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コント集  作者: 河野吉田
PR
35/37

コント集35

コント集35



341・・・・何ヶ月ですか

342・・・知らないし

343・・・どういう事

344・・・自覚

345・・・どっちだよ

346・・・お客様の中に

347・・・万引き

348・・・心当たりしかない

349・・・探偵グッズ

350・・・酒と水



『何ヶ月ですか』



・登場人物


 北島(正将の会社の同僚)

 藤原正将(双子の兄)

 藤原美幸(双子の弟)



・舞台


 正将宅



・衣装


 美幸・・・マタニティ的な服装





 明転。


 正将宅。引っ越し作業中。

 北島、正将、舞台上手から登場し、荷物を運んでいる。


正将「悪いな。休日に呼んで、引っ越し手伝ってもらっちゃって」

北島「良いよ、良いよ。この後、飲みに連れてってくれれば」

正将「そうだな。一労働終えた後のビールは良いよな?」

北島「そうそう。後は細かい段ボール類か?」

正将「うん」

美幸「(舞台上手から登場)正将ー?飲み物買ってきたよー」

正将「おっ、ありがとう。美幸。ちょっと休憩するか」

北島「そうだな」

美幸「すみませんねー。ウチの正将が無理言っちゃって」

北島「いえいえ。良いんですよ」

美幸「じゃあちょっと出掛けてくるから」

正将「うん」

北島「……可愛いな」

正将「そう?言ってやったら多分、美幸の奴、喜ぶぞ?」

北島「そうか?ってかお前、家族いたのか?」

正将「まぁな」

北島「いつから?」

正将「えー?もうかれこれ二十一年くらい?」

北島「そんな子供の頃から一緒なのか?」

正将「まぁ家族だし」

北島「家族って言えるくらい仲が良かったのか。成程なー」

正将「ん?まぁ、うん……?」

北島「子供の予定は?」

正将「まぁ、その内って感じかなー」

北島「えっ?でもさっき美幸さんだっけ?腹、出てなかった?」

正将「出てたねぇ」

北島「良いのか?出歩いたりして」

正将「運動はしないと体に悪いだろ」

北島「そりゃそうだけど……」

美幸「(舞台上手から段ボールを持って登場)よっと……」

北島「あっ!荷物運びは俺達がやりますから!」

美幸「いえ。何かお手伝いをと思って」

北島「ご自身のお体を大切にして下さい!ほら、そこのソファに座ってて下さい」

美幸「ありがとうございます」

正将「おいおい。あんまり美幸を甘やかすなよ?」

北島「何を言ってんだ?こんな状態の体でこんな重労働させるなよ」

正将「まぁ良いけどさー」

北島「今、何ヶ月なんですか?」

美幸「何がですか?」

北島「お腹」

美幸「あー……かれこれもう百ヶ月くらいになりますね」

北島「百……?十ヶ月じゃなくて?」

美幸「はい。昔から出てるんですよ」

北島「あ、え?あ、ちょっと待ってて下さい?おい、藤原」

正将「何?」

北島「お前の奥さん、何、頓珍漢な事を言ってんだ?」

正将「奥さん?」

北島「美幸さんだよ。お腹の子を百ヶ月もいさせる訳無いだろ?」

正将「……あぁ、あの腹?あれ、ただの肥満」

北島「え?」

正将「だから肥満、太ってるだけ。デブ」

北島「えぇ!?じゃあ何であんな服装を……?」

正将「女装したいだけだからねぇ」

北島「女装……?え、あの人、家族なんだよね?」

正将「だからそう言ったじゃん」

北島「奥さんじゃないの?」

正将「ううん。弟」

北島「あ、弟……あ、弟!?妹さんとかお姉さんとかじゃなくて!?」

正将「そう。弟」

北島「じゃあ何でお兄ちゃんとか兄貴とか言わないの……?」

正将「双子だから」

北島「えぇ……?全然、似てないな……」

正将「二卵性だからね」

北島「にしてもでしょ。えぇ……?じゃあ運動はした方が良いのか……?」

正将「しないともっと太るからねぇ」

北島「あ、そう……」

正将「お前からも言ってやってくれよ?アイツ、全然、痩せないから」

北島「男なんだよな?」

正将「うん」

北島「本当だな?」

正将「うん」

北島「太ってるだけなんだよな?」

正将「だからそうだって」

北島「……分かった。心を鬼にして言ってくる」

正将「頼むわ」

北島「あのー……?」

美幸「何でしょうか?」

北島「あのー……運動とかってした方が良いんですよね……?」

美幸「した方が良いとは言われてるんですけどねー」

北島「あ、そう、ですよね……?」

美幸「何か?」

北島「あ、いや、何でもないです……おい、藤原」

正将「何だよ?」

北島「俺、無理」

正将「何が?」

北島「美幸さんに運動しろって言うの」

正将「何でだよ?」

北島「だってどこからどう見ても女性なんだもん!妊婦なんだもん!」

正将「まぁ、そういう女装をしてるからねぇ」

北島「無理、無理!あんな可愛い人に文句なんて言えない!」

正将「あっそう。まぁ良いわ。おい、美幸」

美幸「何ー?」

正将「段ボール運ぶぞー?」

美幸「はーい(正将と共に舞台上手に退場)」

北島「あ、俺も……」

正将「北島はまだ休んでて良いぞー?そこまでしてもらわなくて良いからー」

北島「そ、そうかー?じゃあお言葉に甘えて……」

正将「(舞台上手から段ボールを持って登場)よっこいせ(舞台上手に退場)」

美幸「(舞台上手から段ボールを持って登場)よっこいしょ(舞台上手に退場)」

正将「あ、しまった。まだもう一つ大きい家具があったな」

美幸「まぁ行けるでしょ?せーのっ(正将と共に舞台上手から箪笥を持って登場)」

北島「あー!流石に!流石に見てられない!美幸さん!俺、代わりますよ!?」

美幸「え?でも……」

北島「こんな可愛い人に重い荷物を持たせるなんて俺には我慢出来ない!」

美幸「そんな、可愛いだなんて……!」

正将「おーい。腕が疲れるんだけどー?」

北島「じゃあ俺、代わりますね!?」

美幸「ありがとうございますー」

北島「じゃあこれ、どこに持ってく?」

正将「そっちの奥の部屋にー」

北島「よし。行くぞー?(正将と共に箪笥を持って舞台下手に退場し、その後、正将と共に舞台下手から登場)ふぅ……」

正将「大丈夫か?」

北島「俺、何かに目覚めたかも」

正将「良かったな」

北島「お陰様でな!」




















―――終わり

『知らないし』



・登場人物


 北島

 藤原



・舞台


 居酒屋






 明転。


 居酒屋。テーブル一つに椅子二つ。テーブルには酒とつまみ。

 藤原、板付き。北島、煙草を持って舞台下手から登場。


北島「お待たせー」

藤原「良いのか?まだ一本くらいしか吸ってないんじゃないか?」

北島「いやー。久し振りのお前との飲みで煙草なんかで時間を潰せるかって」

藤原「そうか?別に明日も休みなんだし、ゆっくりしてきて良いのに」

北島「まぁ最近は健康の事も考えて、減煙してるんだ」

藤原「あっそー」

北島「しかしアレだな?藤原って煙草を吸いそうなのに吸わないんだな」

藤原「まぁ買い方、知らないし」

北島「あっそー。酒も飲まないよな?」

藤原「どれが美味しいか知らないし」

北島「あっそー。意外とギャンブルもやらないよな?」

藤原「買い方、知らないし」

北島「あっそー。子供の時の万引きとかも無いよな?」

藤原「やり方、知らないし」

北島「あっそー。ところでさぁ?」

藤原「何?」

北島「知ってたらやってるの?」

藤原「何が?」

北島「酒とか煙草とかギャンブルとか」

藤原「……あー、その発想は無かったなぁ」

北島「あ、たまたまなんだ?」

藤原「うん」

北島「知ってたらやってんのかと思った」

藤原「知ってても多分やらないなぁ」

北島「あっそー。健康的な考えなのね」

藤原「まぁね」

北島「ギャンブルは本当にやらないの?」

藤原「うん」

北島「宝くじも買わないの?」

藤原「うん。買い方、知らないし」

北島「あんなの売店で買いたい名前の宝くじ言っていくらか払うだけじゃん?」

藤原「それが分からんのよ」

北島「あー。まぁ何が売ってあるか分からんか」

藤原「そうそう。あ、もうこんな時間か。もう店、出るか?」

北島「そうだなー。次どこ行く?」

藤原「俺の家でどうだ?」

北島「学生時代を思い出すなぁ。良いよ。たまにはあの頃に戻って飲み直そう」

藤原「うん」

北島「あれ?でもここからだとお前の家、遠くない?」

藤原「歩いて二時間くらいだろ?行けるだろ?」

北島「いやぁ~、こんだけ飲んだらフラフラで大変だよ?」

藤原「酔い覚ましだと思って、散歩がてら歩こうや?」

北島「いやぁ~、いくらお前が健康的な生活をしたいとは言っても……流石に時間も時間だし、タクシー使おうぜ?」

藤原「でもお金の払い方、知らないし」

北島「じゃあ電車は?」

藤原「切符の買い方、知らないし」

北島「え?じゃあせめてバスは?」

藤原「どこに辿り着くか知らないし」

北島「……お前ってもしかしてさぁ?」

藤原「何?」

北島「物を知らないだけなんじゃないの?」

藤原「え?」

北島「健康的という訳じゃなくて、単に世間知らずなだけなんじゃないの?」

藤原「あー……まぁ、そうかも。というか世間ズレ?」

北島「世間擦れって世の中に慣れてる事を指すから違うだろ?やっぱり世の中を知らないだけなんじゃないの?」

藤原「なのかなぁ?」

北島「うん。多分ね」

藤原「まぁ、ルートはお前に任せるって事で、どう?」

北島「オッケー」

藤原「あ、でも俺、今、金が無いんだよな……タクシー代、払えないかも……」

北島「良いよ、良いよ。今日は俺が誘ったんだし、そっちにお邪魔させてもらうんだから、俺が払うよ」

藤原「そうか?すまんな」

北島「良いって事よ」

藤原「あ、ちょっと待って?……あぁ、明日には今日の分、払うわ」

北島「別に良いのに」

藤原「こういうのは友達同士でもキチンとしておきたい」

北島「そうか?でも何で明日?まだ給料日前だろ?」

藤原「株が良い感じに上がったから今、売却した。明日には金が用意出来る」

北島「あ、そこは知ってるんだ?」
















―――終わり

『どういう事』



・登場人物


 康介(夫)

 美幸(妻)



・舞台


 自宅






 明転。


自宅。テーブル一つに椅子二つ。テーブルの上には海老の料理。

 美幸、板付き。康介、舞台下手から登場。


康介「ただいま~」

美幸「あ、おかえりなさい。ご飯とお風呂出来てるよ?」

康介「じゃあ先にご飯にしようかな?」

美幸「はーい。じゃあ座って、座って?」

康介「うん。ふー。疲れたー」

美幸「お疲れ様」

康介「今日の晩御飯は何?」

美幸「海老のシュリンプよー」

康介「え?」

美幸「だから、海老のシュリンプよー」

康介「どういう事?」

美幸「何が?」

康介「海老の海老って何?」

美幸「何?海老の海老って?」

康介「いや、今、海老のシュリンプって言ったから」

美幸「そうだけど?海老のフライよ?」

康介「……あ、そういう事?シュリンプって海老って意味だよ?」

美幸「あ、そうなの?サイゼとかで見るやつってフライって意味だと思ってた」

康介「あ、そう……」

美幸「中華そばのラーメンもあるよー」

康介「ん?ラーメンのラーメンってなに?」

美幸「ラーメンのラーメンって何?」

康介「……あ、中華そばってそういう事?中華そばってラーメンって意味だからね?」

美幸「あ、そうなの?てっきりそういう調理法だと思ってた」

康介「あ、そう……」

美幸「後、チゲ鍋よ」

康介「ん?鍋鍋って何?」

美幸「何?鍋鍋って?」

康介「今、言ったじゃん。チゲ鍋って」

美幸「え?だからチゲ鍋でしょ?」

康介「……あ、チゲってそういう意味?チゲって鍋って意味だからね?」

美幸「あ、そうなの?てっきり辛い鍋の事だと思ってた」

康介「あ、そう……今日の晩御飯はそんな感じ?」

美幸「献立のメニューはこんな感じかな」

康介「献立のメニュー?献立の献立って意味になってるよ?」

美幸「あ、そうなの?勘違いしてた」

康介「あ、そう……」

美幸「明日の仕事は?」

康介「相変わらずだよ。患者が沢山」

美幸「そっか。オペの手術もあるし、今日はアナタの好きな海老を食べて性を付けて?」

康介「ん?どういう事?」

美幸「何が?」

康介「手術の手術って何?」

美幸「何?手術の手術って?」

康介「……あ、オペってそういう事?オペって手術って意味だよ?」

美幸「あ、そうなの?てっきり病気の名前だと思ってた」

康介「あ、そう……」

美幸「あ、今日のダイアリーの日記、付けよ」

康介「ダイアリーの日記?」

美幸「え?うん」

康介「日記の日記って何?」

美幸「……あ、もしかして私、また同じ事を言ってた?」

康介「うん」

美幸「あら嫌だ。恥ずかしい」

康介「本当だよ。これからは少し調べてから話しな?」

美幸「そうする」


 暗転。


 明転。


 自宅。

 美幸、板付き。康介、舞台下手から登場。


康介「ただいまー」

美幸「ウェルカムホームおかえりなさい」

康介「今日の晩御飯は?」

美幸「海老のシュリンプのフライ揚げよー」

康介「……そっちで統一したんだな」



















―――終わり

『自覚』



・登場人物


 北島(警察官)

 藤原

 枝村(警察官)



・舞台


 道端



・衣装


 北島、枝村・・・警察官の制服






 明転。


 道端。

 北島、板付き。藤原、舞台上手から登場し、北島を見てUターンする。


北島「あ、お兄さん?ちょっと良いですか?」

藤原「え、あ、はい……?な、何でしょうか……?」

北島「お兄さん、私を見てお逃げになられました?」

藤原「そそそそそ!そんな事はありません!」

北島「怪しいですねー……ちょっと職務質問させてもらっても宜しいですか?」

藤原「あの、俺、ちょっと急いでるんで……!」

北島「ちょこっとだけですから」

藤原「そ、それで疑いが晴れるんですか……?」

北島「おや?何を疑ってるかなんて一言も言ってませんよ?」

枝村「(舞台上手から登場)ご協力、お願い出来ますか?」

藤原「……分かりました。白状します。最近ここらで起こった事件の事を捜査されてるんですね?」

北島「話が早くて助かります」

藤原「最近、ここら辺のコンビニで、何も買わずにトイレだけ借りるっていう事件の犯人は、俺です……!申し訳ありませんでした……!」

北島「……え?」

藤原「電気代と水道代を盗んでるみたいなものみたいですよね……本当に、申し訳ありませんでした……!」

北島「えーっと……?ほ、他にあるでしょ?」

藤原「え……?これじゃあないんですか……?」

北島「あー……うん」

藤原「あ、あれですか……?俺がこっそり女性用下着を履いている事ですか……?銭湯に行った時、周りに気持ち悪い思いをさせてしまいました……!申し訳ありませんでした……!」

北島「えーっと……他は?」

藤原「これでもない……?じゃ、じゃああれですか?お風呂入ってた時に歌を歌ってた事ですか……?五月蠅かったですよね……!申し訳ありませんでした……!」

北島「……うーん……枝村。どう思う?」

枝村「……しょっ引こう。北島」

北島「だよな……って、え?何て?」

枝村「コイツは自分の罪をしっかり認識してる。窃盗、公然猥褻、騒音被害……しょっ引いてやるのが、俺達、警察官の仕事。そうだろう?」

北島「あ、いや、それはどうかな……?」

藤原「俺を……逮捕して下さい……!」

北島「あー……とりあえず、次からは気を付けて下さいっていう事で……」

藤原「俺を見逃してくれるんですか!?」

北島「見逃すも何も、別に罪に問われる事はしてないですからね」

藤原「ありがとうございます……!ありがとうございます……!」

枝村「北島の優しさだ。次は、無いからな?肝に銘じておけ?」

藤原「はい……お巡りさん!ありがとうございます!」

北島「別に大した事してないよ?」


―――終わり

『どっちだよ』



・登場人物


 北島

 藤原



・舞台


 喫茶店






 明転。


 喫茶店。テーブル一つに椅子二つ。テーブルの上には珈琲二つ。

 北島、藤原、板付き。


藤原「ちょっとした大発見なんだけどさ」

北島「どっちだよ?」

藤原「え?」

北島「ちょっとした事なのか大発見なのかどっちだよ?」

藤原「いや、ちょっとした大発見なんだよ」

北島「まぁいいや。で?何?」

藤原「この前、ほんのり激辛なカレーを食べたんだけどさ」

北島「どっちだよ?」

藤原「え?」

北島「ほんのりなのか激辛なカレーなのかどっちだよ?」

藤原「だからほんのり激辛なカレーだったんだよ」

北島「まぁいいや。で?何?」

藤原「これは捧腹絶倒な駄作だなって思って」

北島「どっちだよ?」

藤原「え?」

北島「さっきから真逆な事事ばかり言ってさ。どっちなんだよ?」

藤原「どっちと言われても……そうとしか言えないからなぁ」

北島「ちょっと喰わせてくれよ。それ」

藤原「良いよ。ちょっと待っててくれ(舞台下手に退場)」

北島「あんのかい」

藤原「(カレーを持って舞台下手から登場)はい、これ」

北島「どれどれ……うん!ちょっとした大発見でほんのり激辛な捧腹絶倒な駄作のカレーだな!」

藤原「だろ!?」



















―――終わり

『お客様の中に』



・登場人物


 北島(医者)

 小川(CA)

 藤原(精肉工場職員)

 西岡(肉屋)

 儀間(調理師)

 高橋(乗客:調味料)

 大島(乗客:皿)



・舞台


 飛行機






 明転。


 飛行機。座席がいくつか。

 北島、藤原、西岡、儀間、高橋、大島、板付き。小川、舞台上手から登場。


小川「失礼します。お客様の中にお医者様はいらっしゃいませんか?」

北島「私は外科医ですが、お役に立ちますか?」

小川「これは、これは、ありがとうございます。ついでにお客様の中に精肉工場にお勤めの方はいらっしゃいますか?」

藤原「私はそうですが?」

小川「良かった。ついでにお客様の中に肉屋さんはいらっしゃますか?」

西岡「私は肉屋ですが?」

小川「そうですか。ではお客様の中に調理師さんはいらっしゃいますか?」

儀間「私は調理師です」

小川「良かった。お客様の中に調味料を扱ってるお店の方はいらっしゃいませんか?」

高橋「私はそうですが?」

小川「そうですか。では最後に、陶器を扱っている職業の方はいらっしゃいますか?」

大島「皿なら作ってますが?」

小川「そうですか!では皆さん、こちらにいらして下さいませんか?」

藤原西岡儀間高橋大島「(舞台上手に退場)」

北島「食べようとしてます?」

小川「え?」

北島「人を食べようとしてます?」

小川「そんな訳無いじゃないですか~!(目を逸らす)」

北島「で、ですよね?じゃあ何故お肉関係のお仕事の方を探していらっしゃったんですか?」

小川「ちょっとお腹空いちゃって」

北島「食べようとしてます?」

小川「何を?」

北島「人を」

小川「そんな訳無いじゃないですか~!(目を逸らす)」

北島「じゃあ何故?」

小川「ちょっと捌いてもらいたくて……」

北島「だからって食肉用の動物はここにいないでしょう?」

小川「え?ここに沢山いるじゃないですか?」

北島「やっぱり食べようとしてます?」

小川「何をですか?」

北島「人を」

小川「そんな訳無いじゃないですか~!(目を逸らす)」

北島「貴方、この話なったら絶対に目を逸らしますね」

小川「誰を食べるかなんて言ってないじゃないですか!」

北島「普通、肉を捌いて食べる時は『何か』って言うんですよ。『誰か』はもう人を食べる事、前提なんですよ」

小川「お医者様はペットは飼っていらっしゃらないのですか?」

北島「ポメラニアンを飼ってますが?」

小川「じゃあその子は家族ではないと?」

北島「いいえ。血も繋がっていなければ、種族すら違いますが、大切な家族です」

小川「じゃあそれは『何か』ではなく『誰か』ですよね?」

北島「じゃあアレですか?誰かのペットを食べようとしてます?」

小川「動物に辛い思いはさせたくない主義なんで」

北島「食べようとしてるじゃないですか?」

小川「誰をですか?」

北島「遂に言っちゃったよ。誰を食べるかって」

小川「おっと、つい口が滑っちゃいましたね」

北島「怖ぁ……この人……」

小川「さぁ、行きましょう?」

北島「ここで断ったらどうなるんですか?」

小川「どうもしませんよ?ただ、肉が増えるだけです」

北島「……あ、助けようとするって気持ち自体はあるんですね?」

小川「当たり前じゃないですか~!(目を逸らす)じゃなかったらこんな面倒臭い事しませんよ……(北島の目を見る)」

北島「貴方、嘘を吐く時は目を逸らして、本音を言う時はこっちを見るんですね」

小川「バレましたか」

北島「マジで怖いよこの人……」

小川「で、助けてくれますか?」

北島「その人は病人ですか?」

小川「おそらくそうです」

北島「その方を助けたらどうなりますか?」

小川「私が力尽きて、いざという時に動けません」

北島「……そうそう危ない事は起きない事だと思うので、助けます」

小川「チッ……」

北島「舌打ちしました?」

小川「いいえ?じゃあ着いてきて下さい」

北島「は、はい……」


 暗転。


 明転。


 飛行機。

 北島、小川、藤原、西岡、儀間、高橋、大島、板付き。小川、点滴を打ちながら倒れている。


北島「本当に倒れたよこの人……」


 音声、無線「この飛行機は俺がジャックした!大人しく座ってろ!」


北島「ま、マジか……!?CAさん!?助けて下さい!」

小川「無理です……」

北島「どうすれば良いんですか!?」

小川「肉を……肉を下さい……」

北島「機内食を早く!」

小川「出来れば別の肉を……」

北島「カニバリズムもいい加減にしろ!」

小川「うぅ……血肉に飢えている……」

北島「じゃあこれ!これ食べて下さい!」

小川「これは……?」

北島「研究用に持ち帰った人肉です!これでどうにか!」

小川「何でこんな物が手荷物に持ち込めたんですか……?」

北島「国からの命令だったんです!」

小川「でもこれを食べたら先生の仕事が……」

北島「今、乗客が死ぬよりかは貴方に対処してもらった方がよっぽど良いです!」

小川「……ありがとうございます!(肉を奪い、貪り喰う)」

北島「ちょ……せめて火を通しましょうよ……?」

小川「生が良いんです……!うおー!力が漲ってきたー!野郎共!行くぞー!(舞台上手に退場)」


 音声、CA一同の「うおー!」という声。


北島「マジか……」


 音声、無線ジャック犯の「な、何だお前ら!?うわー!?」という声。


小川「(舞台上手から登場)何とか事態は収まりました!」

北島「凄いですね……」

小川「食欲は元気の証です!」

北島「だからカニバリズムもいい加減にしろ!」



―――終わり

『万引き』



・登場人物


 北島(警察官)

 藤原



・舞台


 道端

 警察署





 明転。


 舞台手前、道端。舞台奥、警察署。

 北島、板付き。藤原、舞台上手から登場。


北島「あ、お兄さん。ちょっと良いですか?」

藤原「警察?職務質問か?」

北島「その通りです。ここら辺で起こってる事件、ご存じですよね?」

藤原「……まぁな」

北島「この写真をご覧下さい?」

藤原「これは……俺?」

北島「お兄さんにとてもよく似ていらっしゃるんですよ。ちょっとお話、良いですか?」

藤原「あの事件の事か?」

北島「話が早くて助かります。心当たりがあるとの事で?」

藤原「……あぁ、あの事件だろ?」

北島「ちなみにどの事件だと思っていらっしゃいますか?」

藤原「ここら辺のコンビニで起きてる万引き事件だろ?なら俺だ」

北島「え?」

藤原「何だ?違うのか?」

北島「えぇ。まぁ。他にも何かあるでしょ?心当たり」

藤原「じゃあこの辺のスーパーで起こってる万引きか?」

北島「えぇっと……それでもなくて……」

藤原「じゃあこの辺の商店街で起こってる万引きか?」

北島「それでもなくてですね……」

藤原「じゃあこの辺のデパートで起こってる万引きか?」

北島「違います」

藤原「じゃあこの辺の動物園で起こってる万引きか?」

北島「違います」

藤原「じゃあこの辺の水族館で起こってる万引きか?」

北島「それでもないです」

藤原「じゃあこの辺の博物館で起こってる万引きか?」

北島「違います」

藤原「じゃあこの辺のアミューズメントパークで起こってる万引きか……?」

北島「露出狂だよ!」

藤原「え?」

北島「どんだけ万引きしてんだ!?露出狂だよ!」

藤原「露出狂……?」

北島「ここら辺で頻発している露出狂だよ!お前じゃないのか!?」

藤原「いやぁ~……心当たりは無いなぁ……」

北島「ほら!この写真!この裸の男、お前だろ!?」

藤原「……あぁ、そうだな。俺だな」

北島「署まで来てもらおうか?」

藤原「分かった(北島と共に舞台奥に移動)」

北島「まぁ座れ」

藤原「…………」

北島「何でこんな事をした?」

藤原「いや、暑かったから」

北島「は?」

藤原「いや、今、夏じゃん?だから暑くて脱いだ」

北島「じゃあせめて家の中で脱げよ。エアコンあるだろ?」

藤原「それがさぁ、壊れちゃって。だから全裸で走って風に当たる事で体を冷やそうと思って」

北島「じゃあ水風呂にでも入れば良いだろ。そっちの方が早く体を冷やせるだろ」

藤原「それがさぁ、水道、止められちゃってさぁ」

北島「じゃあ銭湯に行くとか」

藤原「水道を止められるくらい金が無いんだから銭湯なんて贅沢出来る訳無いじゃん」

北島「いちいち開き直るな。今回は露出が目的じゃなったとはいえ、厳重注意じゃ済まされないから署で話を聞こうじゃないか」

藤原「はーい(北島と共に舞台上手に退場)」


 暗転。


 明転。


 道端。

 北島、板付き。


北島「えー、こちら北島。ターゲットがこちらに接近中。こちらに来次第、確保します。はい、はい。おそらくあの海パン一丁の奴かと思われます。とりあえず職務質問します、はい、はい」

藤原「(舞台上手から海パン一丁で手に海パンが入ったビニール袋を持って登場)」

北島「あ、来ました。あー、ちょっと良いですか?」

藤原「はい?あー!この前の!?」

北島「全裸は止めたようなだな?」

藤原「うん」

北島「でもその恰好は……」

藤原「局部は隠してるんだから良いだろ?」

北島「まぁ、そこは良いけど……その袋の中、見ても良いか?」

藤原「え?嫌だ」

北島「何で?」

藤原「また万引きしたから」

北島「だろうな!?じゃ、しょっ引くからな~?」

藤原「あー!夏を乗り切る自由は無いのかー!?」

北島「海にでも行け!」

藤原「じゃあまた海パン盗まなきゃー!」

北島「いい加減にしろ!この馬鹿!」









―――終わり

『心当たりしかない』



・登場人物


 北島(警察官)

 藤原



・舞台


 道端






 明転。


 道端。

 北島、板付き。


北島「こちら連続殺人事件現場付近担当の北島です。怪しい人物は確認出来ません。はい、はい……」


藤原、舞台下手から登場。


北島「あ、丁度、今、人が来ました。ちょっと話を聞いてみます。お兄さん?ちょっと良いですか?」

藤原「けけけ、警察!?ななな何ですか!?」

北島「そんな緊張しなくても~。何もしてなければ良いだけの話でしょ?」

藤原「そそそ!そうですよね!?ははは、はい!」

北島「なぁんか怪しいねぇ?お兄さん、警察にバレたらマズい事でもしてるんじゃないですか?」

藤原「そそそ、そんな訳ないじゃあああありませんか!」

北島「一応、蘇y組む質問させて頂きますけど、良いですか?」

藤原「あ、に、任意!任意ですよね!?拒否します!」

北島「拒否ぃ?益々、怪しいなぁ。今度は令状を持ってお宅に向か校とになるかもしれませんよ?それならいっそここで吐いちゃった方が罪は軽くなるかもしれませんよ?」

藤原「……そうですね。白状します」

北島「話が早くて助かります。では心当たりがある事を仰って下さい?」

藤原「最近ここらで出没してるそ露出狂の事ですか?それは俺の事です……!申し訳ありませんでした……!」

北島「…・…え?」

藤原「あれ?この事じゃないんですか?」

北島「えーっと……それじゃなくて……」

藤原「あ、この辺で起こっている電車の痴漢の事ですか?それは俺です……!申し訳ありませんでした……!」

北島「それでもなくてですね?」

藤原「え?じゃあこの辺で起こってる下着泥棒ですか?それは俺の事です……!申し訳ありませんでした……!」

北島「近いけどそれでもなくでですね?」

藤原「え?じゃあこの辺で起こってる空き巣事件の事ですか?それは俺です……!申し訳ありま……!」

北島「強盗だよ!」

藤原「え?」

北島「強盗だよ!どんだけ心当たりがあるんだ!?」

藤原「でもそれくらいしか無いし……具体的んどんな事件ですか?」

北島「殺人は犯してないけど、お前じゃないのか!?」

藤原「……あ~、あれですか?他人の家に上がり込んで包丁突き付けて金品を奪って住人の両手足を縛って口を塞いで、でも息は出来るようにガムテープとかじゃなくて布で包んで声が響かないようにさせて、スマホもすぐに手が届かない所に置いて逃げるってやつですか?」

北島「分かってるじゃないか!?それだよ!」

藤原「あんなのいちいち覚えてませんよ~。大した事じゃないんですから~」

北島

北島「大した事だろ!?無実な人が何人も犠牲になってるんだぞ!?」

藤原「無実の人じゃないでしょ~?まだ出頭してない犯人とか、横領してる人とか、罪を犯した人の家を重点的に襲っててただけなんですから~」

北島「いや、まぁ、実際そうだったけども!」

藤原「悪人から金を奪って何が悪いんですか~?」

北島「じゃあ痴漢や下着泥棒はどうだったんだ!?」

藤原「あれは本当に無実の人を選んで犯ってました。本当に申し訳ありませんでした……!」

北島「基準がおかしい!他人を傷付けてる事に変わりは無いだろ!?」

藤原「悪人をいくら傷付けようが気にはしませんが、善良な人には申し訳無いと思っております!」

北島「でも罪は認めるんだな?」

藤原「はい!」

北島「じゃあ事情聴取するから署までご同行願おうか」

藤原「はい!」

北島「ちなみに公然猥褻、痴漢、下着泥棒、空き巣については罪の医師はあるんだな?」

藤原「はい……!」

北島「強盗は罪の意識が無いんだな?」

藤原「はい!」

北島「何でそれだけは元気なんだ……?」

藤原「他人事なんで!」

北島「張本人だろ!」




―――終わり

『探偵グッズ』



・登場人物


 北島(新人探偵)

 藤原(上司探偵)



・舞台


 探偵事務所






 明転。


 探偵事務所。テーブル一つ。テーブルの上には探偵グッズがいくつかある。

 北島、藤原、板付き。


藤原「君が今日からウチの探偵事務所に来た北島君だね?」

北島「はい」

藤原「所長の藤原だ。今日から一ヶ月間、みっちり探偵としての基礎を固めてもらう。良いね?」

北島「はい。宜しくお願い足します」

藤原「探偵にとって一番大切な事は何か分かるかい?」

北島「……依頼人に寄り添う気持ち、ですか?」

藤原「それも大切だが、一番大切なのはバレない事だ。つまり、如何に対象者に知られずに任務を遂行する事だ」

北島「つまり、探偵グッズが必須、と?」

藤原「呑み込みが早いじゃないか。そう言う事だ。ここにあるのはその探偵グッズだよ」

北島「……これがですか?」

藤原「そうだ。監視カメラ内蔵眼鏡、ボイスレコーダー内蔵ペン、GPSなんかだ」

北島「これが、それらなんですか?」

藤原「そうだ」

北島「(カメラがぶら下がっている眼鏡を持つ)これは?」

藤原「監視カメラ内臓眼鏡だ」

北島「内蔵って意味分かってます?」

藤原「要するにくっ付いてるって事だろ?」

北島「いや、これはくっ付いてるというか……単にカメラがぶら下がってるだけでは?」

藤原「そうだが?」

北島「これは内蔵ではないのでは……?」

藤原「まぁ見た目より中身が大事だから」

北島「その中身が丸見えなんですが……?」

藤原「まぁ良いだろう?使い方を教えよう。まず眼鏡を耳に掛ける」

北島「(眼鏡を掛ける)あの、ズリ落ちるんですけど……?」

藤原「そこはほら、手で持てば良いだろう?」

北島「じゃあ最初からカメラを首から下げれば良いのでは……?」

藤原「まぁ良いから。使い方は普通のカメラと同じで、写真モードと動画モードに切り替えてボタンを押すだけだ」

北島「怪しさが半端ないんですけど……?」

藤原「まぁまぁ。次はボイスレコーダー内蔵ペンだ」

北島「(ボイスレコーダーが雑にガムテープでグルグルと巻かれているペンを持つ)これですか?」

藤原「そうだ」

北島「これ、ボイスレコーダーがペンに付いてるんですけど……?」

藤原「だってボイスレコーダー内蔵ペンだからね」

北島「内蔵の意味分かってます?」

藤原「だから要はくっ付いてるって事だろう?」

北島「これ、普段何処に置いて使うんですか?」

藤原「仕事中に胸ポケットに入れたり、対象者の家のペン立てに立てたりとか」

北島「一発でバレる気がしますけど……?」

藤原「まぁインテリアだと思えば」

北島「えぇ……?」

藤原「まぁまぁ。で、最後はこれだ」

北島「(A4サイズの紙が何枚も重なったかのような大きさと厚さのGPSを持つ)これですか?」

藤原「そうだ」

北島「これは……何ですか?」

藤原「GPSだ」

北島「こんなに大きいんですか?」

藤原「そりゃ四六時中監視するんだから電力消費は激しいし、大きくないと正確な位置が把握出来ないからな」

北島「これはどこに忍ばせるんですか?」

藤原「対象者の鞄とか車とか」

北島「車はまだ分かるとして、鞄は無理ありません?」

藤原「何で?」

北島「こんな大きくて目立って重い物が入ってたら気付かれません?」

藤原「意外と気付かれないものだよ?」

北島「えぇ……?」

藤原「まぁ簡単なのはこの通りだ。後は応用編でこんなのもある(リーゼントやアフロのウィッグと学生服を持つ)」

北島「何ですか?これ」

藤原「見ての通り、ウィッグと学生服だ」

北島「これはいつ何処で使うんですか?」

藤原「まぁ変装だな。臨機応変に」

北島「髪型と服は他にもあるんですよね?」

藤原「いや、無い」

北島「え?」

藤原「基本的にこの服とウィッグで乗り切ってもらう」

北島「いや、流石にこの年齢で学生は無理がありますよ……?」

藤原「行ける、行ける。大丈夫だ」

北島「というか何でこの髪型の種類なんですか?」

藤原「誰にも被らないように個性を出してみた」

北島「個性を出したらすぐ見付かりそうですけど……?それに学生に見られたとしたら行ける範囲も時間も狭まれるのでは……?」

藤原「厄介な奴が来たって事で案外、許されるぞ」

北島「えぇ……?」

藤原「まぁ着替えて着てみてくれよ」

北島「え、あ、はい……(舞台下手に退場)こんなんで大丈夫なんですか……?」

藤原「『こんなん』とは何だ?『こんなん』とは」

北島「経営、大丈夫なんですか?」

藤原「大丈夫だ。今は横ばいだ」

北島「右肩上がりじゃないんですね?」

藤原「減ってはいないって事だよ」

北島「減りようが無さそうですもんね」

藤原「どういう意味だ?」

北島「何か儲かってなさそう」

藤原「大丈夫だ。最初から変わってないって事だ」

北島「変わりようが無さそうですものね」

藤原「まぁまぁ、良いから。で?着替え終わったか?」

北島「あー、もうちょっとですー」

藤原「早くしてくれよー?」

北島「はーい。(舞台下手から学ランを着てリーゼントを被った状態で舞台下手から登場)どうですかね?」

藤原「で、後はこれを……(先程の眼鏡とペンを北島に装着させる)うん。これで良し!」

北島「行けますかぁ!?これぇ!」

藤原「行ける、行ける!よし。じゃあ早速、これをやって来てくれ」

北島「いきなりですか!?」

藤原「何、いきなり浮気調査とかは無理だ。迷い猫とか迷い犬を探すのが最初の仕事だ」

北島「は、はぁ……?」

藤原「ほら、行った、行った!」

北島「あの、着替えをしてから……!」

藤原「その恰好に慣れてもらう為にもそのままで行け!」

北島「えぇ……?」

藤原「あ、ちょっと待っててくれ(舞台下手に退場し、北島の服と鞄を持って舞台下手から登場)。これを忘れずに」

北島「これ持ってくんですかぁ!?」

藤原「当たり前だ。着替える時間とかも自分で計算してみろ」

北島「は、はぁ……?」

藤原「さ、行け!」

北島「は、はい……行ってきます……(舞台上手に退場)」

藤原「ふぅ……」


 間。


 SE、サイレンの音。


藤原「何だ?」

北島「(舞台上手から登場)あのー……」

藤原「どうした?まだ五分くらいしか経ってないぞ?」

北島「警察の方から通報がありまして……」

藤原「何が?」

北島「未成年の格好をした成人男性の不審者がカメラとボイスレコーダーを持ってうろついているって通報されちゃって……」

藤原「何で?」

北島「この格好をしてる私がいるからでしょ!?」

藤原「えぇ!?こんな完璧な扮装なのに!?」

北島「どこがだ!?」

藤原「あれか、リーゼントがいけないんだ。アフロにしよう」

北島「どっちも変わらんわ!」

藤原「じゃあ普通の格好をして行け!」

北島「言われなくてもそうしたかったわ!もう辞めるわ!この事務所!」



―――終わり


『酒と水』



・登場人物


 北島(部下)

 藤原(部長)



・舞台


 居酒屋



・衣装


 藤原・・・ピシッとしたスーツに頭にネクタイ。老けたメイク。






 明転。


 居酒屋。座敷。テーブル一つに座布団二つ。テーブルの上には酒とつまみと水の入った一升瓶。

 北島、板付き。酒を飲んでいる。


藤原「ガハハハハ!じゃあしっかり飲めよー!?(舞台下手から登場)おっ、北島ぁ!飲んでるかぁ!?」

北島「いやぁ……どうも飲むのは苦手で……ハハハ……」

藤原「おうおう!こういうのはのはなぁ、飲んでなんぼなんだよ!ほら!飲め!」

北島「も、もう飲めませんよ~……」

藤原「俺達の時はなぁ、飲みたくても飲めなかったんだよ!だから若いうちから飲んで耐性付けとけ!おらっ!」

北島「で、でももうお腹にお酒がいっぱいで……!」

藤原「だからこそ飲むんだよ!」

北島「もう、藤原部長……飲み過ぎですよ~……」

藤原「これくらい軽いもんよ!飲み物ならいくらでも腹に入るのが俺の自慢だからな!だからお前も飲め!水を!」

北島「も、もう飲めるほど胃が空いてませんよ~……」

藤原「何だぁ!?俺の水が飲めねぇって言うのか!?」

北島「そ、そういう訳じゃあないんですけど……」

藤原「じゃあ何で飲めねぇんだ!?」

北島「俺はお酒だけで十分なんですよ~!」

藤原「あのなぁ……良いか?酒ってのはな、飲んだ分だけ水を飲まないと体に悪いんだよ!急性アルコール中毒で死んじまう可能性があるんだよ!だから飲め!ほら!」

北島「もうお腹タプタプでして~!」

藤原「……お前、まさかとは思うが、つまみも喰わずに酒だけ飲んでるのか!?」

北島「え?あぁ、はい~……」

藤原「馬鹿野郎!空きっ腹に酒なんて言語道断だ!せめて烏龍茶か何か飲んでから酒を飲め!」

北島「す、すみませ~ん!」

藤原「謝るなら俺にじゃねぇ!自分の体に言え!」

北島「は、はいっ!」

藤原「空腹でお酒を飲むとアルコールが一気に吸収され、血中濃度が急上昇します!食事をとってから飲むことで、吸収を緩やかにし、肝臓への負担を軽減出来ます!宴会スタートのおすすめおつまみは、チーズ、枝豆、ゆで卵、ナッツ等、脂質とタンパク質を含む軽いおつまみです!分かりましたか!?」

北島「はい!分かりました!分かりました!」

藤原「お前、宴会の後は必ず二日酔いになるって前に言ってたよな?」

北島「あぁ、まぁ、はい……」

藤原「今のお前には水よりもお茶だな!飲め!お茶を!」

北島「な、何でお茶なんですか……?さっきは水って……?」

藤原「緑茶には利尿作用があり、体内の余分な水分やアルコールを排出するのを助けます!二日酔いの時に感じる怠さや浮腫みは、体内に水分が過剰に溜まっていることが原因の一つですが、緑茶を飲む事で、これらの症状を緩和することが出来ます!」

北島「ヒィッ!?わ、分かりました!飲みます!飲みますから!すみませーん!緑茶、一つお願いしまーす!」

藤原「俺が入社した時はなぁ、酒ばかり飲まされて毎日が辛かった……だから部下のお前にはそんな目に遭いさせたくないんだよぉ……!(突っ伏する)」

北島「も~、こんなになっちゃってぇ……一体いくら飲んだんですか?」

藤原「甘酒をショットグラスで一杯……」

北島「えぇ……?つまみは?」

藤原「数の子の粕漬け一切れ……」

北島「部長にしては随分、飲みましたねぇ……」

藤原「これくらいならイケると思って……もう、昔の俺には戻れないな……!」

北島「部長、今年でいくつでしたっけ?」

藤原「二十五歳……」

北島「凄いスピード出世ですね」

藤原「だって社長のドラ息子だもん……」dd

北島「何でそんな老けてるんですか?」

藤原「健康被害が出るほど、入社したての頃に毎晩、飲まされ続けてきたから、その結果だ……!」

北島「酒って人を変えてしまう危ない物なんですね」












―――終わり


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