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コント集  作者: 河野吉田
PR
31/37

コント集31

コント集31



301・・・・5W1H

302・・・・ホテル

303・・・箪笥

304・・・犯人じゃない

305・・・逆

306・・・マイク

307・・・手術とホームラン

308・・・覚え違い

309・・・キスマーク

310・・・勘違い



『5W1H』



・登場人物


 北島

 藤原



・舞台


 居酒屋






 明転。


 居酒屋。テーブル一つに椅子二つ。テーブルには酒とつまみ。

 北島、藤原、板付き。


北島「なーんか、俺らっていつまでもダラダラしてるよな」

藤原「だなー。会っても会社の愚痴とかしか言わないもんなー」

北島「何か面白い話、無いのかよ?」

藤原「あー、あるよ」

北島「お、何、何?」

藤原「あれはいつだったか、どこかで何故かだれかしらとどうなったか何かしらあった話なんだけど……」

北島「……ん?」

藤原「えーっと、何だったかな……?」

北島「何一つ覚えてないじゃないか」

藤原「いや、ここまで出掛かってる」

北島「どこに出掛かってるんだよ?」

藤原「あー……何だか忘れちまったよ」

北島「どうせ大した話じゃないんだろ?」

藤原「いや、結構、重大な話だった気がする……」

北島「もういいや。この話」

藤原「そういうお前は何か無いのかよ?面白い話」

北島「うーん……この前、ウチの課長がキャバクラで酔っ払って客引きにダル絡みしたら怖いお兄さん達がやってきてボッコボコにされたとか?」

藤原「何それ。面白い」

北島「それで翌日、会社に出勤したら松葉杖、着いてて『もう二度と酒は飲まない』って言ったその日にまたキャバクラに行って武勇伝みたいにキャバ嬢に話したら、そこが前日ダル絡みしたお兄さん達のお店だったんだよ」

藤原「酷過ぎる」

北島「だろ?」

藤原「あ、思い出した」

北島「何を?」

藤原「さっきの『あれはいつだったか、どこかで何故かだれかしらとどうなったか何かしらあった話なんだけど』ってやつ」

北島「あぁ。何だった?」

藤原「この前、カミさんが宝くじ一等が当たってもう働く必要が無くなったんだけど、それを競馬で更に増やそうとしたらしくて一日で溶かした」

北島「よくそんなショッキングな事をスッと思い出せなかったな」

藤原「ね。俺も吃驚してる」

北島「で、どうしたの?」

藤原「いつかどこかで誰かがどうなった何かしらあった」

北島「あ、これ時間掛かるやつだ」




―――終わり

『ホテル』



・登場人物


 北島

 藤原



・舞台


 ホテルのフロント






 明転。


 ホテルのフロント。受付台一つにパソコン一つ。

 藤原、板付き。北島、舞台上手から登場。


北島「すみませーん」

藤原「いらっしゃいませ。ホテルのご利用ですか?」

北島「はい」

藤原「ご予約はされてますか?」

北島「いえ。急遽、泊まらないといけなくなりまして……すぐそこで土砂崩れがあったでしょう?」

藤原「そうでしたね。大変でしたね」

北島「ここら辺のホテルや宿はもう予約客でいっぱいだったんです。ここが最後でして。ここは十三階建てですし、空いてそうと思いまして。大丈夫ですか?」

藤原「そうですね……少々お待ち下さい(パソコン作業をする)。お待たせしました。今なら最上階がご案内出来ます」

北島「最上階か……料金の方はどれくらいになりますか?」

藤原「今回は災害時ですので、お安くしておきます。一泊で宜しいですか?」

北島「えーっと……(スマートフォンを触る)あ、明日のお昼には撤去作業が終わるみたいなんで、一泊で良いです」

藤原「そうですか。でしたら一泊二万円で、朝食付きで宜しいですか?」

北島「分かりました。それでお願いします」

藤原「畏まりました。ではこちらキーになります」

北島「はい……え?外?」

藤原「はい」

北島「え?あの……外ってすぐそこにある倉庫みたいなやつですか?」

藤原「そうです」

北島「え?だってここって十三階ですよね?そこの最上階が外の倉庫ってどういう事ですか?」

藤原「数字を配慮した、という事ですね」

北島「え?ど、どういう事ですか……?」

藤原「当ホテルは世界中、そして様々な宗教に配慮して、不吉な数字等の階は使えない事になってるんです」

北島「一階は?」

藤原「エントランスと食堂に使っているので、そこだけは別に不吉な数字ではありません」

北島「はぁ二階は?」

藤原「割り切れる数字という事で、カップルの方等には使えなく、今は倉庫になっています」

北島「三階は?」

藤原「ベトナムで不吉な数字とされています」

北島「四階は?」

藤原「日本と中国において死を意味するので使えません」

北島「五階は?」

藤原「五は中国で『無』を意味するので忌み嫌われています」

北島「六階は?」

藤原「ベトナムの数字の三の倍数、及び欧米で六六六は悪魔の数字として扱われているので使用禁止です」

北島「七階は?」

藤原「中国で不吉な数字とされています」

北島「八階は?」

藤原「四苦八苦の八を示唆されています」

北島「九階は?」

藤原「日本と中国で苦しいの『く』を示唆され、ベトナムで三の倍数は不吉な数字とされるものなので」

北島「十階は?」

藤原「零が入っていて、霊を示唆するので避けています」

北島「十一階は?」

藤原「純粋に消火活動等の観点からこの階は空けています」

北島「十二階は?」

藤原「ベトナムで三の倍数が不吉な数字となります」

北島「十三階は?」

藤原「キリスト教で十三は裏切者の数字なので封鎖しております」

北島「……で、全階が使えないと……?」

藤原「作用で御座います」

北島「何でこんなホテル建てたんですか?」

藤原「私に言われましても……」

北島「あ、いや、まぁ、そうですよね……ちょっと創設者の方に連絡とか取れます?」

藤原「あ、私が創設者です」

北島「創設者が受付を?」

藤原「はい。何故か誰も仕事に入ってくれないので」

北島「だって掃除する事も特に無いし、ご飯を作るくらいしか仕事らしい仕事が無いじゃないですか」

藤原「あ、食事も私が作っております」

北島「じゃあ従業員、要らないじゃないですか?」

藤原「……その発想はありませんでした!」

北島「馬鹿かな?」

藤原「そうか……道理で儲からない訳だ……一日に一組しか受け付けられないこの体制が悪かったんだ……!」

北島「もう潰してゴルフ場とかにしたら良いんじゃないですか?」

藤原「そうですね!そうします!」

北島「じゃあ、まぁ、とりあえず外の倉庫に行きますね」

藤原「はい!ではこちらへどうぞ!」

北島「はーい」

藤原「次にいらっしゃった時は是非、ゴルフを楽しんでいって下さい!」

北島「宿泊施設があればね」


 暗転。


 明転。


 ホテルのフロント。

 藤原、板付き。北島、舞台上手からゴルフバッグを持って登場。


北島「こんちわー」

藤原「あ!この前の!いらっしゃませ!」

北島「本当にゴルフ場を建てたんですね?」

藤原「はい!」

北島「何か、ゴルフ場があるにも関わらず、更に広い敷地になってる気がするんですけど?」

藤原「はい!土地を更に買収して、広い一階のみにしました!」

北島「儲かってます?」

藤原「お陰様で!」

北島「ってかまた創設者さんが受付やってるんですね」

藤原「新しくこれを建てたら、お金が無くて暫くは私、一人です!」

北島「あっそう。館内の従業員さんが見当たりませんが……?」

藤原「皆、ゴルフ場に出てます!」

北島「ゴルフ場に仕事に出てるって事ですか?」

藤原「はい!整備の仕事を任せて、皆、ゴルフバッグを持って行きました!」

北島「それ、多分、仕事サボってるよ?」












―――終わり

『箪笥』



・登場人物


 藤原

 箪笥の裏で操作する人(以降:箪笥)

 NA



・舞台


 藤原宅






 明転。


 藤原宅。箪笥が一つ。

 藤原、服を持って舞台上手から登場。

 藤原、箪笥に服を上段にしまう。

 箪笥、下の方が出てくる。

 藤原、箪笥の下を閉める。

 箪笥、中段が出てくる。

 藤原、箪笥の中断を閉める。

 箪笥、下段が出てくる。

 藤原、箪笥の下段を閉める。

 箪笥、上段が出てくる。

 藤原、箪笥、閉めたり出てきたりを早くやる。

 藤原、「あたたたたたたたたたたたた!」と言いながら箪笥の上中下段を殴るように閉める。


NA「スローモーションでもう一度」


 藤原、箪笥、スローモーションで閉めたり出したりをする。


藤原「ふう……」


 箪笥、全ての段が出てきて藤原を突き飛ばす。


藤原「ジャパニーズ精巧技術……」                        ―――終わり

『犯人じゃない』



・登場人物


 北島

 藤原

 枝村

 西岡

 小川

 儀間

 米山



・舞台


 別荘のリビング






 明転。


 別荘のリビング。テーブル一つにソファ二つ。

 北島、藤原、枝村、西岡、小川、儀間、板付き。


北島「探偵さんよ。何なんだい?こんな時間に呼び出して」

藤原「はい。皆さんに集まってもらったのは他でもありません。米山さん殺害未遂事件の犯人が分かったんです」

北島枝村西岡「何だって!?」

小川儀間「何ですって!?」

北島「一体、誰だ!?誰なんだ!?」

藤原「犯人は、この中にいる!」

北島枝村西岡「何だって!?」

小川儀間「何ですって!?」

北島「誰だ!?お前らの誰かか!?」

枝村「俺じゃねぇよ!」

西岡「俺だって!」

小川「私も!」

儀間「私じゃないわ!」

北島「おい!一体、誰が犯人なんだ!?」

藤原「犯人は……北島康介さん!貴方だ!」

北島枝村西岡「何だって!?」

小川儀間「何ですって!?」

北島「な、何で俺なんだ!?」

枝村「北島、お前……!?」

北島「ち、違う!俺じゃない!」

藤原「ここは貴方の持つ別荘。同窓会にピッタリな絶好の場所です」

北島「だから何だと言うんだ!?」

藤原「先程、警察の方から聞きました。米山さんは、洗剤を飲み込んだようです」

北島「それが?」

藤原「この別荘にある洗剤と合致しました。そして、洗剤の容器の指紋は貴方のしか付いていませんでしたよ?」

北島「そりゃあ俺の別荘だ。それくらい当たり前だろう?」


 スポット、北島に。


 明転。


北島「やっべぇ~!思わず犯人っぽい事を言っちゃった~!」


北島「大体、俺には完璧なアリバイがある」


 スポット、北島に。


北島「やっべぇ~!また犯人みたいな事を言っちゃった~!マジで違うんだよ~!」


 明転。


藤原「米山さんが寝室に行く前、貴方は何をしていましたか?」

北島「皆とビリヤードをしていたよ。なぁ?」

枝村西岡「あぁ」

小川儀間「うん」

藤原「その時、一度トイレに行ってますね?」

北島「あぁ。腹を下してな」

藤原「十分程、トイレに行ってましたね?長いと思いませんか?」

北島「それに何の不自然さがある?腹を下してるんだから当然だろう?」


 スポット、北島に。


北島「やっべぇ~!まぁた犯人っぽい事を言っちゃった~!本当に犯人じゃないんだってば~!」


 明転。


藤原「腹を下してるとトイレに行く振りをして米山さんの寝室に行った。違いますか?」

北島「違うね。第一、俺には米山を殺す動機が無い」


 スポット、北島に。


北島「ヤバい、ヤバい、ヤバい!マジで犯人みたいなセリフ言っちゃった!違うんだ!信じてくれ!」


 明転。


藤原「動機なら、あるでしょう?」

北島「何だって?」

藤原「貴方は以前、米山さんの連帯保証人にされましたね?その借金の返済で揉めたんじゃありませんか?」

北島「そりゃあ一時期、揉めたさ。でもそんな事でアイツを殺す訳が無いだろう!大切な友達だぞ!?なぁ!?皆!?」


 間。


 スポット、北島に。


北島「マズい、マズい、マズい!また犯人みたいな事を言っちゃった!皆、完全に俺を疑ってる!」


 明転。


藤原「まだありますよ。貴方、米山さんに振られたでしょう?」

枝村西岡小川儀間「えっ!?」

枝村「お前、米山さんはもう婚約者がいるって聞いていただろう!?」

北島「……あぁ、知ってたさ!でもな!俺は後、一回だけで良かった!それで終わりにしようと思ってた!だから、だから……!」


 スポット、北島に。


北島「あれ~!?何かコレ、もう自白する流れになってない!?マジで違うんですけど~!?」


 明転。


藤原「もう、認めますね……?」

北島「…………」

西岡「何でこんな事に……」

小川「北島君……」

儀間「そんな事ってアリ……?」


 SE、パトカーのサイレンの音。


藤原「さぁ、行きましょう?」

北島「……はい」


 スポット、北島に。


北島「エンザーイ!コレ、エンザーイ!冤罪ですー!」

米山「(舞台上手から登場)皆~……」

北島枝村西岡小川儀間「米山さん!?」

藤原「どうしたんですか?もう動いて大丈夫なんですか?」

米山「胃の洗浄はしたし、点滴も打ったんでもう大丈夫です~……」

北島「米山!大丈夫か!?」

米山「大丈夫~……ごめんねぇ、心配掛けて……」

藤原「米山さん。事件は解決です」

米山「あぁ、今回はねぇ、私のせいでねぇ……」

北島藤原枝村西岡小川儀間「えっ!?」

藤原「どういう事ですか!?」

米山「深夜に小腹、空いて、台所のスイッチが分からなくて暗い中適当に手探りで探して。パンと蜂蜜だと思って食べたら、蜂蜜じゃなくて洗剤だったんだよねぇ~……」

枝村「何だよ、人騒がせな」

西岡「あれ?じゃあさっきまでの流れは何だったの?」

北島「知らねぇ……何でか分からんけど、そういう雰囲気になった」

小川「米山さんが北島君を庇ってる訳では無いの?」

米山「違うよぉ……本当に自爆したんだよぉ……」

儀間「じゃあ何で犯人になってたの?」

北島「だから最初から言ってたじゃん……犯人じゃないって……」

枝村「あんな思わせ振りな事を言っておいて?」

北島「何でかなぁ……?何かそういう流れになっちゃってたんだよなぁ……」

藤原「(舞台上手にそろ~っと捌けようとする)」

西岡「ってかそもそもさぁ、同窓会なのに何で部外者の探偵がいるの?」

北島枝村小川儀間米山「確かに!」

藤原「あー……ちょっとトイレに……」

米山「あ、そうそう。そういえば私の財布が……」

小川儀間「あ、私も」

北島枝村西岡「俺も」

藤原「…………(全力で舞台上手に退場)」

北島「あっ!アイツ泥棒だったんだ!捕まえろー!」

米山「外に警察がいるから大丈夫だよ」

北島「あ、そうか」

米山「これにて一件落着ぅ!」

北島「人騒がせな人達だよ全く……」



















―――終わり

『逆』



・登場人物


 北島デブ

 松本



・舞台


 松本宅






 明転。


 松本宅。卓袱台一つに座布団二つ。松本、くしゃみをして震えている。

 SE、インターホンのチャイムの音。


松本「はーい(舞台上手に退場)。どうぞ、上がって?」

北島「お邪魔しまーす」

松本「まぁ適当に掛けてくれ」

北島「おう」

松本「は、は、は……ハックショーン!」

北島「大丈夫か?外までくしゃみ聞こえてたぞ?」

松本「あぁ、ちょっと朝からな……」

北島「移すなよ?」

松本「移すようなものじゃない。それに薬を貰ってきたから大丈夫」

北島「そうか?まぁ無理するなよ?」

松本「すまんな……は、は、は、ハックショーン!はー……!はー……!はー……!」

北島「店が開くまで後、一時間くらいか。それまでどうする?」

松本「一次会ならぬ零次会とかどうだ?」

北島「飲んで大丈夫か?体調、悪いんだろ?」

松本「寧ろ飲んだ方が落ち着く……」

北島「そ、そうか?じゃあ何か酒とか買ってくる?」

松本「いや、もう買ってある。ビールで良いよな?」

北島「用意が良いな」

松本「まぁ、この時間に待ち合わせだったからこうなるだろうと思って」

北島「そうか。じゃあ頂こうかな」

松本「ちょっと待っててな(舞台下手に退場し、缶ビール二本を持って舞台下手から登場)。お待たせー」

北島「サンキュ」

松本「じゃあカンパーイ」

北島「カンパーイ」

松本「……あーっ!これだなぁ!」

北島「体調、悪いのに一気にそんな飲んで大丈夫なのか?」

松本「さっきも言ったろ?飲んだ方が落ち着くんだよ。は、は、は、ハックショーン!はー……!はー……!はー……!」

北島「本当に大丈夫か?」

松本「大丈夫……は、は、は、ハックショーン!はー……!はー……!はー……!な、なぁ……?」

北島「何?」

松本「エアコンのリモコン取って?」

北島「どこ?」

松本「お前のすぐ側だと思う」

北島「あぁ、これか。はいよ」

松本「サンキュ。あ、エアコン点けても良い?」

北島「春だけどエアコン入れるのか?」

松本「あぁ、こうも暑くっちゃな」

北島「……ん?」

松本「冷房、入れて良いか?」

北島「え?暖房じゃなく?」

松本「何、言ってんだよ?もう五月だぞ?」

北島「いや、だって、くしゃみして震えてるから寒いのかと思って」

松本「あぁ、これ花粉症とアルコール中毒の症状」

北島「……あ、飲んだ方が落ち着くってそういう事?」

松本「本当は飲まないようにするんだけど、本格的な治療は明日からだから」

北島「あっそう……酒も入って暑いってのもあるのか?」

松本「これから、そうなるだろうな、とは思う」

北島「ふーん?まぁ冷房、入れろよ」

松本「寒かったら言ってくれよ?」

北島「あぁ、うん」

松本「(リモコンを操作する)」

リモコン「設定温度を十七度に設定しました」

北島「お、おい。いくら何でも下げ過ぎじゃないか……?」

松本「え?今の時代、熊谷じゃ、これくらい普通じゃね?」

北島「まぁ……一番、暑い市ではあるけれど……」

松本「今からこの温度じゃ、夏は五度だな」

北島「えぇ……?何か上に羽織る物とかある?」

松本「そこにコートがあると思う」

北島「借りて良い?」

松本「良いよ」

北島「すまんな。こっちが風邪、引いちゃうよ……」

松本「すまんな」

北島「いや、この部屋はお前のだし、こっちがとやかく文句を言える立場じゃないんだけどな……」

松本「お客さんに文句を言わせるようにはなりたくなかったんだが……」

北島「じゃあ、お互い様って事で」

松本「ありがとう」

北島「こちらこそ」


 暗転。


 明転。


 松本宅。段ボールがいくつか置いてある。季節は冬。

 SE、冷たい風の鳴る音。

北島、松本、息を切らして引っ越し作業をしている。


松本「すまんな。俺の引っ越し手伝ってもらっちゃって」

北島「良いよ。その代わり、この後、お前の奢りな」

松本「あぁ、それは勿論。ふぅ……!ふぅ……!ふぅ……!」

北島「疲れた?」

松本「ふぅ……!ふぅ……!ふぅ……!あぁ……流石にダイエットしなきゃな……ふぅ……!ふぅ……!ふぅ……!」

北島「七か月前のアルコール依存症はどうなった?」

松本「ふぅ……!ふぅ……!ふぅ……!大分、良くなったよ。もうあれから半年は飲んでない。ふぅ……!ふぅ……!ふぅ……!」

北島「良かったな」

松本「ふぅ……!ふぅ……!ふぅ……!うん。一回、休もう。ふぅ……!ふぅ……!ふぅ……!」

北島「やっと半分だしな」

松本「ふぅ……!ふぅ……!ふぅ……!あぁ。なぁ、エアコン点けて良い?」

北島「あぁ、さっきまで動いてたしな」

松本「ふぅ……!ふぅ……!ふぅ……!うん。流石に十二月に外に出ると寒い」

北島「……ん?」

松本「ふぅ……!ふぅ……!ふぅ……!暖房、入れるぞ?」

北島「え?冷房じゃなくて?」

松本「うん。寒い」

北島「そんなに汗をダラダラ掻いてて?」

松本「冷汗ってやつかな?」

北島「ただの引っ越し作業で何スリルを味わってるんだ?」

松本「お隣さんに『五月蠅い』って思われてないかな?とか」

北島「考え過ぎだよ」

松本「ふぅ……!ふぅ……!ふぅ……!あー、喉が……」

北島「水でも買ってくる?」

松本「いや、カステラ喰うかな」

北島「え?」

松本「水っ腹で気持ち悪い。少し水分を飛ばしたい」

北島「そんなに汗を掻いてるのに?」

松本「水分の摂り過ぎで、多分、排出してるんだと思う」

北島「この前からずっと逆だなぁ」

松本「逆?」

北島「うん。寒がっているようでいて暑がってて、暑がっているようでいて寒がってて、喉が渇いていそうなのに水っ腹で気持ち悪い。何か逆なんだよな」

松本「そんな事を言われても……」

北島「あ、いや、仕方ない事なんだけど、こっちの脳がバグってきちゃってて……」

松本「それはすまない」

北島「まぁ、生理現象だしな。こっちがとやかく言う事じゃなかったな」

松本「緊張した~。おしっこ引っ込んじゃったよ」

北島「逆だろ」















―――終わり

『マイク』



・登場人物


 米山

 スタッフ(後半まで声のみ)

 観客(複数人適当にザワザワ係)(声のみ)



・舞台


 アイドルの舞台






 明転。


 アイドルの舞台。

 音楽が流れ、締めに入る。

 米山、板付き。


米山「ジャーン!皆ー!今日は来てくれてありがとー!次の衣装に着替えてくるねー!(舞台上手に退場)はぁ……!はぁ……!はぁ……!」

観客「えっ……!?そんなに疲れてるの……!?」

スタッフ「米山さん!マイクまだ入ってます!」

米山「マジ!?(舞台上手から登場)皆ー!私、大丈夫だからねー!」

観客「おー!」

米山「じゃあまたねー!(舞台上手に退場)はぁ……!はぁ……!はぁ……!おぇっ……!」

観客「(ざわつく)」

スタッフ「米山さん!まだマイク入ってます!」

米山「うげぇ!マジか!(舞台上手から登場)皆ー!本当に大丈夫だからねー!(舞台上手に退場)はぁ……!はぁ……!はぁ……!マジ、で……!クソッ……!」

スタッフ「米山さん!まだマイク入ってます!」

米山「マジで!?(舞台上手から登場)皆ー!心配しないでねー!(舞台上手に退場)はぁ……!はぁ……!はぁ……!クソが……!ふざけんな……!クソ客が……!」

スタッフ「米山さん!まだマイク入ってます!」

米山「マジぃ!?(舞台上手から登場)皆の事は大切な神様だからねー!はぁ……!はぁ……!はぁ……!おい!マネージャー!煙草!」

スタッフ「米山さん!まだマイク入ってます!」

米山「またぁ!?(舞台上手から登場)皆ー!今のはマネージャーさんの煙草の事だからねー!?(舞台上手に退場)はぁ……!はぁ……!はぁ……!クソッ!ふざけんな、スタッフ……!恋人のホスト君は待機してくれてるんだろうな!?」

スタッフ「米山さん!まだマイク入ってます!」

米山「うっそぉ!?(舞台上手から登場)皆ー!皆の事は大切な恋人だからねー!(舞台上手に退場)はぁ……!はぁ……!はぁ……!おい!スタッフ!」

スタッフ「はい!」

米山「(スタッフと共に舞台上手から登場)リハでこんな事あるか!」















―――終わり

『手術とホームラン』



・登場人物


 北島(野球選手)

 藤原(医者)



・舞台


 病院の一室



・衣装


 北島・・・野球のユニフォーム

 藤原・・・入院着






 明転。


 病院の一室。ベッド一つに椅子一つ。

 藤原、ベッドの上で横になっている。


藤原「あーあ、明後日の手術、嫌だなぁ~」


 SE、ノックの音。


藤原「はーい。どうぞー?」

北島「(舞台上手から登場)こんにちは。藤原君」

藤原「あ、あ、あ!北島選手だ!何でここに!?」

北島「君が明後日手術だって聞いてね。お母さんやこの病院のお医者さん、看護師さん達からエールを送ってくれって言われて来たんだ」

藤原「そうなんだ!ありがとう!」

北島「どうだい?調子は」

藤原「うん……あまり良くないんだ……」

北島「体調が悪いのかい?」

藤原「いや、メンタルかな。明後日の手術が怖いんだ」

北島「でも手術をしないと、病気は治らないんだろ?だったらやらなきゃ!」

藤原「分かってる……!分かってるけど、怖いんだ……!」

北島「じゃあさ、俺が明日の試合でホームランを打ったら、手術をする。どうだい?」

藤原「えぇ!?良いの!?」

北島「あぁ、良いとも。約束の代わりに、このキャップをあげよう」

藤原「これって……!?ドンジャースのキャップじゃない!?北島選手が入籍してずっと身に着けていたやつじゃないの!?」

北島「良いんだ。君が手術を怖がってるって聞いて、これを渡して勇気付けようと思ってたんだ」

藤原「ありがとう!北島選手!約束だよ!?」

北島「あぁ、約束だ(指切りげんまんをする)。ところで明後日はどこを手術するんだい?」

藤原「心臓の交換手術……」

北島「あぁ……それは怖いよね……でも大丈夫!ここのお医者さんは腕はピカ一だからね!」

藤原「そう言われると恥ずかしいなぁ……」

北島「ん?どういう事?」

藤原「僕、そこまで評価されてるって知らなかった。うん。分かった!この手術、するよ!」

北島「ちょっと待って?君が手術を受けるんだよね?」

藤原「いや、僕が執刀するんだ」

北島「は?じゃあ、君、医者なの?」

藤原「そうだよ?」

北島「じゃあ怖いってのは……?」

藤原「こんな責任重大な手術を受けるのは怖いんだよ……もし失敗したら、解雇処分だけじゃ済まなくなるし……」

北島「えぇ……?で、でも、ここ病室だし……」

藤原「ここは仮眠室代わりに使ってる病室なんだ」

北島「入院着、着てるし……」

藤原「仮眠とはいえ寝るのにパジャマが無いと眠れないから借りてる」

北島「ちなみに君、いくつ?」

藤原「三十五」

北島「いい大人じゃないか!何を駄々を捏ねてんだ!?」

藤原「嫌な仕事があるくらい誰にでもあるでしょ!?」

北島「気持ちは分かる!でも君は医者だろう!?だったら仕事を全うしろよ!」

藤原「嫌なものは嫌なんです!」

北島「好き嫌いで仕事は出来ないだろ!」

藤原「でも野球選手だって仕事は選ぶでしょう!?」

北島「大体は受けるよ!そんな体を張る事じゃなければ!」

藤原「僕だって嫌だよ!こんな手術、成功出来るかどうかなんて分からないんだから!」

北島「俺だってそうだよ!勝つか負けるか分からないんだから!」

藤原「でもたかが一試合負けたくらいじゃ誰も死なないでしょ!?」

北島「それはそうだけど!」

藤原「僕は失敗したら職を失うんだ!」

北島「誠心誠意やれば大丈夫だろう!?」

藤原「しかも今回は何時間掛かるか分からない大手術なんだから!」

北島「俺だってそうだよ!何回裏まで行くかなっていつも思ってるんだから!」

藤原「でも最高十二回で終わりって決まってるじゃないか!僕は何時間掛かるか分からないんだよ!?」

北島「ああ言えばこう言う……!とにかく、仕事をしろ!良いな!?」

藤原「北島選手がホームラン打ったらね!」

北島「俺がホームラン打たなくても手術はしろ!」


 暗転。


 SE、カキーン!という野球のバットと弾が当たる音。

 観客の声も。


実況「北島選手!これはデカい!デカい!デカーい!入った!ホームラン!本日、三回目の」ホームランだー!」


 明転。


 病院の一室。

 藤原、板付き。ベッドの側で入院着を着ている。そしてベッドに倒れるように乗る。


藤原「ふぅ~!疲れた~!」

北島「(舞台上手から登場)やぁ」

藤原「北島選手!また来てくれたの!?」

北島「一応、昨日ホームランを打ったからね。手術はどうだった?」

藤原「成功だよ!」

北島「それは良かった」

藤原「いやぁ~!流石、北島選手だ~!」

北島「いやいや、君の実力だよ」

藤原「ありがとう!じゃあ明日は胃の手術と腸の手術があるから頑張るね!」

北島「あぁ、じゃあまたホームラン打たなきゃな……でも試合は明後日だし……」

藤原「それなら大丈夫!昨日、三回ホームラン打ったでしょ!?あれで後、二回は手術が成功すると思う!」

北島「あ、貯金式なんだ?」
























―――終わり

『覚え違い』



・登場人物


 小川

 藤原



・舞台


 公園






 明転。


 公園。ベンチが一つ。

 小川、藤原、舞台上手から登場。


藤原「ちょっとここで一休みしようか」

小川「そうだね」

藤原「あの映画、面白かったね」

小川「そうだねー。あんなプロポーズ受けてみたいよねー」

藤原「……そうだね」

小川「あ、グミいる?」

藤原「あぁ、ありがとう。あ、美味しい。これ」

小川「でしょー?最近ハマってるんだー」

藤原「ヨギボーの味がする」

小川「ハリボーでしょ?」

藤原「あ、そうそう。それそれ」

小川「ヨギボーはクッションだよ。何で間違えたの?」

藤原「ちょっと緊張しちゃって」

小川「何に?」

藤原「いや、別に」


 ボールが舞台下手から転がってくる。


子供「(声のみ)すみませーん。ボール取って下さーい」

藤原「あいよー(ボールを舞台下手に投げる)子供が楽しそうに遊んでら」

小川「そうだねー」

藤原「まるで阿鼻叫喚だね」

小川「元気いっぱいって言ってくれる?」

藤原「あ、そうそう。それそれ」

小川「全く……あー、子供かぁ……将来は二人くらい欲しいなー」

藤原「男の子?女の子?」

小川「別にどっちでも良い。元気な子が生まれてくればそれで」

藤原「そっか……な、なぁ、美幸!?」

小川「な、何?」

藤原「俺達、付き合ってもう五年だよな?」

小川「そ、そうだね……?」

藤原「同棲して三年。もうそろそろ良いんじゃないかなって思って!」

小川「え、それって……?」

藤原「君を幸せにしたい!だから……!」

小川「……うん」

藤原「俺と一緒に死んでくれ!」

小川「……一緒の墓に入ってくれ、じゃなくて!?」

藤原「あ、そうそう!それそれ!」

小川「何で今ここで死ななきゃならないのよ!?」

藤原「結婚は人生の墓場って言うし!」

小川「誰が上手い事を言えと!?それにしても覚え違いが酷過ぎる!よくそれでプロポーズしようと思ったね!?」

藤原「緊張しちゃって……」

小川「やり直しね」

藤原「え?」

小川「プロポーズ、やり直し。次にちゃんとやってくれたらOKしてあげる」

藤原「わ、分かった!」

小川「次はそんなに緊張しなくて良いからね?もうOK出してるんだし」

藤原「そ、そうだね……分かった!あ、そうだ!これを受け取ってくれ!」

小川「え?何?えっ!?指輪!?」

藤原「日給三日分の指輪だ!受け取ってくれ!」

小川「タイミーかよ!?日給いくらよ!?」

藤原「三万五千円!」

小川「日給三万五千円って何?とび職か何か?」

藤原「治験!二週間やってた!」

小川「あっそ。まぁ受け取っておこうかな」

藤原「じゃあ俺と、結婚して下さい!」

小川「まだちょっと早い。後日、改めてかな」

藤原「分かった!匙は投げられたしね!」

小川「諦めたの!?」

藤原「何を?」

小川「プロポーズ!」

藤原「諦めてないよ!?」

小川「じゃあ投げるのは匙じゃないよ!賽だよ!」

藤原「あ、そうそう!それそれ!賽は投げられた!」

小川「吃驚した……叱ってる間にプロポーズに諦めたのかと思った……」

藤原「でもどうせOKならもうこれで良くない?」

小川「雰囲気が大事なの。それよりも私なんかで良いの?私、別に美人って程でもないし……」

藤原「そんな事無いよ!?人間の顔じゃないから!」

小川「罵倒してる!?それを言うなら人間は顔じゃないよ!だよ!」

藤原「そうそう!それそれ!八方美人だしね!」

小川「薄幸美人ね!?まぁあながち間違ってもないけど!」

藤原「じゃあ良いじゃん!」

小川「良くない!とにかくこの話はお終い!」

藤原「分かったよ……何でそんな天ぷらを揚げてるんだか……」

小川「天ぷらを揚げる……?あ、怒髪冠を衝く、ね!?ドハツ天って天ぷらだと思った!?」

藤原「違うの?」

小川「全然、違うわ!もう本当にアッタマきた!私、帰る!」

藤原「待ってよ!そんな砲丸投げみたいにならないで!」

小川「砲丸投げ……投げやりって言うんだよ!」

藤原「そうそう!それそれ!」

小川「字も意味も違うし!一遍、日本語を勉強してから出直してきなさい!」






―――終わり

『キスマーク』



・登場人物


 美幸

 正将



・舞台


 自宅



・衣装


 正将・・・赤いワイシャツにスーツ






 明転。


 自宅。テーブル一つに椅子二つ。

 美幸、板付き。欠伸をしている。


美幸「あー、スランプだなぁ……」


正将、舞台下手から登場。


正将「ただいまー……」

美幸「おかえりなさい。今日も遅かったのね」

正将「あぁ、まぁ、うん……」

美幸「あら?そのワイシャツどうしたの?朝は白いやつだったのに。新しく買ったの?」

正将「いや、朝のだよ」

美幸「じゃあ何でそんなに赤いの?」

正将「……もう隠し切れないな」

美幸「え?」

正将「ちょっと話がある」

美幸「何?改まって」

正将「まぁまぁ、良いから……あのな。美幸に言ってなかった事があるんだ」

美幸「だから何?」

正将「俺、浮気してたんだ……」

美幸「え?」

正将「ここ一週間くらい、残業って言って帰りが遅かったろ?」

美幸「うん」

正将「実は俺、浮気してたんだ……」

美幸「え、あの、それとワイシャツに何の関係が……?」

正将「このワイシャツの臭いを嗅いでくれ」

美幸「……化粧品の香りがする」

正将「これ、全部、口紅なんだ」

美幸「は?」

正将「キスマークを付けられたから、洗ったんだ。でも、落ちなくて……ならいっその事、口紅で全部赤くすれば良いと思ったんだよ」

美幸「……あ、それで赤いし、化粧品の香りがしたんだ?」

正将「はい……」

美幸「ちなみになんだけど、相手って誰?」

正将「会社の同僚です……」

美幸「会社の同僚……離婚する?」

正将「いや、もう今日で別れてきました……もう二度としないから、別れないでほしいです……」

美幸「まぁ、反省してるならそれで良いけど」

正将「怒ってないの?」

美幸「何で?」

正将「何か冷静だから」

美幸「怒ってるよ?でも怒ってるベクトルが違う」

正将「どういう事?」

美幸「私、全く気付かなかったから、墓場まで持って行ってほしかった」

正将「でもそれじゃあ俺の気が治まらなかったんだ」

美幸「アンタはそれで良いかもしれないけど、こっちはモヤモヤする。何でそれが分からないの?」

正将「でも罪を隠しておくのは悪い事だと思って」

美幸「じゃあ逆に聞くけど、私が仮に浮気していたとして、それをアンタが気付かずにいた時に私がカミングアウトしたらどう思う?」

正将「……黙っててほしかったと思います」

美幸「そうでしょ?知らぬが仏ってやつよ」

正将「そうですね。はい」

美幸「そもそもさぁ、何で口紅で塗りたくったの?」

正将「キスマークを隠す為に……」

美幸「洗えば良かったじゃない」

正将「洗っても落ちなかったんだ……」

美幸「じゃあ代わりのワイシャツ買えば良かったじゃない」

正将「でもこのシャツは残っちゃうし……」

美幸「捨てれば良いでしょ」

正将「捨てる理由もどうすれば良いか……」

美幸「破れちゃったとか適当な理由がいくらでも作れるでしょ」

正将「それにどこで買えば良いの?もうこんな時間だし……」

美幸「今ならコンビニでも買えるでしょ」

正将「そうか……!そうすれば良かったのか……!」

美幸「馬鹿かな?」

正将「浮気をするような馬鹿です……」

美幸「浮気っていうか、遊びだよね」

正将「はい……」

美幸「明日は休みだし、性病の検査して、問題ないなら離婚はしない。それで良い?」

正将「ありがとうございます……!」

美幸「これに懲りたらもう浮気なんてしない事ね」

正将「はい……申し訳ありませんでした……」


 暗転。


 明転。


 自宅。

 美幸、板付き。正将、舞台上手から登場。


正将「ただいま!」

美幸「おかえりなさい。検査どうだった?」

正将「大丈夫だった!陽性!」

美幸「大丈夫じゃないじゃないの!」

正将「え?だって明るい意味合いの陽だから大丈夫だったって事じゃないの?」

美幸「陽性は病気だったって事!」

正将「あ、そうなの!?間違えてた……」

美幸「薬とか貰わなかった?」

正将「貰ったよ?」

美幸「じゃあ分かりなさいよ!」

正将「ストレス用のビタミン剤的な物だと思ってたんだよ……」

美幸「ストレス!?私との生活がストレスだったって言うの!?」

正将「違うよ!仕事のストレスだったり浮気相手との別れ話によるストレスだよ!」

美幸「ちなみにだけど、その浮気相手とは手切れ金とか渡したの?」

正将「百万円、渡しました……」

美幸「これから絶対それで集られるわよ?」

正将「あ、そうか!じゃあ転職した方が良いのかな……?」

美幸「今の内にそうした方が良いかもね。遠くに引っ越そう?」

正将「そうだな……」

美幸「良い?次は無いからね?」

正将「はい……」


 暗転。


 明転。


 自宅。

 美幸、板付き。正将、舞台上手から登場。


正将「ただいま……」

美幸「おかえんなさい。転職してからまた帰りが遅くなったね。また浮気?」

正将「いや、その……まぁ、浮気、です……」

美幸「懲りないねぇ、アンタも。本当に離婚するよ?」

正将「いや、ちょっと聞いてくれないか?」

美幸「何?」

正将「この人なんだけど……(スマートフォンを取り出す)」

美幸「あら、美人ねぇ。こういうのが良いんだ?ふーん?」

正将「それがさぁ……」

美幸「何?」

正将「これ、男なんだよね……」

美幸「は?」

正将「男の娘と書いてオトコノコってやつ。この風俗にハマっちゃって……」

美幸「……あ、ふーん……?」

正将「浮気、だよな……?ごめん……」

美幸「まぁ同性なら許してあげるよ。その代わり……」

正将「その代わり……?」

美幸「アンタ達、二人の事を同人誌にして良い?」

正将「それで気が晴れるならそれで」

美幸「これが売れたら慰謝料として受け取るわね」

正将「はい……」

美幸「じゃあ私、執筆作業に入るから(舞台下手に退場)」

正将「はい……お疲れ様です……」

美幸「フヒッ!フヒヒヒヒヒヒヒ!インスピレーションが止まんねぇ~!」

正将「いいネタが提供出来て良かった。一件落着!」


―――終わり

『勘違い』



・登場人物


 北島

 藤原



・舞台


 大学の食堂






 明転。


 大学の食堂。テーブル一つに椅子二つ。

 北島、藤原、板付き。


藤原「あー、どうしよっかなー?」

北島「どした?」

藤原「薄毛治療しようかと思っててさー」

北島「え?そんなフサフサなのに?」

藤原「バイト先の好きな子がさー、老け専なんだよねー」

北島「あー?成程?でも薄毛治療したら髪がフサフサになるだけじゃね?」

藤原「え?薄毛になる治療じゃないの?」

北島「違うよ?薄毛を治す治療だよ?」

藤原「あ、そうなの?勘違いしてた。あ、じゃあ老けるように白髪染めとかどうかな?」

北島「白髪染めねぇ……別にそこまで白くないじゃないか」

藤原「え?白髪になる為にするもんじゃないの?」

北島「違うよ?白髪を別の髪色に染める為のものだよ?」

藤原「あ、そうなの?勘違いしてた。あ、もうそろそろバイトの時間だ。怠いなぁ……」

北島「もう何連勤してんの?」

藤原「八連勤かな?」

北島「じゃあもう休んで良いだろ」

藤原「そうだな。じゃあ頭痛薬を飲んで仮病にするか」

北島「え?それ飲んだら頭痛があったら止まっちゃうよ?」

藤原「え?だって頭痛になる為の薬じゃないの?」

北島「違うよ?頭痛を抑える為の薬だよ?」

藤原「あ、そうなの?勘違いしてた」

北島「よくまぁ、そんなに勘違いしたまま今まで生きてこれたな?」

藤原「使う機会が無かったから」

北島「確かに薄毛治療も白髪染めもその歳じゃなかなか使わないもんな。でも頭痛薬はどうなのよ?普段から使うでしょ?」

藤原「病院で風邪薬を貰ってたから」

北島「あー、成程?」

藤原「腹減ったな。次の講義まで時間あるし、購買部で何か買ってこようかな?」

北島「じゃあ俺にもジュースと何か菓子パン買ってきて?はい、お金」

藤原「はいよー(舞台上手に退場し、菓子パンとジュースを持って舞台上手から登場)。お待たせー」

北島「サンキュ」

藤原「それにしても凄いよなー」

北島「何が?」

藤原「購買部の人。大学もあるのに働くなんて凄いよなー」

北島「大学もあるって?大学で働いてるんじゃん?」

藤原「いや、大学の講義を受けつつ部活として働くなんて凄いなと思って」

北島「違うよ?あれは普通に仕事で、生徒じゃないよ?」

藤原「あ、そうなの?勘違いしてた」

北島「また勘違いか……」

藤原「あ、あれは勘違いじゃないよな?百人一首。体は百人なのに首が一つしかない、化け物」

北島「違うよ?百人の詩人が歌を詠んだ物だよ?」

藤原「あ、そうなの?勘違いしてた」

北島「全く、お前って奴は……」

藤原「え?じゃああれは?紫式部って紫式って流派の部活だよな?」

北島「違うよ?紫式部は百人一首の歌を詠んだ内の一人だぞ?」

藤原「あ、そうなの?勘違いしてた」

北島「学校で習ったろ?」

藤原「記憶に無い」

北島「一般常識」

藤原「また一つ賢くなりました」

北島「頭が痛くなってきた……」

藤原「あ、頭痛薬あるよ?」

北島「頭が痛くならない薬だよな?」

藤原「多分」

北島「……あ、痛み引いてきた」

藤原「それは良かった」

北島「ちょっとトイレ行ってくる(舞台下手に退場)」

藤原「おう……これ、本当に頭痛が起こる毒薬らしかったんだけどな。プラシーボ効果ってやつか」







―――終わり


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