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コント集  作者: 河野吉田
PR
26/37

コント集26

コント集26 



251・・・・眼鏡

252・・・・少食

253・・・面白い話

254・・・焼き鳥

255・・・職探し

256・・・違い

257・・・良い意味で

268・・・カレーうどん

259・・・暴力

260・・・居座り強盗



『眼鏡』



・登場人物


 北島

 藤原



・舞台


 ルームシェアハウス






 明転。


 ルームシェアハウス。卓袱台一つに座布団二つ。

 北島、板付き。


北島「おーい。藤原ー?もう出るぞー?」

藤原「北島ー。ちょっと待ってー。眼鏡が無くてー」

北島「ルームシェアするまで知らなかったけど、お前よく物を無くすなぁ」

藤原「ごめんー。俺の眼鏡知らなーい?(舞台下手から登場)眼鏡、眼鏡……」

北島「おい、ベタな事してるんじゃないよ」

藤原「何?」

北島「頭に乗っかってるぞ」

藤原「あぁ、これお洒落」

北島「え?」

藤原「眼鏡、眼鏡……」

北島「それ、お洒落なの?」

藤原「そうだよ?」

北島「頭に眼鏡乗っけた上で眼鏡掛けるの?」

藤原「うん」

北島「へー……」

藤原「何?」

北島「いや、ダサいなって思って」

藤原「失敬な。雑誌に載ってた流行ファッションだぞ」

北島「あっそー、そんなのが流行ってんだ」

藤原「で、眼鏡、眼鏡……」

北島「これは?」

藤原「あぁ、それは胸ポケットに入れるやつ」

北島「どういう事?」

藤原「(胸ポケットに眼鏡を挿す)ハンカチみたいなものだ」

北島「それも流行のファッション?」

藤原「そう」

北島「へー……あ、これは?」

藤原「あ、それは上着の右ポケットに挿すやつ(上着の右ポケットに眼鏡を挿す」

北島「これは?」

藤原「それは上着の左ポケットに挿すやつ(上着の左ポケットに眼鏡を挿す)」

北島「これは?」

藤原「それはズボンの右ポケットに挿すやつ(ズボンの右ポケットに眼鏡を挿す)」

北島「これは?」

藤原「それはズボンの左ポケットに挿すやつ(ズボンの左ポケットに眼鏡を挿す)」

北島「これは?」

藤原「それはベルトに挿すやつ(ベルトに眼鏡を挿す)」

北島「これは?」

藤原「それは上着の内側のポケットに挿すやつ(上着の内側に眼鏡を挿す)」

北島「それ見えなくない?」

藤原「ふと見えた時にお洒落なんだ」

北島「あっそう……これは?」

藤原「それは右の靴下に挿すやつ(右の靴下に眼鏡を挿す)」

北島「これは?」

藤原「それは左の靴下に挿すやつ(左の靴下に挿す)」

北島「これは?」

藤原「それは右手に挿すやつ(右手のリストバンドに眼鏡を挿す)」

北島「これは?」

藤原「それは左手に挿すやつ(左手のリストバンドに眼鏡を挿す)」

北島「これは?」

藤原「それは帽子に挿すやつ(帽子に眼鏡を乗っける」

北島「頭に眼鏡を乗っけた上に帽子を乗っけて眼鏡を更に乗っけるの?」

藤原「そう」

北島「あっそう……あ、これは?」

藤原「それが遠視用の眼鏡だ」

北島「じゃあ行くぞ?」

藤原「待った。まだ眼鏡が足りない」

北島「まだあんの?」

藤原「うん。どこ行ったかな……」

北島「これは?」

藤原「あ、それは眼鏡の右に掛けるやつだ(眼鏡の右側に目眼鏡を掛ける)」

北島「眼鏡を掛けるんじゃないの?」

藤原「眼鏡に掛ける眼鏡」

北島「もう良い?」

藤原「まだある」

北島「もう良いだろ」

藤原「あと一つ」

北島「これか?」

藤原「そう、それそれ」

北島「何これ?」

藤原「眼鏡の左側に掛けるやつ(眼鏡の左側に眼鏡を掛ける)」

北島「もう良いよな?」

藤原「あ、外、寒い?」

北島「少し涼しいくらいじゃね?」

藤原「じゃああれ持ってくるか(舞台下手に退場し、眼鏡で作られたコートを持ってくる」お待たせ」

北島「何それ?」

藤原「眼鏡のコート」

北島「それもお洒落?」

藤原「これが最新の流行ファッションだ!」

北島「嘘吐けー!」








―――終わり

『少食』



・登場人物


 北島

 藤原



・舞台


 会社のオフィス






 明転。


 会社のオフィス。デスク二つに椅子二つ。デスクの上にはノートパソコン。

 北島、藤原、板付き。


藤原「先輩。後どれくらいですか?」

北島「まだまだだな。そっちは?」

藤原「俺もまだ掛かりそうです」

北島「そうか。こりゃあ泊りコースだな」

藤原「先輩。夜の食事、喰いました?」

北島「あぁ。三時間程、前にな」

藤原「俺もです」


 間。


藤原「先輩。腹減りません?」

北島「……あぁ、もうこんな時間か」

藤原「俺、下のコンビニで買ってきますよ」

北島「頼んで良いか?」

藤原「いい加減、そろそろ何か腹に入れないと朝まで持たないと思いまして。ちょっと少食、買ってきますよ」

北島「……ん?」

藤原「じゃあちょっと行ってきます」

北島「ちょっと待って?」

藤原「何ですか?」

北島「今、少食、買ってくるって言った?」

藤原「はい」

北島「少食ってどういう意味だと思ってる?」

藤原「ちょっとした食事です」

北島「違うぞ?」

藤原「え?じゃあどういう意味なんですか?」

北島「食べる量が少ない事だぞ?」

藤原「あ、そうなんですね。ずっと勘違いしてました」

北島「ずっとそうだと思ってたのか……ちなみに朝食は何だと思ってた?」

藤原「朝を食べる事」

北島「朝を食べるってどういう事?」

藤原「朝日を浴びて光合成をする事です」

北島「人間に光合成は出来ないぞ」

藤原「そうなんですか?昼食も夕食も日光を浴びて光合成してるつもりだったんですけど」

北島「無理だぞ?夕食って夕日の事?」

藤原「はい」

北島「夕日で光合成はそもそも無理なんじゃないか?」

藤原「そうですかね?」

北島「あ?夜食は?」

藤原「夜を食べる事」

北島「どういう事?」

藤原「月光で光合成する事」

北島「光、微量過ぎない?」

藤原「何とかなってたんですけどね」

北島「凄いな。間食は?」

藤原「間を食べる事」

北島「本当にどういう事?」

藤原「間を食べて会話が途切れないようにする事」

北島「凄い解釈……普段の食事はどうしてたの?」

藤原「普通に光合成をした後に食事してました」

北島「その食事の事は何て言ってたの?」

藤原「朝の食事、昼の食事、夜の食事ですかね。後昼のおやつと夜のおやつ」

北島「おやつはまぁ間違ってないけど……いちいちそう何々の食事とか何々のおやつって言うの面倒じゃない?」

藤原「もう慣れました」

北島「あっそう……大変だな。お前」

藤原「で、先輩。少食……じゃなかった。夜食どうします?」

北島「お前のセンスに任せるよ」

藤原「はーい(舞台上手に退場)」

北島「何なんだよ全く……」

藤原「(舞台上手からレジ袋を提げて登場)お待たせしましたー。はいどうぞ」

北島「おう。あれ?お前、喰わないの?」

藤原「今、断食してるんで」

北島「断食はどういう意味で言ってんの?」

藤原「食を断つ」

北島「そこは間違えてないんかい」























―――終わり

『面白い話』



・登場人物


 北島

 藤原



・舞台


 居酒屋






 明転。


 居酒屋。テーブル一つに椅子二つ。テーブルの上には酒とつまみ。

 北島、藤原、板付き。


北島「さて、酒とつまみが揃ったところで、かんぱーい」

藤原「かんぱーい。お疲れっすー」

北島「お疲れっすー」

藤原「仕事どう?」

北島「今度、課長に就任する」

藤原「そっかー。俺はようやく主任だよ」

北島「部下が持てるだけ良いじゃないか。課長なんか役職が上がってだけで背金が重くなってと給料が下がるだけだぞ」

藤原「それもそうだなー。一生、平で良いや」

北島「それはそれでどうなんだ?」

藤原「あー。何か面白い事無いかなー」

北島「あるよ」

藤原「え?何?」

北島「この前面白い話を聞いてさー」

藤原「あーっはっはっはっ!」

北島「おい。まだ何も言ってないぞ?」

藤原「あーはっはっはっっ!」

北島「おい。どうした?もう酔ったのか?」

藤原「いやいや……!お前の話が面白くて……!」

北島「は?まだ面白い話としか言ってないぞ?」

藤原「あーはっはっはっっ!」

北島「マジで大丈夫か?」

藤原「あーはっはっはっっ!」

北島「お、おい。もしかしてヤバいクスリやってる……?」

藤原「いや、やってない」

北島「うわっ。急に素に戻んなよ」

藤原「何で?」

北島「マジでヤバいクスリやってるかもって思うだろ」

藤原「あぁ、すまん、すまん」

北島「何?どういう事?」

藤原「お前が言ったんだろ。面白い話って」

北島「まだ何も言ってねぇよ?」

藤原「面白い話ってのが面白い話なんだよ」

北島「えぇ……?じゃあ、楽しい話があるんだけど」

藤原「わーい!わーい!」

北島「本当に楽しいんだな」

藤原「うん。楽しい話だからね」

北島「悲しい話があるんだけど」

藤原「うわーん!うわーん!」

北島「嬉しい話があるんだけど」

藤原「いえーい!やったー!」

北島「腹立たしい話があるんだけど」

藤原「ふんー!ふんー!」

北島「辛い話があるんだけど」

藤原「うぐー!」

北島「可愛い話があるんだけど」

藤原「きゃー!」

北島「怖い話があるんだけど」

藤原「ぎゃー!」

北島「驚いた話があるんだけど」

藤原「うわっ!吃驚したぁ!」

北島「感動した話があるんだけど」

藤原「じーん……!」

北島「いやらしい話があるんだけど」

藤原「いや~ん!」

北島「感情表現豊かだな」

藤原「遊んでるだろ」

北島「うん」

藤原「酷いなぁ」

北島「だって面白いんだもん」

藤原「これ面白い話になる?」

北島「なる。面白い話だって言える」

藤原「あっそう」

北島「何で分かんの?」

藤原「俺は人の話を何とかの話ってだけで内容が分かるんだ」

北島「お前、凄いな」

藤原「それ程でも」

北島「あれ?じゃあ俺の面白い話は理解してたの?」

藤原「うん」

北島「ちなみにどんな話だと思った?」

藤原「この前ラーメン屋に行ったら隣の客が胡椒を振ったら蓋が外れて中身、全部ラーメンに入ったって話」

北島「合ってる」

藤原「凄いだろ」

北島「純粋に凄い。あ、そうだ。面白い話があるんだけど」

藤原「…………」

北島「あれ?これは笑わないの?」

藤原「だって内容、知ってるし」

北島「え?中身、分かってたら笑わないの?」

藤原「うん」

北島「ちなみに何だった?」

藤原「俺の話」

北島「バレたか」




―――終わり

『焼き鳥』



・登場人物


 北島(客)

 藤原(客)

 枝村(店員)

 西岡(大将:声のみ)



・舞台


 焼き鳥屋






 明転。


 焼き鳥屋。テーブル一つに椅子二つ。

 西岡、「嫌だああああああああああ!」と叫んでいる。北島、藤原、板付き。


北島「すみませーん」

枝村「はーい。ただいまー(舞台上手から登場)。お待たせしました」

北島「焼き鳥、四本とビールで。お前は?」

藤原「俺もビーで」

枝村「タレで宜しいですか?」

北島「はい」

枝村「畏まりましたー(舞台上手に退場)。大将―。焼き鳥、十本でーす」

西岡「嫌だああああああああああ!うわああああああああああ!焼きたくなああああああああああい!」

枝村「(舞台上手からビール二つ持って登場)お待たせしました。焼き鳥の方、もう少しお待ち下さーい(舞台上手に退場)」

北島藤原「はーい」

西岡「何でこんな事しなきゃいけないんだああああああああああ!?何で親からこの店を引き継がなきゃいけなかったんだああああああああああ!?秘伝のタレだか何だか知らねぇが目玉焼きに醤油で十分だろおおおおおおおおおお!俺は本当はユーチューバーになりたかったんだああああああああああ!兄貴に継がせれば良かっただろおおおおおおおおおおお!何で働いてない兄貴がニートやれてて俺は焼き鳥屋をやらなきゃいけないんだああああああああああ!?一丁あがりいいいいいいいいいい!」

枝村「(舞台上手から焼き鳥を持って登場)お待たせしましたー。焼き鳥タレ四本でーす」

北島藤原「ありがとうございまーす(焼き鳥を食べる)」

北島「すみませーん」

枝村「はーい(舞台上手から登場)。追加注文ですか?」

北島「はい。このおまかせ十本。お前は?」

藤原「俺はお好み十本セットで」

枝村「畏まりましたー(舞台上手に退場)。大将―。焼き鳥おまかせ二十本でーす」

西岡「何でおかわりするんだよおおおおおおおおおお!?何がおまかせだああああああああああ!?何でまかされなきゃいけないんだああああああああああ!?自分で決めろよおおおおおおおおおお!何がお好みだよおおおおおおおおおお!知らねぇよおおおおおおおおおお!お前の好みなんかああああああああああ!そこらの総菜を買えよおおおおおおおおおお!大して変わんねぇよおおおおおおおおおお!焼き鳥なんかああああああああああ!一丁あがりいいいいいいいいいい!」

枝村「(舞台上手から焼き鳥を持って登場)お待たせしましたー。焼き鳥でーす」

北島藤原「ありがとうございまーす」

西岡「うわああああああああああ!ゴキブリが出たああああああああああ!鼠も出たああああああああああ!いくら掃除したって出るんだよおおおおおおおおおお!怖いよおおおおおおおおおお!気持ち悪いよおおおおおおおおおお!もう嫌だああああああああああ!煙も嫌だああああああああああ!ゲホおおおおおおおおおお!ゲホおおおおおおおおおお!おえええええええええええ!臭いよおおおおおおおおおお!助けてええええええええええ!」

北島「あんなだけど、この店の大将が焼く焼き鳥は美味いんだよな」

藤原「確かに」



―――終わり

『職探し』



・登場人物


 北島

 藤原



・舞台


 喫茶店






 明転。


 喫茶店。テーブル一つに椅子二つ。テーブルの上には珈琲二つ。

 北島、藤原、板付き。


藤原「仕事どう?」

北島「ノルマがキツい。それに上司もウザいし同僚も部下も使えなくて困ってる」

藤原「大変なんだなぁ。会社員って」

北島「そりゃそうよ。お前は良いよなぁ。家が裕福でニート出来るんだから」

藤原「それがさぁ……」

北島「何?」

藤原「親が『いつまでも実家に甘えてるんじゃない』って言ってきてさ……」

北島「家、出るの?」

藤原「うん」

北島「金はどうすんの?」

藤原「これを機に働こうと思って」

北島「良いじゃん。まだ若いんだしいくらでも働き口はあるだろ」

藤原「それで就職しようと思ってキッザニアに行ったんだよ」

北島「何?キッザニアに就職しようと思ったの?」

藤原「いや。適正診断を受けに行った」

北島「え?どういう事?」

藤原「キッザニアで職業体験してきた」

北島「は?」

藤原「でも門前払いされた」

北島「そらそうだろうよ。子供の為の施設なんだから」

藤原「大人のキッザニアってのがあった」

北島「それって期間限定だろ?」

藤原「そうだったらしい」

北島「ってかどうやって入ったんだ?大人だけじゃ入れないだろ?」

藤原「大人だけじゃ駄目だったから甥っ子と行った」

北島「あっそう。で、どうすんの?」

藤原「もうお手上げ」

北島「ハローワーク行け」

藤原「ハローワークって怖いイメージがある」

北島「何で?」

藤原「ブラック企業を紹介する所なんでしょ?」

北島「偏見だよ」

藤原「でも資格も無い、バイト経験も無い、五年間ニート。これを雇ってくれる会社ってブラック企業しか無くない?」

北島「そう言われるとそうかも」

藤原「今からでも間に合う仕事が無いかなって思ってキッザニアに行ったんだよ」

北島「それで甥っ子さんと職業体験に行ったと」

藤原「そう」

北島「全く触らせてもらえなかったの?」

藤原「甥っ子があまり話を理解出来なかったから俺が掻い摘んで説明した時に少し触らせてもらった」

北島「多少は触らせてもらえたんだな」

藤原「少しだけね」

北島「でも甥っ子さんに説明してる時と。甥っ子さんがやってる姿を見てやってみたい仕事とか見付かったんじゃないの?」

藤原「いくつかあった」

北島「何?」

藤原「消防士とパイロットと新幹線の運転手」

北島「子供みたいなラインナップだな」

藤原「だって子供向けの施設だもん」

北島「子供向けだって分かって行ってんじゃねぇよ」

藤原「ごめんなさい」

北島「で?何でその三つにしたの?」

藤原「格好良くて給料が高いから」

北島「子供なところと大人なところがあるな」

藤原「大人なところだなんて照れるなぁ」

北島「褒めてない。ってかそれらって訓練とか学校に通わないといけないんじゃないの?」

北島「そうなんだよ。消防士はともかくパイロットと運転手は特別な学校に行って、訓練して、資格を取って、かつ視力が裸眼で0.1以上で色覚異常が無いといけないんだよ」

北島「あれ?お前って……?」

藤原「色覚多様性で裸眼視力0.08」

北島「じゃあ駄目じゃん」

藤原「そうなんだよなー」

北島「じゃあ消防士?」

藤原「でも俺、運動、苦手だし……」

北島「じゃあ何でそれを選んだんだよ」

藤原「格好良くて年収が高いから」

北島「さっきも聞いたわ。じゃあ運動しないで高収入な仕事にすれば良いじゃん」

藤原「そんなのあんの?」

北島「デザイナー」

藤原「何それ。響きが格好良い」

北島「物のデザインをしたり、今だとウェブデザインとかするのもあるし、資格も特に必要無いし、今のお前にはピッタリじゃないか?」

藤原「成程。やってみるか」


 暗転。


 明転。


 喫茶店。

 北島、藤原、板付き。


北島「仕事どうなった?」

藤原「キッザニアに就職した」

北島「お前まだそんな事、言ってんの?」

藤原「いや、キッザニアでウェブデザイナーになった」

北島「結局キッザニアに行ったのか」

藤原「結構、良く働かせてもらってる」

北島「良かったじゃん。天職、見付けて」
























―――終わり

『違い』



・登場人物


 北島

 藤原

 枝村



・舞台


 道端



・装置


 犬のぬいぐるみとレーン






 明転。


 道端。

 北島、藤原、舞台上手から登場。枝村、犬のぬいぐるみをレーンに滑らせて散歩してるように舞台下手から登場。


北島「あ、犬だ。可愛い~」

枝村「ありがとうございます(舞台上手に退場)」

北島「可愛かったな」

藤原「可愛かったけど、あれって犬なの?」

北島「え?どっからどう見ても犬だろ」

藤原「俺って犬と猫の見分け方が分かんないんだよね」

北島「え?何で?感覚で分かるだろ?」

藤原「その感覚が分かんないんだよね」

北島「どこが分かんないの?」

藤原「毛が全体に生えてるだろ?」

北島「うん」

藤原「目と鼻と耳があるだろ?」

北島「うん」

藤原「尻尾があるだろ?」

北島「うん」

藤原「四足歩行だろ?」

北島「うん」

藤原「爪があるじゃん?」

北島「うん」

藤原「肉球があるじゃん?」

北島「うん」

藤原「どこに違いがあるの?」

北島「犬は鼻が長くて猫は顔が平たいだろ」

藤原「鼻ぺちゃな犬もいるだろ」

北島「それもそうか」

藤原「だろ?」

北島「でも犬はリード繋がれてて、猫はそれが無いだろ」

藤原「最近はリード着けて散歩してる猫もいるし、リードをしてない犬もいるだろ」

北島「それもそうか」

藤原「だろ?」

北島「鳴き声とかは?」

藤原「滅多に鳴かないじゃん」

北島「まぁ聞こえる時は遠くだったり興奮状態の時だけだな」

藤原「な?どうやって見分けんの?」

北島「そう言われると確かに犬と猫の違いって何だろう……?」

藤原「調べてみたら犬も猫もネコ目だし」

北島「逆に聞くけど今まで犬と猫をどうやって見分けてたの?」

藤原「塀とか屋根に居るのが猫、地面を歩いているのが犬」

北島「それ猫も地面歩いてたら分からなくなるんじゃない?」

藤原「そうなんだよ」

北島「難儀だな。お前」

藤原「まぁ別に困ってないんだけどな」

北島「犬や猫を飼ったり、関わったりする仕事じゃなければ問題は無いか」

藤原「今ペットショップで働いてる」

北島「え?大丈夫なの?」

藤原「大体『この子触らせて下さい』とか『この子買います』みたいなのが多いから何とかなってる」

北島「絶対、辞めた方が良いよ」

藤原「そうするかぁ」

北島「感覚で分かれば良いのにな」

藤原「感覚……かぁ……」


 暗転。


 明転。


 道端。

枝村、犬のぬいぐるみをレーンに滑らせて散歩してるように舞台下手から登場。


藤原「あ、可愛い~」

枝村「ありがとうございます(舞台上手に退場)」

北島「見分けられるようになったの?」

藤原「感覚で分かるようになった」

北島「今のは?」

藤原「猫!」

北島「犬だよ!」























―――終わり

『良い意味で』



・登場人物


 北島

 藤原



・舞台


 居酒屋






 明転。


 居酒屋。テーブル一つに椅子二つ。テーブルには酒とつまみ。

 北島、藤原、板付き。


藤原「お前、この前出来た彼女さんとはどうなの?」

北島「来月、結婚するよ」

藤原「え?まだ出会って一ヶ月とかだろ?」

北島「何かビビッと来ちゃったんだよね」

藤原「ビビッと?」

北島「そう。あ、この人と結婚するんだ!って直感的に思っちゃったんだよね」

藤原「お前、良い意味で馬鹿だよな」

北島「褒めてる?」

藤原「褒めてる、褒めてる」

北島「なら良いんだけど」

藤原「仕事は?この前、長期出張の話が出てたよな?」

北島「断った」

藤原「何で?」

北島「彼女、いや、嫁との生活を優先したくて」

藤原「良いのか?稼げる時に稼いどいた方が将来、良いんじゃないか?」

北島「未来より今を大切にしたい」

藤原「お前、良い意味で阿呆だよな」

北島「……褒めてる?」

藤原「褒めてる、褒めてる」

北島「なら良いんだけど……」

藤原「そう言えば趣味のパチンコはどうするんだ?辞めるのか?」

北島「別に辞めないよ?」

藤原「嫁さん許してるのか?」

北島「うん」

藤原「寛容だなぁ」

北島「お小遣いの範囲でなら良いって言われたから」

藤原「お前、良い意味で屑だな」

北島「だから褒めてる?」

藤原「褒めてる、褒めてる」

北島「お前さぁ、『良い意味で』って言えば何でも許されると思ってない?」

藤原「そんな事無いよ?」

北島「その『良い意味で』って言うの止めろよな」

藤原「口癖みたいなものだからなぁ」

藤原「普段、俺の事どう思ってるんだよ?」

藤原「良い意味でゴミな奴とも思ってる」

北島「その言い方、止めろ」

藤原「良い意味で襤褸切れみたいな人生を送ってるよな。お前」

北島「だから止めろ」

藤原「良い意味でガラクタみたいな体してるしな」

北島「止めろって」

藤原「良い意味でゴキブリみたいなしぶとさだし」

北島「止めろってば」

藤原「良い意味で塵みたいにいつか消えそうだし」

北島「止めろ!」

藤原「はい」

北島「どうしてお前はそうホイホイ人を底辺扱い出来る言葉が出てくるんだ?」

藤原「底辺。良いな。良い意味で底辺。これからそれを使おう」

北島「だから止めろ!」

藤原「『良い意味で』って良い言葉だと思わない?」

北島「どこが?」

藤原「どんな汚い、酷い言葉でも素敵な意味に捉えられる魔法の言葉だと思うんだ」

北島「別にそこまで良い話じゃないぞ?」

藤原「そうか?」

北島「うん。だって結局、貶してるだろ?」

藤原「貶してないよ。褒めてるよ」

北島「褒めてたらあんな馬鹿とか屑とか言わないんだよ」

藤原「だから『良い意味で』って言ってるだろ」

北島「何でも許されると思うなよ?結局、酷い言葉使ってるんだから」

藤原「ただの比喩表現だよ」

北島「じゃあ俺の事、総合的にどう思ってるんだよ?」

藤原「良い意味でカス」

北島「やっぱり褒めてないだろ」

藤原「免罪符だと思ってる」

―――終わり

『カレーうどん』



・登場人物


 正将(夫)

 美幸(妻)



・舞台


 自宅






 明転。


 自宅。テーブル一つに椅子二つ。

 美幸、板付き。


 SE、インターホンのチャイムの音。


美幸「あ、帰ってきたかな?はーい(舞台下手に退場し、正将と共に舞台下手から登場)おかえりなさい。アナタ」

正将「ただいま」

美幸「今日は遅かったのね」

正将「え?あ、あぁ……仕事が長引いてな」

美幸「遅くなるなら電話かメールしてよー」

正将「悪い悪い。忙しくてさ」

美幸「ご飯にする?」

正将「ご飯はいいや」

美幸「えー?折角、作ったのにー」

正将「ごめん。(背広を脱ぐ)何か今日、食欲無くてさ……」

美幸「あっ!」

正将「何?」

美幸「何よ!?このシャツのシミ!」

正将「あっ!しまった!」

美幸「これカレーのシミでしょ!?どこのカレーうどんを食べてきたのよ!?」

正将「新宿にある、とあるうどん屋で……」

美幸「私のカレーうどんだけが好きって言ってたのに!浮気!?」

正将「ち、違うよ……」

美幸「じゃあこのシミは何なのよ!?」

正将「会社の先輩に付き合わされたんだよ……『妻が家で待ってるから帰ります』って言ったんだけど『一軒くらい良いだろ』って言われて断れなくて……」

美幸「本当でしょうね?」

正将「勿論だよ。俺には美幸のカレーうどんだけだから」

美幸「ふーん。じゃあ信じてあげる……あっ!」

正将「今度は何?」

美幸「これ!ポイントカードでしょ!?」

正将「あっ!しまった!」

美幸「しかもシルバーカード……!いつも行ってるんじゃない!」

正将「違うんだ!誤解だよ!」

美幸「何が誤解なのよ!?この浮気者!」

正将「先輩に誘われて仕方なくだよ!」

美幸「さっきも聞いたわよ!」

正将「最後まで聞け!」

美幸「何よ!?」

正将「友達紹介キャンペーンとかで無理矢理ポイントカード作らされて、行く度にポイント二倍キャンペーンとかでずっとポイント溜まった結果、シルバー会員になっちゃたんだよ!」

美幸「キーッ!やっぱりいつもそのお店に行ってたんじゃない!」

正将「だから俺の意思で行ったんじゃないって!」

美幸「行った事に変わりは無いじゃないの!」

正将「行きたくなかったよ、俺だって!でも仕事でもあるんだから仕方ないだろ!」

美幸「仕事でも行ってほしくないの!」

正将「じゃあこの仕事、辞めるか!?」

美幸「浮気するくらいならその方が良いわよ!」

正将「感情的になるなよ!冷静に考えてみろ!」

美幸「何が!?」

正将「俺が仕事をしないで家でグータラしてるのと、仕事の為とは言え浮気はするけど将来を考えて金を稼いでくる俺。どっちが良い?」

美幸「……後者」

正将「だろ?仕事上の付き合いなんだ。許してくれ」

美幸「……分かった。許してあげる」

正将「ありがとう。美幸」

美幸「いいえ。私も悪かったわ。ごめんなさい」

正将「じゃあ仲直りね」

美幸「うん。じゃあ仲直りの印に私のカレーうどん食べてね?」

正将「あ、いや、今はお腹いっぱい……」

美幸「……何?私の愛は受け取ってくれないの?」

正将「あ、そ、そんな事は……」

美幸「他所のカレーうどんは食べるのに?」

正将「た、食べます……」

美幸「『食べます』?」

正将「い、頂かせて頂きます!」

美幸「良かった!ちょっと待っててねー!?(舞台上手に退場)」

正将「……はぁ……」

美幸「(舞台上手からカレーうどんを持って登場)お待たせー!さぁ、美幸特製こってりカレーうどんよー!」

正将「わ、わぁ……美味しそ~……」

美幸「さぁ、召し上がれ!」

正将「い、頂きます……!」

美幸「どう?美味しい?」

正将「あ、あぁ、美味しいよ……」

美幸「ふふっ。良かった!(舞台上手に退場)」

正将「……はぁ……」

美幸「お代わりもあるからねー!」

正将「うぐー!」

美幸「まだまだあるよー!(舞台上手から大量のうどんの替え玉を持って登場)」

正将「そんなにあるの!?」

美幸「今日は趣向を凝らしてわんこそばならぬわんこカレーうどんよ!」

正将「無理無理無理!」

美幸「私の愛を受け取ってー!」

正将「うぐー!(麺を食べ終える)」

美幸「(うどんを椀に入れる)あいよ!」

正将「うぐー!」

美幸「あいよ!」

正将「うぐー!」

美幸「あいよ!」

正将「うぐー!」

美幸「(うどんを椀に入れる)あいよ!」

正将「ちょっと待って!?こんなにビチャビチャうどん入れてたらシャツがシミだらけになっちゃうよ!?」

美幸「どうせ他所で汚してきたんだからこの際、黄色く染め上げちゃいましょう!あいよ!」

正将「そんな雑な!というか今更だけど蓋は!?終わりにする蓋は無いの!?」

美幸「そんなもん無いわよ!あいよ!」

正将「そんな馬鹿な!?」

美幸「他のカレーうどんで満足出来ない体にしてあげる!あいよ!」

正将「うぐー!」













―――終わり

『暴力』



・登場人物


 北島

藤原正将

藤原巧巳



・舞台


 藤原宅






 明転。


 藤原宅。卓袱台一つに座布団二つ。

 北島、正将、板付き。


正将「悪いな。急に呼び出して」

北島「良いよ、別に。何だよ?」

正将「お前にしか相談出来なくてさ」

北島「だから何だよ?」

正将「俺って働いてないじゃん?」

北島「あぁ。まぁそうだな」

正将「俺、父さんから邪魔者だって思われてんじゃないかって思っててさ」

北島「何で?」

正将「だから働いてないから」

北島「仕方ないじゃん。鬱病なんだし」

正将「でもそれに甘えて働いてないって思われてんじゃないかって思ってさ」

北島「それこそお前がカウンセリングに行った方が良いんじゃないか?そこまで思ってないよ。お前の親父さん」

正将「そうかな……」

北島「そうだよ。お前の親父さん、お前に一度でも『甘えるな』とか『働け』って言ったか?」

正将「……言ってない」

北島「もしかしたら心の奥ではそう思ってるかもしれないけど、理解しようとしてくれてんじゃないの?」

正将「そうかな?」

北島「そうだよ。じゃなかったら家に居ても何も言わないだろ?」

正将「でも俺、何もしてないよ?」

北島「家の事いっぱいしてるじゃん。ゴミ捨てしたり、掃除したり、買い物したり、風呂をやったり、PC苦手な親父さんとお袋さんの面倒見たり、ご飯を時々作ったり。助かってるって思ってると思うよ?」

正将「それしかしてないよ?それしかやる事が無いから」

北島「それでも十分だって。だったら思い切って聞いてみろよ。『俺の事h邪魔なのか?』って」

正将「それでもし『邪魔だ』って言われたら怖くて」

北島「その時は簡単なバイトでも日雇いのバイトでも探して社会復帰すれば良いだろ?いきなりフルで働くのは無理なんだから。それで稼いだ金で焼肉でも奢ってやりゃあ少しは見直すだろ?」

正将「……そうだな。このままモヤモヤしてても仕方ない。思い切って聞いてみるよ」

北島「その意気だ」

巧巳「(舞台下手から登場)ただいまー」

正将「おかえり」

巧巳「おう。あ、北島君も来てたのか。いらっしゃい」

北島「お邪魔してます」

巧巳「飯と風呂出来てる?」

正将「出来てるよ」

巧巳「いつもありがとうな」

正将「それしか出来ないから」

巧巳「そんな事無いよ。十分、助かってるから」

正将「ありがとう」

巧巳「それはこっちの台詞だ(舞台上手に退場)」

北島「な?言った通りだろ?」

正将「俺を気遣ってるだけかも……」

北島「そんな事無いって」

正将「いや、皮肉かも」

北島「だからそんな事無いって」

正将「あぁ……やっぱり聞くの怖いよ……」

北島「そんな悲観的になるなよ。絶対、大丈夫だから」

正将「この世に絶対なんて無い」

北島「やっぱり悪化してるないか?鬱」

正将「あ、そう言えば雨降ってるからそうかも」

北島「鬱のせいで思考がマイナスになってるだけだよ。明るくいこう?」

正将「そんなすぐにスイッチの切り替え出来ないよ……」

北島「深呼吸してみ?」

正将「(深呼吸する)」

北島「どうだ?」

正将「少し落ち着いた」

北島「思考はどうだ?」

正将「まだ不安。北島、お前、俺の事、面倒臭いって思ってない?」北島「思ってたら相談なんか乗るかよ」

正将「……それもそうだな。ありがとう」

北島「友達だろ?俺達」

正将「ありがとう。親父に聞いてみるよ」

北島「頑張れよ」

巧巳「(服を着替えて舞台上手から登場)先に飯にしようかな」

正将「父さん。その前にちょっと良いか?」

巧巳「何だ?改まって」

北島「じゃあ俺は帰るから」

正将「いや、不安だからここに居て」

北島「えぇ……?分かったよ」

巧巳「何だ?」

正将「いや、こっちの話。父さん、俺の事、邪魔だと思ってない?」

巧巳「何だそれ?どういう事だ?」

正将「俺は働いてないから世間体的に邪魔なんじゃないかって思って」

巧巳「(殴りながら)馬鹿野郎!俺が!お前を!いつ!邪魔だと!言った!?」

正将「父さん……」

巧巳「(殴りながら)俺達は!家族だ!お前は!大切な!息子だ!それを!邪魔だと!言う筈が!無いだろ!」

正将「父さん……ありがとう!」

北島「えっ!?」

正将「俺、父さんにそう言ってもらって心が軽くなったよ!ありがとう!」

巧巳「〈殴りながら〉当たり前だ!俺は!お前が!社会復帰するまで!面倒を!見る!つもりだ!頑張れ!」

北島「(巧巳を羽交い絞めにする)ちょっと親父さん!?そこまで!」

巧巳「止めるな北島君!こいつは言っても分からないから体で教えなきゃいけないんだ!」

北島「それでも暴力はいけませんよ!正将君、痛がってるじゃないですか!」

正将「父さんの愛!受け取ったよ!」

北島「あっ!?コイツ痛みを分かってない!?」

正将「鬱の薬で痛みが鈍くなってると思う」

北島「いきなり素に戻るな!怖いだろ!」

正将「鬱の薬で痛みが鈍くなってると思う!」

北島「今度はいきなりハイテンションに戻るな!さっき『すぐにスイッチの切り替え出来ない』って言ったろ!」

正将「じゃあどうすれば良いんだよ!」

北島「とりあえずお前と親父さん落ち着け!」

正将巧巳「はぁ……はぁ……」

北島「親父さん。いきなり人を殴るのは止めましょう」

巧巳「はい」

北島「藤原。いや、正将。お前はすぐにカウンセリング受けなさい」

正将「はい」

北島「暴力はいけません。良いですか?」

巧巳正将「はい」

巧巳「(無言で軽く正将を殴る)」

北島「コラッ!」

正将「へへっ……!」

北島「喜ぶな!」

正将巧巳「これが我が家の愛情表現です」

北島「歪んでる!」

―――終わり

『居座り強盗』



・登場人物


 北島(警察官)

 藤原(強盗)

 枝村



・舞台


 枝村宅






 明転。


 枝村宅。座布団一つ。

 藤原、枝村、板付き。藤原、包丁を持ちながら座布団の上に座っている。


藤原「おい!金はどこだ!?」

枝村「ひぃ!包丁を振り回さないで下さい!」

藤原「金を出さなきゃ刺すからな!」

枝村「すぐに用意しますから、どうか落ち着いて下さい!」

藤原「叫び疲れて喉が渇いたな。おい!茶を持ってこい!」

枝村「は、はい!(舞台上手に退場)もしもし!?警察ですか!?強盗です!」

藤原「おい!どこに電話してる!?」

枝村「ひぃ!お助けー!」


 SE、パトカーのサイレンの音。


北島、枝村、舞台上手から登場。


北島「あれが強盗ですか?」

枝村「そうです!」

藤原「帰れ!俺はここを動きは無いからな!」

北島「……座ってますけど?」

枝村「そうです!あそこから動かないんです!」

北島「失礼ですが、知り合いとかでは?」

枝村「違います!家に帰ってきあの男が居て、そこに座って現金を要求してきたんです!」

北島「ふざけてます?」

枝村「ふざけてません!」

藤原「ふざけてない!」

北島「あのー、貴方、強盗なんですか?」

藤原「そうだ!」

北島「何で座ったまま動かないですか?」

藤原「居座り強盗だ!」

北島「居直り強盗じゃなくて!?」

藤原「違う!」

北島「えーっと……逮捕しますね?」

藤原「俺は動かんぞ!」

枝村「あの、やっぱり現金を渡して一旦、逃がすというのはどうでしょう?」

北島「それは二度手間です」

枝村「じゃあどうすれば?」

北島「一つ聞きたいんですけど、あそこにずっと座って動かないんですか?」

枝村「そうです」

北島「じゃあいくらでも逃げたり通報するチャンスがあったのでは?」

枝村「……その発想は無かったです!」

北島「馬鹿かな?」

枝村「じゃあ捕まえて下さい!」

北島「はい。じゃあ捕まえますね」

藤原「ふざけるな!俺はとことんここに居座るからな!」

北島「(銃を向ける)」

藤原「クソッ……!(包丁を投げ捨てる)」

北島「えー、十九時二十七年分、現行犯逮捕(藤原に手錠を掛ける)」

藤原「絶対にまたここに来てやるからな!覚悟しとけよ!?」

北島「はい、脅迫の罪にもなりました」

藤原「しまった!」

北島「はい、行くよー(藤原と共に舞台上手に退場)」


 暗転。


 明転。


 枝村宅。

 藤原、枝村、板付き。藤原、座布団の上に正座している。


藤原「これ、そこの人。早く現金を持ってくるのじゃ」

枝村「ひぃ!お助けー!(舞台上手に退場)もしもし!?警察ですか!?またあの強盗が来てます!」

藤原「これ。止めなさい。また捕まってしまうではないか」


 SE、パトカーのサイレンの音。


北島、枝村、舞台上手から登場。


北島「……また貴方ですか」

藤原「久し振りでおじゃる」

北島「今度は何ですか?」

藤原「お直り強盗でおじゃる」

北島「……あぁ、だから身分が高そうにしてんるですね?」

藤原「そうでおじゃる」

北島「お直りになってどうするんですか?」

藤原「お金を要求してるでおじゃる」

北島「相変わらずそこから動かないですね」

藤原「ある意味、お座り強盗でもあるでおじゃる」

北島「意味が分かりません。まぁ逮捕しますね」

藤原「お後が宜しいようで(頭を下げる)」













―――終わり


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