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コント集  作者: 河野吉田
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3/37

コント集3

コント集3



21・・・・タイムマシン

22・・・デスゲーム

23・・・マッサージ

24・・・ボランティア

25・・・アフターオブ塾

26・・・師匠と弟子

27・・・浮気

28・・・同窓会

29・・・恩返しする人達

30・・・割り勘



『タイムマシン』



・登場人物


 西岡博士

 藤原助手



・舞台


 研究室





明転。


 研究室。大きいタイムマシンが後ろにある。

 西岡、藤原、板付き。藤原、ビデオカメラを持っている。


西岡「遂に完成したぞ!タイムマシンが!」

藤原「やりましたね、博士!」

西岡「あぁ、これでタイムトラベルする事が出来る!」

藤原「俺、恐竜が生きていた時代に行きたいです!生の恐竜を見てみたいです!」

西岡「それは出来ないんだ……」

藤原「何故ですか?」

西岡「まだこれは試作機でな……未来にしか行けないんだ」

藤原「そんな……で、でも、未来に行けば過去に戻れるタイムマシンを持って帰れるかもしれませんよ!」

西岡「それが何年先になるのか分からない……それにこのタイムマシンが一回で壊れる可能性もある。極めて危険な実験だ」

藤原「なるほど……ではこの実験は誰が被検体になるのですか?」

西岡「私が行くしかないだろう。責任が伴うからな」

藤原「それはいけません!博士には後継機を作ったり、実験の結果を活かして次に繋げる為の実験を行わなければなりません!」

西岡「じゃあ誰が行く?」

藤原「俺が行きます」

西岡「良いのか?とても危険な実験だぞ?」

藤原「俺は、博士を信じています」

西岡「藤原君、ありがとう」

藤原「はい」

西岡「ではこのタイムマシンの説明を改めてするぞ。このタイムマシンはマイクロブラックホールを発生させ、時空連続体との衝突を防ぐ為に空間以上傍受体を搭載したタイムレールで……」

藤原「難しい話は良いですから、動かし方を教えて下さい」

西岡「あぁ、分かった。まずこの時空固定機をセットする。これは行きたい時間だ。次に時空進行機をセットする。これは出発する時間だ。この二つをセットしたら、このタイムマシンの中に入り、中のスイッチを押す。するとたちまちタイムスリップ、タイムトラベルが出来るって寸法だ」

藤原「なるほど!それで、衝撃とかはどうなんですか?」

西岡「私の計算によればおそらく衝撃は無いだろう」

藤原「なるほど。それで、一番の欠点と言いますか、懸念すべき点はどこですか?」

西岡「そこなんだが、非常に言い辛くてな」

藤原「何ですか?」

西岡「時空移動時間と現在進行時間が同じという点だ」

藤原「……と言うと?」

西岡「簡単に言えば、タイムマシンの中で過ごす時間と外の流れる時間が同じと言う事だ」

藤原「は?」

西岡「例えば一時間タイムトラベルしようとすれば、タイムマシンの中で一時間過ごす事になる、という事だ」

藤原「と言う事だ、じゃないですよ。これ本当にタイムマシンなんですか?」

西岡「タイムマシンだよ?凄く綿密に作られたれっきとした時空移動機械だ」

藤原「素朴な疑問なんですけど、コレ、いります?」

西岡「なんて事を言うんだ!これは世界的に見ても素晴らしい発明品になるものなんだぞ!?」

藤原「でも中でただ一時間過ごすより、外で一時間過ごした方が有意義じゃありません?」

西岡「身も蓋もない事を言うな!」

藤原「言っちゃったよ!自分でもそう思ってるじゃないですか!」

西岡「とにかくこれはタイムマシンなのー!誰が何と言おうと、世界で初めて発明されたタイムマシンなのー!」

藤原「なのー!じゃないですよ!こんな無駄な物に時間とお金掛けて、恥ずかしくないんですか?」

西岡「無駄とは何だ!無駄があるから人は心を豊かにしていくんだぞ!」

藤原「また言っちゃったよ!自分でも無駄だって分かってるんじゃないですか!」

西岡「失敗を次に活かすんだよ!」

藤原「遂に言っちゃったよ!自分でも失敗だって分かってるんじゃないですか!」

西岡「五月蠅い五月蠅い五月蠅い!私はタイムマシンを作ったんだ!その事実は間違いないんだ!」

藤原「駄々を捏ねないで下さいよ、みっともない」

西岡「みっともないって何だ!みっともないって!」

藤原「そのまんまの意味ですよ」

西岡「もう良いから早くこのタイムマシンに乗り給えよ」

藤原「え?嫌ですよ」

西岡「何で?」

藤原「だってこの中で無駄な時間を過ごさなきゃいけないんでしょ?嫌ですよそんなの」

西岡「無駄じゃない!歴史的科学実験の実例になれるんだぞ!?決して無駄なんかじゃない!」

藤原「いやいや、無駄でしょ。これが本当にタイムマシンなのか疑問すら覚えてきましたよ」

西岡「言い忘れてたけど、このタイムマシンは中に入ると時間が止まるんだ。だから例え百年経っても老ける事は無い」

藤原「へー」

西岡「へーって何だ、へーって。凄いだろ」

藤原「どうやって証明するんです?」

西岡「とりあえずこの中に入って少しの間、過ごしてみて」

藤原「はぁ。分かりました」

西岡「とりあえず様子見で一時間後に設定しよう。そして君はこの時計を持って中に入るんだ」

藤原「何故です?」

西岡「本当に中の時間が止まっているかどうか確認する為だよ」

藤原「そうですか。じゃあとりあえず中に入りますね」

西岡「おう。よろしく頼む。グッドラック」

藤原「はいはい」

西岡「何だよその適当な返事は……えー、現在の時刻は西暦2021年、十月十日、午後二時三十分、と。タイムトラベルする到着時刻は、同年同日午後三時三十分、と」


 藤原、タイムマシンの中に入る。

 西岡、タイムマシンを起動する。


 西岡「タイムマシン、起動!」


 暗転。


 明転。


 西岡、椅子に座って新聞を読んでいる。

 タイムマシンが開き、中から藤原が出てくる。


西岡「藤原君!無事だったか!」

藤原「はぁ、まぁ」

西岡「どこか体に異常はないか?具合が悪くなったりとかないか?」

藤原「至って健康です」

西岡「そうか、良かった。そうだ、今の時間を確認しよう。今は午後三時三十分だ。君の時計はどうだ?」

藤原「えーっと、午後二時三十分ですね」

西岡「よし!私の計算は正しかった!丁度一時間、時間がズレいているぞ!」

藤原「あのー」

西岡「何だね?」

藤原「これ、時計に細工してません?」

西岡「何を言うか!これにはなにも細工はしていない!」

藤原「じゃあ電池が抜かれているとか、切れてるとか、壊れてるとか」

西岡「これは買ったばかりの新品だ!そんな事は決して無い!」

藤原「そうですかー」

西岡「何だ?何が不満だ?」

藤原「これで何を証明するって言うんです?時間が止まっていたのなら、俺が一瞬に感じるように出来てなきゃおかしいでしょう?きっちり一時間分過ごしてましたよ?」

西岡「じゃあ今度は百年後に設定しようじゃないか!ほら!早く乗り給え!」

藤原「えぇ……死んじゃう気がしますけど……」

西岡「大丈夫だ!時間は止まってるから腹も減らないしトイレに行かなくても良い!それに暇つぶし用にゲームとか漫画とか置いてあるから!」

藤原「嫌ですよ。乗りたくありません」

西岡「頼むから乗ってくれ!この通りだ!(土下座する)」

藤原「ちょっ……止めて下さい。仮にも貴方は博士なんですよ?」

西岡「君がどうしても乗ってくれないなら、このプロジェクトはオジャンになるんだ!」

藤原「はぁ……分かりましたよ。乗りますよ」

西岡「ありがとう!藤原君!」

藤原「じゃあ、百年後に設定して下さい」

西岡「おう!(タイマーをセットする)君に会えるのは、これで最後か」

藤原「ですねぇ」

西岡「私の子孫に、宜しく」

藤原「はいはい(タイムマシンの中に入る)」

西岡「タイムマシン、起動!(タイムマシンを起動する)」


 暗転。


 同時に舞台上手にバチバチと閃光が走る。


西岡「うわっ!?何だ!?」


 明転。


 西岡、座って新聞を読んでいる。藤原、タイムマシンから出てくる。


藤原「いやぁ……確かに百年くらいの時を過ごした感じだなぁ……」

西岡「…………!?」

藤原「あ、何だ、博士じゃないですか。これ体感時間を延ばす機械だったんですね。五億年ボタン的な。タイムマシンかと言われると微妙ですが……」

西岡「もしかして、藤原さん、ですか?」

藤原「へ?」

西岡「申し遅れました。私、西岡聖弘博士の曾孫の西岡正弘です」

藤原「ひ、曾孫?」

西岡「はい。代々、このタイムマシンを守るように言い付けられて百年間ここで藤原さんが目覚めるのを待ってたんです」

藤原「演技が上手いですね、博士。昔、演劇でもやってました?」

西岡「演技じゃありません!今は2121年、十月十日です!」

藤原「そんな嘘に騙されませんよ」

西岡「嘘じゃありません!外を見てみて下さい!」

藤原「何々?……うわっ!?車が飛んでる!?何も持ってないのに人が飛んでる!?人の服が一瞬で変わった!?空に電光掲示板みたいに文字が!?」

西岡「どうです?これで信じてもらえましたか?」

藤原「あ、あぁ、信じる……信じますよ……」

西岡「じゃあ、あちらの機械に乗って下さい」

藤原「あれは?」

西岡「私が開発した、過去に戻れるタイムマシンです。曾お爺さんみたいに百年の体感時間を感じる事無く一瞬で戻れるのでご安心を。後、これは送り飛ばすだけの装置なので向こうには残りません。タイムパラドックスを防ぐ為に」

藤原「あ、あぁ、はい。分かりました。ありがとうございます(舞台上手に向かって行く)あぁ、そうだ。西岡博士が、子孫に宜しくって言ってましたよ」

西岡「そうですか。では私からも、曾お爺さんに宜しくお伝え下さい」

藤原「分かりました(舞台上手に退場)」

西岡「タイムマシン、起動!」


 暗転。

 同時に舞台上手にバチバチと閃光が走る。


西岡「うわっ!?何だ!?」


 明転。


西岡「何だ……!?何が起こった……!?」

藤原「(舞台上手から登場)ただいま、博士」

西岡「藤原君……?え、でも今このタイムマシンに……?」

藤原「未来から戻ってきたんです」

西岡「未来から?どういう事だ?」

藤原「えーっと……あぁ、車は飛んで無いし、人も飛んでない。元の時間に戻って来れたんですね」

西岡「どういう事だ?説明してくれ」

藤原「良いですよ。まず、博士のこのタイムマシンは成功です。そして……」

西岡「そして……?」

藤原「ご子孫が、宜しくと仰ってましたよ」

西岡「宜しく……?じゃあ、未来に行ってきたのかね!…?」

藤原「はい。博士のご子孫が、向こうで待っていてくれました」

西岡「そうか!それは良かった!で、どうやって戻ってきたんだ?」

藤原「博士のご子孫が過去に戻れるタイムマシンを発明して、それで送り飛ばしてもらったんです」

西岡「送り飛ばした?じゃあ過去に戻れるタイムマシンは手に入らなかったのか!?」

藤原「え?はい。タイムパラドックスが発生するとかで」

西岡「なんだよー!手土産くらい持って帰って来いよー!」

藤原「何ですか?またいつぞやの、子供みたいに叫んで」

西岡「過去に戻れるタイムマシンがあるならこれで私の研究は完成なのに何でそこが分からないかなー!?」

藤原「自分で発明してこその研究でしょう」

西岡「いいや、ここまでやったんだから他人の力でも良いから終わらせたい!」

藤原「よくこんな人からあんな出来た子孫が生まれたな」

西岡「藤原君、もう一度未来行って来てくれ!」

藤原「嫌ですよ。また百年あの中で過ごさなきゃいけないんでしょう?」

西岡「そうなるね!」

藤原「そうなるね!じゃないんですよ!またあの苦行をするなんて死んでも嫌です!」

西岡「じゃあ誰が行けば良いというんだ!?」

藤原「博士が行けば良いでしょう?安全性は確認出来た訳ですし」

西岡「そうか!じゃあ今から行くか!(タイムマシンに向かう)あっ!今藤原君が入ってるから使えないじゃないか!」

藤原「あぁ、そうでしたね」

西岡「ちょっと引っ張り出すか」

藤原「止めて下さい!?僕が居なくなっちゃうでしょう!?」

西岡「何で?今ここにいるじゃん」

藤原「馬鹿なんですか!?ここの僕が未来に行ったから今僕がこうしていられるんでしょう!?タイムパラドックスを自分から創り出してどうするんですか!」

西岡「あぁ、そうか……じゃあどうすれば良い?」

藤原「もう一台作れば良いじゃないですか」

西岡「それがなぁ……」

藤原「どうしたんです?」

西岡「悪用されない為に設計図は全て抹消しちゃった……」

藤原「あー……じゃあ一から作り直すしかないですね」

西岡「嫌だ、面倒臭い」

藤原「そんな事言ってる場合ですか」

西岡「だってこれを作り上げるのに何十年って月日を労したんだよ?また一からとか萎える」

藤原「でもそうしないと博士、未来にいけませんよ?」

西岡「そりゃそうだけど……」

藤原「じゃあ気分でも変えて過去に行けるタイムマシンを作りましょうよ。そしたら過去に戻ってこのタイムマシンの設計図を取りに行って、未来に戻ってくればい良いんですから」

西岡「なるほど!それは名案だ!よし!早速、過去に戻れるタイムマシンを作るとするか!(舞台上手に退場)」

藤原「あー、なるほど。これで未来に繋がる訳か。博士、過去に戻れるタイムマシン作れなかったんだな」






―――終わり

『デスゲーム』



・登場人物


 工藤雅史・・・デスゲームに参加させられた一人。生き残る。

 飯島健司・・・デスゲームに参加させられた一人。死ぬ。

 笠原智子・・・デスゲームに参加させられた一人。死ぬ。

 山田康太・・・デスゲームに参加させられた一人。死ぬ。

河合省吾・・・デスゲームに参加させられた一人。死ぬ。

三浦百代・・・デスゲームに参加させられた一人。死ぬ。

葛西清彦・・・デスゲームに参加させられた一人。死ぬ。

白井晴美・・・デスゲームに参加させられた一人。死ぬ。

支配人・・・・デスゲームの支配人。声のみ。

黒服A・・・・死体を運ぶ黒服。

黒服B・・・・死体を運ぶ黒服。



・舞台


 デスゲームの一室。




 明転。


 テーブル一つに椅子二つ。テーブルの上にはリボルバーと銃弾8つ置いてある。

 工藤、飯島、笠原、山田、河合、三浦、葛西、白井、床で寝ている。続々と起き上がる。


工藤「ここは……?」

飯島「何だ、アンタら?」

笠原「そっちこそ誰よ?」

支配人「全員目が覚めたようだな」

河合「何だ?」

支配人「これから君達は、命を掛けたゲームをしてもらう」

三浦「命を掛けた……?何馬鹿な事を言ってるの!?早く家に帰して!」

支配人「君達は以前、多額の借金をしていたな。それをこちらが肩代わりさせてもらった。その代償として、君達にはこれから命を掛けたゲームをしてもらう」

葛西「ふざけんな!誰がそんな事をするか!」

三井「そうよ!誰がそんな事するもんですか!」

支配人「ゲームをするのもしないのも君達の自由だ」

工藤「じゃあやらないに決まってるだろ!」

支配人「そうした場合、君達は脱落者として死んでもらう」

飯島「何だって!?」

支配人「君達の体の中には、一つの錠剤が入っている。これは遠隔操作でいつでも眠らせる事が出来る強力な睡眠剤だ」

笠原「何ですって!?」

支配人「つまり君達の命は、全て私にコントロールされているという事だ。妙な真似をしたら、即、眠らせて脱落者として処理する」

山田「おい、一つ聞いて良いか?」

支配人「何だね?」

山田「何でこんな事をする?殺すなら全員一気に殺せば良いだろう」

支配人「ここでの出来事は世界中でネット中継させている。君達で賭けをしているんだ」

河合「何だと?」

支配人「生き残った者には、生き残った者に賭けられていた掛け金の10%を与え、ここから出られる。悪くない話だろう」

三浦「常軌を逸している……!」

葛西「一体何をするんだ?」

支配人「ロシアンルーレットだ」

白井「ロシアンルーレット?って、あの、頭に銃を突き付けて弾が出るまで交代で撃ち続ける、アレ?」

支配人「そうだ」

工藤「そんな事で人の命を奪おうってのか!」

支配人「安心したまえ。ただ命を奪おうってものじゃない。我々はただの人殺しではない」

飯島「どういう事だ?」

支配人「君達の体は、既に我々の物となった。ここで死んだ者は、臓器を取り出し、ドナーになってもらう。我々は命を救う者だ」

笠原「ふざけないで!結局は人殺しと変わらないじゃない!」

支配人「どう思うかは君達の勝手だ。工藤君、銃に弾を1発込めてくれ」

工藤「え?あ、あぁ……」


 工藤、銃に弾を込める。


支配人「撃ってみたまえ」


 工藤、人がいない方向に銃で撃つ。


工藤「弾が出ない……?」

支配人「そうだ。空砲だ。即死は無いから安心したまえ。もし弾が出たら、即、睡眠誘発剤で眠ってもらう」

工藤「眠ってる間に臓器を摘出するから、痛みを感じずに死ねるってか……」

支配人「その通りだ。ちなみにその銃弾は特別製だ。弾が発射されると同時に特殊な音波が出て、睡眠誘発剤が効くという仕組みだ。さて、もうそろそろゲームを始めてもらおうか。銃弾を銃に込めたまえ……そして……順番……決め……」


 SE、ザーッ、という音が鳴り、支配人の声が消える。


山田「おい!どうした!?おーい!?」

河合「もうゲームを始めろって事じゃないのか?」

三浦「後は各々でやれって事か……身勝手な人ね」

葛西「おい、ロシアンルーレットって知ってるか?」

白井「一応知ってますけど……」

葛西「俺、詳しくは知らないんだよ。どうすれば良い?」

工藤「俺も」

飯島「俺も」

笠原「私も」

山田「俺も」

河合「俺も」

三浦「私も」

葛西「どうすれば良いんだ?」

白井「確か銃弾を銃に全部込めて、頭に向かって打つ。で、弾が出なかったら勝ちってゲームだった気がする」

工藤「じゃあとりあえず弾を全部込めるぞ?」

飯島「あぁ」


 工藤、弾を全部込める。


工藤「で?」

白井「あとはシリンダーを各自一回ずつ回す筈」

笠原「シリンダー?」

白井「あの、クルクル回る所」

工藤「あぁ、これか」


 工藤、シリンダーを回す。


工藤「じゃあ次はアンタだ」

飯島「あぁ」


 飯島、シリンダーを回す。残りの6人もシリンダーを回す。


工藤「じゃあ時計回りで良いな?アンタからやれよ」

白井「私?」

河合「丁度持ってるし、良いんじゃないか?」

白井「分かりました……」


 白井、撃つ。SE、銃声。

 白井、倒れる。


山田「うわっ……!?マジか……!?」

笠原「あの人が言った通りだわ……」


 黒服AB、舞台上手から登場。白井を担いで舞台上手に退場。


葛西「次は俺か……」


 葛西、撃つ。SE、銃声。

 葛西、倒れる。


三浦「次は私……」


 三浦、撃つ。SE、銃声。

 三浦、倒れる。


河合「次は俺か」


 河合、撃つ。SE、銃声。

 河合、倒れる。

 黒服AB、上手から登場。二人共、この状況に戸惑う。


山田「次は俺」


 山田、撃つ。SE、銃声。

 山田、倒れる。


笠原「次は私……」


 笠原、撃つ。SE、銃声。

 笠原、倒れる。


飯島「これで決まるな」

工藤「あぁ」


 飯島、撃つ。SE、銃声。

 飯島、倒れる。


工藤「……ストレート勝ちしちゃった……」


 黒服AB、倒れた人達を運んでいく。

 SE、ガガッという音。


支配人「すまない、音声と画面がエラーを起こしてしまって……って、あれ?何この状況……?」

工藤「勝ったぞ」

支配人「勝ったぞって……早くない?」

工藤「アンタが言った通り、ちゃんと順番を守ってやったぞ」

支配人「え、ちょっと待ってて……は?一気に撃ったの?」

工藤「あぁ、そうだけど?」

支配人「ロシアンルーレットのルール知らないの?」

工藤「知ってる奴が一人いたから、そいつに聞いてやったぞ」

支配人「いやいやいや、このゲーム、1対1でやるやつだからね?弾を1発込めて、弾が出るまで自分の頭を撃ち合うってやつだからね?」

工藤「知らないよそんなの。そっちが説明してくれなかったのが悪いんじゃん」

支配人「確かにそうだけども!分からなかったら聞くとか、待つとかしなよ!」

工藤「だから知らないってそんなの。そっちの都合じゃん」

支配人「ちょっと待っててよ……うわっ、炎上してる……」

工藤「何が?」

支配人「この中継がさ。一気にカタが着いてつまらなかったって炎上してるんだよ」

工藤「へー」

支配人「どうすんだよ。お前達のせいだぞ」

工藤「知らんがな」

支配人「これじゃあ商品にならんよ……」

工藤「だから知らんがな。もう勝ったんだし、俺、帰っても良いよね?早く帰して」

支配人「ちょっと待って。次回のゲームにも出てくれない?」

工藤「は?嫌だけど?」

支配人「頼むよ。買ったら掛け金の20%あげるから」

工藤「嫌だよ」

支配人「30%では?」

工藤「だから嫌だって」

支配人「だったら50%だ!これでどうだ!?」

工藤「しつこいな!嫌だって言ってるだろ!」

支配人「ちなみに今回のゲームの君への掛け金は200万$。その10%だから20万$。日本円にして2260万円だ。次回は今回勝った事できっともっと掛け金が上がるだろう。どうだね?」

工藤「死ぬ確率が上がるだけだし絶対に嫌。知力を使うゲームならまだしも、運任せのゲームだなんてもうコリゴリ」

支配人「じゃあせめてやり直しさせて?ちゃんと一から説明するから」

工藤「何で勝ちを放棄しなきゃならないのさ」

支配人「頼むよ。今のはこちらの不備があって正式なゲームが出来なかった訳だから、仕切り直しさせてよ」

工藤「それはそっちの都合だろ?俺には関係無いじゃん」

支配人「そんな事言わずにさぁ~……頼むよ~……」

工藤「知らんもんは知らん!」

支配人「……分かったよ!もう良いもん!金持ってどっか行け!眠ってもらうもんね!」

工藤「最初からそうしとけや」


 工藤、倒れる。


支配人「あ、何か逆に視聴回数増えてる。このまま行けば今までの中で一番の視聴回数になるかも」






















          ―――終わり

『マッサージ』



 登場人物


 ・西岡聖弘

 ・小川美幸

 ・儀間愛真



 舞台


 ・マッサージ店





 明転。

 マッサージ店。ベッド二つに机一つ(受付)。

 小川、板付き。西岡、上手から登場。


小川「いらっしゃいませ」

西岡「ここマッサージ店で良いんですよね?」

小川「はい。ご予約はされてますか?」

西岡「予約してないんですけど、大丈夫ですか?」

小川「はい。今は丁度空いてますのですぐご案内出来ますよ」

西岡「そうですか。前はここには無かったですよね?」

小川「はい。つい先週オープンしたばかりです」

西岡「そうなんですか。どう言うコースがあるんですか?」

小川「足ツボ、背中、肩、そして全身揉みほぐしコースですね。それぞれ四十分、六十分、九十分のコースから選べます」

西岡「じゃあ折角だからこの全身揉みほぐし、六十分コースで」

小川「全身揉みほぐし、六十分コースですと六千八百円になりますが宜しいですか?」

西岡「はい」

小川「畏まりました。ではこちらへどうぞ」

西岡「はい」

小川「ではこちらにうつ伏せで寝てください」

西岡「はい。こうですか?」

小川「はい、それで結構ですよ。では始めていきますね」

西岡「お願いします」

小川「力加減はどうですか?」

西岡「大丈夫です」

小川「あ、お客さん結構体柔らかいですね~」

西岡「そうですか?」

小川「お仕事は何されてるんですか?」

西岡「サラリーマンです」

小川「サラリーマンのお客さん結構いらっしゃいますけど、デスクワークとか営業で体が凝ってる方多いんですよ」

西岡「あー、やっぱりそうなんですねぇ」

小川「お客さん、あんまり凝ってないですね。珍しいですよ?」

西岡「趣味でダンスのバレエ教室通ってるからですかね」

小川「バレエやってるんですか!へぇー、凄いですね」

西岡「いや、全然まだまだですよ。最近始めたばかりなんで」

小川「そうですか?柔軟とか普段やってるでしょう?」

西岡「そうですねぇ。朝起きた時と寝る前によくやってますね」

小川「どこかここが凝ってるなぁとかご自身で感じる所とかありますか?」

西岡「んー、そんなに無いですけど、やっぱり仕事柄肩甲骨とか気になりますね」

小川「じゃあちょっとそこやってみますねー……あ、ここはそこまで凝ってないですね」

西岡「そうですか?気持ち良いですけど」

小川「非常に良いですね。健康的ですよ。肩甲骨だけに」

西岡「あ、そうすか」

小川「あ、ここね、ここツボなんですよ。痛いでしょう?」

西岡「いや、全然痛くないです」

小川「そうですか?あ、じゃあここはどうですか?ここもツボなんですよ」

西岡「よく分かんないですね。痛くはないです」

小川「気持ち良くないですか?」

西岡「気持ちは良いですけど、ツボって感じはしないですね」

小川「そうですか。あ、ここは?ここもツボなんですよ。ここは痛いでしょう?」

西岡「いえ?あんまり感じないですね」

小川「そうですか……」

西岡「…………」

小川「……もうやる事無くなりました」

西岡「え?」

小川「もう揉む所、無いです」

西岡「いや、あるでしょう?」

小川「無いです」

西岡「断言しないで下さい」

小川「では以上になりますので起き上がって大丈夫ですよ」

西岡「早い早い。まだ五分も経ってないですよ?」

小川「だってもうやる事無いですもん」

西岡「いや、折角、六十分コースお願いしたんですからもっとやって下さいよ」

小川「無理です。ここまで凝ってない人、初めてです」

西岡「初めてかどうかは知りませんけど、やって下さいよ」

小川「いやぁ、ここまでやる気が失せる仕事は初めてですよ」

西岡「ハッキリと客に言うの止めて下さい。そこはやる気出してやって下さいよ」

小川「いやなかなかいませんよ。たったこのレベルで来店するお客さんは」

西岡「酷い事言いますね!?」

小川「とにかくもうやる事もやる気も無くなりました。このレベルの凝り方ならマッサージの必要ありませんよ。って言うかこんなの凝ったってレベルじゃありませんよ」

西岡「『こんなの』って何ですか?良いからやって下さいよ。自分でも分からないツボとかあるかもしれないんですから」

小川「いいや、もう押す所無いです。押す所全部、押しました。それなのに『感じない』、『痛くない』ばっか言ってきて、やる気が失せました」

西岡「たまたま痛くない所だったんですから仕方ないじゃないですか」

小川「とにかくもうやる気が無いんで帰ってもらって良いですか?」

西岡「はぁ?やる気は出して下さいよ」

小川「こっちはね、やりがいで仕事してるんですよ。それを何かさっきから、こっちのやる気を失せさせるような事ばかり言ってきて。こっちの気持ちにもなって下さいよ」

西岡「何?俺が悪いの?」

小川「そりゃそうでしょうよ」

西岡「さっきから何なの?体が凝ってなきゃ来ちゃいけないみたいな言い方してますけど」

小川「そう言ってるんです」

西岡「さっきからその断言止めてもらって良い?本当に俺が悪いみたいになってるから」

小川「そりゃお客さんが悪いでしょうよ。こっちはプロとして、プライド持ってマッサージしてんのに、それを傷付ける様にそっちが言ってきてるんですから」

西岡「おかしくない?こっちは素直な感想を言ってるだけなのに」

小川「時として素直な言葉は人を傷付けるんです」

西岡「そういう話してるんじゃないじゃん。寧ろそっちに問題があるんじゃないの?」

小川「何ですか?私が悪いんですか?」

西岡「そりゃそうでしょ。さっきから客に対して失礼な事ばかり言って。逆にそっちがツボを押せてないだけじゃないの?」

小川「あぁ、分かりましたよ!じゃあ押しますよ、押せば良いんでしょ!ツボ!はい!(何かギャグか小話をする)どうですか?」

西岡「何が?」

小川「笑いのツボですよ!」

西岡「別に押せてないよ?」

小川「これもダメですか」

西岡「単純に面白くなかったよ」

小川「じゃあこれだ!(くすぐる)」

西岡「ちょっ、止めろ!何?今度は何なの?」

小川「もう一つの笑いのツボですよ」

西岡「笑いのツボってそう言う事じゃないだろ!ただくすぐっただけじゃん」

小川「訳分かんないなぁ!」

西岡「それこっちのセリフだよ!もういい、店長出せ、店長!」

小川「何故?」

西岡「『何故?』じゃねぇよ。お前が失礼だからだよ」

小川「分かりましたよ。店長ー!」


 儀間、下手から登場。


儀間「はいはい、どうしたの?」

小川「何かお客さんが店長出せって逆ギレしちゃって」

西岡「逆ギレじゃねぇよ!アンタが店長さん?」

儀間「はい、当店の店長の儀間です」

西岡「アンタんとこの従業員がさっきから失礼な事ばかり言ってくるんだよ。ここの教育はどうなってんの?」

儀間「何かうちの従業員が失礼な事をしましたか?」

西岡「押すツボ押すツボそんなに気持ち良く無くて文句言ったら勝手に怒りだして『凝ってない客はやる気が出ないから帰れ』って言ってきたんだよ」

儀間「はぁ……またですか……」

西岡「アンタからも何か言ってくれよ」

儀間「ちょっと失礼しますね。(肩を揉む)お客さん、これは仕方ないですよ」

西岡「は?」

儀間「これはうち悪くないですよ。お客さんが悪いです」

西岡「どう言う事?」

儀間「たまにいるんですよ、やる気が失せるくらい凝ってない、やりがいの無いお客さんが」

西岡「アンタもそっち側!?」

儀間「こっちもやりがいで仕事してますからね。従業員が困る事は止めて頂けませんか?」

西岡「さっきもこの人に言ったけど、何?俺が悪いの?」

儀間「そうなりますねぇ」

西岡「どう言う店だよ、ここ?客の事ぞんざいに扱うの?」

儀間「従業員優先ですから」

西岡「来る所間違えたな……」

儀間「そうですね」

西岡「ハッキリ言ってくれるな!?」

儀間「時々来るんですよ、こう言ったくだらないクレームを言うお客さんが」

西岡「『くだらない』って何だ!失礼にも程があるだろ!」

儀間「どうぞお帰り下さい」

小川「お会計は六千八百円になります」

西岡「はぁ!?五分も経ってないのに六十分分の料金取るの!?」

小川「そう言うコースでしたので」

西岡「せめて時間分やってからその料金にしてくれないか!?」

小川「やる所ないんですから、やっても無駄ですよ」

西岡「まだ言うかお前?」

儀間「無駄な時間を過ごすよりは、他の事に有効に時間を使った方が

良いと思いますよ?」

西岡「何で俺説教されてんの?おかしくない?」

儀間「アドバイスですよ。生きていく上での」

西岡「そんなアドバイスいらない。寧ろこの時間の方が無駄だったと思う」

儀間「良かったじゃないですか」

西岡「何が『良かった』なの?」

儀間「無駄な時間を過ごした事で、これからはこういう事をしないで生きていけますよ。それだけでもここに来た意味があると思います」

西岡「意味なんか無かったわ」

儀間「まぁそれも経験として活かしていけるようになっただけでも価値があったと思いますけどね?」

西岡「それに六千八百円は高すぎるわ!」

儀間「これに懲りたらもう軽い気持ちでマッサージ店に入らない事ですね」

小川「これに懲りても体が凝ったら来てくださいね」

西岡「お前さっきからやかましいよ!」

小川「ではお会計どうぞー」

西岡「分かったよ!五月蠅ぇな!ほらよ!」

小川「ありがとうございますー」

西岡「逆に疲れたよ……全く……」

小川「これ、次回から使えるクーポン券です」

西岡「いらねぇよ。二度と来ねぇわ!」

儀間「十回分半額で揉みほぐし六十分コースに使用出来るクーポン券です」

西岡「……マジで?良いの?」

儀間「今はキャンペーン中ですので」

西岡「マジか……また来るわ!」

小川儀間「ありがとうございますー」

西岡「おう!次はもっと凝りに凝って出直してくるわ!」

小川儀間「お待ちしておりますー」

西岡「何か体も気持ちも軽くなった気がする!じゃ!」

小川儀間「またのご来店、お待ちしておりますー」


 西岡、上手に退場。


小川「……これでまた一人常連が確定しましたね」

儀間「良くやった、小川さん。この調子でまた常連を作るのよ」


                      ―――終わり

『ボランティア』



・登場人物


 北島

 藤原

 枝村



・舞台


 北島宅






 明転。


 北島宅。卓袱台一つに座布団三つ。

 北島、藤原、枝村、舞台上手から登場。北島、缶ビールを入れたビニール袋を持っている。


北島「まぁ上がれよ(席に着く)」

藤原枝村「お邪魔しまーす(席に着く)」

北島「じゃあ早速……(缶ビールを配り、各々開ける)カンパーイ!」

藤原枝村「カンパーイ!」

北島「この三人で会うのも久し振りだな」

藤原「社会人になってなかなか会えなかったもんな。感染症もあったし」

枝村「仕事はどうよ?」

北島「俺は未だ平社員だよ。でも来年度、係長に就任予定。何も無ければな」

藤原「おー、おめでとう」

枝村「おめでとう」

北島「ありがとう。お前らは?」

枝村「俺は相変わらずアルバイトしながら役者、続けてるよ」

北島「そっか。目は出そうなの?」

枝村「再来月、舞台で主演やるよ。それ次第かな」

北島「そっかそっか。おめでとう」

藤原「おめでとう」

枝村「ありがとう。藤原は?」

藤原「俺は特に何もしてないよ」

北島「は?もう三十路だろ?アルバイトでも良いから仕事探せば?」

藤原「俺も何かしらバイトでも探そうかなーとは思ってる」

北島「そうしなそうしな。親御さんの為にも」

藤原「いや、親の為というか、俺自身の為かな」

北島「まぁそうかもしれんけど」

枝村「今、実家住みだっけ?」

北島「うん」

枝村「一人暮らししないの?」

藤原「親が『老後の面倒看てくれ』って言うから出る気は無いね」

北島「じゃあ結婚は?実家住みだとなかなか相手見付からないんじゃない?」

藤原「結婚願望無いからなぁ。歳取ったら自分から施設に入る予定」

枝村「そうかー。じゃあ尚更アルバイト見付けた方が良いんじゃない?」

藤原「俺もそう思う。だから手っ取り早く高給なアルバイトでも無いかなーって思ってる」

北島「おいおい、決して今、巷で噂の闇バイトなんかには手を出すなよ?」

藤原「じゃあ闇バイトの反対の光バイトにするわ」

北島「はっはっは!何だよ、光バイトって!?無償で働くのかぁ!?」

藤原「寧ろ自分から金払って働くのかもよ」

北島「あっはっはっは!何だそれ!?」

枝村「それボランティアって言うんだよ」

北島藤原「あっ、そっかぁ……」

枝村「ってか何でその歳になっても働かないの?」

藤原「特に理由は無い」

北島「ニートかよ」

藤原「んー……ニートでは無いかな」

北島「普段何やってんの?」

藤原「それこそ光バイトかな」

北島「うん?働いてるの?」

藤原「まぁお金は貰ってないというか、寧ろ払ってるけどね」

枝村「ボランティア活動してるって事?」

藤原「うん」

北島「どれくらいの頻度でやってんの?」

藤原「大体、週に三回くらいかな」

枝村「普段、何の仕事してんの?」

藤原「掃除とか炊き出しとかイベント時の通訳とか、まぁ色々」

北島「どこ行ってんの?」

藤原「日本中飛び回ってるよ」

北島枝村「日本中!?」

北島「どこからその金、出てんの!?」

枝村「オススメスポットは!?」

北島「そこじゃねぇ!」

藤原「宮古島、良いよ!」

北島「だからそこじゃねぇ!金の出所はどこなんだよ!?」

藤原「親だけど?」

北島「サラッと言うな!何?親の金でボランティア活動してんの?」

藤原「そうなるねぇ」

枝村「偉いなぁ」

北島「偉くは無いだろ。自分で稼いだ金でボランティア行けよ」

藤原「だって親が渡してくるんだもん」

北島「『だもん』じゃねぇよ。働け」

枝村「羨ましい~。働かなくても金が貰えるなんて」

北島「賛同すんな!」

藤原「『普段からボランティアをする自慢の息子』って事でお小遣いを貰ってる。『立派に働いて偉い!』って言われて貰ってるから実質、働いて稼いだ金みたいなもんだよ」

枝村「偉い~!」

北島「だから偉くねぇって!月いくら貰ってんの?」

藤原「五万」

北島「何もしないで五万円も貰ってんの!?」

藤原「ううん。五万ドル」

北島「ドル!?って事は単純計算で五百万円、月に貰ってんの!?」

藤原「うん」

枝村「良いな~!どこからその金、出てんの?」

藤原「親父とお袋が証券会社の代表取締役と会長でさ」

枝村「ますます羨ましい~!」

北島「だから羨ましがるな!お前、親からそんな大金、貰い続けて生活していくつもりか!?」

藤原「うん」

北島「恥ずかしいとは思わないのか!?」

藤原「本来は十万ドルくれるってところを五万ドルにまで交渉して減らしたんだぞ?」

枝村「偉い~!」

北島「だから偉くないって何回言わせるつもりだよ!?その金の使い道は何なんだよ!?」

藤原「だからボランティア活動に使ってるよ。掃除用具の整備費とか、炊き出しの買い出しとか、ボランティアの人達の移動費とか宿泊費とか」

枝村「偉い!」

北島「偉くない!とは言えない!立派!」

藤原「だろ?」

枝村「でも親の老後を看た後はどうすんの?」

藤原「さっきも言ったろ?時期を見て自分から施設に入るよ」

北島「いや、金の話だよ。あー、でも一ヶ月でそんだけ貰ってりゃ貯金出来るか」

藤原「いいや?毎月カツカツだよ?」

北島「えっ?何で……?」

藤原「そんな毎日じゃないけど、ボランティアの人達って一人や二人じゃないんだよ?何十人、下手すりゃ百人とか行くし。時折その人達の宿泊費も俺が払ってるからもう手元には殆ど残らない」

枝村「藤原……!お前……!そこまでして……!」

北島「感銘を受けるな。でもその調子じゃあ金、貯まらないだろ?」

藤原「そうねぇ」

北島「『そうねぇ』って……本格的にどうするつもりなん?」

藤原「親の遺産を食い潰して生きるよ」

枝村「羨ましい~!」

北島「だからさっきっから羨ましがるな!どれだけ金に飢えてんだ!?」

枝村「だって俺、アルバイトでもしないと生活、出来ないくらい役者として売れてないんだもん……」

北島「……ごめん!」

藤原「今のは北島が悪いよ」

北島「原因となったお前に言われたくねぇ!」

枝村「親の会社を継ぐ気は無いの?」

藤原「親がそんな事をしなくて良いようにしてくれてる。『可愛い愛息子の為に働きに出させる訳にはいかない』って言ってくれて」

北島「でもボランティアには参加させてんのかよ!?もう何がしたいのか分からんよ、お前のご両親!」

枝村「働く気は無いの?」

藤原「うん」

北島「アルバイト探してるんじゃないの?」

藤原「探そうかなって思ってるだけ」

枝村「何で思ってるだけなの?どうして探そうと思ったの?」

藤原「世間体?」

北島「何で疑問形なんだよ……」

藤原「流石に三十路で親の金だけで暮らしていくって精神的にキツい」

北島「そう思ってるなら働けよ!」

藤原「だって親が働くなって言うんだもん!」

北島「でもボランティアはしてるんだろ!?それについてどう思ってるの!?お前のご両親は!?」

藤原「趣味!」

北島「金が掛かり過ぎてる趣味過ぎるだろ!」

藤原「ソシャゲとかギャンブルに費やすよりはマシだろ!」

枝村「確かに!」

北島「『確かに!』じゃねぇ!」

藤原「社会貢献してるんだから良いだろ!」

北島「それは確かに偉い!でもそのボランティア団体、お前の金目当てでやってないか!?」

藤原「それはあるかもとは思ってる!だから働きたい!」

北島「じゃあ働け!」

藤原「でもこれだけ何もしないで金を大量に貰える環境に慣れ過ぎて、働く気が殆ど無い!」

北島「働きたいのか働きたくないのか分からん!どうしたいのお前!?」

藤原「ボランティア活動で終える人生を送りたい!」

枝村「歳取ったら限界来るよ?」

北島「急に真面目な話するなよ!」

藤原「その時は寄付でどうにかする!」

北島「ちゃんと考えてる当たりもう何も言えねぇ!羨ましいよ!」

枝村「やっぱりお前も羨ましいんじゃん」

北島「そりゃここまで許されてたら羨ましいだろ!」

藤原「良いだろ~!」

北島「うぜぇ!でもお前とは違って俺は結婚が出来る機会あるあもんね!」

枝村「俺、収入が不安定だから結婚出来るか不安なんだよね……」

北島「……ごめん!」

藤原「今のは北島が悪いよ」

北島「さっきと同じだよ!原因のお前に言われたくねぇ!」

藤原「そういえば俺はこの前、親父とお袋から社長令嬢と見合いの話、来てたわ」

枝村「マジで?どんな人?」

藤原「(スマートフォンを見せる)この人」

北島枝村「……めっちゃ美人じゃん!」

藤原「そうかなぁ?」

北島「そうだよ!もうお前、感覚バグってるよ!」

藤原「まぁこの人とは破談にしようかなって思ってる」

北島「何で!?こんな美人の社長令嬢と結婚して、親から無償で大金、貰って、何が不満なの!?」

藤原「夫が無職って世間的に辛くない?」

枝村「確かに!」

北島「やっぱり世間体は気にするんだな!?だったら親の会社継げ!そうすれば結婚しても胸張れるだろ!?」

藤原「そしたらボランティア活動、出来なくなる……」

北島「そうだった!コイツ趣味に生きる男だった!もう好きに生きろよ!」

藤原「これからも、そうするつもりだよ!」

北島「皮肉だよ!」















―――終わり

『アフターオブ塾』 (実話+脚色)



・登場人物


塾講師

生徒

 父親

従業員



・舞台


 塾の外

 ファミレス




暗転中。


SEチャイム。


塾講師「今日はここまで。学校の授業とか宿題とかあるだろうけど、うちの塾の宿題も忘れないようになー」


明転。


塾講師、上手から登場。


生徒「先生、ちょっと良いですか?」

塾講師「おう、角田。どした?」

生徒「この後、時間ありますか?相談したい事があるんですけど……」

塾講師「あぁ、良いよ。帰り支度するからちょっと待ってて」

生徒「はい」


パネル移動、上手と下手から中央へ。

机を中央に一つ、椅子を向かい合わせに一つずつ。

塾講師、下手側、生徒、上手側に座る。

パネル移動、上手と下手にハケる。

場はファミレス。既に飲み物が二人の前にある。


塾講師「何?話って?」

生徒「……デキちゃったんです」

塾講師「何が?」

生徒「赤ちゃん……」

塾講師「…………は?全く身に覚えがないんだけど。そもそも俺童貞だし、彼女いるし、お前と関係持ったこと無いし———」

生徒「先生との子の訳ないでしょ。別の男ですよ」

塾講師「あ、そうだよね?良かった……で、相談って?」

生徒「お腹の赤ちゃんの事なんですけど、私どうすれば良いですか?」

塾講師「どうすれば良いって……産むか堕ろすかしか無いんじゃない?」

生徒「それをどうすれば良いか悩んでるんじゃないですか!」

塾講師「何で逆切れされてんの……てかその事、ご両親と相手の男には話したの?」

生徒「話してないです」

塾講師「なんでや……」

生徒「だって言い出せないんだもん」

塾講師「だからって俺に相談すんのおかしいでしょ。まずご両親と相手の男と話し合いなさい」

生徒「だからそれが怖いんです!先生、経験豊富そうだし、どうすれば良いか教えてください!」

塾講師「君は俺を何だと思ってるの……童貞だよ?まぁ、そうだね、残酷な事を言うようだけど、君の将来を考えるなら、俺は堕ろした方が良いと思うよ」

生徒「そうか……そうですよね……」

塾講師「まだ遊び盛りなんだしさ、子供出来た事は誰にも言わなければ将来。別の男が出来ても問題無いだろうし。いや、分かんないけどね?それがと得策じゃないかなって、第三者としては言っちゃうよ」

生徒「はい……」

塾講師「でもまず君がやるべき事は、ご両親にこの事を話して、相手の男に責任を取ってもらう事だと思うよ」

生徒「分かりました」


パネル移動、上手と下手から中央へ。

父親、後ろで待機。

パネル移動、上手と下手に。

後日。同じファミレス。


塾講師「で、また話って何?」

生徒「あれから親と話し合って、何かお父さんが話があるって」

塾講師「あそこにいるのがお父さん?」

生徒「そうです」

塾講師「どうも、歩さんの塾の講師の藤原です

父親「どうも、歩の父です。ここでは何ですし、ファミレスにでも入りましょう」

塾講師「はい」


席に着く塾講師、生徒、父親。

従業員やって来る。


従業員「いらっしゃいませ。ご注文はお決まりでしょうか?」

父親「コーヒー二つ」

塾講師「デラックスパフェ一つとコーヒーで」

従業員「畏まりました。少々お待ちください」


従業員、退場。


父親「よくそんな物、頼めましたね」

塾講師「すみません、小腹空いていたもので。で、話って何ですか?」

父親「もちろんうちの歩の事ですよ。先生はうちの娘の事をどう思ってるんですか?」

塾講師「どうって、一生徒にしか思ってませんけど」

父親「何ィ!?」


 従業員、登場。


塾講師「お待たせしました。コーヒーが三つと、デラックスパフェですね」

塾講師生徒父親「どうも」

従業員「失礼致します」


従業員、退場。

塾講師、パフェにがっつく。


塾講師「あ、評価の話だったでしょうか?でしたら歩さんはもう少し勉強してほしいなぁとは思います」

父親「そういう話じゃありませんよ!先生はこの子の将来の事をどう思っているんですか!?」

塾講師「え?別に何も考えてませんけど」

父親「何だとこのガキゃあ!」

塾講師「何ですか!?落ち着いてください!」

父親「貴方ねぇ、この子に何て言ったか覚えてますか!」

塾講師「お腹の子の事ですか?堕ろした方が良いとは言いましたが……」

父親「よくそんなに軽く言えますね!?無責任すぎるでしょう!」

塾講師「軽率な発言だったかもしれません。申し訳ありません」

父親「軽率で済ませられるか!」

塾講師「ちょ、ちょっと待ってください!角田!ちょっと来い!」


塾講師、生徒、少し離れる。


塾講師「……お前、お母さんに何て言った?」

生徒「……赤ちゃんがデキちゃって、先生に堕ろせって言われたって言いました」

塾講師「ちょ、おま……!ふざけんなよ!それ絶対勘違いしてるだろ!訂正して来い!」

生徒「無理です!お父さん怖いんです!」

塾講師「知るか!俺はもっと怖いわ!」

父親「ちょっと!まだ話は終わってませんよ!」


 塾講師、生徒、席に戻る。


父親「この子はね、私が大事に育ててきたんです!それを君、大学生にもなって中学生に手を出しといて簡単に堕ろせと言って、無責任にも程があるでしょう!」

塾講師「お父さん、それはですね、ちょっと誤解があるんですよ」

父親「君にお父さんと呼ばれる筋合いは無い!」


父親、塾講師の胸倉を掴む。


父親「とにかく、どう責任取ってくれるんだ!」

塾講師「ちょっとちょっと!落ち着いて!」

父親「どう責任取ってくれるんだって聞いてるんだよ!(身を乗り出して塾講師の無胡坐を掴む)」

塾講師「ちょっと本当に―――」

父親「えぇ!?どうしてくれるんだ!?」

塾講師「良いから落ち着けー!!(父親を突き放す)座れー!いや、座って下さい!」


父親、座る。従業員、登場。


従業員「お客様、どうかされましたか?」

塾講師「すいません!静かにします!」

従業員「他のお客様のご迷惑になりますのでもう少しお静かに願います」

塾講師「はい、すみません」


従業員、退場。


塾講師「……あのですね、まずお父さんは誤解してます。私と歩さんの間には何もありません。このお腹の子は、別の男との間の子です」

父親「え?そうだったんですか?」

塾講師「そうなんです。歩さんが先日お腹の子について相談してきたのでそれに乗ってあげただけです。そこで堕ろしたら良いんじゃないかって自分なりの助言をした、それだけの事なんです」

父親「そうだったんですか……何でお前、言わなかったんだ!」

生徒「だって……」

塾講師「お父さんの事、怖いって言ってましたよ。少し縛りすぎたんじゃありませんか?もう少し二人で話し合う時間を作ってあげてください。歩さんは寂しさとストレスからこう言った事をしてしまって、止む無く私なんかに相談してきてくれたんだと思います。娘さんを大事に思う気持ちは分かりますが、もう少しマイルドになってあげた方が良かったのではありませんか?……あ、長々と若輩者が説教みたいに言ってすみません!忘れてください!」

父親「いいえ、こちらこそ勘違いをして申し訳ありませんでした」

塾講師「では後はお二人と、お相手の男とそのご両親とよく話し合ってください。私は失礼致します」

父親「はい、大変失礼致しました」


塾講師、手前に出てくる。

パネル移動、上手と下手から中央へ。

生徒、パネルの横を通って塾講師の近くに。


生徒「先生!」

塾講師「おう。あれ?お父さんは?」

生徒「先に帰りました。あの、先生、私どうしても言いたい事があって……」

塾講師「何?」

生徒「さっきの先生格好良かったです!付き合ってください!」

塾講師「無理」

生徒「え?」

塾講師「散々あんだけの事やらかされて謝罪もないような奴とは話にならん。無理」

生徒「そんな……」

塾講師「お相手の男がいるんでしょ?どうぞお幸せに!(上手に退場)」


 生徒、下手に泣いて走って去る。
























―――終わり

『師匠と弟子』



・登場人物


 西岡

 藤原



・舞台


 陶芸家の家












明転。


陶芸家の家。

西岡、舞台下手に板付き。

SE、インターホンのチャイム。


西岡「どうぞー」

藤原「失礼します!」


 藤原、舞台上手から登場。


西岡「どちら様?」

藤原「私、藤原正将と申します!師匠!僕を弟子にして下さい!」

西岡「すまないが、私は弟子は取らない主義でね」

藤原「そうですか!分かりました!ではさようなら!(舞台上手に去ろうとする)」

西岡「ちょちょちょ。どこ行くの?」

藤原「え?帰るんですけど?」

西岡「え?何で?」

藤原「え?だって弟子は取らないんでしょ?」

西岡「え?そうだけど」

藤原「え?」

西岡「え?」

藤原「え?」

西岡「え?」

藤原「え?」

西岡「ちょちょちょ……一旦落ち着こう。君、私に弟子入りしに来たんだよね?」

藤原「はい」

西岡「で、私に断られたと」

藤原「はい」

西岡「そこまでは理解出来た。で、君はこれからどうするつもりだったの?」

藤原「帰ろうとしました」

西岡「何でだよ!?」

藤原「だから弟子は取らないと言ったから……」

西岡「確かに言ったけども!こういうのってもう少し粘るものじゃない!?」

藤原「いや、きっとこの方は一度言った事は曲げないタイプの人なんだなと思ったんで」

西岡「いやいやいや、分からんよ?粘り強く頼み込んだら弟子入り許すかもしれないよ?」

藤原「いや、この人は世間で言う厳格で頑固なイメージそのものだなと、さっきの言葉で確信したので!」

西岡「君は私の何を知っているの?世間のイメージと違うかもしれないじゃない」

藤原「だってさっき弟子は取らないって言ってたし、それでもうイメージ通りだなって思って、これはもう弟子入りは諦めるしかないと思いました」

西岡「判断が早過ぎる!あの短時間でよくそこまで頭が働いたな!?」

藤原「照れます」

西岡「褒めてない!」

藤原「では僕はこれで!」

西岡「待て待て待て!一旦ここに座ってくれ」

藤原「え?あ、はい……」

西岡「一応、面接的な事して良い?」

藤原「はぁ。はい」

西岡「君は何で私の所に弟子入りしようと思ったんだね?」

藤原「師匠の作品を一目見て、心を奪われたからです」

西岡「ほほう?それで?」

藤原「展覧会にも見に行って、この人の所で修業して、いつか師匠みたいな素晴らしい作品を作れるようになりたいと思いました」

西岡「おうおうおう!それでそれで?」

藤原「後戻り出来ないように、今の公務員の仕事を辞めて来ました」

西岡「そうかそうか!その心意気は良し!」

藤原「では僕はこれで……」

西岡「待て待て待て!何で君はすぐに帰ろうとする?」

藤原「だって断られたし……」

西岡「何で私がこんなにも引き留めたり、面接したりしているんだと思っているんだ?」

藤原「気分転換ですか?」

西岡「違うわ!」

藤原「じゃあ何ですか?」

西岡「もう少し粘ったら弟子入り許すかもしれないよ?って事!」

藤原「じゃあ最初から弟子入りを許すスタンスでいれば良かったじゃないですか」

西岡「それはほら、世間的なイメージもあるし、営業努力というか……」

藤原「じゃあ実際は弟子を取りたいんですか?」

西岡「取りたい!めっちゃ取りたい!」

藤原「えぇ……なんかイメージと違う……」

西岡「そりゃそうだよ!あれはメディアが勝手に作り上げたものなんだもの!」

藤原「でも一度断られたし、帰りますね」

西岡「君、本当に陶芸家になりたいと思っているのかね?」

藤原「え?」

西岡「普通は一度や二度断られても、土下座をしてでも何度も頭を下げて弟子入りを頼み込むものじゃあないのかね?」

藤原「あー、そういうものなんですかね?」

西岡「そういうもんなの!」

藤原「考え方が古いなぁ」

西岡「ジェネレーションギャップ!良いからもう一回頼んでごらんよ!弟子入り許すかもしれないよ!?」

藤原「えー、どうしよっかなー。陶芸家って他にもいるしなー」

西岡「衣食住は保証するし、優しく指導するし、キチンとした修行のプランも作ってあるし、デビューまでの面倒も見るから!」

藤原「何ですか?寂しいんですか?」

西岡「寂しいんだよー!!!」

藤原「……はぁ?」

西岡「メディアが作り上げた厳格で頑固なイメージのせいで、周囲の人達がどんどん離れていくし、近付いてはすぐに離れていくし、この家にいつも一人で寂しくて仕方ないんだよ……」

藤原「師匠……」

西岡「それに私、弟子は取らないとか言っておきながらずっと君が私の事を『師匠』と呼んでる事について咎めないし……つまりはそういう事なんだよ……」

藤原「師匠……分かりました。もう一度頼みます。師匠!僕を弟子にして下さい!」

西岡「……おう!分かった!その心意気、この胸にしっかり響いたぞ!お前を私の弟子にしてやろう!」

藤原「ありがとうございます!」

西岡「じゃあ寝床とか用意するからちょっと待っててくれ」


 西岡、舞台下手に退場。


藤原「押して駄目なら引いてみろ……!」

















                        ―――終わり

『浮気』



・登場人物


 西岡聖弘

 西岡美幸

 儀間愛真

 藤原


・舞台


 部屋の一室












 明転。


 部屋の一室。単身赴任で聖弘が暮らしている部屋。ベッド、卓袱台、デスク、椅子、キッチン、鏡、ハンガー掛け等がある。

 聖弘、儀間、板付き。


儀間「ねぇ、良いの?奥さんにバレちゃうんじゃない?」

聖弘「大丈夫だよ。単身赴任なのは本当なんだから。息抜きだよ」

儀間「でもバレたらヤバいんじゃないの?」

聖弘「平気平気。バレてもこっちで上手くやっておくから」


 SE、インターホンのチャイム。


聖弘「はいはい。あ、やべ」

儀間「どうしたの?」

聖弘「嫁が来た」

儀間「えっ、どうすんの?」

聖弘「とりあえず荷物纏めといて」


 聖弘、舞台下手に退場。


聖弘「おう、美幸。どうした突然?」

美幸「一人暮らし満喫中に浮気でもしてないかチェックしに来たのよ」

聖弘「なんじゃそりゃ」

美幸「っていうのは冗談で、単に寂しいから会いに来ちゃった」

聖弘「わざわざ東京から?愛されてるなー、俺」

美幸「良いから中に入れてよ」

聖弘「はいはい」

儀間「えっ、ちょっ……」


 聖弘、美幸、舞台下手から登場。


美幸「えっ、誰?」

儀間「こ、こんばんは……」

美幸「こんばんは……きよ君、この人誰?」

儀間「えーっと……」

聖弘「あぁ、儀間さん。会社の同僚」

儀間「あっ、そうです。西岡さんにはお世話になっております」

美幸「あぁ、そうでしたか。こちらこそ主人がお世話になっております」

聖弘「さ、愛真、そろそろ」

儀間「あぁ、うん。じゃあ私はこれで……じゃあまた、きよ君」

聖弘「おう。また明日たな。愛真」


 儀間、舞台下手に退場。


美幸「…………」

聖弘「で、美幸。今日はこの後どうする?ご飯食べた?」

美幸「ちょっと良い?」

聖弘「何だ?」

美幸「さっき会社の同僚って言ってたよね?」

聖弘「あぁ、うん」

美幸「確か出張で一緒に行く人って男の先輩とだったよね?」

聖弘「そうだね」

美幸「それにこんな時間まで男女二人で同じ部屋に居るっておかしくない?」

聖弘「あー……」

美幸「しかも名前で呼び合ってた」

聖弘「…………」

美幸「もしかして貴方達って……!」

聖弘「ちょ、ちょっと待てよ」

美幸「何が待ってなの?」

聖弘「良いから落ち着けって」

美幸「これが落ち着いていられる!?」

聖弘「お前勘違いしてるぞ?」

美幸「何が勘違いなの!?」

聖弘「良いから落ち着いてよく聞けよ!?」

美幸「だから何よ!?」

聖弘「良いか、あの人は……浮気相手だぞ?」

美幸「……何も勘違いしてないじゃない!?」

聖弘「本当?良かったー……」

美幸「何が良かったの!?きよ君、浮気してたの?」

聖弘「うん、してた」

美幸「何でそんな平然としていられるの!?浮気がバレたんだよ!?」

聖弘「たかが浮気じゃん?」

美幸「たかが!?浮気が『たかが』!?」

聖弘「本命は美幸だけだよ」

美幸「何その心が全く動かない言葉。どういうつもり?」

聖弘「どういうつもりとは?」

美幸「何で浮気したの?」

聖弘「寂しかったから」

美幸「何その簡単そうで不純な理由!?」

聖弘「照れるなぁ」

美幸「何も褒めてない!もしかしてあの人とここで暮らしてたりするんじゃないでしょうね!?」

聖弘「暮らしてはないけど、ちょくちょく遊びに来てるよ」

美幸「じゃあこの二つある枕は!?」

聖弘「さっきの愛真の」

美幸「このクッションは!?」

聖弘「さっきの愛真の」

美幸「このマグカップは!?」

聖弘「それは理恵の」

美幸「突然知らない人出てきた!?誰!?」

聖弘「別の浮気相手」

美幸「この歯ブラシは!?」

聖弘「それは由衣の」

美幸「この長い髪は!?」

聖弘「それは早紀の」

美幸「この口紅が着いたワイシャツは!?」

聖弘「それは沙也加の」

美幸「どんだけ浮気してんの!?信じられない!」

聖弘「何をそんなに怒ってんの?」

美幸「そりゃ怒るでしょうよ!?アンタ、私が浮気してたらどう思う!?」

聖弘「俺が一番だったら別に気にしない」

美幸「えぇ……何その価値観」

聖弘「それよりもう少し声小さく出来ない?このアパート結構壁が薄いし、夜も遅いしさ」

美幸「今それ言う!?こんな一大事な事が起こっているのに!?」

聖弘「ほら、しーっ。苦情が来ちゃうから」

美幸「何でこんな時に五月蠅さを気にするの?」

聖弘「前に浮気相手とえっちしてる時に声が大きいって苦情が来たから、次、苦情が来たらここに居られなくなっちゃうんだ」

美幸「本当に浮気してんのね!?本当信じられない!もう帰る!」

聖弘「この時間に新幹線出てる?暗いし送っていくよ」

美幸「来なくて良い!一人で適当なホテルに泊まるから!」

聖弘「何でそんな無駄遣いするの?ここに泊っていきなよ」

美幸「こんな所に泊れる訳無いでしょ!離婚よ、アンタとは!」

聖弘「何で離婚!?」

美幸「逆に何で驚いてんのよ!当然の結果でしょうが!」

聖弘「ちょっと冷静になって話し合おうよ!」

美幸「冷静になれるか!私は帰る!」

聖弘「美幸!(美幸を後ろから抱き締める)美幸、俺、気付いたんだ……いくら色んな女を相手にしたからって、美幸の代わりになんてならないんだって」

美幸「きよ君……」

聖弘「俺、やっと分かったんだ。どんなに俺に愛を注いでくれたとしても、美幸以上に俺を愛してくれる優しい人はいないって……」

美幸「…………」

聖弘「だから美幸、離婚はしないでくれ。俺は、お前を愛している(美幸にキスしようとする)」

美幸「はい分かりましたで終わる訳無ぇだろ!(聖弘にビンタする)」

聖弘「アイターッ!」

美幸「ここに離婚届置いとくから、サインしてね。じゃっ!」


 美幸、バッグから離婚届を卓袱台に置いて下手に舞台退場。


 暗転。


 明転。


 美幸、藤原、板付き。


美幸「全くさぁ、旦那が浮気しててさぁ」

藤原「へぇ」

美幸「アッタマきたから別れてやったわ」

藤原「お前も俺と浮気してたけどな」

美幸「上手い事別れる口実が見付けられずにいたけど、これでスッキリした」

藤原「じゃあ俺と結婚しようか」

美幸「喜んでー!」





















                                        ―――終わり

『同窓会』



 ・登場人物


  西岡

  儀間


 ・舞台


  居酒屋





 明転。


 居酒屋。テーブル1つに、椅子4つ。テーブルの上にはつまみと酒。

 儀間、板付き。

 西岡、下手から登場。


西岡「五月蠅ぇよ!また後でな!」

儀間「あ、西岡君」

西岡「おっ、儀間さん!久し振り~!飲んでる~?」

儀間「そこそこね~」

西岡「ここ座って良い?」

儀間「良いよ。でも向こうから離れて良いの?」

西岡「ちょっと飲み過ぎたから休憩しようと思って」

儀間「あぁ、あっちは荒れてるからね~」

西岡「こっちは平和だから一休みには丁度良いんだよね」

儀間「そうね~」

西岡「それにしても久し振りだね。高校卒業以来じゃない?」

儀間「あぁ、もうそんななるんだ。6年ぶりくらい?」

西岡「あぁ、もう卒業して6年かぁ。早いなぁ」

儀間「にしても西岡君変わってないねぇ」

西岡「そう?これでも10kg太っちゃったんだよね」

儀間「嘘ぉ?全然見えないよ」

西岡「着痩せするタイプなんだよ」

儀間「でもなんかホッとした。あの頃のままで」

西岡「何で?」

儀間「今だから言うけどさー、私、あの頃西岡君の事好きだったんだよね」

西岡「えっ……そうなの?」

儀間「うん。当時は勇気が出せなくて言えなかったんだよね」

西岡「そうなんだ……」

儀間「…………」

西岡「……向こう、行かなくて良いの?」

儀間「ちょっと飲みすぎちゃったから少し静かな所で休憩してたい」

西岡「そっか。じゃあさ、このまま二人でフケない?」

儀間「え?」

西岡「もっと静かな所でさ、休憩しない?」

儀間「何で?」

西岡「静かな所で休憩したいんでしょ?」

儀間「まぁ、そうね」

西岡「ちょっとした行きつけのバーがあるから、そこに行かない?」

儀間「え?何で?」

西岡「自分から誘っておいて鈍いなぁ……」

儀間「何が?」

西岡「普通、分かるでしょ?」

儀間「分からん」

西岡「本当鈍いなぁ。さっきあんな事言っておいて、さ……(儀間にキスしようとする)」

儀間「ちょちょちょ、何してんの?」

西岡「だから、俺の事好きなんでしょ?」

儀間「それ昔の話ね」

西岡「今でも好きなんじゃないの?」

儀間「いいや?」

西岡「照れなくても良いんだぞ?」

儀間「照れてない。キモイ」

西岡「キモイって何だよ、キモイって……」

儀間「あのさぁ、さっきから何を話してるの?」

西岡「だからぁ、さっきの話、要するに今でも好きでー、とか、この同窓会で久し振りに会ったら懐かしくて一晩だけでもー、とかの雰囲気だったじゃん。言わせんなよ、恥ずかしい」

儀間「えぇ?何それ、キモイ」

西岡「だからキモイって何さ?儀間さんが言いだしたんだろ」

儀間「私そんな事言ってない。ただ『昔、西岡君が好きだった』って話しただけ」

西岡「だからそれってそういう意味じゃないの?」

儀間「全然?ただ昔話しただけ」

西岡「そ、そっか……」

儀間「うん」


 沈黙。


西岡「……あのさぁ、この後二人で抜け出したりとか、考えてない?」

儀間「全く考えてない」

西岡「そっか……」


 沈黙。


西岡「酔い、醒めてきた?」

儀間「いや、まだちょっと」

西岡「そうか。じゃあちょっと二人で外の空気吸いに行かない?」

儀間「いや、大丈夫。暫くここで休めば」

西岡「そっか……」


 沈黙。


西岡「あのさ……」

儀間「もー!さっきから何なの!?どういうつもり!?」

西岡「お前とセックスしたいんだよー!」


 沈黙。


儀間「はぁ?」

西岡「俺はもうその気なの!お前が昔話した段階からもう準備は出来てんの!なのにお前は何なんだ!何がしたいんだ!こっちが聞きてぇよー!」

儀間「何?どこで勘違いしてんの?」

西岡「だから言ってるだろ!お前が、昔、俺の事好きだったって!このタイミングで言うって事はつまりはワンナイトラブを誘ってるって事だろ!」

儀間「いやいやいや、私は単純に昔話をしただけだし。勝手にそう解釈されんのかなり不本意なんだけど」

西岡「俺か?俺が悪いのか?」

儀間「どう考えたってそうでしょ」

西岡「いやいやいや、どう考えても俺は悪くない!何であのタイミングで昔話したの?」

儀間「当時、好きだったけど言えなかったなぁってずっとモヤモヤしてたから、スッキリしたくて」

西岡「何その理由!?」

儀間「おかげでスッキリした」

西岡「こっちはモヤモヤしてる!」

儀間「何?何なの?」

西岡「それはこっちのセリフだよ!何なんだよお前!?」

儀間「あ、ごめん。こっちの話だから、そっちは構わず続けて」

西岡「何なんだよお前……男の心弄びやがって……」

儀間「うん、分かったから座って」

西岡「…………」

儀間「で?何?私と何したいって?」

西岡「もういい。もう言いたくない」

儀間「あっそう。じゃあこの話終わりね」

西岡「終わらせるんじゃねぇよ!こっちのモヤモヤを解消させろ!」

儀間「何よ。結局どうしたいのよ?」

西岡「だから、その、えっと……」

儀間「セックスしたいんでしょ?」

西岡「……はい」

儀間「そう。じゃあ私の回答ね。無理」

西岡「溜めといてそれは無いだろ!」

儀間「だって無理なものは無理なんだもん。私、結婚を決めてる彼氏いるし」

西岡「あぁ、そうかい!じゃあもう良いよ!」

儀間「あ、ちょっと待って」

西岡「何だよ?」

儀間「終電無くなっちゃったから、今晩泊めて」

西岡「えっ、それって……」

儀間「うん」

西岡「何だ、やっぱりその気だったんじゃん……」

儀間「寝袋で良いから貸して」

西岡「絶対ただ寝るだけだろ!」

儀間「うん。何?駄目なら他を当たるけど」

西岡「良いですよ!良いって言やぁ良いんでしょ!」

儀間「よろしい。そういうところ、好きだよ」

西岡「え?あぁ、アハハ……」

儀間「そういう単純なところとかね」

西岡「五月蠅ぇ!」








                        ―――終わり

『恩返しする人達』



・登場人物


 地蔵

 鶴

 亀



・舞台


公園






 明転。


 公園。ベンチ。

 地蔵、鶴、亀、板付き。


地蔵「なぁ、二人今年入って何軒回った?」

鶴「私は10軒かな」

亀「私は20軒」

地蔵「へー、二人とも1か月で1、2軒ペースなんだ」

鶴「そう言うアンタは?」

地蔵「俺?俺は30軒くらい」

亀「凄いじゃん。めっちゃ大手じゃないの」

地蔵「まぁじーさんばーさんが基本よ?今でも熱心に通ってくれてるからこっちも挨拶がてら回ってるようなもんだもん」

鶴「でも凄いよ。私達なんかまず相手にされないよね」

亀「うん。大体無視されるか、そっち系の人達に好奇の眼差しを向けられるだけだもん」

地蔵「二人は特にそうだよな。物好きしか寄って来ないって言うかさ」

鶴「その言い方酷くない?」

亀「そうだよ。こっちだって必死にやってるんだから」

地蔵「でも実際そうじゃん。大体そっちの二人は散々虐められて、はい、終わりでしょ?」

鶴「まぁねぇ」

亀「あってるけどさ」

地蔵「でもこうして行き先が被る事なんかあるんだな」

鶴「そうだね。いつもは大体バラバラなのに」

亀「ね。相当な偶然だよね」

地蔵「な、それな。こんな偶然ある?地蔵と」

鶴「鶴と」

亀「亀が」

地蔵鶴亀「恩返しする先が被るかね?」

地蔵「いや、こんな偶然無いよ?」

鶴「本当だよ。どうすんのコレ?誰が行く?」

亀「皆で押しかけてもねぇ……日を改める?」

地蔵「でもさぁ、連日して恩返しとか逆に不安がられない?ヤバい団体に絡まれたみたいに思われそう」

亀「じゃあ週毎にすれば良いんじゃない?」

鶴「とっくに忘れられてそう」

地蔵「それあるな」

亀「え~?じゃあどうする?私は三日前に子供達に虐められてる所を助けてもらったから恩返しするにはそろそろ頃合いなんだよね」

鶴「あ、私も三日前に罠にかかった所を助けてもらった」

地蔵「俺も積もった雪どけてもらって傘貰った」

亀「え?二人も?」

鶴「別に三日後にって規定は無いけど、色々準備してたらこの日になったんだよね」

地蔵「俺もそうだよ。米俵とか今手に入りにくいんだよ。代わりに引換券持ってきたけど」

鶴「私は服繕ってきた。一応いざと言う時にこれに似合う金額の小切手も持ってきたけど」

亀「私は竜宮城までの旅行券」

鶴「てかさ、同じ日に三か所で助けてもらう事ってある?本当にあの家の人?」

地蔵「それは間違いない」

亀「うん」

鶴「じゃあ同じ家の家族の人達がそれぞれ助けてくれたのかな?」

地蔵「俺は髭の紳士なじーさんだったよ?」

亀「私も。英国紳士風のね」

地蔵「そうそう。ステッキなんか持っててさ」

鶴「あー、じゃあ同じ人かぁ。私もそうだもん」

地蔵「で、どうするよ?誰が行く?」

亀「助けてもらった順に行くのはどう?」

地蔵「そうするかぁ。で、後は各々時期を見計らって日にちをバラして伺おうぜ」

鶴「そうしましょ。私は大体午後三時くらい」

地蔵「俺も大体午後三時くらいだった」

亀「私も大体午後三時くらい」

地蔵「おいおい……これじゃあ誰が先に行くか決められないぞ?」

鶴「どうしようかなぁ」

地蔵「てかほぼ同じ時間に町と山と海に行くってどんだけアグレッシブなじーさんなんだよ」

亀「口の利き方には気を付けなさいよ。仮にも助けてくれた人なんだから」

鶴「そうだよ。恩人でしょ」

地蔵「あーはいはい、すいませんでした。で、どうする?もうじゃんけんかなんかで良い?」

鶴「もう面倒だしそれで良いんじゃない?」

亀「そうだね」

地蔵「はいいくよー。さーいしょーはぐー。じゃーんけーんぽん。あーいこーでしょ。あーいこーでしょ。あーいこーでしょ。あーいこーでしょ……決まんねぇな」

鶴「阿弥陀とかにする?地蔵だけに」

亀「上手いっ」

地蔵「宗派が違うから……」

鶴「じゃなくてさ、どうする?決まんないよ?」

地蔵「もうさぁ、誰かが代表で行けば良くない?どうせ皆、渡すの紙切れだし」

亀「言い方よ。いや、確かに紙切れだけど」

鶴「意味のある紙なんだから紙切れって言い方は無いよ。で、代表で行くにしても誰が行く?」

地蔵「相手はじーさんだろ?老いてても所詮は男なんだし、女が行った方が喜ばれるんじゃね?怪しまれにくいだろうし」

亀「だから言い方よ。じゃあ私か鶴が行く?」

鶴「そうなるねぇ。じゃあ私が行こうか」

亀「何で?」

鶴「ただの亀より美人になれる私が行った方が喜んでもらえるでしょ?」

地蔵「そりゃそうだ」

亀「何ィ!?鶴!アンタ私の正体を知ってのその口の利き方でしょうね!?」

鶴「何?」

亀「私の正体は、そう!あの乙姫なのである!」

地蔵鶴「えぇ!?そうなの!?」

亀「どうだ驚いたか!神妙に着けぃ!」

地蔵「夢が潰れた……」

鶴「がっかりだよ……」

亀「は?何が?」

地蔵「こんなのが可憐で美人な乙姫だなんてさ……」

亀「おう、コラ、地蔵。言ってくれるじゃないの。アンタこそ地蔵の癖に煩悩まみれのすかぽんたんじゃないの」

地蔵「俺は坊さんや尼さんじゃないから良いんですぅ。あくまで象徴なだけですぅ」

鶴「てか今思ったんだけどさ、私のは服と現金じゃん?地蔵のは米俵の引換券じゃん?亀の竜宮城招待券って何?どこ?」

地蔵「それ思った。なんか如何わしいお店に聞こえる」

亀「失礼な!今も昔もちゃんとした所ですよ!現代風になってるけど!」

地蔵「どう言う風に?」

亀「スナック竜宮城」

地蔵鶴「大分落ちぶれたな!」

亀「仕方ないでしょ!海の中じゃ客も来なくて商売上がったりなんだから!ただでさえこう言う恩返しって言う一銭にもならない活動続けてんだから!」

地蔵「にしてもだよ!」

鶴「乙姫様が何やってんの!?」

亀「アンタらとは違うんだよ!アンタらみたいに地蔵になって突っ立てるだけとか、鶴で自由気ままに空飛んで魚食ってるだけとは訳が違うんだよ!」

地蔵「お前も大概、酷ぇ言い方してるよ!」

鶴「地蔵はともかく私はその日暮らしで精一杯生きているんだよ!絶滅危惧種だし!」

地蔵「俺だって年々信仰が少なくなって仏様からの御加護が無くてその日暮らしなのに変わりは無いわ!」

亀「はいはい!皆、落ちぶれました!それで良いでしょうが!」

鶴「そんな事はもうどうでも良いよ!どうすんの?恩返しの件!」

地蔵「あー……もう良くない?やんなくて」

亀「えぇ~?流石にそれはさぁ……」

地蔵「だって俺達長年ずっと恩返しってやって来たけどさ、近年は怪しまれて無視されっぱなしじゃんか。おとぎ話にされてさ」

鶴「そうねぇ。鶴や亀や地蔵が擬人化するアニメが流行ってても、現実とアニメをキチンと区別する人が多いからなかなか恩返しさせてくれないしねぇ」

亀「でも恩返ししないで帰るってのも信用問題に繋がるから何かはしないとねぇ」

地蔵「あー、じゃあもうこれ郵便ポストに突っ込んで帰るか!」

鶴「そうだね。それが一番良いや」

亀「えぇ……それで良いのかなぁ」

地蔵「良いんだよ!もう面倒臭ぇし!」

鶴「そうそう。どうせ通報されるんだから、送るだけ送り付けて、はい、終わり、にしましょ」

亀「それこそ如何わしいお店のやり方のような……」

地蔵「て言うか俺もう正直恩返しする気無いんだよね」

鶴「何で?」

地蔵「だってお前ら見た?あの家。あのでっけぇお屋敷をよ」

亀「まぁ凄かったけど」

地蔵「あんだけデカかったらさぞかし儲かってるんだろ?多分。何不自由無い暮らししてると思うぜ?」

鶴「だから?」

地蔵「今裕福な人より、今貧困で悩んでる人を助けた方がよっぽど世の中の為にならない?」

鶴「それは地蔵のアンタの考えでしょ?鶴と亀の私達にはそんな事どうでもいいの」

亀「何を今更地蔵ぶって良い話にして恩返しの事誤魔化そうとしてんの?」

地蔵「バレたか……」

鶴亀「分かるわ」

地蔵「あー……ホントもうどうする?これ、郵便ポストに入れるだけ入れとこう?電話番号でも書いておけば向こうの都合の合った日に合わせてそれぞれが恩返ししていけば良いじゃね?」

鶴「そうだね。それが妥当だね」

亀「電話掛けてくるかなぁ」

地蔵「掛けて来なかったら来なかったで良いじゃん。最低限の恩返しは送るんだから」

亀「それもそうか」

鶴「三人が同時に行くよりは向こうも安心してそれぞれ対応してくれるんじゃないの?」

地蔵「そうだよ。じゃあ出しに行って今日はもう帰ろうぜ」

亀「そうだね」


 地蔵、鶴、亀、下手に退場。


 暗転。


 テロップ「数日後」


 明転。


 地蔵、鶴、亀、板付き。


地蔵鶴亀「結局また皆集まるのか!」



―――終わり

『割り勘』



・登場人物



北島

藤原



・舞台



 居酒屋






 明転。

 居酒屋。テーブル1つと椅子2つ。テーブルの上には酒とつまみの後と伝票。


北島「いやぁ、久しぶりに飲んだなぁ」

藤原「そうだな。お互い仕事仕事でなかなか会えなかったからな」

北島「たまにはこうやって旧友と飲むって良いな。会社の同僚には話せない事とか話せるし、会社の飲み会だと上司に気を遣う事多いから落ち着かないんだよね」

藤原「分かるわ、その気持ち。たまには気楽に飲みたいよね」

北島「なー。さて、そろそろ出ようか」

藤原「そうだな。二軒目行く?」

北島「行く行く!えーっと、今回の会計は~……?お、結構行ったね」

藤原「いくら?」

北島「二人で、二万二千八百三十一円だね」

藤原「割り勘しようか」

北島「良いよ良いよ。そっちは一万円で。俺から誘ったし、俺の方が飲んだんだから」

藤原「いや、割り勘にしようよ。水臭いなぁ」

北島「そう?悪いね。えーっと、割り勘するとー……一万千四百十五円だね」

藤原「え?これ二人で割り切れない値段じゃん。あと一円は?」

北島「そんなの俺が払うよ。と言ってもそんな多く払うような金額じゃないけどね」

藤原「ちょっと待って。ここは公平にどっちが多く払うか決めようよ」

北島「え?別に良くない?俺が多く払わせてよ」

藤原「いや、ここはきっちりケジメを着けたい」

北島「面倒臭っ。別に良いじゃん。たった一円だけどそっちが得するんだから」

藤原「ここは関係を崩さない為にもハッキリ物事は互いの合意で決めたい」

北島「えぇ……まぁそっちがそう言うなら別に良いけど……で、どうやって決める?」

藤原「じゃあじゃんけんで決めよう。行くよ~!さーいしょーはグー!」

北島「何でそんな楽しそうなの?」

藤原「こう言うのはノリが大事でしょ?」

北島「お前、酔ってるだろ」

藤原「酔ってるよ。でもそんなの今関係無いじゃないか」

北島「そのノリが分からないわ。まぁいいや。はい、じゃんけんぽん」

藤原「うわー!負けたー!マジかー!!」

北島「そんなショック受ける事?」

藤原「もう一回!もう一回やろ?三回勝負!先に二回勝った方が勝ち!」

北島「面倒臭っ。別に何でも良いけど。はい」

藤原「じゃーんけーん、ぽん!」

北島「勝ったよ?」

藤原「あぁー!また負けたー!悔しいー!」

北島「そんなに?そんなに悔しい?」

藤原「悔しいよー!まさか負けるなんてさー!」

北島「もう面倒臭いから会計に行くよ?」

藤原「もう一勝負!もう一勝負しない?」

北島「嫌だよ。もう決まったじゃん」

藤原「お願いだよ~!もう一回!ワーンモーアチャーンス!」

北島「何?楽しくなってきてるの?」

藤原「うん。凄く楽しい。次はコイントスで決めよ!」

北島「もう良くない?二軒目は私が多く払う、それで良いでしょ?」

藤原「次は次、今は今!」

北島「何なのホントに……」

藤原「行くよー!表、裏、どっち?」

北島「あー、じゃあ表」

藤原「じゃあ行きまーす!一世一代のビッグチャンス!掴み取るのは私、藤原か、それとも北島か!」

北島「良いから早くしなさいよ」

藤原「はいはい。じゃあ行きまーす!はいっ!さぁ、運命の女神はどちらに微笑むのか!?今その運命の扉が開きます!さぁ、カウントダウン!三!二!一!」

北島「早く開きなさいよ」

藤原「ノリが悪いなぁ!」

北島「怠いんだよ、このノリが」

藤原「こう言うのは楽しんだもん勝ちでしょ?」

北島「勝つかどうかはそのコインが決めてるよ」

藤原「分かったよぉ。では改めまして!運命の悪戯はどちらに転ぶか!」

北島「早く開けろ!(藤原を叩く)」

藤原「痛い!分かったよ!はいっ!表!」

北島「また俺の勝ちじゃないか」

藤原「うおー!またかー!また負けたかー!北島強いねぇ!」

北島「ほら、もう行こう?早く次に行きたい」

藤原「もう一勝負!もう一勝負行こうよ!ね?」

北島「何なの、ホントに?払いたくないだけじゃないの?」

藤原「違うよ。今この場を楽しみたいだけ」

北島「次のお店で良くない?ここで引っ張る必要ある?」

藤原「良いじゃん良いじゃん!ほら、ここにトランプあるからポーカーしよう!」

北島「準備良過ぎない?何?普段から会社にトランプ持ってってるの?」

藤原「うん。何かあった時用に」

北島「何かあった時用って何?」

藤原「ほら、やろうやろう!俺は二枚ね!」

北島「はいはい、分かったよ。俺は五枚ね」

藤原「五枚交換!?よっぽど手が悪いんだな!今度は勝ったかな!?」

北島「純粋に面倒臭いだけ」

藤原「じゃあ交換行きまーす!はい!キター!フルハウス!これは勝ったでしょ!ねぇ!?」

北島「いちいち五月蠅いなぁ……」

藤原「はい!ほら、北島、早く引いて!」

北島「はいはい……あ、ロイヤルストレートフラッシュだ」

藤原「マジで!?凄ぇ!ここで五枚交換してロイヤルストレートフラッシュとか凄過ぎるよ!?」

北島「それは自分でも驚いてる。無駄な運をここで使ってしまった事に」

藤原「凄いわー!これは完敗だわー!」

北島「はい、じゃあもういいね?もう会計行くよ」

藤原「北島、ギャンブルの才能あるんじゃない!?」

北島「無いよ。いいから早く会計に行くよ」

藤原「いいや、あるよ!その才能を活かして世界を目指そうよ!」

北島「その話も含めて二軒目に持ってくよ」

藤原「何をそんなに急いでるの?もっと話そうよー」

北島「単純に恥ずかしいんだよ!他の客も見てるし、奥の店員が噂話してるから!」

藤原「もう~、人の目を気にしてたら楽しい事も楽しめないよ?」

北島「俺はお前と違って羞恥心があんの!」

藤原「酷い!まるで俺が痴態の塊みたいな言い方して!」

北島「大体あってるんだよなぁ……」

藤原「もう分かったよぉ!とりあえず次の店に行こう!」

北島「あ、ちょっと待って。もしかして次の店でも割り切れなかったら同じ事するつもり?」

藤原「え?勿論」

北島「それは嫌だよ!次はもう俺が多く払うから!面倒臭い!」

藤原「それじゃあつまんないじゃん!友達なんだから割り勘はキッチリやらないと今後の友情に亀裂が生じる!」

北島「言っとくけど、もう友情に亀裂が入りかけてるからね?」

藤原「何で?」

北島「いちいちこんな事やってたらキリが無いよ」

藤原「良いじゃんか~、楽しければそれで~」

北島「全く楽しく無いんだよね」

藤原「こう言う事出来るの北島しかいなんだよ~!付き合ってよ~!」

北島「嫌だ。つべこべ言うならもう一緒に飲みに行かないよ?」

藤原「そんな~!今まで上手くやって来たのにここで別れるなんて酷いよ~!」

北島「ちょっと静かにしてくれよ!意味が違って聞こえてくるだろ!」

藤原「お願い、俺を見捨てないで~!」

北島「マジで、マジで違って聞こえてくるから!静かにしてよ!もう出るよ!」

藤原「はいはーい!」

北島「何なのホントにさぁ……情緒不安定かよ……」

藤原「はい、じゃあ一万千四百十五円ね!」

北島「細か過ぎるから受け取りたくなかったのに……大体で良いんだよ、大体で」

藤原「じゃあ二軒目行こう~!」

北島「はいはい。もうこれで終わりね」

藤原「あ、細かいの無かったから二万円渡すね。次のお店でおつり分多く払っといてね」

北島「もう最初からそれで良かったじゃん!何だったんだよ今までのやり取り!?」


















―――終わり


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