コント集4
コント集4
31・・・グルメリポーター
32・・・医者と患者と余命宣告
33・・・オブラート
34・・・超能力
35・・・盲目シケモク大文句
36・・・バーテンダー
37・・・職務質問
38・・・整体
49・・・モモの天然水
40・・・天使と悪魔
『グルメリポーター』
・登場人物
小川
西岡
藤原
モブ何人か
・舞台
ラーメン屋
明転。
ラーメン屋。カウンターがあり、椅子がいくつかある。テーブルも二つ程あり、椅子がそれぞれ四つずつある。
西岡、カウンターの内側でラーメンを作っている。
小川、藤原、外で打ち合わせをしている。
小川「ここが日本一のラーメン屋で合ってるんですよね?」
藤原「はい。ここです」
小川「じゃあ入りましょう」
小川、藤原、ラーメン屋に入る。
小川「すみませーん!スデコポテレビの者ですけどー!」
西岡「あいよー!いらっしゃーい!この前、電話くれた取材の方ですね!」
小川「はい。これから撮影しようと思うのですが、大丈夫でしょうか?」
西岡「あいよー!いつでもどうぞー!」
小川「ではお店の外から撮影しますので一旦外に出ますね。日本一のラーメン、期待してますよ!」
西岡「あいよー!」
小川、藤原、ラーメン屋の外に出て撮影を開始する。
小川「はい!どうも、小川です!今日は日本一のラーメン屋さんに来ています!早速入ってみましょう!」
小川、藤原、ラーメン屋に入る。
小川「こんにちはー!」
西岡「あいよー!いらっしゃーい!」
小川「この方がこのラーメン屋、西岡屋の店主、西岡聖弘さんです!早速ラーメンを頂きましょう!すみません、ラーメンを頂きたいのですが、オススメはどれでしょう?」
西岡「ウチは醤油ラーメンが売りでね!シンプルに醤油ラーメンなんかどうでしょう!」
小川「そうですか!では醤油ラーメン一つ、お願いします!」
西岡「あいよー!」
小川「なんでもこのお店は日本一なんだとか?」
西岡「そんな事言われたのは初めてですよ!いつしかそんな事を言われてるなんて光栄です!(ラーメンを持ってカウンターに置く)あいよ!醤油ラーメン、一丁上がり!」
小川「わぁ!見て下さい!この食欲を掻き立てられない微妙な盛り付けと臭い香り!」
西岡「え?」
小川「早速食べてみたいと思います!……んー!不味い!」
西岡「えぇ?」
小川「物凄く不味いです!流石、日本一を名乗るだけの事はありますね!初めて食べる不味さです!」
西岡「えぇ!?」
小川「麺はグニャグニャでスープはただしょっぱい。チャーシューは味がしなくてメンマは歯応えが無い。ほうれん草は固くて卵はただの茹で卵なのに硫黄の香りが強い。本当に不味いです!」
西岡「あぁ!?」
小川「続いて炒飯お願いします!」
西岡「え?あ、あぁ……(炒飯をカウンターに置く)」
小川「わぁ!色んな具材がしっちゃかめっちゃかで臭いがどれが主役なのか分かりません!」
西岡「あぁ!?」
小川「早速頂きます!……んー!これも不味い!」
西岡「えぇ!?」
小川「米はべちゃべちゃで米粒一粒一粒が卵と絡んでなくて、具材もどれもミスマッチですね!」
西岡「はぁ!?」
小川「まさに、日本一と言っても過言ではないでしょう!」
西岡「ちょちょちょ……何コレ?」
小川「はい?」
西岡「これ、どういう趣旨?」
小川「はい、日本一のラーメン屋のリポートですが?」
西岡「詳しく言うと?」
小川「はい、日本一不味いラーメン屋のリポートです」
西岡「何それ!?聞いてない!」
小川「はい、言ってませんから」
西岡「だって電話では日本一美味しいラーメンの取材だって!」
小川「そんな事言ってません。ただ日本一のラーメンの取材と申し上げました」
西岡「何それ!?詐欺じゃん!」
小川「詐欺だなんてそんな!事実を言ったまでです!」
西岡「いや、そうかもしれないけど!誤解しちゃったじゃん!」
小川「それはそっちが勝手にそう解釈したからでしょう?」
西岡「納得がいかない!せめて嘘でも『美味しい』って紹介して!」
小川「我々報道陣は、嘘を報じる訳にはいきません。真実を真実として視聴者に伝える事が、我々の仕事です」
西岡「急に真面目になったな!?」
小川「我々は最初から至って真面目です」
西岡「その真面目さが一人の男を泣かしてる!めっちゃショック!」
小川「真実を伝えて、全ての人が幸せになるとは限りませんからね」
西岡「一見格好良い事言ってるけど、誰一人幸せになってないからね!?」
小川「それはこれからのお楽しみですよ」
西岡「もういい!帰ってくれ!」
小川「このやり取りも撮影してますが、放送しても構いませんか?」
西岡「駄目に決まってんだろ!もういいからさっさと帰れ!」
小川「以上、日本一不味いラーメン屋のリポートでした!」
西岡「五月蠅ぇ!」
小川「さて、撮影は終わりました。実際に放送しても構いませんか?」
西岡「放送したきゃしろ!もうどうにでもなれ!」
小川「ありがとうございます!」
西岡「何が『ありがとうございます』だ!」
暗転。
明転。
SE、ガヤの声。
ラーメン屋に客で賑わっている。
西岡、小川、藤原、舞台中央で撮影している。
小川「西岡さん、あの放送からお店が繁盛しているようですが?」
西岡「お陰様であれ以来、毎日お客さんでいっぱいなんです」
小川「良かったですね!」
モブA「おやっさん!不味い醤油ラーメン二丁ね!」
モブB「おじさん、不味い炒飯一つ!」
モブC「こっちは不味いチンジャオロース三つね!」
西岡「あいよー!不味い醤油ラーメン二丁、不味い炒飯一丁、不味いチンジャオロース三丁!」
小川「繁盛してますね!」
西岡「はい!じゃあ私はこれで」
西岡、厨房に戻る。
小川「はいっ!以上、日本一不味いラーメン屋のその後、でした!」
―――終わり
『医者と患者と余命宣告』
・登場人物
西岡
藤原
・舞台
病室
明転。
ベッドが一つ。テーブル一つ。テーブルには林檎と果物ナイフがある。
藤原、窓辺に立っている。
SE、ノックの音。
西岡、舞台上手から登場。
西岡「失礼します、藤原さん」
藤原「あぁ、先生……」
西岡「どうしました?窓なんか眺めて」
藤原「いや、なんとなくですよ……」
西岡「お体に障ります。ベッドに戻って下さい」
藤原「…………」
西岡「さて、今日の診察に入ります。どこか体調に変化や気になるところは……」
藤原「ねぇ、先生?俺は、重病なんですよね?」
西岡「えぇ、そうですね」
藤原「きっと、あそこの木の葉っぱが全て落ちる頃、俺の命も尽きるんですね……」
西岡「いや、そんなに持たんよ」
藤原「は!?」
西岡「あ、やべっ」
藤原「ちょちょちょ!今何て言いました!?」
西岡「キチンと治療を続けていればちゃんと治ります」
藤原「嘘つけ!完全に『そんなに持たんよ』って言っただろ!」
西岡「えぇ、確かに言いました。でも希望は持ち続けて下さい」
藤原「いやいやいや!無理だから!もう絶望しか無いから!」
西岡「落ち着いて下さい。我々が着いてますから」
藤原「いや、もう信じられない!出てってくれ!」
西岡「でも助からないと分かっていても……」
藤原「今ハッキリと言ったな!?助からないと!?」
西岡「あ、やべっ」
藤原「本当に助からないんですか!?俺は死ぬんですか!?」
西岡「まだそうとは決まっていません。どうか諦めないで下さい」
藤原「もう無理だ!死んでやる!」
藤原、果物ナイフを手に取り、心臓に突き刺そうとする。
西岡、それを止める。
西岡「止めて下さい!そんな事をしても無駄です!」
藤原「もうほっといてくれ!」
西岡「そんな事をしても、遅かれ早かれ死ぬだけの、僅差の時間の問題ですよ!」
藤原「僅差の時間!やっぱりもうすぐ死ぬんじゃないか!」
西岡「あ、やべっ」
藤原「さっきからその『あ、やべっ』って言うの止めろ!どんだけ失言してんだ!」
西岡「すぐ、死ぬ、といった事を言ったのは謝ります!でも……」
藤原「やっぱりもうすぐ死ぬんじゃないか!」
西岡「もうすぐ死ぬんじゃありません!すぐです!」
藤原「どこを訂正してんだ!」
西岡「あ、やべっ」
藤原「だからその『あ、やべっ』を止めろ!てかすぐ死ぬんか!?」
西岡「時間が残されてないと伝えてしまったのは謝ります。ですが……」
藤原「うわー!やっぱりもう時間が残されてないんだー!」
西岡「気の持ちようです。残された時間を有効に使いましょう」
藤原「残された時間!?もうそんなに猶予が無いのかー!」
西岡「今すぐ退院する事も出来ますが、どうしますか?」
藤原「って事はマジで死ぬんじゃないか!もう本当にどうしようもないんですか!?」
西岡「最善を尽くしましたが、残念です」
藤原「残念!?今、残念って言った!?」
西岡「あ、やべっ」
藤原「あとどれくらいの猶予があるんですか!?」
西岡「二か月。もって半年でしょうね」
藤原「うわー!本当に絶望しか無いー!」
西岡「諦めないで下さい。最期まで、面倒を見ますから」
藤原「最期て!もう死確定じゃないですか!」
西岡「人はいずれ必ず死にます。それが人によって早いか遅いかってだけです」
藤原「説得力皆無!死の宣告をされた身にもなってみろ!」
西岡「ですから本人の意思を確かめず宣告してしまった事は謝ります。ですが……」
藤原「お前、さっきから本当に謝る気があるのか!失言ばかりしやがって!」
西岡「それは本当にすみません」
藤原「…………」
西岡「…………」
藤原「……ですが、とか、でも、とか続かんのかい!」
西岡「もう言う事はありません」
藤原「じゃあどうすりゃ良いんだよ!」
西岡「一生懸命生きて下さい。それだけです」
藤原「そんな……!(泣き出す)」
西岡「最後まで諦めないで下さい。我々が着いてます」
藤原「先生……!」
暗転。
明転。
藤原、着替えている。
SE、ノックの音。
西岡、舞台上手から登場。
西岡「失礼します」
藤原「あぁ、先生」
西岡「今日で退院ですね」
藤原「お陰様で病気も治り、元気いっぱいです」
西岡「奇跡的な復活でこちらも驚いております。やはり生きる意志が強い人が、生き残るんですね」
藤原「先生の『あ、やべっ』のおかげで何が何でも生きてやるって気持ちになりましたからね」
西岡「それはなによりです。完治したとは言え、気を抜かないように」
藤原「はい」
西岡「何か異常を感じたらまたいつでもお越し下さい」
藤原「分かりました。では先生、お世話になりました」
西岡「どうかお気を付けて」
藤原「はい」
藤原、舞台上手に退場。
西岡「あえて死の宣告をするのも生きる糧になるもんだな」
―――終わり
『オブラート』
・登場人物
西岡聖弘
小川美幸
儀間愛真
・舞台
立ち飲み屋
明転。
立ち飲み屋。テーブル1つ。テーブルの上には酒とつまみ。
西岡、小川、儀間、板付き。
西岡「いやぁ、今回のプロジェクトが成功したのは君達二人のおかげだ。ありがとうな、儀間さん、小川さん」
儀間「そんな事ないですよ。西岡先輩あってのプロジェクトですよ」
西岡「いやいや、実際二人はよく頑張ってくれたよ。俺は特に何もしてないよ。二人が頑張ってくれたから、企画も通って、取引先との交渉も上手く行って、それで成功だもん。謙遜しなくて良いよ」
儀間「そう言われると照れますね。ありがとうございます!」
西岡「新人なのによく着いて来てくれたよ。二人が居なかったら上手く行かなかったかもしれない」
儀間「またまた、そんな事ないですよ!」
小川「確かに私達が居なかったら今回のプロジェクト成功しなかったかもしれませんね」
西岡「お、言うねぇ、小川さん」
小川「実際そうでしたし。西岡先輩に着いて行けるの私達くらいじゃないですかね?」
儀間「ちょっと小川、少しは謙虚になりなさいよ」
西岡「良いの良いの!今回は俺達のプロジェクト成功祝いだから、無礼講でパーッとやろう!ここは俺が奢っちゃうから!」
儀間小川「ご馳走様です!」
西岡「今回は立ち飲みで我慢してな」
儀間「全然大丈夫ですよ!」
小川「私は座ってゆっくり飲みたかったですけどね」
儀間「ちょっと小川……」
西岡「まぁ明日もあるからさ。小規模だけど、軽い打ち上げみたいなもんで今回は我慢してくれよ」
小川「仕方ないですね」
西岡「ここ俺がよく来る所なんだ。ちょっと汚いけど、つまみは旨いから」
小川「確かに汚いですね」
儀間「小川」
西岡「それにちょっと高いんだよな」
小川「確かにビール1杯七百八十円って高いですね。私なら絶対通わないです」
儀間「小川」
西岡「良いの良いの!じゃあ酒もつまみも揃ったし、今回のプロジェクト成功を祝して、かんぱーい!」
儀間小川「かんぱーい!」
西岡「あ、早速出悪いんだけど、ちょっとトイレ行ってくるね」
西岡、下手に退場。
儀間「ちょっと小川、さっきから何?」
小川「何が?」
儀間「図々しいよ」
小川「どこが?」
儀間「さっきから店が汚いとか、ビールが高いとか」
小川「だってさっき無礼講だって西岡先輩言ってたじゃん」
儀間「無礼講って言ってもさ、少しは気を遣いなさいよ。その前だって『自分達が居なかったらこのプロジェクトは成功しなかった』とか『座って飲みたかった』とか言ってたし」
小川「でも事実じゃん」
儀間「だとしてもそれは心の内に秘めときなさいよ。いくら無礼講でも、ここは西岡先輩の機嫌を取らないと」
小川「えぇ~?無礼講は無礼講でしょ?良いじゃん」
儀間「せめてオブラートに包みなさいよ」
小川「大丈夫だよ、私と西岡先輩、仲良いから」
儀間「そう言う事じゃないじゃん。いくら西岡先輩が優しいからって流石に不機嫌になっちゃったら気まずいでしょ?」
小川「んー……気にする事無いと思うんだけど」
儀間「少しは気にして。こっちがハラハラする」
小川「まぁ努力する」
儀間「そうしなさい。てかさっきからスマホ弄って何してんの?」
小川「ん?ちょっと私用で」
西岡「(下手から登場)お待たせー」
小川「西岡先輩トイレ長かったですね。大ですか?」
儀間「早速オブラート!小川!」
小川「何?ダメだった?」
儀間「ダメでしょ!デリケートな事なんだから!」
西岡「何?何の話?」
儀間「いえ、こちらの話です!」
西岡「あ、もうこれ食べた?」
儀間「いえ、まだです。西岡先輩が戻ってきたらと思って」
西岡「そんな気を遣わなくて良いのに。これ俺のオススメ!すっごく美味しいから食べてみて!」
儀間「はい。じゃあ頂きます」
小川「私も頂きます」
西岡「どう?美味しいでしょ?」
儀間「はい!すっごく美味しいです!」
西岡「だろ!?俺これ好きでさぁ!是非食べてもらいたかったんだ!小川さん、どう?」
小川「正直、微妙ですね」
西岡「え?」
小川「何と言うか、普通?あれだけハードル上げた割にはそこまでって気がしますね。私は好きじゃないです」
西岡「あ、そう……」
儀間「小川!オブラート!オブラート忘れてるよ!」
小川「え?包んだよ?」
儀間「それで!?足りないよ!」
小川「まだ?まだ足りない?」
西岡「何?オブラート?」
儀間「いえ!こっちの話なんで!」
小川「にしてもこのビール美味しくないですね。水で薄めたような味がしますね」
儀間「オブラート!」
西岡「さっきからオブラートって何なの?」
儀間「いえいえ、西岡先輩には関係無い話ですから!」
西岡「いやいや結構気になるよ?二人して何の話してたの?」
儀間「いや、小川がですね?ちょっとさっきから西岡先輩に対して失礼な事ばかり言ってる気がして、注意してたんですよ……」
西岡「あぁ、何だ、そんな事?気にしなくて良いよ。俺と小川さん仲良いから。勿論、儀間さんとも仲が良いと思ってるけどね」
儀間「ありがとうございます!小川、アンタもお礼言っときなさい」
小川「西岡先輩、少し私達に優し過ぎると思います」
儀間「小川!?」
西岡「そうかな?」
小川「いくら仲が良いって言っても、仕事なんですから、厳しく指導してもらわないとこっちもどう接したら良いか分からないんですよね」
儀間「小川、流石にそれは……」
西岡「そうかなぁ。まぁ小川さんがそう言うなら今後少し気を付けるよ」
儀間「西岡先輩!?言い返して良いんですよ!?何で後輩からの説教を真に受けてるんですか!?」
西岡「え?まぁ、そうなのかもしれないって思ったから」
小川「そう言う所ですよ。後輩に何か言われてもはいはいって受け止めちゃって。少しは自分の確固たる意志で後輩をビシッと〆られないんですか?」
儀間「小川ぁ!?オブラート!言い過ぎ!」
小川「この際だからハッキリ言わせてもらいますけど、西岡先輩甘いんですよ。今回のプロジェクトリーダーは西岡先輩でしたけど、本当に私達が居なかったらあたふたして締め切りに間に合わなかったんじゃないですか?只でさえ仕事遅いし、効率悪く動くんですから」
西岡「まぁ、そうだったかな……」
儀間「小川!言い過ぎ!もうオブラートでも包み切れない!」
西岡「ごめん、またちょっとトイレ行ってくるね……」
小川「その間に少し反省しておいて下さいね」
西岡「あぁ、うん」
西岡、下手に退場。
儀間「ちょっともう、小川ぁ……本当もう勘弁してよぉ……」
小川「どしたの?」
儀間「もう見てられない。ドキドキしちゃう。何であんなに言うかなぁ……?」
小川「まぁ無礼講だし」
儀間「無礼講は別に何を言っても許される場所って事じゃない!」
小川「大丈夫だって。これくらいじゃ西岡先輩、怒らないから」
儀間「怒らないかもしれないけど、明らかに凹んでたよ!?」
小川「大丈夫だって。あれくらい気にしてないよ」
儀間「何でそんな事分かんの?」
小川「だから言ったじゃん。私と西岡先輩は仲が良いって」
儀間「それは仕事上ででしょ!?これからこのチームで上手くやっていけるかな……」
小川「大丈夫、大丈夫。少なくとも私と西岡先輩は上手くやっていけるよ」
儀間「またさっきからスマホ弄ってさぁ……ちゃんと聞いてる?私の話」
小川「聞いてるよ?」
儀間「何やってんの?」
小川「ちょっと私用で」
儀間「また?また私用でスマホをポチポチやってんの?」
小川「まぁ、うん」
儀間「言っとくけど、それ私に対しても失礼だからね?人が話してる時、と言うか説教してる時はスマホ弄るの止めなよ」
小川「あ、説教だったんだ?気付かなかった」
儀間「マジで言ってんの?私にも西岡先輩にも失礼働いてるって自覚、無かったの?」
小川「うん」
儀間「私の事はいいや、とりあえず。とにかくさぁ、今だけでも良いから西岡先輩の機嫌を損ねる事だけはしないでよ?」
小川「機嫌損ねるかな、あの人?」
儀間「損ねるに決まってるでしょ!これからの仕事に支障が出たらどうすんの?」
小川「出ないでしょ」
儀間「何でそう言い切れんの?」
小川「だって私、西岡先輩と―――」
西岡「(下手から登場)度々ごめんねー。ただいまー」
儀間「あ、おかえりなさい」
小川「また大ですか?お酒弱いんだからすぐお腹壊すんですよ」
儀間「オォイ!また失礼を働いてるぞ!」
西岡「あっはっはっは!小川さんは手厳しいなぁ」
儀間「本当すみません!コイツさっきから失礼ばっかりで!」
西岡「何で儀間さんが謝るの?気にしなくて良いよ」
儀間「本当すみません……ありがとうございます……」
西岡「大丈夫?何か顔色悪いけど?」
儀間「すみません、ちょっと緊張しちゃって、お腹が痛くなってきちゃって……」
西岡「無理しないでトイレ行ってきたら?あっちだから」
儀間「はい。じゃあちょっと失礼します……小川、くれぐれもこの二人の時に西岡先輩に失礼な事言うんじゃないよ!」
小川「はいはい。ゆっくり大しておいで」
儀間「決めつけんな!私にも失礼をするな!」
儀間、下手に退場。
西岡「さっきLINEに既読も付かなかったけど、儀間さんと何話してたの?」
小川「別に。何か説教喰らってた」
西岡「あ、そうなんだ。あの事はもう言った?」
小川「私達が付き合ってるって事?言えないよ、あの空気じゃ」
西岡「どんな空気だったか知らないけど。これからの仕事を考えると、今の内に打ち明けた方が良いかなと思ったんだけど。
小川「出来れば西岡さんから伝えてほしかったんだけど。面倒臭い」
西岡「俺からじゃあさ?何か変に気を遣わせちゃうかなって思って。やっぱ女性同士の同期の方が言い易いかなと思ったんだけど」
小川「そうでもないんだよね。いきなり言ったら凄くびっくりすると思って言えてないんだよね」
西岡「じゃあ全く何も言えてない感じ?」
小川「それとなくは言ったよ」
西岡「どんな風に?」
小川「『私と西岡先輩は仲が良い』って」
西岡「あ、そこはオブラートに包んで伝えたんだ」
―――終わり
『超能力』
・登場人物
西岡
藤原
・舞台
藤原の部屋
明転。
藤原の部屋。座布団二つと卓袱台一つ。後ろにベッドがある。
西岡、藤原、板付き。
藤原「あー、なんか大学終わって暇だなぁ」
西岡「そうだねぇ」
藤原「西岡、なんか面白い事無い?」
西岡「無いなぁ」
藤原「なんか面白い事やってよ」
西岡「急に言われても……」
藤原「何でも良いからさ。なんかやってよ」
西岡「えー?そうねぇ……あ、俺、超能力があるんだよね」
藤原「何それ?手品?」
西岡「いや、マジのやつ」
藤原「嘘臭ぇ~」
西岡「じゃあ透視能力から始めようか?」
藤原「はいはい。じゃあ俺の今日のパンツの色は?」
西岡「紫」
藤原「……当たってる。凄ぇ」
西岡「こんなもんで」
藤原「他は?他も見えたりするの?」
西岡「まぁ、可能な範囲でなら」
藤原「じゃあ俺の冷蔵庫の中身とかどう?」
西岡「ジャガイモ一個、レタス半玉、キャベツ四分の一、ニンジン二本、卵六個、牛乳324ml、鍋に入ったカレー」
藤原、舞台上手に去り、すぐに戻ってくる。
藤原「当たってる!凄ぇ!」
西岡「言ったろ?超能力が使えるって」
藤原「じゃあ、あの、隣の部屋とか見える?」
西岡「何で?」
藤原「隣の子凄く可愛いんだよ……下着の色とか見えたりしないかなーとか」
西岡「ちょっと待って……んー、壁が厚くて見えないな」
藤原「そっかー……他は?他はどんなのが使えるの?」
西岡「その人の過去を見れるよ」
藤原「へー。じゃあ俺のを見てみてよ」
西岡「良いよ。手を出して」
藤原「ん(手を差し出す)」
西岡「(藤原の手を握る)んー……」
藤原「どう?見えそう?」
西岡「うん。昨日は朝九時半にアラームが鳴って起きて、十時三十四分までスマホでSNSを見てた。んで、大学の二限までサボって十二時十九分に昼食に自炊したカレーを食べて、十三時に大学に着いてで俺と一緒に講義を受けた。で、その後は十七時三十三分に大学を出て近所のスーパーに十八時一分に着いて、さっき言ったジャガイモ四個入とニンジン四本入と卵十個入と、えーっと豚肉三百g買った。で、合計二千百十四円だった。それから……」
藤原「待って待って待って!怖い怖い怖い!」
西岡「まだ途中だけど?」
藤原「これ、俺が寝る所まで続く?」
西岡「何だったら過去の一年間も振り返られるけど?」
藤原「怖っ!何それ怖っ!」
西岡「どうする?」
藤原「ぶっちゃけ時刻とか覚えてないからどうにも出来んけど、やった事と買った物とその料金は覚えてるからあってると思う。でも俺のはもういいや。他の人のにしよう」
西岡「例えば?」
藤原「(ベッドの下から雑誌を取り出す)このグラビアアイドルの一日を見てほしいんだよ」
西岡「あー、そりゃ無理だねぇ」
藤原「何で?」
西岡「その人の体の一部を触らないと見えないんだよ。さっきもこうして藤原に触ってたろ?」
藤原「ふーん、意外と限られてんだな。他は?」
西岡「こんなもんかな」
藤原「ほーん?地味に凄いな」
西岡「でしょ?」
藤原「まるで見てきたみたいな言い方だったからビックリしたわ。お前まさか俺の事実際に見てたんじゃないだろうな?」
西岡「うん」
藤原「だよなー。そんな訳無いよなー」
西岡「見てたよ」
藤原「え?」
西岡「ずっと見てたよ」
藤原「何を?」
西岡「お前を」
藤原「俺を?」
西岡「うん」
藤原「何で?」
西岡「好きだから」
藤原「は?」
西岡「あ、そろそろバイトの時間だわ。帰るね(支度をして帰ろうとする)」
藤原「ちょちょちょ……ちょっと待って?」
西岡「何?」
藤原「え、お前、何?ゲイなの?」
西岡「ゲイだよ?」
藤原「ゲイなの?」
西岡「だからゲイだよ」
藤原「ゲイなの?」
西岡「ゲイだっつの」
藤原「ゲイなんだ……で、何?ストーカーなの?」
西岡「ストーカーだよ?」
藤原「ストーカーなの?」
西岡「だからストーカーだよ」
藤原「ストーカーなの?」
西岡「ストーカーだっつの」
藤原「何お前ー!?ゲイのストーカーなのー!?」
西岡「だから言ってるじゃん」
藤原「じゃあさっきの超能力って嘘なの?」
西岡「嘘だよ」
藤原「マジかよ……ゲイなのは良いとして、ストーカーってどういう事?後付け回してたの?」
西岡「まぁほぼ毎日」
藤原「マジかよ!?止めろよ!てか俺ん家の内部事情まで詳しかったな。後を着けてるだけじゃ分からんよな?」
西岡「後を着けてるだけじゃね」
藤原「だよな?流石に分からんよな?たまたま当たってただけだよな」
西岡「ちょっと台所と玄関調べて来な」
藤原「え?おう……(舞台上手に退場し、すぐに戻ってくる。その手には大量の監視カメラと盗聴器がある)何コレー!?」
西岡「監視カメラと盗聴器だよ」
藤原「こんなに沢山何なの!?本当にストーカーなの!?」
西岡「だからそう言ってるだろ」
藤原「これで全部か?」
西岡「ほんの一部だよ」
藤原「これが!?」
西岡「あと寝室でしょ?トイレでしょ?脱衣所でしょ?風呂場でしょ?ベランダでしょ?後……」
藤原「もう良い!聞きたくない!これどうやって仕込んだんだ?」
西岡「合鍵作った。ほら(鞄から合鍵を見せる)」
藤原「(ポケットから鍵を取り出し、重ね合わせる)マジのヤツじゃん!怖っ!」
西岡「じゃあ俺はこれで(帰ろうとする)」
藤原「待て待て待て!こんなんで帰せる訳無ぇだろ!」
西岡「えっ、何する気……?」
藤原「胸を隠すな胸を!気持ち悪い!」
西岡「それLGBTが聞いたら訴えられるよ」
藤原「五月蠅!LGBTに気持ち悪がってんじゃねぇ!お前に気持ち悪がってんだよ!」
西岡「何それ酷い」
藤原「こっちはもっと酷い事されてんですけど!?」
西岡「別に良いじゃん。実害が出た訳じゃないんだし」
藤原「精神的にキツイわ!実害出たよ!たった今!」
西岡「気のせい気のせい」
藤原「気のせいなんかじゃない!心がもう死にそう!」
西岡「元気出せよ」
藤原「事の原因が何ほざいてんだ!何でこんな事したの?」
西岡「お前の事が好きだから」
藤原「あぁ、さっき聞いたわ。何で俺を好きになったの?」
西岡「大学に入学した時初めて声掛けてくれたのがお前だったから」
藤原「…………」
西岡「…………」
藤原「……それで?」
西岡「え?それだけど?」
藤原「何それー!?たったそれだけで俺の事好きになった訳!?」
西岡「悪い?」
藤原「いや、悪かないけど、あまりにも単純すぎる!ピュアかよ!」
西岡「照れるなぁ」
藤原「褒めてない!馬鹿にしてる!」
西岡「何だよ。人を好きになる理由は人それぞれ自由だろ」
藤原「そりゃそうだけども!それでどうしてストーカーになったの!?」
西岡「一緒にいる時間が少ないからせめて眺める時間が欲しくて」
藤原「さっきから何?そのピュアさ」
西岡「照れるなぁ」
藤原「だから褒めてない……もう警察に通報するからな」
西岡「何で?」
藤原「そりゃそうだろ。こんな事態になってるんだから」
西岡「どうぞ」
藤原「意外にすぐにお縄に着くんだな(スマートフォンで警察に通報する)あ、もしもし?警察ですか?ストーカー被害に遭ってるんですけどね……はい、はい、はい、男です。いや、相手が男で。はい、いや、それはないですね……あー……それも無いですね……え?あ、不法侵入!不法侵入されてます!はい!え?あ、そうですね……はい、そうですか……はい、それでは……(電話を切る)」
西岡「どうだった?」
藤原「盗難被害に遭った訳でも無いし、実害が無い上に普段出入りしてる部屋だから合鍵を渡されてると言われたらそうとしか答えられないって……それに……」
西岡「それに?」
藤原「そもそも男が男から性被害にあっても警察は動いてくれないって……」
西岡「まぁ、性被害はそもそも無いけどね」
藤原「いや!あるだろ!俺が一人で、その、してる時!」
西岡「何をしてる時?」
藤原「だから、その、モニョモニョしてる時……」
西岡「ナニをしてる時?」
藤原「だからモニョモニョしてる時だよ!ってかもう分かってるだろ!」
西岡「ちょっとからかっただけじゃん」
藤原「それを見られてた!これは立派な性被害です!」
西岡「見てたとは言ってないじゃん」
藤原「いや、必然的に見てただろ!絶対!」
西岡「そういうのはもっと仲良くなってお付き合いしてから追々、見ようと思ってたから」
藤原「だから何そのよく分からんピュアさ加減?どういう心理状態?」
西岡「至って普通の心理状態だよ」
藤原「いや、病んでるよ……ピュアヤンデレゲイストーカーだよ……」
西岡「じゃあ俺はこれで」
藤原「あぁ、もうどっか行け……お前とは友達でも何でもない」
西岡「えっ?それって……!」
藤原「……何その期待の眼差しは!?恋人になったとかじゃねぇよ!絶交だ絶交!」
西岡「そんな……!」
藤原「もう二度と俺の前に現れるなよ!良いな!」
西岡「分かったよ……(舞台上手に退場)」
暗転。
SE、自転車事故の音、男達の叫び声(藤原も)。
明転。
西岡、藤原、板付き。
西岡「『二度と俺の前に現れるなよ』って先週言ってなかったっけ?」
藤原「言いました……」
西岡「そっちから呼び出すなんてどういう風の吹き回し?」
藤原「もう嫌がらせは止めて下さい……」
西岡「嫌がらせ?」
藤原「自転車事故とかひったくりとか強盗とか泥棒とか……色んな人を使って嫌がらせするのはもう勘弁して下さい……」
西岡「あぁ、それ俺じゃないよ?」
藤原「えっ……?」
西岡「ここ元々、治安、悪いじゃん?だから俺がお前をストーキングしてる時、毎回、事件に巻き込まれないように邪魔者を排除しておいたの」
藤原「えっ、じゃあ俺が今まで平和に暮らせてたのって……?」
西岡「俺のおかげ」
藤原「そうだったのか……」
西岡「じゃあ俺はこれで(帰ろうとする)」
藤原「ま、待ってくれ!」
西岡「何?」
藤原「これからも俺を守ってくれ!」
西岡「えぇ?」
藤原「頼む!」
西岡「でもなー、もう『二度と俺の前に現れるな』って言われちゃったしなー」
藤原「そこをなんとか頼む!」
西岡「じゃあ、俺と付き合ってくれたら考えても良いよ」
藤原「えっ、それは……」
西岡「それが無理なら、この話は無かった事に……」
藤原「わ、分かった!分かったよ!俺はノンケだけど前向きに考えるから!」
西岡「分かった。これからもずっとお前を守ってやる」
藤原「西岡……!」
西岡「だからこれからもストーキングと盗撮盗聴は続けさせてくれ」
藤原「それは止めろよ!」
―――終わり
『盲目シケモク大文句』
登場人物
西岡
北島
藤原
舞台
藤原宅
藤原の部屋。
真ん中に机が一つ、ソファ一つ。
西岡、藤原、板付き。
舞台、西岡にスポットのみ。
西岡「私は生まれてこの方、恋と言うものを知りませんでした。誰かと付き合った事も無いし、恋愛的に少しでも誰かを好きになった事もありません。そもそも結婚願望も無かったし、親が日々喧嘩しているのを見ていたので、恋愛なんてくだらないとずっと思ってました。これからもずっと1人で生きていく、そう考えて生きてきました。だけどある日、私はある1人の女性と出会いました。彼女は一生懸命に私に話しかけてくれました。私の話も彼女は真剣に聞いてくれていました。幾度か彼女と会ううちに、不思議な気持ちが私の中に現れました。最初はこの気持ちが何なのか分かりませんでした。ただ、気付けばいつもあの人の事を考えてしまう。夜も眠れない程に。そしてこの気持ちの答えはそう時間を掛ける事無く、導き出せました。これが、恋、なのだと。初めてのこの感情はむず痒くて、ハラハラして、とても切ない……でも、ワクワクが止まらなかった。世界が明るく見えた。だから私はこの気持ちに素直になってみようと思ったのです。彼女を、ただ、素直に愛してみよう!そう思ったのです!」
明転。
藤原「で、パンツ泥棒を働いたと」
西岡「恋は盲目と言うでしょう?」
藤原「でもパンツは見えてたと」
西岡「彼女には手を出せない純情ですよ」
藤原「パンツには手を出したね」
西岡「……ふー、先輩はどうしてそう茶化すのですか?私は真剣に恋を訴えているんですよ!」
藤原「お前は訴えられているけどな」
西岡「ま、刑事の先輩には分からないでしょうね、この気持ちは」
藤原「パンツを盗もうって気持ちなんか分からん」
西岡「悲しい人だ、他人の愛を分からないなんて…」
藤原「パンツを愛しちゃった方が悲しいと思うがね」
西岡「……もう何なんですか!さっきから人を悪者扱いして!」
藤原「犯罪者じゃねぇかお前は!」
西岡「私はね、真剣なんですよ!彼女にはいずれ私との間に生まれる子の為に、きちんと下着を洗って常に股間を清潔にしておいてもらわなければならないのです!」
藤原「キモッ!気持ち悪っ!」
西岡「それに私は愛に突き動かされるまま四六時中、彼女を見ていただけです!まさに純情!」
藤原「はいー、ストーカーの罪も出てきちゃった!」
西岡「そして彼女を見続けているうちに気付いたんです。彼女は仕事が忙しくて部屋が汚かった。だから今の僕に出来る事は、彼女の部屋を掃除してあげる事だった!」
藤原「あーらら家宅不法侵入も出ちゃった!」
西岡「部屋を掃除していた時、彼女のごみ箱にあったレシートを見て私は驚愕しました。彼女はお金の使い方が荒すぎる。それは将来、結婚したら散財される事を思案していました。だから私は彼女の財布と通帳と印鑑を管理して、彼女に正しいお金の使い方を教えてあげようと思いました!」
藤原「OH…今度は窃盗かよ、止まんねぇな、オイ!」
西岡「五月蠅いですねさっきから先輩は!」
藤原「五月蠅ぇのはオメェだよ!」
西岡「人を愛する事が罪だとでも言いたいのですか!」
藤原「オメェのやった事が罪だって言ってんだよ!」
西岡「私がやった事は全て彼女の為を思ってこそです!」
藤原「それが迷惑だって通報があってお前は訴えられているんだよ!」
西岡「良いじゃないですか!別に減るもんじゃなし!」
藤原「減ってんだよ!パンツが!!」
西岡「失う事で得るものもある!」
藤原「お前が得たのは犯罪歴だけだよ!」
西岡「私が得たのは!恋と!愛と!あの人との将来だー!」
藤原「……もう本当もう何かもう嫌だコイツ……話通じない……だいたいさっきやたら何か長く独り言、言ってたけど、被害に遭った女性とどういう関係だったか分かってる?」
西岡「まだ付き合ってはいなんですが、まぁでももうそんな感じです!」
藤原「違うでしょ?赤の他人でしょ?」
西岡「そんな事ありません!私はあの人ともう何回も会っています。休みの日も、平日も」
藤原「被害に遭った女性が歯医者だったからだろそれは。お前ただ歯を直しに何回も通っただけだろ!」
西岡「でも彼女は私に丁寧に優しく話しかけてくれました」
藤原「そりゃ歯医者だからね?治療工程を丁寧に話すに決まってるだろ」
西岡「それだけじゃないんです。彼女はこんな私の話を真剣に聞いてくれました」
藤原「だから歯医者だからだそれも!患者が何用で来たか聞くに決まってんだろ!」
西岡「愛が成せる技です!」
藤原「もうコイツもう本当もう何だかもう……」
西岡「で、よく分かんない事で僕が訴えられてるんで刑事の藤原先輩に相談に乗ってもらいたくてですね」
藤原「訴えられてる理由は明白だけどな」
北島、下手から登場。
北島「おいっスー。やってんねぇ」
藤原「北島」
西岡「北島先輩!」
北島「外まで怒鳴り声聞こえてきたけど、どうしたの?」
藤原「コイツ、ストーカーで訴えられてんだよ」
北島「ストーカー?」
西岡「いや、愛の成せる技ですよ」
藤原「何にせよ犯罪だよ!」
北島「まぁまぁ落ち着けよ。で、最初から説明してみ?」
西岡「はい。私は生まれてこの方、恋と言うものを知りませんでした。誰かと付き合った事も無いし、恋愛的に少しでも誰かを好きになった事もありません。そもそも結婚願望も無かったし―――」
藤原「いや、もうそれいいわ。簡単に言うと、ストーカーと家宅不法侵入と金品窃盗の上にパンツ泥棒を働いただけなんだよ」
北島「はぁはぁ、なるほど。それで?それに対して西岡はどう思ってんの?」
西岡「愛がそうさせました。恋は盲目なんです」
北島「成程なぁ」
藤原「『成程なぁ』じゃないよ」
西岡「北島先輩、確かに僕がやった事は犯罪かもしれません」
藤原「いや犯罪だよ」
西岡「でも、人を愛する事は犯罪ですか?」
藤原「あのなぁ、そういう話じゃなくてな―――」
北島「人を愛する事が罪か……確かに罪じゃあないな」
藤原「北島?」
北島「人を愛すると、確かに自分を見失って、誤った事をしてしまう。それは誰にでもあるな」
藤原「北島?」
北島「俺も昔は惚れた女にいきなり花束を渡したり、付き合って間もないのに指輪を渡しちまったりしたもんさ……」
藤原「ちょっとそれとこれとは話が違うような気がするんだけど」
北島「恋は盲目、お前はそう言ったな?」
西岡「はい」
北島「お前はただ彼女を愛した。そして道を誤った、それだけの事だったんだ」
藤原「北島?」
北島「これからはもっと段階を踏んで、素敵な恋を育んでいけ、分かったな?」
西岡「はい!」
北島「お前の気持ち分かるぞ。純愛なんだよな」
西岡「北島先輩……!分かってくれますか!」
北島「勿論だ!」
西岡、北島、熱い握手を交わす。
藤原「あ、これ面倒臭い人が増えただけだ」
北島「俺も今、恋をしているからお前の気持ち凄く分かるぞ!」
藤原「北島?」
北島「俺もついつい惚れた女の跡を着けちゃったりするからな!」
藤原「北島?」
北島「ついつい部屋を物色しちゃったり」
藤原「北島?」
北島「お金を管理してあげたくなったり」
藤原「北島?」
北島「パンツ被ってみたりしてな!」
藤原「北島!何だよ!お前もかよ!?お前も犯罪者かよ!」
北島「どうやらこの国では、人を愛する事が罪だと言いたいらしいからな(バッグから訴訟状を見せる)」
藤原「お前も訴えられてんのかよ!」
北島「だって仕方ないよねー?」
西岡「ねー?」
藤原「そこ座れお前らぁ!」
西岡、北島、ソファに座る。
藤原「そこじゃねぇよ!床だ!床!」
西岡、北島、床に胡坐を掻く。
藤原「正座ぁ!」
西岡、北島、正座をする。
藤原「はぁ……良いですか?物事には順序ってものがあります。恋をするには、まずどうしたら良いですか?」
北島「出会いを作る」
藤原「そうです。出会いはいつ起こるか分かりません。で、出会いがあったらまずどうしますか?」
北島西岡「相手の跡を着ける」
藤原「そこが違ぁう!相手の跡を着けたらそれはストーカーだ!」
西岡「でも、相手の住んでる場所を知りたいじゃないですか」
藤原「それはもっと仲良くなってからで良いだろ!最初は何気ない会話をして、次にデートに誘ってみて、そして次第にお互いの家に遊びに行ったり……」
北島「そんな面倒臭い事しないですぐに家に行きたいよねー?」
西岡「ねー?」
藤原「そこがまずおかしい!急に相手から物理的に距離を縮められたらお前らどう思う?」
北島西岡「うわー、大胆だなー」
藤原「お前らからしたらそうだろうよ!そうじゃなくて知りもしない女からいきなりそんな事されたらどう思う?」
北島「そんなん気持ち悪ぃじゃん」
西岡「ですねぇ」
藤原「じゃあ、それを彼女達に当てはめてみ?」
北島「……何の問題が?」
西岡「さっぱり分かりません」
藤原「生粋のバカか!相手だって気持ち悪いと思うだろって事だよ!」
北島「えー、何でー?」
西岡「知らない男ならまだしも、何度も会ってるんだから大丈夫じゃないッスか?」
藤原「会ってるのは仕事とか!の上での話だろ!プライベートではないだろ!」
西岡「僕はプライベートです!」
藤原「お前はな!?彼女はどうなんだよ!仕事中だろ!」
西岡「そうなんです、仕事中なのに真剣に私と話してくれるんです」
藤原「もう良いよ!で、北島、お前はどんな相手に迷惑をかけたんだ?」
北島「迷惑だなんて人聞きの悪い。俺はすぐそこの歯医者の歯科医さんに訴えられてんだ」
西岡「ちょっと待ってください、それって小川歯科医院の小川先生じゃないでしょうね!?」
北島「そうだけど?まさかお前もか!」
西岡「藤原先輩、コイツとっ捕まえちゃってください!コイツ犯罪者です!」
北島「違う!俺は彼女と結婚を前提に考えてるんだ!コイツこそ捕まえろ!」
西岡「何が結婚を前提にだ!彼女の生活滅茶苦茶にしやがって!」
北島「何だと!お前こそ彼女にちょっかい出してんじゃねぇか!」
藤原「五月蠅ぇ!このバカ犯罪者共!そこの小川医院の小川先生はな、もう結婚を前提にお付き合いしてる男がいんだよ!」
西岡「それって僕の事ですよね!?」
北島「バカ、俺だよ!」
藤原「違ぇよバカ!別の男だよ!」
北島西岡「は?」
藤原「お前らと違ってな、ちゃんと健全にお付き合いしてる奴がいるんだよ」
北島「それってどこの馬の骨だよ」
西岡「教えてくださいよ!」
藤原、ペンダントを取り出す。
西岡「あ、そのペンダント!」
北島「小川先生と同じやつ…まさか!」
藤原「俺だよ!今真剣に付き合ってんの!全く、最近纏わりついてるストーカーってお前らだったのかよ!もう知らん!」
北島「藤原と、小川先生が……?」
西岡「付き合ってる……?」
藤原「あぁそうだよ。もう出ていけ!絶交だ!」
北島「なら恋のライバルだな!彼女は俺のもんだ!」
西岡「負けませんよ!先輩方!」
藤原「良いから出ていけ!この犯罪者共!」
北島、西岡、退場。
藤原「はぁ……やっと終わった。ま、アイツらの犯した罪のおかげでこうやって小川先生を助けて、付き合えたんだけどな。幸せになってやるから、文句は刑務所で言ってろよ」
―――終わり
『バーテンダー』
登場人物
・小川美幸・・・OL
・米山菜奈実・・・OL
・西岡聖弘・・・バーテンダー
・儀間愛真・・・バー店員
舞台
・バー
明転。
バー。席が下手寄りに一つ。中央奥にバーカウンター。
バーカウンターの後ろには「Barせせらぎ」と言う看板がぶら下がっている。
西岡、カウンターに、儀間、入り口付近に板付き。
西岡、コートを着ている。儀間、タップシューズを履いている。
小川、米山、上手から登場。
米山「へー、こんな所にバーなんてあったんだ」
小川「最近見付けてね。所謂行きつけのバーって感じ」
米山「へー」
儀間「いらっしゃいませ。空いている席にお座りください」
小川「はい。じゃあここにしよっか」
米山「うん」
西岡「いらっしゃいませ。ご注文はお決まりでしょうか?」
米山「えーっと、私あんまりこう言うお店に入った事無いから、小川、任せて良い?」
小川「と言っても私もまだそんなに詳しくないからな……何かおススメのカクテルはありますか?」
西岡「じっくり飲みたいのであれば、アルコール度数の高い物を。あっさりと飲みたいのであれば低い物ではどうでしょう?」
小川「じゃあ私は度数の高い物で」
米山「私はあっさりしたので」
西岡「かしこまりました。今ですとキウイと柑橘類が旬のフルーツですが、それでお作りするのはいかがでしょう?」
小川「じゃあキウイで」
米山「柑橘系でお願いします」
西岡「かしこまりました。少々お待ちください。儀間さん」
儀間「はい」
儀間、下手に退場。
米山「……渋いな」
小川「でしょ?結構、格好良いと思うんだ」
米山「髪長過ぎるけどな」
西岡、冷蔵庫を勢い良く開けて、勢い良く閉める。
米山「……最近、仕事どう?」
小川「私自身のは落ち着いたかなあ。でも新人教育任されちゃったからそっちが忙しいかな」
米山「ふーん。やっぱ教育すんのって難しい?」
小川「まぁね」
西岡、勢い良く果物を切る。
米山「…………」
小川「あ、そうそう、新人と言えば、今年入った山田君分かる?」
米山「あぁ、あのイケメンでしょ?」
小川「あの子もう結婚するって」
米山「本当に?早くない?まだ大学卒業して数か月でしょ?」
小川「なんからしいよ?『実は今度、結婚するんですよ~』って言ってきて」
米山「あっそー。まだ仕事始まったばっかりなのにねぇ」
西岡、カクテルシェイカーに氷とお酒と果物を大きい音を立てながら入れる。
米山「私も結婚の事考えないとなー」
小川「私もねー。親が特に五月蠅いからねー」
米山「分かるわー」
西岡、激しくカクテルシェイカーを振る。
米山「……五月蠅くない?」
小川「何?」
米山「五月蠅くない?」
小川「聞こえない」
米山「あれ!五月蠅くない!?」
小川「あぁ、バーテンダーさん?いつもの事だよ」
米山「いつもの事?あれが?」
小川「うん」
儀間、下手から登場。板を持ってきて、床に置く。
米山「何か板持ってきたけど?」
儀間、タップダンスを踏み出す。
米山「何あれ?タップダンス始めたんだけど?」
小川「これもいつものだね。テンションを上げる為にやるらしい」
米山「いる?このパフォーマンス」
小川「店内BGMの代わりだと思えば良いよ」
米山「ただ五月蠅いだけなんだけど。やかましい顔してんなぁもう」
小川「さっき渋いって言ってたじゃん」
米山「いや、あそこまで顔クシャクシャにしてまで振るもんかね?もうちょっとムーディーな雰囲気を保ちつつやるもんじゃない?」
小川「まぁ私もそんなにバーを知ってる訳じゃないしなぁ」
西岡、大きな音を出しながらシェイカーを置く。
儀間、板を持って下手に退場。
西岡、大きな音を出しながらグラスを取り出す。
米山「いちいち五月蠅いな」
西岡、ジョボジョボと注ぐ。
米山「そこも五月蠅いのか……」
西岡、もう一つのカクテルシェイカーをしながら振り出す。
米山「そうかもう一個あったのか……」
小川「良い音楽だと思えば楽しいよ?」
米山「何が『Barせせらぎ』だよ……せせらいでないよ。騒いでるよ……」
小川「まぁまぁ、もうすぐ来るから」
儀間、下手から板を持って登場し、板を床に置き、タップダンスを始める。
米山「またやってるよ……シェイカーも足音も五月蠅いなぁ!」
小川「BGMだと思えば良いって」
米山「こんなやかましいBGM無いよ!てか何で店内でコート着てんだよ……」
小川「オシャレじゃない?」
米山「オシャレじゃないわ。あんだけバサバサやってたら食品衛生上何か問題が起きそうだわ!髪も入りそうだし!」
西岡、大きな音を立てながらシェイカーを置く。
儀間、下手に板を持って退場。
西岡、大きな音を立てながらグラスを取り出し、またジョボジョボと注ぐ。
米山「また五月蠅いよ……」
小川「情熱的な注ぎ方だよね」
米山「注ぎに情熱なんかいらないよ……どうしたらあんな音を出しながら注げるんだ……」
小川「それだけ熱意があって作ってくれてるんだよ」
米山「その熱意のせいでビショビショになってんじゃん!」
西岡、激しくトレーにグラスを乗せて、タップをしながら来る。
米山「腹立つわー!あれー!」
小川「まぁまぁ、もうすぐだから」
米山「もうスッと来いよー!普通に作れよー!」
小川「まぁまぁ」
西岡「お待たせしました!キウイフィズとカンパリ・オレンジ一丁上がり!」
米山「もうさっきのムーディーな原型無いじゃないの!居酒屋か!」
西岡「ではごゆっくり!」
米山「聞いてないし……」
西岡、またタップを踏みながらカウンターに戻る。
米山「帰るのもやかましいな!」
小川「ほんじゃお酒も来たし、お疲れ、乾杯~」
米山「はい、乾杯……」
小川、米山、飲む。
米山「美味っ!?何コレ!?」
小川「でしょ~?ここすっごく美味しいんだよ~」
米山「これはハマるわ!私ここ通う!」
西岡「ありがとうございまーす!」
小川「あ、ピスタチオお願いしまーす!」
西岡「はい!喜んでー!」
米山「うん、もうそのスタンスで良いよ!」
―――終わり
『職務質問』
・登場人物
山田和代
西岡
儀間
・舞台
道端
明転。
道端。何も無い。
山田、ヤバい絵を持って、くるくる回りながら何か歌って上手から登場。
暫くして、西岡、儀間、下手から登場。
儀間「あれですかね?」
西岡「あぁ、うん。多分な。あの~、ちょっと宜しいですか?」
山田「はい~?」
西岡「どうも、私、神奈川県警の西岡と申します」
儀間「同じく、儀間です」
山田「あら~、おまわりさんですか~。こんばんはー、わんわん。犬のおまわりさん~」
西岡「い、犬のおまわりさん……?」
山田「それで犬のおまわりさんが何か御用ですか~?生憎私は迷子の子猫ちゃんではありませんよ~?」
西岡「いやぁ、最近ですね、ここらで真夜中に不審者が出没して不気味だと言う通報がありまして」
山田「まぁ~、それは怖いですねぇ……夜にこわ~い夢とか見ちゃいそうですねぇ」
西岡「で、ですね?その不審者の特徴が、奇抜な恰好をしていて」
山田「わぁ、怖い」
西岡「怖い絵を持っていて」
山田「まぁ、怖い」
西岡「回りながら歌っていると言う人物でして」
山田「あら、怖い」
西岡「何か心当たりないかなと思いまして」
山田「全く知りませんわ~」
儀間「貴方ですよ、貴方」
山田「私は可愛い服で可愛い絵で小鳥のさえずりを口ずさんでいるだけですわ~」
西岡「可愛い服……?」
儀間「これはちょっと可愛いとはかけ離れたと言いますか、奇抜な恰好かなと思いますが?」
山田「そうですかね~?夢の国っぽいと思うんですけど~」
西岡「あと何ですかこの絵?怖いんですけど」
山田「怖くありませよ~!これ夢の国ですよ~?」
儀間「見えませんねぇ……ただの悪夢にしか……」
山田「酷い事を仰るんですね~。ぷんぷん!」
西岡「あー……で、本題なんですけど、率直に言いますと、貴方に容疑が掛かっているので、ちょっとばかしお時間頂けませんか?職務質問をさせて頂きたいんですけれども」
山田「はい~、良いですよ~」
西岡「まずお名前は何ですか?」
山田「クリスティーヌ・ラピッド・パトラッシュ・エミュール・パトリシアですわ~」
西岡「……はい?」
山田「クリスティーヌ・ラピッド・パトラッシュ・エミュール・パトリシアですわ~。クリスって呼んでくださいね~」
西岡「は、はぁ……えっと、日本人ですよね?」
山田「夢の国の住人です~」
儀間「本名は?」
山田「本名は恥ずかしくて~!夢の国の川にポイっと捨てちゃいました~」
儀間「いや、あるでしょ?本名」
山田「無いです~。なのでクリスって呼んでくださいね~」
儀間「どう見ても純正日本人に見えるんですが?」
山田「今でいう所のキラキラネームです~」
儀間「はぁ?バカにしてるのか?」
西岡「まぁまぁ、儀間、落ち着いて。あー、じゃあクリスさん?職業は何を?」
山田「クリスは悩める子羊さん達の悩みを受け止めて、私の溢れる愛を皆にお届けする希望と夢に満ちたお仕事ですよ~」
西岡「えっと、それはどう言う……?」
山田「こう言う事やってます~」
西岡「えーっと……あ、占い師さんなんですね?」
山田「はい~。未来永劫幸せをお届けする愛と夢の伝道師です~」
西岡「あと本名は山田和代さんなんですね」
山田「クリスです」
西岡「いや、山田和代さんですよね―――」
山田「クリスです!」
西岡「アッ、ハイ、クリスさん」
山田「うふっ」
西岡「…………」
山田「私はクリス~うふふのふ~っふっふ~!」
西岡「あー……辛い……」
儀間「西岡さん、大丈夫ですか?」
西岡「あぁ、うん、俺は大丈夫。むしろクリスさんが大丈夫ですか?」
山田「クリスは元気ですよ~!クリスは夢の中の様に元気まんまるお日様がごとく~ですよ~」
西岡「あー!面倒臭ぇー!普通に話は出来ないんですか!?」
山田「クリスはこれが自然体なので~」
西岡「これが自然体ってどうかしてますよ!普通にしてください!」
山田「しょんぼりオカピッピ……」
西岡「だぁ~…!オカピッピ~……!」
儀間「西岡さん、本当に大丈夫ですか?」
西岡「俺こう言うタイプ苦手だわ~……」
儀間「西岡さんは優しすぎるんですよ。ここは同じ女性の私がビシッと言ってやりますよ!」
西岡「結構、精神、持ってかれるぞ~……」
山田「もう良いですか~。そろそろ夢の国の方へ戻りたいんですけど~」
儀間「もうちょっと待って下さい。ところでそのずっと持ってるその絵は何ですか?」
山田「これですか~?良く描けてるでしょ~?私の大好きな夢の国を書いたんです~」
儀間「ちなみにそれは何を描いたんですか?」
山田「分かりませんか~?夢の国のお花畑で楽しく遊ぶクリスと子供達とわんちゃんねこちゃん達ですよぅ」
儀間「これが……?」
山田「素敵な夢の国の世界観が良く描けてるでしょう~?」
儀間「さっきも言いましたけど、悪夢にしか見えないんですが」
山田「もう、またそんな事言って~!ぷんぷん!ですよ~。あ、もしかして褒めてくれてます~?だったらありがとですよ~!」
儀間「褒めてないんだよなぁ……それは趣味ですか?」
山田「もう一つのお仕事でこう言う事もやってます~」
儀間「ほぉ?へー、絵描きさんでもあるんですか」
山田「先日クリスの夢を描いたこの子達が皆さんの心に届く楽しいイベントをお髭の優しいおじさん達が開いてくれたんですよ~」
儀間「絵の展覧会の事ですか?」
山田「そうですそうです。夢の国の住人限定のパーティーです~」
儀間「へー」
山田「でもお友達の子供達は皆、泣いてたんですよねぇ~。何ででしょ~?」
儀間「何となく分かる気がしますが……」
山田「大人の皆さんは『芸術的だ!』『現代のピカソだ!』って褒めてくれたんですけどね~」
儀間「それも何となく分かります。まぁ絵の事は置いといて、何でくるくる回って歌ってたんですか?」
山田「運命の王子様に会えないかなって思っておまじないを歌ってたんですよ~」
儀間「は?」
山田「クリスの王子様に会いたくて、そのおまじないです~」
儀間「意味分からん……」
山田「分かりませんか?女の子なら分かるでしょ?王子様に憧れるこの乙女心…!」
儀間「現実にそんな王子様なんかいないから分かりません。何でこんな真夜中にやってたんですか?」
山田「魔法が解ける時間に会うとより運命的に感じませんか~?」
儀間「感じないですね」
山田「そうですか~……残念マジ卍~」
儀間「なんと言うか、自分の世界観に浸ってるんですねぇ」
山田「変ですか~?」
儀間「ご自身の世界観を持ってる方って素敵だと思いますよ」
山田「いやぁ~、またまた褒められちゃいましたね~。うふふのふ~」
儀間「皮肉が通じない……」
山田「私は褒められて伸びるタイプなんですよ~。儀間さんは優しいですね~」
儀間「優しいかなぁ……もう嫌だこの人……」
西岡「な?分かったろ?精神、持っていかれるって。こう言うのは何言っても話が出来ないんだよ…」
山田「それにしても西岡さん、髪が長いですよね~」
西岡「あぁ、その、最近忙しくて切れないんですよ」
山田「ラプンツェルみたいで可愛いです~!」
西岡「ラプンツェル……可愛いなんて言われたのは初めてです」
山田「これから西岡さんの事ラプンツェルって呼んで良いですか~?」
西岡「いや、ラプンツェルはちょっと……」
山田「え~?可愛いのに~」
山田、ラプンツェルの曲を歌う。
西岡「あの、近隣住民に迷惑ですから!」
山田「素敵なお歌は人々を幸せにするんですよ~。大丈夫です~」
西岡「いや、単純に五月蠅いですから!」
山田「ちぇ~」
西岡「クリスさんは普段からそんな格好とスタンスでお仕事をなされているのですか?」
山田「そうですね~。こう言うの許してくれる大人の皆さんが少ないので~」
西岡「あぁ、そうなんですか。で、また本題に戻りますけど、正直、近隣住民から貴方に苦情が来てるんで、もうこういった事は止めてほしいんですよ」
山田「こういう事?」
西岡「変な恰好したり、変な絵を持ち歩いたり、真夜中に歌ったりしないでほしいと言う事ですよ!」
山田「え~?何が問題なんですか~?」
儀間「変な恰好が怖いって言ってんの!」
山田「可愛いと思うのに~」
儀間「可愛くない!あと怖い絵を持ち歩くな!」
山田「とっても可愛く描けたから良い子の皆に見てもらいたかったのに~」
儀間「正直おぞましいわ!あと真夜中に歌うのは単純に迷惑だから止めなさい!」
山田「お姫様の呪いが解けるのは今くらいの時間ですよ~?それに素敵な歌は皆を幸せに出来るから大丈夫ですよ~」
儀間「五月蠅くて眠れないって苦情が来てんです!」
山田「良い子の子守歌ですよ~?」
儀間「子守歌になってねぇんだよ!こんな事で出動させられるこっちの身にもなれ!」
山田「そんなの知ったこっちゃありませんよ~。それがおまわりさんのお仕事でしょう~?」
儀間「あー!突然の正論!もう嫌だこの人~!」
西岡「儀間、落ち着け!」
山田「大丈夫ですか~?良かったら心が落ち着くお歌を歌いましょうか~?」
儀間「結構です!」
西岡「とにかく、もう真夜中に騒ぐのは止めてください!苦情が来てるんで!」
山田「オフの時くらい好きな事して良いじゃないですか~!私だって夢を見たいんですよ~!」
儀間「夢は寝て見ろ!」
山田「現実でも充実したいんです~!」
儀間「別の方法があるだろ!そんなに夢の国に憧れてるなら金払ってそこに行け!」
山田「ありのままの姿を見せたいんです~!」
儀間「然るべき場所でやれ!とにかく迷惑なんです!」
西岡「だから落ち着けって、儀間!とにかくね、クリスさん?このままだと貴方は訴えられて我々警察のお世話になってしまうかもしれないんです。そうなりたくなかったら今すぐこういう事は止めて下さい!」
山田「そうですか~……皆が幸せになると思ってやってたんですが、残念です~。もう止めます~……」
西岡「分かってくれましたか!」
山田「はい~。これからはこっちの絵で歌います~!」
山田、別の絵を取り出して、別の歌を歌う。
山田「やっぱり同じ絵とお歌だと飽きちゃいますよね~!たまには別のお歌を歌います!」
西岡儀間「絵と曲を変えても迷惑だっつの!」
―――終わり
『整体』
・登場人物
西岡
藤原
・舞台
整体院
明転。
整体院。ベッドが一つ。受付が一つ。
西岡、板付き。藤原、舞台上手から登場。
西岡「いらっしゃいませ」
藤原「予約した藤原です」
西岡「藤原様ですね。お待ちしておりました。どうぞこちらへ」
藤原「はい」
西岡、藤原、ベッドに移動。
西岡「こちらにお座り下さい」
藤原「はい」
西岡「こちら問診表になります。注意事項をご確認の上、こちらの同意書にサインして下さい」
藤原「はい」
藤原、サインする。
藤原「はい、書きました」
西岡「ありがとうございます。では本日担当させて頂きます、西岡と申します」
藤原「宜しくお願いします」
西岡「宜しくお願い致します。では問診を始めますね。どこか気になる点は御座いますか?」
藤原「腰ですかね。最近腰痛が酷くて。体が曲がってんじゃないかなと思って」
西岡「なるほど、分かりました」
藤原「あ、後ですね、肩甲骨がちょっと痛いです。これも体曲がってんのかなって思ったりしてます」
西岡「分かりました。ではまず肩甲骨から治していきますね」
藤原「宜しくお願いします」
西岡「では横になって下さい」
藤原「はい(横になる)」
西岡「では始めていきますね」
藤原「お願いします」
西岡「(施術を開始する)強さはどうですか?」
藤原「もうちょっと強めでお願いします」
西岡「分かりました。これでどうですか?」
藤原「あぁ、丁度良いです」
西岡「分かりました」
西岡、暫く施術を続ける。
西岡「ちょっとここ強く押しますね」
藤原「はい」
SE、ボキッ、という音。
西岡「あ」
藤原「あ!?あ、って何ですか!?」
西岡「いえ、何でもありません」
藤原「いや、何かあったでしょ!さっきのボキッて音とか!」
西岡「本当に何でもありません」
藤原「はぁ……」
西岡「ちょっと強めに押しますね」
藤原「はい……」
西岡、強めの施術を行う。
SE,ボキボキッ、という音。
西岡「あ」
藤原「また『あ』って言った!何だよ!?」
西岡「おおおおお落ち着いて下さい。何でもありませんから」
藤原「明らかに動揺してるでしょ!俺の体に何が起こったんですか!?」
西岡「大丈夫ですから!今元に戻しますから!」
藤原「元に戻す!?何かヤバい事が起こってるんじゃないのか!?」
西岡「大丈夫です大丈夫です!私を信じて下さい!」
西岡、施術をする。
SE、ボキボキッ、という音。
西岡「よし、元に戻った!」
藤原「元に戻ったってどういう事ですか?まだ肩甲骨痛いんですけど」
西岡「はい、施術前の状態に戻ったという事です。これから治していきます」
藤原「二度手間!」
西岡「ではいきますねー」
西岡、施術をする。
SE、ボキボキッ、という音。
西岡「……あ」
藤原「『あ』って何!?」
西岡「施術は完了です!次は腰に移ります!」
藤原「本当に大丈夫!?」
西岡「大丈夫です!私を信じて下さい!」
藤原「本当に大丈夫かよ……」
西岡、腰の施術を開始する。
SE、ボキボキボキッ、という音。
西岡「あ」
藤原「また言ったな!?『あ』って!それに凄い音なったぞ!?」
西岡「だだだだだ大丈夫です!お気になさらず!」
藤原「駄目だって!信じられない!」
西岡「今ここで止めたら大惨事になります!せめてこの失敗を取り返させて下さい!」
藤原「失敗!?失敗って言った!?」
西岡「失言は謝ります!でも……」
藤原「失言なんかい!」
西岡「今ここで止めるよりかはせめて元の状態に戻った方が確実に良いです!」
藤原「そんなに悪い状態にさせられたのか!?」
西岡「そうなってしまった事は謝ります!でも……」
藤原「悪い状態なんかい!」
西岡「とにかく施術を再開します!大人しくしてて下さい!」
藤原「大丈夫かよ……」
西岡、施術を開始する。
SE、ボキッ、という音。
西岡「あ」
SE、ボキボキッ、という音。
西岡「あぁ」
SE、ボキボキボキッ、という音。
西岡「あぁっ」
SE、ボキボキボキボキッ、という音。
西岡「あぁっ!」
藤原「もう良いわ!帰る!」
西岡「あぁ!ちょっと!まだ終わってませんよ!?」
藤原「ここに居た方がもっと体が悪くなる気がする!」
西岡「そんな事はありません!私を信じて下さい!」
藤原「信じられるか!とにかく俺は帰る!」
西岡「そうですか……残念です」
藤原「いくら?」
西岡「四千円です」
藤原「はい、丁度(西岡に四千円を渡す)」
西岡「丁度お預かりします。こちら領収書です(藤原に領収書を渡す)」
藤原「はい」
西岡「またのご来院をお待ちしております」
藤原「二度と来るかよ」
暗転。
明転。
整体院。
西岡、板付き。藤原、舞台上手から登場。
西岡「いらっしゃいませ」
藤原「予約した藤原です」
西岡「あぁ、藤原様。その後、お体の調子はどうですか?」
藤原「どうしたもこうしたも無ぇよ!」
西岡「どこか不調がおありでしたか?」
藤原「絶好調だよ!」
西岡「はい?」
藤原「あれ以来、肩甲骨の痛みも腰痛も無くて体が軽いんだよ!」
西岡「それは良かったです」
藤原「良くねぇよ!」
西岡「はい?」
藤原「肩甲骨と腰が良くなったおかげでさぁ!他の部位の痛みが如実に表れるようになったんだよ!」
西岡「そうですか。では今日はどういった施術をお望みですか?」
藤原「全身!全身くまなく!」
西岡「そうなりますと、九十分コースで二万三千円になりますが」
藤原「金に糸目は付けん!しっかりたっぷりやってくれ!」
西岡「ありがとうございます。ではこちらに」
西岡、藤原、ベッドに移動する。
西岡「では同意書にサインを」
藤原「はい(サインする)」
西岡「では首の方からやっていきますね」
藤原「はい」
西岡、施術を始める。
SE、ボキボキッ、という音。
西岡「あ」
藤原「また『あ』って言った!」
西岡「あ、すみません」
藤原「いや!良い!もっと言ってくれ!」
西岡「はい」
西岡、施術を続ける。
SE、ボキボキッ、という音。
西岡「あ」
藤原「その『あ』が逆に心地良い!もっとやってくれ!」
西岡「ありがとうございます」
暗転。フェードアウト。
SE、ボキボキボキボキという音。フェードアウト。
明転。
整体院。
西岡、藤原、板付き。
藤原「フゴッ……やべぇ、寝てた……」
西岡「良くお休みになってましたよ」
藤原「すみません、寝ちゃって」
西岡「いいえ、それだけ気持ち良かったんだと思うとこちらとしても嬉しいです」
藤原「そうですか。なら良かったです」
西岡「お体の調子はどうですか?」
藤原「(立ち上がる)……うん、凄く体が軽い!流石ですね」
西岡「そんなそんな……」
藤原「えーっと、二万三千円でしたよね?」
西岡「はい」
藤原「(財布からお金を取り出して西岡に渡す)丁度ね」
西岡「はい、確かに二万三千円、丁度、頂きました。こちら領収書です(藤原に領収書を渡す)」
藤原「じゃあまた何かあったら来ますね」
西岡「はい。些細な事でも構いませんので、お気軽にご来院下さい」
藤原「はい。それじゃ!(舞台上手に退場)」
西岡「……あ、時限爆弾式に一気に体の調子が悪くなるって伝えるの忘れた。あ、まぁいいか。お金落としてくれるし」
―――終わり
『モモ味の天然水』
・登場人物
西岡
藤原
・舞台
会議室
明転。
会議室。テーブル一つに飲み物が入ったいくつかのペットボトルといくつかの資料がある。
西岡、資料を眺めてペットボトルの飲み物を飲んでは資料をテーブルに置いていく。
西岡「これも駄目……これも駄目……はぁ、なかなか新商品は作れないもんだな」
SE、ノックの音。
西岡「入れ」
藤原「失礼します!(二本のペットボトルを持って舞台上手から登場)西岡部長!」
西岡「おぉ、藤原。まだだったな、お前んとこの新商品のプレゼンは」
藤原「工場のミスで遅れてしまいましたが、なんとか出来上がりました!」
西岡「お前んとこはテーマは水だったな。何味にしたんだ?ミカンとかレモンとかあるけど」
藤原「その名も『モモの天然水』です!」
西岡「桃の天然水なんて前からあるじゃないか」
藤原「いやいや、僕のモモの天然水は新しいですよ。これを試しに飲んでみて下さい」
西岡「じゃあ一口……うん、これは、なんだ?しょっぱい」
藤原「はい」
西岡「それに何だこれ?鶏肉っぽい味がする」
藤原「そうです」
西岡「お前コレ……」
藤原「何か問題が?」
西岡「これモモはモモでも、鶏の股の味じゃないか」
藤原「えぇ。今まで無かった味でしょう?」
西岡「それはそうだが……」
藤原「……何か問題が?」
西岡「純粋に不味い!」
藤原「水だけに純水。上手いですね」
西岡「そのジュンスイじゃない!」
藤原「あ、この上手いですねも美味いですね」
西岡「五月蠅いな君は!これ香ばしい香りがするんだけど?」
藤原「キチンと焼いた鶏股肉から抽出されたエキスを使っている拘りの逸品となっています」
西岡「どこに拘ってんの?ちなみにこれ味付けされてんの?」
藤原「勿論ですよ!」
西岡「塩?タレ?」
藤原「塩で御座います」
西岡「だよねぇ?しょっぱいもん」
藤原「夏とか塩分補給も出来て丁度良いと思うんですが」
西岡「駄目だよ、ただの塩じゃあ」
藤原「ただの塩じゃあありません」
西岡「じゃあ何?」
藤原「秘伝の塩で御座います」
西岡「秘伝の塩って何?タレなら分かるけど」
藤原「それは企業秘密ですが、簡単に言うと社員から抽出された汗を凝縮して塩にしてそれを振りかけました―――」
西岡「おえーっ!キモッ!気持ち悪っ!」
藤原「安心して下さい、美人揃いの汗が抽出されています」
西岡「そういう問題じゃない!人の汗から塩を作るとかどういう発想?」
藤原「屈強な男達から採った方が良かったですか?」
西岡「そういう事じゃない!それもキモイ!どういう状況でそんなトチ狂った会議が成されたの?」
藤原「社員一同、三日間寝ずに考えて会議した結果で御座います」
西岡「もう寝てなくて頭おかしくなってるとしか思えない!」
藤原「どうですか、我がチームの天然水は?」
西岡「駄目だよ!こんなんじゃ売り物にならないよ!」
藤原「駄目ですかー」
西岡「こんな物飲まされた事で訴訟したい気分だけどね」
藤原「まぁまぁ、この事は穏便に水に流して下さいよ」
西岡「上手い事言ったつもりか!」
藤原「次のを飲んでみて下さいよ」
西岡「何だよ今度は……」
藤原「これです(西岡にもう一本のペットボトルを渡す)」
西岡「飲むのに勇気がいるんだけど……」
藤原「まぁまぁ、飲んでみて下さい」
西岡「おう……(ペットボトルの水を飲む)……ちょっと雑味があるけど、普通の水って感じだな。何コレ?水道水?」
藤原「水道水な訳無いじゃないですか。それじゃあ詐欺でしょう」
西岡「じゃあ何コレ?」
藤原「先程申し上げた社員の汗を抽出する際に取り除いた蒸気を集めて、ろ過したものがこの水になります―――」
西岡「おえーっ!キモッ!気持ち悪っ!これもかよ!」
藤原「どうですか!我がチームは二個も作ってきたんですよ!」
西岡「何でコレが通ると思ったの!?」
藤原「無駄を無くそうとした努力の結果です!」
西岡「努力の方向性が間違ってる!これらは没だ!」
藤原「何でですか!?」
西岡「衛生上、大問題だからだよ!」
藤原「どこがですか!?」
西岡「普通分かるだろ!もういい!帰れ!」
藤原「それじゃあこのプロジェクトはどうするんですか!?」
西岡「引き続き皆で進めていく!でもまずはお前らのチームは寝ろ!帰って寝ろ!それが今のお前らの仕事だ!」
藤原「……分かりましたー……」
西岡「何で不機嫌そうなの?」
藤原、舞台上手に退場。
暗転。
明転。
会議室。
西岡、板付き。
SE、ノックの音。
西岡「入れ」
藤原「失礼します」
藤原、一本のペットボトルを持って登場。
西岡「おぉ、藤原か。どうだ?よく眠れたか?」
藤原「はい。あれからチームで色々考えて、結論、あの二本は無いなぁとなりました」
西岡「おっ、ようやく正気に戻ってくれたか。よしよし。で、新しい商品は出来たのか?」
藤原「はい。コレです」
藤原、ペットボトルを渡す。
西岡「これは?」
藤原「まま、グイッと」
西岡、ペットボトルの水を飲む。
西岡「しょっぱ!何コレ、しょっぱ!」
藤原「あれからチームで話し合った結果、一つの物を二つに分けたから不味いんだという結論になりまして、元々一つの物なんだからそのまま出せば良いんじゃないかという路線でコレを作りました」
西岡「じゃあこれただの汗じゃん!キモッ!気持ち悪っ!」
藤原「人の体から創り出された究極の天然水、題して『ヒトの天然水』です!」
西岡「お前ら寝てもこの結果かよ!狂気を纏ってんじゃないの!?」
藤原「我々は至って真剣です!」
西岡「もうお前らのチーム暫く謹慎!」
藤原「何でですか!?」
西岡「よくそんな事言えるな!?こんな事態を引き起こしといて!?」
藤原「真面目にやったんですよ!?そこは評価して下さい!」
西岡「真面目なのは評価してやるけど結果が全てを台無しにしてるんだよ!」
藤原「じゃあもう良いです!他の会社にこのプロジェクト売り渡しますからね!」
西岡「勝手にしろよ!」
藤原「ふん!(舞台上手に退場)」
西岡「あ、マジで他社に売り渡したら我が社のイメージダウンになるな……(スマートフォンを取り出し、電話する)……あ、もしもし?私だけど。悪いんだけど藤原のチーム、全員会議室ぶち込んで隔離しといて!」
―――終わり
『天使と悪魔』
・登場人物
藤原
天使
悪魔
妖精
鬼
エルフ
死神
堕天使
女神
閻魔、
・舞台
藤原の家
明転。
藤原宅。
藤原、舞台中央に板付き。
舞台中央、藤原の前に財布が置いてある。
藤原「財布拾っちゃった。警察に届けるべきか……」
悪魔、下手から登場。
悪魔「構う事ぁ無ぇ。自分の物にしちまえよ」
藤原「俺の中の悪魔」
悪魔「所詮他人の金だ。だが財布は後が面倒臭い。それは警察に届けてやんな」
天使、上手から登場。
天使「そんな事をしてはいけません」
藤原「俺の中の天使」
天使「素直に落とし主に返してあげるのです」
藤原「じゃあどちらにしろ警察に届けるか」
妖精、下手から登場。
妖精「その前にその財布のお金を全て寄付してから警察に届けるのです」
藤原「俺の中の妖精」
妖精「財布は本人に、お金は恵まれない人達に分けてあげるのです」
鬼、上手から登場。
鬼「構う事ぁ無ぇ!現金もカードも、限度額いっぱいまで使っちまえよ!」
藤原「俺の中の鬼」
鬼「全て自分の物にしちまえよ!他人の事なんか知った事か!」
エルフ、下手から登場。
エルフ「そんな事をするくらいなら、お菓子を買って町の子供達に配るのです」
藤原「俺の中のエルフ」
エルフ「子供は未来の宝です。彼らを大事になさい」
死神、上手から登場。
死神「この財布を持ち主に届けなければ、持ち主は死んでしまうかもしれません」
藤原「俺の中の死神」
死神「その財布はそれほど持ち主にとって大切な物です。早く帰してあげなければきっと後悔します」
堕天使、下手から登場。
堕天使「素直に受け取っとけよ」
藤原「俺の中の堕天使」
堕天使「きっと神様からのプレゼントだ。有難く使わせて貰おうぜ」
女神、上手から登場。
女神「神はそんな物贈っていません」
藤原「俺の中の女神」
女神「落とし主は困っています。そこで『貴方が落としたのはこの銀の財布ですか?それともこの金の財布ですか?』と聞くのです」
閻魔、下手から登場。
閻魔「落とし物を拾って警察に届けずに家に持ち帰るなど罪!」
藤原「俺の中の閻魔」
閻魔「中身をそのままにすぐに警察に届けるのだ!」
藤原「あー、もうどうしよう……」
悪魔「構わねぇよ。貰っちまえ」
天使「いいえ、警察に届けるのです」
妖精「いやいや、寄付をしなさい。その方がよっぽど世の中の為になります」
鬼「クレジットカード限度額いっぱーい!」
エルフ「まずは身近な子供達の幸せからですね」
死神「一人の人を無駄に殺す必要はありません。警察に届けなさい」
堕天使「神様からの施しを無下にするのか?」
女神「だから神はそんな物贈っていません。すぐに童話の通りにしなさい!」
閻魔「ダンザーイ!」
照明、フェードアウト。
悪魔、天使、妖精、鬼、エルフ、死神、堕天使、女神、閻魔、騒いでいる。
藤原「あー、もー、五月蠅い!」
照明IN。
悪魔、天使、妖精、鬼、エルフ、死神、堕天使、女神、閻魔、退場して既に居ない。
藤原「よし、元の女子更衣室に戻しておくか」
―――終わり




