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コント集  作者: 河野吉田
PR
38/40

コント集38




コント集38作:河野吉田



・目次


371・・・・叙情聴取

372・・・・エナジードリンク

373・・・ボイスパフォーマンス

374・・・臭わせ発言

375・・・スッちまった

376・・・ゲームは一日

377・・・ペンライト

378・・・人

379・・・真逆の食レポ

380・・・娘さんを僕に下さい



『叙情聴取』



・登場人物


 北島(一般人)

 藤原(警察官)



・舞台


 警察署






 明転。


 警察署。取調室。テーブル一つに椅子二つ。

 北島、藤原、舞台上手から登場。


北島「何ですか?事情聴取って」

藤原「何。最近ここらで起こってる事件の事でちょっとお話を聞きたいだけですよ」

北島「任意ですよね?」

藤原「あれ?何か心当たりが?」

北島「いいえ?これって意味ありますか?」

藤原「形だけですから。別に人間の仕業と決まった訳では無いので」

北島「はぁ……?」

藤原「じゃあ事情聴取しますね?一昨日の晩、午後十一時三十分頃、どこで何をしていましたか?」

北島「えーっと、コンビニで肉まんを買って買い食いしてました」

藤原「もっと心を込めて?」

北島「え?こ、心……?」

藤原「心からそれを言って下さい」

北島「えぇ?えーっと……コンビニで肉まんを買って買い食いしてました!」

藤原「もっと!もっと心を込めて!」

北島「コンビニで!肉まんを買って!買い食いしてました!」

藤原「良いよぉ!今度は悲劇的に!」

北島「ひ、悲劇的……?」

藤原「ほら!早く!」

北島「コンビニで……肉まんを買って……買い食いしてましたぁ……」

藤原「もっと!もっと心を込めて!?」

北島「コンビニでぇ……肉まんを買ってぇ……買い食いしてましたぁ……!およよ……」

藤原「そこに喜劇的な表現を加えて!?」

北島「コンビニでぇ……!肉まんを買ってぇ……!?買い食いぃ~?してましたぁん……!」

藤原「今度は情熱的に!」

北島「コンビニで……!肉まんを買ってぇ……!買い食いを……!していましたぁ……!」

藤原「そこに激情的に!」

北島「コンビニで……!肉まんを買って……!買い食いを……!していた!」

藤原「良いわよ、良いわよぉ!?そこで、はい!さっきの悲劇的と喜劇的を合わせて頂戴!?」

北島「コンビニでぇ!肉まんを買ってぇ……買い食いをぉん……!していたぁ!」

藤原「乗って来たわね!じゃあ最後に、普通を意識して語って頂戴!?」

北島「……コンビニで肉まんを買って、買い食いをしていました」

藤原「あぁん、もう、ゾクゾクしちゃう!もう帰って良いわよぉ!?」

北島「果たしてこれが正解なのか……?」

藤原「これで明日からも頑張れそう!ありがとね!チュッ!」

北島「あ、ハイ……こんな情緒不安定な事情聴取あるかよ……」







―――終わり

『エナジードリンク』



・登場人物


 北島(医者)

 藤原(患者)

 小川(看護師)



・舞台


 病院の診察室






 明転。


 病院の診察室。診察台一つに椅子二つ。

 北島、板付き。


北島「藤原さーん。診察室へどうぞー」

藤原「(舞台下手から登場)失礼しまーす」

北島「今日はどうされました?」

藤原「ちょっと血尿が出てしまいまして」

北島「そうですか。ではこちらの検尿カップに尿を入れて、トイレで看護師に預けて下さい」

藤原「はい(検尿カップを受け取り、舞台下手に退場)」

小川「(舞台上手から登場)検査結果が出ました」

北島「おっ。そうですか。ありがとうございます」

小川「(舞台上手に退場)」

北島「……こ、これは……!」

藤原「(舞台下手から登場)どうでしょうか?」

北島「これは腎臓の病気です」

藤原「何でそうなったんですかね?」

北島「このデータを見る限り、食生活に問題があるようですね。何か思い当たる節はありますか?」

藤原「うーん……基本、和食で、たまにピザとか食べるくらいですけど……」

北島「では昨日の食生活を思い出してみて下さい」

藤原「えーっと……まず起きて気合を入れる為にエナジードリンクを飲みまして」

北島「はい」

藤原「朝食の時にお茶の代わりにエナジードリンクを飲んで」

北島「ん?はい」

藤原「通勤途中に気合を入れる為にエナジードリンクを飲んで」

北島「……はい?」

藤原「会社に着いて気合を入れる為にエナジードリンクを飲んで」

北島「……どうぞ。続けて下さい」

藤原「休憩時間にエナジードリンクを飲んで、昼休みにエナジードリンクを飲んで、また休憩時間にエナジードリンクを飲んで、帰宅の準備をしている時にエナジードリンクを飲んで、退社時にエナジードリンクを飲んで、帰りの電車でも気合を入れる為にエナジードリンクを飲んで、帰ってからエナジードリンクを飲んで、夕飯にお茶の代わりにエナジードリンクを飲んで、風呂に入る前にエナジードリンクを飲んで、晩酌がてらエナジードリンクを飲んで、歯を磨いてからエナジードリンクを飲んで、寝る前にエナジードリンクを飲んで、って感じで普通の生活を送ってましたが?」

北島「それ絶対、エナジードリンクの飲み過ぎだと思いますよ」

藤原「えー?でも一日でたった十六本ですよ?」

北島「死にますよ?普通」

藤原「そんな大袈裟な」

北島「いや、本当に。これからはエナジードリンクは控えて下さい」

藤原「でも気合が入らないですし……」

北島「気合いを入れるのと、寿命を縮めるのどちらが大切ですか?」

藤原「……気合いですかね?」

北島「じゃあ何で病院に来たんですか……?」

藤原「一応、命の危険を不安視したので」

北島「じゃあ早急にエナジードリンクを飲むのを止めて下さい」

藤原「じゃあ代わりに飲んだり食べたりする物って何かありますか?」

北島「そうですねぇ……カフェインが入ってはいますが、珈琲を一日二~三杯だったり、ニンニク一欠片とかを目安にすると良いですよ?」

藤原「そんなんで気合入りますかねぇ……?」

北島「まぁ個人差ですけどね。多少、多く摂っても良いですよ」

藤原「へー。分かりました」


 暗転。


 明転。


 病院の診察室。

 北島、板付き。


北島「藤原さーん。診察室へどうぞー」

藤原「(舞台下手から登場)失礼しまーす」

北島「前回、エナジードリンクの飲み過ぎで血尿が出てしまってたとの事でしたが、今はどうですか?」

藤原「胃痛と下痢が酷いです」

北島「何か心当たりは?」

藤原「あー……珈琲とニンニクですかね?」

北島「成程……珈琲は一日に何杯飲みますか?」

藤原「七十杯ですね」

北島「致死量です」

藤原「え?」

北島「珈琲を七十杯飲むのは致死量です。今すぐ止めて下さい」

藤原「でもやる気が起きなくて……」

北島「だからと言って飲み過ぎは死に近付きます。せめて七杯~八杯くらいに抑えて下さい」

藤原「そうですか……」

北島「ニンニクはどれくらお召し上がりになりましたか?」

藤原「一日に三十玉程」

北島「食べ過ぎです」

藤原「え?」

北島「急性心筋梗塞になる恐れがあります。他にも食道炎とか。今すぐ止めて下さい」

藤原「でもやる気が……」

北島「やる気と命、どちらが大切ですか?」

藤原「……あ、命ですね」

北島「その間は何ですか?」

藤原「いや、仕事が忙しくて考えてませんでしたけど、命の方が大切だなって今、気付きました」

北島「そんなに忙しいんですか?」

藤原「はい。始発で行って、終電で帰って、家で三時間仕事して、二時間寝たらまた会社に行ってをここのところ毎日やってましたね」

北島「今すぐ辞めましょう。そんな仕事」


 暗転。


 明転。


 病院の診察室。

 北島、板付き。


北島「藤原さーん。診察室へどうぞー」

藤原「(舞台下手から登場)失礼します!」

北島「その後、如何ですか?体調の方は」

藤原「はい!とても良好です!」

北島「そうですか。何だか明るくなりましたね」

藤原「はい!仕事を転職してから一気に変わりました!」

北島「ちなみにどんなお仕事になりましたか?」

藤原「超ホワイト企業です!週休二日が約束されて、有給もあります!」

北島「成程。やめるべきはカフェイン摂取ではなく仕事だったと」

藤原「はい!これで気兼ね無くエナジードリンクうぃ一日、二十杯、飲めます!」

北島「増えてるじゃないですか!」








―――終わり

『ボイスパフォーマンス』


・登場人物


 北島

 藤原



・舞台


 カラオケ屋の一室





 明転。


 カラオケ屋の一室。ソファ二つにテーブル一つ。テーブルの上にマイク二つとカラオケのリモコン二つ。

 北島、藤原、舞台上手から登場


北島「久し振りだなー。カラオケ来るの」

藤原「学生の頃はよく来てたもんな」

北島「まぁなー。で?話って何だよ?」

藤原「いやー。芸能界って結構シビアでさー。何か特技の一つでも無いと売れないんだよねー」

北島「それでカラオケ?特技の歌でも披露してくれんの?」

藤原「いや、マイクがある所に来たかったんだ」

北島「どういう事?」

藤原「俺、ボイパ出来るようになったんだよ」

北島「凄ぇじゃん。やってみせてよ」

藤原「おう(マイクを持ち、マイクのポップフィルターを手で覆う)いくぞ?」


 SE「ドムツクドムツク」とドラムの音。


藤原「どう?」

北島「上手いけど意外性は無いかなー」

藤原「じゃあ次にキーボードね」

北島「ほう」


 SE、キーボードの音。


藤原「次にサックスね」

北島「おう」


 SE、サックスの音。


北島「凄ぇ。どうやって出してんの?」

藤原「特許申請中」

北島「あ、そう……?」

藤原「じゃあこれはどう?アコギ」


 SE、アコースティックギターの音。


北島「おー。格好良い」

藤原「ただこれで売ってくのには無理があると思って他にも色々考えてきた」

北島「聞かせて、聞かせて」

藤原「ベースね」


 SE、ベースギターの音


北島「渋くて格好良いね」

藤原「次はリードギターね」

北島「リードギター?」


 SE、エレキギターの音。


藤原「最後は全部合わせた曲ね」

北島「え?」


 BGM「星空のディスタンス(THE ALFEE)」


北島「え?え?え?」

藤原「激しい風が今、心に舞う。「サヨナラ」はただ一度の……」

北島「待て、待て、待て!これ全部ひとりでやってんの!?」


 音声「そうでーす!」という群衆の声。


北島「うおっ!?吃驚した!何か増えたんだけど!?これもボイパ!?」


 音声、「そうでーす」という某ボーカロイドの声。


北島「そんな声も出せんの!?」

藤原「どうかな?」

北島「それどうやってそれぞれの音を出してんの?」

藤原「ホーミー的な感じかな」

北島「ホーミー?あのモンゴルとかトゥバにある、喉から音を二つ同時に出すアレ?」

藤原「そうそう。他にも出せるよ。それではお聞き下さい。ライオン」


 BGM、「ライオン(May‘n/中島愛」

 SE、ライオンの鳴き声。


北島「そっちかよ!?」

藤原「他にも出せるよ。救急車とかパトカーとか」


 SE、二つのサイレンの音。


北島「…………」

藤原「パフォーマンスとしてはかなり良いと思うんだけど」

北島「……もしかしてなんだけどさ、お前、ボイパの事ボイスパフォーマンスだと思ってる?」

藤原「え?違うの?」

北島「違うわ。ボイスパーカッションの事だよ」

藤原「あ、そうなの?じゃあ俺が今までやって来てのは……?」

北島「常軌を逸している特技。正直それだけで喰っていけるよ」

藤原「俺、早くADになりたいんだ」

北島「絶対に大道芸人になった方が良いよ!」

藤原「喉が二つあるのがやっぱり向いてないんだろうか」

北島「人間は普通、喉は一つしかないんだよ!ってかAD目指すなら特技いらねぇだろ!」

藤原「忘年会とか……」

北島「忘年会で披露する為だけに止めんなよ!世界に羽ばたけ!」


 SE、鶯の鳴き声。


北島「そっちの羽ばたけじゃねぇ!ってかせめて渡り鳥にしろ!」























―――終わり

『臭わせ発言』



・登場人物


 北島

 藤原



・舞台


 喫茶店





 明転。


 喫茶店。テーブル一つに椅子二つ。テーブルの上にはカップが二つ。

 藤原、板付き。スマートフォンをいじっている。北島、舞台下手から登場。


北島「おっす。藤原」

藤原「おう。北島」

北島「待った?」

藤原「ちょっとな」

北島「悪い、悪い。ちょっと電車が遅れててさ」

藤原「みたいだな。さっきネットニュースが流れてきたよ」

北島「そうなのか。あ、珈琲、頼んでくれてたの?」

藤原「確かブラックだっただろ?」

北島「サンキューな。あ、お金……」

藤原「良いよ。この前、珈琲を奢ってくれただろ?そのお返し」

北島「そうか?じゃあ有難く……」

藤原「うーん……」

北島「どうした?さっきからずっとスマホ見て」

藤原「あ、いや……俺、美幸ちゃんってアイドル推してるじゃん?」

北島「あぁ、あの色々怪しいと言われてるあのグループの子ね。それが?」

藤原「なーんか、臭いんだよね……」

北島「どういう?」

藤原「臭わせ発言っていうの?何か臭うんだよね……」

北島「どういう臭わせ?」

藤原「この靴下とか……」

北島「……男物だな。同棲してるとか?」

藤原「いや。実家住まいだからおそらくお父さんかお兄さんの物だと思う」

北島「じゃあ怪しくないじゃん」

藤原「怪しいなんて言ってないぞ?」

北島「え?」

藤原「後、この納豆とか」

北島「それが?」

藤原「臭うじゃん?」

北島「画面越しからは分からんけどな」

藤原「後、これ、シュールストレミング。めっちゃ臭わない?」

北島「……あ、臭わせ発言ってそっちの臭わせなんだ?別に臭くないだろ」

藤原「お前、嗅いだ事あるの?この靴下とシュールストレミング」

北島「いや。無いけど?」

藤原「じゃあ何で臭くないって言えるんだよ」

北島「画像からじゃ何も臭わないだろ」

藤原「分かってないなぁ。こういう臭わせ発言があったら疑わざるを得ないじゃん」

北島「何をどう疑うんだよ」

藤原「明日のライブ、臭うのかな~?って」

北島「別に良いだろ。個人の自由だろ」

藤原「握手会があるんだぞ?そこで臭いを貰ったら困るだろ」

北島「そのアイドルの臭いが分かる上にアイドルと同じ匂いを持てて良いだろ」

藤原「限度ってものがあるだろ。いくらなんでもシュールストレミングの臭いがするアイドルは推せんわ」

北島「どこに常識を持ち合わせてるんだよ……じゃあ握手会に行かなきゃ良いだろ」

藤原「だって握手会のチケット、五万円をもう払っちゃったし……」

北島「リセールは?」

藤原「明日だぞ?今更出来るかよ」

北島「あっそー。じゃあ我慢するしかないな」

藤原「あ~!美幸ちゃん……!何でこんな事を……!」

北島「まぁ確かに何で家族の靴下の写真をあげたのかは謎だな」

藤原「臭いな~!臭いな~!」

北島「嗅いでみないと分からないだろ」

藤原「ファンとしての一線は越えたくない……!」

北島「じゃあ推せよ」

藤原「臭う子は嫌なんだよな~!」

北島「難儀だな。お前」


 暗転。


 明転。


 喫茶店。

 北島、板付き。藤原、舞台下手から登場。


藤原「北島!」

北島「藤原。どうした?急に呼び出したりなんかして」

藤原「俺、やっと分かった!」

北島「何が?」

藤原「あの臭わせ発言にもう翻弄されない!」

北島「どういう事?」

藤原「俺、あの臭いを含めてあの子を応援する!」

北島「あれ?お前、知らないの?あのグループ、未成年喫煙で逮捕されたぞ?」

藤原「その煙草の臭いも良かった!」

北島「あっそー……」

藤原「俺、目が覚めた!」

北島「どういう方向で?」

藤原「これからもあの子を支え続けるって!応援するって!貢ぐって!」

北島「覚めるべきは目じゃなくて鼻だったんだな」










―――終わり

『スッちまった』



・登場人物


 北島

 藤原



・舞台


 ルームシェアハウス





 明転。


 ルームシェアハウス。卓袱台一つに座布団二つ。

 北島、板付き。藤原、舞台上手から登場。


藤原「ただいまッ……!」

北島「おう。おかえり」

藤原「クソッ……!(地団太を踏む)」

北島「どうした?」

藤原「聞いてくれるか?」

北島「そりゃあそんだけ苛々してるところを見たら聞きたくなるわ」

藤原「……実はな……」

北島「まぁ座れよ」

藤原「おう……」

北島「まず茶でも飲め。ほれ」

藤原「悪いな……」

北島「ルームシェアしてるんだ。今後のお互いの為にも、何で苛々してるか聞いといた方が良いだろう?」

藤原「……そうだな」

北島「で?何があった?」

藤原「……スッちまった……」

北島「え?」

藤原「十万円、スッちまった……!」

北島「えぇ!?お前、そんな事してたのかよ!?」

藤原「あの台は出ると思ったんだ……!でも後ちょっと、後ちょっとってやってたら……!クソッ!絶対あの店、ズルしてる!」

北島「お前なぁ……パチンコは節度を持ってやれよ……」

藤原「パチンコ?何の話?」

北島「え?パチンコで十万円スッたんじゃないの?」

藤原「違うよ?」

北島「え?じゃああの台って何?」

藤原「クレーンゲーム」

北島「はっ!?クレーンゲームで負けたの!?」

藤原「うん……!俺、悔しいよ……!」

北島「俺は悲しいよ……」

藤原「分かってくれるか!?」

北島「いや、一向に分からんが……何を取ろうとしたの?」

藤原「美味い棒」

北島「お前……その十万があったら何本美味い棒が買えたんだと思う?」

藤原「そんな簡単に手に入っちゃ、味わえないだろ!?幸福感が!」

北島「俺は普通に勝った方が美味いと思うんだけどな……」

藤原「あの店、絶対にズルしてる!訴えてやる!」

北島「はいはい。ご勝手にどうぞ」

藤原「北島!お前も来てくれ!」

北島「何で?」

藤原「いかにあのゲームセンターがズルしてるか見に来てほしい!」

北島「えぇ?嫌だよ。俺まで金スるかもしれないじゃん」

藤原「同じ穴の狢に成れ!」

北島「意味、分かって言ってる?」

藤原「知らない!」

北島「あっそ……じゃあそこまで言うなら見に行ってやるよ」

藤原「ありがとう!流石は昨日の敵は今日の友だ!」

北島^だから意味、分かって言ってんのかよ」

藤原「知らない!」

北島「あっそ……(藤原と共に舞台上手に退場)」


 間。


 北島、藤原、大量の美味い棒を持って舞台上手から登場。


北島「普通に取れるじゃねぇか」

藤原「お前、上手いんだな……!」

北島「あんなの目を瞑っても一本は取れるぞ?」

藤原「そんな高等テクニック、俺には出来ない……!」

北島「大した事ねぇよ。寧ろどうやってやってたか逆に教えてほしいわ」

藤原「教えようか?」

北島「いや、無駄な知識が増えるだけだからいい」

藤原「流石、策士『北島』だな……!」

北島「本当に大した事無いよ?お前今までどうやってクレーンゲームしてたの?」

藤原「動画撮ってある」

北島「何で?配信でもするのか?」

藤原「いや、不正があったら許せないから」

北島「あっそ……どれどれ?うん、うん。何でそうなるんだよ!?」

藤原「え?」

北島「目いっぱい奥にやりゃあ良いってもんじゃない!適度に微調整しながらやれよ!?」

藤原「……その発想は無かった!」

北島「馬鹿かな?」

藤原「よし。今度こそ勝つぞ!」

北島「もう止めとけ」


 暗転。


 明転。


 ルームシェアハウス。

 北島、板付き。藤原、全階程ではないが、それなりの量の美味い棒を持って登場。


藤原「ただいま!」

北島「おかえり……って、先月と違って結構取れたな」

藤原「北島の言った通り、微調整しながらやったら出来た!」

北島「あっそー。で?いくら使ったの?」

藤原「十万円!」

北島「えぇ!?ひぃ、ふぅ、みぃ……たかだか二十本の為に十万も使ったの!?」

藤原「これで一ヶ月は生きられるぞー!」

北島「一日、一本だとしても足りねぇよ!?なぁ!もう止めよう!?」

藤原「この楽しさを一度でも知ったらもう後には戻れない!」

北島「ギャンブル中毒ってこうやって出来上がっていくのか!このバカタレ!」



















―――終わり

『ゲームは一日』



・登場人物


 母親

 子供



・舞台


 ゲームショップ





 明転。


 ゲームショップ。ゲームソフトと機体の陳列棚がいくつか。そこにはゲームソフトや機体が並んでいる。

 母親、子供、舞台上手から登場。


子供「あ、お母さん!このゲーム欲しい!」

母親「アンタ、そのシリーズのゲーム、買って一週間で飽きたでしょ?もう買わないよ」

子供「今度は絶対に最後までやるから!」

母親「そう言ってこの前だってお父さんとお母さんが最後まで全クリしたのよ?今度は本当に出来るの?」

子供「絶対にやる!」

母親「ちゃんとゲームやる?」

子供「やる!」

母親「勉強は?」

子供「二の次!」

母親「将来の夢は?」

子供「プロゲーマー!」

母親「座右の銘は?」

子供「諦めないゲーム愛!」

母親「よし。じゃあ買いましょう」

子供「やったぁ!」

母親「但し、お母さんとちゃんと約束しなさい?」

子供「何を?」

母親「ゲームは一日六時間。これを守れなかったらゲーマーの道は諦める。それでも良い?」

子供「……ちょっと時間を下さい」

母親「はい、駄目ー」

子供「え?」

母親「ちょっとした判断の遅れがFPSやスプラトゥーンでは命取りなのよ?そんなんじゃゲームは買いません」

子供「異議あり!今じゃあじっくり考えて答えを出すゲームもあります!それを否定するんですか!?」

母親「……困った子ねぇ……分かったわ。買いましょう」

子供「やったぁ!」

母親「但し、もう一つ約束しなさい」

子供「何?」

母親「全部クリアしたと思うまで、攻略サイト及び攻略本を見ない事!」

子供「えぇ!?何を持って全クリか分からなくなるじゃないか!」

母親「攻略サイトはお母さんが、攻略本はお父さんが見るから、出来たと思ったら手を挙げなさい」

子供「分かった!」

母親「もし抜かりがあったら許さないからね?」

子供「わ、分かった……」

母親「声が小さい!」

子供「分かりましたぁ!」

母親「じゃあ買いましょう!」

子供「はい!」


 暗転。


 明転。


 母親、子供、舞台上手から登場。


母親「あ、正将!この前買ったやつの続編が出てるわよ!?」

子供「え~?いいよ~。あれつまんなかったし……」

母親「子供のうちから英才教育よ!あれを面白いと思えるまでやり込みなさい!」

子供「えー!?ヤダー!」

母親「色んなゲームをしてこそプロゲーマーよ!ほら!買うわよ!?」

子供「プロゲーマーの夢はもう止める!俺、普通のサラリーマンを目指すからー!(舞台上手に退場)」

母親「……英才教育、完了……!」









―――終わり

『ペンライト』



・登場人物


 北島

 藤原



・舞台


 ライブ会場

 屋外





 明転。


 ライブ会場。柵が一つ。

 北島、藤原、板付き。


北島「いや~、立見席でも良い所、取れたねぇ」

藤原「ライブに来るの久し振りだからペンライト回せるか不安だな~」

北島「そうだった、そうだった!俺、ペンライト持って来てたっけな~?あっ!しまった忘れた!」

藤原「俺の使う?」

北島「余ってるなら」

藤原「はいよ(バッグから誘導灯を出す)」

北島「……何これ?」

藤原「誘導灯」

北島「誘導灯……?」

藤原「工事現場や道路誘導の時に使う光る棒の事で……」

北島「いや、それは知ってる。何でこれ持ってんの?」

藤原「仕事帰りでな」

北島「仕事の支給品を私物として持ってくるなよ」

藤原「いや、純粋に好きで買った」

北島「何で買ったんだよ……」

藤原「趣味で」

北島「仕事は何してんの?」

藤原「道路交通誘導のバイト」

北島「支給品じゃねぇか」

藤原「これは趣味の方。こっちが仕事の方」

北島「だから持ってくんなよ」

藤原「バレなきゃ良いんだよ。さ、ライブが始まるぞ!」

北島「えぇ……?」


 照明、やや薄暗く。

 BGM、ライブっぽい曲。

 北島、藤原、誘導灯を点ける。


藤原「(オタ芸をする)」

北島「(小さくオタ芸をする)」


 BGM、曲が終わる。


藤原「どうした!?楽しくないのか!?」

北島「恥ずかしいんだよ!」

藤原「え?」

北島「めっちゃ目立ってるじゃん!これはお前、恥ずかしくないのかよ!?」

藤原「別に。普段からこれ見慣れてるし」

北島「そういう問題じゃねぇ!これじゃあスタッフか観客か分からんだろ!」

藤原「心だよ。心。心が観客だったら、それはもう観客なんだよ」

北島「一発でそれは無理があるだろ!」


 SE、火災ベルの音。


北島藤原「何だ!?」

スタッフ(声のみ)「火災が発生しました!皆さん!速やかに避難して下さい!」

藤原「……行くぞ、北島!」

北島「おう!早く逃げよう!」

藤原「違う!皆の避難誘導をするんだ!」

北島「おう!……えっ!?」

藤原「(ホイッスルを取り出して鳴らす)皆さーん!非常口はこちらでーす!」

北島「え?え?え?あの……?」

藤原「ボサッとするな!早く誘導灯を振り回せ!」

北島「は、はいっ!?」

藤原「皆さーん!落ち着いて行動して下さーい!」

北島「押さない、駆けない、喋らないー!」


 暗転。


 明転。


 屋外。

 北島、藤原、舞台下手から登場。


北島藤原「ハァ……!ハァ……!ハァ……!」

藤原「皆、無事に避難出来たみたいだな……!」

北島「何で俺まで……!?」

藤原「さて、今後のライブスタッフの対応を聞いてくるわ(舞台上手に退場)」

北島「お、おう……」

藤原「(舞台上手から登場)北島!」

北島「どうした?藤原」

藤原「さっきスタッフさんからこれ貰った!」

北島「何?……ってこれ、関係者専用席のチケットじゃん!」

藤原「さっきの避難誘導のお礼だってさ!」

北島「はぁ~……意外なところで大収穫だな……」

藤原「その代わり、また非常事態が起こったら避難誘導を頼みたいんだってさ!」

北島「それで関係者専用席貰えるなら儲けもんだ!俺、転職する!」

藤原「俺も!こんな誘導灯、捨てちまおう!えいっ!」

北島「いや、それは会社に返せよ」











―――終わり

『人』



・登場人物


 北島

 藤原



・舞台


 居酒屋





 明転。


 居酒屋。テーブル一つに椅子二つ。テーブルの上には酒とつまみ。

 北島。藤原、板付き。


藤原「俺さぁ。思うんだよ」

北島「何だよ。突然」

藤原「いやね?流浪の人だから流浪人じゃん?」

北島「うん」

藤原「芸をするから芸人じゃん?」

北島「うん」

藤原「ロキソをする人がロキソ人って事なんだけど、ロキソって何?」

北島「あれは物質だよ。ロキソの人じゃなくて、ロキソニンって物質ね」

藤原「あ、そうなのか。へー。じゃあさ、住んでる人は住人じゃん?」

北島「うん」

藤原「仕事をするから仕事人?」

北島「それはちょっと意味が変わって来ちゃう気がする」

藤原「そうか?あ、そうか」

北島「うん」

藤原「じゃあ仕事人って何?」

北島「それは……まぁ、仕事をする人だよ」

藤原「じゃあ仕事をする人で合ってるんじゃん」

北島「仕事人って、確かに仕事を全うする人って意味もあるけど、どちらかというと今だとドラマの方になっちゃう気がする」

藤原「……あぁ、必殺の方ね?」

北島「そうそう」

藤原「成程なー。あ、じゃあ、外国の人は外国人じゃん?」

北島「うん」

藤原「人人(にんじん)って人々って意味?」

北島「人参は野菜だろ」

藤原「野菜……?」

北島「え?そこから?」

藤原「俺、偏食だから肉と魚、以外、喰わないんだ」

北島「カレーとか喰わなかったの?」

藤原「え?カレーって野菜、入ってるの?」

北島「マジかよお前……」

藤原「まぁ良いわ。後さぁ、人肉(にんにく)ってジンニク?」

北島「……あ、一瞬、処理が追い付かなかった。人間の肉じゃないよ。ニンニクも野菜だよ」

藤原「あ、そうなの?そういえば、それはラーメン屋で喰ってたな」

北島「後もう無い?」

藤原「えーっとね……あ、そうそう。人弁(にんべん)ってどこの方言?」

北島「……あ、人偏ね?あれは漢字の部首だよ」

藤原「部首……?」

北島「お前マジか……お前の藤原の『藤』の字の部首って何だか分かってる?」

藤原「馬鹿にすんなよ。肉偏(にくづき)だろ?」

北島「そこは知ってんのか……でも間違ってるぞ。草冠な」

藤原「草……?」

北島「あ、そうか。お前、野菜を喰わないんだもんな」

藤原「あんまり植物の事を知らないんだ」

北島「一般常識だぞ」

藤原「あっそー。あ、後もう一つあるわ」

北島「何だよ?」

藤原「人者(にんじゃ)って何者?人の者って書くじゃん?」

北島「……だからあまり無駄に俺の頭を使わせるなって……忍びの者と書いて忍者なんだよ」

藤原「忍び……?あぁ、人の術で人術(にんじゅつ)だと思ってたけど、忍びの者と忍びの術なのか」

北島「もう良い?」

藤原「うん。もう良い」

北島「そうか。じゃあそろそろ会計するか?」

藤原「そうだな。店人(てんにん)さーん」

北島「何で訛ってんの?」

藤原「何が?」

北島「お前、どこ出身だっけ?」

藤原「東京だけど?」

北島「じゃあ何で『てんいん』じゃなくて『てんにん』って言ったんだよ?」

藤原「……あ、店の人だから『てんにん』だと思ってた」

北島「お前……これからミッチリ日本語を教育してやるから二軒目行くぞ」

藤原「日本語、難しいねー」

北島「逆に凄いよ。お前」

藤原「褒めるなよ」

北島「褒めてない」
























―――終わり

『真逆の食レポ』



・登場人物


 小川(レポーター)

 北島(ラーメン屋店主)

 藤原(カメラマン)



・舞台


 ラーメン屋





 明転。


 ラーメン屋。カウンター一つにテープル一つ。椅子がいくつか。扉がある。

 北島、板付き。小川、藤原、舞台上手から登場。


小川「(扉を潜り、中に入る)失礼しまーす」

北島「らっしゃい!」

小川「先日、電話させて頂いた、テレビ局の者です~」

北島「あぁ!今日でしたか!どうも、今日は宜しくお願いします!」

小川「じゃあこのまま撮影させて頂きますね~」

北島「はい!」

小川「(店の外に出る)」

藤原「行けます?」

小川「はい」

藤原「じゃあ行きまーす。五,四(指で三,二,一と指を折る)」

小川「はい!皆さんどうも!今日は巷で話題沸騰中のラーメン屋、北島屋さんにお邪魔します!それでは入ってみましょう!(中に入る)こんにちは~!」

北島「らっしゃい!」

小川「では早速、このお店の名物、北島ラーメンを頂きましょう!店主さん、お願いします!」

北島「はいよー!北島ラーメン、一丁、入りましたー!」

小川「お店、良い雰囲気ですね~」

北島「ありがとうございまーす!」

小川「こう、ジメジメした明るい雰囲気で良いですね~!」

北島「ん?え?あ?どっち?」

小川「見て下さい!このスローでハイスピードな手捌き!熟練の若僧が織り成すゴミみたいな芸術ですね!」

北島「え?え?え?だからどっち!?」

小川「さぁ、そろそろ出来上がりでしょうか!?」

北島「お、おう……はい!北島ラーメン一丁、上がり!」

小川「早速、頂きましょう!わぁ!見て下さい!この冷めた湯気を!」

北島「だからどっちだよ!?」

小川「香りの方は……?う~ん!ニンニクの臭い香りと醤油の香りがベストマッチしていて最悪の臭いがします!」

北島「ちょっと、ちょっと!?一旦、止めて下さい!?」

小川「何ですか?」

北島「さっきから何なんですか!?真逆の食レポばっかりして!」

小川「そうですか?ありのままを表現しているのですが……」

北島「もっと美味しそうな表現でお願いします!」

小川「あの、麺が伸びちゃうのでそろそろ良いですか?」

北島「あぁ、分かったよ……」

藤原「行きまーす!五、四(指で三,二,一と指を折る)」

小川「では頂きます!……う~ん!この何とも言えないこの味!」

北島「そうそう!」

小川「とっても美味しいです!」

北島「良いよぉ!」

小川「この何とも言えない味!最高です!」

北島「そのまま、そのまま!」

小川「以上でレポートを終了します!」

北島「えっ!?」

小川「是非、皆さんも一度、食べに来てみて下さい!以上、レポーターの小川でした!」

藤原「……はい、オッケーでーす!」

北島「良くない!」

小川「じゃあ後はスタッフが美味しく頂くので、私はこれで」

北島「待て、待て!これじゃあウチの評判ダダ下がりだよ!」

小川「何がです?」

北島「味の事、一切、何も言ってないじゃないか!」

小川「だって『美味しそうな表現で』って仰ったじゃないですか」

北島「ボキャブラリーが少な過ぎるだろ!もっと、こう、どう美味しいかを言って下さい!」

小川「え~?仕方ないなぁ……じゃあカメラさん、もう一度お願いします」

藤原「はい!じゃあ行きまーす!五、四(指で三,二,一と指を折る)」

小川「では頂きましょう!……う~ん!この何とも言えない香りとコク!正に王道のラーメンって感じです!」

北島「おぉ!良いじゃないか!」

小川「普通よりかは割かし美味しいです!こう、普通に美味しいです!値段と釣り合ってる感じです!」

北島「だからぁ!」

小川「以上で終わりになります!皆さん、また来週~!」

北島「終わるなぁ!」

小川「何ですか?まだ何か?」

北島「大有りだわ!何でまともに食レポしてくれないんだよ!?」

小川「至って真面目ですよ?」

北島「嘘でも良いからもっと盛って言ってくれよ!」

小川「我々は嘘を吐きたくないので」

北島「変なところ誠実!もう一回!もう一回、食べて下さい!」

小川「え~?どうせ変わらないと思いますけどねぇ……?」

北島「最後の!最後の頼みだから!」

小川「仕方ないですね~……じゃあカメラマンさん、良いですか?」

藤原「はーい!じゃあ行きまーす!五、四(指で三,二,一と指を折る)」

小川「じゃあ頂きますね!……うん!うん!この麺、凄いですね!何か拘りが!?」

北島「巷で噂のラーメン屋にインスパイアを受けてましてね。太麺を使ってるんですよ」

小川「成程~!だからこんなに太くてペッチャベチャなんですね!?」

北島「それは伸びたからだよ!今、新しいの持ってくるから待ってて!?」

小川「我々も暇じゃないんでね。じゃあこれで……」

北島「畜生ー!これじゃあお客さんなんか来ないよー!?」

小川「まぁ後は野と成れ山と成れって事で……」

北島「この無責任めー!」


 暗転。


小川「その後、放送されたテレビを観た視聴者から『コントみたい』と噂され、北島屋は大繁盛したのだった」

―――終わり

『娘さんを僕に下さい』



・登場人物


 北島

 藤原美幸(結婚相手)

 藤原正将(美幸の父親)

 藤原愛真(美幸の母親)



・舞台


 藤原宅





 明転。


 舞台上手側、道端。舞台中央から下手に掛けて藤原宅。

 正将、愛真。居間でくつろいでいる。北島、美幸、舞台上手から登場。


北島「あぁ……緊張するなぁ……」

美幸「ウチのお父さん、本当に厳しい人だからシャンとしてね?」

北島「そこまで言われると本当に不安だなぁ……」

美幸「お母さんも厳しいから気を付けてね?」

北島「凄いプレッシャー……よし!腹を括ったぞ!行こう!」

美幸「うん」


 美幸、インターホンを推す。

 SE、インターホンの音。


愛真「はーい。あら、美幸?どうしたの?」

美幸「あれ?お父さんから聞いてないの?」

愛真「何を?」

美幸「今日、結婚の挨拶に来たって」

愛真「あら!そうなの!?も~!だったら私にも言ってよ~!」

美幸「いや、お父さんから聞くと思ってたから」

愛真「あらそー。あ、そこのお兄さんが結婚相手?」

美幸「そう」

愛真「へー。まぁ上がって頂戴?」

美幸「はいはい。ただいまー」

北島「お、お邪魔します!」


 北島、美幸、愛真、居間に移動。


愛真「お父さーん?美幸が帰って来たわよー?」

正将「美幸が?何で?」

美幸「もー。前にも言ったでしょー?結婚の挨拶だよー」

正将「あぁ、今日だったっけ?えーっと、取り敢えず入ってくれ」

美幸「はいはーい」

北島「し、失礼します!」

正将「どうもー。母さん。お茶とお菓子持って来てくれ」

愛真「はーい(舞台下手に退場)」

正将「で?何だっけ?」

美幸「結婚の挨拶!」

正将「あぁ、はいはい。じゃあ、どうぞ?」

北島「北島康介と申します1この度はお時間を取らせて頂き誠にありがとうございます!」

正将「はいはい」

愛真「(舞台下手からお茶とお菓子を持ってくる)どうぞー。大したモンじゃないけど」

北島「いえいえ!わざわざありがとうございます!」

正将「で?続けて?」

北島「は、はい!お義父さん、お義母さん!娘さんを、僕に下……!」

正将愛真「どうぞどうぞ!持ってっちゃって下さい!」

北島「え!?」

正将「大した娘でもないけど、これから宜しくね!」

愛真「顔もスタイルも普通だけど、こんなんで良ければ!」

正将愛真「こんなので良ければ是非どうぞ!」

北島「ちょ、ちょっと待って下さい!?」

正将愛真「はいよー」

北島「美幸……!」

美幸「何?」

北島「お前の親御さん、厳しいんじゃなかったのか!?」

美幸「形上そう言うしか無いじゃん」

北島「だからってお前の事を軽く見過ぎだろ!」

美幸「ウチのお父さんとお母さん、放任主義だから」

北島「放っておき過ぎだろ!」

正将「ねー?もう良い?」

愛真「飽きてきたんだけど」

北島「あっ!す、すみません!じゃ、じゃあ結婚は認めて下さるという事で……?」

正将愛真「どうぞどうぞ1」

正将「こんな娘で良ければ!」

愛真「いくらでもどうぞ!」

正将「料理は下手!」

愛真「掃除も行き届かない!」

正将「洗濯もクシャクシャ!」

愛真「お金の管理もなってない!」

正将愛真「こんな娘で良ければいくらでもどうぞ!」

北島「あの、何か怖いんですけど……?」

正将「そう。怖いよ?コイツ」

愛真「すぐボロを出すし」

北島「ボロ……?」

愛真「基本的に冷食だし」

正将「基本的に家事代行サービスを使うし」

北島「……あ、だからお金の管理が云々って言ってたんですか!?」

正将愛真「そうだよ?」

北島「へ、へー……?」

正将「さぁ、ここまで来たら、結婚だよね?」

北島「えーっと……」

愛真「もう後戻りは出来ないよ?」

北島「あの……」

正将「その覚悟があって来たんだろう?」

北島「その……」

愛真「厄介払い出来て嬉しいわぁ~。私」

北島「ご、ご、ご、ごめんなさ~い!結婚は破棄で!(走って舞台上手に退場)」

正将「……また駄目だったか」

愛真「根性が無い男が増えたわねぇ」

美幸「今度は行けると思ったんだけどなぁ」

正将「次はもっと骨のある奴を見付けて来なさい」

美幸「はーい」
























―――終わり


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