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コント集  作者: 河野吉田
PR
24/37

コント集24

コント集24 



231・・・まるで

232・・・モテ期

233・・・何か嫌

234・・・婚約〇〇

235・・・私の為に争わないで

236・・・生きる事に疲れちゃって

237・・・読み方

238・・・読書感想文

239・・・隠語

240・・・ボールペン



『まるで』



・登場人物


 小川

 藤原



・舞台


 小川宅







 明転。


 小川宅。卓袱台一つに座布団二つ。

 藤原、板付き。小川、段ボールを持って 舞台下手から登場。


小川「荷物届いたよー」

藤原「何の?」

小川「私の思い出アルバム」

藤原「何で思いでアルバムを急に?」

小川「正将が言ったんでしょ?私の昔の写真が見たいって」

藤原「あぁ、そうだっったね。見せて見せて」

小川「はいはい(段ボールからアルバムを取り出す)」

藤原「おっ。厚いなぁ」

小川「約二十年分だからね。あ、これこれ。これ、私が幼稚園の運動会の時の写真」

藤原「わぁ、美幸ってこの頃は可愛かったんだなぁ」

小川「何よ。まるで今の私は可愛くないみたいな言い方して」

藤原「そうだよ?」

小川「……え?」

藤原「あ、これ小学生の時の写真?」

小川「え?あ、そうそう。作文のコンクールで最優秀作品に選ばれた時のやつ」

藤原「へー。この頃の美幸は頭が良かったんだなぁ」

小川「何よ。まるで今の私は頭が悪いみたいに」

藤原「そうだよ?」

小川「……え?」

藤原「あ、これ中学生の時の写真?」

小川「あ、そうそう。陸上大会で区で一位、取った時のやつ」

藤原「ほほう。この頃の美幸は運動神経が良かったんだなぁ」

小川「何よ。まるで今の私は運動音痴みたいに」

藤原「そうだよ?」

小川「……え?」

藤原「あ、これ高校生の時の写真?」

小川「あ、そうそう。これは文化祭のミスコンで一位になった時のやつ」

藤原「はー。この頃の美幸は美人だったんだなぁ」

小川「何よ。まるで私が今は美人じゃないみたいに」

藤原「そうだよ?」

小川「……え?」

藤原「で、俺と出会った訳かー。成程なぁ」

小川「あのさぁ。さっきから思ってたんだけど……」

藤原「何?」

小川「アンタ、私の事、どういう目で見てるの?」

藤原「どういう事?」

小川「私の事、可愛いとは思ってないの?」

藤原「思ってない」

小川「美人とも思ってない?」

藤原「思ってない」

小川「頭良いとは思ってない?」

藤原「思ってない」

小川「運動神経が良いとも思ってない?」

藤原「思ってない」

小川「つまり私の事どう思ってるの?」

藤原「……ブスで頭悪くて運動音痴の女?」

小川「良いところ何一つ無いじゃない!」

藤原「あるよ!」

小川「どこ!?」

藤原「良いところだろ?いっぱいあるよ!」

小川「だからどこよ!?」

藤原「ありますよ、そりゃあ!ねぇ!」

小川「……だからどこだって言ってんでしょ!?無いの!?」

藤原「だからありますよ!良いところ!ねぇ!ほら!」

小川「具体的にどこが良いか言ってご覧なさいよ!」

藤原「…………」

小川「……黙らないでよ!」

藤原「……あ!良い服、着てまうす!」

小川「それ服が良いんでしょ!?」

藤原「その良い服を着てるセンスが良いって事ですよ!」

小川「ちなみにこの服選んだのお母さんだよ!」

藤原「良いお母さんをお持ちで!」

小川「だから褒めてないって!何で私と付き合ったのよ!?」

藤原「……何でですかね?」

小川「……私に聞かないでよ!」

藤原「多分、性格が、良かったんだと、思い、ます……?」

小川「その反応はやっぱり性格もあまり良くないと思ってるんでしょ!?」

藤原「そうですねぇ……見た目も性格も頭も筋力も悪い女性だと思ってたのかもしれませんねぇ……」

小川「じゃあ別れる!?」

藤原「別にそこまでじゃないです」

小川「あっそ!ところでさ」

藤原「何ですか?」

小川「何で敬語なの?」

藤原「心の距離が出来たからだと思います」

小川「心の距離?」

藤原「はい。今までは対等な立場だったのですが、今は縦列関係が出来たので」

小川「じゃあ私に敬語を使ってるのって……?」

藤原「そうです。目下の者に使う言葉です」

小川「……あ、敬語じゃなくて、他人行儀な丁寧語って事ね!?」

藤原「そういう事です」

小川「はぁ……もういいわ。別れましょう」

藤原「何故ですか?」

小川「アンタと結婚でもしたら絶対ドメスティックバイオレンスやモラルハラスメントに遭うに決まってるからよ!」

藤原「でもちょっと考えてみて下さい?」

小川「何よ?」

藤原「今まで私が美幸さんに暴言を言ったり暴力を振るったりした事がありましたか?」

小川「無いけど、それは上手く隠してただけじゃない?」

藤原「もしDVやモラハラをする男なら、今まで同棲してきている内に何か片鱗があった筈ですよ」

小川「それは、まぁ、確かに」

藤原「それに目下の者にも敬語を使うくらい大切に扱う。こんな優良物件そうそう無いと思いますよ?」

小川「……一理ある」

藤原「そんな私と、結婚して下さい!」

小川「……はい!末永く宜しくお願います!」

藤原「じゃあ婚約指輪は今度、買いに行きましょうね」

小川「はい!」

藤原「じゃあ私は夕飯の買い出しに行ってきます(舞台下手に退場)」

小川「行ってらっしゃ~い!あぁ、まるでこれじゃあもう奥さんになったみたい」












―――終わり

『モテ期』



・登場人物


 北島

 小川

 藤原

 枝村

 西岡

 菅原

 中山



・舞台


 大学の校舎裏






 明転。


 大学の校舎裏。舞台奥に花壇と窓。

 北島、小川、舞台上手から登場。


小川「何?北島君。話って?」

北島「あの、俺、ずっと小川さんの事、好きだったんだ!」

小川「えっ……!?」

北島「俺と付き合って下さい!」

小川「そんな……いきなりで困っちゃう……」

藤原「(舞台上手から登場)ちょっと待ったー!」

北島小川「何っ!?」

藤原「俺も小川さんの事、好きだったんだ!俺と付き合って下さい!」

小川「そんな……いきなりで困っちゃう……」

枝村「(舞台下手から登場)ちょっと待ったー!」

北島小川藤原「何っ!?」

枝村「俺も小川さんの事、好きだったんだ!俺と付き合って下さい!」

小川「そんな……いきなりで困っちゃう……」

西岡「(窓を開けて顔を出す)ちょっと待ったー!」

北島小川藤原枝村「何っ!?」

西岡「俺も小川さんの事、好きだったんだ!俺と付き合って下さい!」

小川「そんな……いきなりで困っちゃう……」

菅原「(花壇から顔を出して登場)ちょっと待ったー!」

北島小川藤原枝村西岡「何っ!?」

菅原「俺も小川さんの事、好きだったんだ!俺と付き合って下さい!」

小川「そんな……いきなりで困っちゃう……」

中山「ちょっと待ったー!」

北島小川藤原枝村西岡菅原「何っ!?」

中山「(舞台上から体にワイヤーを着けて降りてくる)俺も小川さんの事、好きだったんだ!俺と付き合って下さい!」

小川「そんな……いきなりで困っちゃう……」

藤原枝村西岡菅原中山「俺と付き合って下さい!」

北島「ちょっと待てー!」

小川藤原枝村西岡菅原中山「何?」

北島「とりあえずお前らはいい!後で詳しく聞く!小川さん!」

小川「何?」

北島「『何?』じゃないよ!何でこの状況を受け入れてんだよ!?」

小川「え?だってただのモテ期でしょ?」

北島「モテ期!?これをただのモテ期!?」

小川「何?何が引っ掛かるの?」

北島「ただのモテ期がこんな大事になるか!じゃあお前ら!」

藤原枝村西岡菅原中山「何?」

北島「まずお前」

藤原「はい」

北島「何?着けてきたの?」

藤原「そう」

北島「何で?」

藤原「あ、こいつ告白するなって思ったから」

北島「対抗したって事?」

藤原「そう」

北島「謎、一つ目、解決。次!」

枝村「はい」

北島「何で反対側から来たの?」

枝村「いつもこの時間にここを通るから、今日こそは告白するぞって思って」

北島「偶然だったんだな?」

枝村「そう」

北島「謎、二つ目、解決。次!」

西岡「はい」

北島「何で窓から出てきた?」

西岡「前々から小川さんの事が気になってたんだけど、今日ここを通ったら告白しようって決めてた」

北島「図らずも告白のタイミングが被ったと?」

西岡「そう」

北島「謎、三つ目、解決。次!」

菅原「はい」

北島「何で草叢の中にいた?」

菅原「誰でも良いから怖がらせてやろうと思って隠れてたらたまたまお前が小川さんに告白してたから」

北島「邪魔をしようとしたと?」

菅原「そう」

北島「謎、四つ目、解決。最後!」

中山「はい」

北島「あんまり聞きたくないんだけど、何で上から落ちてきたの?」

中山「避難訓練してたらたまたま落ちた先がここだった」

北島「故意では無いと?」

中山「そう」

北島「上の人ー!邪魔しちゃってすみませーん!」

上の人「ごゆっくりー!」

北島「っていうか俺が先に告白したんだから、先に返事を聞きたい!」

小川「ごめんなさい。はい次」

北島「早いなぁ!?」

小川「藤原君。ごめんなさい。はい次」

藤原「ガーン」

小川「枝村君。ごめんなさい。はい次」

枝村「ワーオ」

小川「西岡君。ごめんなさい。はい次」

西岡「マイガー」

小川「菅原君。ごめんなさい。はい次」

菅原「ジーザス」

小川「中山君。ごめんなさい」

中山「シット」

小川「って事で、皆ごめんね?」

北島「理由は!?理由!皆も知りたいよな!?」

藤原枝村西岡菅原中山「聞きたい、聞きたい!」

小川「えー?仕方ないなぁ……じゃあまず北島君。北島君は慎重が低い。以上」

北島「えぇ!?」

小川「藤原君は関西弁が怖い。以上」

藤原「ガーン」

小川「枝村君は顔が怖い。以上」

枝村「ワーオ」

小川「西岡君は太ってるから無理。以上」

西岡「マイガー」

小川「菅原君は天パが酷いから嫌。以上」

菅原「ジーザス」

小川「中山君は童顔だから嫌。以上」

北島藤原枝村西岡菅原中山「聞かなきゃ良かった……」

小川「じゃあね。皆で慰め合いの飲み会でもして帰ってね~(舞台下手に退場)」

北島「……行く?」

藤原枝村西岡菅原中山「飲もう!」

北島藤原枝村西岡菅原中山「うおー!(舞台上手に走って退場)」

小川「(舞台下手から電話をしながら登場)はい、あの陰キャぼっち六人が私を通じて仲良くなりました。これでグループワークが潤滑に進められるようになった、と。学生課の先生、これで良いんですよね?じゃあバイト代は口座に振り込んで下さいね?」






―――終わり

『何か嫌』



・登場人物


 北島

 藤原



・舞台


 藤原宅







 明転。


 藤原宅。テーブル一つに椅子二つ、アイランドキッチン。

 北島、藤原、板付き。


北島「凄いな。藤原の家。こんな豪華で広いなんて、知らなかったよ」

藤原「俺ん家に北島が来るの初めてだっけか?」

北島「うん。大学生の一人暮らしで親がこんなに金を出してくれるなんて羨ましいよ」

藤原「過保護なだけだよ。ここまでしなくて良いって言ったんだけど、心配だからって」

北島「仲が良いのは宜しい事で」

藤原「あ、今日、泊まっていくよな?」

北島「そのつもり」

藤原「スパゲッティで良いか?」

北島「頼むわ」

藤原「レトルトだけどな」

北島「構わんよ」

藤原「ミートソースで良い?」

北島「頼んます」

藤原「二人前で良いか?」

北島「ありがてぇっす」

藤原「じゃあ今から作るからちょっと待っててくれ」

北島「おう。あ、トイレ借りて良い?」

藤原「出て左(アイランドキッチンに立つ)」

北島「サンキュー(舞台上手に退場)」

藤原「(鍋を出し、ティファールを出して水を入れようとするが出ない)あれ?あれ?うーん……」

北島「(舞台上手から登場)凄いな。トイレにも手洗い場があるなんて。あれ?どうした?」

藤原「いや、水が出なくて……」

北島「本当か?……あ、本当だ。出ない」

藤原「トイレは流せたか?」

北島「うん。トイレは流れた。ここだけ壊れたんじゃないか?」

藤原「かもしれないな。どうしようかな」

北島「外食にでもするか?」

藤原「今から出掛けるのも怠いしな。あ、トイレの水は出たんだよな?」

北島「え?うん」

藤原「ちょっと待ってて(ティファールを持って舞台上手に退場し、水を入れたティファールを持って舞台上手から登場)お待たせ」

北島「あれ?水が入ってる」

藤原「これを沸かすぞ」

北島「その水、どうしたんだ?」

藤原「トイレからちょっとね」

北島「キッタネェ!止めろよ!」

藤原「何で?」

北島「それトイレの水なんだろ!?」

藤原「安心しろ。手洗い場の水だ」

北島「でも何か嫌だろ!」

藤原「衛生面は大丈夫だぞ?」

北島「だから何か嫌だろ!トイレにあった水って感じがして!」

藤原「だから衛生面的には何の問題も無いって。それに煮沸消毒がてら煮るんだし大丈夫だって」

北島「……分かったよ。やってくれ」

藤原「おう(ティファールをセットし、すぐに沸いて鍋に入れて火を掛ける)。よし。じゃあ茹でるか(スパゲッティ四人前とスパゲッティソースの袋を入れる)」

北島「ちょっと待て。麺とソース一緒に茹でるのか?」

藤原「え?駄目?」

北島「止めてくれよ!何かバッチィだろ!」

藤原「何で?」

北島「袋がどこを触ったか分からないだろ!もしかしたら床とか地面に落ちたかもしれないし!」

藤原「煮沸消毒するようなもんだし、衛生面的には何の問題も無いだろ?」

北島「何か嫌だろ!」

藤原「だから大丈夫だって。今までこうやって食ってきて、俺は何の悪影響も無かったんだから」

北島「本当だな?」

藤原「本当だって」

北島「じゃあ信じよう。調理頼むわ」

藤原「おう。あ、皿、出してくれる?」

北島「えーっと……これか?」

藤原「そうそう。それそれ。ここに置いてくれ」

北島「おう」

藤原「ついでにフォークとお茶とコップもテーブルに持ってってくれ」

北島「あい、分かった。あれ?コップ無くね?」

藤原「あ、この前一気に割っちゃったんだ」

北島「どうする?」

藤原「紙コップならある」

北島「それはどこに?」

藤原「そこに」

北島「あぁ、これか(紙袋から検尿用の紙コップを取り出す)。何コレ?」

藤原「紙コップ」

北島「それは分かるよ!これ検尿用だろ!?」

藤原「そうだよ?」

北島「何か嫌だろ!」

藤原「どこが?」

北島「おしっこ入れる容器にお茶入れて飲むって何か嫌だろ!」

藤原「未使用だから衛生面的には何の問題も無いぞ?」

北島「本当に未使用なんだろうな?」

藤原「逆に聞くけど、使用済みの検尿コップが大量に置いてある家にいたいか?」

北島「それは嫌だな。じゃあ信じるよ」

藤原「おう。あ、丁度、茹で上がったみたい (スパゲッティとスパゲッティソースの袋を上げ、皿に盛り付ける)お待たせー」

北島「タバスコある?」

藤原「あるよー。ほれ」

北島「結構、減ってるな。よく使うのか?」

藤原「いや?辛いの苦手だからそんなに使わない」

北島「……ちなみにこのタバスコ買ったのっていつ?」

藤原「あれは中学生の時だったから五年前かな?」

北島「止めろよ!絶対に腐ってるだろコレ!」

藤原「タバスコに賞味期限も消費期限も無いぞ?」

北島「そういう問題じゃない!何か嫌だろ!」

藤原「さっきからその『何か嫌』ってのがよく分からない」

北島「何で分かんないんだよ!?」

藤原「全然、理に適ってない」

北島「感覚的に何か嫌だろ!」

藤原「でも科学的には何の問題も無いだろ?」

北島「感情論で言ってるんだよ!」

藤原「科学的根拠に基づかない嫌悪は俺は受け入れられない」

北島「この分からず屋!」

藤原「お前こそ!」

北島「俺、もう帰る!」

藤原「あぁ、帰れ、帰れ!お前の顔なんかもう二度と見たくない!」

北島「言ったな!?じゃあな!二度と話し掛けんなよ!?(舞台上手に退場)」

藤原「何だよ……北島の奴……俺、悪くないもん。アイツが……アイツが……!クソッ!(舞台上手に退場しようとする)」


 SE、インターホンの音。


藤原「誰だ……?(インターホンの画面を覗く)北島!?(舞台上手に退場し、北島と共に舞台上手から登場)何だよ?今更」

北島「何かさ、一生もんの友達と別れるの、何か嫌になっちゃってさ」

藤原「北島……!」

北島「藤原、さっきはごめん!許して!また友達になってくれ!」

藤原「馬鹿野郎!謝るのはこっちだ!北島、すまなかった!お前の嫌がる事ばかりやっちゃって!」

北島「許してくれるのか!?」

藤原「許すも何も、許して貰うのは俺の方だ!」

北島「藤原ー!」

藤原「北島ー!(北島と共に強く抱き合う)」

















―――終わり

『婚約○○』



・登場人物


 小川

 藤原



・舞台


 自宅







 明転。


 自宅。卓袱台一つに座布団二つ。

 藤原、小川、板付き。


藤原「なぁ。俺達って付き合って何年になる?」

小川「五年かな?」

藤原「同棲して何年になる?」

小川「三年だね」

藤原「そろそろ、良いんじゃ無いかなって思って」

小川「何が?」

藤原「結婚」

小川「……あのねぇ、もうちょっとムードとかを考えてプロポーズしなさいよ」

藤原「あ、ご、ごめん!」

小川「まぁそういうところが可愛くて憎めないんだけどね。良いよ。今度、ちゃんとしたプロポーズしてくれるなら、結婚します」

藤原「ほ、本当に!?」

小川「はい。宜しくお願いします」

藤原「じゃ、じゃあ今度、一緒に婚約指輪と結婚指輪を買いに行こう」

小川「じゃあ次の休みの日にしようか」

藤原「そうだね。あ、でさ、その日にプロポーズしようと思ったんだけど……」

小川「あのねぇ、そこら辺の物を買うんじゃないんだよ?指の太さを測って、その大きさの指輪を作ってもらうから時間掛かるんだよ?」

藤原「あ、そうなんだ……」

小川「アンタよくそれで私にプロポーズしようと思ったわね」

藤原「ごめん……」

小川「まぁ相談してくれるところは褒めてあげる。無駄なお金使わないで済んだからね」

藤原「ありがとう!で、今はまだ指輪を買ってないからアレなんだけど、代わりの物で今、婚約を決めたいなと思って」

小川「代わりの物?どういう事?」

藤原「まぁ受け取ってくれれば分かるよ。(小箱を取り出す)はい」

小川「何コレ?」

藤原「まぁ開けてみてよ」

小川「うん……(小箱からイヤリングを取り出す)イヤリング?」

藤原「婚約イヤリングって事で……」

小川「あー、成程ね。これなら細かいサイズを確認しなくても大体で買えるもんね。良いじゃん」

藤原「ありがとう」

小川「(イヤリングを着ける)どう?似合う?」

藤原「似合うよ」

小川「ふふっ。ありがと」

藤原「まだあるよ」

小川「え?これでもう十分じゃない?」

藤原「君との結婚を決定的なものにしたくてね。(箱を取り出す)はい」

小川「これは?(箱からネックレスを取り出す)ネックレス?」

藤原「婚約ネックレスだよ」

小川「まぁこれもサイズをそこまで考えなくても良いか……ありがと。(ネックレスを着ける)どう?似合う?」

藤原「似合うよ」

小川「ありがと」

藤原「まだあるんだ。(箱を取り出す)はい」

小川「これは?(箱からロケットを取り出す)ロケット?」

藤原「婚約ロケットだよー」

小川「いる?これ」

藤原「今度の結婚式の時の写真を収めるも良し、将来の子供の写真を入れておくのも良し。思い出を入れられて良いと思わない?」

小川「成程ね。じゃあ有り難く受け取っておくね」

藤原「まだあるんだ。(箱を取り出す)はい」

小川「まだあるのか……(箱から腕時計を取り出す)これは、腕時計?」

藤原「婚約腕時計です」

小川「まぁこれも大きさはそこまで関係無いか。ありがとね(腕に着ける)」

藤原「まだあるんだ。(箱を取り出す)はい」

小川「ねぇ。さっきっから思ってたんだけどさ」

藤原「何?」

小川「そんなに私の事、信用出来ない?」

藤原「どういう事?」

小川「だってそうでしょ?こんなに色々と用意しているって事は、婚約をガチガチに決めて私が逃げないようにしてるだけなんじゃないの?」

藤原「そんな事、無いよ!俺は誰よりも君の事を信頼してる!」

小川「本当ぉ~?じゃあ何でこんなに物を用意してきたのよ?」

藤原「純粋に結婚したいからって事と、日頃の感謝を込めてのプレゼント!」

小川「あっそー……で、次のは何よ?」

藤原「はい」

小川「(箱からメリケンサックを取り出す)何コレ?」

藤原「メリケンサック~」

小川「んなの見りゃ分かるわよ!何でメリケンサック!?」

藤原「夫婦喧嘩した時に対等になれるように、婚約メリケンサックでーす!」

小川「全くいらない!まだあんの!?」

藤原「おっ、分かってきたねぇ~。次は~(箱を取り出す)これで~す」

小川「何が来てももう驚かないわよ……(箱からネグリジェを取り出す)何コレ?ネグリジェ?」

藤原「婚約ネグリジェで~す」

小川「こんなの一生もんでもないのに無駄ぁ」

藤原「これはこっちとセットで~す(箱を取り出す)」

小川「セット?(箱から下着を取り出す)下着!?何これキモっ!」

藤原「アレがオッケーな日はこれ着てね?」

小川「『着てね?』じゃないわよ!気持ち悪い!大体アンタ、私のスリーサイズ知ってんの!?」

藤原「上から100・56・98じゃなかったっけ?」

小川「叶姉妹か!全然、違うわ!」

藤原「俺の触った感覚的にはそうだったんだけどなぁ~」

小川「全然、違うし、マァ~ジで気持ち悪い!アンタとの結婚なんてナシよ!」

藤原「何で!?」

小川「こんな散財するような男と結婚生活が上手くいきますか!」

藤原「全部、君の事を思っての行動なんだけど?」

小川「うっ……そ、それは……」

藤原「それに全部、受け取ってはくれたよね?」

小川「そ、そう、だけど……」

藤原「君が改めてプロポーズしてくれって言うから妥協したのに、こっちの願いは一つも聞いてくれないの?」

小川「ごめんなさい……」

藤原「え?何?」

小川「ごめんなさい!そんなに貴方を傷付けていたなんて、思ってなくて……!」

藤原「分かってくれれば良いんだよ。さ、食事にしよう。これを受け取ってくれ。これで俺達の新たな生活が始まるんだ(箱を出す)」

小川「これは……?(箱から茶碗を取り出す)茶碗?」

藤原「そして俺自身にもプレゼント(箱を取り出し、中から茶碗を取り出す)」

小川「それも、茶碗?まさか……」

藤原「そう。夫婦茶碗だよ。これからは夫婦としてやっていこうね!」

小川「ありがとう!これからは良い奥さんとしてやっていくわね!」

藤原「俺は主夫としてやってくつもりなんでバリバリ働いてきてね!」

小川「アンタも働きなさいよ!」







―――終わり

『私の為に争わないで』



・登場人物


 北島

 小川

 藤原

 枝村

 西岡



・舞台


 小川宅







 明転。


 小川宅。卓袱台一つに座布団一つ、クッション一つ。

 小川、板付き。テレビを観ている。


小川「あはははは」


 SE、ガラスが割れる音。


小川「何っ!?」

北島「(舞台上手から登場)強盗だ!金を出せ!」

小川「ご、強盗!?」

北島「おぉっと、悲鳴を上げたりスマホを手に取ろうとするなよ?下手な事したらこのナイフがお前の体に突き刺さるぜ」

小川「ひっ……!わ、分かったわ!」

藤原「ちょっと待ったぁ!」

北島小川「何っ!?」

藤原「(舞台下手から登場)ソイツは俺が先に目を付けたんだ。退いててもらおうか」

北島「何だと?お前も強盗か?」

藤原「いや、俺は誘拐だ」

北島「誘拐犯だか何だか知らないが、先に手を出したのは俺だ。退いてもらおうか」

藤原「いいや、ここは俺だ!」

北島「俺だ!」

小川「待って!」

北島藤原「何だっ!?」

小川「私の為に争わないで!」

北島「何を言ってんだ?」

小川「私を大切に思う二人の気持ちは分かったわ!」

藤原「何?何の話?」

小川「でもだからといって二人が喧嘩するのは違うと思うの!」

北島「マジで何言ってんだ?」

小川「さぁ、二人共、手を取って?仲直りしましょ?」

藤原「は?」

小川「いつもの私達に戻りましょ?」

北島藤原「(互いの顔を見やり、頷く)」

北島「お前みたいな頭のおかしい奴をどうして取り合わないといけないんだ?」

藤原「確かに……美幸の言いたい事は凄く分かる」

北島「は?」

藤原「でも分かってくれ。これは男の意地と意地のぶつかり合いの戦いなんだ」

北島「おいおい……」

藤原「お前の事はどうしても手に入れたい。それだけは、分かってくれ」

北島「何、言って……」

小川「男って本当に馬鹿っ!美幸もう知らない!」

藤原「さぁ、男のプライドを賭けた勝負の火蓋が切って落とされた!」

小川「私は……私は一体どっちを応援したら良いの……!?」

藤原「勝つのは俺か、はたまたお前か!」

小川「私には見守る事しか出来ない……!」

藤原「最後に立っていた者が、美幸を手に入れられる!」

小川「私の為に、争わないで!もうそうは言ってられない!」

藤原「さぁ、いざ尋常に勝負!」

北島「ちょっと待てーい!何だよ、さっきっから!?」

小川「何が?」

北島「とりあえず一番、頭おかしいアンタは置いとくわ。おい、誘拐犯」

小川「(スマートフォンをポチポチする)」

藤原「何?」

北島「さっき目が合って頷いたろ!?」

藤原「うん」

北島「それが何であの展開になった!?」

藤原「だってあれは『この女のテンションに乗っかれ!』って意味じゃないの?」

北島「全然、違うわ!あれは真逆!『この女の乗せられるな!』って意味!」

藤原「あ、そうなの?俺はてっきり……」

北島「通じてなかったとしても何でそっち方向に解釈しちゃったかな!?」

藤原「いや、これはきっとこの女の取り合いになるだろうなって思ったから」

北島「意味、分からん。おい、女」

小川「はい?」

北島「『はい?』じゃねぇよ。この状況を作ったのアンタだからな」

小川「え?皆で勝手に盛り上がってただけじゃない」

北島「皆ってお前ら二人な!?俺は含まれてないからな!?」

藤原「一人だけ仲間外れってのは……」

小川「ねー」

北島「妙な一体感は生まれんで宜しい!ってかアンタ、美幸って言うの?」

小川「そうですけど?」

北島「何でアンタこの女の名前、知ってたの?ストーカー?」

藤原「だから言ったろう?誘拐犯だって。誘拐する相手くらい調べるのは普通だろ?」

北島「変な所だけ真面目なんだな」

小川「(舞台下手に退場)」

藤原「真面目が誘拐なんかするかよ」

北島「それもそうだな」

北島藤原「あっはっはっはっは!」

北島「って違ーう!和んでどうする!?この女は俺の物だ!」

藤原「おっ、さっきの続きか?良いぞ。行くぞ~?」

北島「だから違うって!俺は今、この女の手元にあるだけで良い。お前はコイツの家から金を取ろうとしてる。なら今は俺が先に金を貰って良いんじゃないかって事だよ!」

藤原「成程。お前、頭良いな」

北島「頭良い奴が強盗なんかするかよ」

藤原「それもそうだな」

北島藤原「あっはっはっはっは!」

北島「はっ!?いかん、いかん!またこのパターンだ!あれ?女ぁ?どこ行ったぁ?」

藤原「小川美幸さーん?」

枝村「突撃ー!(西岡と共に舞台下手から登場し、北島と藤原を拘束する)」

北島藤原「何、何、何、何!?」

小川「調べてあったんでしょ?私の身元」

北島「どういう事だ!?」

藤原「……あっ!そうだ!この人、小川財閥のご令嬢だった!」

小川「そう。だから我が家の特殊警護班を呼んだの。さっきまでの馬鹿女は演技よ」

北島藤原「何てこった……!」

小川「じゃあこれからは私の為じゃなくて、自分の為に争う事ね」

北島「どういう意味だ?」

小川「我が社が極秘で開いている、犯罪者達によるデスゲーム!それに参加してもらうわ!」

北島藤原「何だって!?」

小川「負ければ死!でも生き残れば大金を手にして且つ!罪も無くなる!さぁ!夢と希望を持った若者よ!命を賭けて争うのだー!」

藤原「うおー!燃えてきたー!」

北島「だから乗せられるなって!誰か、誰か助けてー!ごめんなさーい!」












―――終わり

『生きる事に疲れちゃって』



・登場人物


 北島

 藤原

 警察



・舞台


 藤原宅

 病院







 明転。


 藤原宅。卓袱台一つに座布団二つ。

 藤原、板付き。

 SE、チャイムの音。


藤原「開いてるよー」

北島「(舞台上手から登場)お邪魔しまーす」

藤原「いらっしゃい」

北島「何だよ?話って」

藤原「実は最後の挨拶をと思ってな……」

北島「最後の挨拶?」

藤原「もう生きる事に疲れてな……」

北島「何かあったのか?」

藤原「仕事でちょっとな……」

北島「まさか……」

藤原「もうこのまま辛い思いをするならいっその事、自分の手で……」

北島「待て!早まるな!」

藤原「会社を辞める!」

北島「え?」

藤原「もっと活き活きと生きていこうと思う!」

北島「……あ、そっち!?具体的に何すんの?」

藤原「自分探しの旅に出ようと思う」

北島「じゃあ外国に行くのか?」

藤原「いや、まずは日本国内を旅してからにしようと思う」

北島「あ、そう……随分、前向きなんだな」

藤原「何で?」

北島「てっきり死ぬつもりなのかと思ったから」

藤原「明日は推しのライブがあるから死ぬわけないじゃ~ん!」

北島「楽しそうで何よりだよ」

藤原「これからは自由に自分らしく自分の為に生きる!」

北島「金はどうするんだ?」

藤原「退職金はタンマリ貰えるし、給料はFXやトレードや株やNISAに費やして儲かってる」

北島「そこら辺はしっかりしてんだな」

藤原「じゃないと会社は辞めないさ」

北島「で、最後の挨拶というのは?」

藤原「あぁ、いつこっちに帰ってくるか分からないから、これが最後になるかもしれないと思って、その挨拶を」

北島「そうか。寂しくなるな」

藤原「まぁSNSだったりメールだったり電話だったりは出来るからいつでも連絡は出来るんだけどな」

北島「外国にも行くんだろ?言葉とかはどうするんだ?」

藤原「現地の通訳の人を雇ったりするつもり」

北島「流石、金持ち」

藤原「それ程でも」

北島「でもまずは日本旅行か。どこ行くんだ?」

藤原「隣の県をとりあえず車でグルっと回って、それを繰り返して日本全国を回るつもり」

北島「普通車?」

藤原「キャンピングカー」

北島「金持ち~」

藤原「それ程でも~」

北島「あ、旅費、半分出すから俺も着いていって良い?」

藤原「何で?」

北島「俺もここ暫く休暇を取ってないから休めって言われててさ。日本国内なら俺も旅したいなって思って」

藤原「あぁ、そういう。良いよ。半分も金を出さなくて良いから、代わりにキャンピングカーの運転してくれよ」

北島「あい分かった!楽しみだな~」

藤原「でもなぁ……こういうのってなぁ……」

北島「何だよ?」

藤原「こういうのって計画してるときが一番楽しいんだよなって思ってさ……」

北島「どういう事?」

藤原「いや、例えばなんだけどさ、学校の遠足とか林間学校とか修学旅行って自由時間を何するかとか、おやつを何にするかとかを決める時が一番、楽しくて、いざ当日になったら思ったより盛り上がらない、みたいな?」

北島「分からん。俺は計画してる時も当日も滅茶滅茶、楽しんだタイプだったから」

藤原「相反する記憶か……」

北島「大丈夫だって。絶対、楽しいから」

藤原「そうかなぁ……?」

北島「じゃなかったらいつまでも自宅で引き籠もってるだけの生活になっちゃうぞ?」

藤原「それもそうか。よし!行こう!」

北島「おう!」


 暗転。


 明転。


 病院。ベッドが二つ。

 北島、藤原、板付き。包帯を巻いている。


藤原「……話が違うじゃないか」

北島「いや、これはただのトラブルで……」

藤原「当日も楽しいなんて嘘だった。実際に行ったらキャンピングカーは台風で倒れて計画はオジャン。俺達は大怪我を負って入院。踏んだり蹴ったりだ」

北島「そもそも台風が来る時に行こうなんて言ったお前が悪いんじゃないか」

藤原「何おう?無駄な時間を過ごす羽目になったんだぞ。どう責任取ってくれる?」

北島「ちなみにお前、入院した経験は?」

藤原「これが初めてだ」

北島「じゃあ丁度良いじゃないか。初めての入院生活。どういう生活で、どういう食事が出てくるのか見てみようじゃないか」

藤原「いらない経験だ」

北島「いや、もし快適だったらいつでも入院して良いと安心出来るし、不快だったら二度と入院しないように気を付けて生活を送る。どっちに転んでも良い結果しかないよ」

藤原「成程。そういう考え方もあるか」

北島「気楽に行こうぜ?人生まだまだこれからなんだから」

藤原「それもそうだな。金はいくらでもあるし」

北島「嫌味~!」

警察「(舞台上手から登場)失礼します。警察の者です。お二人同時に事情聴取しても構いませんか?」

北島藤原「はい」

警察「何故、このような事故を起こされたのですか?」

北島藤原「……生きる事に疲れちゃって」

警察「自殺ですね……?」

北島藤原「いえ、違います」

藤原「現実逃避と」

北島「休暇消費です」










―――終わり

『読み方』



・登場人物


 北島

 藤原



・社長室






 明転。


 社長室。テーブル一つにソファ二つ。

 北島、板付き。

 SE、ノック音。


北島「入り給え」

藤原「失礼します。社長」

北島「藤原君か。まぁ掛け給え」

藤原「失礼します。それで、社長。何のご用件でしょうか?」

北島「非常に申しにくいんだがね……君の部下の枝村君の事でね……」

藤原「枝村が何か?」

北島「彼には申し訳無いが、この会社を去ってもらう」

藤原「それって……!?」

北島「あぁ。リストラだ」

藤原「何でアイツがリストラなんですか!?」

北島「そう声を荒げるな。真正なる協議の結果だよ」

藤原「そんな……!アイツ、この前、子供が生まれたばかりなんですよ!?」

北島「分かってる」

藤原「お袋さんも施設に入って、これからって時なんですよ!?」

北島「分かってる」

藤原「親父さんは最近、亡くなって、それでも一生懸命この会社に尽くしてきたんですよ!?

北島「分かってる。だから言っただろう。真正なる協議の結果だと」

藤原「そんな……!こんなのヒドだと思います!」

北島「ヒド?」

藤原「はい。ヒドだと思います」

北島「ヒド……ヒド……あ!コク!?酷ね!?」

藤原「あ、そうです」

北島「まぁ酷なのは百も承知。君の口から伝えてくれ」

藤原「……分かりました。そのウマを伝えます」

北島「ウマ?」

藤原「はい。ウマを伝えます」

北島「ウマ……ウマ……ムネ!?旨ね!?」

藤原「あ、そうです」

北島「まぁ旨ではなく、そのままを伝えてくれ給え」

藤原「社長……チュウチョい無いんですか!?」

北島「チュウチョい?」

藤原「はい。チュウチョいです」

北島「……あ、タメラいね!?躊躇い!」

藤原「あ、そうです」

北島「躊躇いは無いね。枝村君も、この会社の為なら身を沈める覚悟だと言っていたがね?」

藤原「そんなカラダの良い言葉を真に受けてたんですか?」

北島「カラダ?」

藤原「はい。カラダです」

北島「カラダ……あ、テイ!?体の良い言葉ね!?」

藤原「あ、そうです」

北島「君ねぇ……読み違いが多過ぎるよ……」

藤原「そんな粗探しをしてダイニンキないとは思わないんですか?」

北島「ダイニンキ……ダイニンキ……あ、オトナゲナイ!?大人気ないね!?」

藤原「あ、そうです」

北島「君ねぇ……よくそれで社会人をやってこれたね……」

藤原「特に問題が無かったので」

北島「躊躇いとか体の良い言葉とかはあまり使わないかもしれないけど、旨は結構、使う気がするけどねぇ」

藤原「今まで誰からも指摘されませんでしたから、これで良いんだと思ってました」

北島「まぁ、今更、指摘し辛い部分ではあるかな。ちなみにそれらの言葉を使って、相手はどういう反応してた?」

藤原「部下や上司、クライアントの皆さん達は誰も首を傾げてました」

北島「だろうね」

藤原「誰にでも間違いはあると思うんです。でもそれを笑わずに、正してあげるのが本当の優しさだと思うんです」

北島「その考えは間違っては無いけど、相手が君の間違いがどう間違っているのかを理解出来ているかどうかの問題もあると思うよ」

藤原「その発想は無かったです」

北島「ウマシカかな?」

藤原「ウマシカ?」

北島「そう。ウマシカ」

藤原「ウマシカ……ウマシカ……あ、バカ!?馬鹿ですね!?」

北島「人を馬鹿呼ばわりとは良いご身分だな、藤原君」

藤原「アアキレな事、言うからですよ」

北島「アアキレ?アアキレ……アホウ!阿呆か!」

藤原「社長だって人を阿呆呼ばわりするじゃないですか」

北島「君のレベルに合わせてみただけだよ。君みたいなのを雇った私が悪かった」

藤原「とんだアイダバツケですね」

北島「アイダバツケ?」

藤原「はい。アイダバツケです」

北島「アイダバツケ……アイダバツケ……あ!あぁ!マヌケ!?間抜けだな!?」

藤原「あ、それです」

北島「何でこんな奴を雇ってしまったんだ!?」

藤原「人を読む力が無かったんですね」

北島「読む力が無いのはお前だろ!」












―――終わり

『読書感想文』



・登場人物


 北島

 藤原



・舞台


 本屋のカフェ








 SE、ピンポンパンポーン。


先生「2―Aの藤原ー!早く職員室に来なさーい!」


 明転。


 本屋のカフェ。テーブル一つに椅子が二つ。

 北島、板付き。藤原、舞台上手から登場。


北島「欲しい本、買えた?」

藤原「買えた。すまんな。待たせちゃって」

北島「良いよ別に。ってかさっき何か先生、怒ってたみたいだけど、何かあったの?」

藤原「ふざけんなって怒られた……」

北島「えぇ?お前、何しでかしたんだ?」

藤原「別に何も?ただ読書感想文、出しただけ」

北島「それで呼び出し?ははぁ。さては相当、適当な事か暴言を書いたな?」

藤原「いやいや。至って真面目に書いたよ?」

北島「それで何だって?」

藤原「真面目に読書感想文を書き直してこいだって」

北島「どんなふざけた内容を書いたんだよ?」

藤原「だから至って真面目に書いたって。なのに何故か怒鳴られた……別の本にしろって言われたからそれも言ったら駄目だって……」

北島「ふーん?あ、そういえば俺も休んじゃってたからまだ読書感想文、出してないや」

藤原「どういう内容の本を読んだんだ?」

北島「それが風邪が酷くてまだ何も読んでないんだ」

藤原「じゃあ俺の本の内容を聞かせるから評価してくれよ」

北島「良いよ」

藤原「じゃあ行くぞ?今日子の愛で濡れた花びらに、秀夫の熱い厚い肉の棒が押し付けられ、今日子は声を漏らした。『あぁっ、駄目っ!それ以上は!』秀夫はたまらず……」

北島「ちょちょちょ……!待て待て待て……!え?それ、本?」

藤原「本だよ?」

北島「小説?」

藤原「そう」

北島「タイトルは?」

藤原「『今日子と秀夫~淫らな恋物語~』だけど?」

北島「官能小説かぁ!題材の時点で失敗してるよ!」

藤原「駄目だったかな?」

北島「そりゃ駄目だよ!」

藤原「何で?」

北島「何でもだ!ちなみに先生に言った代わりの本って何だ?」

藤原「『淫ら泡姫のヌルヌル地獄ショー』」

北島「アウトー!」

藤原「駄目ぇ?」

北島「絶対に駄目!こんなのが賞にでも載ったらウチ学校は世間の笑われ者だぞ!?」

藤原「こんなドエロいの賞を取るわけ無いじゃない」

北島「分かってんなら官能小説は止めろ!もしかしてさっき買ってきたのって……!?」

藤原「『団地妻、配達屋さんとの逢瀬』と『近親相姦~悲しみの親子の最後の愛情表現~』と『ネトリネトラレネトネトリ』」

北島「アウツー!アウトアウトアウトー!スリーアウトチェーンジ!」

藤原「駄目かぁ」

北島「何でお前はそんなに頭の中、ピンクなんだよ!?」

藤原「お花畑と言ってほしいね」

北島「そんな長閑な脳内じゃないわ!」

藤原「ピンクのお花畑で良いじゃないか」

北島「今はそんな話をしてるんじゃない!」

藤原「お前から言い出したんだろ」

北島「そもそもはお前が先生に呼び出されて怒られたって話だっただろ!そしてお前が官能小説を題材に読書感想文書いたって事だったろ!」

藤原「そうだったな。で、実際、駄目だったかな?」

北島「そりゃ駄目だよ!怒られるよ!」

藤原「何で?」

北島「学校の授業でエロいのは駄目だろ!」

藤原「じゃあ保健体育はどうなの?」

北島「あ、あれは教育だから良いの!」

藤原「じゃあヌード絵画がどうなの?未成年でも見れるよ?」

北島「あれは絵だから良いの!」

藤原「じゃあヌードデッサンはどうなの?」

北島「あれは芸術だから良いの!」

藤原「じゃあ何で官能小説は未成年でも買えるの?」

北島「それは……一文学として、芸術として認められてるからじゃない?」

藤原「じゃあ官能小説も教育の一つ、芸術の一つとして見られても良いんじゃない?」

北島「言われてみれば確かに……」

藤原「だろ?何が間違ってるの?」

北島「でも精神衛生面上、宜しくないんじゃ……?」

藤原「エロスがあるから人類は発展して繁栄していったんじゃないか」

北島「でも過激な表現は青少年の心に悪影響なんじゃ……?」

藤原「遅かれ早かれ気付く性癖だろ?」

北島「……一理ある」

藤原「一緒に官能小説についての読書感想文を書かないか?」

北島「俺は視野が狭かったのかもしれない。よし。お前のお勧めの官能小説を読ませてくれ」

藤原「じゃあこの本を……」


 暗転。


 SE、ピンポンパンポーン。


先生「2―Aの藤原と北島ー!このバッカモーン!早く職員室に来なさーい!」






―――終わり

『隠語』



・登場人物


 北島

 藤原

 枝村

 西岡



・舞台


 バー






 明転。


 バー。舞台上手側にバー。舞台中央と舞台下手側に別室。

 藤原、西岡、舞台中央に板付き、枝村、舞台上手側に板付き。北島、舞台上手から登場。


枝村「いらっしゃいませ」

北島「一人、入れます?」

枝村「大丈夫ですよ。あれ?お客様は初めてのご来店ですか?」

北島「はい」

枝村「申し訳ありません。当店は一見様お断りなんです」

北島「あー、菅原さんの紹介で来たのですが」

枝村「菅原様、ですか……」

北島「本当は一緒に来る予定だったんですけど、今、仕事が立て込んでて、先に行ってろって」

枝村「仕事が立て込んでる、ですか……」

北島「俺の名前を言えば入れるって聞いてきたんですけど、ご迷惑なら出直します」

枝村「いえ、そういう事でしたら大丈夫です。こちらへどうぞ。何にします?」

北島「テキーラ、ワンショットで」

枝村「……畏まりました。こちらへどうぞ」

北島「個室に案内してくれるんですか?」

枝村「その方が良いでしょう?」

北島「まぁこの後、先輩、来るしな。じゃあお言葉に甘えて(枝村と共に舞台中央の部屋に入る)」

藤原「どうも」

北島「どうも?」

枝村「菅原さんの紹介だそうで」

藤原「菅原さんね、はい」

枝村「ではごゆっくりどうぞ(舞台上手に退場)」

北島「え?あの……」

藤原「まぁ、座って、座って」

北島「は、はい……」

藤原「オーナーの藤原です」

北島「あ、どうも。北島です」

藤原「菅原さんの紹介とか?」

北島「そうですね」

藤原「いくら持ってきた?」

北島「え?今は十万しか持ってないですけど」

藤原「はっはっは!十万か!冗談がキツイねぇ!」

北島「あの、ここってそんなに高いんですか……?カード使えるなそれで払いますけど……」

藤原「いや、その心意気や良し!今回はそれで勘弁してあげるよ」

北島「は、はぁ……」

藤原「何、飲む?」

北島「テキーラを」

藤原「どういった飲み方で?」

北島「ワンショットで」

藤原「おつまみは?」

北島「ナッツで」

藤原「分かった。おい」

西岡「はい(舞台下手に退場し、ショットガン一丁とマガジン七つを持って舞台下手から登場)どうぞ」

藤原「は?」

藤原「テキーラ、ワンショット、ナッツね。じゃあ十万、貰おうかな」

北島「え?え?え?」

藤原「早く」

北島「あの、どういう事ですか?」

藤原「何が?」

北島「俺、酒を飲みに来ただけなんですけど……」

藤原「だから、酒、飲みに来たんだろ?」

北島「えーっと……ちなみにこれって何ですか?」

藤原「だから、テキーラ、ワンショット、ナッツだよ」

北島「隠語ですか?」

藤原「え?知らないの?」

北島「はい」

藤原「知ってて言ってたんだと思ってた。誰かから言えって言われたの?」

北島「菅原さんがここのテキーラとナッツは美味いって聞いてきたんで」

藤原「そうなんだ。えーっと、酒を飲むは銃を求めるで、テキーラはショットガン、ワンショットは一丁、ナッツはマガジン七つって意味だよ」

北島「あ、本当にヤバい隠語だったんだ!?違いますよ!俺は本当にお酒を飲みに来ただけです!」

藤原「あ、そうなの!?で、でも菅原さんの紹介って……」

北島「菅原裕次です!」

藤原「菅原裕太じゃなくて!?」

北島「はい!」

藤原「そうなんだ……どうしようかな……」

北島「とりあえず、その物騒な物を下げて頂いて……」

藤原「あぁ、そうだな。おい」

西岡「はい(ショットガンとマガジンを持って舞台下手に退場)」

藤原「さて、どうしようか……」

北島「あの、俺、もうあっち行っても良いですか?」

藤原「そこなんだよ、問題は」

北島「は?」

藤原「ウチの秘密を知った以上、ただで帰す訳にはいかない」

北島「そんな!俺、誰にもこの事は言いません!」

藤原「その保証は?」

北島「……(名刺を取り出す)」

藤原「名刺?」

北島「俺の会社の名刺です。もし不穏な動きがあれば即、俺を殺すなりなんなりして下さい」

藤原「これが君のだって証拠は?」

北島「他にも名刺はあります(名刺を見せる)」

藤原「君が会社を辞めるかもしれないじゃないか」

北島「今、俺はやっと課長になりました。この役職を捨てるつもりはありません」

藤原「分かった。信じよう。えーっと北島さんね。ん?北島!?」

北島「え?あぁ、はい」

藤原「ちなみに、今日、帰さなかったらどうなってましたか……?」

北島「え?えーっと、今週末の京都での彼女との旅行が駄目になってました」

藤原「今週末……!?京都……!?彼女……!?旅行……!?」

北島「あの……?」

藤原「分かった!分かりました!今日はもうお帰り頂いて結構です!」

北島「え?え?え?」

藤原「オヤジさんにどうぞ宜しくお伝え下さい!」

北島「俺の親父と知り合いなんですか?」

藤原「えぇ!えぇ!良く存じております!ここは私の胸に収めておくのでどうぞお引き取り下さい!」

北島「え、帰っても良いんですか?」

藤原「はい!もし良かったらここで好きなだけ飲んでって下さい!」

北島「え、そこまでしてもらって良いんですか?」

藤原「はい!どうぞそちらでお休みになって下さい!」

北島「はぁ。じゃ、じゃあこれで失礼します(舞台上手の部屋に移動)」

藤原「どうぞごゆっくりー!(見送った後慌てて舞台下手に退場)」

北島「……何の隠語だったんだろう?」










―――終わり

『ボールペン』



・登場人物


 北島

 藤原



・舞台


 ルームシェアハウス






 明転。


 ルームシェアハウス。卓袱台一つに座布団二つ。

 北島、板付き。藤原、舞台上手から登場。


藤原「ただいまー」

北島「おかえりー。パチンコどうだった?」

藤原「今日も大勝ちしたよー」

北島「マジで?ルームシェアするようになってからよく勝つなぁ」

藤原「お前から運を貰ってるのかもな」

北島「止めてくれよー。一年分も持ってかないでくれよなー。で、今日はどんだけ勝ったの?」

藤原「ほら(ポケットからボールペン十本取り出す)」

北島「何これ?」

藤原「ボールペン」

北島「それは見りゃ分かるよ。まさかそのまんま持って帰ってきたの?」

藤原「だって店員さんが大勝ちしたらこれを勧めてきたんだよ?」

北島「そのまんま持って帰ってくる奴があるか!」

藤原「これって記念でくれるんじゃないの?」

北島「違うわ!」

藤原「じゃあこれどうすんの?」

北島「詳しくは言えないけど!」

藤原「何で?」

北島「グレーな事だから!」

藤原「え、何それ怖い」

北島「そのボールペン持ってどこか行く人、見た事無い?」

藤原「どこに?」

北島「どことは言えないけど……」

藤原「え?ヤバい所?」

北島「ちゃんとした所だよ」

藤原「え、何か怖い」

北島「ちなみにそのボールペン見せてみて」

藤原「はいよ」

北島「……一gが十本!?って事は八万円!?」

藤原「何が?」

北島「このボールペンの値段だよ!一本、八千円じゃないか!」

藤原「そんなにすんの?」

北島「元手はいくら?」

藤原「二千」

北島「って事は四十倍か……凄いな……」

藤原「ねぇ。どこで何すんの?」

北島「どこをどうとは言えないけど……」

藤原「誰に聞けば良いの?」

北島「常連さんの友達いないの?」

藤原「あー、いる」

北島「その人に聞いてみな」

藤原「分かった。聞いてみる」

北島「待って?ここ一年、毎日、通ってたんだよね?」

藤原「今日で丁度、一年だな」

北島「いつも大勝ちしてたよな?」

藤原「うん」

北島「今までどれだけボールペン貰ってきたの?」

藤原「えーっと、一日、二千、注ぎ込んで毎回、十本貰ってきたな」

北島「って事は八万×三百六十五日で……二千九百二十万!?」

藤原「それを考えると七十三万もパチンコに費やしてるんだな」

北島「それを差し引いても約二千万、勝ってるんだろ?凄いよ。マジで」

藤原「照れる」

北島「ってかお前、今まで溜めてたボールペン、使ってないだろうな?」

藤原「使ってないよ。記念だもん」

北島「そうか。良かった」

藤原「何か使ってたらマズかった?」

北島「いや、大丈夫だとは思うけど、使ってたらあれが出来ない可能性があったから」

藤原「あれって?」

北島「まぁ、良い事」

藤原「そうなんだ。危なー。ってか良い事って何?」

北島「それは行ってからのお楽しみ」

藤原「分かった」

北島「ってかどこに大量のボールペン溜め込んでたんだ?」

藤原「飾ってた」

北島「後で見せてくれよ」

藤原「良いよ」

北島「とりあえず明日ボールペン全部持ってパチンコ屋行け」

藤原「分かった。で、どこで何するんだっけ?」

北島「どこでどうとは言えないけど……」


 暗転。


 明転。


 ルームシェアハウス。

 北島、板付き。藤原、舞台上手から登場。


藤原「ただいま!」

北島「おう。おかえり。どうだった?」

藤原「うん!凄く良い事があった!」

北島「誰から聞いた?」

藤原「パチンコ屋の親切な常連さんが教えてくれた!」

北島「どこにあった?」

藤原「どことは言えないけど!」

北島「だよな!」




―――終わり


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