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コント集  作者: 河野吉田
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コント集2

コント集2



11・・・告白

12・・・三角関係

13・・・ポイントカード

14・・・やまびこ

15・・・言えない

16・・・余命

17・・・薬局

18・・・死なない

19・・・占い

20・・・すれ違う二人は突然に



『告白』



・登場人物


 西岡聖弘

 小川美幸



・舞台


 大学の校舎裏






 明転。


 大学の校舎裏。

 暫くして西岡、小川、上手から登場。


小川「何?西岡君、話って?」

西岡「あの、その……突然で悪いんだけどさ、俺、ずっと前から小川さんの事が好きだったんだ!付き合ってください!」

小川「…………」

西岡「……ダメ、かな?」

小川「……ちょっと待っててくれる?」

西岡「あ、うん……」


 小川、少し離れて電話をする。


小川「あ、もしもし、藤原君?今大丈夫かな?……うん、あのね、いきなりでごめんね?私、ずっと前から藤原君の事が好きだったの!付き合ってください!……え?彼女いるからダメ?あ、そう。うん。はい。じゃあこれからもお友達でいようね。はーい。また大学で」


 小川、電話を切る。


小川「じゃあ大丈夫。付き合いましょ」

西岡「は?」

小川「付き合える」

西岡「え、どゆ事?」

小川「これからよろしくね、西岡君」

西岡「ちょっと待って……整理させて?今、藤原って人に電話してなかった?」

小川「したねぇ」

西岡「告白してたよね?」

小川「そうだね」

西岡「で、俺と付き合うの?」

小川「うん」

西岡「藤原って人にフラれたから?」

小川「うん」

西岡「…………分かんねぇなぁ……」

小川「どうしたの?」

西岡「どうしたもこうしたも……何で今、他の男に告白したの?」

小川「西岡君が私に勇気を振り絞って告白してくれた姿を見て、こっちも勇気が湧いたから告白してみたの」

西岡「で、フラれたから俺と付き合うの?」

小川「うん」

西岡「何で?」

小川「告白された時、ちょっとドキッとしちゃったし。勇気ももらえたから」

西岡「えぇ……何それ……」

小川「何かいけなかった?」

西岡「いや、ちょっと納得がいかないと言うか……俺の事好きじゃないのに、他に好きな人いるのに俺と付き合うの?」

小川「好きな人と言うか、好きだった人だね。もう踏ん切り着いたから、新しい恋に向かおうかと思って」

西岡「潔過ぎでしょ……ちょっと俺、動揺が止まらない……」

小川「何?何が不満?」

西岡「何か一番目の人にフラれたから二番目の俺で我慢したみたいな絵面じゃん……」

小川「安心して。もうフラれたから西岡君が一番だよ」

西岡「俺にもプライドってものがね?」

小川「繰り上げ一位だよ」

西岡「嬉しくないわ!」

小川「良いじゃん、暫定一位になったんだから」

西岡「言い方ってものがあるじゃん!」

小川「さっきから何が不満なの?結果的に一位の西岡君?」

西岡「さっきからその言い回し止めろ!俺をどうしたいの!?」

小川「だから言ってるじゃん。付き合えるよって」

西岡「付き合えるよって……好きな人他にいるんでしょ?」

小川「好きだった人だよ。もう割り切ったから大丈夫なんだって」

西岡「そんなすぐに別の男と付き合えるの?」

小川「私、過去は振り返らない主義だから」

西岡「そう言う問題じゃないじゃん。こっちの気持ちも考えてくれよ」

小川「んー、別に良くない?もう終わった事だし」

西岡「俺ちょっとまだ受け入れられないわ……ショック過ぎる、この入り組んだ状況が……」

小川「そんな事、時間がすぐ解決してくれるよ……」

西岡「そっちが言うセリフじゃなくない?そんな簡単に割り切れるもんなの?小川さんにとって、好きな人にフラれるって」

小川「だって駄目なものは駄目だし。だったら過去に浸るより現実を見て、次に位置する人に乗り換えるのが妥当じゃない?」

西岡「妥当!?俺が妥当!?」

小川「ダメなの?」

西岡「ダメだよ!人の気持ちを弄ぶような感じで簡単に付き合うとかさぁ!」

小川「西岡君は真剣に考え過ぎなんだよ。付き合うんだよ?今すぐ結婚をするとかじゃないんだから、もっと気楽に付き合えば良いじゃん」

西岡「いや、俺、真剣だったんだよ!?本気でお付き合いして、将来の事も考えててさ……」

小川「いきなりその話は重いわー。暫くお付き合いして、同棲とかして、やっぱりこの人と一緒が良いって思ったら結婚の話でしょ?」

西岡「まぁ、一理あり過ぎて言葉も出ないです。はい」

小川「体の相性とかもあるんだし、そもそもまだ学生なんだからまずは遊びで付き合う、で良いんじゃない?」

西岡「いや、俺さぁ、女性とこうしてお付き合いするって初めてだから、遊びでって気楽に考えられないよ……」

小川「慣れだよ、慣れ。すぐに西岡君も慣れるよ」

西岡「……何か小川さんかなり経験豊富な感じするんだけど、小川さん今まで何人の男と付き合ってきたの?」

小川「小学校から数えて」

西岡「は?」

小川「50人くらい?」

西岡「えぇ……」

小川「まぁこっちから告白してフラれたのはもっといるかな」

西岡「小川さんがそんな人だったなんて思わなかった……もっと清楚な感じだと思ってた……」

小川「あっはっはっは!何それ?もしかして女性は皆未経験だと思ってんの?そりゃそうか、女性とお付き合いした事無いんだもんね」

西岡「そこ弄るの止めて!もうこんな人だったなんてショックだよ!」

小川「何怒ってんの?」

西岡「そりゃ怒るよ!こんな人だったなんて思わなかったからかなりショックだよ!」

小川「人を買いかぶり過ぎだよ。私、清楚でも何でもないし」

西岡「男の純情を弄んで楽しいか!?」

小川「そっちが勝手に私の事を清楚だの何だのって決めつけて盛り上がってただけじゃない」

西岡「酷い!俺はあんだけ意を決して告白したのに!」

小川「だからそれを見て勇気を貰ったし、気持ちを十分に受け取ったから付き合っても良いかなって思ったんじゃん。一目惚れ的な乙女心はこれでも一応持ってるんだよ?」

西岡「だとしても辛いよ!何か空回りしてるみたいで!」

小川「こっちだって真摯に受け止めて、私なりに真剣にお付き合いしようかなって思ったんだよ?だから告白を受け入れたんじゃない」

西岡「もう少し真剣に考えて!そして受け入れるかどうかを判断して!」

小川「分かったよ。じゃあちょっと考えるから待ってて」

西岡「え?あぁ、うん」


 小川、また少し離れてポケットからコインを出してコイントスをする。


小川「うん。表が出たから、付き合える。付き合おう」

西岡「そんな運否天賦で決められてたまるか!」

小川「今度は何?」

西岡「そんなコイントスで適当に決められちゃ精神的にキツイわ!」

小川「じゃあどうすれば良いの?私は真剣に物事を決める時はコイントスをして決めるって決めてるんだから」

西岡「もっと自分を大事にして!」

小川「でも表が出たから付き合えるよ?」

西岡「……それ、日本通貨だと裏だよ」

小川「あ、そうなの?」

西岡「うん」

小川「…………」

西岡「…………」

小川「じゃあ付き合えないわ。ごめんなさい」

西岡「それはおかしい!そんなコロコロ意見を変えられてもさぁ!」

小川「でも結果は結果だし」

西岡「さっき付き合えるって言っておいて今度はいきなり付き合えないってどう言う事!?何がしたいの!?」

小川「そっちが余計な事言ったんじゃん。こっちが表だって初めて知ったし」

西岡「いや、確かに墓穴掘った感はあるけどもさ!?そうやって意見をすぐに変えるの止めてよ!」

小川「まぁ決まっちゃったもんはしょうがないよね。じゃあ私帰るから」

西岡「待って待って待って!よく考えてから俺を振るなりなんなりして!?」

小川「だから言われた通り真剣に決めて出た答えじゃん。そっちがそうしろって言ったんだよ?」

西岡「俺が言ったのは考えろって事!何で分かんないかなぁ!?」

小川「よく分かんないわぁ、男の子の考える事って」

西岡「男だからじゃなくない!?普通分かる事だと思うけどねぇ!?」

小川「私はどっちでも良いんだって。付き合っても、付き合わなくても」

西岡「本音が!遂に本音が!」

小川「西岡君が良いと思ったから付き合おうと思ったのに、何か分かんないけどそっちが告白してきたのに逆に振るからこっちだってどうすれば良いか分かんないんだよ」

西岡「え、俺?俺が悪いの?」

小川「端的に言うとそうなるね」

西岡「何でだよ!小川さんが俺を凄く雑に扱ってるから怒ってるんじゃん!?」

小川「それが分かんないよ。雑に扱ってるつもりなんかないんだから」

西岡「何て人だ……!もう嫌だ!ふざけんなよ!」

小川「ふざけてなんかないよ。そっちがさっきから荒れてるんじゃん」

西岡「もうどうしたら良いのか分からん!もう今まで通りみたいに小川さんと接する事は出来ないと思う!」

小川「嫌いになった?じゃあ付き合わなくて良いじゃん」

西岡「嫌いになったとは言ってないだろ!」

小川「じゃあどうすんの?付き合うの?付き合わないの?」

西岡「付き合ってください!」

小川「はい」






――――終わり

『三角関係』



・登場人物


 西岡(大学生)

 小川(大学生)

 儀間(大学生)



・舞台


居酒屋






 明転。


 居酒屋。テーブル一つ。椅子三つ。テーブルの上には酒とつまみ。

 西岡、小川、儀間、板付き。


儀間「はい、二人がようやく付き合えた記念に、かんぱーい」

西岡小川「かんぱーい」

儀間「いやー、やっと二人がくっついたかー。長かったねぇ」

西岡「お陰様で」

儀間「本当だよ。二ヶ月だよ、二ヶ月。私と美幸が友達で、私と西岡が友達だったから私が仲介してアンタに美幸を紹介したからこうやって付き合えたんですよ?もっと感謝してよね」

西岡「分かってるって。ここは、俺が奢らせて頂きますから」

儀間「それくらい当然でしょ」

小川「でも良い人紹介してくれてありがとね、愛真。最初は何か変な勧誘か何かと思ったけど、こんな優しい人を紹介してくれるなんてさ」

儀間「まぁ私もこんな奴紹介すんのもどうかと思ったけどさ」

西岡「こんな奴って、言い方よ」

儀間「幼馴染だからそこまで悪い奴じゃないし、今まで彼女出来た事無くて可哀想だったから紹介したんだけど、思ったより仲良くやってくれて良かったよ」

西岡「愛真は言う事がキツイなぁ」

小川「でも良かったよ。今ではラブラブだもんねー」

西岡「いやぁ、あっはっは」

儀間「あーあー、イチャコラやっちゃってさ。ま、でもそれでこそここまでコギつけた甲斐があったってもんだよ」

小川「うん。あ、ごめんね、ちょっとお手洗い行ってくるね(下手に退場)」

儀間「あいよー」

儀間「で?どうなの?どこまでイったの?」

西岡「まぁまぁ、それは良いじゃんか」

儀間「気になるじゃん。教えてよ。ヤる事ヤったんでしょ?」

西岡「まぁまぁ、ね?」

儀間「あっそ。ノロケかいな」

西岡「そっちが聞いたんじゃん」

儀間「あー、こうなったら私も彼氏作るかなー」

西岡「……あのさ、愛真。ちょっと聞いてくれないか?」

儀間「何?改まって?」

西岡「俺さ、気付いちゃったんだよ。俺、愛真の事が好きなんだ」

儀間「…………」

西岡「俺と美幸の事でずっと相談乗ってもらってさ。いつも俺の事を考えてくれてるのは愛真でさ。そしてやっと気付いたんだ。俺が本当に好きだったのは、愛真、お前だって」

儀間「…………」

西岡「愛真、俺と付き合ってくれ!俺の愛を、受け止めてくれ、愛真!」

儀間「無理無理無理」

西岡「無理?」

儀間「無理」

西岡「あ、そうですか…………分かりました…………」

小川「(下手から登場)お待たせー。どしたの二人共?暗くなっちゃって」

西岡「いや、大した事ないのよ」

小川「そう?何かあったんじゃないの?」

西岡「いや、本当、大した事じゃないから。うん」

儀間「今、西岡から告白された」

小川「え?」

西岡「ちょっと!何、言ってんだお前!?」

儀間「だってこれ美幸に一大事の事だから言っておこうと思って」

西岡「だからって言うか?普通?」

小川「何?どういう事?」

西岡「いや、違うんだよ!本当何でもないから!」

儀間「さっき美幸がトイレ行ってる間に、西岡から告白されて、私がフッた」

西岡「だから言うなってお前!」

小川「詳しく聞かせて」

儀間「何か、私が美幸の事で相談に乗ってたら私の事好きになったらしくて、付き合ってくれって告白された」

小川「どういう事?」

西岡「いや、あのー、そのー……」

儀間「『本当に好きだったのは、お前だったんだ』」

西岡「止めろって!」

小川「本当に好きだったのは愛真だったの?」

西岡「いや、違うんだよ、その、何て言うかね?酒の勢いって言うかさー……なんつーのかな……」

儀間「『俺の愛を受け止めてくれ、愛真!』」

西岡「お前ちょっと黙ってろよ!恥ずかしいだろ!」

儀間「だって恥ずかしい事を凄く強く言ってたじゃん」

西岡「だけどさぁ!」

小川「何?本当に好きだったのは愛真で?私の事は遊びって事?」

西岡「いや、いやいや、その、何て言うのかな、違うんだよ」

小川「何が違うの?」

西岡「お酒が入ってちょっと口が滑ったと言うか、勢いで適当な事言っちゃった、みたいな?」

小川「誤魔化さないでちゃんと話して」

西岡「えっとー……あれだ!本当に好きだったのは、愛真。本気で好きなのは、美幸!そう言う事だよ!」

小川「どういう事よ!?違いが分からない!」

西岡「分からないかなぁ……あの、本当の愛と、本気の恋、みたいな」

小川「意味分かんないよ!じゃあ何?二股しようとしてたの?」

儀間「多分そうだと思う」

西岡「オォイ!?何ハッキリ言ってくれてんだお前!?」

儀間「だってそう言う事でしょ?」

西岡「いやそうだけどそうハッキリ言われるとさぁ!」

小川「やっぱりそうだったんじゃん!二股かけようとしてたんじゃん!」

西岡「だから違うんだって!」

小川「何が違うの!?私と愛真のどっちとも付き合おうとしてたんじゃん!」

西岡「ちょっと待ってよ!俺の言葉と愛真の言葉どっちを信用するの?」

小川「信用するも何もさっきから『違う』ばっかりでちゃんと説明しないじゃない!」

西岡「俺、彼氏だよ?彼氏の言葉を信じないの?彼氏の言葉より友達の方を信じるの?」

小川「はぁ?キッチリ説明もしない人よりよっぽど愛真の方が信用出来るわ!」

西岡「えぇ?超ショックなんですけど!?」

小川「ショックなのはこっちだよ!」

西岡「おい、愛真!お前も黙ってないで何か言えよ!」

儀間「この浮気男!」

西岡「そう言う事じゃねぇ!」

儀間「何?何を言えば良いの?」

西岡「責任を取れって言ってんだよ!お前のせいでこうなったんだぞ!」

儀間「は?何で?」

西岡「お前が余計な事言わなければこんな事にはならなかったんだぞ!」

儀間「余計な事を言ったのはアンタでしょ?自業自得やんけ」

西岡「正論過ぎて何も言えねぇ!」

儀間「よく堂々と言えるね、自分への評価を」

小川「愛真は西岡君の事、好きでも何でもないんだよね?」

儀間「モチのロン」

小川「本当に?」

儀間「当たり前でしょ?こんな男好きになる訳無いじゃん。二股男だよ?」

小川「凄く複雑な気持ちなんだけど。愛真が私に勧めたんでしょ?」

儀間「まぁこんな事になるとは思わなかったからねぇ。ドンマイ、美幸」

小川「何でそんなに他人事なの?」

儀間「だって私、第三者でしょ?」

西岡「当事者だぞ、お前」

儀間「あ、そうなの?それは気付かなかったわ。あっはっは!」

西岡「笑ってんじゃねぇよ!お前この状況どう思ってんだよ!」

儀間「こうやって人間は出会いと別れを繰り返すんだなぁって」

西岡「詩的な事言ってんじゃねぇよ!」

儀間「自分でも素敵な事言ってるなぁって思った」

西岡「『素敵』じゃない!『詩的』!」

儀間「そんな事、指摘しないでよ」

西岡「言葉遊びしてんじゃないんだよ!どうすんだよこの空気!?」

小川「それはアンタが作ったんでしょうが!」

西岡「あっ、ハイ……そうでした」

小川「大体何で西岡君が告白するにまで至ったのさ?愛真、西岡君と何かあったんじゃないの?」

儀間「何も無いよ」

小川「じゃあ何で好きになられたのよ?」

儀間「知らないよ。あ、コイツ頭おかしいって思ったんだから」

西岡「言い方よ」

小川「本当に何も無いの?」

儀間「本当に無いよ。全然好みじゃない。全く好きになれない。こんな男よりもっと顔が良い人が私は好みだから!」

小川「止めろ!複雑だよ!さっきから凄い複雑!こんな男を好きになった私は何なのよ!?傷付くよ!」

西岡「俺もひっそりと静かに傷付いていってるよ…………」

儀間「とにかく私とコイツとの間には何も無いから。こんなクズ」

西岡「オイ!俺だって許容範囲の限界があるぞ!クズは言い過ぎだろ!」

小川「この状況作っといてさっきから何その態度?何でさっきから逆切れしてんの?」

西岡「いやぁ、コイツがあんな事言わなければこんな事にはならなかったなぁって思ったら、つい……」

儀間「凄ぇ、これが修羅場か」

小川「そもそも西岡君が告白なんかしなければ良かった話でしょ?」

西岡「まぁ、そうですね、はい」

儀間「おうおう、破局の流れってこんな感じか」

小川「愛真を好きになっちゃったのは仕方ないかもしれないけどさ、普通告白する?二股かけようとする?」

西岡「あの、その、ねぇ……勢いが出ちゃったって言うかさ……」

儀間「こうやって人間関係って崩れていくんだなぁ」

西岡「五月蠅ぇな!五月蠅ぇな、さっきから!何?楽しんでんの?」

儀間「だってこんな状況なかなか見られないよ?テンション上がっちゃうよ」

西岡「上げるな!静かにしてろ!」

儀間「何よ、さっきは何か言えって言って、今度は黙ってろって。どうしてたら良いのさ?」

西岡「とりあえず今は黙っててくれる?話が拗れる」

小川「ちょっと、まだ話は終わってないんだけど?」

西岡「そうでした……」

小川「結論としてさ、どっちと付き合いたいの?」

西岡「そりゃ、美幸だよ」

小川「じゃあ何で愛真にも告白したの?」

西岡「あー……あーーーー!もう言うわ!どっちとも付き合いたいと思ったから告白しました!悪いですか!」

小川「悪いに決まってんでしょ!何開き直ってんの!」

西岡「だってどっちも魅力的なんですもの!お付き合いだよ!?別に最終的にどっちを選ぶかは後で決めても良いじゃない」

儀間「完全に開き直ったよ、コイツ」

小川「最低」

西岡「あぁ!最低ですよ!でも一途な恋に拘る必要があるでしょうか!?この世の中!?職業だって多種多様に選択が出来る時代ですよ?パートナーだって多種多様に選ぶ権利が俺にだってあるはずですよ!」

儀間「少なくともお前に選ぶ権利は無い」

小川「最早、人権も剥奪しても良いレベル」

西岡「おかしくないでしょうか?これが結婚してるとか、これから婚約をするって状況ならここまで怒られても仕方無いと思いますよ?でもまだお付き合いの段階ですよ?もう少し心に余裕を持って生きていっても良いんじゃないですかね?」

小川「余裕?浮気するのが余裕?」

西岡「あぁ、そうですよ!だから俺を許してくれよ~!」

小川「じゃあ私も浮気するわ。それでフィフティフィフティね」

西岡「それはちょっと困るよ~……」

小川「一途じゃなくて良いんでしょ?最終的に誰を選ぶかって権利は私にもあるでしょ?」

西岡「それは話が違うじゃんか~」

小川「じゃあ私浮気してくるから。じゃあね!」

西岡「あ、ちょっと待ってよ~!俺が悪かった!許してくれー!」


 小川、西岡、上手に退場。


儀間「他人の不幸は蜜の味だなぁ。酒が旨ぇ!」




―――終わり

『ポイントカード』



・登場人物


西岡

 儀間

 小川



・舞台


 コンビニ






 明転。


 コンビニ。カウンターとレジ。

 儀間、小川、西岡、板付き。


儀間「いらっしゃいませー」

西岡「タバコ21番お願いします」

儀間「はい、こちらで宜しかったでしょうか?」

西岡「はい」

儀間「では、合計3,647円になります。当店のポイントカードはお持ちですか?」

西岡「いえ、持ってないです」

儀間「只今、無料でお作り出来ますがいかがされますか?」

西岡「ポイントが貯まると何かもらえるんですか?」

儀間「10ポイント貯まりますと、インドへの1日旅行券がもらえます」

西岡「応募じゃなくて?」

儀間「はい。その場でお渡し致します」

西岡「あぁ、それは良いですね。折角なんで作ってください」

儀間「畏まりました。少々お時間を頂きますが宜しいでしょうか?」

西岡「はい」

儀間「ありがとうございます。少々お待ちください」


 儀間、小川、机の下からポイントカードとハンコを取り出し、ひたすらハンコを押していく。


西岡「…………」

儀間「…………」

西岡「長いね」

儀間「はい?」

西岡「いや、長いなと思って。何か何枚もポイントカード作ってるみたいだし」

儀間「当店のシステムですので」

西岡「だとしても長くない?」

儀間「ですから少々お時間を頂きますと申し上げたのですが」

西岡「まぁ良いや。早く押してよ」

儀間「畏まりました」


 儀間、再びハンコを押す。


西岡「…………」

儀間「…………」

西岡「長ぇよ。長ぇ。それいくらで1ポイントなの?」

儀間「1円で1ポイントです」

西岡「は?そうなの?」

儀間「ですので、お客様のお買い上げ金額が3,647円ですので、3,647ポイントお付けいたします」

西岡「は?手作業で3,647回このハンコ押すの?」

儀間「そうなりますね」

西岡「最近だと機械でピッとやったりしない?」

儀間「当店の規則ですので」

西岡「じゃあ、なんか最初ハンコ押して後はペンでピーっと省略したりしない?」

儀間「規則ですので」

西岡「あっそう。これあとどれくらい時間かかるの?」

儀間「1枚で10ポイントですので、あと360枚分程作らないといけませんので、大体40分くらいかかりますね」

西岡「多いね!そして長いね!」

儀間「まぁ規則ですので。もう暫くお待ちください」

西岡「あのさ、さっき10ポイントで1日インド旅行って言ってたよね?」

儀間「はい」

西岡「10円でインドに行けんの?」

儀間「そうなりますね」

西岡「インドやっす……364日分もインド旅行行きなくないなぁ」

儀間「あ、只今お会計が3,647円ですので、あと3円で1年分のインド旅行券に変更できますが」

西岡「いらないいらない。1年間もインドに居たくない。下手したらインド人になっちゃう」

儀間「そうですか」

西岡「まだハンコ押すの?」

儀間「お客様がお作りになると仰ったので……」

西岡「そこまでインドに行きたい訳じゃないんだよなぁ……それインド旅行しかないの?」

儀間「100ポイントで別の景品に交換も出来ますが」

西岡「そっちは?」

儀間「100ポイントでポテトチップス1年分ですね」

西岡「微妙にいらねぇ……」

儀間「今ですと36年分と交換が出来ますが」

西岡「それ何を基準に1年分なの?」

儀間「1日10袋換算で、一年で3,650袋ですね」

西岡「本当いらねぇ……何その換算基準?」

儀間「ここの社長がデブなもので」

西岡「デブだからっておかしいでしょ」

儀間「あと53円のお買い上げで37年分に交換が出来ますが」

西岡「いらない。他に何か無いの?」

儀間「200ポイントで単二乾電池1年分ですね」

西岡「何をもって1年分なの?」

儀間「1日4本計算ですので、4本入りの物が18年分で6,570セット、計26,280個と交換ですね」

西岡「使い道が無ぇんだよな……」

小川「プラレールとかラジカセとか」

西岡「使わないんだよなぁ。せめて単三か単四なら良かったのに」

儀間「あと153円のお買い上げで19年分の6,935セットの27,740個に変更出来ますが」

西岡「いいいい、いらない。もっとマシなの無いの?」

儀間「300ポイントで爪切り1年分ですね」

西岡「……まさかとは思うけど、それ1日に1個の換算?」

儀間「いえ、1日10個の計算なので1年で3,650個ですね」

西岡「全く持っていらない!1日に10個ってどう言う計算だよ!」

儀間「今ですと12年分なので43,800個ですが、あと253円で13年分の47,450個になりますが」

西岡「いらないいらないいらない!何なら爪切り1個で数年使えるのにそんなにいらない!」

小川「使い捨てで清潔に」

西岡「いらんわ」

儀間「そうですか。ちなみに500ポイントでこち亀全巻セットです」

西岡「あぁ、それは微妙に嬉しい気がする」

儀間「今ですと7セット分ですね」

西岡「7セットも持ってどうすんのよ。持ち腐れだよ」

小川「ブックオフに売るとか」

西岡「そんな使い方したくないなぁ……」

儀間「ちなみに7セットはこちらになります」


 小川、机の下から段ボール箱を取り出す。


西岡「何これ?」

儀間「こち亀7セットです」

西岡「これ今この場で持ち帰んなきゃいけないの?」

儀間「そうですねぇ」

西岡「せめて宅配になんない?」

儀間「そのようなサービスは行っておりません」

西岡「無いのかよ……」

儀間「ちなみにあと353円でもう1セット付きますがどうされますか?」

西岡「かさばるし重いし置く所無いんでいらないです」

儀間「そうですか」

小川「チッ(段ボールを下に戻して再びハンコを押す)」

西岡「おい、アイツ今、舌打ちしたぞ」

儀間「ちなみに1000ポイントで男性のお客様の場合、コンドーム1年分ですね。1日1個なので365個が3年分で1,095個になります」

西岡「そんなにいらない。そんなに使わないし」

小川「プッ」

西岡「おい、アイツ今度は笑ったか!?失礼だろ!」

儀間「申し訳ありません」

西岡「アンタも笑ってんじゃないよ!と言うかこのポイントカードいらないなぁ……」

儀間「そうですか(再びハンコを押す)」

西岡「え、もういらないんだけど」

儀間「何がですか?」

西岡「そのポイントカード」

儀間「折角お作りになりましたのに……」

西岡「いや、申し訳ないけど、それいらないです。ロクなのが無いし」

儀間「ここまで作ったのに、本当にいらないんですか?」

西岡「いらないです」

小川「チッ(上手に退場)」

西岡「おい、アイツまた舌打ちしたぞ!」

儀間「まぁここまで作業させといて無駄になったら誰でも苛立ちますよね」

西岡「え、何?俺が悪いの?」

儀間「そうなりますねぇ」

西岡「何だよこの店……じゃあインド旅行5日分と、ポテチ1年分だけ交換で」

儀間「それは出来ないです」

西岡「は?何で?」

儀間「一度にどれか一つしか選べません」

西岡「マジかよ……マジで何なんだこの店……じゃあインド旅行5日分で」

儀間「それも出来ないです」

西岡「はぁ?どう言う事よ?」

儀間「一度にどれか1つを一気にポイントを使って頂く形になります」

西岡「ますます何なのこの店……じゃあ今までのポイントがどれか1つしか選べなくて、1年分だの36年分だのにしか交換出来ないの?」

儀間「そうなりますね。当店の規則ですので」

西岡「『当店の規則ですので』はもういいよ!これ10,000ポイント貯めたら別の景品があんの?」

儀間「ございます」

西岡「どうせロクなのじゃないんだろうけど一応聞くわ。何?」

儀間「10,000ポイントで1,000円のキャッシュバックです」

西岡「いきなり実用的だなオイ!ここ経営大丈夫なの?」

儀間「さぁそこまでは私には……で、やはりポイントカードはお作りになりませんか?」

西岡「あぁ~!10,000円になるように買い物続けてくるわ!その間にポイントカード作っといて!」

儀間「畏まりました。ごゆっくりどうぞー」


 西岡、下手に退場。



―――終わり

『やまびこ』



・登場人物


 儀間

 小川

 山彦



・舞台


 山の頂上






 明転。

 儀間、小川、登山用の服を着て舞台上手から登場。


儀間「あー、良い眺めだねー」

小川「そうだねー。来て良かったねー」

儀間「ヤッホー、って言ってみようか?」

小川「止めてよ、子供じゃないんだから」

儀間「山の頂上に来たらヤッホーが定番でしょ?」

小川「そんなの何年も昔の話よ。じゃあ私ちょっとお花摘みに行ってくるから」

儀間「はいよー、ごゆっくりー」


 小川、舞台下手に退場。


儀間「いやー、それにしてもいい景色だなー。美幸も居ないし言っちゃお。ヤッホー!」


 儀間、耳を澄ませる。

 山彦、走って舞台上手から登場。


山彦「ヤッホー……」

儀間「うわっ!吃驚した!誰!?」

山彦「山彦です……」

儀間「山彦?あの山でヤッホーって言ったらヤッホーって返してくれるあの妖怪?」

山彦「そうです……!」

儀間「今時妖怪なんて嘘でしょ。変質者なら他を当たって」

山彦「本当に妖怪なんです……」

儀間「あのねぇ、山彦はとっくの昔に科学で証明されてんのよ」

山彦「いや、本当に妖怪なんです……」

儀間「じゃあ証拠見せてよ」

山彦「じゃあ、何か叫んでみて下さい」

儀間「叫ぶ?何で?」

山彦「声を反響させないので」


山彦、指パッチンをする。


山彦「どうぞ」

儀間「ふーん?面白いじゃない。じゃあ……バカヤロー!」


 儀間、耳を澄ます。


儀間「本当だ!声が返ってない!」

山彦「次は声を反響させてみせますのでもう一度何か叫んでください」

儀間「んー、そうねぇ……アホー!」


 山彦、舞台上手に去って行き、すぐに戻って来る。


山彦「アホー……」

儀間「おぉ、帰って来た」

山彦「信じてもらえましたか……?」

儀間「あぁ、うん。信じる。で、山彦さんが私に何の用?」

山彦「それなんですが、もうヤッホーって言うの止めてもらえませんか?」

儀間「は?何で?」

山彦「山彦も昔より数が減って少子高齢化が進んで人で、いや、妖怪手が足りないんですよ。皆介護に回ってしまって……」

儀間「はぁ。山彦も大変なのね」

山彦「そうなんです。だから一人当たりのヤッホーを返す割合が増えてしまってこうして駆けまわっててですね……」

儀間「ヤッホー!」

山彦「あぁ!?何!?」


 山彦、舞台上手に去り、再び戻ってくる。


山彦「ヤッホー……」

儀間「おぉ、戻ってきた戻ってきた」

山彦「何ですか突然……私まだ話してる最中でしょうが……」

儀間「湿っぽい話に飽きた」

山彦「飽きたって貴方ねぇ……こっちは真剣に……!」

儀間「ヤッホー!」

山彦「あぁ!?もう!!」


 山彦、舞台下手に去り、再び登場する。


山彦「こっ……カフッ…‥や、ヤッホー……」

儀間「面白いねアンタ」

山彦「貴方、ね、コヒュッ、やまび、っこを、何かはっ、だと思ってるん、ブフッ、ですか……!」

儀間「妖怪」

山彦「そういう事でなく……!ヒューヒュー……!」

儀間「別にわざわざ律儀に山彦を返さなくても良いんじゃない?さっきみたいに山彦を消す技使えばさ」

山彦「……あ、そうか!」

儀間「でしょ?」

山彦「それは思いつかなかった……」

儀間「アホなの?」


 山彦、指パッチンをする。


儀間「これからはそれで凌げば良いじゃない」

山彦「でもこれを続けてたら問題が……」

儀間「何?」

山彦「山彦が仕事をしなくなって観光客が減ってしまう……」

儀間「それが?」

山彦「我々は人々のヤッホーや信仰心で食っていけてる訳です。山彦が無いんじゃ、誰も来なくなってしまう」

儀間「ほう。でもそうしたらさっきの話と矛盾しちゃうんじゃない?」

山彦「諸刃の剣なんですけどね。でも仕事が増えて過労死するくらいならひもじい生活の方がマシだと思ってるんです」

儀間「難儀ねぇ」

山彦「それに観光客が減ったら土地開発でこの山は潰されて住む場所が無くなってしまう……」

儀間「ヤッホー!」

山彦「あぁ!また!」


 山彦、舞台上手に去ろうとするが、儀間に首根っこを掴まれる。


儀間「山彦スイッチ、オフにしたんでしょ」

山彦「あぁ、そうだった。また飽きたんですか?」

儀間「うん」

山彦「全くもう……」

儀間「まぁ山彦が仕事をしなくなったらしなくなったで観光客どころか色んな人がやって来るから安心しなよ」

山彦「どういう事ですか?」

儀間「まぁ、暫くしたら分かるよ」


 暗転。


NA「ここが山彦が発生しなくなったという謎の山、山彦山です。山彦が発生する条件は揃っているにも関わらず、一切山彦が返ってこないという不思議な現象が起こっております。これに興味を持った登山家や、一般の登山を楽しむ方が多く姿を見せており、果ては地学研究者等の科学者が原因究明の為、様々な国々から押し寄せています……」


 明転。


儀間、小川、山彦、舞台上手から登場。


儀間「ね、言った通りでしょ?」

山彦「はい!おかげ様で様々な問題が一気に解決しました!ありがとうございます!」

儀間「はいはい」

小川「ねぇ、愛真、さっきから誰と喋ってんの?」

儀間「んー?友達」
















―――終わり

『言えない』



・登場人物


 小川

 藤原

 西岡

 北島

 儀間



・舞台


 居酒屋







 明転。


 居酒屋。テーブルが一つに椅子が五つ。テーブルの上には酒とつまみ。

 左から、小川、藤原、北島、西岡、儀間が板付きで席に着いている。


小川藤原西岡北島儀間「かんぱーい!」

北島「いやー、高校を卒業してもう三年か~。皆無事に大学三年生になれて良かったなぁ」

儀間「ねー!こうして会うのももう何回目だろ」

西岡「高校卒業して皆違う大学行ったけど、なんやかんやこうして頻繁に集まれて良かったわ」

藤原「一生もんの友達って感じする」

小川「うわくっさーい!」

藤原「何でだよ」

小川「なんか青春みたい」

北島「良いじゃん青春で。楽しく集まれる喜びじゃない」

儀間「そうそう。今更恥ずかしい事隠すような仲じゃないんだしー」

北島「そうだよ。それにしても大学生活も後一年かー。来年度はこうして集まれるか不安だなー」

小川「そうだねー。私達はもう後一年で卒業だけど、西岡君と藤原君は後二年あるもんねー」

儀間「藤原君が医学部で、西岡君が獣医学部だもんね。頭良いって羨ましいなー」

西岡「いやいや、俺そんなに頭良くないよ」

儀間「でも獣医学部じゃない。頭良くなきゃ入れないよ」

小川「そうだよね。藤原君も医学部なんて凄いしさ」

藤原「俺だって頭良くないよ。日に日に難しくなっていく講義に着いて行くので必死だもん」

小川「それでも凄いよねー」

儀間「ねー」

西岡「あ、俺、早速で悪いんだけど、ちょっとトイレ(舞台下手に退場)」

小川「私もお化粧直しに(舞台下手に退場)」

儀間「あ、私もー(舞台下手に退場)」

藤原「……あのさ、ちょっと、相談があんだけど、良いかな?」

北島「何?」

藤原「いや、前々から言おう言おうと思ってずっと言えなかった事があるんだ」

北島「えっ、何?深刻な話?」

藤原「うん、結構……」

北島「何だよ?」

藤原「実は俺、医学部じゃなくて、理学部なんだ」

北島「医学部?」

藤原「違う、り・が・く・ぶ」

北島「い・が・く・ぶ?」

藤原「rrrrr理学部!」

北島「理学部?え、お前医学部じゃなくて理学部なの?」

藤原「そう」

北島「何で嘘ついてたの?」

藤原「いや、嘘ついてた訳じゃないのよ。確かに高校の時、皆には理学部って言ったんだけどさ、俺の活舌が悪かったのか、医学部に聞こえてしまったみたいで……」

北島「じゃああの時、訂正すれば良かったじゃないか」

藤原「言える雰囲気じゃなかったんだよ……皆凄く親身になって喜んでくれたからさ、言い出せなかったんだよ……」

北島「じゃああの話は嘘だったのかよ?細胞の講義がうんたらとか、人の体がどうのとか」

藤原「生物学科だからそう言う人体の事とかちょこっとは触れたんだよ。だから嘘は言ってない」

北島「じゃあ六年制じゃなくて、四年制なんだ」

藤原「そう。だから来年度で卒業」

北島「ふーん」

藤原「『ふーん』って、どうしたら良いかな?」

北島「素直に言えば良いじゃん。実は医学部じゃなくて理学部でしたって」

藤原「素直に言えたらこんな悩まねぇよぉ……」

北島「でもどうしようも無いじゃないか。今更、恥ずかしがる事かよ」

藤原「恥ずかしいだろ。今まで格好付けてきて、皆を勘違いさせてきたなんてさ」

北島「別に良いじゃん。理学部でも充分立派な学部だし」

藤原「でもさぁ……」

北島「素直に言いなって。きっと皆分かってくれるから」

藤原「そうかな……皆、呆れない?」

北島「別に俺は呆れたりなんかしなかったぞ?あぁ勝手に俺らが勘違いしてたんだなって逆に申し訳なく思うだけだよ」

藤原「そうかな……」

北島「そうだって」

藤原「そうか……そうだな!俺、言ってみるよ!ちゃんと胸張って!」

北島「そんな一大決心する事かね」

西岡「(舞台下手から登場)いやいや、お待たせ。あれ、小川さんと儀間さんは?」

北島「まだ帰ってきてないよ」

西岡「そっか。まだ化粧してんのかな。女子はそう言う所、長いよなぁ」

北島「そうだな。あ、藤原、皆が揃ってからでも良いけど、先に西岡に言ってみたら?」

藤原「えっ」

西岡「何?」

藤原「あ、いやその、まだ心の準備が出来てないから……」

北島「下手に引き延ばすと別の方向にハードル上げられるぞ」

藤原「いや、もう少ししてから!ちょっと深呼吸してくる!(舞台下手に退場)」

北島「あ、おい、藤原!」

西岡「どしたの、藤原?」

北島「まぁ、ちょっとあってな。後で皆に言いたい事があるんだって」

西岡「あ、そう。まだ皆、来ないよな?」

北島「いや、知らんけど」

西岡「実はさ、ちょっと相談に乗ってもらいたくてさ」

北島「お前も?」

西岡「『お前も?』って?」

北島「いや、別に。何だよ」

西岡「あのね、前々から言おう言おうと思ってなかなか言い出せずに三年間過ごしてきたんだけどさ……」

北島「……何か同じようなパターンだな」

西岡「パターン?」

北島「いや、続けて?」

西岡「あぁ、うん。あの、とても言い辛い事なんだけど、実は俺さ―――」

北島「獣医学部じゃないって言うのか?」

西岡「いや、獣医学部は獣医学部なんだけど、獣医学科じゃないんだよ」

北島「え?獣医学部って獣医学科しか無いんじゃないの?」

西岡「いや、畜産学科とかも獣医学部の部類」

北島「じゃあ畜産か。良いじゃん、畜産」

西岡「いや、畜産でもないんだ」

北島「え?違うの?じゃあ何?」

西岡「生物環境生態保全学科」

北島「……何て?」

西岡「生物環境生態保全学科」

北島「……その生物なんちゃらって何すんの?」

西岡「田んぼの調査を主にやってる。タガメとかアメンボとか」

北島「……はぁ。農業じゃん」

西岡「いや、農業ともちょっと違うんだな……」

北島「他に何すんの?」

西岡「野山とかにも行って、測量したり」

北島「……土木建築じゃん」

西岡「土木建築ともちょっと違うんだな……」

北島「他は?」

西岡「野生の鳩とかカラスを追っかけて数を数えたり」

北島「……野鳥を愛する会じゃん」

西岡「いや、生態系を調べて保全するのが生物環境生態保全学科なんだよ。最近だと日本海溝の底にあるメタンガスを集める研究とかも進めてる」

北島「いよいよ獣医学部である必要性が無くなってきた気がする。それ本当に獣医学部なの?」

西岡「俺に聞くなよ。一応、獣医学部の部類らしいんだから」

北島「あっそう……で、何で今まで言わなかったの?」

西岡「何となく言い出し辛くてさ……高校の時、見栄張って獣医学部に受かったとしか言わなかったんだ……」

北島「じゃあ六年制じゃなくて四年制?」

西岡「そう。だから来年度に卒業。しかも獣医学科じゃないから獣医師免許取れないんだ」

北島「あっそー」

西岡「『あっそー』って、俺、どうすれば良いかな?」

北島「どうするも何も、素直に言えば良いじゃんか。獣医学部でも学科は獣医じゃなくて生物なんちゃらって学科だったって」

西岡「生物環境生態保全学科ね」

北島「良いよもう。長くて面倒臭い。言えよ、素直に」

西岡「素直に言えたらこんなに悩まないんだよ……」

北島「もう、面倒臭いなぁ」

西岡「『面倒臭い』って酷くない?」

北島「いや、似たような話聞かされて疲れたんだよ。とにかく、別にお前の事を嫌ったり呆れたりなんかしないから、素直に言ってみろって。俺達の仲だろ?」

西岡「そうか……そうだよな、俺、ちゃんと打ち明けてみる!」

北島「そんな大した話じゃねぇよ。全く……」


 小川、藤原、儀間、舞台下手から登場。


小川「ごめんごめん、女子トイレ混んじゃってて」

藤原「俺も深呼吸し過ぎた」

儀間「何で深呼吸?」

藤原「何でも無い」

小川「それにしても、二人は将来有望だよねー。二種類のお医者様だもんねー」

儀間「そうだよねー。お金がっぽがっぽって感じ?」

藤原「いや、そうでも無いよ」

西岡「うん。獣医学部って言っても、獣医師になるだけが道じゃないし」

儀間「そうなんだ。でも免許取れるんでしょ?」

西岡「えっ、いや、どうかなー……」

儀間「何?自信無いの?」

西岡「そう言う訳じゃなくてさー……」

儀間「きっと取れるよ!そして頑張って獣医師になってよ!ね?私、憧れちゃうな~。動物に優しい人じゃないとなれないし~」

西岡「そ、そう……?」

小川「そうだよねー。藤原君だって将来お医者様でしょ?そしたら私が病気とかになったら治してよねー?期待してるから!」

藤原「えっ、マジで……?」

北島「……おい、藤原、ちゃんと言えよ」

藤原「あ、そうだった。あのさ、ちょっと聞いてもらいたいんだけど」

小川「何?」

西岡「どした?」

藤原「実は俺、医学部…………」

小川「医学部?知ってるよ?」

藤原「いやその……医学部~……なんだよね~って言うね!」

儀間「何だよー。知ってるよそんな事ー!自慢かよー!」

藤原「いやぁあっはっはっは!」

北島「藤原……西岡、お前は言えよ?」

西岡「え?あぁ、うん…………よし!皆、話を遮って申し訳ないんだけど、ちょっと聞いてくれないかな」

儀間「何何、今度は西岡君?」

小川「どしたの?」

西岡「俺、獣医学部なんだけど、その、ねぇ?」

儀間「獣医師になれるんでしょ?」

西岡「いや、なれないんだ。実は今まで言えなかったんだけど……俺、獣医学部は獣医学部でも、獣医学科じゃないんだ」

小川「どう言う事?」

西岡「獣医学部なんだけど、生物環境生態保全学科って所で、要は田んぼとか山とかの生態系を保全するって言う趣旨の学科だから獣医師にはなれないんだ」

儀間「じゃあ就職先は動物病院とかじゃないんだ?」

西岡「うん。普通の企業に就職って形になると思う。それに四年制だから来年度に皆と一緒に卒業って事になる」

小川「へー、そうなんだ」

西岡「今まで黙っててごめん!」

儀間「何で?別に良いじゃん」

北島「そうだよ。俺達が勝手に獣医学部と言えば獣医師になれるとしか思い込んでただけなんだから。なぁ?」

小川「そうそう。別に謝る事じゃないよ」

西岡「皆……ありがとう!」

小川「これで西岡君も来年度に一緒に卒業出来るんだし、これから頑張ろう?」

西岡「おう!」

儀間「でも藤原君はこれからも勉強頑張んなきゃだね。医学部だし」

藤原「お、おう、そうだな」

小川「医者か~。奥さんになったら左団扇の生活だね~」

儀間「そうだね~。立候補しよっかな~なーんて」

藤原「おっ、マジで?どうしよっかな~!」

小川「私も立候補しよっかな~。未来のお・い・しゃ・さん!」

藤原「あっはっはっは!」

儀間「あ、ごめん。ちょっと親から電話かかって来ちゃった(舞台上手に退場)」

小川「私も今度はトイレ(舞台下手に退場)」

北島「良かったじゃん。皆、受け止めてくれて」

西岡「あぁ!良かった~……!これで気兼ね無くこれからも一緒にツルめるよ!」

北島「そうだな。で、藤原、お前どうすんだよ」

藤原「どうしよう……」

西岡「何?何かあったの?」

北島「いや、コイツもお前と似たようなもんでさ。実は藤原は医学部じゃなくて理学部なんだよ」

西岡「医学部?」

藤原北島「り・が・く・ぶ」

西岡「い・が・く・ぶ?」

藤原北島「rrrrrr理学部!」

西岡「えっ?理学部なの?」

北島「どうして言わなかったんだよ」

藤原「いや、何かモテ期が来たように思えて……」

北島「何も解決しないじゃんか。西岡はハッキリ言ったぞ?藤原もちゃんと言えよ」

藤原「いや、もう無理だ……あんだけハードル上がったらもう言えない……」

西岡「言えば良いじゃん。スッキリするよ?」

藤原「お前は良いよな~。ハッキリ言える人間だから」

西岡「どういう事よ」

藤原「なんつーかお前はさー、こうすぐに恥ずかしい事とか言える人間じゃん。俺にはそう言う度胸無いからさ~」

西岡「度胸とか関係ないじゃん。別に恥ずかしい事じゃないだろ。理学部だって立派な所じゃん」

北島「な?西岡もそう思うだろ?理学部だって何も恥ずかしがる事無いじゃん」

藤原「恥ずかしいよ。今まで騙してきたようなもんだぜ?」

北島「仕方ないじゃん。間違って伝わって、俺らが変に盛り上がっちゃっただけなんだから」

藤原「でもさー……正直、このモテ期に乗っかりたい!」

北島「それが本音かよ!」

西岡「恰好悪」

藤原「『恰好悪』って何だよ!良いよなお前は!自分の恥をそうやって何でも素直に言えんだから!」

西岡「人を能天気みたいに言うなよ!俺だって悩んでたんだぞ!」

藤原「本気で悩んでたらあんなにスラっと本当の事言えるかよ!俺はマジのマジに悩んでるから言えないんだよ!」

西岡「はぁ!?俺だって真剣に悩んでたわ!本当の事を言える度胸の無いお前には言われたくないわ!」

北島「まぁまぁ、二人ともその辺にしとけよ。何だよこの低レベルな争い」

藤原西岡「低レベルって何だよ!」

北島「そこだけ息合うのかよ。とにかく、藤原、お前どうすんの?」

藤原「もう良い、俺、このまま行く」

北島「嘘つき続けんの?」

藤原「嘘じゃ無ぇし!お前らが勝手に勘違いしてるだけだし!」

西岡「嘘でモテ期に乗ろうとしてんの?詐欺じゃん。みっともねぇ」

藤原「お前には分かんねぇだろうよ!今!この瞬間の輝きが!」

北島「もういいよ!もう好きにさせてやろう。俺は知らん」

西岡「えー、俺、嫌だぜ?この事知っちゃったんだもん。二人に言いたいわ」

藤原「西岡!お前言うんじゃねぇぞ!俺はこのモテ期に乗っかる!」

西岡「嫌だ。俺から言うもんね。コイツ嘘吐きだって」

藤原「本当止めろ!俺の人生最大の運が回ってきたんだぞ!」

北島「人生最大の運をこんな事に使うなよ……」

西岡「お前医学部って嘘ついただけじゃなくて理学部を下に見た言い方してんだぞ。そこ恥ずかしくないの?」

藤原「この際目を瞑る!」

西岡「意味分かんねぇよ!目を瞑るってお前が言うセリフじゃねぇ!」

儀間「(舞台上手から登場)ごめん、お待たせ。親がいつ帰ってくるんだってうるさくって」

小川「(舞台下手から登場)こっちもまたトイレ混んでて遅れちゃった」

藤原「大丈夫だよ。気にすんな」

西岡「あ、二人とも良い所に。あのさ、藤原なんだけどさ―――」

藤原「うおおおおい!西岡!言うんじゃねぇ!」

小川「何?どうしたの?」

藤原「何でも無い!何でも!おい、余計な事言うんじゃねぇぞ!」

西岡「えー?だって俺、言いたい」

藤原「ふざけんな!俺の人生を滅茶苦茶にする気か!」

西岡「ここらで打ち明けないと本当取り返しのつかない事になるぞ?」

藤原「そうならないようにすんだよ!」

儀間「本当に何?何が取り返しのつかない事になるの?」

藤原「うん!いや!特に何でもない!」

西岡「コイツ医学部じゃなくて理学部―――」

藤原「西岡ぁ!それ以上余計な事を言ったら……ただじゃすまさねぇからなぁ……!」

西岡「……怖ぁ、コイツ……」

儀間「ねぇねぇ、最近、医学部でどんな勉強してんの?」

小川「それ気になるー」

藤原「え?えーとね、最近は解剖とかしてるよ。食事中だからあんまり言いにくいんだけど、バンバン遺体を切ってる!」

西岡「マジで嘘つき始めたよ……どうする?」

北島「ほっとけ」

小川「やっぱり実習厳しい?先生怖い?」

藤原「怖いのなんのって。もう鬼の形相で講義してもんだからおっかないよ。実習なんか怒号の嵐よ!」

儀間「へー。やっぱり医学部ってそうなんだー」

藤原「だから日々の勉強も疲れるんだよ。覚える事が一日で多過ぎるからな。ま、これも医者になる為に必要な事だから頑張ってるんだけどね!」

小川「格好良いねぇ!」

儀間「凄いわー!」

西岡「ねぇ、本当の事言っちゃダメ?」

北島「もうほっとけ。俺は知らん」

藤原「あ、ちょっとトイレ行ってくるわ!」

小川「戻ったらまた話聞かせてねー!」

藤原「おう!(舞台下手に退場。同時にポケットから学生証を落としてしまうが、気付かない)」

小川「あれ、何か落としていった。学生証だ」

儀間「医学部の学生証ってどんなんだろ?やっぱり何か違うのかな?」

小川「他のと比べて大して変わらないんじゃない?ほら、普通だよ」

儀間「あ、本当だー…………ってあれ?生物学科?」

小川「え?……あ、これ医学部じゃなくて理学部って書いてある!藤原君医学部じゃないんだって!知ってた!?」

西岡北島「知ってた」

小川「えー!?じゃあ何で教えてくれなかったの!?」

北島「俺達もさっき知ったんだよ」

西岡「俺も言いたかったんだけどさー、アイツ、何かモテ期が来たとか言い出して俺の事口留めしてたんだよね」

儀間「最低!折角、玉の輿してやろうと思ってたのに!」

小川「本当だよ!もうこれ詐欺でしょ!ふざけんなよ!」

西岡「……女って怖ぇな」

北島「まぁこの二人だし」

儀間「帰ってきたらぜってぇ許さねぇ……!」

小川「ふざけんなよマジで……期待させやがって……!」

西岡北島「……怖ぁ……」

藤原「(舞台下手から登場)おまたせっ!あれ?どうしたの皆、沈んじゃって?」

小川「(藤原に藤原の学生証を渡す)」

藤原「あっ!?これっ!?いやそのこれはね、何と言うかそのー……」

小川「何で嘘ついたの?」

藤原「嘘って言うか、俺の活舌が悪くて皆を勘違いさせちゃった~みたいな……」

儀間「さっき解剖とかそれっぽい話してたよね?」

藤原「うん、その、うっかり口から出たって言うか~……」

小川「モテ期が来た、とか二人から聞いたけど?」

藤原「…………」

儀間「あん?どうなんだよ?」

藤原「…………はいっ!実は俺医学部じゃなくてrrrrrr理学部でした~!ドッキリさせようと思ってたんだけど、何か言い出しにくくてネタ晴らし出来なかったんだよね!はいっ!じゃあこの話はお終いね!さぁ楽しく飲もう!」

小川「もう冷めたわ。今日はもう解散しよ」

儀間「そうだね、私達今日はもう帰るわ」

西岡「じゃ、じゃあ俺達も…………」

北島「そ、そうだな。また日を改めて……」

藤原「ちょ、ちょっと待って!」

小川「じゃあね、嘘吐きさん(舞台上手に退場)」

儀間「詐欺師さん(舞台上手に退場)」

西岡「……ほらね?早く言わないから滅茶苦茶になったでしょ?」

北島「でもまぁ、なんだ。ドンマイ」

藤原「…………」

西岡「まぁ、その、元気出せよ。二軒目、行くか?」

北島「うん、付き合ってやるよ」

藤原「……俺、これからはもっと上手い事やって新しい出会いを見付けるように頑張るわ……」

北島「あ、コイツ何も反省してねぇ」























―――終わり

『余命』



・登場人物


 儀間

 西岡



・舞台


 病院の診察室






 明転。


 病院の診察室。診察台テーブル一つ。椅子二つ。

 儀間、西岡、板付き。


儀間「体に異変を感じたのは三日前の事でした。最初は気のせいだと思っていたのですが、時間が経つに連れて違和感が、激痛に変わりました。もしかしたら私はもう長くないのかもしれない。仮に生きられたとしても、大きな手術で大事なモノを失ってしまうかもしれない。だけど私は、生きる事の方に希望を持ちたい。たとえ女としての体の一部が無くなったって、私が私らしくあればそれで良いんだって……だから先生、はっきり言って下さい。私、覚悟は出来ています。私は、一体何の病気なんですか?」

西岡「食べ過ぎです」

儀間「やっぱり……!」

西岡「整腸剤出しておきますねー」

儀間「先生、私はあとどれくらい生きられるんですか?」

西岡「六十年くらい生きられると思いますよー」

儀間「六十年……そんなに短いんですか……」

西岡「充分長いと思いますよー」

儀間「先生、手術はいつですか?」

西岡「しませんよー」

儀間「そんな……!先生、私はもう手術をしても無駄な程重症何ですか!?」

西岡「不必要な程健康です」

儀間「先生、隠さなくて良いんですよ?」

西岡「オープンに話してます」

儀間「では、いつ頃治るんですか?」

西岡「んー、二、三日もあれば?」

儀間「二、三日……長いな……」

西岡「六十年よりは圧倒的に短いですよ」

儀間「長い闘病生活だけど、私、頑張ります!」

西岡「そうですかー。で、整腸剤出すんですけど、その間、今回みたいにいっぱい食べないで下さいね」

儀間「食事制限があるんですか!?」

西岡「制限って程でもないです」

儀間「何を食べたらいけないんですか?」

西岡「基本何食べても良いです」

儀間「じゃあ何が?」

西岡「まぁ、今、胃が荒れてるんで、脂っこい物とかは避けて頂けると」

儀間「カロリー制限……」

西岡「そこまでじゃないです」

儀間「じゃあ入院の手続きしてきます……」

西岡「必要無いですよ」

儀間「自宅療養で良いんですか!?」

西岡「あぁ、まぁ、そうですね」

儀間「良かった……!また家族と会えるなんて……!」

西岡「そうですか。ではお気を付けて」

儀間「先生、再発の可能性はありますか?」

西岡「え?十分あり得ますよ?」

儀間「えっ……治るんじゃないんですか……?」

西岡「治りますよ?また同じ事を繰り返したらお腹が痛くなりますよ」

儀間「予断を許さない状況って事ですね?」

西岡「それを言ったら全人類、四六時中そうなりますね」

儀間「ではどれくらいの頻度でここに通えば良いんですか?」

西岡「もう来なくても大丈夫ですよ」

儀間「もう来なくて良いって……!先生、見捨てないで下さい!」

西岡「見捨ててませんよ。この一回切りで大丈夫って事です」

儀間「通院の必要が無いと!?」

西岡「そうですね」

儀間「良かった~!実は健康保険証が無くて、金銭的に厳しかったんですよ~!」

西岡「はぁ。ではお帰り下さい」

儀間「あ、先生。患者家族の会とかありますか?」

西岡「は?」

儀間「あの、同じ病気を患った人やその家族の方との交流会とか」

西岡「あぁ、それ自体はありますけど」

儀間「そうですか!同じ病気の方に話を聞いたり、こっちの話をしたりしたかったんですよ!」

西岡「はぁ、そうですか。そもそも病気じゃないですけどね」

儀間「で、どこでいつやるんですか?」

西岡「やりませんよ?」

儀間「えっ、何故?」

西岡「食べ過ぎで交流会を開くなんて聞いた事ありませんよ」

儀間「それだけこの病気は日本国内では珍しいんですか?」

西岡「ここまで騒がしいのはある意味珍しいですね」

儀間「じゃあ私が先立って、これからの医療に貢献します!」

西岡「余計なお世話です。では次の方ー」

儀間「あ、そうだ」

西岡「何だよ、まだ何かあんのかよ!」

儀間「この病気、もし学会で発表する事があったら、私を事例に出して下さい」

西岡「は?」

儀間「私を実験台としても構いません!」

西岡「あ?」

儀間「少しでもお役に立ちたいんです!世界中の人々の為に!」

西岡「何の役にも立たないんで、帰って、どうぞ」

儀間「役に立たないって、それって私は末期状態って事ですか!?」

西岡「違うわ!」

儀間「治るって言ったのは嘘だったんですか!?」

西岡「治るわ!ただの食べ過ぎだって言ってんだろ!いちいち大袈裟にせんでも良いんだよ!」

儀間「小さな事がいずれ大きな事に!」

西岡「無ぇよ!あるとしたら肥満になるくらいだよ!」

儀間「やっぱり併発する病気があるんじゃないですか!」

西岡「病気じゃねぇよ!ただのデブだよ!」

儀間「肥満は高血圧になり不整脈や心筋梗塞、脳梗塞を引き起こす可能性があります。生活習慣病。れっきとした病気です」

西岡「分かってんならそのドカ喰いを止めろ!」

儀間「美味しい物はいっぱい食べたいじゃないですか!」

西岡「知らんわ!」

儀間「食中毒です!」

西岡「食中毒は食べた物に毒性があって中毒症状を引き起こすものであって、食べる事が止められない中毒の事ではない!」

儀間「つまるところそういう事です!」

西岡「どういう事だよ!いいからもう帰れ!」

儀間「先生!もうちょっと話を聞いて下さい!」

西岡「五月蠅ぇ!後ろが支えてんだよ!」

儀間「これからどうすれば良いかだけでも!」

西岡「腹八分目で抑えて、薬飲んで寝てろ!」

儀間「それだけで良いんですか!?」

西岡「最初からそう言ってるだろ!」

儀間「先生!貴方は名医ですよ!ここの病院は信用出来るってツイッターに呟いときます!」

西岡「いらんいらん!恥ずかしいわ!」

儀間「じゃあFacebookとアメーバブログに!」

西岡「同じ事だよ!」

儀間「Googleマップに5つ星付けときますね!」

西岡「やかましい!とっとと帰れ!いいから!」

儀間「ありがとうございましたー!」


 儀間、下手に退場。


西岡「精神科を紹介しときゃ良かったかな……」

―――終わり

『薬局』



・登場人物


 藤原

 西岡



・舞台


薬局






明転。

 薬局。下手に長机が一つにベンチ一つ。机の上には勘定用のトレー。

 西岡、板付き。藤原、下手から登場。


藤原「西岡さーん。お会計でーす」

西岡「はいはい」

藤原「ではお薬の説明を致します。最近、お体の調子が悪いみたいですが?」

西岡「えぇ、まぁお医者から風邪だと言われまして」

藤原「どんな症状ですか?」

西岡「頭痛と吐き気と咳が酷いですね」

藤原「そうですか。ではお薬のご説明をさせて頂きますね」

西岡「はい」

藤原「まずこちらのお薬ですね。こちら頭痛を抑えるお薬です。食後に三回飲んでください。副作用で吐き気が少し出てきますのでご注意下さい」

西岡「はぁ」

藤原「で、こちらのお薬ですね。こちらは吐き気を抑えるお薬です。こちらも三回食後に飲んでください。副作用で咳が少し出てしまいますのでご注意下さい」

西岡「……え?」

藤原「で、こちらのお薬ですね。こちらは咳を抑えるお薬です。こちらも三回食後に飲んでください。副作用で少し頭痛が出てしまいますのでご注意下さい」

西岡「えぇ?」

藤原「以上になります」

西岡「一周してませんか?」

藤原「何がですか?」

西岡「いや、副作用、出過ぎでしょう」

藤原「まぁ仕方ない部分はありますので」

西岡「いやいや、頭痛と吐き気と咳が辛いんですよ。これ副作用で全部同じ症状出ちゃってるじゃないですか」

藤原「まぁちょこっとだけですから」

西岡「あっそー。副作用ってどの程度なの?」

藤原「頭が割れる程の頭痛と、死にそうになる程の吐き気と、眠れない程の咳ですね」

西岡「副作用ってレベルじゃないよね?症状が悪化してるし。それに眠れない程の咳ってヤバいだろ」

藤原「そう言う方にはですね、睡眠薬も出しております。睡眠の三十分前に飲んで下さい。副作用はですね……」

西岡「やっぱりあるのか、副作用」

藤原「副作用は不眠です」

西岡「矛盾か?え?睡眠薬の副作用が不眠ってどっちが勝つんだよ」

藤原「個人差ですかね」

西岡「とにかくそれ嫌ですね」

藤原「そう言う風に仰る方が時々いらっしゃいます。なので病院の方からこちらのお薬も選べるようになっております」

西岡「そっちは?」

藤原「こちらのお薬ですね。先程のお薬が一錠にまとめた物になります」

西岡「最初からそっちを出してくれよ」

藤原「こちら、先程の副作用がまとめて出るようになっております」

西岡「毒薬だよ、そんなもん!」

藤原「どちらにしますか?」

西岡「どちらにしますかじゃねぇよ!こっちの薬は副作用しか出ないの?」

藤原「そうなりますね」

西岡「副作用しか出ないってどう言う事だよ!本来の作用があって副作用があるんだろ!副作用しか出ないんだったらそれはもうただの毒薬だよ!」

藤原「落ち着いて下さい。そう言う事を仰る方もいらっしゃいます。なので追加で別のお薬も出しております」

西岡「何だよ」

藤原「こちら先程仰った風邪の症状を抑えるお薬です」

西岡「あんのかよ。そっちだけで良いだろ」

藤原「これはこっちのお薬と一緒でないと効果が出ませんので、一緒に飲んでください」

西岡「え?でも副作用出るんでしょ?」

藤原「まぁ出ますね」

西岡「え、頭痛と吐き気と咳を抑えて、副作用に頭痛と吐き気と咳が出る事に変わりないんでしょ?意味無いじゃねぇか!」

藤原「いいえ、こちらのお薬は副作用で熱が出ます」

西岡「悪化してるじゃねぇか!」

藤原「どうされました?」

西岡「えぇ?頭痛と吐き気と咳が辛いのにこの上今は出てない症状の熱も出るのか!?これ何の苦行だよ!」

藤原「落ち着いて下さい。興奮を抑えるお薬も出しておきますから」

西岡「それの副作用は?」

藤原「寒気と下痢です」

西岡「やっぱりな!やっぱりあったよ、副作用!そんでまた風邪が悪化するような副作用だよ!」

藤原「で、どちらのお薬にしますか?」

西岡「『どちらにしますか』じゃねぇよ!普通の風邪薬は無いのかよ!」

藤原「ありません」

西岡「ハッキリ言ったな。じゃあもう良いよ」

藤原「あ、ちょっと、どちらに行かれるんですか?」

西岡「帰るよ、馬鹿馬鹿しい」

藤原「でもこれですと一日で治りますよ」

西岡「……え?」

藤原「これらのどちらかは飲めば一日で治ります」

西岡「……そうなの?」

藤原「はい。風邪と似た症状が一日続くだけで、その翌日にはすぐ治りますよ」

西岡「でもその一日辛いんでしょ?」

藤原「そうですねぇ。大体、薬を飲まずに治す期間の辛さを一日に圧縮したような辛さだと伺っております」

西岡「……でもすぐに治るんですよね?」

藤原「えぇ、治ります」

西岡「でも辛いのはなぁ……治す期間が長くても良いんでもう少し副作用が少ないやつとかないんですか?」

藤原「そう言う風に仰る方もいらっしゃいます」

西岡「さっきから苦情の嵐じゃないか」

藤原「そうしますと、当病院ではおススメではありませんが、こちらのお薬を処方しております」

西岡「どうせ副作用があるんでしょ?」

藤原「ありません」

西岡「無いの?じゃあ最初からこっち出せば良かったじゃん」

藤原「当病院でおススメしてるものでは無かったので。治す期間も長いですし」

西岡「どれくらいかかんの?」

藤原「二年です」

西岡「は?」

藤原「治すのに二年かかります」

西岡「二年間も風邪引いたままなの?」

藤原「そうなりますね」

西岡「そんなの意図的に風邪を持続させてるだけだろ。寧ろそれが副作用じゃねぇか」

藤原「そう仰る方もいらっしゃいます」

西岡「さっきから苦情ばっかり来てるじゃないか。本当もう良いよ」

藤原「西岡さん?分かりました。ではこちらの薬をお出しします」

西岡「これは何よ」

藤原「市販の風邪薬です」

西岡「もう最初からこれ出しておけよ!」








―――終わり

『死なない』



・登場人物


 西岡

 北島

 藤原



・舞台


 応接室








 明転。


 会議室。中央にテーブル1つ、椅子4つ。

後ろにテーブル1つ。茶菓子とポット、紙コップ、銅像がある。

西岡、北島、藤原、板付き。


西岡「じゃあ、今回の話は、これで進めて頂戴よ」

北島「西岡さん、これはいくら何でも無茶ですよ」

西岡「そんな事無いでしょ。これくらいの汚れ仕事、慣れてるでしょ?」

北島「それは西岡さんが無理矢理……」

西岡「まぁまぁ落ち着きなさいよ。それにしてもちょっと喉が渇いたねぇ?」

北島「あぁすみません。君、コーヒーか何か入れてくれるか?」

藤原「はい」

北島「(藤原に目線を送り、頷く)」

藤原「(北島からの目線を受け、頷き、西岡のカップに薬を入れる)」

西岡「流石に飲み物無しでずっと喋りっぱなしだと喉が渇いちゃってねぇ」

北島「急で大事なお話でしたので気が回りませんでした。申し訳ありません」

西岡「いやぁ、別に俺は良いんだよ。それより、さっきの仕事、ちゃんとやってよね?」

北島「……分かりました」

西岡「素直な人は好きですよ、俺」

北島「……そうですか」

藤原「コーヒーです。どうぞ」

西岡「あぁ、ありがとね(飲み干す)」

北島「…………」

藤原「…………」

西岡「インスタントの割に美味しいじゃないか」

北島「そうですか?それなら良かった」

西岡「……んー、何か具合が……」

北島「大丈夫ですか?」

西岡「まぁ大丈夫だと思うよ」

北島「そうですか」

西岡「……で、これからの事なんだけど、俺は一切関与していないって方向で進めてよ?俺も今、疑われちゃ会社をクビにされるどころか、ブタ箱行きになるからなぁ」

北島「……分かってます。あ、コーヒー、もう一杯いかがですか?」

西岡「あ、じゃあ折角だから貰おうか」

北島「はい。きみ(藤原に目線を送る)」

藤原「畏まりました。(頷き、コーヒーを淹れ、さっきより多めに薬を入れる)どうぞ」

西岡「どうも。(一気に飲み干す)」

北島「…………」

藤原「…………」

西岡「ま、今回はこの旨いコーヒーに免じて、もう少しだけ期限を待ってやるよ。二週間もありゃ金は用意出来んだろ?」

北島「分かりました。その方向で進めます」

西岡「頼むぜ?北島さん。じゃあ、俺、これで帰るから」

北島「……あの、何か体に異変とかありませんか?」

西岡「え?あー、さっきから胸焼けが少しするくらいかな。何で?」

北島「いえ……おかしいな……」

西岡「まぁいいや。そんじゃね」


 西岡、帰ろうとする。

 北島、銅像を手にして西岡を殴り、西岡、倒れる。


北島「はぁ……はぁ……はぁ……」

藤原「ようやく死んでくれましたかね」

北島「あんだけ毒薬飲んで死なないとかどんだけ丈夫なんだ……」

藤原「まぁ、これで終わりですから。後の事は我々にお任せを」

北島「そうだな。後は頼んだ」

西岡「いったぁ~!何だ?突然?」

北島藤原「何ィ!?」

西岡「何かいきなり頭をドーンって殴られたような―――」

北島「うわあああああああああ!!」


 北島、再び西岡を殴り、西岡、倒れる。


北島「びっっっっくりしたぁ!」

藤原「丈夫なんですねぇ……」

北島「でももう流石に終わりでしょ……」

西岡「何何?いきなり殴って来て?」

北島藤原「まだ死なないの!?」

西岡「何?どう言う事?」


 北島、ナイフを取り出し、西岡の心臓目掛けて刺す。


西岡「いったぁ~!何?何なの?」

北島「死なない……」


 藤原、後ろから西岡を羽交い絞めにする。


藤原「北島さん!今の内にそこのロープで!」

北島「分かった!」

西岡「何!?何なの!?」


 北島、西岡の首にロープを巻き付け、藤原と共に西岡を倒し、クビを絞める。


西岡「苦しーい!息が出来なーい!辛ーい!息がー!息がー!」

北島「全然死なないコイツ!?」

藤原「丈夫なんですね!」

西岡「スゥー!ハァー!息がー!息が出来ないよー!スゥー!ハァー!」


 北島、藤原、西岡を離す。


西岡「ゲホッ!ゲホッ!」

北島「はぁ……はぁ……ハッキリ息してたんだよなぁ……」

藤原「何なんですかコイツ……」

西岡「何なんだよ君達、さっきからこんな悪ふざけをして?」

北島「こっちは真剣だったんだけど……」

西岡「俺、もう帰るよ?良いね?」

北島「ちょっと!ちょっと待って!」

西岡「何?」

北島「ちょっとこっち来て下さい」

西岡「何よ?」

北島「え、何で死なないの?」

西岡「死なない?誰が?」

北島「いや、アンタだよ、アンタ」

西岡「俺がぁ?別に死ぬような事になってないから、そりゃ死なないよ」

北島「あそこまでやっておいて『死ぬような事になってない』?」

西岡「『あそこまで』?あぁ、何?さっきの戯れ?アレ、俺を殺そうとしてたの!?」

北島「まぁ、その、はい……」

西岡「マジかよ!ヤベーじゃん!逃げなきゃ!」

藤原「今喋ってる間に逃げられたでしょ」

西岡「確かに」

北島「話戻しますけど、何で毒で死なないの?」

西岡「毒盛ったの?いつ?」

藤原「コーヒーに。それも二杯」

西岡「マジか。美味しかったよ?」

北島「何で平気なの?即効性だよ?」

西岡「鋼鉄の胃袋って言われるくらい胃が丈夫だからかなぁ」

藤原「限度がある」

北島「何で頭を殴られて死なないの?」

西岡「あー、俺、頭が固いってよく言われるんだよね」

藤原「意味が違うじゃないか……」

北島「じゃあナイフで刺されて死なないのは?」

西岡「よく映画を観て胸を打たれる事があるからそれで耐性が出来てたんじゃないかなぁ?」

藤原「胸を打たれるってそう言う事じゃないじゃない……」

北島「じゃあロープで首を絞められても平気なのは?」

西岡「俺、よく仕事で自分の首を絞める事が多いからかな」

藤原「もう全部意味をはき違えてるじゃないか……何なんだよコイツ……」

西岡「てか何で俺を殺そうとしたの?」

北島「そりゃ今まで散々苦しめられてきたからね、こっちは」

西岡「苦しめたのは君達じゃん。殴ってきたり、刺してきたり、絞めてきたり」

北島「物理的にじゃなくてね?金銭面とか精神的に苦しめられてきたんだよ」

西岡「そりゃあ、だって君達に汚点があったからだろう?君らがミスをした。そして俺がそれを明らかにしようとしたら君らがどうしてもって言うから口止めしてたって契約だよ?俺が責められるのはお門違いだよ」

北島「揚げ足取りがお上手なんですね」

西岡「普段セブンの揚げ鶏食べてるからかなぁ?」

藤原「今度は漢字が違うよ」

西岡「君も揚げ足取りが上手いねぇ。酉年?」

藤原「そう言う事じゃない」

西岡「じゃあ猪年かな?猪突猛進に殺しに来たからね」

藤原「計画的にやってたんだよなぁ……」

西岡「計画的?じゃあずっと前から俺を殺そうとしてたの?マジで?」

藤原「まぁ……」

西岡「にしては殺し方が二転三転してるよ?」

藤原「不測の事態が多かったんです」

西岡「不足かぁ。じゃあ蛇年だ。足が無いんだもの」

藤原「また漢字が違うし、そう言う事でもない」

北島「あの、何でさっきからそんな平然としてるの?殺そうとした人達に囲まれてるんだよ?」

西岡「何でかなぁ……いまいち殺しに来たって感じがしなかったし、実際、苦しかっただけだったから」

北島「だとしてもここまでやられたら普通怒らない?」

西岡「いやぁ、似たような事SMクラブでやられてるから」

藤原「気持ち悪っ」

西岡「あっはっは!ヌルいヌルい!それじゃあ俺は満足出来ないよ」

藤原「本当に気持ち悪い……」

北島「ね」

西岡「とにかくね、甘いんだよ。その程度じゃ俺は死なないよ。だって慣れてるもん。SMクラブで!」

北島「もう本当に気持ち悪い!お前のせいでこっちはもう苦しい思いをしてるんだよ!」

西岡「だからそれはそっちの問題だろ?」

北島「死ねよ!本当に死んでくれ!」

西岡「うっ……!」


 西岡、倒れる。


北島「……え?死んだ?」

藤原「……死んでますねぇ」

北島「何で?」

藤原「コーヒーに入れた毒が回ったのかもしれません」

北島「いや、この人の事だ。きっと言葉が胸に刺さったのかもしれない」


















―――終わり

『占い』



・登場人物


 小川

 西岡

 藤原



・舞台


占いの館






 明転。


 占い館。舞台中央にテーブルと椅子二つ。テーブルの上にはコップ。怪しげな雰囲気。

 小川、板付き。

 西岡、藤原、上手から登場。


西岡「ここ、ここ。俺がおススメする占い館」

藤原「俺あんまり占いとか興味無いんだけどなぁ」

西岡「いや、ここのはよく当たるんだって!試しに占ってもらってみなって!」

藤原「でもそもそも俺占いって信じてないんだよね」

西岡「相談事にも乗ってくれるんだ」

藤原「そうなの?じゃあ試しに行ってみるか」

西岡「うん。じゃあ俺外で待ってるから」

藤原「分かった」


 西岡、上手に退場。

 藤原、席に着く。


小川「ようこそ、占い館『サザンクロス』へ……占い師のセレンティーヌ・サクラです」

藤原「えーっと、初めてなんですけど、大丈夫ですか?」

小川「構いませんよ。では先にアンケートの方を書いてもらえますか?」

藤原「あ、はい」


 小川、藤原にアンケート用紙を渡す。藤原、アンケートを書き、小川に渡す。


小川「ご協力ありがとうございます。では藤原さん、今日はどのような占いをご要望でしょう?」

藤原「適当に色々占ってもらいたいんですけど、どんな占いがありますか?」

小川「ではまず手相から見てみましょうか?」

藤原「あ、はい」

小川「ふむふむ……総合運が悪いですね」

藤原「へー」

小川「仕事運が悪いですね。最近仕事で上手く行ってない事ありませんか?」

藤原「まぁ最近は上司から怒られる事が多いですねぇ」

小川「やっぱり。後は恋愛運ですね。これも悪い。恋人と上手く行かない事がこれから起こるでしょう」

藤原「最近は割と落ち着いてるんですけどねぇ」

小川「そうですか。ついでに女難の相も出てます。女性関係で揉める事があるでしょう。気を付けてください」

藤原「はぁ……」

小川「金運も悪いですね。近い内余計な出費をする事になるか、突然お金が無くなる事になります」

藤原「ふーん?」

小川「おや、水難の相も出てますね。水辺には近寄らないようにしてください」

藤原「ほーん?」

小川「健康運もよろしくない。体調には十分注意してください」

藤原「はぁ」

小川「……信じてませんね?」

藤原「何かありきたりと言うか、誰にでもこう言う事言ってるんじゃないかなぁって思って」

小川「失礼な。私の占いは当たりますよ」

藤原「すいません。俺あんまり占いって信じてなくて。友人に勧められて試しに寄ってみただけなんですよ」

小川「それは良い。これが運命でしょう。ここで私に占ってもらって良かったですね。きっと役に立ちますよ」

藤原「占いってそんなに凄いもんなんですか?」

小川「えぇ。特に私のはすぐに、そして確実に当たりますよ」

藤原「占いって儲かるもんなんですか?」

小川「お陰様で繁盛しております」

藤原「さっき書いたアンケートを元に推理してやってるだけの様に見えるんですよね」

小川「多少推理は入りますが、あくまでそれは参考です。占いは本物です」

藤原「何かインチキ臭いんですよねぇ……」

小川「何て失礼な!ではすぐに私の占いが絶対に当たる事を証明して見せますよ!(藤原に水をぶっかける)」

藤原「うわっ!?何するんですか!」

小川「これが水難の相」

藤原「アンタがぶっかけただけでしょうが!」

小川「しかも私がやったから女難の相」

藤原「アンタの匙加減だろ!ヘックショイ!」

小川「健康運が悪い、当たりましたね」

藤原「アンタがぶっかけたからだよ!」

小川「占いは以上です。では料金の方が、通常料金五千円と、私への侮辱でプラスして合計3万円になります」

藤原「高っ!?プラス料金っておかしいだろ!」

小川「これが金運が下がってる証拠」

藤原「だからそれもアンタの匙加減だろ!このインチキ占い師!」

小川「何おぅ!?まだ言うか!(スマートフォンを取り出し電話をする)もしもし、長谷川商事さんですか?私占い館サザンクロスの職員の小川美幸ですけどね。オタクの藤原って社員がね、営業妨害してくるんで迷惑してるんですよ!」

藤原「何で俺の勤め先に電話してんだ!」

小川「これで仕事運が悪くなるでしょう」

藤原「アンタのせいだろうが!」

小川「そして私がこれから貴方を毎晩ストーキングします。恋愛運が下がってる証拠にします」

藤原「止めろ!もう占い結果を全部、意図的に起こしてるじゃねぇか!」

小川「どうです、私の占いは当たるでしょう?」

藤原「無理矢理、現実にしてるだけだろ!このインチキめ!」

小川「インチキなんかじゃありませんよ!」

藤原「ほら三万だ!もう二度と来るか!」

小川「私の占いは当たるんですぅ!ベソかいても知りませんから!」

藤原「ふん!(席を立ち、舞台上手側に向かう)」


 西岡、上手から登場。


西岡「あっ!藤原!」

藤原「あ、西岡。お前の言ってた占い館だけどさ―――」

西岡「今会社から連絡があったんだけど見てないか!?」

藤原「いいや?どうした?」

西岡「俺達、二人とも異動だってさ!左遷だよ!?」

藤原「マジで!?仕事運!?」

西岡「何でもこの前行った取引先の女性が俺達に苦情を言ってきたらしいぞ」

藤原「女難……?」

西岡「給料下がるぞきっと……」

藤原「金運……!?」

西岡「これじゃあ今の彼女と別れるしかないな……藤原、お前もだろ?」

藤原「恋愛運……!?」

西岡「俺ショックで気分悪くなってきた……」

藤原「俺も……これが健康運……!?」


 SE、雨の音。土砂降り。


西岡「うわっ!?夕立か!?さっきまでそんな気配しなかったのに……」

藤原「水難……!?仕事運、金運、女難、恋愛運、健康運、水難……全部当たってる……」

西岡「占い、どうだった?」

藤原「全部当たってた……」

西岡「だろ?よく当たるんだよ、怖いくらいに……」


 小川、二人の間に入る。


小川「私の占いは当たる」

藤原西岡「うわっ!」

小川「うふふふふふふふ……(元の席に戻る)」

藤原西岡「怖ぁ……」

藤原「俺、これからここに通う事にするわ!」

西岡「そうしろそうしろ!」

藤原「これからどうするよ……」

西岡「とりあえず引っ越しか……」


 藤原、西岡、上手に退場。
















―――終わり

『すれ違う二人は突然に』



・登場人物


金田康太・・・大学生。男。

山崎正美・・・大学生。演劇サークル。男。薄毛。長身。

正岡百合・・・大学生。演劇サークル。女。長身。

森川晧貴・・・大学生。演劇サークル。男。

 田淵桃子・・・大学生。演劇サークル。女。

 藤原正将・・・大学生。演劇サークル。男。



・舞台


 大学構内






明転。


大学構内。

 山崎、正岡、森川、田淵、板付。四人で談笑している。金田、上手から登場。森川を探して入って来る。


金田「あ、森川―――」


 金田、正岡を呆けた目で見る。


森川「お、金田。講義終わった?」

金田「え?あ、おう……」

正岡「もう五限目始まっちゃうかな?」

田淵「あぁ、もうそんな時間かぁ」

山崎「あら、あと五分で始まっちゃうわ」

正岡「本当?じゃあ急がなくちゃ。同じ講義取ってたよね?行こ?」

山崎「そだねー。じゃあ皆、また後で」

正岡「またサークルでねー」


 山崎、金田に軽い会釈。正岡、おしとやかな女性な感じで金田に会釈(大人の女性っぽく)。山崎、正岡、舞台上手に退場。金田、正岡が去るのをじっと見つめている。


田淵「ほんじゃ私も部室行って作業するわ」

森川「あいよー。俺も後で行くから」

田淵「はいよー」


 田淵、舞台下手に退場。


金田「なぁなぁなぁ、今の子誰?」

森川「今の子?」

金田「あの、ほら、長身で細身の……」

森川「あぁ、正美?」

金田「正美って言うのか……」

森川「どしたん?」

金田「いや別に。あの子ってさ―――」

森川「『あの子』って、あいつ俺らと同期だけど二十八歳だぞ?」

金田「二十八!?はぁ、なるほど、だからあんな大人びているのか。で、あの人とはどう言う関係?」

森川「どう言う関係って、同じ演劇サークルの友達だよ」

金田「あ、そう。講義もう無いんだろ?遊びに行こうぜ色々聞きたい事―――」

森川「ごめん!さっきのやつらからサークルの方手伝ってくれって言われててさ、今日無理になったわ」

金田「おう、そうか。良いよ、また今度で」

森川「悪い。じゃあまた明日な!」

金田「おう!」


 森川、舞台下手に走って退場。

 すれ違うように上手から正岡、舞台上手から登場。


正岡「休講になってたよー……ってあれ、ごめんなさい!晧貴君じゃなかった!」

金田「あ、いえ!大丈夫です!晧貴なら部室に行ったみたいですけども!」

正岡「そうなんですか?ありがとうございます。本当ごめんなさい。失礼します」

金田「あ、はい……」


 正岡、舞台下手に退場。金田、また呆けた顔で正岡を見つめる。


山崎「置いてかないでよ~!」


 山崎、正岡を追いかけて下手に走って退場。


 暗転。


 明転。


 金田、舞台上手から登場。正岡、舞台下手から荷物を運びながら登場。


金田「あ、演劇サークルの……」

正岡「あっ、幸雄君の友達の。こんにちはー」

金田「今何してるんですか?」

正岡「明日うちの演劇サークルの公演なんで準備してるんですよー」

金田「へぇ、そうなんですか。あ、良かったら手伝いますよ!」

正岡「えっ、そんな悪いですよ!」

金田「良いの良いの!俺結構力持ちだから!」


 金田、正岡の荷物を代わりに持ってあげる。正岡、金田の手を取る。山崎、足早に舞台上手から舞台下手に。


正岡「ありがとうございます、助かります!明日公演なんで是非来てくださいね!」

金田「……はい!」

正岡「ではまだ運ぶ物がありますので……そろそろ晧貴君来ると思うので、場所は晧貴君に聞いてください」

金田「は~い」


正岡、走って舞台下手に退場。金田、元気よく舞台上手に退場しようとするが、森川と出くわす。


森川「おおっと、康太じゃん。あれ?何でうちの荷物持ってんの?」

金田「あぁ、えっと、正美さんが重そうにしてたから手伝ってあげようと思って」

森川「えぇ!?康太が誰かの手伝いをするとか珍しいな。明日は雨かな……」

金田「どういう意味だ。俺だって、やる時はやるヨ!で、これ何処に持って行けばいい?」

森川「悪いね。じゃあそこの校舎の三階にとりあえず持ってって。そこまで行けば多分、分かるから」

金田「おう、まかしとけ!ついでに正美さんによろしく言っといてくれよ!」

森川「うん?いつの間に正美とそんな仲良くなってたんだ?分かった、言っとく」

金田「頼むぜー!」


 金田、スキップで舞台上手に退場。山崎、舞台下手から荷物を持って登場。


森川「あ、正美ー。なんか金田が『よろしく』って言ってたよ」

山崎「金田?誰?」


暗転。


一同「ありがとうございましたー!」


 明転。


 翌日。

 公演終了後の受付前。

 上手に森川、山崎、田淵、正岡の順で並んでいる。


田淵「後どれくらいお客さん残ってる?」

森川「んーとね、俺の友達一人だけだね。もう出る準備してる」


  金田、上手から登場。


正岡「あ、昨日はありがとうございましたー」

金田「いやぁ、良い舞台でしたよ。こちらこそありがとうございました」

正岡「楽しんで頂けたら幸いです」

金田「あの、ちょっと良いですか……?(正岡を少し離れた所に連れ出す)」

金田「あの、えっと…………これ!受け取ってください!(ラブレターを差し出す)」

正岡「え?あぁ、はい。ありがとうございますー」

金田「この後すぐ読んでください!では俺はこれで!(ガッツポーズをし、下手に足早に退場)」

田淵「何々?ラブレター?」

正岡「違うでしょー。あ、これ正美君宛だ」

山崎「何?俺?」

正岡「はい、晧貴君の友達がくれた」

森川「いつの間に仲良くなってたんだ?何て言ってた?」

正岡「すぐ読んでほしいって。今日の感想とかじゃない?」

山崎「へー、嬉しいなぁ。でも何で俺に直接くれなかったんだろう?」

正岡「恥ずかしかったんじゃない?知らないけど」

山崎「どれどれ……」


山崎、舞台前に出てきて手紙を広げる。同時に照明が薄暗くなり、舞台手前だけが照らされている。同時に、金田、回想シーンのように舞台下手から出て来る。山崎、手紙を読み続けている。


金田「ちゃんとした自己紹介は初めてですね。俺、金田康太と言います。単刀直入に言います。一目見た時から、正美さんの事が好きでした!正美さんの笑顔が、初めて会った時から脳裏を離れず、夜も眠れません……そしてスラっとした背筋から、きっとご両親に愛されて育てられたのだと感じました。そして何より、正美さんのその金髪が、派手なようでいておしとやかな雰囲気が感じられてとても素敵です!その長い髪が風になびくその後ろ姿に、胸をときめかせてしまいました……!嗚呼、その髪と共に、貴方のその心もトかしてあげたい……!!正美さん、どうか俺と付き合ってください!!!!この後、校舎の前で待ってます!お返事を聞かせて下さい!」


 金田、下手に退場。

 同時にスポットから全明転。


田淵「どうだったー?」

山崎「とても、情熱的な……」

森川「何て?」

山崎「生まれて初めてこの髪の毛を褒められた……」

藤原「どゆ事?」

山崎「俺、ちょっと行ってくる!」

田淵「あ、ちょっと正美―!」


 山崎、走って下手に退場。森川、正岡、藤原、田淵、追って下手に退場。金田、下手から登場。そわそわしている。山崎、下手から走ってやって来る。森川、正岡、藤原、田淵、下手からこっそり様子を見ている。


山崎「康太さん!」

金田「あ、正美さ……え、何で!?」

山崎「手紙、読みました……ありがとう!」

金田「え?え?」

山崎「男、山崎正美!貴方の率直な気持ちに応えようと思います!」

金田「ヌッ!?アンタが正美さん!?」

山崎「とても情熱的で、嬉しかったです……!いきなりお付き合いとはいきませんが、お友達から始めさせてください!!」

金田「はぁ!?」

山崎「よろしくお願いします!!」

森川正岡藤原田淵「おめでとー!!!」

金田「え!?何!?」

森川「お前がソッチだとは思わなかったが、そこまで正美の事を……!」

正岡「良かったですね、康太さん!正美君とお幸せに!」

金田「違っ!俺は貴方に―――!」

藤原「アンタの事は良く知らんけど、正美を頼んだぞ!」

田淵「正美!(サムズアップ)」

山崎「ありがとう皆!」


 金田以外大団円の雰囲気。


金田「どうしてこなったーーーーー!?!?!?」













―――終わり


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