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コント集  作者: 河野吉田
PR
1/37

コント集1




コント集1



1・・・・誘われてない

2・・・DV相談

3・・・お前のセリフじゃない

4・・・俺、食えない

5・・・花見

6・・・・銀行強盗

7・・・・言わない

8・・・・孤島の殺人事件

9・・・・時間がズレている女

10・・・遊園地



『誘われてない』



・登場人物


北島

西岡

藤原



・舞台


居酒屋






 明転。


 居酒屋。テーブル一つに椅子三つ。テーブルの上には飲み物やつまみ。

 北島、西岡、藤原、席に着いている。


北島「この前のスノボ楽しかったよな」

西岡「俺初めてスノボやってみたけどさ、あれ結構、爽快感あって楽しかったわ」

北島「だろ?いや俺もさ、まだ始めて数年なんだけど、もうハマちゃってさ!」

西岡「俺もハマりそう!」

北島「なぁ、藤原、楽しかったよな?」

藤原「俺、誘われてないけど」

西岡「あの時は藤原じゃなくて板倉じゃなかったっけ?」

北島「あ、そっかそっか。ごめん、藤原」

藤原「いや、別に良いけどさ」

西岡「あ、楽しかったといえばさ、この前のライブ、どうだった?」

北島「あれ面白かったな!案外、知らないバンドのライブ行くのも良いもんだな」

西岡「だろ!?いやーオススメして良かったわー。今は売れてないけど、多分ね、これから結構、売れていくと思うんだよ!」

北島「そんな気がするわ!最初、誘われた時は『えー?』って思ったけど、掘り出し物みたいな感じがして行って良かったって思えたわ!なぁ、藤原?」

藤原「俺、それ誘われてない」

北島「あ、そっか」

西岡「あの時は木村と行ったんじゃなかったけ?」

北島「あ、そうだわ。すまん、藤原」

藤原「いや、良いんだけど」

北島「あー、ライブと言えば、一昨日行ったアニメライブ、あれ面白かったよな?」

西岡「あのアニメな!最高だったよな!」

藤原「俺誘われてなーい!」

北島「……どうした、急に?」

藤原「俺、誘われてない!」

西岡「誘われてない?」

藤原「いや、前から言おうと思ってたんだけど、俺、お前らから遊びに誘われた事無いんだよ。何で?何で誘ってくれないの?」

北島「そうだったっけ?あれ、でも先月の旅行は行ったよな?」

藤原「だから誘われてない!」

西岡「あれ山田だよ」

藤原「さっきからサラッと別の人の名前を出してんじゃねぇよ!一緒に行ってないって分かってんならこの話題を出すな!」

西岡「え、ごめん。まぁ、とりあえず座れよ」

藤原「……あのさぁ、この際だから言わせてもらうけど、何で俺を誘ってくれないの?」

北島「何でって、一緒にどこか遊びに行った事、無かったっけ?」

藤原「無いんだ、それが」

西岡「確かに言われてみれば一緒に遊びに行った事、無かったなぁ」

藤原「誘ってよ!俺達、友達だろ?」

北島「いや、まぁ友達だけど、たまたまね?たまたま、予定が合わなかっただけだろ?」

藤原「いや、そもそも誘われた事が無いんだよ」

北島「えー?でもいつもメンバー誘う時、西岡に声かけてもらってるけど、西岡、お前、藤原も誘ってたんだよな?」

西岡「誘ってないよ?」

北島「え?」

西岡「だって、趣味合わないじゃん」

北島「ちょっとストレート過ぎない?」

藤原「趣味が合わないってどういう事?」

西岡「いや、さっきのスノボだってさ、お前インドアだし。バンドにも興味無いし、アニメも見ないじゃん」

藤原「そりゃそうだけどさ」

西岡「趣味が合わない人と行っても盛り上がらないだけじゃない?だから誘わなかったの」

北島「え、マジで誘ってなかったの?ごめん藤原、俺それ知らなかったんだ」

西岡「でも良いんでしょ?誘わなくても」

藤原「は?」

西岡「だってさっき『別に良いけど』って言ってたじゃん。誘わなくても良いんでしょ?」

藤原「良くないよ。さっきの『別に良いよ』はこの話はとりあえず流すよって意味で、誘われなかった事に関して許可した訳では無い!」

北島「一旦落ち着こう、な?西岡、言い過ぎだぞ」

西岡「でもそう思わない?」

北島「何が?」

西岡「例えばよ、自分が興味無い事に誘われたら断るでしょ?」

北島「まぁ、そうだけど」

西岡「だから藤原の立場になって考えた時に、俺は、これに誘われたら嫌だなって思ったから、誘わなかったの」

北島「いや、そういう事じゃないじゃん。まずは藤原に聞いてみないと、行かないかどうか分からないじゃん。勝手に自己解決しちゃったら可哀想だろ。なぁ、藤原?」

藤原「確かに、それらに誘われたら俺は断ってたよ」

北島「え?」

藤原「だって興味無いから」

西岡「ほら」

北島「え、じゃあ何で怒ってたの?」

藤原「いずれにせよ断るにしても一度は誘ってもらってから断りたい!」

北島「何だコイツ!?」

藤原「俺はアウトドアにも、バンドにも、アニメにも興味は無い。だから誘われても絶対に行かない!」

西岡「じゃあ良いじゃん、どうせ行かないなら、手間が省けるじゃん」

藤原「そうじゃないだろ!誘われたいだろ!友達に!遊びに誘われたいだろ!」

北島「まぁまぁまぁ落ち着けって」

藤原「いいや、この際だから言わせてもらう。お前ら!一回は声掛けろ!そして俺は断るから!」

北島「何でわざわざ二度手間しなきゃいけねぇんだよ!え?仮によ、今度、草野球しようって話があんだけど、その時は来る?」

藤原「行かない」

北島「何だよ!?行かねぇのかよ!」

藤原「だって俺インドアだもん」

北島「じゃあ良いじゃねぇか。どうせ来ねぇんだろ?だったらこれからも誘わねぇよ」

藤原「それは寂しいだろ!」

北島「どうしたいんだよ。面倒臭ぇコイツ!」

西岡「でも今日は来てんじゃん。飲みに」

藤原「今日は俺がお前らを誘ったんだよ!お前らから誘われたんじゃない!俺が誘ったんだろ!」

西岡「あ、そうだったっけ?」

藤原「ほらー、そう言うところだよ。俺ら三人が集まる時って俺が誘った時しか無いんだよ。なのにいつの間にかお前らが俺を誘ったみたいにするんだよ」

北島「いや、そう言うつもりじゃ無かったんだよ。悪かったって」

西岡「でもさ、この店予約したの誰?」

藤原「西岡だよ」

西岡「俺だろ?日時決めてくれたの誰?」

藤原「北島だよ」

西岡「北島だろ?じゃあお前何したの?」

藤原「お前らを誘ったんだよ」

西岡「じゃあ実質何もしてないじゃん。俺らが藤原誘って今日来たようなもんじゃん?」

藤原「はぁ!?」

西岡「良かったじゃん、俺らに誘われて、今日来たようなもんじゃん」

藤原「……おかしくないですか?俺は確かに誘っただけで後は二人に任せたけれども、そもそも俺が誘わなかったら今日この三人で集まれなかっただろ!」

北島「そんな事無ぇよ。俺らだって飲みやるって言ったらお前誘ってたよ」

藤原「本当か?」

北島「本当だって。今まではたまたま俺らが藤原に声掛けなかっただけで、こう言う飲みの時にはお前も誘ってたって」

藤原「本当だな」

北島「そん時は来てただろ?興味無い事じゃないんだから。普通にこうやって集まって話するだけだったんだから」

藤原「まぁ、そうだな。その時は誘ってくれてたら来てたと思うわ」

北島「だろ?俺はちゃんと藤原も誘ってたって。なぁ、西岡も誘ってたと思うだろ?」

西岡「いや、俺は誘わなかったと思うよ」

北島「えっ?」

西岡「だってこういう集まりって、さっきみたいにどっか一緒に遊びに行った事とか話すじゃん?その時いなかった藤原をこうやって誘うかな」

北島「西岡、お前これ以上話ややこしくすんなって」

西岡「だってさ、さっきあんだけ言われたんだから俺も言わせてもらおうと思ってさ。多分これからも俺は藤原を誘う事は無いと思うよ」

北島「何、断言してんだ!」

西岡「そもそも何で藤原とツルんでるのか俺には分からない。いつから一緒に遊ぶ仲みたいに言われてるのかも分からない」

藤原「…………」

北島「西岡、それは流石に言い過ぎだぞ。藤原が可哀想だろ」

西岡「でも……」

北島「『でも』じゃねぇよ。藤原、あんまり気にすんな。ほら、今日は飲みなんだし、楽しく行こう!」

藤原「確かに、何で俺達一緒に遊ぶ仲ってなってたんだろう……」

北島「何?」

藤原「いつから俺達、友達だったんだろう」

北島「藤原?」

藤原「友達って、何だろう……」

北島「……お前のせいだぞ!」

西岡「俺ぇ!?」

北島「見ろ!何か哲学的な事考え始めちゃったぞ!あれどうすんだよ!」

西岡「知らないよ。でも北島も思わない?何でこんなに趣味が合わないのにツルんでんだろうってさ」

北島「思わねぇよ。友達っていつの間にか出来て続いていくもんだろ?」

藤原「『友達。互いに心を許し合って、対等に交わっている人。一緒に遊んだりしゃべったりする親しい人』」

北島「遂にスマホで友達の意味調べだしたぞ」

藤原「今の俺達、対等かな?」

西岡「いや?微妙じゃない?」

藤原「一緒に遊んだりしてたかな?」

西岡「してないね」

藤原「互いに、心許し合ってたかな?」

西岡「今さっき深い溝が出来たから、許し合ってないね」

藤原「なるほど…………」

西岡「……………………」

北島「……………………」

藤原「じゃあまず友達から始めましょうか。初めまして、藤原です」

西岡「西岡です」

北島「いやおかしいおかしいおかしい!俺達、友達だろ!?」

藤原「でもさっきの定義に当てはまらない……」

北島「泣きそうになってんじゃねぇ!俺達は友達!な!?」

藤原「良いのか……?俺達、友達?」

北島「そう!俺達友達!な、西岡!」

西岡「今、『友達』に『誘った』よ」

北島「そうそう!誘った!」

藤原「マジか……!友達に誘われた!やった!」

北島「やっと終わったよこの件……」

西岡「そうだ、昨日北島と話してて、今度合コンあるんだけどメンバー足りてないんだ。来る?」

藤原「うん!俺、女の子苦手だから行かない!」

北島「行かねぇのかよ!」














―――終わり

『DV相談』



 登場人物


 ・小川

 ・儀間



 舞台


 ・自宅(小川家)







 明転。

 小川家。机一つに、椅子二つ。

 小川、儀間、板付き。


儀間「どうも、家庭内暴力相談所の儀間と申します。宜しくお願い致します」

小川「よろしくお願いします……」

儀間「では小川さん、旦那さんからDVを受けているとの事でしたが」

小川「えぇ、もうそれは酷いんです。毎日毎日辛くて……」

儀間「毎日ですか……」

小川「えぇ……本当に痛くて、辛いんです……」

儀間「暴力的な事ですか」

小川「はい。何度も何度も同じ所をやられて……何度『止めて』と言っても止めてくれなくて……」

儀間「そうですか……」

小川「日常的にこうやられているともうおかしくなりそうで……」

儀間「DVは確かに酷い案件です。少しでもお力になれたらと思います」

小川「ありがとうございます。本当に酷いんです。毎日が辛くて辛くて……」

儀間「お気持ち、お察しします」

小川「私もうどうしたら良いのか……!」

儀間「落ち着いて下さい。それで、具体的にどんな暴力を受けているんですか?」

小川「足を……」

儀間「蹴られるんですか?それは酷い」

小川「いえ、私の足を重点的に痛めつけてくるんです……」

儀間「足に暴力を?それじゃあ日常生活に支障が出るんじゃないですか?」

小川「そうなんです。体調もここのところ変化が出てきてて……」

儀間「どう言う風に体調が?」

小川「はい。胃の調子が良くなりました……」

儀間「……はい?」

小川「あと高血圧だったんですが、下がりました」

儀間「はぁ……」

小川「それと便秘も治って快便になったり、肝臓の調子も良くなったり、目の疲れと頭痛も無くなって、それから…………」

儀間「あのー……暴力って一体どんな事を……?」

小川「ツボ押しです」

儀間「足ツボですか!?」

小川「はい。最初は軽いものだったんですが、次第にエスカレートしていって……難癖付けては私にツボ押しをしてきて……」

儀間「難癖?」

小川「最初は些細な事だったんです。私が買い物を忘れたり、洗濯に失敗してワイシャツをシワシワにしてしまったりした時に……最初の頃は私も仕方ないと思ってたんですが、最近はご飯が不味いだの、会社で上司に何か言われたのと言ってきて、その度に私にツボ押しをしてきて……」

儀間「……何か、DVとは言い難い事なんですが……」

小川「でも私の痛い所を的確に何度も突いてくるんです。本当に痛くて……でもそれに慣れてしまったからか、最近は痛みも薄くなってきたような気がして……ノイローゼかもしれないんです」

儀間「ツボ押しで体が健康的になってきただけじゃないですか?」

小川「最近は道具も使ってきて……このタイ式の足ツボの棒で私を痛めつけてくるんです」

儀間「言い方の問題ですよね?」

小川「これを使って近頃は掌の方もやってくるんです。そこも痛くて痛くて……」

儀間「まぁ、ツボ押しってどこをやっても痛いものですからね」

小川「指やこれで毎晩二時間にも渡って私を痛めつけてくるんです。もう本当夜遅くまで……」

儀間「あ、じゃあ睡眠不足になりますかね?」

小川「いえ、短い睡眠でも朝はパッチリで覚めてその日一日元気に動けるんです……」

儀間「……はぁ」

小川「それと足や手だけじゃなくて肩や背中もやってくるようになってきたんです」

儀間「至れり尽くせりじゃないですか」

小川「痛いだけじゃなくて、体もバキバキ音を立てたりするし、姿勢が良くなって部屋とか外でよく体をぶつけるようになってしまって……それを言うとまた私の体をまた弄ってくるんです……」

儀間「良かったじゃないですか」

小川「何が良いんですか?私はもう毎日毎日痛くて痛くて辛いんですよ……!」

儀間「いや、良い旦那さんだと思いますけどね。奥さんの体調を気遣ってマッサージしてくれてるんでしょう?」

小川「私の夫を庇うんですか?」

儀間「庇うって言うか、批難する所が見当たらないんですよね」

小川「儀間さん、ご結婚はされてるんですか?」

儀間「いいえ、独身ですが」

小川「やっぱり結婚してない人はそうなんですね……男に幻想を抱くから……だから夫の方に肩入れするんですね。同じ女性なら分かってくれると思ったのに……」

儀間「だから言い方の問題でしょ、それ?既婚だからとかそうじゃないとかだかじゃなくて、ハッキリ言ってこれ別にDVでも何でもないですよ」

小川「これがDVじゃなかったら何がDVだって言うんですか!?」

儀間「いや、もっと怪我をさせられるとか、体調を崩されるとか、精神的に病むような事をされるとかならDVに繋がるんですけど……正直ツボ押し、と言うかマッサージじゃ別に、としか思いませんね」

小川「痛い事に変わりは無いんです!それに痛いだけじゃなくて、時にはくすぐったくてたまんないんですよ!」

儀間「マッサージってそう言うものですしね?」

小川「私もうどうしたら良いのか分からないんです……」

儀間「えっと……一応私も仕事ですのでお聞きしますが、旦那さんにどうしてもらいたいのですか?」

小川「離婚とかは望んでないんです。ただ、もう少し優しくしてもらいたいんです……」

儀間「普通にお願いしたら良いんじゃないですか?」

小川「それが出来たらやってます!」

儀間「旦那さんは怖いんですか?」

小川「はい。いつも『お前の為にやってるんだ!』と威圧的に言ってくるんです」

儀間「本当に貴方の為にやってるんだと思いますけどね」

小川「他にも『嫌々言ってる割に抵抗しないじゃないか!』とか言ってくるんです。抵抗しないんじゃなくて、出来ないんです」

儀間「実際の所気持ちいんじゃないんですか?だから抵抗しないんじゃ?」

小川「セクハラですよ!確かに気持ち良いですけど!」

儀間「じゃあ良いじゃないですか。とにかくもっと優しくしてもらいたいならそう言えば良いだけでしょう?」

小川「あ、どこ行くんですか?」

儀間「帰りますよ。これDVじゃないですから」

小川「帰らないで下さい!友人にも両親にも相談しても相手にしてもらえなかったんです!」

儀間「でしょうねぇ」

小川「せめてこれからどうしたら良いのかだけでも相談に乗ってください!」

儀間「大した話じゃないでしょう。円満な夫婦にしか聞こえませんよ」

小川「円満だったらこんな酷い仕打ちは受けません!」

儀間「そんな酷く聞こえませんよ。とにかくね、良い旦那さんなんですから、キチンと話し合えば分かり合えるんじゃないですか?」

小川「話が通じないから困っているんです!」

儀間「あぁ、話を聞かないで止めないと言う相談なら聞きますけど。嫌がらせになりますからね」

小川「『そこ痛いから止めて』って言うと逆に緩急をつけて入念に押してくるんです!」

儀間「ツボを把握して丁寧にやってくれてるだけじゃないですか」

小川「何度言っても痛い所を突いてきて止めてくれないんです!」

儀間「はぁ」

小川「『はぁ』って何ですか!さっきから私の話をちゃんと聞いてるんですか!?」

儀間「聞いてますよ。聞いた上で流してるんですよ」

小川「酷い!私はこんなに真剣なのに!」

儀間「真剣なのは分かりましたけど、さっきも言ったようにこれをDVと言うには微妙なんですよ」

小川「とにかく愛が感じられないんですよ、この仕打ちに!」

儀間「旦那さんからの愛を貴方が感じられてないだけだと思いますけどね?」

小川「もう、男って皆そう!相手が女だと思って適当に誤魔化して!」

儀間「別に誤魔化してませんよ?」

小川「もう良いです!相談所なんかに依頼した私がバカでした!」

儀間「いや、まぁ間違ってはないんですけどね?解釈の問題と言いますか……」

小川「もう良いんです!もう、これで……!」

儀間「ちょっと、包丁なんか取り出してどうするつもりですか!?」

小川「決まっているでしょう!これで夫を……!」

儀間「早まるのは止めてください!」

小川「グゥの音も出ない程の美味しい料理を作って黙らせてやりますよ!」

儀間「幸せな解決法ですね!?」

小川「これで元の平和な家庭に戻してみせます!」

儀間「努力の方向性がおかしい!でもお幸せに!」


















―――終わり

「お前のセリフじゃない」



 登場人物


 ・西岡

 ・北島



 舞台


 ・居酒屋






 明転。


 居酒屋。机が一つに椅子が四つ。机の上には酒とつまみ。

 西岡、北島、板付き。


北島「で、突然話って何よ?」

西岡「実はお金を貸してほしくてさ」

北島「やっぱりな。なんかSNSで『金が無い』みたいな事呟いてたもんな」

西岡「恥ずかしながら、このままだと生活が出来なくてさ……」

北島「まぁそんな話だと思っていくらか用意はしといてやったけどさ」

西岡「用意が良いね。ありがとう、マジで」

北島「それで?いくら借りたいの?言っとくけど俺だって結構ギリギリだからそんなには貸せないよ?」

西岡「あぁ、うん。出来れば三万程」

北島「高ぇな。ほれ、三万」

西岡「ありがとう!マジで助かるよ!」

北島「お前だから貸すんだからな?」

西岡「いやぁ、持つべきものは友達だな!」

北島「ちゃんと返せよ?」

西岡「分かってるって。いつかちゃんと返すから」

北島「利子もちゃんとつけろよー」

西岡「何言ってんだよ。俺達友達だろ?水臭い事言うなよ」

北島「……それどっちの意味で言ったの?」

西岡「え?何が?」

北島「水臭いとかなんとか」

西岡「そのまんまの意味だけど?」

北島「……ちょっと待って?考えるわ……利子付けて返せよ?」

西岡「だから水臭い事言うなって。俺達友達なんだからさ」

北島「あ、これ合ってたわ。それお前のセリフじゃねぇよ」

西岡「何が?」

北島「お前、無利子で三万返すつもりだろ?」

西岡「え?うん」

北島「それはおかしいだろ~。言ったじゃん、俺だって厳しいってさ。そんな中お前に貸すんだから、利子ぐらい付けろよな」

西岡「俺達友達だろ?ケチ臭い事言うなよ~」

北島「それもお前のセリフじゃねぇよ!何で借りる側が上からなんだよ!」

西岡「何か問題が?」

北島「大アリだよ!利子ぐらい付けて返せよ。それが礼儀ってもんだろ?」

西岡「礼儀なんて気にすんなよ」

北島「だからそれもお前のセリフじゃねぇよ!親しき仲にも礼儀ありだろ?」

西岡「あ、そうか。お金貸してくれて誠にありがとうございます」

北島「そう言う事じゃない!誠意を見せろって言ってんの!」

西岡「誠意?あ、土下座?」

北島「違う!俺だって金に困ってるのにこうやって貸すんだからそれなりの事をしろって言ってんの!」

西岡「困ってる時はお互い様だろ?」

北島「何でお前はそう借りる側じゃない人の言葉がスラスラ出て来るんだ!とにかく利子付けて返せよ!?」

西岡「がめついなぁ。そんな事言ってて自分で恥ずかしいと思わないの?」

北島「お前、凄ぇな!?よく言えるなそのセリフ!?逆に恥ずかしくないの?」

西岡「全く?」

北島「凄ぇわ……何そのメンタル?」

西岡「照れるなぁ」

北島「褒めてないからな?もういい、返せ、その金」

西岡「何で?」

北島「『何で?』じゃねぇよ。返してもらう信用が無いからだよ」

西岡「一度貸すって言っておいてやっぱり止めるの?男に二言は無い、だろ?」

北島「おかしい……何で俺が悪いみたいになってんの……」

西岡「その気持ちが生きてく上では大切なんじゃないかな?」

北島「お前に金を貸すって決めた俺が間違いだったわ」

西岡「誰にでも間違いはあるさ」

北島「お前と友達になったの若干、後悔してる」

西岡「後悔に気付けただけでも人として成長した証じゃない?」

北島「もう同じ過ちは繰り返さないようにしようって思ったわ」

西岡「反省する所は偉いね」

北島「言っとくけど、全部お前への文句だからな?」

西岡「そうなの?それは傷つくわ。相手の気持ちを考えなさいよ」

北島「お前が言うか?それ」

西岡「相手が嫌がる事はしない。学校で習わなかった?」

北島「ブーメランにも程がある。お前それ自分で言ってて何も思わないの?」

西岡「……俺、何か間違った事、言った?」

北島「お前、全発言、間違えてるからな?」

西岡「何でよ?何がいけなかった?」

北島「全てにおいていけないよ。とにかくきっちり金は返してもらうし、こっちの負担分は利子付けてもらわなきゃ困る」

西岡「何か図々しいねぇ。利子、利子って、そんな守銭奴じゃないんだからさ」

北島「まだ言うかお前!?」

西岡「もっと心に余裕を持とうよ」

北島「お前は金に余裕がないけどな」

西岡「心は充実してます。貴方のおかげで金銭面も充実しました」

北島「俺は金も心もすり減ってるんだけど……」

西岡「大丈夫?辛い事があるなら相談に乗るよ?」

北島「大体お前のせいなんだけど」

西岡「俺、何かした?お金、借りただけじゃん」

北島「は?その発言、大分おかしいからね?」

西岡「どこが?」

北島「人から金を借りるって結構な事だからね?」

西岡「深く考え過ぎるなよ」

北島「だからその発言もおかしいんだって。分かってる?今の自分の立場?」

西岡「まぁまぁ、そんなカッカすんなって。飲んで忘れよう?」

北島「いや、俺、お前に怒ってるんだぞ?」

西岡「落ち着けよ。急遽、臨時収入が入ったからここは俺が奢るよ」

北島「それ俺が貸した金だろ!それに臨時収入って!」

西岡「どうしたのよ?」

北島「言い方ってものがあるじゃん!?それにそれ金を貸した本人の前で言うか!?」

西岡「これはもう俺の金でしょ?どう使おうが俺の自由でしょ?」

北島「そうだけども!それも本人を前にして普通言うか!?」

西岡「何を怒ってるか分からないけど、とりあえず落ち着こう?」

北島「おかしい……何故俺はなだめられているんだ……俺が間違ってるのか?」

西岡「そうやってすぐカッとなるの、お前の悪い癖だぞ?」

北島「何故、俺は説教を受けているんだ……何かがおかしい……いや、全てがおかしい……」

西岡「あんまり思い詰めるなよ。自分を責めるな」

北島「誰のせいでこうなったと思ってんだ」

西岡「理不尽なこの世の中?」

北島「そんなデカい事じゃねぇ!さっきから再三言ってるけどお前だよ、お前!お前が原因!」

西岡「俺が何したって言うんだよ?」

北島「俺から金を借りた!」

西岡「それだけ?」

北島「それだけってよく軽く言えるな!?」

西岡「それだけで俺に怒ってるの?心、狭すぎじゃない?」

北島「そうじゃないじゃん!金を借りてから色々おかしい発言をお前がドンドンしていったから怒ってるんじゃん!」

西岡「俺は自分が言った事におかしい所は無かったと思ってる」

北島「少しは思えよ!失言のオンパレードだったぞ!?」

西岡「分かんないなぁ……」

北島「お前が言うな!ってセリフが大量にあったぞ!?『水臭い事言うな』とか『ケチ臭い事言うな』とか『礼儀なんて気にすんな』とか、金を借りる人間が言う事じゃない!」

西岡「そう言うもんなのかなぁ……」

北島「良いか?金の貸し借りは互いの信頼関係で成り立つんだよ。そこは分かるか?」

西岡「うん」

北島「で、その金を借りるヤツが散々失礼な事言ってきたんだよ。お前はソイツの事どう思う?」

西岡「嫌だなって思う」

北島「そうだよな?そんなヤツに金を貸そうと思うか?」

西岡「絶対に嫌だよ。冗談じゃねぇよ」

北島「そうだろ?それが、今お前が俺にやって来た事で、俺が思ってる事」

西岡「何でそうなるの?」

北島「ここまで言ってまだ分からない!?」

西岡「だって現にさっきお金貸してくれたじゃん。この三万。じゃあもうこの時点で俺、今お前が言った嫌なヤツに当てはまってなくない?」

北島「貸したと言うか、まだ渡しただけだよ!もう良いから返せ!ここまで話の通じないヤツだとは思わなかったよ!」

西岡「嫌だよ。これはもう借りたお金だし、お前だって了承して貸してくれたんじゃん。まだ返さないよ」

北島「だぁー!もう分かったよ!それは貸してやるよ!でも利子はキッチリつけてもらうからな!」

西岡「だから水臭い事言うなよ」

北島「ここまで来たらもう慰謝料みたいなもんだよ!」

西岡「水に流せよ」

北島「ほらまた出たよ!お前のセリフじゃないやつ!そう言う所だって言ってんだよ!」

西岡「何を言ってるのか分からない」

北島「少しも分かんない!?この怒り!?」

西岡「皆目見当も付かない」

北島「面倒臭ぇ!もういいわ!利子は置いておくにしてもちゃんと返すつもりなんだろうな?」

西岡「ある時払いの催促無しって言うだろ?」

北島「お前返す気無いだろ!?」


















―――終わり

『俺、食えない』


・登場人物

 

 西岡

 藤原

 北島



・舞台


ピクニック場






 明転。


 ピクニック場。山の上。

 西岡、北島、レジャーシートを広げて準備をしている。それぞれのリュックも近くに置いてある。

 藤原、帽子を被り、花粉症用のゴーグルとマスクを着け、ファブリーズとリュックを持って登場。


藤原「車止めてきたよ」

西岡「ありがとー」

北島「こっちも場所取り出来たよ」

藤原「サンキュ。おー、良い所取れたなー」

西岡「でしょー?結構見晴らしが良くてさ。ピクニック日和の良い天気だし」

藤原「そうだなー」

西岡「さて準備も出来たしお昼にしよう」


 藤原、自分の座る所にファブリーズを満遍なくかけ、ハンカチを取り出して敷いてそこに座る。そしてポケットからウェットティッシュを取り出して懸命に拭いている。


北島「そうだね。西岡何作ってきた?」

西岡「俺は稲荷寿司作ってきた」

北島「手作り?」

西岡「そう。結構良い出来よ。北島は?」

北島「俺?おにぎり。おかかと梅干」

西岡「王道だねぇ。一個貰って良い?」

北島「良いよ。俺も稲荷、一個、頂戴」

西岡「良いよ。藤原は?何作ってきたんだ?」

藤原「俺?何も作ってない。彼女が作ってくれた」

西岡「良いなー。彼女さん優しいなー」

藤原「まぁな」

北島「で、何作ってくれたの?」

藤原「えっとね、北島と同じくおにぎりだね」

北島「へー。中身は?」

藤原「知らん。あ、食って良いよ」

西岡「良いの?じゃあ一個貰い」

北島「俺も」

西岡「お返しに俺のも食って良いよ」

北島「俺のも良いよ」

藤原「いや、俺、人が素手で作った物とか食えないから」

西岡「え?あ、そう……」

北島「それ取れば?ご飯食べれないでしょ」

藤原「いや、ここ埃っぽいから嫌だ」

北島「あ、そう……」

西岡「……そのまんまだとご飯食べれないでしょ?とりあえず外せば?」

藤原「あぁ、うん。後でね」

西岡「とりあえず俺達、食べ始めるよ?」

藤原「良いよ」

西岡「……藤原、そんな感じ?」

藤原「何が?」

西岡「いや、潔癖症って言うかさ、そんなガード固かったっけ?」

藤原「あぁ、何か花粉症になってから色々敏感になっちゃって。気付いたらこうなってた」

西岡「あ、そう……」

北島「ふーん……?」

藤原「さて、食うか(自分のおにぎりを食べる)」

西岡「あ、そっちは食べるんだ?」

藤原「え?うん」

西岡「俺のお稲荷さんは食えないのに?」

北島「『俺のお稲荷さん』って言うの止めろ」

藤原「うん。お前のお稲荷さんは食えない」

西岡「俺のお稲荷さんは食べれないのに彼女さんが作ったおにぎりさんは食べるの?」

北島「『おにぎりさん』って何」

藤原「お前のお稲荷さんは食わないけど彼女のおにぎりさんは食う」

西岡「何で?」

藤原「『何で』って、彼女が作ってくれたから」

西岡「それだけ?」

藤原「うん、それだけ」

西岡「何で?それも彼女さんが素手で作ってくれたでしょ?なら俺のも食べれるでしょ」

藤原「彼女が作ってくれたのとお前が作ったのとでは訳が違うじゃんか」

西岡「『訳が違う』って何?同じでしょ。人の素手で作ったんだから何も変わらないでしょ」

藤原「全然違うよ」

西岡「何が違うの?」

藤原「じゃあ聞くけどさ、お前そこら辺のオッサンとキス出来る?」

西岡「出来ないよ」

藤原「それと同じだよ」

西岡「は?どゆ事?」

藤原「だから、彼女とはキス出来るけど、そこら辺のオッサンとはキス出来ない。そういう事だよ」

西岡「意味分かんねぇよ!俺はそこら辺のオッサンと同じか!」

藤原「そういう事じゃなくて、そういう心境だって事だよ」

西岡「それが分からん!俺は友達だろうが!」

藤原「じゃあさ、北島に聞くけど、お前、俺とキス出来る?」

北島「いや出来ないけど」

藤原「そうだろ?こういう事だよ」

西岡「どういう事!?」

藤原「北島分かるだろ?この気持ち」

北島「言わんとしてる事は分かるけど……」

藤原「ほら、北島は分かってくれてるよ」

西岡「どういう事!?全然分かんない!」

北島「もう良いじゃん。藤原はお前のは食わないって言ってんだから、それで良いじゃん」

西岡「良くないよ!何か悔しいわ!折角作ったのに汚いみたいに言われて食べてもらえないなんて!」

北島「まぁ気持ちも分からなくないけどさ。藤原君、折角だから食べてみなよ。そこまで美味くないかもしれないけどさ」

藤原「いや、だから俺、人が素手で作った物は食いたくない」

西岡「なのに彼女さんが作った物は食べるの!?差別だ!」

藤原「差別じゃねぇよ。ただ、彼女が作ったやつは特別食えるってだけ」

西岡「何でだよ!折角のピクニックだよ?皆で作った弁当を交換するってのも醍醐味だろ?」

藤原「そんな約束してないじゃん。ただ皆でピクニックに行こうって話だけだったじゃん」

北島「いやまぁそうだけどさ、何となくあるじゃん?お互いのおかずとか交換するって。小学生の時の遠足みたいでさ」

藤原「いや、その時と今は違う。今は、他人が素手で作った料理は食えない」

西岡「さっきから『素手』『素手』ってさぁ!じゃあ何?俺がゴム手袋して作ったら食べてくれたの!?」

藤原「ゴム手袋で作ったらゴムの味が移るだろ。それはそれで嫌だよ」

西岡「じゃあサランラップして作ったら良いのか!」

藤原「それはそれで嫌だよ」

西岡「何でだよ!」

藤原「お前サランラップ越しにそこら辺のオッサンとキス出来るか?」

西岡「だから何でキス基準だよ!じゃあ何さ、友達の俺が藤原とサランラップ越しにキスしたらこの稲荷寿司食べてくれんの!?」

藤原「少しは考えてやるよ」

西岡「よし分かった!北島、サランラップ持ってる?」

北島「持ってる訳無いだろ!何を見せるつもりだよ!」

藤原「じゃあこの話は無かった事に」

西岡「どうしたら良いの!?てか藤原さぁ、料理って言うのは素手で作る過程がどうしても入るんだよ。外食する時とかどうするつもり?」

藤原「素手が主になる料理は頼まないだけだよ」

西岡「じゃあスパゲッティとかどうすんの?あれだって素手で麺を掴んでるよ。それも食べないの?」

藤原「いや食うよ。素手で掴むのは茹でる直前だろ?熱湯消毒してるようなもんだから食えるよ」

西岡「オムライスとかだって卵割る時とか素手だよ。それでも食べるの?」

藤原「だからそれも過熱消毒してるようなもんだし。それに常に素手で調理してる訳じゃないじゃん。素手で具材を持って火にかけたり和えたりしてる訳じゃないじゃん。フライパンとか菜箸とか使ってるじゃん。だから食える」

西岡「悔しい!もう良い、取れ、そのマスクとゴーグル!(藤原のマスクとゴーグルを外す)」

藤原「何すんだよ!」

西岡「潔癖症みたいに言ってたけどこれ外しても何ともないじゃないか!」

藤原「花粉症だから着けてただけだよ」

西岡「じゃあ俺のお稲荷さん食べれるでしょ!」

北島「もう良いじゃん。面倒臭いなぁ」

西岡「いいや、どうしても俺のお稲荷さんを藤原に食べさせたい!」

北島「だから『俺のお稲荷さん』って言うの止めろ!どんだけ味に自信があるんだよ!」

西岡「食べてもらいたいでしょ!感想貰いたいでしょ!」

北島「じゃあ言うけど、コレそんなに美味しくないよ!」

藤原「え?」

北島「味濃いし、具は固いし、正直微妙だよ!」

西岡「えぇ!?」

藤原「食わなくて良かった」

西岡「北島、いきなり裏切るなよ!」

北島「裏切ってないよ!正直な感想を言っただけ」

西岡「今のその感想は裏切り行為だよ!せめてお世辞でも『美味しい』って言ってよ!」

北島「だって不味いもんは不味いもん」

西岡「うるせぇ!俺は、今藤原に俺のお稲荷さんを食べさせて感想が欲しいんだ!」

藤原「不味いんでしょ?じゃあ余計食いたくないよ」

西岡「いや、食べてから判断して!北島の味覚が酷いだけかもしれない!」

北島「その発言が酷くない?」

藤原「いや、俺、絶対、食わない」

西岡「良いから食べろよぉ!俺のお稲荷さん!」

藤原「何なの?そんなに俺に素手料理、食わせたいの?」

西岡「食べさせたい!」

藤原「何?俺の事好きなの?」

西岡「うん、もうそれで良い」

北島「『それで良い』って何だ!」

西岡「藤原君の事好きで良いからとにかく食べて!今このピクニックの楽しみを分かち合いたい!」

藤原「俺彼女いるし、今騒がしいけど充分ピクニック楽しんでるよ」

西岡「俺は楽しめてなーい!」

北島「五月蠅い。もう本当、五月蠅い……」

西岡「だってピクニックの醍醐味じゃん!皆でお弁当交換、楽しいじゃーん!」

北島「俺もうそれ楽しめないよ」

西岡「大体、物を貰っておいて何もお返しが出来ないって悔しい!ギブ&テイクしたい!」

藤原「別に俺気にしないよ」

西岡「藤原が気にしなくても俺が気にするんだよ!」

藤原「じゃあ今度、何かくれよ。それで良いだろ」

西岡「それはおかしい!今お返ししたいでしょ!それが交換って言うものでしょ!」

藤原「だから別に良いって。彼女がいっぱい作ってくれたから、俺の分はあるよ」

西岡「逆に聞くけど何でそんな頑なに交換を断るの?そんなに嫌?」

藤原「嫌」

西岡「俺の事嫌いなの?」

藤原「嫌いじゃなかったけど、もう嫌いになった」

西岡「何その言い方!俺は好きだって言ってやったのに!」

藤原「いやだから俺彼女いるし。お前の事嫌いだから食いたくない」

西岡「酷い!俺の気持ち無下にして!」

藤原「五月蠅ぇなぁもう―――」

北島「あー!もう五月蠅ぇー!」

西岡藤原「え?」

北島「お前らいい加減にしろ!お前は自分のおにぎり食え!お前は稲荷を食わせるな!」

藤原「どうしたどうした?」

北島「俺は純粋にピクニックを楽しみたかったの!それをお前達台無しにしやがって!お前達こそ俺の気持ちを無下にしてんじゃねぇかよー!」

西岡「分かった!分かったから!ごめんってば!」

北島「仲良くしろよお前らぁ……!俺は楽しくやりたいだけなんだよぉ……!」

西岡「うん、そうだね。ごめんね北島!」

藤原「食えない人達とピクニックに来ちゃったもんだなぁ」

西岡北島「お前が言うな!」






―――終わり

『花見』


・登場人物


 小川

 西岡

 藤原

 儀間



・舞台


 花見会場






 明転。

 花見会場。大き目のレジャーシート一枚。レジャーシートの上に酒やつまみ。

 西岡、座っている。小川、藤原、儀間、荷物を持って舞台上手から登場。


藤原「お待たせ」

西岡「おかえり。混んでた?」

儀間「うん、結構混んでた」

小川「悪いね、場所取りさせちゃって」

西岡「大丈夫よ。代わりに買い出し行ってもらってたし。この辺も場所取りで混んでるから分かるかなーって思ってたんだけどね」

儀間「分かりやすいシルエットだからすぐ分かったよ」

西岡「あ、これ?ロン毛って目立つねぇ」

儀間「遠目からでも分かるもん。あ、何かキモイやつがいる、あそこだって」

西岡「キモイって言うな。俺のアイデンティティだぞ。ロン毛って言うならお前らだってそうだろ」

儀間「私達は女性だから良いんですー」

小川「それに西岡君より短いし」

藤原「まぁまぁ。ほら、買って来たんだから食べよう、飲もう」

西岡「そうだな。あ、ジュースある?」

儀間「酒飲めよー」

西岡「ダメだよ、俺、下戸だもん。で、他に何買ってきたの?」

藤原「えっとねー、焼きそばでしょ?イカ焼きでしょ?おでんでしょ?あとねー東京のタコ焼きと東京のお好み焼き」

西岡「『東京の』っている?」

藤原「いや、東京のは本場大阪のとは違う」

西岡「流石大阪人は評価が厳しいな。じゃあ何で買ってきたの?」

藤原「なんとなく俺が食いたかった」

小川「私達も食べたかったし」

西岡「おう、そっか。それにしてもいっぱい買ってきたなぁ」

儀間「見てたら腹減っちゃってさ。ほら食いねぇ食いねぇ」

西岡「サンキュー。いやしっかし良い場所取れて良かったなぁ。桜並木がすぐそこだぞ」

小川「確かにね。たまにはこう花を見ながらお酒を飲むってのも良いもんだね」

西岡「だろ?何かこう最近仕事で疲れるからさ、自然を見て心を癒したいって思うのよ」

儀間「自然って言うか桜並木だから人工的に植えてんだけどね」

西岡「水差すような事言うなよ。こういう自然の物を見ながら飲み食いするのが楽しいし心が洗われるっつー風情だろ?なぁ、藤原?」

藤原「ん、何?聞いてなかった」

西岡「おいおい、花より団子か?食ってばっかいないで少しは花見を楽しめよ」

藤原「んー、俺、花に興味無いから」

西岡「は?」

藤原「それより腹減っちゃって。ほら、皆も食べれば?美味しいよ?」

小川「そうだね。私達も食べようか」

西岡「ちょっと待てよ。俺ら花見しに来てんだぜ?花を楽しもうよ」

藤原「でも花とか俺分かんないから」

西岡「分かんなくても良いんだよ。こう花を見てボーっとして見るのが花見の醍醐味じゃないの?」

藤原「でも花見ても腹膨れないじゃん」

西岡「分かってねぇなお前。腹を肥やす為に花見するんじゃないじゃん。飯じゃなくて花が主役だろ?」

藤原「いや、俺、飯、食べに来てるから。花は三人で楽しんでよ」

西岡「は?」

儀間「まぁ藤原君は置いといて、私らだけでも楽しもうよ」

西岡「おかしくね?花見は花を見るのが一番でしょ?」

藤原「いや、花見の屋台が一番でしょ」

西岡「いやいや、それはおかしいって!名前に『花』って言ってるんだから、花が主役に決まってるじゃん!」

藤原「いやいやいや、でも結局やる事は飯を食う事だろ?花はおまけじゃない?」

西岡「はぁ!?おまけじゃねぇよ!ほらよく見てみろ!この風情を楽しむのが花見ってもんだろ?」

藤原「そうかぁ?花はあくまで肴ってだけで、メインは飯でしょ?飯を食う為の理由作りに過ぎないでしょ」

西岡「何ィ!?」

小川「まぁまぁ落ち着いて。花を見るのも一興、ご飯を食べるのも一興で良いじゃない。ねぇ?」

儀間「そうだよ。楽しみ方は人それぞれなんだから」

西岡「いいや、我慢ならん。おい、藤原!お前はこの綺麗な桜を見て何も思わないのか!?」

藤原「俺花粉症だから憎いとしか思えない!」

西岡「桜に花粉症なんか無ぇよ!」

儀間「桜アレルギーってあるよ」

藤原「あったとしても大したもんじゃないだろ。愛せよ、桜を!」

小川「くしゃみとか目の痒みとか結構深刻なアレルギー症状だよ」

西岡「ちょっと黙っててくれないか。今問題はそこじゃねぇんだよ。てか憎いなら何で今日来たんだよ?」

藤原「屋台が楽しみだったから。ほら、美味しいよ」

西岡「本当に言葉通りの花より団子だな。屋台なら夏でも冬でも良いじゃねぇか」

藤原「夏は暑いし、冬は寒いじゃん!」

西岡「お前屋台が好きなんじゃないのかよ!」

藤原「好きだよ。だからこうやって不味い飯にありついてるんじゃないか」

西岡「お前花だけじゃなく屋台もバカにすんのか。どこまで我儘なんだ!」

藤原「そうかなぁ?俺は単純に今の屋台を楽しんでるだけだよ?何が問題なの?」

西岡「あのな、花だけならまだしも、屋台にもケチつけるのは見過ごせないんだよ」

藤原「別に屋台にケチはつけてないよ!」

西岡「つけてたよ!夏は暑いとか、冬は寒いとか!」

藤原「それ季節だよ。屋台じゃない!」

西岡「じゃあ季節だよ!」

藤原「じゃあって何だよ!」

西岡「季節にケチをつけるな!春の桜にも、夏の熱気にも、冬の切なさにも風情があんだよ!何故分からない!」

藤原「俺からしたらお前の方が分からない!風情を楽しむのも良いだろうよ。でもな、風景を見るだけで世の中経済が回んのか?違うだろ?屋台が経済回してんだ!そこを俺は重視してんだ!」

西岡「分かってない!屋台は一部に過ぎない!そこに行くまでにかかる移動費とか屋台の維持費とか、色々回ってんだよ!」

藤原「結局一番観光客が金を落とすのは屋台とかのお店だろ!?」

西岡「違う!イベントってのは季節が大きく関係してるんだ!この花見だって桜が咲いてる、梅が咲いているから屋台を出すんだ!屋台を出すから花が咲くんじゃないだろ!」

藤原「だからそれは理由付けに過ぎないって言ってるだろ!基本的に人は遊びたいんだ。その遊びの理由に花を取ってつけてるだけで、実際は屋台で飲み食いしたり遊んだりする。だからこう言う所での一番の貢献者は屋台だ!」

西岡「屋台があるから遊びに行くのか?違うだろ!季節の風情があって、そこに屋台がやって来て、そして人々は飲み食い遊びをするんだろ!」

藤原「知らねぇよそんな事!」

西岡「お前には分かんねぇだろうよ!」

儀間「……何か話が若干変わってきてない?花を見るかどうかが議題じゃなかった?」

藤原西岡「あぁ、そうだったそうだった」

西岡「とにかく、俺は花見に来ていて花より団子ってのが気に入らない。飯はおまけだろ」

藤原「それは納得いかない。花は肴。飲みの口実。それは譲らない」

西岡「頑固だなお前。確かに花は肴だよ、飲みのキッカケだよ。でもその根底に花を楽しむってのがあるんじゃないか」

藤原「頑固はお前だろ。いい加減認めろよ。自分でも『花は肴』って言っちゃってるじゃねぇか」

西岡「言葉の綾ってもんだろそれは。ただ食うよりも、花を見る事によって飯も数倍旨くなるんじゃねぇか」

藤原「いや、飯は飯だろ。それにただ食うだけだったら旨い店に行けば良い話だろ?でも屋台だからこそ味わえるものがあるんじゃないか」

西岡「その屋台を引き立たせる為に花があるんじゃないか」

藤原「ほら言っちゃったよ。『屋台を引き立たせる為の花』?じゃあ主役は屋台じゃねぇか!」

西岡「だからそれも言葉の綾ってもんだろ!この花見において、屋台が出るのも、飲み食いが出来るのも、花あってこそだろ!」

藤原「じゃあ夏と冬はどうなんだよ。花が咲いてなくてもここ桜並木で屋台を出すだろ?屋台ありきのお祭りだろ!」

西岡「お前さっき夏と冬嫌いって言ったじゃねぇか」

藤原「嫌いなんて言ってねぇよ。夏は暑くて、冬は寒いって言っただけ」

西岡「じゃあ夏でも冬でも屋台目当てに行くんだな、お前?」

藤原「あぁ行くよ。暑さとか寒さは我慢してな!」

西岡「でもそこにはその季節折々の風景があるだろ!?それを感じながら屋台も楽しむって事なんじゃないのか!」

藤原「だから季節を感じても腹は膨らまないだろ!」

西岡「腹が膨らむかじゃねぇよ!心を癒す為にこう言う祭りに参加するんだろ!?」

藤原「俺は腹を満たしに来てるんだ!」

西岡「腹はいつでも満たせるだろ!?今ここしか感じられないモノってのを感じろよ!もう一度ちゃんと見てみろ。この桜、綺麗じゃねぇか。心が洗われる、仕事の疲れが吹き飛ぶ。そんな気がしねぇか?」

藤原「感じないな。飯食ってる方が疲れが吹っ飛ぶ」

西岡「じゃあずっと飯でも食ってろよ!」

藤原「食ってるよさっきから!」

西岡「俺はお前の分まで桜を堪能してやるからな!」

藤原「何?桜見て何なの?酔ってるの?」

西岡「俺は酒を飲んでない」

藤原「じゃあ自分に酔ってるのか。『桜に風情感じてる俺格好良い』的な?」

西岡「お前今俺をバカにしたか?」

儀間「もう良いじゃん。何なのこのやり取り」

小川「うるさいなぁ」

藤原「バカにしたよ。うわー、花見て気取っちゃってるよこの人ー、とか思ったよ」

西岡「何が悪いんだよ」

藤原「ナルシストかっつーの。花見て綺麗って気持ち自体は分かるよ。でもそれを第一に感じようとしちゃってるのは気持ち悪い」

西岡「何が気持ち悪いんだよ!良いだろ!何を見て何を感じようが!」

藤原「それが気持ち悪いんだよ!結局季節を感じてる自分に酔ってるだけだろ?自分に酔いしれてんだよ。お前こそ季節の風情とやらを感じられて無ぇじゃねぇか!」

西岡「何だとこの野郎!」

藤原「やんのかこの野郎!」

儀間「騒がしいなぁ。風情も何もあったもんじゃないよ」

小川「ホントホント」

西岡「おい、儀間、小川!お前らはどうなんだよ!?」

儀間「何が?」

藤原「花より団子か、団子より花か!」

西岡「団子より花なんて言葉は無い!」

藤原「五月蠅ぇ!」

儀間「私はこうやって皆でバカ騒ぎしながら飲み食いするのが一番かな」

西岡「……うわー!無いわー!お前ー!」

藤原「うん、無いわー!」

儀間「えっ、何が?」

西岡「何その答え?優等生か何か?」

藤原「真面目に答えてるのが逆に寒いわ」

儀間「はぁ?何?何が悪かったの?」

西岡「俺達は花か団子かで争ってたの!そこにさー、なんか第三の案を入れてくるとか空気読めねぇなぁ!」

藤原「儀間は昔からそう言う所あるからなぁ」

儀間「何が悪いの?私はこうやって皆で飲んで騒ぐのが楽しいって言ってるだけじゃん」

西岡「いいよそう言うの!どっちかで答えろ!花か!」

藤原「屋台か!」

藤原「えぇ……まぁ、強いて言うなら、花、じゃないかな」

西岡「よっしゃあ!ほら見たか!二対一だぞオラァ!」

藤原「嘘だろお前……!小川!お前は屋台だろ?屋台が無かったらこの花をどう楽しむんだよ!?」

小川「まぁ確かに屋台も醍醐味の一つだからねぇ。屋台あってこその季節のイベントってのもあるよね」

藤原「よっしゃあ!二対二だぞコラァ!」

儀間「でも確かに屋台も楽しみだから今日来たってのもあるかも」

小川「私も屋台が好きで来たけど、花見も楽しみだったから一概に屋台派とは言えないなー」

西岡「クッソー!何なのお前ら!結局どっちなんだよ!」

儀間「だから言ってるじゃん!俺は、皆とこうやって騒ぐのが好きなんだよ!ね!?」

小川「その意見に賛成ー!」

西岡藤原「……無いわー!!」

儀間「もういいよ!さっさと食って飲んで騒げ!この馬鹿共!」

西岡「分かったよ!今日は徹底闘論だからな!」

藤原「受けて立とうじゃねぇか!やってやらぁ!」

儀間「……喧嘩を肴に酒を飲むのも風情があるねぇ」

小川「ねー」





















――終わり

『銀行強盗』



・登場人物


北島

西岡

藤原



・舞台


 とある部屋の一室






 明転。


 とある部屋の一室。どこかの廃工場のようにも見える。テーブル一つ。テーブルの上には強盗の計画書とモデルガン、ヘルメット。

 北島、藤原、板付き。


藤原「……俺達の道は、もうこれしか無い」

北島「あぁ。俺達の借金を返すには、もう銀行強盗するしかない。でも、本当に良いのか?」

藤原「もうこれしか無いんだよ!こうするしか、方法は無いんだ!」

北島「でも、これってかなりの犯罪だぞ。捕まっちまったら、元も子もないんだぞ」

藤原「仕方ないんだ!これを成功させるしか、もう首を括るしかないんだ!」

北島「そうだな…………」


 西岡、紙袋を持って舞台上手から登場。


西岡「お待たせ~」

藤原「遅かったじゃないか。どこ行ってたんだよ」

西岡「いや、銀行強盗するって話だったじゃん?だから色々必要だと思って色々買ってきた」

北島「おいおい、どこで買って来たんだよ。下手すると、買った店から足が着いちまうぞ?」

西岡「あぁ大丈夫、大丈夫。ちゃんとしたお店で買ったから」

北島「『ちゃんとしたお店』って何だよ?」

西岡「ちゃんとしたお店は、ちゃんとしたお店だよ」


 西岡、袋から拳銃を取り出す。


北島藤原「えっ?」

西岡「ちゃんとしたやつ買ってきたから、これで大丈夫でしょ」

藤原「あのなぁ、モデルガンはもうあるんだよ。今更三丁も必要か―――」


 西岡、銃をぶっ放す。

 SE、銃の砲撃音。


北島藤原「うわっ!?」

西岡「ね?これで道具は問題無し、と……」

北島「えっ、これ、本物……?」

西岡「うん。本物」

藤原「ど、どこで買ったの?」

西岡「言ったでしょ?『ちゃんとしたお店』って」

北島藤原「えぇ……(二人だけで少し離れる)」

藤原「何あれ?どう言う事?」

北島「分かんない……あれ本物だよな?」

藤原「おう……何か、向こうの壁、穴開いてたし、マジのやつだと思う」

北島「何で?何で本物があんの?」

藤原「分からん。『買った』って言ってたけど……」

北島「『買った』ってどこでだよ?」

藤原「……『ちゃんとしたお店』?」

北島「『ちゃんとしたお店』って何だよ?俺知らないぞ?」

藤原「俺だって分かんねぇよ……俺、このモデルガンでやろうとしてたんだぞ?」

北島「俺だってそうだよ。でもまさかマジもん持ってくるなんて思ってなかったよ……」

藤原「どこで買ったんだよ……怖いわアイツ……」

西岡「あ、そうだ。ペイントボールとか怖いから、インクが付かない特別製の黒服も買ってきたから」

藤原「お、おう……でも、これどこで買ってきたの?」

西岡「ちゃんとしたお店」

北島「『ちゃんとしたお店』って何?どこ?」

西岡「それは言えないよ~。店主さんとの約束だから。でも裏のルートだから他の人には言っちゃダメだよ?」

藤原「裏のルートって……?」

西岡「へへへ……」


 北島、藤原、また少し離れる。


北島「何何何?裏のルートって?」

藤原「分かんねぇ。ここまでガチでやるなんて聞いてない」

北島「アイツ何なの?何者?」

藤原「知らねぇよ……友達にも裏があるってのはよくある話だけど、アイツ裏が濃過ぎるよ……」

北島「てか拳銃とかあの服って結構する額だろ?どこからそんな金が出てくんだよ?」

藤原「分かんねぇ……分かんねぇ事だらけ過ぎる……」

西岡「あとねー、裏に最初の移動用の車用意しといた。盗難車だからこれは途中で乗り捨てて、同じく盗難車のバイク三台用意しといた。で、この地点で着替えて、またまた同じく盗難車の自転車に乗ってまたここに戻ってくるって寸法で」

藤原「盗難車って、もう既に犯罪なんだけど」

西岡「え?これからもっと大きい犯罪すんでしょ?こんなの些細な事じゃない」

北島「てかどうやってその車とか用意したの?」

西岡「んー、まぁ、そう言うのが得意な人がいて、その人に頼んだ」

藤原「そう言うのが得意な人……?」

西岡「まぁ良いじゃん。ほら、他にも色々用意してきたから。スタンガン。これは出力によっては人を殺せる。後、結束バンドだとすぐに切られちゃう可能性があるから、特殊加工したやつも買ってきたよ。これは工具じゃないと切れないくらい頑丈。後はね、銃のマガジンをいくつか買ってきたよ。あとドスでしょ?催涙スプレーでしょ?ガムテープでしょ?手袋でしょ?」

北島藤原「ちょっ、ちょっと待って!」

藤原「マジでこれどうしたの!?」

西岡「だから買って来たんだって。銀行強盗するんでしょ?じゃあ徹底的にやらなきゃと思ってさ」

北島「徹底し過ぎだろ!俺達金に困ってたんだろ?なのに何でこんなに物が買えんの!?」

西岡「まぁそう言う伝手があったから」

北島「そう言う伝手って何!?どこ!?どこなの!?」

西岡「それはヒ・ミ・ツっ」

北島「秘密って何だ!?教えてくれ!なぁ!」

藤原「北島、北島!落ち着け!」

北島「だってアイツ怖ぇよ~……銃だって何か手馴れてるし、あんな物騒な物平気な顔して揃えてくるし……」

藤原「それは俺も思う。ちょっと俺聞いてみるわ……」

北島「頼む……」

藤原「あのさ、何か銃とか手馴れてるみたいだけど、どうしたのそれ?」

西岡「ん?あぁ、そういう人と知り合いだから」

藤原「そういう人……?で、これらを買うのって、どこからその店を知ったの?」

西岡「そういう人と知り合いだからススメてもらった」

藤原「そういう人……?あ、そうか、分かった」

北島「どうだった?」

藤原「全然分かんなかった……全部『そういう人』に教えてもらったしか言わない」

北島「えぇ……マジでおっかないんだけど……」

藤原「どうする?ここまで用意されたんだし、もう腹を括るしかないんじゃないか?」

北島「首を括る前に腹を括らなきゃいけないのか…………いやでも、ここまでやろうとは思って無かったよ……何か見た目から怪しい奴だなとは思ってたけど、マジでやばい奴だったのかよ」

藤原「でももうやるしかないんじゃないか?むしろここまでアイツが用意しといて、やらないって言ったら殺されそうな気がする……」

北島「殺される!?嫌だ!俺、殺されたくない!」

藤原「バカ!声がでかいよ!例えばの話だ、例えばの!」

西岡「どうしたの二人とも、さっきから?」

藤原「いや、何でも無い!何でも無いんだ!」

西岡「そう?で、日時と場所どうする?早いに越した事は無いけど、あんまり早いと見落としがあるかもしれないし、近い所だとバレそうだから少し離れた所の銀行の方が良いと思うんだ」

藤原「そ、そうだな……で、目星はもう着いてたりするのか?」

西岡「うん、大体二駅くらい離れた銀行で、まず出入り口を塞ごう。それだと俺達三人じゃ手が回らないからもう何人かに声掛けといたよ」

藤原「何人かに……?誰?その人達」

西岡「まぁ、そのテに詳しい人達」

藤原「そのテ……?」

北島「怖ぇー!!怖ぇーよー!!」

藤原「北島!」

西岡「どしたの?」

藤原「大丈夫だ!こっちの話だ!」

西岡「あ、そう」

藤原「どうした」

北島「アイツやべぇって!怖いよ俺!」

藤原「俺だって怖いよ!どうする?いっそ『やっぱ止める』って言ってみる?」

北島「絶対その方が良いって!何か踏み込んじゃいけない事に踏み込もうとしてる気がする!」

藤原「銀行強盗するって考えてる時点で既に踏み込んじゃいけない所に来てる気がするけど」

北島「何冷静になってるんだよぉ!」

藤原「分かんない。もう怖いってキャパシティ通り越して感覚がマヒしてきてるのかもしれない」

北島「ここらで引くのが良いって!ちゃんと真っ当に働いて地道に借金返済して行こう?なっ!?」

藤原「それもそうだな……よしっ!西岡!」

西岡「うん?どうしたの?あ、日時?詳しい日は置いといて、日中にやらざるを得ないから、木曜日とか人が少ない時を狙って……」

藤原「いや、そうじゃなくってな?あの、その……」

西岡「ん?何?」

藤原「俺達、そのやっぱり……」

西岡「やっぱり?」

藤原「いやあのその……やっぱり銀行強盗をー、止めよっかな~って。思って、さ」

西岡「……ここまで用意したのに?」

藤原「いや、それは申し訳ないと思ってる!でも、地道に借金返していくのもアリかなって思って……」

西岡「もう人を集めたのに?」

藤原「うん!その人達にも申し訳ないとは思う!だけど、ほら、やっぱり犯罪はいけないな~って……」

西岡「俺既に車とか盗んでるんだよ?この事知ってる時点でもう共犯だよ?」

藤原「あ~……それもそうなんだけど、それはちゃんと警察に届けよ?で、この話は無かった事に……」

西岡「ここまで考えてきたのに?お金無いんでしょ?お金欲しいんでしょ?それでも止めるの?ここまでやって来たのに?これからなのに?」

藤原「あー……それはー……」

北島「怖ぇー!!!」

西岡「北島、さっきから怖い怖い言ってるけど、君はどうするの?やるの?やらないの?」

北島「怖い怖い怖い!俺止める!俺一抜けたー!怖ぇー!!!(走って舞台上手に退場)」

藤原「おい!北島ー!?」

西岡「二人だけになったね」

藤原「俺もごめん!抜ける!止める!銀行強盗しない!許してくれー!!」


 藤原、走って舞台上手に退場。


西岡「ふぅ、何とか思いとどまってくれたか……良かった。ここまでしないとあの二人分かってくれないからなぁ。そこの穴も元々空けといたし、これもただのモデルガンだし、ただの服だし。嘘も方便ってか……」

北島「おまわりさーん!こっちですー!銃刀法違反者、銀行強盗を企ててる奴はここですー!」

西岡「やべっ!(走って舞台下手に退場)」























――終わり

『言わない』



 ・登場人物


  小川

  儀間



 ・舞台


  儀間宅











 明転。


 儀間宅の一室。クッションと卓袱台。卓袱台の上には同人誌やらゲームやらPCがある。

 小川、儀間、板付き。


儀間「暇だねー」

小川「そうだねー」

儀間「でもこうしてマンガ読んだりアニメ見たりしてると現実何かどうでも良く感じてくるよねー」

小川「そうだねー」

儀間「世のリア充とかちっとも羨ましくないわ。こうオタク生活してる方がよっぽど私達にとってリアルが充実してるって気がする」

小川「あー、うん」

儀間「オタクって最高だわー。ねー?」

小川「あー、そうだねー」

儀間「ねぇ、聞いてる?」

小川「聞いてるよ?」

儀間「最近ハマってる作品、何か無い?」

小川「んー、そうだなぁ。これとかかな」

儀間「おー、最近有名になったやつだ。おがちゃんの趣味っぽいー。推しはどのキャラよ」

小川「この青髪のキャラかな」

儀間「あー、確かに格好良いね。二次元でこう言う男がいるから三次元がどうでも良く感じるんだよね」

小川「うん」

儀間「最近親が婚活しろ婚活しろって五月蠅いんだよねー。私は二次元にしか興味ないっつーの。おがちゃんの所は婚活しろーとか言われる?」

小川「最近は言われないかなぁ」

儀間「良いなー。今までは結構言われてたの?」

小川「まぁ言われてたね」

儀間「何で急に言われなくなったの?何かあった?」

小川「まぁ、うん」

儀間「え、もしかして、男が出来たとか?」

小川「んー」

儀間「まさかねー。そんな訳無いよねー。だって暇さえあればこうやってよく二人で会ってるんだから、男が出来たらそんな暇無いよねぇ?」

小川「あー、まぁ、男が出来たかって言ったら、出来たかなぁ?」

儀間「え、マジ?」

小川「うん」

儀間「いやいやいや、それは嘘でしょ。あれでしょ?何か男友達が出来たって程度でしょ?だとしても凄いけどね?仮にも男が出来たみたいなもんだし。どこで知り合ったの?」

小川「オフ会だね。去年の同人イベントのオフ会があって、そこで知り合った」

儀間「この漫画の?」

小川「そう」

儀間「へー。これBLなのに。現実に居るんだなぁ、腐男子って」

小川「腐男子だね、うん」

儀間「どんな人?写真とか無いの?」

小川「あるよ。これ」

儀間「どれどれ。へー、これ凄いねぇ。おがちゃんのさっき言ってた推しのコスプレだ」

小川「そうだね。良く似合ってるでしょ?」

儀間「純粋に格好良いね。良いなー、こう言う出会いがあるなら私もしたいわー。結構一緒に遊んでるの?」

小川「結構な頻度で遊んでるよ」

儀間「あっそー。じゃあもう付き合ってるってのは本当だったんだ」

小川「うーん……付き合っては無いかな」

儀間「なぁんだ、やっぱり付き合ってないんじゃん。これからって感じか」

小川「これから……って何がこれからなのかは分からないけどね」

儀間「え?そりゃあお付き合いして、結婚、じゃない?」

小川「私、結婚したよ」

儀間「……は?」

小川「だから結婚したって」

儀間「誰と?」

小川「この人と」

儀間「……嘘でしょ?」

小川「本当、本当」

儀間「マジで言ってんの!?え、私知らなかったんだけど!?」

小川「あー、まぁ言ってないからね」

儀間「何で?」

小川「何が?」

儀間「何で言わないの?」

小川「何を?」

儀間「結婚の事だよ!」

小川「聞かれなかったから」

儀間「聞く訳無いでしょ!聞くか?普段の会話で『最近結婚した?』ってさぁ!」

小川「それもそうか。あっはっはっはっは」

儀間「何笑ってんの!?結構重大な事だよ!?」

小川「そんな重大な事かなぁ?」

儀間「一大事だよ!てかさっき付き合ってる人いないって言ったじゃん」

小川「結婚してるから、付き合ってる人はいないって意味だよ」

儀間「じゃあ男が出来たって結婚したって意味?」

小川「うん」

儀間「え、いつ?いつ結婚したの?」

小川「あれは一週間前かな?」

儀間「かなり最近じゃない!?私式に呼ばれてないんだけど!?」

小川「呼んでないからね」

儀間「何で!?私達友達でしょ!?」

小川「友達だよ?」

儀間「だよねぇ?じゃあ何で呼ばないの?」

小川「家族間でひっそりとやったから。彼の仕事に支障が出るからそうしたの」

儀間「じゃあさっき親から『婚活しろ』って最近言われなくなったのって結婚したから言われなくなったって事!?」

小川「うん」

儀間「そう言うの先に言いなよー……てか結婚指輪してないじゃん」

小川「あぁ、私金属アレルギーだから」

儀間「あ、そうなの?」

小川「普段からネックレスとかもしてないでしょ?」

儀間「追われてみれば確かに。でもそれはオタクに金を費やしてるから買ってないんだと思ってたよ」

小川「言わなかったからね」

儀間「言ってよ……で?彼の仕事は何してんの?」

小川「さっき写真見せたじゃん」

儀間「あのコスプレ?あれが何?」

小川「あれが彼の仕事」

儀間「全然分かんないんだけど。コスプレモデル的なやつ?」

小川「いや、俳優」

儀間「俳優!?」

小川「うん。この作品の2.5次元の舞台俳優」

儀間「初耳なんだけど!?」

小川「言ってないから」

儀間「そうじゃなくて、最初に言わない?『私この前俳優と結婚したんだ』ってさ!?」

小川「どうかなぁ?」

儀間「『どうかなぁ』って……でも結婚生活とかどうなの?最近だってこうやっていつも私と一緒にいるじゃん」

小川「彼、今、海外だから」

儀間「え?そうなの?」

小川「普段海外にいる事が多いかな。特に最近は。世界ツアーとかやってるから」

儀間「結構、売れてんだ……」

小川「そこそこ?だから挙式上げた後私と私の両親と彼の両親だけ先に日本に帰ってきた」

儀間「はぁ!?何、挙式って海外で上げたの!?」

小川「うん」

儀間「じゃあ一週間前って海外に居たの!?」

小川「うん。グアムに」

儀間「何だよグアムって……」

小川「グアムって言うのは太平洋にある南の島で」

儀間「グアムが何なのかは知ってるよ!何でグアムに行った事も言わないの!?」

小川「聞かれなかったし」

儀間「えぇ?普通言わない?彼氏が出来た事も、彼氏が俳優だって事も、結婚の事も、グアムに行った事もさ?」

小川「言わないなぁ。だって些細な話だし、そんな問題にするような話じゃないし」

儀間「大問題だよ!どれもビッグニュースじゃん!?」

小川「そうかなぁ?」

儀間「私だったら言うよ!?彼氏が出来た時点で言うよ?私彼氏出来たんだー!しかも腐男子で俳優でーす!お先にリア充失礼ー!みたいにさ!」

小川「そうは思わないけどねぇ」

儀間「言えよ!話のネタてんこ盛りでしょ!何でそう言う事言わないんだよ!」

小川「聞かれなかったからねぇ」

儀間「聞かれなかったから!?じゃあ聞くぞこれから!彼の仕事は続きそうなの!?」

小川「今度映画に主役で出るよ」

儀間「オタク趣味についてはどう言ってるの!?」

小川「彼もオタクだから一緒にコスプレしたり同人誌、作ってるよ」

儀間「子供は!?」

小川「今二ヶ月」

儀間「本当に聞かれた事は何でも答えるな!?そして爆弾発言だよ!今お腹に赤ちゃんいるの!?」

小川「いるよ?」

儀間「そう言う事もさー、何で言わないのー!?」

小川「聞かれなかったから」

儀間「『聞かれなかったから』はもういいんだよ!今、何で大事な事を友達の私に言わないのかって話してるからぁ!」

小川「そんな興奮しないでよ。大した話じゃ無いんだから」

儀間「さっきから私は大した話しかしてないわ!おがちゃんあれでしょ?隠してた訳じゃ無いんだよね?」

小川「あ、いやそれは違うよ」

儀間「そうだよね?そうなんだよ。長い付き合いだから分かるわ。何でか知らないけど、ただ言わないんだよね」

小川「まぁ、そうかな」

儀間「本当ただ言わないんだよね。でも聞かれた時は全部話すんだよ。今までの会話もそうだよ。よく考えればおがちゃんから話した事も何か聞かれた事も無いんだよ。全部私から話題を出してたんだよ」

小川「そんな事無くない?あ、今、質問したよ」

儀間「そう言うのを会話の『質問』とは言わない!話題作りじゃない!」

小川「何?じゃあこっちから何か近況とか話せば良いの?」

儀間「何かあれば話してよ」

小川「あー……あ、昨日ラーメン食べたよ」

儀間「おぉおぉ、そう言うのだよ!どこの?有名店?」

小川「いいや?すぐそこのショボいラーメン屋」

儀間「美味しかったの?それとも凄く不味かったとか?」

小川「いや、可もなく不可も無く」

儀間「…………」

小川「…………」

儀間「え、終わり?」

小川「え?うん」

儀間「何それー!?今まで凄い事ばっかり話してたのにいきなりただの普通の話ってさー!」

小川「そっちが話せって言ったんじゃん。だから近況を話したのに」

儀間「落差が激しすぎるんだよ!オチも何も無いしさ!」

小川「噺家とかじゃないんだからオチとかいきなり考えられないよ」

儀間「もう良いよ。多分もう私からは何も聞かないから……」

小川「何怒ってんの?よく分かんないなぁ」

儀間「とにかくそっちが分かってくれるまでこっちからは何も聞かないからね」

小川「最近の事かぁ……でも本当大した話じゃないからなぁ…この前旦那が宝くじで二億円当たったとか、親が離婚したとか、整形手術したとか。それくらいの話しか無いから……」

儀間「十分過ぎる!宝くじ二億円当たったの!?」

小川「うん」

儀間「何で言わないの!?」

小川「大した金額じゃないし」

儀間「大した金額だよ!2億円だよ!?二億円!」

小川「でも旦那が私にそれ全部渡すって言ってきたんだよ。お金の管理任されてるから。で、そこから税金が差し引かれて、これから生まれるこの子の育児費や教育費やら奨学金やら生活費で差し引かれて手元に残るのは少ししか無いから大した金額にはならないよ」

儀間「結構現実的に考えてんのね!?親御さん離婚したの?」

小川「まぁしたね」

儀間「まぁでも家族の深い話だしそれは言い辛いか……」

小川「父親と母親が二人とも不倫しててそれが原因で離婚したんだよね」

儀間「あれ?でもさっきおがちゃん家来た時ご両親と挨拶したよね?」

小川「あぁ、その後なんやかんや解決して不倫相手とは双方別れて復縁したんだよ」

儀間「凄いエグイ話だった!後整形手術したって何?」

小川「鼻。花粉アレルギーでレーザー手術治療をやろうとしたんだけど片方の鼻の穴だけ穴が小さいから、通りを良くする為にも切開手術したんだよね」

儀間「美容整形ではないんだ?」

小川「うん。あくまで医療」

儀間「はぁ……もう聞きたい事山程あり過ぎて混乱してきた……」

小川「もう質問しないって言っておきながら凄い質問してきたね」

儀間「そりゃ気になるでしょ!凄い話だって自覚無いの!?」

小川「こんなの大した話じゃないじゃん」

儀間「もうよく分かんない!おがちゃんにとって重大な話って何なのさ!?」

小川「内閣の支持率が下がってるとか、株価が暴落してるとか、円安が進んでるとか、アメリカの大統領が変わって世界が混乱しないかとか」

儀間「話がデカ過ぎる!そりゃ話にならんわ!」




―――終わり

『孤島の殺人事件』



・登場人物


金田一小五郎・・・名探偵。船が難破してたまたま孤島に来た。

小田浩紀・・・犯人。

山田一郎・・・死ぬ。

中田次郎・・・死ぬ。

石田三郎・・・死ぬ。

川田史郎・・・死ぬ。

原田吾郎・・・死ぬ。

北田六郎・・・死ぬ。

西田七郎・・・死ぬ。

南田八郎・・・死ぬ。

東田九郎・・・死ぬ。

飛田太郎・・・死ぬ。

警察官A・・・終盤で出てくる。

警察官B・・・終盤で出てくる。



・舞台


 海の孤島のとある人物の別荘。

 明転。


山田、中田、石田、川田、原田、北田、西田、南田、東田、舞台上で談話している。

 金田一、小田、舞台上手から登場。


金田一「いやぁ、それにしても助かりましたよー」

小田「まさか海に人が流れ付いてるなんて思いもしなかったですからビックリしましたよー」

金田一「いやはや、船が嵐で難破して投げ出された時は死ぬと思いましたよ」

中田「嵐で我々も帰れなくなってしまいましてね。まぁ二、三日すれば治まるみたいですから、それまでゆっくりしていて下さい」

金田一「すみません、部外者の私なんかが……」

石田「良いんですよ。困った時はお互い様ですよ」

金田一「ありがとうございます。着替えまで用意してもらって」

小田「私のが合って良かったです。えーっと、貴方は……?」

金田一「金田一です。金田一小五郎です」

原田「金田一小五郎!?って、あの、テレビとかでよく見る、名探偵の!?」

金田一「え、えぇ、まぁ、そんなところです」

山田「言われてみれば見た事あるなぁ。なぁ?」

北田「あぁ、確かに金田一小五郎だ……」

西田「こんな所で有名人に会えるなんて光栄です。握手してくれませんか?」

金田一「えぇ、構いませんよ」


 金田一、皆と握手していく。ついでに握手してもらった人達は自分の名前を言う。


金田一「皆さんはどういった集まりなんですか?」

小田「大学の同窓会ですよ」

金田一「へー、そうなんですか。しかしこんな館を持ってるなんて、お金持ちなんですねぇ」

南田「小田の別荘なんですよ」

金田一「そうなんですかぁ」

東田「こいつの親父がとある企業の社長でね。毎年ここに招待してくれるんですよ」

金田一「ほー、それは凄いですなぁ」

小田「私の力ではありませんから大した事ではありませんよ」

金田一「いやいや、凄いですよ」


 飛田、舞台上手から駆け込んでくる。


飛田「大変だ!吉田が!吉田が死んでる!」

金田一小山中石川原北西南東「何だって!?」

飛田「刃物で八つ裂きにされてる!」


 金田一、舞台上手に去り、再び登場。

 山田、中田、石田、川田、原田、北田、西田、南田、東田、飛田、ざわつく。


金田一「皆さん聞いて下さい!これはれっきとした殺人事件です!」

小田「何ですって!?」

中田「自殺の可能性は!?」

金田一「ざっと現場検証しましたが、それは有り得ません」

石田「じゃあ、一体誰が……?」

川田「誰かこの島に乗り込んで殺したんだろう」

原田「じゃあ金田一さんが怪しいんじゃないの?」

金田一「それは……!」

小田「いや、金田一さんはずっと俺と一緒にいた。そんな暇は無かったはずだ」

原田「そうか……」

北田「こういうのって大抵第一発見者が怪しいんじゃないの?」

飛田「そんな……!」

金田一「いや、それは無いですね」

西田「何でそんな事が言えるんですか?」

金田一「本当に犯人なら、証拠隠滅の為に死体を隠すだろうし、何より、死体の事を自ら話さないでしょう」

南田「じゃあ外部犯が……?」

金田一「それも無いでしょうね」

東田「何でさ?」

金田一「ここは海の孤島。外は嵐。さっき殺害現場を見た時、濡れている形跡は無かった。そしてこの館以外に身を隠せる場所は無い……つまり……」

飛田「つまり……?」

金田一「犯人はこの中にいる!」


小山中石川原北西南東飛「な、何だって!?」

金田一「ここは人が離れ離れになるよりもまず一緒に……」

小田「殺人犯なんかと一緒の部屋にいられるか!俺は自分の部屋に戻る!」

山中石川原北西南東飛「そうだそうだ!」

金田一「ですから今離れ離れになると危険……」


小田、山田、中田、石田、川田、原田、北田、西田、南田、東田、飛田、早足で舞台上手に去る。


金田一「一人になると危険なんです、けど……」


 金田一、辺りを見渡す。


金田一「……俺も部屋に戻るか……」


 金田一、舞台上手に去る。


 暗転。


 明転。


 金田一、ソファに座っている。


金田一「ほぉらね!やっぱり皆死んだよ!!ですよねー!!!」

小田「(舞台上手からコーヒーカップを二つ持って登場)生き残ったのは我々二人だけですか……」

金田一「いやいやいや、無理無理無理」

小田「どうしました?」

金田一「犯人、お前じゃん」

小田「まだそう決まった訳じゃないでしょう」

金田一「いやいやいや、昨日の推理を当てはめたらお前しかおらんもん。無理やって」

小田「……ふふふ、流石名探偵ですね」

金田一「名探偵どころか警察でなくても分かるわ」

小田「そうだ。私が犯人だ」

金田一「自白しなくても分かるよ?」

小田「(コーヒーを金田一に差し出す)まぁまぁ、一杯飲んで落ち着きましょうよ」

金田一「これ絶対毒入ってるやつじゃん」

小田「入ってないよ」

金田一「(コーヒーを飲む)うわ、マジだ……何も入ってねぇ。砂糖すら入ってねぇ」

小田「砂糖いる?」

金田一「いや、いらない……」

小田「そうですか」


 間。


金田一「何で殺したの?」

小田「ちょっと恨みがあって」

金田一「あ、そう……」


 間。


金田一「俺、殺さないの?」

小田「殺さないよ?」

金田一「何で?」

小田「恨み無いし」

金田一「あ、そう……」


 間。


金田一「でもさ、後々の事考えると、俺、殺しといた方が良いと思うよ?」

小田「何で?」

金田一「警察に通報するよ?」

小田「あー……まぁ、それは仕方ないというか……」

金田一「仕方ないで済ますのか……」

小田「だって無差別に人を殺したら人として終わってると思う」

金田一「純粋に人殺しって人として終わってると思う」


 間。


金田一「もし警察来たら、逃げる?」

小田「うん」

金田一「そっかぁ」

小田「止めないの?」

金田一「他にも人がいたら力ずくでも止めるけど、対一だと自信無いなぁ」

小田「そっか」


 間。


小田「警察に言う?俺の事」

金田一「あー、まぁ、言うな」

小田「そっか」

金田一「止めないの?」

小田「俺が逃げるの止めないんでしょ?それでおあいこでしょ」

金田一「そっかぁ……」


 間。


金田一「あの、実は昨日警察に通報したんですけど……」

小田「そうですか」

金田一「来るのに時間掛かるんですって」

小田「何で?」

金田一「この嵐じゃ来れないって」

小田「そうですか」

金田一「あと二日は掛かるって」

小田「暇ですね」

金田一「まぁ、その、はい。暇なんですよ」

小田「麻雀あるけど」

金田一「二人じゃあなぁ……せめて三人いないと面白くない」

小田「それもそうかぁ」

金田一「一人くらい残しとけよ」

小田「だってすぐに殺したかったし」

金田一「そっかぁ。それじゃあ仕方ないね」

小田「トランプあるよ」

金田一「良いじゃん。何する?」

小田「ババ抜きとか」

金田一「二人でババ抜きとかすぐに片方二枚、片方一枚の泥仕合になるし」

小田「じゃあジジ抜き?」

金田一「それも似た結果になるだけだし」

小田「七並べは?」

金田一「二人でやって面白い?それ?」

小田「大富豪は?」

金田一「だから二人でやって楽しいか?それ?」

小田「ダウトは?」

金田一「だからそれも泥仕合になるだけだろ」

小田「じゃあ他に何があるのさ?」

金田一「あー……ポーカーとか?」

小田「今、金ある?」

金田一「あ、船から放り出された時無くしたわ……」

小田「駄目じゃん」

金田一「ソリティアは?」

小田「一人用じゃん」

金田一「あっ、そっかぁ……じゃあスピードは?」

小田「おぉ、良いかもしれない」

金田一「やるか」


 小田、トランプを仕分けし、金田一とスピードを始める。


 暗転。


 明転。


金田一「飽きた」

小田「流石に三時間ぶっ続けだと飽きるな」

金田一「他に何か無い?」

小田「あ、UNOあるよ、UNO」

金田一「あー、まぁ、少しは楽しめるか」


 小田、トランプを片付け、UNOを取り出して配る。


 暗転。


 明転。


金田一「飽きた」

小田「そういえば朝から何も食べてないもんね」

金田一「なんかある?」

小田「昨日の残りなら」

金田一「それで良いから食べようか」

小田「じゃあレンジで温めるからちょっと待ってて」

金田一「俺も手伝うよ」

小田「そう?じゃあ冷蔵庫から温める必要の無い昨日の残り持ってきて」

金田一「おう」


 小田、金田一、舞台下手に退場。


小田「あ、二階にビリヤードあるよ」

金田一「おー、良いじゃん」

小田「ダーツもあるよ」

金田一「良いじゃん良いじゃん」

小田「ご飯食べ終わったらやろうよ」

金田一「良いよー」


 暗転。


 明転。


金田一「あれから二日経ったな」

小田「もうすぐ警察が来る頃か」

金田一「もうズラかる?」

小田「そうねぇ」

金田一「じゃあ、まぁ、こんな事言うのもなんだけど、その、元気で」

小田「金田一さんもね」

金田一「あぁ」

小田「じゃあ、俺、行くわ」

金田一「おう」

小田「(舞台上手に退場。入れ替わりで警察官ABが上手から登場)」

警察官A「金田一さん」

金田一「あ、警察の皆さん。お仕事お疲れ様です」

警察官B「今回の事件ですが」

金田一「あぁ、その事ですが、犯人は……」

警察官AB「(金田一に手錠を掛ける)」

金田一「えっ?」

警察官A「十月十五日、午後一時三十分、現行犯逮捕」

金田一「ど、どういう事ですか?」

警察官B「今外に出て行った小田さんという方から通報がありましてね。金田一さん、貴方が犯人であると」

金田一「はぁ!?あの野郎、俺を囮にしやがった!?」

警察官A「じゃあ、行きましょうか」

金田一「ちょちょちょ!俺は犯人じゃないって!」

警察官B「犯人は誰しもそう言うんです」

金田一「だから違うんだって!本当の犯人は……!」

警察官A「はいはい、後は署で聞きますからね」

警察官B「まさか色んな事件に関わっていく内に自分も殺人をしようなんて思うようになったなんて、人の道を外しましたね」

金田一「だから俺は犯人じゃなああああああああああい!!!!!」


 金田一、警察官ABに連れられて舞台上手に退場。



















―――終わり

『時間がズレている女』



・登場人物


 小川美幸

 西岡聖弘



・舞台


 ファミレス






 明転。


 ファミレス。机が一つ。椅子が二つ。机の上には食器が結構ある。

 小川、板付き。


小川「(小川、スマートフォンで電話を掛ける)あの、もう私ずっと待ってて、何度も電話掛けてるんだけど。これ聞いたら連絡下さい(小川、電話を切る)」

 

 暫くして、西岡、上手から登場。


西岡「お待たせ!」

小川「あ、やっと来た」

西岡「ごめん、遅くなって。待った?」

小川「待ったよ。遅すぎ。てか電話聞いた?」

西岡「聞いたよ」

小川「じゃあ連絡してよ。連絡してって留守電に入れたでしょ?」

西岡「ごめんごめん。あれ聞いてすぐに駆け付けようと思って」

小川「あっそ。大分待ったんだからここ、奢ってよね」

西岡「そりゃも勿論!えーっと……あれ、結構、注文してない?」

小川「ちょっと早く来たから軽く食べたりしてた。あと我慢出来なくてお昼ももう注文した」

西岡「あ、そう。でも結構、頼んでない?これ一気に食べたの?」

小川「それは朝ご飯とおやつ」

西岡「朝?じゃあ結構待ってない?今日、一時の約束だったよね?」

小川「うん、そうだね。一時集合だったね」

西岡「何時に来たの?」

小川「一時」

西岡「え?でも今二時過ぎだよ?午前中に来たんでしょ?」

小川「まぁ午前中だね」

西岡「え?本当に今日何時に来たの?」

小川「一時」

西岡「何?怒ってんの?」

小川「かなり」

西岡「ごめんって。一時間くらい遅れたのは本当ごめん。寝坊しちゃってさ……」

小川「1時間?何言ってんの?」

西岡「え?だって今、二時十分だよ?」

小川「そうだね、十四時過ぎだね」

西岡「いつから待ってた?」

小川「一時」

西岡「じゃあ丁度待ち合わせの時間じゃん」

小川「そうだよ。私ずっと待ってたんだから」

西岡「ずっとって、一時間くらい許してよ~。てかそれだったら午前中から来てなくない?」

小川「だから言ったでしょ。午前中に、一時に来たって」

西岡「……まさかとは思うけど、午前一時に来たとか?」

小川「あっはっはっはっは」

西岡「だよねぇ。そんな訳無いよねぇ」

小川「午前一時に来たよ」

西岡「……へ?」

小川「午前一時に来た」

西岡「え……何で……?」

小川「だって今日一時にここのファミレス集合だったでしょ?」

西岡「まぁ、うん」

小川「だから、その午前一時にここに来た」

西岡「何で?」

小川「だから一時にファミレス集合だったでしょ?」

西岡「いや、そうだけど……何で夜中の一時に来たの……?」

小川「だってそっちが言ったんじゃん。一時集合って」

西岡「いやいや、普通分かるでしょ?午後からだって」

小川「いや、一時は一時でしょ?」

西岡「えぇ……どゆ事……?」

小川「何が?」

西岡「じゃあ何?その、ここで十三時間俺を待ってたの……?」

小川「うん」

西岡「マジか……いや、俺、確かに今日一時にここ集合って言ったけどさ、普通午後からだって思わない?」

小川「思わないよ。このファミレス二十四時間営業だったし、午前一時の夜更けにデートだなんて何考えてんだろうって思ってたよ」

西岡「えぇ……だったら聞けば良かったじゃん……『午前?午後?』って」

小川「だって一時は一時でしょ?午後からだったら十三時って言うでしょ?」

西岡「いやいやいや、確かに十三時も一時だけど、普通午後だって思わない?」

小川「だから思わないよ。私、午前一時は一時、午後一時は十三時って言うんだから」

西岡「お前そう言うタイプだったっけ?」

小川「そう言うタイプ?」

西岡「あの、その、何て言うかさ、面倒臭いタイプ?」

小川「遅刻しといて何その言い草!」

西岡「ごめんって!確かに遅刻したけど、俺が遅刻したのは一時間、でしょ?」

小川「違うよ!十三時間!半日以上!」

西岡「それはおかしいって!俺は午後からのつもりで言ったんだから!」

小川「大体さ、その半日遅刻は置いとくにしてもだよ。何でそっちの考えてた時間にも遅刻したの?」

西岡「あぁ、昨日早めに寝たんだけど、夜中から明け方までずっと誰かから電話が来ててさ、鬱陶しくてなかなか眠れなかったんだよ。それで寝坊しちゃって」

小川「それ、着信履歴見た?」

西岡「え?見てないけど…………これお前かぁ!」

小川「私だよ」

西岡「深夜に五十回くらい面倒臭い奴から電話来てんなと思って無視してたけど、これお前かよ!」

小川「そりゃ電話するよ!だって待ち合わせの時間に来ないんだもん!」

西岡「じゃあ俺が遅刻した原因はお前じゃねぇか!」

小川「その前からアンタは遅刻してるでしょうが!」

西岡「だからそれはそっちのミスだろ!お前が勝手に夜中に来たんだろ!?」

小川「そっちが一時って言ったから私は眠いのを我慢してずっと待ってたんでしょうが!それをアンタはグーグー一人で寝ちゃってさぁ!」

西岡「そりゃ午後からだと思ってたからな!」

小川「もう堪忍袋の緒が切れた!この際だから言わせてもらうけど、アンタ毎回デートに遅刻し過ぎなんだよ!」

西岡「はぁ?何が?」

小川「毎回十二時間遅刻してくんの、本当もう止めてよ!」

西岡「はぁ?もしかして今までのデートもずっと夜中から待ってたのかよ!?」

小川「そうだよ!毎回眠いの我慢して会ってたの気付かなかったの!?」

西岡「分かんねぇよ!いや、確かに眠そうだなとは何となく気付いてたけど、そんな理由だなんて夢にも思わんわ!」

小川「眠そうなの気付いてたなら言いなよ!」

西岡「でもお前が毎回『大丈夫』って言ってたじゃねぇか。てかお前も気付いてほしいなら言えよ!ましてや毎回、夜中から待ってるとか怖いわ!」

小川「そこは気付いてよ!彼氏なら!」

西岡「お前本当面倒臭ぇなぁ!」

小川「さっきから『面倒臭い』『面倒臭い』って何さ!」

西岡「いや、もう本当、面倒臭い……いつもどんな気持ちで俺の事待ってたの?」

小川「何か遅いな~って」

西岡「『何か遅い』って程度じゃないじゃん!何かおかしいと思えよ!」

小川「でも何か事情があるんだろうと思って待ってたよ!?この待ってる時間もデートのワクワクだと思ってさ!」

西岡「限度がある!よくワクワクだけで今まで我慢してきたな」

小川「だから今回十回目のデートで流石におかしいなって思ったから電話して確かめようとしたんじゃない」

西岡「お前には段階ってもんが無いのか!?今まで平気で待ってて、今回はいきなり電話のラッシュってさ!」

小川「やっとおかしいって気付けたんだからそこは褒めてくれても良いんじゃない!?」

西岡「遅すぎるわ!」

小川「遅いのはアンタでしょうが!」

西岡「遅刻の話をぶり返してんじゃねぇ!」

小川「大体さ、眠そうな私を見ていつもどう思ってたの?」

西岡「いや、俺と会うのに緊張して夜眠れなかったのかな~って……」

小川「どんだけ自分に自信があんの!?そんなに自分に魅力があると思ってんの!?」

西岡「酷い言い草!付き合ってるのに!てか今まで待ってる間何してたの?」

小川「ただ時計を見てた」

西岡「マジで言ってんの?」

小川「そうだよ。さっきだってずーっとそこの時計見てたよ」

西岡「怖ぁお前……」

小川「何?」

西岡「いや、もうゾッとしたわ……怖いよマジで」

小川「何が?」

西岡「何、時計をずーっと見てるって?もっと他にやれる事あるでしょ……」

小川「良いよもう。こっちのやり取りの方が面倒くさいよ。もう行こう」

西岡「え?このままの流れでデートに行くの?」

小川「行くよ。何しに来たと思ってんの」

西岡「いや、お前が良いって言うなら行くけどさ……」

小川「その代わり今日のデートは私の行きたい所に行かせてもらうからね」

西岡「あぁ、うん。分かったよ」

小川「奢ってよ」

西岡「分かったって。で、どこ行きたいの?」

小川「とりあえずホテル行こ」

西岡「え、昼間っから?」

小川「ダメなの?」

西岡「いや、お前が良いなら行くけど。なんやかんやお前も楽しみにしてたんじゃん」

小川「このホテルが良い」

西岡「調べてきたのかよ」

小川「二人別部屋で翌朝まで各々過ごそう」

西岡「お前寝る気だろ」













―――終わり

『遊園地』



・登場人物


 小川

 藤原

 西岡



・舞台


 遊園地の広場






 明転。


 遊園地広場。ベンチ一つ。

 小川、藤原、西岡、上手から登場。


小川「ねぇねぇ、次どこ行く?」

藤原「このジェットコースターなんかどう?木製で出来てるってやつ」

小川「良いね!これはどこだろ?」

藤原「えーっと、すぐそこだね」

小川「おっ、近いじゃん!じゃあ行こう!」

藤原「西岡、行くぞー」

西岡「おう、行ってらっしゃい」

小川「行かないの?」

西岡「俺、外で待ってるから」

藤原「お前さっきからずっと何も乗らないじゃん。何か乗ろうよ」

西岡「いや、俺、絶叫系、苦手だから」

藤原「そうだったのか。それはすまんかった。まぁ俺らもずっと絶叫系、乗りっぱなしだったし、ここらで少し休憩がてら軽いやつにするか」

小川「じゃあどこにする?」

藤原「この恐怖の館なんかどうだ?夏だし少し涼みに行こうよ」

小川「私こう言うの行った事無いから興味ある!行こ!」

藤原「西岡、ここなら良いだろ?」

西岡「俺、ホラー系、苦手だから」

藤原「えぇ?じゃあどうすっかな……あ、絶叫系、苦手でも、この屋内のVR3Dコースターなんかどうだ?これなら良いだろ?」

小川「私VRやった事無いからやってみたい!」

藤原「だろ?どうだ、西岡?」

西岡「俺、3D酔いするから止めとくわ」

藤原「はぁ?じゃあもう息抜きに観覧車でも乗るか?」

西岡「俺、高い所苦手だから」

藤原「あぁ?じゃあどこなら良いんだよ?」

西岡「俺は外で待ってるから二人で楽しんできてよ」

藤原「何それ?一緒に遊ぼうよ」

西岡「いや、俺は良いよ」

藤原「良くないよ。折角、一緒に遊園地に来たんだから何かで遊ぼうよ」

西岡「だから俺は良いってば。外から二人が楽しんでるのを見て、俺は満足だから」

藤原「えぇ?どゆ事?」

小川「もう良いじゃん。ほら、次どこか行こうよ!」

藤原「お前ここに何しに来たの?」

西岡「一緒に遊びに来たんじゃん。何、言ってんの?」

藤原「お前が何、言ってんだよ。全然一緒に遊んでないじゃないか」

西岡「何も全部のアトラクションに行く事が一緒に遊ぶって事じゃないじゃん」

藤原「そりゃそうだけど、お前ここに来てから一つもアトラクションに乗ってないじゃん」

西岡「しょうがないじゃん。気に入ったのが無いんだもん」

藤原「はぁ?ますますお前何しに来たの?」

小川「ちょっとー、行かないのー?」

藤原「ちょっと待っててくれ。コイツと話したい」

小川「早くしてよねー」

藤原「お前さ、本当に何も乗らないの?」

西岡「んー、まぁ何か自分に合ったのが無いから、乗る気は無いかな」

藤原「えー?でも何かに乗ろうぜ?ずっと外で待ってて楽しくないだろ?」

西岡「充分楽しんでるよ?二人を外から見てるのが楽しいし」

藤原「マジで言ってんの?こっち結構、気遣うんだけど」

西岡「気なんか遣わなくて良いよ。二人で楽しんできて?」

藤原「いや、俺、お前と一緒に遊びたい」

西岡「遊んでるじゃん」

藤原「遊んでねぇだろ。お前、見守ってるだけじゃん」

西岡「別に良いでしょ。これが俺の楽しみ方でもあるんだから」

藤原「はぁ?こっちが微妙に楽しめてないんだけど。何か一つで良いから一緒に乗ろうよ」

西岡「だから俺は良いって。絶叫系もホラー系も苦手なんだから、楽しめないよ。だから、二人で楽しんできて良いって」

藤原「今日は小川さんと二人きりじゃないんだぞ?お前もいるんだから」

西岡「だから別に良いってば」

藤原「良かねぇよ!これじゃあ一緒に遊んでる気分にならんわ!」

小川「ねー、まだー?」

西岡「おう、じゃあ行こうか」

藤原「待て待て!まだ話は終わってない!」

西岡「でも小川さん待ってるから」

藤原「じゃあ次のアトラクション一緒な!一緒に乗るぞ!」

西岡「いや、俺は乗らないよ?」

藤原「何でだよ!何でそんなに頑なに乗らないの!?」

西岡「ここあんまり俺の好みのやつが無いってさっき言ったじゃん」

藤原「いやいや、好みのが無いって言ってもさ、皆で行けば楽しいじゃん?一緒に行くと楽しみが増すじゃん?」

西岡「つまんないって思いながら乗ったら二人が嫌な気持ちになるでしょ。だったら俺は傍観者で良いよ」

藤原「お前本当に何しに来たんだよ!ここは遊園地だぞ!本当に何も乗らない気か!?」

西岡「面白そうなのがあれば乗るよ」

藤原「じゃあこのコーヒーカップはどうだ?」

西岡「酔い易いから嫌だ」

小川「じゃあ船で回るドッキリ恐竜パークは?」

西岡「ドッキリ系苦手なんだよね」

藤原「じゃあこのマイナス30度の氷の世界ってやつは!?」

西岡「俺、寒いの苦手だから」

小川「ゴーカートは?」

藤原「排気ガスがさ……」

藤原「もうどうしたら良いんだよ!?何なら乗るんだよ!?」

西岡「何って言われてもなぁ……」

藤原「これのどこか興味のあるやつは無いか!?」

西岡「んー……あ、メリーゴーランド乗りたい」

藤原小川「えぇ……」

西岡「どしたの?」

藤原「この歳でメリーゴーランドってなぁ……」

小川「ちょっとねぇ……」

西岡「えー?良いじゃん、メリーゴーランド……」

藤原「他は?何か無いか?」

西岡「あー……じゃあゲーセン」

藤原「ゲーセンならいつでも行けるだろ!遊園地ならではの所に行こうよ!」

西岡「遊園地ならではのゲーセンもあると思うんだけどなぁ」

藤原「他は?他のアトラクションは?」

西岡「クレープ食べたい」

藤原「それはアトラクションじゃねぇ!」

西岡「何?ダメなの?」

藤原「ダメだよ!何かアトラクションを一つ選べ!」

西岡「さっきの二つはダメなの?」

藤原「それはちょっとさー……」

西岡「じゃあ無いよ。二人だけで、楽しんできて?」

藤原「何お前ー!」

小川「もう良いじゃん。とりあえず休憩で、クレープ食べに行こうよ。西岡君、お腹空いてるんでしょ?」

西岡「全然?この中で何か選べって言われたから選んだだけ」

藤原「本当、何お前ー!」

小川「うるさいなぁ。もう私、待つの飽きたんだけど」

藤原「ほらっ、西岡!待つのは飽きるもんなんだよ!お前も待つのは飽きただろ?」

西岡「いいや、平気だけど?ほら行こう行こう」

藤原「お前本当はここに来たくなかったんじゃないの?」

西岡「そんな事無いよ。一緒に遊びたいけど、アトラクションに行く気は無いだけ」

藤原「乗り気で来てるけど乗る気は無いってか」

西岡「上手い事言うね」

藤原「上手いと思ってんじゃねぇよ!」

小川「もう、面倒臭いから先にクレープ買ってくるよ?」

藤原「頼むわ」


 小川、下手に退場。


藤原「お前さ、ここの入場料いくらだったか覚えてるか?」

西岡「フリーパスで4800円だったかな?」

藤原「元を取ろうとは思わないのかよ!」

西岡「バイキングじゃないんだから。と言うか元を取ろうとしてんの?」

藤原「そりゃ安くはなかったからな。その分アトラクションに乗りまくって目いっぱい楽しもうとしてんだよ」

西岡「それはお前の楽しみ方だろ?楽しみ方は人それぞれなんだから口出ししないでよ」

藤原「納得がいかねぇんだよ!折角フリーパス買ったのに一つもアトラクションに乗らないなんて勿体ないだろ」

西岡「別にそうは思わないけどなぁ……」

藤原「少しは思えよ!何でフリーパス買ったんだよ!」

西岡「二人が買ってるのを見たから」

藤原「じゃあ最初から乗る気は無かったのにフリーパス買ったのか!?」

西岡「無い訳じゃ無かったけど、いざ中に入ったら乗る気が失せた」

藤原「失せても乗れば意外と楽しいかもしれないじゃんか!」

西岡「いやー、わざわざ嫌だって気持ちで乗ったら絶対つまんないと思う」

藤原「でも勿体なくない?このフリーパスは遊園地を楽しむ為の物なんだから」

西岡「これは入園料だから皆で楽しい空間を共有する為の料金でしょ?だったらもう楽しむって事に関しては達成してるよ」

藤原「いきなり良い話にすんなよ!気持ち悪い!」

西岡「何でよ」

藤原「お前……もう帰れよ……これ遊園地来た意味無いよ……」

西岡「あるよ」

藤原「全然遊べてないよ……この先一緒には楽しめない気がする……」

西岡「大丈夫だよ。俺は楽しいから」

藤原「何だコイツ……」


 小川、下手からクレープを持って登場。


小川「クレープ買ってきたよー」

西岡「ありがとう」

小川「はい、藤原君」

藤原「あぁ、うん……」

西岡「あ、コレ苺とか入ってる?」

小川「うん、ここの遊園地の名物だったから三つ買ってきたよ」

西岡「俺、苺苦手だから藤原にあげるわ」

藤原「遂にアトラクションだけじゃなくて食い物も拒むのかよ!お前、本当に何しに来たんだ!」
























―――終わり


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