですか?」

船長「そんな事言ったら、きっと怒られると思う」

副船長「怒られるだけで済まないと思いますよ。きっとフルボッコにあって、海の藻屑になるでしょう」

船長「そんな事されんの!?何でそんな酷い事を!?」

副船長「当たり前でしょう。全員が職と生活を捨てて、一大決心でこの航海に挑んでんですから。その期待を裏切ったらタダじゃ済まないでしょう」

船長「俺、そんな重責を背負ってたのか……」

副船長「えぇ……どんな気持ちで挑んでたんですか?」

船長「いや、皆で仲良く宝探し始めな~い?くらいのテンションだったんだけど」

副船長「んなテンションが原因でここに居る全員が着いていく訳無いでしょう!」

船長「じゃあ人望かぁ~」

副船長「宝目当てに決まってるでしょう!下手すりゃ宝が見付かった段階で殺されますよ!?」

船長「何で!?」

副船長「宝のありかを知ってるのは船長だけだから、宝が見付かった段階で分け前を増やす為に船長を殺す輩がこの中にいる可能性だってあるんですから」

船長「そんな!俺達は一致団結してこの旅に出た仲間じゃないか!」

副船長「その可能性だってあるって事です。裏切者がいるリスクくらい考えておいて下さいよ」

船長「皆、良い子ばかりだから絶対そんな事しないって信じてる」

副船長「さっきから気になってたんですけど、何故にそんなにピュアなんですか?」

船長「は?」

副船長「人の言う事を信じて海賊になるし、この船に危険人物はいないと信じているし。よくそれで海賊になろうと思いましたね。危機感、無さ過ぎでしょう」

船長「パパとママに大切にされてたからね。純粋な子に育ってほしいと、蝶よ花よと育てられたからね」

副船長「パパとママて……一体幾つなんですか」

船長「三十四歳だけど?」

副船長「気持ち悪……」

船長「何だと?」

副船長「三十四にもなって人を疑う事もしないとか、教育方針、絶対間違ってるよ」

船長「何だとお前!」

副船長「だってそうでしょう?純粋馬鹿のおかげでこちとら迷惑が掛かってんですから」

船長「おい!俺のパパとママの事は何言っても良いが、俺の事だけは馬鹿にするな!」

副船長「逆、逆!両親を労わりなさいよ!」

船長「だって俺は、俺が一番可愛いんだもん!」

副船長「結構な屑ですね!?」

船長「うわぁ~!また俺の事馬鹿にした~!船酔いはするし、副船長には馬鹿にされるし、部下からは殺されるかもしれないし、もう嫌だよ、パパ、ママ~!」

副船長「子供ですか!全く、とにかく俺、船員に伝えてきますね(舞台下手に退場)」

船長「待って待って!うっ、ウボエー!(樽に)」

副船長「もう宝なんて無いんですから諦めて下さい」

船長「宝はある!絶対あるんだー!」

副船長「はいはい。お疲れ様でした」


 暗転。


 明転。


 海賊船。

 船長、副船長、舞台下手から登場。副船長、宝物を持っている。


船長「あぁ……はぁ……へぁ……」

副船長「まだ船酔い続いてるんですか?」

船長「あぁ……それに加えてあの険しい洞窟……何であんな分かりにくくて面倒臭い所に宝を隠すんだろう……」

副船長「楽に手に入る所にあったらすぐに持ってかれちゃうじゃないですか」

船長「そりゃそうだけど、俺達、海賊にも配慮した所に隠して欲しいものだよ……」

副船長「そもそも他人に取られたくないんだから、配慮も糞もないでしょう」

船長「ああ言えばこう言う……」

副船長「俺のせいじゃないでしょ」

船長「しかし、俺の言った通りだっただろ?宝はあったじゃないか」

副船長「まさかあんな適当な情報で本当に宝があるとは」

船長「船員から宝が見付からなかったら処刑するっていう、猶予を貰ったおかげだな」

副船長「しかし何でお宝があったんですかね?てっきりもう取られてるものだと思ってましたが」

船長「だから言った。宝は絶対あるって」

副船長「そうでしたね」

船長「あれ~?もう別の海賊に先に取られてるって言ってなかったっけ~?」

副船長「それはですね……」

船長「散々人の事、純粋馬鹿だの屑だの言ってたのは誰でしたっけ~?」

副船長「それは……すみませんでした」

船長「ちゃんと謝ったから許す」

副船長「ウザッ……」

船長「何か言った?」

副船長「いえ、何も。それにしても良かったですね。正直者が馬鹿を見るって事にならなくて」

船長「また馬鹿にした~!」

副船長「してないですって。ならなくて良かったって言ったじゃないですか」

船長「本当ぉ?」

副船長「本当、本当」

船長「きっと見付からなくて俺に宝の地図を預けたんだな」

副船長「そして俺達が見付けたと」

船長「確かに分かりにくい所にあったしな、宝。俺達が見付けると信じて託してくれたんだろうな」

副船長「でも何で海賊でも何でもない船長に託したんですかね?」

船長「人望じゃなぁ~い?」

副船長「チッ」

船長「何か舌打ちが聞こえたけど」

副船長「気のせいです。ところで、周りに俺達を狙う海賊、いないですよね……?」

船長「何で?」

副船長「宝を見付けたところで横取りをするとか、考えられるでしょう?」

船長「マジで!?そんなズルい事考える人この世にいるの!?」

副船長「ピュアがまた出たよ……」

船長「(辺りを見渡す)…………大丈夫そう!」

副船長「そうですか。じゃあ、帰りましょう。俺達の故郷へ」

船長「おう!出航だ!」

副船長「おー!」

音声「おー!」

船長「(樽まで走っていく)ウボエー!」

副船長「大丈夫ですか?」

船長「ちょっと疲れた……後は任せる」

副船長「はい。おやすみなさい、船長」

船長「あぁ……ウボエー!」


 SE、帆を張る音。


副船長「正直の頭に神宿る。正直な人には必ず神や天の助けがある、か」

船長「ウボエー!」

副船長「あぁもう、五月蠅ぇ!」

船長「ウボエー!」
















―――終わり

『拷問』



・登場人物


 藤原

 北島



・舞台


 敵アジト






 明転。


 敵のアジト。椅子が1つにテーブル1つ。テーブルの上には拷問器具がいくつかある。

 北島、板付き。

 藤原、板付き。目隠しをされ、椅子に括り付けられている。


藤原「……うぅっ……」

北島「目が覚めたか(目隠しを取る)」

藤原「ここは……?」

北島「俺達のアジトだ」

藤原「俺は……攫われたのか?」

北島「察しが良いな。お前の知ってる情報、全てを吐いてもらうぞ」

藤原「俺が吐くと思うか?」

北島「嫌でも吐いてもらうさ……(指折りを手に取る)」

藤原「何だ、それは?」

北島「指折りさ。これで吐いてもらうぞ」

藤原「俺は暴力には屈しないぞ」

北島「そうか。全てを吐いたら、ここを出られるかもしれないぞ?」

藤原「何だと……?」

北島「さぁ、聞こうか。お前達のアジトは何処だ?」

藤原「そんな事、言える訳無いだろう」

北島「そうか。じゃあ、まずは軽く、一本……」

藤原「六本木のバー『カルロッソ』の地下だ……」

北島「そうかそうか。素直な奴は好きだぞ。次に、お前の仲間は何人いる?」

藤原「それこそ言える訳が無い」

北島「じゃあ、素直になってもらおうか……(指折りを見せる)」

藤原「俺を入れて、本部には28人、それぞれの支部に18人ずつだ……」

北島「そうか。じゃあ、次に、お前の雇い主は誰だ?」

藤原「そんな事、知らない」

北島「じゃあ……(指折りを見せる)」

藤原「西岡聖弘、株式会社小川産業の、筆頭株主だ」

北島「おう。これも答えたか。その男の居場所は何処だ?」

藤原「知らない」

北島「(指折りを見せる)」

藤原「杉並区の2丁目にある大きな屋敷だ」

北島「そうか。分かった。そいつの家族構成はどうなってる?」

藤原「何故そんな事を聞く?」

北島「攫って人質にするんだよ」

藤原「そんな事を聞いたら余計言えない」

北島「(指折りを見せる)」

藤原「妻、息子夫婦、孫娘が二人だ」

北島「成程な。お前達の最大の計画は何だ?」

藤原「言えない約束になってる」

北島「(指折りを見せる)」

藤原「お前達の組織を壊滅させて、ここら一体の指揮を俺達の組織が取る事だ」

北島「そうか。それは食い止めんとな。武器は何だ?何処に保管してある?」

藤原「言えない」

北島「(指折りを見せる)」

藤原「トカレフ百二十丁、横浜のコンテナに置いてある」

北島「そうか。すぐに処理しよう」

藤原「…………」

北島「最後に聞こう。今、全部、言った事は本当か?嘘は無いか?」

藤原「さぁ?どうだかな」

北島「(指折りを見せる)」

藤原「嘘は無い。全て本当だ」

北島「そうか。おい(無線に)。今の話は全部本当か?あぁ、うん。分かった(無線を切る)お前の言った事は全て本当だったようだ。ご協力、感謝する」

藤原「クソッ……!」

北島「…………」

藤原「……もう聞きたい事は無いのか?」

北島「無い。全部聞いた」

藤原「そうか。俺ももう、あそこへは戻れないな……」

北島「そうだな……」

藤原「…………」

北島「……あのさぁ」

藤原「何だ?」

北島「お前、口、軽すぎない?」

藤原「え?」

北島「俺、拷問せずに全部、聞き出しちゃったんだけど」

藤原「まぁ、そうだな」

北島「普通こういうのって、聞き出す内容に嘘があるとか、それか一切聞き出せないまま殺すってのが定石じゃない?」

藤原「そういうもんかね?」

北島「そりゃそうだろ。普通、忠誠心が勝って、仲間の事とか雇い主の事とか言わないだろ」

藤原「自慢じゃないが、俺は自分が可愛くて、痛い目に遭うくらいなら全て曝け出して助かった方が良いという考えでな」

北島「本当に自慢にならない……」

藤原「さて、俺は全てを吐いたんだ。自由にしてくれ」

北島「は?自由にする訳無いだろ。お前は今から俺が殺す」

藤原「何で!?協力してやったじゃん!」

北島「お前みたいなやつ、ここでの事全て外に漏らすかもしれない。今ここで殺す」

藤原「話が違う!全てを吐いたら、無事にここを出られるかもしれないって言ってたじゃないか!」

北島「『無事に』なんて言ってない。ただ、ここを出られるかもしれないと言っただけだ。安心しろ。お前は死体となって外に出られるからな」

藤原「嫌だー!死にたくなーい!」

北島「さよならだ(銃を手に取る)」

藤原「待て待て待て!他に何か知りたい情報は無いか!?何でも話すぞ!」

北島「何でも?」

藤原「何でも!」

北島「じゃあ……お前の直属の上司は誰だ?」

藤原「枝村拓」

北島「家族構成は?」

藤原「母親と父親、あと兄が一人。兄は嫁と15歳の息子がいる」

北島「お前と同じ地位の奴は何人いる?」

藤原「俺を含めて3人だ」

北島「そいつらの名前は?」

藤原「米山博人と儀間康太だ」

北島「そいつらの家族構成は?」

藤原「米山は妹が一人。儀間は母親と弟が一人だ」

北島「本当に何でも答えるな。プライドとか無いの?」

藤原「プライドと命だったら命を取る。くだらないプライドは、捨てる!」

北島「一切、格好良くないからな」

藤原「他は?他に聞きたい事は?」

北島「いや、もう無いよ」

藤原「そんな事無いでしょ?他にもっと聞きたい事あるでしょ?作戦内容の詳細とか、全員の家族構成とか、武器の出処とか、何でも話すぞ!」

北島「何でそんなに話したいの……」

藤原「話してる間は殺されないでしょ?」

北島「そりゃあ、まぁ」

藤原「だから俺は話し続ける!」

北島「みっともない……」

藤原「俺は御覧の通り記憶力は良い!何でも事細かに話す事が出来る!こんな人材を逃して良いのか!?」

北島「何?俺達の組織に入りたいの?」

藤原「生き延びられるならそうしたい!」

北島「お前みたいな口が軽いお喋り、誰が仲間にしたいと思うか」

藤原「そんなぁ……」

北島「これまでだ……」

藤原「待って待って待って!」

北島「五月蠅いぞ」

藤原「死にたくない死にたくない死にたくない!絶対死にたくない!痛いの嫌だ痛いの嫌だ!のんびり生きたいのんびり生きたいのんびり生きたい!」

北島「おおう、口火を切ったように」

藤原「安らかに逝きたい安らかに逝きたい!老衰が良い老衰が良い!苦しまずに死にたい苦しまずに死にたい!というか生きたい生きたい生きたい!助けてくれ助けてくれ助けてくれ!(暫く命乞いをする)」


 SE、無線の着信音。


北島「ちょっと待て。待て。待ーて!待て!待てだ!待て!な!」

藤原「(黙る)」

北島「北島だ。あ、ボス。はい、はい。えっ、良いんですか?はい、はい……分かりました(無線を切る)。お前は俺達の組織に入ってもらう事になった」

藤原「えっ!?何で!?」

北島「その記憶力と信頼性を評価されてな。確実な情報網として、お前はお前の組織を壊滅させる為に働いてもらうぞ」

藤原「って事は、俺、殺されなくて済むの!?」

北島「それでも、嘘を吐いたら即殺す」

藤原「嘘なんか吐く訳無いじゃないですか!生き延びられるなら何でもします!宜しくお願いします!」

北島「ほら、こっちに来い(藤原を立たせる)」

藤原「はい!」

北島「おい!こいつを例の部屋に放っておけ!」


 北島、藤原を突き放す。

 藤原、舞台上手に退場。


北島「確実な情報網か……裏切者の末路って案外こんなもんなのかもな」














―――終わり

『寝てない』



・登場人物


 北島

 枝村

 藤原

 西岡



・舞台


 高校の教室






 明転。


 学校の教室。机が四つに椅子が四つ。

 西岡、北島、板付き。


西岡「ふわぁ~……」

北島「眠そうだな」

西岡「あぁ、昨日あんま寝てなくてな」

北島「また夜更かししたのかよ」

西岡「まぁな」

北島「授業中寝るなよ?」

西岡「いやぁ、寝るわ。多分。その時はノート写させてくれよな」

北島「またぁ?」

西岡「頼むよ。この通り」

北島「良いけど、缶コーヒー一本な」

西岡「助かる」


 枝村、藤原、舞台上手から登場。


枝村「おいーっす」

藤原「はよー」

北島「おう、おはよう」

西岡「ぐもーにん」

枝村藤原「ふわぁ~……」

北島「何だ、お前らも眠そうだな」

枝村「も?」

北島「西岡も昨日夜更かしして眠そうだったんだよ」

藤原「そうなのか。俺達は昨日オンラインでゲームしてて夜遅くまで起きてたんだよ。なぁ?」

枝村「うん」

北島「そうなのかー。お前らも授業中寝たりすんなよ?」

枝村「北島、ノートは任せた(鞄から缶コーヒーを取り出して北島に渡す)」

藤原「俺も(鞄から缶コーヒーを取り出して北島に渡す)」

北島「お前らもまたかよ。胃がたぷたぷになっちゃうよ。まぁ良いけど」

西岡「あー!ねみー!」

枝村「俺もー」

藤原「俺もー」

西岡「昨日4時間しか寝てないからすげー眠いわー」

枝村「4時間も寝られてんなら十分だろ。俺なんか3時間だぜ?」

西岡「マジで?何してたの?」

枝村「コイツとのゲーム終わった後、興奮してて寝られなかったからゲームの練習してた。布団に入ったのが4時頃だったから3時間しか寝てないんだわ」

西岡「あそー」

藤原「3時間とか羨ましー。俺2時間だわー」

北島「何してたん?」

藤原「コイツとのゲームが終わった後、俺もゲーム練習しててさ。気付いたら5時頃だったから2時間しか寝れてないんだわ」

北島「あそー。あんま夜更かしすんなよ?背ぇ伸びないぞ」

藤原「うるせっ」

西岡「そっかー。二人共それくらいしか寝れてないのかー……でも俺も布団に入ったのが3時頃ってだけで、実際に寝付いたのは5時頃だったから実質2時間くらいしか寝てないわー」

枝村「俺も布団に入ったのは4時頃だけど、スマホ弄ってたから、実際寝たのは5時半くらいだから実質1時間半しか寝てないわ」

藤原「俺もねかなか寝付けなくてうだうだしてたから寝たのは6時頃だな。だから実質1時間しか寝てないわー」

西岡「……あ、俺、途中でトイレに起きたからリセットされてるわ。そん時確か6時半くらいだったから、実質三十分しか寝てないわー」

枝村「あっ、ズルッ。俺もトイレに起きたから実質20分しか寝てないわー」

藤原「俺、結局、熟睡出来なかったから10分くらいの仮眠程度しか寝れてないわー」

西岡「俺もその後熟睡出来なかったから実質寝てないわー」

枝村「お前ズルいぞ。トイレに起きる前、寝てるだろ」

西岡「二度寝が本寝だろ」

藤原「俺は仮眠とも言えないかもしれないから実質寝てないわー」

枝村「じゃあ俺だって実質寝てないわー。意識はあったからな」

西岡「それどうやって証明すんの?」

枝村「それはお前らだってそうだろ」

藤原「自己申告制だろ?」

枝村「セコイわー」

北島「ちょちょちょ。ちょっと待って?」

西岡「何?」

北島「何この、寝てない勝負?」

枝村「あん?」

北島「この不毛な戦い、何?何の意味があるの?」

藤原「何の意味も無いよ?」

北島「じゃあ止めなよ。誰が何時に寝ようが関係無いじゃん」

西岡「関係あるよ。なぁ?」

枝村「うん。これは負けられない戦いだ」

北島「どんな戦いだよ」

藤原「男の意地?」

北島「くだらな……」

枝村「何がくだらない。男のプライドがそこに掛かってるんだぞ。」

北島「くだらないプライド……それ何がしたいの?」

西岡「寝てなくて限界を迎えてるのに、そのハンデを背負っても学校に登校して授業を受けるっていう格好良さを競ってるんじゃないか」

北島「寝るじゃん。コレ(缶コーヒーを指す)」

藤原「授業自体は受けるんだから立派だろ」

北島「授業聞かなかったら意味無いだろ」

西岡「とにかく俺達は寝てないのに学校に来たの。極限状況で勉強しに来てんだから格好良いだろ」

北島「どこが?」

藤原「ハンデを背負って、戦場に向かう……これぞブシドー」

北島「しっかり寝て授業に挑んだ方が立派だろ」

枝村藤原西岡「元も子もない事言うな」

北島「言っちゃったよ。元も子も無いんじゃん」

枝村「そういうお前はどれくらい寝たんだよ」

北島「俺は昨日、十時間しか寝てないよ」

西岡「寝過ぎぃ!」

藤原「え?昨日何時に寝たの?」

北島「二十一時」

枝村「昨日帰ってから何してたの?」

北島「昨日は塾があったから十九時に家に帰ってきて、そのままご飯食べて宿題して風呂入って寝た」

枝村「気持ち悪……」

北島「何でだよ」

藤原「まぁまぁ。毎日そんな調子じゃないんだろ?」

北島「いや?いつもこんな感じのスケジュールだぞ?いつもなら十九時に寝てる」

枝村「気持ち悪……」

北島「だから何でだよ」

枝村「お前、趣味とか無いの?」

北島「読書」

西岡「じゃあ家帰ってから読むとか無いの?」

北島「無いなぁ。家だと何か読む気になれなくて」

藤原「じゃあいつ読んでんの?」

北島「往復二時間の電車の中」

枝村「何でそんな寝てんの?趣味?」

北島「いや、俺、人より多くの時間を寝ないと回復しないみたいでさ。だから家に帰ったらすぐに寝るようにしてる」

西岡「それでよくこの学校の授業に着いてこられるな」

北島「だから土日祝日に滅茶苦茶、勉強してる。一週間分」

藤原「お前凄ぇな」

北島「それ程でも」

枝村「羨ましいわー。そんなに寝れて。それに比べて俺達は」

枝村藤原西岡「寝てないもんなー」

北島「もう止めろ。その寝てない自慢」

枝村「だって事実だし。なぁ?」

藤原西岡「うん」

北島「いいから、もう。ほれ、HR始まんぞ」

枝村「はいはい」


 暗転。


 明転。


 北島、枝村、藤原、西岡、板付き。


北島「おーい、もう放課後になったぞー」

枝村「んお……マジで一日寝て過ごしたな」

藤原「まだかったるいわー……」

西岡「でも帰らなきゃな……」

北島「その前にノート写すんだろ?」

枝村「あぁ、そうだったな。頼むわ」


 北島、ノートを渡す。

 枝村、藤原、西岡、ノートを受け取り、自分のノートに写す。


北島「これに懲りたら、夜、ちゃんと寝ろよ?」

枝村藤原西岡「は~い……」


 暗転。


 明転。


 北島、板付き。

 枝村、藤原、西岡、舞台上手から登場。


枝村藤原西岡「うーっす……」

北島「おいっす。皆さんお揃いで」

枝村「おう……」

北島「また眠そうだな。夜更かししたのか?」

藤原「まぁ……」

西岡「うん……」

北島「昨日で懲りたろ。何でまた夜更かしなんてしたんだよ?」

枝村「昨日、昼間寝てたもんだから、眠れなくて……」

北島「お前らも?」

藤原西岡「うん……」

北島「でも少しは寝たんだろ?」

枝村「俺は実質、一時間しか寝てない……」

藤原「俺は三十分……」

西岡「俺は寝てない……」

枝村「あ、じゃあ俺も寝てない!」

藤原「俺だって寝てない!」

西岡「いや、俺の方が寝てない!」

枝村「いやいや、俺の方が!」

藤原「俺だって!」

北島「だーっ!もういいわ!寝てない自慢は!」

枝村藤原西岡「でも!」

北島「どうせ寝るんだろ!?さっさと缶コーヒー出せ!」

枝村藤原西岡「……はい」


 枝村、藤原、西岡、鞄から缶コーヒーを取り出して北島に渡す。


北島「眠気覚ましにこれ飲んで授業受けろ」

枝村「そんな気力無い……」

藤原西岡「右に同じ」

北島「起きてなきゃ、また明日も同じ事になるぞ」

枝村「その時は……」


 枝村、藤原、西岡、鞄から缶コーヒーを取り出して北島に渡す。


枝村藤原西岡「宜しくお願いします!」

北島「少しはそのままの意味で学習しろ!」























―――終わり

『勉強してない』



・登場人物


 北島

 藤原



・舞台


 高校の教室






 明転。


 高校の教室。机が二つに椅子が二つ。

 北島、板付き。勉強している。藤原、舞台上手から登場。


藤原「うぃーっす」

北島「おはよう」

藤原「おう。何?テスト勉強?」

北島「うん。今日から中間テストじゃん」

藤原「あぁ、そうだったな」

北島「今、最後のチェックしてるところ」

藤原「真面目だなぁ、相変わらず。昨日、帰ってからとかやんなかったの?」

北島「やったけど、昨日はあんまり勉強してなかったから、最後の悪あがきしてる感じ」

藤原「そっかー」

北島「そういうお前はどうなんだよ?」

藤原「俺?俺は全然、勉強してないよ」

北島「またまたぁ」

藤原「いや、マジマジ。全然勉強してないから」

北島「言うて俺も勉強してないよ。結構ピンチ」

藤原「そうかー。俺も最後の悪あがきするか」

北島「やっとけやっとけ」

藤原「なぁ、賭けしようぜ」

北島「何の?」

藤原「どっちがテストの点数が高いか」

北島「お、やる?良いよ、乗った。缶コーヒー一本な」

藤原「良いぜ。よし、勝ってやる」


 暗転。


 SE、チャイムの音。


 明転。


高校の教室。

 北島、藤原、板付き。


藤原「テスト返されたな」

北島「結構難しかったな」

藤原「あぁ。結構間違えた」

北島「このテストが返されるまでのドキドキは結構心に来るな」

藤原「そうだな。なぁ、現国、何点だった?」

北島「俺?そんな高くないよ?」

藤原「いいから。何点?」

北島「現国90、数学88、化学92、日本史89、英語98」

藤原「おー、凄ぇ」

北島「もうちょっと勉強しておくんだったな」

藤原「嫌味~」

北島「そういうお前は?」

藤原「俺は全然勉強してなかったからな」

北島「いいから。何点だよ?」

藤原「現国26点、数学13、化学16、日本史21、英語三十」

北島「は?」

藤原「あー、勝負に負けたか~。お前、コーヒーはブラックで良いんだよな?」

北島「待て待て。は?何?お前何でそんなに点数低いの?」

藤原「まぁな」

北島「勉強してたんじゃないの?」

藤原「だから言ってるだろ。全然、勉強してないって」

北島「いやいや、それってさ、仮に及第点でもちょっと低めの点数取っても言い訳が出来るように、とかさ、高い点数取っても全然、勉強してなくても勉強出来ますっていうマウントを取る為の、全然、勉強してないってやつでしょ?」

藤原「俺、そういう言い訳みたいな嘘吐くの嫌いなんだよね」

北島「いや、嘘っていうかさ、様式美、みたいなやつじゃん」

藤原「嘘は嘘でしょ?」

北島「いや、まぁ、そう言われるとそうかもしれないけど……」

藤原「じゃあコーヒー買ってくるかぁ」

北島「待て待て待て。何で勉強してないの?」

藤原「遊んでたから」

北島「何で?これ成績に響くよ?」

藤原「別に良いかなぁって」

北島「何が良いの?大学進学すんだろ?」

藤原「俺、芸人目指すから成績とかあんまり関係無いんだよね」

北島「そうなの?でも勉強してた方が、ネタ作りとかに役立つんじゃないの?」

藤原「そういうもんかなぁ」

北島「最近は高学歴芸人とか増えてるし、勉強しといて損は無いと思うけどな」

藤原「そういうもんかね?」

北島「そうだよ。お前の夢は応援するからさ、一緒に大学行こうぜ。大学行ってからでも芸人になるのは遅くないと思うぜ」

藤原「そっかぁ」


 暗転。


 明転。


高校の教室。

 北島、板付き。藤原、舞台上手から登場。


藤原「うぃーっす」

北島「おはよう」

藤原「おう。今日から期末試験だな」

北島「今度は勉強したか?」

藤原「まぁな」

北島「結構な自信だな」

藤原「前回、親にこっ酷く怒られたし、何より追試が怠かったから今回はかなり勉強した」

北島「今回どの教科も範囲が広かったろ。俺でさえ自信が無いのに」

藤原「何故か今回は行けそうな気がする。全教科満点行ける気がする」

北島「フラグ~」

藤原「謎の自信が俺を勝利へと導く」

北島「じゃあ今回も賭けをするか?」

藤原「そう言われると自信が無くなってくるな」

北島「何だ?前回はそっちから仕掛けてきたのに」

藤原「そりゃそうだけど」

北島「勉強してきたんだろ~?ま、今回も俺の勝ちだろうがな」

藤原「流石にカチンと来たぞ。良いだろう、受けて立つ」

北島「そうこなくっちゃ」


 暗転。


 SE、チャイムの音。


 明転。


 高校の教室。

 北島、藤原、板付き。


藤原「テスト、全部返ってきたな」

北島「あぁ。今回は自信あるよ」

藤原「ほほう?何点?」

北島「現国98、数学99、化学96、日本史97、英語98」

藤原「凄ぇな」

北島「だろぉ~?お前は?」

藤原「俺はちょっと恥ずかしいな」

北島「何だ?また低いのか?」

藤原「いや、高いよ」

北島「何点だよ?」

藤原「オール百点」

北島「は?」

藤原「俺の勝ち~。カフェオレな」

北島「お前、マジで勉強してきたの?」

藤原「だから言っただろ。今回はかなり勉強したって」

北島「普通それフラグだろ。何でマジで勉強してきてんだよ」

藤原「お前が俺の夢を応援するって言ってきたんだろ。それを励みに真面目に勉強してきたんだよ」

北島「それは凄いけど、納得がいかねぇ」

藤原「何?俺はどうすれば良かったの?」

北島「なんつーかさぁ、言ってる事と逆の結果になるのが普通じゃん?」

藤原「そうなの?」

北島「言葉通りの結果になるとか普通思わんだろ」

藤原「だから俺は嘘を吐くのが嫌いなの」

北島「正直過ぎるのもどうかと思うぞ」

藤原「まぁ良いじゃん。とりあえず俺は大学進学目指すよ」

北島「そうか。どこ?」

藤原「東大」

北島「東大。マジで?」

藤原「うん。高学歴芸人目指すならとりあえずそこかなって」

北島「とりあえずで目指す所じゃないだろ」

藤原「じゃあどこなら良いの?」

北島「いや、まぁ、どこって言われてもな……」

藤原「とにかく目指すよ、東大」

北島「まぁ俺も東大目指すつもりだったから、一緒に頑張ろうな」

藤原「おう。絶対合格してやる」

北島「何か、ここまで来ると、本当に受かりそうで怖いな」


 暗転。


 明転。


 高校の教室。

 北島、板付き。藤原、舞台上手から登場。


藤原「うぃーっす」

北島「おはよう」

藤原「おう」

北島「昨日、東大の合格発表だったな。合否メール来た?」

藤原「あぁ」

北島「どうだった?」

藤原「お前は?」

北島「俺は受かったよ」

藤原「何学部だっけ?」

北島「法学部」

藤原「そうか。おめでとう」

北島「ありがとう。で、お前は?」

藤原「受かったよ」

北島「そうか。おめでとう」

藤原「ありがとう」

北島「何学部だっけ?」

藤原「お前程じゃないよ」

北島「そんな事無いだろ。どこ?」

藤原「医学部」

北島「い、医学部!?お前、医者になるの!?」

藤原「いや、目指すのは芸人」

北島「高学歴過ぎるだろ。素直に医者になった方が金になるじゃん」

藤原「いや、俺はあくまで笑いに拘りたい」

北島「凄い拘り……」

藤原「そういうお前は将来何になるの?」

北島「一応、弁護士」

藤原「凄いじゃん。頑張れよ」

北島「ありがとう。お前も頑張れよ」

藤原「おう」

北島「目指せM―1優勝」

藤原「そうだな」

北島「コンビの相手は?」

藤原「え?お前」

北島「俺ぇ!?」

藤原「一緒に目指そうぜ、M―1」

北島「俺には無理だよ」

藤原「お前のツッコミは光るものがある。お前とならやれる」

北島「そ、そうかな……」

藤原「俺は卒業まで二年、お前より遅れるから、お前はその間自由にしてて良いよ」

北島「自由って、弁護士はそんな気軽にやれるものじゃないぞ?」

藤原「俺だって医学部は気軽にやれるもんじゃないよ。でもこれを乗り越えたら、二人で芸能界に入ってインテリ芸人で売れようじゃないか」

北島「お前が言うと、マジでそうなりそうで怖い」









―――終わり

『超能力者』



・登場人物


 北島

 藤原



・舞台


 北島宅






 明転。


 北島宅。テーブル1つに座布団2つ。

 北島、藤原、舞台上手から登場。


北島「まぁ座れよ(座る)」

藤原「おう(座る)」

北島「いやぁ~、まさかお前の言った通り、あのパチスロの台で大当たりが連発するとはな。お前、予知能力でも持ってんじゃないの?」

藤原「いやぁ……ハハハ……」

北島「あ、これお礼ね(10万円程藤原に渡す)」

藤原「あぁ、サンキュ。えっ、こんなに良いの?」

北島「お前の予言通りだったんだ。それにそれだけ儲からせてもらったし、お礼だよ。それにお前、今日ボロ負けしてたじゃないか。お見舞いだと思って受け取ってくれ」

藤原「何か悪いな」

北島「良いって事よ」

藤原「じゃあ、遠慮無く」

北島「ってか自分であの台打てば良かったのに」

藤原「まぁ、当たるか分かんなかったし。そんな気がするだけって感じで言っただけだから」

北島「あっそー。で、話って何?」

藤原「北島」

北島「何?」

藤原「俺達、友達だよな?」

北島「当たり前じゃんか。小学校来の友達だろ」

藤原「だよな……」

北島「どうしたんだよ。そんな深刻な顔して」

藤原「俺、今まで二十年間、お前に隠してた事があるんだ」

北島「何?」

藤原「驚かない?」

北島「だから何?」

藤原「俺、超能力があるんだ」

北島「は?」

藤原「俺、超能力者なんだ」

北島「超能力者ぁ?おいおい、何の冗談だよ?」

藤原「いや、本当なんだ」

北島「……マジ?」

藤原「マジ」

北島「ふーん?どんな能力あんの?」

藤原「予知能力」

北島「じゃあ何か言ってくれよ。これから起こる出来事を」

藤原「後、二分で今年の宝くじの当選番号が発表される。それを言い当てる」

北島「ふぅん?じゃあ言ってみろよ(スマホを取り出して弄る)」

藤原「177457」

北島「……もう一回言って?」

藤原「1・7・7・4・5・7」

北島「……合ってる……凄ぇ!」

藤原「分かってもらえたか?」

北島「いや、いやいやいや。裏サイトから既に流通してる内容を言ってるだけかもしれん。他は?」

藤原「さっきのパチスロ」

北島「それが?あっ、あれってお前が予知したから当たったって事!?」

藤原「そうなんだ」

北島「はぁ~……マジかぁ……」

藤原「引かない?」

北島「何で?」

藤原「だって、気持ち悪いって思わない?」

北島「別に?凄いじゃん、お前」

藤原「そ、そうかな……」

北島「それで?他に何が出来んの?」

藤原「当たり馬券が分かるよ」

北島「マジで!?もう絶対勝つじゃん!どれ?」

藤原「明日のレースで1‐8‐3で3連単出るよ」

北島「マジかよ!?どこ?どこの馬場?」

藤原「それは分からない」

北島「えっ、どゆ事?」

藤原「当たり番号が何か分かるだけなんだ」

北島「えぇ?何それ?他は?」

藤原「オートレースの当たり番号が分かる」

北島「それも番号だけでどこで開かれるか分からない、とか?」

藤原「…………(放心)」

北島「図星かい!他は?」

藤原「競艇の当たり番号が……」

北島「どうせどこで開かれるか分からないんだろ?」

藤原「…………(放心)」

北島「また図星かい!せめて何か言ってくれ!」

藤原「すまん」

北島「もしかして競輪も番号が分かるだけ?」

藤原「うん」

北島「何だよそれー。あんま使えない能力だな」

藤原「あ、でも宝くじは分かるよ」

北島「それも場所は分からないって言うんだろ?」

藤原「いや、売り場が分かる」

北島「本当か~?」

藤原「本当、本当」

北島「じゃあちょっくら買いに行ってくるか」


 暗転。


 明転。


 北島宅。

 北島、藤原、板付き。


北島「おい、先月買った宝くじ、3三十0円しか当たらなかったぞ」

藤原「でも当たったろ?」

北島「結果三十0円儲かったけど、一等じゃねぇじゃん」

藤原「何も一等が当たるなんて言ってないだろ。当たる、しか言ってない」

北島「まぁ、これを繰り返していけばいずれ大金持ちになるかもしれんけど」

藤原「ちなみに俺は今まで宝くじを買ってきた中で、最高で3三十0円しか当たらなかった」

北島「なにそれ。微妙だな。毎回?」

藤原「いや、先に買われてたりする時もあるから、たまに」

北島「地味~」

藤原「そんな事言われても」

北島「まぁ地味に買い続けて当たるのを待つしかないか。それにしてもお前のその能力、あんまり当てにならないな」

藤原「でも当たる時は当たるよ」

北島「まぁそうだよな。先月のパチスロ、当たったもんな」

藤原「あぁ、あれはまぐれだよ」

北島「どゆ事?」

藤原「どこの台が当たるかは分からないけど、何号機かは分かる。それに賭けて一か八かでお前を誘ったら、当たったって事」

北島「外れてたらどうするつもりだったんだよ?」

藤原「冗談で済ますつもりだった」

北島「あっそー。この前聞かなかったけど、他にどんな能力があるの?」

藤原「念動力が使えるよ」

北島「サイコキネシスってやつ?」

藤原「そう」

北島「じゃあ何か動かしてみてよ」

藤原「それが、一時間その対象物を念じていないと動かせないんだよ」

北島「えぇ?不便だな」

藤原「しかも一時間念じる毎に10cmしか動かせないんだ」

北島「何それ。手で動かした方が早いじゃん」

藤原「そうなんだよ」

北島「後は?」

藤原「テレポーテーションが出来る」

北島「それ良いじゃん。自分だけ?」

藤原「いや、10人くらいまでなら行ける」

北島「へー。じゃあ今度の旅行、皆で車使わずに行こうよ」

藤原「それが……」

北島「また何かあんの?」

藤原「うん。一時間移動させるものと移動先を十分に念じないと行けないんだ」

北島「でも裏を返せば、どんな場所でも一時間で行けるんだろ?」

藤原「一時間毎に2mしか移動出来ないんだ」

北島「何それ。じゃあこの脚で移動した方が早いじゃん」

藤原「そうなんだよ」

北島「他は?」

藤原「透視能力」

北島「ほう。何でも見透かせるの?」

藤原「まぁ、大抵の物は」

北島「じゃあ俺のパンツの色は?」

藤原「赤」

北島「……(ズボンを捲る)当たってる」

藤原「まぁこれくらいは」

北島「でも半径何mくらいの物しか分からないって言うんだろ?」

藤原「まぁ、大体半径10mくらいの物なら」

北島「地味~。でもそれで女の人の下着とか見てるんだろ?」

藤原「そんな事しないよ。それじゃあ痴漢と同じじゃないか」

北島「偉いな、お前」

藤原「でも時々、銭湯行った時に壁の向こう側見えちゃう時があるからなかなか湯船から出られなくなる時がある」

北島「何それ。羨ましい。でも男湯で勃っちゃったら周りの人達、恐怖だろうな」

藤原「それな」

北島「じゃあさ、あそこのアパートの二階で右から二番目の部屋あるじゃん?」

藤原「うん」

北島「あそこに住んでる女性が今何してるかとか分かる?」

藤原「それ倫理的に悪いよ」

北島「良いじゃん。見てみてよ」

藤原「気が引けるなぁ……どれ……あ、これから風呂に入ろうとしてる」

北島「マジで?どんな下着?」

藤原「真っ赤なブラとパンツ」

北島「マジか。胸は?」

藤原「そこそこデカい。Fカップかな」

北島「へー。ってかこれお前が楽しいだけで俺全然楽しくない。しかも本当に合ってるのか分からんし」

藤原「あの、ここまで力入れて見るの疲れるんだけど」

北島「あぁ、もう良いよ。自分の意思で見ようとするだけじゃなくて、勝手に発動しちゃう時もあんの?」

藤原「時々ね。でもなるべく見ないようにしてる」

北島「偉い~。他は?」

藤原「相手の心が読める」

北島「おぉ、凄そう。じゃあ俺の心の中、読める?」

藤原「じゃあ、一つフルーツを思い浮かべて?」

北島「……はい、思い浮かべた」

藤原「桃と林檎とバナナとキウイを思い浮かべて、最終的に桃を選んだ」

北島「凄ぇ。全部当たってる」

藤原「まぁこんなもんかな」

北島「常に人の心って読めんの?」

藤原「常に発動してるね。嫌でも人の心読める感じ」

北島「へー。さとり妖怪みたいだな」

藤原「そうなんだよ」

北島「お前凄いな。それで世界動かせるよ」

藤原「そんな大それた事、俺には出来ないよ」

北島「それもそうか。で?他は?他は何が出来んの?」

藤原「まぁこんな感じ」

北島「最後以外パッとしないな」

藤原「俺に言われても」

北島「それもそうか。で?何で今更そんな話を俺に?」

藤原「いい加減、唯一の友達とも言えるお前には言っておこうかと思ってな」

北島「何で?」

藤原「俺、今までお前の心を読んでて、ズルをしてた。でもお前は今こんな事を話しても依然として態度を変えずに接してくれた。そんなお前に嘘を吐いてこれからも付き合っていく事は考えられなかったんだ」

北島「真面目だな、お前」

藤原「勉強も実はズルしていて、テスト中も周りの人達の心の声を聞いて答えを書いたり、会社でも相手の心を読んで接待してたりしてて、それで業績上げてたんだ」

北島「真面目なんだか不真面目なんだか分からんけど、聞こえてくるなら仕方なくね?しょうがないよ」

藤原「そう言ってくれると助かる」

北島「まぁ心の声を聞いても、それを助けるだけの技量が無けりゃ仕事も勉強も意味無いだろ。お前の実力である事に変わりはない。誇って良いよ」

藤原「ありがとう」

北島「でも勿体ねぇなぁ。特にその透視能力と読心術は何かに活かせないかなぁ」

藤原「例えばどんな?」

北島「そうだなぁ……医者になって心療内科とか精神科を開くとか、占いやるとか、メンタリストになるとか」

藤原「成程なー。ちょっと考えてみるわ」


 暗転。


 明転。


 北島宅。

 北島、藤原、板付き。


北島「ベストセラーおめでとう」

藤原「ありがとう」

北島「いやー、しかし『会話の中で人の心を読む~サイコメトリー~』って本をお前が出すとは思わなかったわ」

藤原「先に人の心を読んで逆算して手順を書いただけなんだけどね」

北島「それでも凄いよ。会話の中で逆順に心を読む方法を考えるなんて、普通じゃ出来ないよ」

藤原「たまたまだよ、たまたま」

北島「特に最後の心理テストは面白かったよ。若い子受けの良さそうなのが多くて、宴会のネタになりそう」

藤原「是非使ってくれ」

北島「おう。これ考えたのお前だよな?」

藤原「殆どは心療内科の医師の監修の下、作った物だよ」

北島「じゃあお前はどう答えるのか聞いてみたいな」

藤原「やってみる?」

北島「あっ、でもお前が原作者だから答え知っちゃってるか」

藤原「心理テストは百個もあるんだぞ?いちいち覚えてないよ」

北島「そう?じゃあこの本から一つ出しても良い?」

藤原「良いよ」

北島「じゃあコレだ。貴方は、美しい湖畔の前にたたずんでいます。湖畔の向こう岸にはとても美しいお城が見えます。お城の中には、貴方が理想とするパートナーが貴方を待っています。お城に行く為には、湖畔を船で渡る必要がありますが、貴方の目前には、黄金の船に乗った船頭さんが控えています。貴方は、向こう岸に渡るために、船頭さんと駆け引きをする必要があります。次の3つの質問に答えて下さい。質問1、船に乗せてあげる代わりに、船頭さんが貴方に要求したものは?帽子。靴。服」

藤原「服かな」

北島「ほうほう。質問2、湖畔の中心付近に到達したころ、貴方は、船に穴が開いていることに気がつきました。穴から水がどんどん入り込んで来ています。そのとき、貴方は?船を降りて泳ぐ。穴を塞ぐ努力をする。船頭に早く漕ぐように言う」

藤原「穴を塞ぐかな」

北島「成程。質問3、努力の甲斐あって、やっと向こう岸に辿り着きました。そのとき貴方は?もう二度とこんな経験はしたくない!大変だったが刺激的で面白かった!もう一度渡ってみよう!」

藤原「面白かった、かな」

北島「ほうほうほう。じゃあ結果ね。同性愛についてどう思ってるかが分かるらしい」

藤原「あっ」

北島「服を選んだら、受けも攻めもどっちもアリだと思ってる」

藤原「…………」

北島「穴を塞ぐを選んだら、尽くすタイプらしい」

藤原「…………」

北島「面白かった、と答えたら、同性愛者確定らしい」

藤原「………‥」

北島「お前、ゲイなの?」

藤原「…………(放心)」

北島「図星だと放心する癖は変わらないな。お前、学生時代も今も彼女作らなかったよな?それってゲイって事?」

藤原「…………(放心)」

北島「お前、俺の事好きなの?」

藤原「…………(放心)」

北島「あの、何か言ってくれないと困るんだけど……」

藤原「あぁ、悪い……はい、好きです」

北島「あっそー……」

藤原「ちなみにお前は何て答えてたかも心を読んでたんだけど、俺と同じだったな」

北島「あぁ、まぁ、うん……」

藤原「俺の事好きなの?」

北島「……心読めるんだから、分かるだろ」

藤原「あっ、はい……」


 沈黙。


藤原「じゃ、じゃあ、これから宜しくお願いします」

北島「はい。宜しくお願いします。ってか心読めるんだったらさっさと告白でも何でもすれば良かったろ」

藤原「いや、告白はされたい側だったから、ずっと待ってた」

北島「乙女か」

藤原「ずっとこうなる機会が無いか待ってた」

北島「これだけ心と体を思い通りに動かせる程、頭の回転が出来る男なのに、不器用だな」

藤原「超能力は万能じゃないって事だねぇ」



















―――終わり

『催眠術』



・登場人物


 藤原

 北島



・舞台


 北島宅






 明転。


 北島宅。卓袱台一つに座布団二つ、ベッド一つ。

 藤原、北島、板付き。酒を飲んでる。


藤原「こうやって飲んでるけど、お前んところの猫はどうした?」

北島「あぁ、ミユキ?今隣の部屋にいるよ」

藤原「ペットとか羨ましい」

北島「猫は良いよ~?お前も飼えば?」

藤原「俺、アレルギーあるんだよね」

北島「そういえばそうだったな。ところで風邪の噂で聞いたんだけど、お前、催眠術出来るんだって?」

藤原「簡単なのがね」

北島「マジか。何か、結構凄いらしいじゃん」

藤原「そうでもないよ」

北島「何かやってみてよ」

藤原「そうだなぁ……何が良いとかある?」

北島「んー……貴方は段々眠くな~る~、とか出来る?」

藤原「それくらい簡単だよ」

北島「最近、不眠症が出ててさぁ。ちょっと寝たいんだわ」

藤原「えっ、今寝るの?」

北島「寝かせてくれ」

藤原「友達と飲んでるのに?」

北島「良いじゃん。俺とお前の仲だろ?」

藤原「まぁ別に良いけど。いくよ?(鞄から紐を括り付けた5円玉を取り出す)」

北島「おう」

藤原「この5円玉をよーく見てね?」

北島「おう」

藤原「これが少しずつ揺れていきますよ~……すると段々貴方の意識が揺らいでいきます……そして、貴方は段々と体中の力が抜けて、私の言う事を聞いてしまいます」

北島「あ~……凄ぇ……ボーっとしてきた……」

藤原「貴方は段々と足に力が入っていき、ベッドの上に寝転びます。そして、体中の力が抜けて、意識が揺らいでいきます」

北島「(ベッドに仰向けで寝転がる)お~……凄ぇ……」

藤原「この5円玉を見ている内に、自然と瞼が重くなっていき、閉じて行きます」

北島「おぉ……本当に瞼が重い」

藤原「貴方は段々と眠くな~る、眠くな~る……」

北島「あぁ、本当に眠くなってきた……」

藤原「体がリラックスしていきま~す……」

北島「体が軽くなってきた……」

藤原「じゃあ後は起きたい時に声掛けてね」

北島「おう……」


 沈黙。


藤原「(酒を飲む)」


 沈黙。


藤原「(スマホを弄る)」

北島「……あのさぁ」

藤原「おっ、もう良いの?」

北島「これ、寝れる気配が無いんだけど」

藤原「だろうねぇ」

北島「どういう事?」

藤原「俺が掛けたのは眠くなる催眠術だけだから、寝れるとは言ってないよ」

北島「ずっと眠いってだけなのが辛いんだけど」

藤原「じゃあ催眠解こうか?」

北島「頼む」

藤原「じゃあ、今から私が手を叩くと、催眠が解けます。3……2……1……、はい(手を叩く)」

北島「……あぁ~、寝れなかったけど、少しスッキリした」

藤原「なら良かった」

北島「眠いのに眠れないとか不眠症そのまんまじゃん」

藤原「だろうね」

北島「寝かせてくれよ」

藤原「だって、眠くな~る~、してとしか言われてなかったし」

北島「真面目か」

藤原「期待されてた事はやっただろ」

北島「その先を求めてたんだけどな」

藤原「じゃあ飲み直そうぜ」

北島「おう。今、完全に催眠は解けてんの?」

藤原「いや、まだ掛かってる。他の催眠を掛けてほしいならやるけど?」

北島「じゃあどうしようかな……腕の関節を固くする、とか出来る?」

藤原「出来るよ」

北島「やってみて」

藤原「立って、右腕を差し出して(立つ)」

北島「(立って右腕を差し出す)はい」

藤原「俺の目をジッと見て……貴方の腕は、次第に固くなっていきます……腕がピーンとしてきて、そして棒のように固くなってきます……」

北島「……あんまり実感が無いけど」

藤原「肘、曲げてみようとしてみ?」

北島「え?おう……あれ、曲がんない」

藤原「じゃあお前のバッグを上から落として掛けるぞ(北島のバッグを拾い上げ、北島の右腕に勢い良く掛ける)」

北島「うおっ(微動だにしない北島の右腕)」

藤原「じゃあ次は俺のバッグを掛けるぞ(藤原のバッグを拾い上げ、北島の右腕に勢い良く掛ける)」

北島「おぉっ(微動だにしない北島の右腕)」

藤原「次はこの酒な(酒が入ったビニール袋を拾い上げ、北島の右腕に勢い良く掛ける)」

北島「おうっ(微動だにしない北島の右腕)。凄ぇ」

藤原「まぁこんなもんかな」

北島「へー。凄いなぁ」

藤原「じゃあ催眠を解くね。今から私が手を叩くと、催眠が解けます。3……2……1……(手を叩く)はい」

北島「うわっ(右腕がダランと垂れて二つのバッグと酒が床に落ちる)」

藤原「まぁこんなもんかな」

北島「成程ね。ところで肩が痛いんだけど」

藤原「催眠を掛けたのは右腕だからね。肩はダメージを負っているんだと思うよ」

北島「何で肩には催眠を掛けなかったの?」

藤原「だって腕を固くするとしか要望が無かったから」

北島「そこは融通を利かせてくれても良かったじゃないか」

藤原「要望通りにするのが俺の信条だから」

北島「あっそー。それにしても凄ぇなぁ」

藤原「こんなもんで」

北島「それ使って普段何してんの?」

藤原「合コンで使ったり、会社の宴会でしたりとか」

北島「勿体ねぇな。それで稼げそうだけど」

藤原「稼いでるよ」

北島「何?副業で催眠術やってんの?」

藤原「まぁそんな感じ」

北島「へー。どれくらい儲かってんの?」

藤原「月間五万円くらい?」

北島「結構儲かってんな」

藤原「お陰様で」

北島「イベントとかやってんの?」

藤原「いや、個人で呼ばれて、催眠術やって報酬貰ってる感じ」

北島「へー。そうなんだ」

藤原「あ、そろそろ終電だな。帰るわ」

北島「えっ?明日、日曜だぞ?泊ってけよ」

藤原「休日出勤なんだよ」

北島「そっか。じゃあ送ってくよ」

藤原「いいよ。すぐそこが駅だし。それにこの部屋の片付けとか任せるし」

北島「そう?じゃあ気を付けてな」

藤原「おう」

北島「あ、まだ催眠って掛かってんの?」

藤原「掛かってるね」

北島「じゃあ解いてから行ってくれ」

藤原「あ、じゃあ最後に一つだけ催眠掛けるわ」

北島「何?」

藤原「まぁまぁ。俺の目をジッと見て?これから貴方の頭の中がボーっと白いモヤが掛かってきたように、意識が薄らいでいきます」

北島「…………」

藤原「意識無くなった?」

北島「…………」

藤原「意識無くなったな。じゃあ……(北島の財布から札を抜き取る)はい、座って~……」

北島「(座る)」

藤原「これから私が手を叩くと、この瞬間の記憶が無くなります。3……2……1……(手を叩く)はい」

北島「……おっ。俺は一体何を……?」

藤原「飲み過ぎでトイレで吐いたんだよ。俺が介抱して水を飲ませたところ」

北島「マジかぁ。そんな飲んだつもりなかったんだけどな。悪いな、藤原」

藤原「良いって事よ」

北島「しかし副業で催眠術やってるなんて知らなかったよ。これは俺もサービス料払わなきゃな」

藤原「別にいいよ」

北島「いやいや、払わせてくれ(財布の中を見る)。あれ?現金が無い」

藤原「どうした?」

北島「いや、財布の中がすっからかんになっててさ」

藤原「そんなギリギリで生活してたのかよ」

北島「そんな事は無いんだが……まぁこのお礼は後日させてくれ」

藤原「そんな気にしなくて良いのに」

北島「まぁまぁ」

藤原「じゃあ帰るわ」

北島「おう。じゃあまたな」

藤原「飲み過ぎには気を付けろよ」

北島「おう。サンキュ」


 藤原、舞台上手に退場。


北島「いつ金使ったかな……(レシートを見る)さっきの買い物はいくらなんでも有り得ないよな。(スマホでカード明細を見る)カードの支払いに使った様子も無い。あれー?じゃあどっか別の場所にしまったかな?ペット用のモニターカメラ見てみるか(テレビを点けてモニターカメラを早回しで見る)……あっ、藤原っ」


 暗転。


 明転。


 北島宅。

 北島、新聞を読みながら板付き。


北島「アイツ、窃盗罪で逮捕されたか……」















―――終わり

『プレゼント』



・登場人物


 美幸

 正将



・舞台


 自宅



・衣装


 美幸・・・パジャマ、ネックレス、指輪、コート、スカート

 正将・・・スーツ、鞄、セーター



 明転。


 自宅。テーブル一つに椅子が二つ。

 美幸、板付き。正将、舞台下手から鞄を持って登場。


正将「ただいま」

美幸「あっ、正将。おかえりなさい。ご飯は?」

正将「外で食べてきた」

美幸「そう。じゃあ後はお風呂と寝るだけね?」

正将「うん」

美幸「お風呂沸かしてあるから入って。私はもう入ったから」

正将「うん。でもその前に、美幸、ちょっと良いかな?」

美幸「何?改まって」

正将「ちょっとね」

美幸「ふうん?まぁ良いけど(席に着く)」

正将「(席に着く)今日、誕生日だったよな?おめでとう」

美幸「覚えててくれたんだ」

正将「勿論」

美幸「結婚する前みたいに朝一でおめでとうって言ってくれなかったから忘れてるんだと思ってた」

正将「そんな訳無い。ちゃんと覚えてるよ。改めて、おめでとう」

美幸「ふふっ、ありがとう」

正将「結婚してから仕事で忙しくてなかなかプレゼントらしいプレゼント贈れてなかったね」

美幸「良いのよ。将来の子供の事もあるし、貯金しようって前に話し合ったじゃない」

正将「それでもさ、何か形で贈れないかなって思って、さっき買ってきたんだ」

美幸「えー?何何ぃ?」

正将「この日の為に小遣い貯めて買ったんだ」

美幸「そこまでして祝ってくれるなんて!嬉しい!期待しちゃう!」

正将「それでは……(鞄の中をまさぐる)三十万円分の……!」

美幸「三十万円!?何、何!?指輪!?ネックレス!?」

正将「宝くじです!(テーブルの上に千枚の宝くじを出す)」

美幸「……は?」

正将「これ全部プレゼントします!」

美幸「……はぁ?」

正将「はい!プレゼント!」

美幸「……アンタ、バッカじゃないの!?何!?宝くじって!?」

正将「宝くじっていうのは、日本において当せん金付証票法に基づき発行される富くじで、正式名称は『当せん金付証票』っていうやつで……」

美幸「宝くじが何なのかは知ってるよ!いや、正式名称は知らなかったけど!」

正将「嬉しくないの?」

美幸「嬉しくないよ!こんなん紙切れじゃん!」

正将「そうとも言い切れないよ?確定で三万円は受け取れるんだから」

美幸「でも二十七万円損してるじゃん!」

正将「夢を買ってるんだよ」

美幸「夢より現実の三十万円の方が良かった!」

正将「タダで貰えるんだから文句言うなよ」

美幸「それはそうだけど!こんなの買うくらいならどこか高いレストランとかで食事の方が良かった!」

正将「それじゃあ三十万円使い切れない……」

美幸「どうして使い切ろうとするの!?それに使い切ろうとするなら、高めのワインとか頼めば良いじゃない!」

正将「その発想は無かったな」

美幸「はぁーっ……全く、勢いでも何でも良いから指輪とか買ってくれれば良かったのに」

正将「でも美幸、俺にはセンスが無いって言ってたじゃないか。婚約指輪だってセンスが無いって言って、結局自分で選んだじゃないか。だからそれは避けたのに」

美幸「だったら後日私を連れて行って選べば良かったじゃない」

正将「だってサプライズしたかったんだもん」

美幸「ある意味サプライズになったけどね」

正将「マジで?やった!サプライズ大成功~!」

美幸「駄目な方のサプライズ大成功ね!?」

正将「何で?」

美幸「こんなん当たる訳無いって!無駄金だよ!」

正将「何でさ。夢くらい見ようよ」

美幸「私は現実主義なの!夢で世の中喰ってけないよ!」

正将「心に余裕が無いと疲れるよ?人って簡単に病んじゃうからね」

美幸「今、正に心に余裕が無い。まさかこんな無駄金を使ったプレゼントをされるとは思わなかった」

正将「そんな無駄金無駄金言わなくても良いじゃん。良いじゃん。たとえ三万円でも、貰える物は貰っときなよ」

美幸「一応貰っておくけど、どうせなら将来の子供の為に貯金に回してほしかった」

正将「何だよ。折角喜んでもらえると思ってたのに」

美幸「空回りなんだよね」

正将「一応、保険でこのネックレスと指輪も買ってきたんだけど、いる?」

美幸「最初からそっちを出しなよ!どんなやつ?どこの?」

正将「ちょっと派手なの。メーカーは知らない」

美幸「早く見せてよ」

正将「ちょっと待って。(鞄をまさぐる)はい」

美幸「えー、どんなのだろ?(包みを開ける)何コレ?」

正将「金運が上がるネックレスとペアの指輪のセット」

美幸「これいくらしたの?」

正将「二つで五千円」

美幸「安っ!どこで買ったの?」

正将「そこのドン・キホーテ」

美幸「何でそこで買っちゃうかなぁ~!」

正将「どうして?」

美幸「何で誕生日プレゼントにそんな安いネックレスと指輪をプレゼントするかなぁって言ってんの!」

正将「タダで貰えるんだから文句言うなよ」

美幸「さっきっから何なのそれ?何も言えなくなるんだけど」

正将「それにこれを身に着けていれば金運が上がってお金が手に入るんだって」

美幸「そんなの嘘っぱちに決まってるじゃん……」

正将「分かんないよ?」

美幸「はぁ~……こんな物にお金を掛けるとか、信じらんない」

正将「あー、はいはい。どうせ俺はセンスが無いですよーだ」

美幸「センスじゃなくて常識が無いだけだけどね」

正将「良いから受け取ってくれよ」

美幸「一応受け取るけど……」

正将「一応三万円は手に入るんだから喜んでくれ」

美幸「それよりもショックが大きい」

正将「とりあえず俺、風呂入って寝るね?」

美幸「はいはい。行ってらっしゃい」


 暗転。


 明転。


 自宅。

 美幸、ネックレスと指輪を身に着けて板付き。正将、舞台下手から登場。


正将「ただいまー」

美幸「おかえりなさーい」

正将「ご飯ある?」

美幸「キッチンにあるから、チンすればすぐだよ」

正将「じゃあ先に風呂に入ろうかな」

美幸「お風呂沸かしてあるよ。私は先に入ったから」

正将「それ、結局身に着けてるのな」

美幸「恥ずかしいから家の中でだけだけどね」

正将「気に入ったんだ?」

美幸「折角貰って身に着けないなんて正将に対して失礼かなって」

正将「真面目~」

美幸「うっさい」

正将「そういえば先月プレゼントした宝くじ、換えに行った?」

美幸「あぁ、そういえばあったね、それ」

正将「忘れてるとか悲しい」

美幸「期待してないからね」

正将「余計悲しい」

美幸「明日換えてくるよ」

正将「当たると良いな」

美幸「期待はしないけどね」

正将「じゃあ風呂入ってくるー(舞台下手に向かう)」

美幸「じゃあ私、先に寝てるねー(舞台上手に退場)」

正将「はいよー(舞台下手に退場)」


 暗転。


 明転。


 正将、スーツのズボンにシャツ、その上にセーターを着て、お茶をすすりながら板付き。美幸、スカートにコートを着て舞台下手から登場。


美幸「ただいま!」

正将「おかえり。どうしたの?そんな息を切らして」

美幸「当たってた!」

正将「何が?」

美幸「宝くじ!」

正将「マジで!?いくら!?」

美幸「百万円!」

正将「マジか!やったじゃん!」

美幸「まさか当たるなんて思わなかったから売り場で叫んじゃったよ!」

正将「そんなに。夢見て良かったろ?」

美幸「全く見てなかったけど嬉しい!」

正将「あのネックレスと指輪のお陰かな?」

美幸「案外そうかもねー」

正将「じゃあそのお金は美幸の好きなように使いなよ」

美幸「じゃあ好きなように使うね!はい、三十万円!」

正将「何コレ?」

美幸「この前のお返し!三十万円も使ってくれたから、それは正将の懐に入れといて!」

正将「何か悪いな……」

美幸「良いから良いから!今度は自分の為に使って!」

正将「そうか?じゃあ遠慮無く」

美幸「これは将来の子供の為に取っておこうかな~」

正将「あっ、そうだ。来月、俺達の結婚記念日だよな?」

美幸「三年目のね」

正将「この前みたいに怒られるの嫌だから今度は話し合ってプレゼントしたいんだけど」

美幸「やっと分かってくれた?良いよ。何にしようかな~」

正将「この三十万に上乗せしてまた宝くじと金運アップのアイテムで良い?」

美幸「良い訳無いでしょ!?今度も上手くいくと思ったら大間違いよ!」

正将「えー?でも流れは来てると思うんだけどなー」

美幸「同じ売り場でそうそう当たりが出るとは思えないから!」

正将「別の売り場で買うから!」

美幸「そういう問題じゃない!そうそう宝くじなんて当たらないの!」

正将「でも今回当たったじゃん!」

美幸「今回はたまたま!それ分かってよ!」

正将「良いもん!じゃあ俺の為に使うから!俺の為に宝くじ買うから!」

美幸「好きにしなさい!」


 暗転。


 明転。


 自宅。

 美幸、板付き。パジャマ姿。正将、スーツ姿で舞台下手から登場。


正将「ただいま」

美幸「おかえりなさい」

正将「宝くじ換えてきたよ」

美幸「どうだった?」

正将「三十三万円当たった」

美幸「良かったじゃない。もっと喜んだら?」

正将「でも三十万円分買ったから結局戻ってきただけなんだよね」

美幸「でも三万円分は儲かったんでしょ?じゃあ良いじゃない」

正将「そうなんだけどさぁ……」

美幸「これに懲りたらもう宝くじから足洗って、地道に貯金しなさい」

正将「……でもまた買っちゃったんだよね」

美幸「……いくら分?」

正将「三十万円分……」

美幸「アンタ、馬鹿なの?」

正将「いや、きっと次は当たる!そんな気がする!」

美幸「まぁ家計が傾かないならそれでも良いけどさ……程々にしときなさいよ?」

正将「分かってるって。あ、この前プレゼントしたネックレスと指輪貸して」

美幸「何で?」

正将「この前の百万円、それのお陰かもしれないから」

美幸「まぁ良いけど……指輪、私のサイズだからハメられないでしょ?」

正将「鞄に入れとく」

美幸「まぁ良いけどさ……ちょっと待ってて。取ってくる(舞台上手に退場)」

正将「うん」


 暗転。


 明転。


 自宅。

 美幸、板付き。

 正将、鞄と紙袋を持って舞台下手から登場。


正将「ただいまー!」

美幸「おかえりなさい。テンション高いけどどうしたの?」

正将「宝くじ当たった!」

美幸「へー。いくら?」

正将「三百万円!」

美幸「えっ!?凄っ!?」

正将「言ったろ?当たる気がするって!」

美幸「やっぱりあのネックレスと指輪のお陰なのかな!?」

正将「多分な!」

美幸「凄い凄い!じゃあそのお金の使い道だけど、将来の子供の為に……」

正将「あぁ、その事なんだけど。(紙袋をひっくり返し、三百万円分の宝くじを開ける)」

美幸「……何コレ?」

正将「宝くじ!三百万円分買ってきたから、これでまた当たれば子供を作ろう!」

美幸「どんだけジャンキーなの!?そのお金を子供の為に貯金しなさいよ!」

正将「当たれば問題無ーし!」

美幸「当たらないから!もう離婚よ離婚!」

正将「大丈夫大丈夫!当たるから!」


 暗転。


 明転。


 自宅。

 美幸、板付き。

 正将、鞄と大量の紙袋を持って舞台下手から登場。


正将「ただいまー!」

美幸「おかえりなさい。何?また宝くじでも当たった?」

正将「うん!」

美幸「いくら?」

正将「三千万円!」

美幸「えぇ!?凄いね!?」

正将「言ったろ?大丈夫、当たるって!」

美幸「アンタ、本当に運が良いわねぇ……じゃあ、本格的に子供を作ろうか」

正将「そうだな」

美幸「とりあえずその三千万円は貯金して……」

正将「その事なんだけど。(紙袋から三千万円分の宝くじを開ける)」

美幸「何コレ?」

正将「三千万円分宝くじ買ったから、これでまた当たれば生活に余裕が出るよ!」

美幸「アンタ子供作る気無いでしょ!」























―――終わり


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