コント集30
コント集30
291・・・・着痩せ
292・・・・大変な事
293・・・筋トレ
294・・・おととい来やがれ
295・・・音
296・・・見て良い?
297・・・男子水泳200m自由形
298・・・日本の陶器
299・・・365日酔い
300・・・アイディア
『着痩せ』
・登場人物
北島
松本淳A(以降:淳A、男、デブ)
淳B(男)
淳C(男)
淳D(男)
淳E(男)
淳F(女)
・舞台
服屋
明転。
服屋。服が並んでいる。舞台中央奥に試着室。裏に繋がっている。
北島、淳A、舞台上手から登場。
淳A「悪いな。北島。俺の服を選んでもらう事になって」
北島「良いよ別に」
淳A「俺、服のセンス無いからお前に頼むわ」
北島「分かった。でもここ、松本の体に合うサイズの服ってあるか?」
淳A「まぁ俺、意外と着痩せするタイプだから大丈夫だよ」
北島「限度があるだろー。これとか着れる?一応スリーLだけど」
淳A「とりあえず着てみるわ(試着室に入る)あ、適当に見繕ってくれるー?」
北島「分かったー。あー、色々あるもんだなぁ」
淳A「着替え終わったよー(出てくる)」
北島「あー、何か違うなぁ。こっち着てみてくれる?」
淳A「これ?小さくない?」
北島「小さかったら大きいの探すよ」
淳A「分かった(閉める)」
北島「うーん。悩むなぁ」
淳A「着替え終わったよー」
北島「おー。どんな感じー?」
淳B「こんな感じ」
北島「……どなたですか?」
淳B「何、言ってんの?松本だよ」
北島「いや、人が違うみたいだから……」
淳B「言ったろ?俺、着痩せするタイプだって」
北島「いやぁ~……服でここまで変わるかねぇ……?」
淳B「で、どう?」
北島「それも良いけど、こっちとかどう?」
淳B「分かった(閉める)」
北島「松本……だよな?」
淳A「着替え終わったよー」
北島「おー」
淳C「どう?」
北島「……大分イメージ変わるなぁ……」
淳C「似合ってない?」
北島「いや、まぁ……似合ってはいるけど……」
淳C「マジか。流石、北島だな。お前にコーディネート任せて正解だったわ」
北島「こっちも着てもらって良い?」
淳C「分かった(閉める)」
北島「着痩せとかそんな次元じゃないよな……?」
淳A「着替え終わったよー」
北島「おー」
淳D「どう?」
北島「えぇ……?」
淳D「似合ってない?」
北島「いや、まぁ、似合ってはいるんだけどさ……」
淳D「じゃあこれも買うか。他は何かある?」
北島「あー……じゃあこれは?」
淳D「分かった(閉める)」
北島「体型だけじゃなくて顔も身長も声も違うんだよなぁ……」
淳A「着替え終わったよー」
北島「おー」
淳E「どう?」
北島「あー……いや、まぁ……」
淳E「似合ってない?」
北島「いや、凄く似合ってるけど……」
淳E「そかそか。じゃあこれも買うわ」
北島「試しにさぁ、これ着てみてくれる?」
淳E「えーっ!?これ女物じゃん!」
北島「試しで良いからさ」
淳E「絶対入んないってー(閉める)」
北島「流石にね?流石にだよな?」
淳A「着替え終わったよー」
北島「おー。ここまではいつもの松本なんだよな」
淳F「どう?」
北島「……いよいよ誰だよ!?」
淳F「何が?」
北島「体形が変わってるとかそういう問題じゃねぇ!性別、変わっちゃってるじゃねぇか!」
淳F「えぇ?俺は俺だよ?松本淳だよ?」
北島「違うだろ!良いから元の服に着替えて来い!」
淳F「わ、分かったよ……何をそんなに怒ってるんだよ……?(閉める)」
北島「怖いわ、アイツ!」
淳A~F「(出てくる)」
北島「えぇ!?やっぱりおるんかい!」
淳A「どの松本淳が良いと思う?」
北島「え~……?まぁ、ありのままのお前が一番、良いと思う」
淳A「そうか?じゃあ皆、帰って良いよ」
淳B~F「はーい(舞台上手に退場)」
淳A「じゃあとりあえず全部、買うわ」
北島「松本」
淳A「何?」
北島「見分けが付かなくなるから、一着目以外は着用禁止な」
―――終わり
『大変な事』
・登場人物
北島
藤原
・舞台
車
SE、警報音。
NA「緊急事態発生!ダムが決壊します!」
明転。
車。座席二つ。
北島、藤原、舞台上手から登場し、車に乗り込む。
北島「早く行くぞ!」
藤原「はい!」
北島「このままダムが決壊して水が村に行ったらどうなる!?」
藤原「大変な事になります!」
北島「それじゃあ分からねぇよ!」
藤原「あ、えっと、重大な事になります!」
北島「だから分からねぇって!」
藤原「凄い事になります!」
北島「具体的にどうなる!?」
藤原「深刻な事になります!」
北島「だからどうなるんだってば!?」
藤原「異常な事になります!」
北島「もっと分かりやすく!」
藤原「重篤な事になります!」
北島「さっきから答える気あるのか!?」
藤原「こっちだってテンパりながら急いで運転してるんですよ!?そりゃ詳しく言える訳無いじゃないですか!」
北島「今、喋ってるだろ!」
藤原「じゃあ何を答えれば良いんですか!?」
北島「被害の規模とかだよ!」
藤原「だから大変な事になります!」
北島「だから分かんねぇって!大半の人が巻き添えになって、村は沈むとかそういうのだよ!」
藤原「分かってるなら聞かないで下さいよ!」
北島「……それもそうか。避難勧告は出したのか!?」
藤原「ダムの者が手配済みです!」
北島「皆、避難出来たのか!?」
藤原「こちら藤原!村民は!?」
NA「今、最後の村人が避難しました!こちらも今から避難します!」
藤原「分かった!だ、そうです!」
北島「そうか……村が沈む事にはなるが、村民が皆、避難出来たのはひとまず安心だな……」
藤原「はい……」
北島「大変な事になったな……」
藤原「ほらー!『大変な事』でしょう!?」
北島「何?」
藤原「俺が言った通りの事を今、北島さんが仰ったじゃないですか!」
北島「まぁ、言ったけど!?」
藤原「わざわざ言わなくても分かる事を何で聞いたんですか!?」
北島「具体的にどうなるか聞きたかったんだよ!」
藤原「全部、自分で仰ったじゃないですか!『大半の人が巻き添えになって、村は沈む』って!」
北島「それが!?」
藤原「分かり切ってる事を何で聞いたんですか!?」
北島「一応確認の為だよ!」
藤原「俺だってこんな事態を想定してなかったんですから具体的にどうなるかなんて分かりませんよ!」
北島「大体の想像は着くだろ!?」
藤原「そっちが想像出来てるならこっちが言わなくても分かるでしょ!?」
北島「それはそうだけども!一応の確認だよ!」
藤原「何の確認ですか!?」
北島「俺の解釈と一致しているかどうかだよ!」
藤原「じゃあまずそっちから言って下さいよ!」
北島「それは悪かった!」
藤原「いいえ!」
北島「あ!水が!」
藤原「流れていく!」
北島「村民達は皆、避難は出来たんだよな!?」
藤原「はい!」
北島「俺達も早くここから逃げないと、巻き込まれるぞ!」
藤原「分かってます!」
北島「フルスロットル!」
藤原「これで精一杯です!」
北島「じゃあそこの脇道に入れ!」
藤原「えっ!?どこですか!?」
北島「あっ!通り過ぎた!」
藤原「このままじゃ!」
北島「俺達!」
北島藤原「大変な事になるー!」
北島「あっ!そこだ!そこを曲がれ!」
藤原「はい!」
北島「……何とか逃げ切れたな……」
藤原「そうですね……」
北島「あぁ、村が……」
藤原「沈んでいく……」
北島「でも皆、無事だったんだ」
藤原「これから復興に向けて、頑張りましょう」
北島藤原「大変な事になったぞー……」
―――終わり
『筋トレ』
・登場人物
康介(息子)
美幸(母親)
・舞台
自宅
康介「はぁ……!はぁ……!はぁ……!」
明転。
自宅。舞台上手、廊下。舞台下手、康介の部屋。襖がある。康介の部屋には布団がある。
康介、パンツ一丁で筋トレしている。途中、鼻を嚙む。美幸、舞台上手から登場。
美幸「……ん?」
康介「(筋トレを止めて布団の上で寝っ転がる)はぁ……!はぁ……!はぁ……!」
美幸「あら、あら、まぁ、まぁ……」
康介「(舞台上手に向かう)はぁ……!はぁ……!はぁ……!あ、母さん?」
美幸「あ、ごめんね?康介」
康介「何が?」
美幸「お母さん、何も見てないから」
康介「だから何が?」
美幸「思春期だもんね。男の子だもんね」
康介「え?何?」
美幸「溜まってるよね。仕方ないもんね」
康介「マジで何?」
美幸「生理現象だもんね」
康介「は?」
美幸「ティッシュはちゃんとゴミ箱に捨てて、袋をちゃんと閉めるのよ?」
康介「待って、待って?何の話?」
美幸「オカズは私に見えない所に隠してね?」
康介「母さん?」
美幸「あ、でも今はスマホがあるのか」
康介「誤解してるよ?」
美幸「大人のサイトはまだ早いから、せめて本にしておきなさいね?」
康介「ちょっと、ちょっと!」
美幸「もしタイミングが悪かったらいけないから、次からは声掛けするわね」
康介「マジで何、言ってんの!?」
美幸「分かってる。お母さん、そういうのはお父さんで慣れてるから」
康介「あのさぁ……!」
美幸「もしオカズが足りないならお母さん、買ってきてあげるからね」
康介「母さん!?話を聞いて!?」
美幸「何?」
康介「母さん、何か勘違いしてるよ!?」
美幸「何が?」
康介「母さん、俺が致してると思ったでしょ!?」
美幸「違うの?」
康介「違うよ!」
美幸「じゃあ何で息、切らしてたの?」
康介「筋トレしてたの!」
美幸「じゃあ何でパンツ一丁なの?」
康介「汗で服が濡れたら気持ち悪いから!」
美幸「じゃあ何でティッシュが散乱してたの?」
康介「鼻炎持ちだから!」
美幸「成程……そういう言い訳も考えられるわね……」
康介「言い訳じゃないよ!?」
美幸「次からはそういう事にしておいてあげるね」
康介「だから違うって!」
美幸「別に生まれた時から見てるんだもの。今更、恥ずかしがる必要は無いのよ?」
康介「恥ずかしがってない!いや、今まさに恥ずかしいんだけど!」
美幸「男だけじゃないから。女もやるから安心しなさいね?」
康介「だから違うって!」
美幸「いつからやってたの?」
康介「え?つい一時間前だけど?」
美幸「何回やったの?」
康介「腕立て百回かな」
美幸「百回……若いって良いわね~」
康介「そういう行為は一時間で百回は無理だし死んじゃうからね?」
美幸「無理が出来るのは今だけよ。力加減を間違えないでね?」
康介「力を入れないと筋トレ出来ないだろ」
美幸「あら。それは駄目よ?あまり力を入れると本番で勃たなくなっちゃうから」
康介「そっちの心配はしなくていいから」
美幸「心配よ~?彼女さんと上手くいかなくなったら困るし」
康介「まだ将来の事を考えたりとかしてないから」
美幸「まぁ練習だしね?今の内にいっぱい出しておきなさい」
康介「汗を?」
美幸「ある意味、汗かもね」
康介「『ある意味』って何?」
美幸「汗、以外も汁を出すし」
康介「汁って言うな」
美幸「あ、もし彼女さん連れてくる事があれば事前に言ってね?お母さん、お父さんと泊りで出掛けてくるから」
康介「彼女はいません」
美幸「じゃあ彼氏!?あらぁ~!お母さん、何か嬉しいわぁ~!」
康介「息子のBLに興奮すんじゃないよ。ってかそもそも彼氏もいないし」
美幸「じゃあ何だったらいるのよ?」
康介「友達」
美幸「……あ、そういうお友達?」
康介「どの友達を思い浮かべてるの知らないけど、多分違うから」
美幸「まぁ遊びも程々にね?」
康介「してないよ」
美幸「一人遊びもそこそこにね?」
康介「……もういいよ。それで」
美幸「じゃあお風呂を沸かしたから入ってね~。明日からは精の着く料理を出すからね~」
康介「分かったよ!分かったから出てって!」
美幸「お盛んね~(舞台上手に退場)」
康介「全く……何なんだよ……?」
美幸「(舞台上手からプロテインを持って登場)康介~?」
康介「何?」
美幸「今日の晩御飯、ここに置いておくね」
康介「引き籠りじゃないんだから普通にリビングで食べるよ……って、何これ?」
美幸「プロテイン」
康介「何故……?あ、まぁ筋肉が付くから良いけど……」
美幸「タンパク質、いっぱい取らないとね!」
康介「まだ勘違いしてるのか!いい加減にしろ!」
―――終わり
『おととい来やがれ』
・登場人物
北島
藤原
枝村
西岡
・舞台
道端
明転。
道端。
北島、舞台上手から登場。
暗転。
北島「な、何だ?」
舞台下手がチカチカ光り、SE、「バチバチバチ!」という音。
北島「何!?何!?何!?」
明転。
北島、板付き。藤原、舞台下手から登場。
藤原「北島ぁ!」
北島「え?誰?お前」
藤原「明後日から来てやったぞ!勝負だ!」
北島「えぇ?本当に意味が分からない。誰だよ?お前」
藤原「お前が明後日、言ったんだ!『一昨日来やがれ』って!」
北島「馬鹿を言え。勝手に因縁付けるな」
藤原「馬鹿」
北島「は?」
藤原「馬ー鹿!」
北島「喧嘩、売ってる?」
藤原「お前が言ったんだろ。『馬鹿を言え』って」
北島「馬鹿と言えって言ったんじゃねぇよ」
藤原「とにかく勝負だ!」
北島「ふざけろ。何でそんな事しなきゃいけないんだよ?」
藤原「うぇーい!」
北島「は?」
藤原「うぇーい!」
北島「何だよそれ?」
藤原「お前が言ったんだろ。『ふざけろ』って」
北島「ふざけんなって意味だよ。お前、俺が言った事は何でも聞くつもりか?」
藤原「明後日、そう言われたからな。負けたら何でも言う事を聞くって」
北島「じゃあ失せろ。気分が悪い」
藤原「今日はまだ負ける前の日だからお前の言う事は聞かない!」
北島「今、言った三つは聞いたじゃねぇか」
藤原「叶えられる願い事だったからな!」
北島「お前、頭おかしいんじゃないか?何?タイムトラベルでもしてきたの?」
藤原「そうだよ!?」
北島「……頭、痛くなってきた」
藤原「大丈夫か?病院に行くか?」
北島「お前のせいだよ」
藤原「それは悪かった。でも勝負してくれ!」
北島「ちなみに何の勝負?」
藤原「ボクシング(グローブを投げる)」
北島「え?素人には殴れないんだけど……?」
藤原「安心しろ!俺もプロボクサーだ!(スマートフォンを見せる)」
北島「……あ、藤原正将さん?あのボクシングの?」
藤原「そうだよ!」
北島「でもフリーファイトは……」
藤原「何だ?怖じ気付いたのか?」
北島「何おう!?やってやろうじゃねぇか!」
藤原「行くぞ!」
北島「おう!」
北島、一発KOする。
北島「何だよ。あっさり終わったじゃねぇか」
藤原「くそぉ……!」
北島「(スマートフォンで救急に連絡する)もしもし?怪我人が一人、出ています。はい。えーっと、目の前にスーパーとコンビニと駐車場があります。はい。北島康介です。では」
SE、救急車のサイレンの音。
枝村、西岡、舞台上手から登場。
枝村「通報したのは貴方ですか?」
北島「はい」
枝村「じゃあ運びますね」
藤原「これで終わったと思うなよー!?(担架に乗せられ、舞台上手に枝村、西岡と共に退場)」
北島「何なんだよ全く……」
暗転。
明転。
二日後。道端。
北島、舞台上手から登場。藤原、舞台下手から登場。
藤原「北島!」
北島「何?もう退院したの?」
藤原「何を言ってる!?今日が初めましてだ!」
北島「……あ、本当にタイムトラベルしてきたんだ?」
藤原「訳の分からん事を言うな!勝負だ!」
北島「ボクシングの?」
藤原「よく分かったな!?」
北島「アンタ、藤原正将だろ?」
藤原「またよく分かったな!?」
北島「負けたら勝った方の言う事を何でも聞くって言うんだろ?」
藤原「またまたよく分かったな!?」
北島「悪いが気分じゃない」
藤原「何だ!?怖じ気付いたのか!?」
北島「カッチーン。分かった。やるよ」
藤原「(グローブを投げる)行くぞ!」
北島「おう!」
北島、一発KOする。
北島「やっぱり弱いな」
藤原「クッソォ……!」
北島「(スマートフォンで救急に連絡する)もしもし?北島康介です。またあの男です。同じ場所で。はい。では」
SE、救急車のサイレンの音。
枝村、西岡、舞台上手から登場。
枝村「通報したのは貴方ですか?」
北島「はい」
枝村「じゃあ運びますねー」
藤原「これで終わったと思うなよー!?(担架に乗せられ、舞台上手に枝村、西岡と共に退場)」
北島「おととい来やがれ。(舞台下手に向かう)……あ、ここで繋がるのかぁ」
―――終わり
『音』
・登場人物
北島
藤原
・舞台
道端
明転。
道端。
北島、藤原、舞台上手から登場。
北島「でさー。その時、枝村が馬鹿したんだよー」
藤原「えー?そうなのかー」
SE、雷のゴロゴロという音。
北島「あれ?雨か?」
藤原「あぁ、それ俺」
北島「え?」
藤原「俺の腹の音」
北島「え?何?どういう事?」
藤原「今、腹を下してる」
SE、雷が落ちる音。
北島「うわっ。近くで落ちたな」
藤原「だから俺の腹の音」
北島「今ピークって事?」
藤原「そう」
SE、救急車のサイレンの音。
北島「あれ?突然、救急車の音が鳴ったな。どこかで誰かが運ばれるのかな?」
藤原「あぁ、それ俺」
北島「え?」
藤原「俺の腹の音」
北島「あ、救急でヤバいって事?」
藤原「そう」
北島「すぐそこに公園があるからトイレ行って来いよ」
藤原「そうする(舞台下手に退場)」
北島「人間からあんな音するんだなぁ」
SE、音姫の音。
北島「今の公衆トイレって音姫着いてるんだなー」
藤原「いや、俺の腹の音ー」
北島「セルフで流れるのー?」
藤原「そうー」
SE、ベートーヴェン「運命」。
北島「何だ?急に音楽が鳴ったりして?」
藤原「ごめーん。北島ー。トイレットペーパーが無くなってるー」
北島「あ、ショックだったって事ー?」
藤原「そうー」
北島「えーっと……ティッシュペーパーで良いならあるけどー?」
藤原「止むを得ない。ティッシュペーパーくれー」
北島「はいよー(舞台下手に退場)」
SE、トイレの流れる音。
北島、藤原、舞台下手から登場。
北島「お前、色んな音が体から出るんだなー」
藤原「何かねー、最近になって突然、出るようになったんだよねー」
SE、バイクのブロロロ!という音。
北島「暴走族かな?」
藤原「あ、それ俺のおなら」
北島「まだ腹を下してるの?」
藤原「いや。出し切った。これは多分、余韻的なやつ」
北島「余韻って言うのか?」
SE、飛行機の飛ぶ音。
北島「飛行機が随分と低く飛んでるな」
藤原「それも俺のおなら」
SE、花火が上がる音と爆発音。
北島「花火大会でもあったのかな?」
藤原「これは俺のくしゃみ」
SE、クイズのデデン!という音。
北島「何かクイズの問題が出たな?」
藤原「何でこんな音が出るのかなー?っていう疑問が生まれた」
SE、ピンポーンという音。
北島「何か正解が出たな」
藤原「疑問が解決した」
北島「何でそんな音が体から鳴るんだ?」
藤原「俺、サイボーグなんだよね」
北島「あ、そうなの?」
藤原「最近アップデートされて色んな効果音が出るようになったのを今、思い出した」
北島「サイボーグもトイレって行くんだなぁ」
藤原「完全なロボットじゃないからね。部分的に機械だから」
SE、ピンポーンという音。
藤原「何か正解したな」
北島「俺だ」
藤原「え?」
北島「俺もサイボーグなんだよ。今の回答に納得した」
藤原「そっかー」
北島「サイボーグ同士、これからは効果音で会話していこうぜ?」
SE、ピンポーンという音が二回。
―――終わり
『見て良い?』
・登場人物
北島
藤原
・舞台
北島宅
明転。
北島宅。卓袱台一つに座布団二つ、テレビと冷蔵庫と洗濯機が一つずつある。
北島、板付き。藤原、舞台上手から登場。
藤原「風呂、上がったよー」
北島「おーう」
藤原「悪いな。終電、逃して泊めてもらう事になっちゃって」
北島「野宿されるよりは良いよ」
藤原「金さえあればネットカフェとかで一晩、明かすんだけどな」
北島「バイト代、出るのも来週で金が無いんだろ?」
藤原「すまんな」
北島「良いよ別に。俺とお前の仲だろ?」
藤原「ありがとう。あ、もうこんな時間か」
北島「寝る?」
藤原「いや、まだ起きてる。ちょっとテレビ見て良い?」
北島「良いよ」
藤原「ありがとう(テレビを見る)」
間。
北島「……テレビ観るんじゃないの?」
藤原「だから見てるじゃん」
北島「だってテレビ点けてないじゃん」
藤原「だから、テレビを見てるんだよ」
北島「……あ、番組を観るんじゃないんだ?」
藤原「そうだよ?」
北島「え?何の為にテレビ見てんの?」
藤原「家電が好きだから」
北島「あ、そうすか……」
間。
藤原「あー、面白かった」
北島「面白い……?」
藤原「ちょっと冷蔵庫、見ても良い?」
北島「別に良いけど……」
藤原「すまんな」
間。
北島「また眺めてるよ……」
藤原「嗚呼、良い冷蔵庫だ。洗濯機も見て良い?」
北島「良いけど……」
間。
藤原「嗚呼、素晴らしい洗濯機だ。どこの洗濯機?これ」
北島「このアパートに付いてるやつだよ。メーカーは知らん」
藤原「そうなのか」
北島「ってか家電、好きなのに一目見てどこのメーカーか分からんの?」
藤原「好きなだけで詳しくはないからね」
北島「あ、そうすか……」
藤原「さて、ちょっとスマホ見せて?」
北島「流石に嫌だよ」
藤原「良いじゃん。見るだけだから」
北島「……見るだけだな?」
藤原「触ったりしないから」
北島「……分かった。ほれ」
藤原「ありがとう」
間。
藤原「嗚呼、良いスマートフォンだ」
北島「何が楽しいんだよ?」
藤原「こう、フィギュアを眺めたりするのに近いかな?」
北島「あー。成程?何となく分かったよ」
藤原「ボーッと眺めてるだけで嫌な事とか全部、忘れられるんだよね」
北島「どれ。俺もやってみるか」
藤原「良いとも」
間。
北島「何となく分かったよ。家電の面白さ」
藤原「だろ?」
北島「ただ、動いてるところを見た方が、絶対にもっと面白うだろうなとは思った」
藤原「新しい着眼点だな」
北島「普通だよ」
―――終わり
『男子水泳200m自由形』
・登場人物
北島
藤原
・舞台
放送席
明転。
放送席。テーブル一つに椅子二つ。テーブルの上には「実況」と「解説」と書かれたプレートが置いてある。
北島、藤原、板付き。
北島「さぁ、始まりました。男子水泳200m自由形。今年もオリンピック出場を賭けて選手達が泳ぎます。実況はこの私、北島康介と、解説の藤原正将さんでお送り致します。藤原さん、宜しくお願い致します」
藤原「宜しくお願い致します」
北島「間も無く始まりますが、藤原さん。今年の注目はどの選手でしょうか?」
藤原「今回、初出場の枝村拓選手でしょう。突如として現れた、未知数の人物ですからね」
北島「期待は出来そうですか?」
藤原「それは始まってからでないと分かりませんね」
北島「そうですか。では、そろそろ始まります。見てみましょう」
SE、開始の音。
北島「さぁ始まりました。男子水泳200m自由形。今年はどんなレースになるのでしょうか?おぉっと!?何だ!?あの泳ぎ方は!?枝村選手のあの泳ぎ方は何ですか!?藤原さん!?」
藤原「分かりません」
北島「えっ!?」
藤原「私も初めて見ます……何なんでしょう?あの泳ぎ方は?」
北島「何て言うのでしょうか!?腕とか脚とかどんな動きをしてるのか一見、分かりません!何であれで進むんだ!?」
藤原「同時に回してスクリューみたいにしてるのは分かりますが、関節とかどうなってるんでしょうかね……?何か、曲がっちゃいけない方向に関節が曲がっているように見えます」
北島「そして何故か速い!第八レーンで水の抵抗が一番あるのにも関わらず、あのスピードは異常です!群を抜いて一位になっています!」
藤原「しかしあの泳ぎ方は無駄があり過ぎる……このままでは体力の消耗が激しくて終盤で疲れ切ってしまうのではないでしょうか?」
北島「他のクロールをしている選手達と違って明らかに挙動がおかしい!なのに速い!圧倒的に速い!このレース一体どうなってしまうのか!?早くも五十メートルのターンです!枝村選手のあの速さはどこから来るのか!?」
藤原「水泳選手は体の柔軟性が一般の方々より優れているのですが、あれは柔軟性を越えていますね……一体、何が起こっているのでしょうか……?」
北島「ターンしてからまた新しい泳ぎ方に変わりました!今度も何が起こっているのでしょう!?体を捩りながらドリルのように回転して進んでいます!一見、クロールの息継ぎの要領で進んでいるように見えますが、回転する意味はあるのかと思われる泳ぎ方です1」
藤原「あれは水を大量に飲み込んでしまう上に息継ぎも難しいでしょう……何故あれで成り立っているのか不思議でなりません……」
北島「百メートルのターンです!ここでまた新しい泳ぎ方を見せています!今度も何だ!?一見、背泳ぎのように見えますが、微動だにせず何故か頭を前ではなく、脚を前にして泳いでいます!」
藤原「ちょっとよく見て下さい!足首から先を細かく動かしています!あれで推進力を得ているんです!」
北島「やっと解説らしい事を話しましたね!藤原さん!」
藤原「他に何も言えませんからね!」
北島「百五十メートルのターンで、残り五十メートル!ここでもまた泳ぎ方を変えました!今度は何だ!?体を棒のようにして縦に回転しながら進んでいるぞ!?」
藤原「まるで残像がタイヤのホイールの様ですね……何故あれで進めるのか……不思議でなりません……底に足が着いてないのか、そこが気になりますね……」
北島「あっ!カメラ判定が出ました!足も手も底には着いていません!失格にはなりません!」
藤原「増々、以って不思議です……どこからあんな推進力が働くのか……」
北島「そして堂々の一位でゴール!しかし今、常任理事会が協議中です!困惑しているようです!」
藤原「でしょうね……これはどう判定するのか……それが気になりますね……」
北島「あっ!ここで速報です!枝村選手、これからは男子水泳200m自由形から男子水泳200m芸術形を新たに作り、次回の大会かからはそちらの種目にエントリーするとの方針です!」
藤原「まぁ、妥当ですね!」
北島「以上、男子水泳200m自由形でした!実況は北島康介と!」
藤原「解説は藤原正将でした」
北島「それでは来年のオリンピックでまたお会いしましょう!さようなら~!」
―――終わり
『日本の陶器』
・登場人物
北島
ジョン
藤原
・舞台
工房
明転。
工房。椅子一つに轆轤一つ。
北島、板付き。ジョン、舞台上手から登場。
ジョン「失礼します!」
北島「どなた?」
ジョン「ジョン・マッケンジーと申します!是非、私をこの陶器の工房で働かせて下さい!」
北島「日本語、上手だねぇ。どこの人?」
ジョン「コメリカです!」
北島「ここが陶器の工房ってどこで知ったの?」
ジョン「ネットです!」
北島「あぁ、広報の人がやってくれてたな。俺は口調こそ優しいだけど、厳しいよ?やっていける?」
ジョン「はい!頑張ります!」
北島「履歴書とか持って来た?」
ジョン「はい!これです!」
北島「ありがとう。一応、面接するからね」
ジョン「宜しくお願いします!」
北島「しかしもう作業着を着てくるなんてやる気あるねぇ」
ジョン「それだけ本気という事です!」
北島「そうかそうか……へー、ハーバード大学を出てるんだ?何でそんな凄い人がこんな小さい工房にやってきたの?」
ジョン「ここの陶器に憧れて来ました!」
北島「嬉しいねぇ。どこで知ったの?」
ジョン「トイレメーカーです!」
北島「……え?」
ジョン「とあるトイレメーカーでここの陶器の便器が母国でとても評判が良くて、ここにしようって決めたんです!」
北島「……あー……作ったねぇ。一時期」
ジョン「ここで働かせて下さい!」
北島「えっと……それはトイレメーカ―に就職した方が良いんじゃない?」
ジョン「いいえ!ここの工房が良いんです!ここの陶器に惚れて来ました!」
北島「他にも陶器は色々と作ってるんだけどなぁ……この壺とかどう?」
ジョン「どうでも良いです!」
北島「そんなハッキリ言わなくても……この湯呑は?」
ジョン「どうとも思いません!」
北島「そんなぁ……じゃあこの急須は?」
ジョン「どうかと思います!」
北島「どう思ってるの……?今は便器は作ってないけど、どうする?」
ジョン「また来るかもしれないですよね!?」
北島「まぁ、来るかもしれないけど、今はその予定は無いよ?」
ジョン「粘り強く待ちます!」
北島「えぇ……?そうまでしてウチで働きたいの?」
ジョン「はい!ここの陶器が良いんです!」
北島「えーっと、一応、修行として、小さい壺とかから作る事になるけど、それは良いのかい?」
ジョン「覚悟してました!」
北島「あ、そうですか……でも本当に便器が作れる機会はほぼ無いけど大丈夫?」
ジョン「大丈夫です!私が宣伝します!」
北島「うーん……やっぱり大手メーカーに行った方が確実に便器を作れると思うんだけど?」
ジョン「いえ!再三、申し上げているように、ここの便器が良いんです!」
北島「ウチの陶器をそこまで愛してくれてるのは嬉しいんだけど、便器かぁ……」
ジョン「誇って下さい!」
北島「いや、まぁ誇ってない訳では無いんだけど、他にも色々と作品を作ってるから複雑な気持ちというか……」
ジョン「大丈夫です!便器も立派な作品です!」
北島「……そうか。そうだよな。あれらも立派な作品だよな!そうだ!俺は皆が使える立派な作品を作ったんだ!気付かせてくれてありがとう!ジョン君!」
ジョン「じゃあここで働かせてくれますか!?」
北島「良いだろう!ウチの修業は厳しいぞ!?」
ジョン「望むところです!」
暗転。
明転。
工房。大量の大便器が無造作に置かれている。
北島、ジョン、板付き。
北島「便器を作ったは良いが、売れない……」
ジョン「とっても良い便器なんですけどねぇ……」
北島「お前のせいだぞ!」
ジョン「私のせいですか!?」
北島「お前が俺に変な自信を付けさせたからだろ!」
ジョン「だって売れるって思ったんですもの!」
北島「この在庫どうすんだよ!?」
ジョン「広報の人に任せれば良いじゃないですか!」
北島「加減ってものがあるだろ!」
ジョン「作ったのは師匠でしょう!?」
北島「それもそうだな!ごめんよ!」
ジョン「良いんですよ!」
藤原「(舞台上手から登場)あのー。お取込み中のところ失礼します。こちら、北島工房さんで宜しかったでしょうか?」
北島「え?あぁ、はい。そうですが?」
藤原「こちら名刺です」
北島「……あ、いつしかお世話になった便器メーカーさん?」
藤原「はい。藤原と申します。先日、海外で貴殿の便器が非常に人気になりまして。また作ってくれませんか?」
北島「は、はい!どうぞ!」
ジョン「良かったですね!師匠!」
北島「あぁ!」
藤原「で、新しい商品なんですけど……」
北島「あ、それならここに沢山あります!」
ジョン「いくらでも持って行ってください!」
藤原「あ、そうじゃなくてですね……」
北島「何ですか?」
藤原「新たに作ってほしいんです」
北島「え?だからここに沢山……」
藤原「いえ、大便器ではなくて、小便器を」
北島ジョン「えっ!?」
藤原「この度、海外でここの小便器を新たに売り出そうって話になったんですよ」
北島「え、あの、ついでにこの大便器も売ってくれませんか……?」
藤原「いえ。それはもう足りてるので大丈夫です」
北島ジョン「そんな……!?」
藤原「じゃあ詳しい話はまた後日という事で。私はこれで失礼します」
北島「何とか!何とか大便器も売って頂けませんか!?」
藤原「いやぁ~、まだ大丈夫です」
ジョン「オプションで売るとか!」
藤原「結構です。では失礼します(舞台上手に退場)」
北島「……どうする?これら」
ジョン「いっそ粉々にして小便器にしますか?」
北島「それは良いアイディアだな。よし!早速、取り掛かろう!」
ジョン「はい!(北島と共に舞台下手に退場)」
暗転。
明転。
工房。大量の小便器が無造作に置かれている。
北島、ジョン、板付き。
北島「とりあえず大便器を崩して、注文通りに小便器を作ったは良いものの……」
ジョン「場所、取りますねぇ」
藤原「(舞台上手から登場)ごめんくださーい」
北島「あ、藤原さん。どうも、どうも」
藤原「北島さん。ジョンさん。お久し振りです。ご用意は出来ていますか?」
北島「はい。こちらに」
藤原「おぉ!素晴らしい!では持って帰らせて頂きますね?」
北島「今回はどこの国で使われるんですか?」
藤原「コメリカです」
ジョン「おぉ!私の母国です!」
藤原「そうでしたね。そこの大会で使うんですよ」
北島「大会?何かの記念で使うんですか?」
藤原「いえ。そこで便器叩き割り大会を開くんです」
北島ジョン「はっ!?」
藤原「世界各国から便器を持ち寄って、それを叩いて壊す大会を開くんです」
北島「な、何の為に……?」
ジョン「あ、思い出した!母国では『便器を壊して便を肥料にしよう』って事でやってる大会です!」
北島「そんな事の為に私達の作品を壊すんですか!?」
藤原「そうですねー」
ジョン「ってかどうせ割るんだったら別に大便器でも良かったんじゃないんですか?」
藤原「男性陣の便器だけが足りなかったんですよねー」
北島「じゃあ別に私達の作品じゃなくても良かったんじゃ……?」
藤原「ここのは割れ方が派手って事でコメリカでは人気なんですよ」
北島「えぇ!?だって頑丈だから有名になったんじゃないんですか!?」
藤原「そんな事、一言も言ってないですよ?」
北島「ジョン!お前の国ではどう人気だったんだ!?」
ジョン「綺麗に割れる事で人気でした!」
北島「そんな事、一言も言ってなかったじゃないか!?」
ジョン「だって聞かれなかったんですもん!」
北島「普通、言うだろ!?」
ジョン「何で察しなきゃいけないんですか!?」
北島「郷に入っては郷に従え!」
ジョン「突然そんな事を言われても、流石に無理がありますよ!」
藤原「じゃあ、これら持って帰りますねー」
北島「あぁ!もう持って帰れ!」
藤原「料金はここに置いときますねー」
北島「いらねぇよ!馬鹿野郎!」
藤原「宜しいんですか?」
北島「こんな事で金を貰ってたら、また来るだろ!?」
藤原「まぁ、そうですね」
北島「手切れ金だ!馬鹿野郎!」
ジョン「そうだ!そうだ!」
北島「ジョン!お前も破門だ!」
ジョン「何でですか!?」
北島「何にも喋らなかったお前なんか信用出来ん!さっさと母国に帰れ!」
ジョン「分かりましたよ!今までお世話になりました!」
北島「すぐに帰れ!全く、どいつもこいつも俺を馬鹿にしやがって!(舞台下手に退場)」
藤原「……ジョンさん。良くやってくれましたね」
ジョン「はい。ミッションコンプリートですね」
藤原「難癖を付けて料金をタダにしてもらうつもりだったんですが……手間が省けました。これ、謝礼です」
ジョン「ありがとうございます。では私はこれで(舞台下手に退場)」
藤原「さて、次の便器メーカーを探しに行きますかね(舞台上手に退場)」
―――終わり
『365日酔い』
・登場人物
北島
藤原
・舞台
藤原宅
明転。
藤原宅。卓袱台一つに座布団二つ。
藤原、板付き。
SE、インターホンのチャイムの音。
藤原「はーい……」
北島「北島だー」
藤原「あぁ、開いてるから入ってきて良いよー……」
北島「(舞台上手から食べ物や飲み物の入ったビニール袋を持って登場)お邪魔しまーす。体調はどうだ?」
藤原「相変わらずだよ……」
北島「ほれ。いつものように飯と飲み物、買ってきたぞ」
藤原「すまないな……」
北島「気にすんなよ。それより大丈夫か?何かこの一年ずっと体調悪そうだけど」
藤原「そうなんだよな……」
北島「病院には行ったのか?」
藤原「昨日の朝に行ったよ……」
北島「何か病名は出たのか?」
藤原「病名って言うか何て言うか……」
北島「何だよ?」
藤原「二日酔いだって……」
北島「は?」
藤原「正確には365日酔いらしい……」
北島「え?何?連日、酒を飲んでたから二日酔いが覚めないって事?」
藤原「いや、一年前の酒がまだ俺の体の中に残ってるらしい……」
北島「はぁ?それは嘘だろ」
藤原「いや、マジなんだって……何か代謝があまりにも悪過ぎて、まだ残ってるらしい……」
北島「えぇ……?じゃあ水とか飲んでも意味無いの?」
藤原「そうらしい……薄まったとしても結局、吸収が悪くてずっと酔い続けるだけなんだってさ……」
北島「じゃあ今まで、その吸収率でどうやって生きてこれたんだよ?それじゃあ生まれた時からエネルギーが足りなくて死んでるだろ」
藤原「知らないよ……」
北島「『知らないよ』って……その体、病院で精密検査してもらって学会で発表してもらったら?」
藤原「もうされてる……」
北島「あ、そうなの?で、金とか貰ったの?」
藤原「貰った……」
北島「どれくらい?」
藤原「もう一生、働かなくても良いくらいの額……」
北島「あっそう……だから高校にも行かずダラダラ過ごしてたのか」
藤原「そうです……」
北島「薬は?」
藤原「去年、貰って飲んだ……」
北島「効いてきそう?」
藤原「去年よりは気持ち軽くなった……」
北島「そうか。まぁ明日も様子を来るから」
藤原「ありがとう……」
暗転。
明転。
藤原宅。
藤原、板付き。
SE、インターホンのチャイムの音。
藤原「はーい!」
北島「北島だー」
藤原「はいよー!(舞台上手に退場し、北島と共に舞台上手から登場)いらっしゃい!」
北島「元気そうだな」
藤原「去年の薬がようやく効いた!」
北島「でも一応、飯と飲み物は買ってきたから、何かの時の為に取っとけよ」
藤原「ありがとう!」
北島「で、元気そうだけど、この後どうする?」
藤原「外に出たい!」
北島「良いのか?病み上がりみたいなもんだろ?」
藤原「大丈夫!」
北島「そうか。まぁ、お前が良いならそれで……で、どこ行く?」
藤原「飲みに行こう!」
北島「学習しろ」
藤原「ノンアルで!」
北島「学習した」
―――終わり
『アイディア』
・登場人物
北島(作家)
藤原(記者)
・舞台
北島宅
明転。
北島宅。デスク一つに椅子二つ。
北島、藤原、板付き。
藤原「では録音させて頂きますね」
北島「はい」
藤原「では行きまーす……はい、それでは今、最も売れている、あの枝村賞受賞作家、北島康介先生にインタビューです。北島先生、宜しくお願いします」
北島「北島です。宜しくお願いします」
藤原「今回、枝村賞を受賞されたとの事で、今のお気持ちは如何ですか?」
北島「もう宙に浮いているような思いです。これまで作家人生、二十五年で突然、売れて自分でも吃驚しています」
藤原「この度の『デス・コーポレーション』のシリーズですが、今では珍しいショートショート風の一話完結物が本当に面白くて、私は今、先生に会えて感激しております」
北島「それは、それは。ありがとうございます」
藤原「設定は一貫していますが、毎回、違う魅力的な展開が続きますが、いつ、どこでアイディアが浮かぶんですか?」
北島「そうですねぇ……何気無い日常でふと思い浮かびますが、一番、多いのは、トイレですかね?」
藤原「トイレ、ですか?」
北島「はい」
藤原「意外ですね。テレビや雑誌、ネットなどの情報から来てるのかと思ってました」
北島「それらもありますが、やはり一番はトイレの時ですね」
藤原「何か理由等はあるのですか?」
北島「自分ではあまり意識してないのですが、おそらくなんですけど、多分、心が無になるからでしょうね」
藤原「心が無になる、ですか?」
北島「はい。トイレの時って基本的に何も考えないじゃないですか。だからその時に無意識に心の奥底や情報や記憶を整理してるんだと思います」
藤原「成程……つまりはうんこと一緒って事ですね?」
北島「え?」
藤原「無意識に体の中で作り出して、無意識に産む。まるでうんこじゃないですか?」
北島「いや、まぁ……ちょっと違いますね」
藤原「ではどういう?」
藤原「そうですねぇ……食事のようなものでしょうか?色んな物を食べて吸収して、自分の中で消化する。そこで生まれたのが作品なんです」
藤原「長い時間を掛けて外から来たものを吸収し、自分の中で消化する……そして外に出す。つまりはうんこと一緒なんですね」
北島「あ、いや、えーっと……あ、そうそう。こう、自炊みたいなものですかね?」
藤原「自炊ですか?」
北島「自分で作る時は食欲の事しか考えていないでしょう?一番リラックスしてる時にふと、思い浮かぶんです」
藤原「そうですねぇ。うんこしてる時って天敵から狙われる可能性があるからリラックスしてる時にしか出ませんもんね。やっぱりうんこと一緒じゃないですか?」
北島「あ、いや、えーっと……他に何か無いかな……?あ、そうだ。長距離走みたいなものですよ」
藤原「長距離走ですか?」
北島「はい。長距離走は練習でずっと長く走り続けて、いざ本番になったら心が無になる。ただ、ゴールを目指して一心に走り続ける。その先に辿り着いたのが、私で言う所の、作品なんです」
藤原「成程……長い時間ゆっくりと消化して、ぐるぐる回ってゴールに辿り着いたのが作品、と……つまりはやっぱりうんこと一緒ですね」
北島「あのー……?」
藤原「何でしょう?」
北島「何でそこまでうんこと一緒にしたいんですか?」
藤原「だってそう思ったので」
北島「こっちが散々例えを出してるのに、全部うんこにしたいのは何か訳でもあるのですか?」
藤原「いえ?特には」
北島「こっちが頑張って回答してるのに、何でうんこにしたがるんですか?」
藤原「だって最初にトイレの話をしたのは先生でしょう?」
北島「だってどこでアイディアが浮かぶのかって聞かれたから……」
藤原「うんこを連想させたのは先生ですよ?」
北島「あの、ちなみにこの取材、どこまで使うんですか?」
藤原「そうですねぇ……今のところ全部、文字起こししようと思ってます」
北島「止めて下さいよー!これじゃあまるで私がうんこを出してるだけの作家みたいになっちゃうじゃないですか!?」
藤原「え?違うんですか?」
北島「全然、違いますよ!私の作品は長年の努力の結晶だって言いたいんです!」
藤原「長年、食べ続けて出してきたのが作品なんでしょう?じゃあやっぱりうんこと同じじゃないですか?」
北島「あー!何もかもがうんこにされるー!」
藤原「先生自身、うんこなんじゃないですか?」
北島「は?」
藤原「うんこが生むモノはうんこって事なんじゃないですか?」
北島「じゃあ私がうんこなら読者は何なんですか?」
藤原「フンバエじゃないですか?」
北島「あー!止めてくれー!」
藤原「では取材は以上になります。この度はありがとうございました」
北島「待て、待て、待て!これ全部、使うつもりか!?」
藤原「はい。そうですが?」
北島「『そうですが?』じゃない!これじゃあ炎上しちゃうじゃないか!」
藤原「ヤケクソになれば良いじゃないですか?」
北島「誰が上手い事を言えと!?」
藤原「うんこを食べる程、飢えてませんが?」
北島「美味しいって意味の『うまい』じゃない!上手下手の『うまい』だよ!」
藤原「作家の方から『上手』と言われるなんて感激です」
北島「どこで感激してんだ!?とにかく、私の事はうんこの所以外を使ってくれ!」
藤原「そうすると食事をしてるか自炊してるか走ってるかの話しかありませんよ?」
北島「例えだけ拾ってどうするんだこの馬鹿!」
藤原「あ、ちなみにこれもまだ録音中ですからね?これも文字起こししたら本当に炎上しますね」
北島「あー!もう!分かったよ!好きなだけ書け!うんこについて!」
藤原「ありがとうございます。では私はこれで」
スポットライト、藤原に。
藤原「その後、北島康介先生の新書『デス・コーポレーション』のスピンオフ作品『ウン・コーポレーション』は前作を上回る売り上げを獲得したのだった」
―――終わり




