コント集22
コント集22
211・・・・パシリ
212・・・嫁
213・・・結婚の挨拶
214・・・自白
215・・・弱い者虐め
216・・・暴れられない将軍
217・・・ツンデレ?
218・・・かもしれない
219・・・引き語り
220・・・副社長代行代理補佐
『パシリ』
・登場人物
北島
藤原
枝村
・舞台
高校の教室
・衣装
枝村・・・短ラン
※備考
枝村・・・常にヤンキーのやや間延びしたような口調
明転。
高校の教室。机が三つに椅子が三つ。
北島、藤原、板付き。
枝村「(舞台下手から登場)よう藤原く~ん!今日も元気に登校してきたようだなぁ?」
藤原「あ……枝村君……おはよう……というかお昼から何だね……」
枝村「知ってるだろぉ!?俺、朝は眠いんだよ!」
藤原「あ、そうだったね……ごめんね……」
枝村「そうそう、悪いんだけどさぁ、今日も俺、宿題、忘れてきちゃったんだよねぇ!また見せてもらえるかなぁ!?」
藤原「あ、い、良いよ……(鞄からプリントを出して枝村に渡す)はい……」
枝村「サンキュー!いやぁ、いつも悪ぃなぁ!(鞄から自分の分のプリントを取り出して写す作業に入る)」
藤原「あぁ、困ったなぁ……」
北島「大丈夫?藤原君」
藤原「えっ?あぁ、まぁ、うん……」
北島「ねぇ、藤原君。最近、枝村君に虐められてない?」
藤原「あぁ、まぁ、パシリにはされてるかな」
北島「こういうのは先生に言うべきだよ」
藤原「あまり事を大きくしたくないんだ……」
北島「でもちゃんと言いたい事は言わないと……」
藤原「後から何されるか分からないし……怖いから、今のままで良いんだよ……」
北島「そっか……でも何かあったら、俺で良かったら話くらいは聞くからさ」
藤原「ありがとう……」
枝村「何だ何だぁ!?北島君!?俺が何だってぇ!?」
北島「あ、いや、何でもないよ……」
枝村「俺と藤原君は仲良しなんだよ!なぁ!?藤原君!?」
藤原「う、うん……そうだね……」
枝村「丁度、昼休みだしちょっと焼きそばパン買ってきてくれよ!」
藤原「えっ、また……?」
枝村「何!?嫌なの!?」
藤原「あ、いや……分かった。買ってくるよ……(舞台下手に退場)」
枝村「悪いなぁ!」
北島「……ねぇ、枝村君?」
枝村「何?」
北島「ちょっと言わせてもらうけどさ、枝村君、藤原君の事を虐めるのもう止めなよ」
枝村「虐め?虐めてないよ?」
北島「虐めてるじゃん。遅刻してきた挙句、宿題みせてもらった上にパシリまでさせてさ」
枝村「してないよ?」
北島「してるじゃん!可哀そうだろ!」
枝村「じゃあ北島君が代わりになるか?」
北島「うっ……そ、それは……」
枝村「嫌なら口出ししない事だな」
藤原「(舞台下手から焼きそばパンを持って登場)お待たせー……」
枝村「遅いよ~!」
藤原「ご、ごめん……(焼きそばパンを枝村に渡す)」
枝村「いくらした?」
藤原「二百円だったよ……?」
枝村「二百円か。じゃあはい、千円ね(財布から千円札を取り出して藤原に渡す)」
北島「えっ?」
藤原「あ、じゃあお釣り……」
枝村「釣りは要らねぇよぉ!買ってきてもらったお駄賃だよぉ!」
北島「えぇっ?」
枝村「あ、今日の宿題の分も払うよぉ!(財布から千円札を取り出して藤原に渡す)はい、千円!」
北島「えぇっ!?」
藤原「あの、昨日の焼きそばパン代、なんだけど……」
枝村「あぁ!?お前、それ先に言えよぉ!借金はすぐ返さないと信用無くすからよぉ!(財布から千円札を取り出して藤原に渡す)はい、千円!」
藤原「あ、お釣り……」
枝村「釣りは要らねぇよぉ!迷惑料だと思って取っとけよぉ!」
藤原「あ、ありがとう……」
枝村「こっちこそありがとぉ!(焼きそばパンを食べながら宿題を写す)」
北島「あの、藤原君?」
藤原「何?」
北島「さっきの何?」
藤原「さっきのって?」
北島「何か、めっちゃお金、貰ってたけど」
藤原「あぁ、いつものパシリだよ」
北島「ぱ、パシリ……?パシリって普通、お金を相手に払わせたりしない?」
藤原「枝村君、真面目だから」
北島「真面目……?で、でもいつも昼から学校、来てるし、不良なんじゃないの?」
藤原「枝村君は新聞奨学生だから深夜から朝まで新聞配達してて、朝には兄弟達のお弁当作ってるから朝は疲れて寝ちゃうんだ」
北島「宿題やってこないのは?」
藤原「他にもやってるバイトが忙し過ぎてやる暇が無いんだ」
北島「じゃああの短ランは?」
藤原「枝村君はお兄さんのお下がりを着てるからあんな感じなんだ」
北島「あ、じゃあ単純に背が低かっただけなんだ?」
藤原「そう」
北島「じゃあ何であんなに羽振りが良いの?」
藤原「僕もそこは考えてるんだよね……家が厳しい状況だから、少しでも助けたいからお金は要らないよって言ってるのに『義理は通す』とか言って押し付けてくるの。本当、困っちゃうよね……」
北島「……あ、そっちで困ってるんだ!?」
藤原「何か言って後から何されるか分からないから迂闊に言えないし……」
北島「後から何されるか分からないって言うのはどういう事なの?やっぱり虐められてるんじゃない?」
藤原「いや、多分、皆の前で土下座して二度と僕を頼ってこないと思う」
北島「……まぁ、このままだと枝村君の為にならないし、その方が自分の家庭環境に向き合う切っ掛けになるんじゃないの?」
藤原「でも枝村君には退学になってほしくないし……」
北島「何でそんなに枝村君を庇うの?」
藤原「枝村君には小学校、中学校と虐めから助けてもらってたから、その恩があるんだ」
北島「友情だなぁ」
藤原「照れるよ」
北島「親御さんはどうしてるとか知ってるの?」
藤原「ご両親は枝村君が小学生の時に蒸発してね。今は親戚の家に居るんだけど、邪魔者扱いされてて生活費は枝村君と枝村君のお兄さんとで稼いでる感じ」
北島「複雑な家庭環境やなぁ」
藤原「枝村君のお兄さん的にはせめて高校は出てほしいって事で今は高校に通ってるけど、卒業したら就職するつもりらしい」
北島「へー……事情があったんだなぁ……え?あれ?最初に言ってた『困った』ってどういう事?」
藤原「このままじゃ枝村君が出席日数が足りなくて留年か退学になっちゃうなぁと思って……」
北島「優しっ!」
藤原「少しでも枝村君の生活を楽にさせようと思ってお金を渡そうと思ってたんだけど『友達から金は受け取れない』って断られちゃって……」
北島「真面目やなぁ」
藤原「だから言ってるじゃん。枝村君は真面目だって」
北島「そうだった」
枝村「終わったぁ!藤原君、サンキューな!(藤原のプリントを返す)」
藤原「あぁ、うん、お疲れ様……」
音声「三年B組の枝村君、職員室まで来なさい」
藤原「なんだろう?ちょっと行ってくるわ!(舞台下手に退場)」
北島藤原「行ってらっしゃい」
北島「何だろうね?」
藤原「さぁ……?」
枝村「(舞台下手から登場)ただいま……」
藤原「あ、おかえり、枝村君。何だったの?」
枝村「両親が見付かった……」
藤原「どこで!?」
枝村「県外で」
藤原「何で!?」
枝村「金が無くて県外に逃げてたんだけど、また金が無くなってこっちに帰ってきて、俺が働いてたバイト先、全てを勝手に退職させてバイト代をかき集めてたところに警察が来て捕まったらしい……」
藤原「本当に……!?ど、どうするの?これから?」
枝村「とりあえずまたバイト先を見付けなきゃな……見付からなければ、退学だ……」
藤原「それだけは駄目だよ!僕が助けるから!」
枝村「でも友達から金を借りるのは……」
藤原「いつも僕にくれてるお金、貯めてるから!それを返すよ!それでどうにか卒業まで後少しなんだし、頑張ってよ!」
北島「俺も手伝うよ!」
枝村「藤原君、北島君……!」
北島藤原「枝村君……!」
暗転。
音声、卒業式の合唱曲。
明転。
高校の教室。
北島、藤原、枝村、板付き。
北島「無事、卒業出来たね」
枝村「あぁ。二人のお陰だよ」
藤原「僕は大学進学だけど、二人はこれからどうするの?」
北島「僕も大学進学」
藤原「北島君、頭良かったもんね。枝村君は?」
枝村「俺は車製造の工場に就職」
藤原「そっか。頑張ってね」
枝村「おう!お前等もな!」
藤原「最後に何か思い出に残る事やりたいな。枝村君、何かやってよ」
枝村「えぇ!?俺ぇ!?」
北島「そうそう!最後はやっぱり枝村君でしょ!」
枝村「えぇ~?そうだなぁ……あ、そうだ!焼きそばパン買ってこい!」
北島藤原「はーい!」
北島「初めてパシリにされたね」
藤原「ねー!(北島と共に舞台下手に退場)」
―――終わり
『嫁』
・登場人物
藤原正将
藤原美幸
・舞台
パーティ会場
明転。
パーティ会場。
正将、美幸、板付き。
正将「あ、主任。パーティ楽しんでますか?こっちは嫁の美幸です」
美幸「美幸です。主人がいつもお世話になってます」
正将「はい。では後程。あ、係長。パーティ楽しんでますか?こっちは妻の美幸です」
美幸「美幸です。主人がいつもお世話になってます」
正将「はい。では後程。あ、課長。パーティ楽しんでますか?こっちは奥さんの美幸です」
美幸「美幸です。主人がいつもお世話になってます」
正将「はい。では後程。あ、部長。パーティ楽しんでますか?こっちは家内の美幸です」
美幸「美幸です。主人がいつもお世話になってます」
正将「はい。では後程。あ、専務。パーティ楽しんでますか?こっちはパートナーの美幸です」
美幸「美幸です。主人がいつもお世話になってます」
正将「はい。では後程。あ、社長。この度はパーティにお呼び頂いてありがとうございます。こっちは相方の美幸です」
美幸「美幸です。主人がいつもお世話になってます」
正将「パーティ楽しませて頂きます。それでは失礼します。あー、挨拶、終わった。後は飲んで喰って帰ろう」
美幸「ねぇ、ちょっと良い?」
正将「何?」
美幸「何でいちいち私の紹介が違うの?」
正将「紹介が違う?どういう事?」
美幸「嫁だの妻だの奥さんだの。何で呼び方が毎回、違うの?」
正将「別に深い意味は無いよ。単にその場に応じて変わっただけ」
美幸「じゃあ統一してよ。落ち着かないから」
正将「分かった。じゃあこれからは相方って呼ぶようにするよ」
美幸「何でよりによってそれなの!?漫才じゃないのよ!?」
正将「じゃあ何て呼べば良いの?あ、パートナー?」
美幸「海外の人には良いかもしれないけど、日本じゃあねぇ……」
正将「じゃあ家内?」
美幸「若い人達に通じるかなぁ?」
正将「じゃあ嫁?」
美幸「嫁って若い人のイメージもあるしなぁ」
正将「じゃあ奥さん?」
美幸「目上の人に下の人の妻をさん付けするのもなぁ」
正将「じゃあ妻?」
美幸「そうだねぇ。それがベストかもねぇ」
正将「じゃあ最初からそう言えば良いじゃん。何だよ。この無駄な質疑応答」
美幸「無駄って何さ!?」
正将「だって無駄だろ。最初から妻って紹介してって言えば済んでた話じゃん」
美幸「そもそもの話で言ったら、そっちが私の事を色んな紹介の仕方で呼んでたのが始まりでしょ!?何で私が悪いみたいな言い方してんのよ!?」
正将「ごめんなさい」
美幸「じゃあこれからは妻って紹介してよね!?」
正将「はい」
暗転。
明転。
パーティ会場。
正将、美幸、板付き。
美幸「あ、主任。パーティ如何ですか?こちらは夫の正将です」
正将「正将です。美幸がいつもお世話になっております」
美幸「それではまた。あ、係長。パーティ如何ですか?こちらは旦那の正将です」
正将「正将です。美幸がいつもお世話になっております」
美幸「それではまた。あ、課長。パーティ如何ですか?こちらは主人の正将です」
正将「正将です。美幸がいつもお世話になっております」
美幸「それではまた。あ、部長。パーティ如何ですか?こちらはパートナーの正将です」
正将「正将です。美幸がいつもお世話になっております」
美幸「それではまた。あ、専務。パーティ如何ですか?こちらは相方の正将です」
正将「正将です。美幸がいつもお世話になっております」
美幸「それではまた。あ、社長。パーティにお呼び頂きありがとうございます。こちらは相棒の正将です」
正将「正将です。美幸がいつもお世話になっております」
美幸「引き続きパーティ楽しませて頂きます。それでは」
正将「……なぁ」
美幸「何?」
正将「呼び方、統一してくれない?」
美幸「あ、無視息だった。ごめん。これからは夫って言うね」
正将「個人的に相棒が一番しっくり来たんだけどな」
美幸「自分で言っといて何だけど、それにしっくり来られても困るんだけど」
正将「じゃあ言うなよ」
美幸「ごめんなさい」
―――終わり
『結婚の挨拶』
・登場人物
北島康介
藤原正将
藤原美幸
・舞台
藤原家
明転。
藤原家。舞台上手に玄関。舞台中央に廊下。舞台下手に和室。和室にはテーブル一つに座布団三つ。
北島、美幸、正将、板付き。
北島「あー……緊張する……」
美幸「大丈夫だよ。ウチのお父さんは昔ながらの頑固親父みたいな人じゃないから、きっと結婚を許してくれるよ」
北島「だと良いんだけど……」
美幸「行くよ?(インターホンを鳴らす)ただいまー。連れてきたよー」
正将「入りなさい」
北島「お、お邪魔します!」
一同、席に着く。
正将「今、母さんは出掛けていてね。私、一人で挨拶を聞く事にするよ」
北島「は、はい!」
美幸「じゃあ私、お茶、淹れてくるから」
北島「ちょ、ちょっと美幸!置いていくのか!?」
美幸「男同士の方が話し易い事もあるでしょ?じゃあね(舞台中央奥に退場)」
北島「あっ……」
正将「えーっと、君は何君だね?」
北島「は、はい!北島康介と申します!美幸さんとは結婚を前提にお付き合いさせて頂いております!」
正将「結婚、か」
北島「お義父さん、娘さんを僕に下さい!」
正将「君にお義父さんと呼ばれる筋合いはある!」
北島「は、はい!すみません!では何とお呼びすれば宜しいですか……?」
正将「だからお義父さんと呼べば良いだろう」
北島「え?でも筋合いは無いって……?」
正将「筋合いはあるって言ったんだ」
北島「え?あ、え?あ、はい……?」
美幸「(お茶を持って舞台中央奥から登場)お待たせー(お茶を配る)。あれ?康介、お菓子、渡した?」
北島「あ、そうだ!こちら、最近、有名になった和菓子です!(紙袋を差し出そうとして正将のお茶を零す)あっ!」
正将「熱っ!何をする!?」
北島「すみません!すみません!(ハンカチで拭く)」
正将「絶対に許す!」
北島「すみません!本当にすみません!」
正将「もう良い。すぐ乾くから」
北島「本当に申し訳ありませんでした!」
正将「絶対に許す」
北島「すみません!」
正将「ちょっと着替えてくる(舞台中央奥に退場)」
北島「あー……!やっちゃったぁ……!」
美幸「そんな気にしなくて良いよ」
北島「だってあんなに怒って……」
美幸「ちっとも怒ってないよ?」
北島「え?でも……」
美幸「絶対に許すって言ってたでしょ?絶対に許したんだよ」
北島「……あ、絶対に許さん、だと思ってた!え?じゃあ許されたの!?」
美幸「うん。他にも何か言われた?」
北島「えーっと、お義父さんと呼んだら『君にお義父さんと呼ばれる筋合いはある!』って言われた」
美幸「じゃあそうなんじゃない?認めてるんだよ」
北島「……あ、何か違和感ある言い方してるなと思ったらそういう事!?乗り気なの!?」
美幸「多分ね。嬉しいんだと思うよ?」
北島「あっそー……」
正将「(舞台中央奥から登場)お待たせ。で、今日は何の用で来たんだっけ?」
北島「はい!本日は美幸さんとの結婚を認めて頂きたくご挨拶に伺いました!」
正将「ほう?君が?娘と?」
北島「はい!お義父さん!娘さんを、僕に下さい!」
正将「……北島君と言ったね?」
北島「はい!」
正将「君のような男に娘はやれる!帰りなさい」
北島「……駄目じゃないか!」
美幸「ちゃんと聞いて!お父さん、もう一度、言ってあげて!?」
正将「君のような男に娘はやれる!帰りなさい」
北島「……もうバグり過ぎて訳分かんなくなってきた……えーっと、結婚を認めて下さるのですか……?」
正将「だから言っているだろう。北島君と結婚しなさい、美幸」
美幸「やったね!康介!」
北島「あぁ……認められたんだかそうでないんだかよく分からなくなってきた……何で帰れって言ったんですか?」
正将「結婚式とか色々やる事があるだろうから、これから忙しくなるだろう?だから挨拶はここらで終わらせて家に帰ってゆっくり休みなさいって意味だ」
北島「あ、そう、ですか……ではこれから宜しくお願い致します」
正将「娘を宜しく頼むよ、北島君。いや、康介君」
北島「はい!」
正将「一見、気の置ける人かと思ったが、これなら娘を任せられるな。康介君。娘は意外と隅に置ける人間だから気を付けてね?」
北島「あぁ……もう分かんなくなってきた……」
美幸「ひっど~い、お父さん!私はこれでも仕方ある人間なんだからね!?」
北島「あ、遺伝してる」
―――終わり
『自白』
・登場人物
北島
藤原
西岡
・舞台
別荘
明転。
別荘。ソファが二つ。
北島、西岡、板付き。
北島「しかし藤原もこんなコテージを持ってるなんてな。金持ちは凄ぇな」
西岡「なー。皆で来れて良かったな」
藤原「(舞台上手から走って登場)大変だ!」
北島「どうした?藤原」
藤原「枝村が死んでる!」
北島西岡「何だって!?」
西岡「どうしてだ!?」
藤原「分からない!血塗れになってる!」
西岡「分かった!ここは刑事の俺が対応するから二人はここを動かないように!(舞台上手に退場)」
北島藤原「分かった!」
北島「何で死んでたんだ……?」
藤原「刺し傷があった。心臓を一突きだ」
北島「外部犯の犯行か?」
藤原「その可能性はある。このコテージの周りには他にもコテージを持ってる人達がいるからな」
北島「そうか……怖いな……」
藤原「あぁ。まさか睡眠薬を飲まされて寝ているところを刺されるなんてな」
北島「……ん?」
藤原「しかもこの別荘には無い包丁を使って外部犯にしようと仕立て上げるなんてな」
北島「んん?」
藤原「わざわざこの計画の為にこのコテージを買って、アリバイ作りの為に他にも友人を集めてきたなんてな。用意周到過ぎるよ」
北島「えっ?ちょっと待って?」
藤原「どうした?」
北島「殺した?」
藤原「誰が?」
北島「お前が」
藤原「誰を?」
北島「枝村を」
藤原「そんな訳無いじゃ~ん!」
北島「だよね!?そうだよね!?」
藤原「何で俺が仕事を横取りされて左遷され掛けた事を根に持って殺したとか思うんだよ~」
北島「絶対、殺しただろ!?」
藤原「社長令嬢との結婚も白紙にされて逆に枝村が結婚して次期社長になった事に対して嫉妬して殺す訳無いだろ~」
北島「いやいやいや!絶対、殺しただろ!お前だろ!?犯人!」
藤原「違うよ~。借金、百万を返さずに踏み倒したくらいで殺したりなんかしないよ~」
北島「あぁ!次から次へと自白を!お巡りさーん!こっち来て下さーい!」
西岡「(舞台上手から登場)どうした!?」
北島「犯人がいます!」
西岡「どこに!?」
北島「ここに!」
藤原「何で俺が~?俺の嫁が枝村の連帯保証人にされて借金を負わされる羽目になったからって殺す訳無いだろ~」
西岡「……こう言ってるが?」
北島「はぁ!?どっからどう見てもコイツだろ!犯人!」
西岡「他に何か根拠は?」
北島「殺し方とか凶器の在り処とか今回の計画を練ってた事とか全部、言ってたぞ」
藤原「それは『そうなんじゃないかな』って思って言った事であって~」
北島「じゃあ何であんな明確な動機を言ったんだよ?」
西岡「動機?」
北島「仕事を横取りされたとか、次期社長の座を奪われたとか、借金を踏み倒されたとか」
藤原「だからそれは『そんな事で殺したりしないよ』って話をしただけであって~」
西岡「……って言ってるけど?」
北島「今ので分からない!?それでも刑事!?」
西岡「俺、某県警だから……」
北島「自覚しているなら分かれよ!だから『これだから某県警は』って言われんだろ!?」
西岡「あ、侮辱罪。逮捕ね(北島の腕を掴む)」
北島「何すんだよ!?(腕を振り払う。その時、西岡の頬に手が当たる)」
西岡「あっ……」
北島「こんな事より大事な事が起こってるだろ!?」
西岡「えー、十二月三十一日、午後十時三十分。公務執行妨害、及び暴行罪で逮捕(手錠を取り出し、北島の手に掛ける)」
北島「はっ!?」
SE、パトカーと救急車のサイレンの音。
西岡「丁度パトカーと救急も着いたな。ついでに今回の事件についての自供もしてもらうから」
北島「俺は無罪だー!」
西岡「良いから来い!(北島を連れて舞台上手に退場し、すぐに戻ってくる)」
藤原「刑事さん、後は宜しくお願いします」
西岡「良いって事よ。俺もアイツに妻を寝取られて個人的に恨みがあるからな」
藤原「でも良いのか?北島を犯人にしちゃって」
西岡「某県警だぞ?ザル過ぎてすぐ無罪で釈放よ」
藤原「じゃあこの事件は?」
西岡「通り魔の犯行でお蔵入り。そういう筋書きだ」
藤原「全ては計画通りにって事か」
西岡「元々、裏とも繋がりがあるって事でマークはされてた。殺されて喜ばれこそすれ恨まれる筋合いは無ぇよ」
藤原「だよな」
藤原西岡「はっはっはっはっは!」
―――終わり
『弱い者虐め』
・登場人物
北島(教師)
藤原(学生)
西岡(学生)
・舞台
学校
明転。
学校。教卓一つに黒板一つ。
藤原、西岡、板付き。
西岡「うぇ~い!藤原、コラッ!(藤原を殴る)」
藤原「や、止めてよ、西岡君……!」
西岡「何だ~?口答えするのか~?あぁ!?」
藤原「ひっ……!ご、ごめんなさい!」
北島「コラーッ!止めろー!」
西岡「ヤベッ!先公だ!」
北島「(舞台上手から登場)止めろ!西岡!まーたお前は!何度も言ってるだろう!弱い者虐めは駄目だと!」
西岡「五月蠅ぇな!お前には関係無ぇだろ!」
北島「早く藤原に謝りなさい!」
藤原「ちょっと待って下さい、北島先生。今、僕の事、弱い者と罵りましたか?」
北島「え?」
藤原「謝って下さい」
北島「え?え?ちょっと待って?俺が悪いの?」
藤原「そうでしょう?人の事を勝手に弱い者と決め付けて罵ったんですよ?」
北島「罵ってないよ!?」
藤原「でも僕の事、弱い者と言いましたよね?」
北島「言ったけど……」
藤原「それって普段から僕の事を弱い者として見下してるって事ですよね?謝って下さい」
西岡「そうだそうだ!」
北島「違うじゃん!お前を守ろうとしたんじゃん!」
藤原「でもどさくさに紛れて僕を下に見る発言をしましたよね?それって普段から僕の事を格下だと思って接してきたって事ですよね?」
西岡「そうだそうだ!」
北島「全然違うよ!?虐められてる生徒に優しく接してただけだよ!?」
藤原「じゃあ何故わざわざ僕を弱い者と言ったんですか?」
北島「それはだな……」
西岡「藤原は芯のある強い男だ!決して弱い者なんかじゃない!」
北島「お前はさっきからどの立場で物を言ってるんだ!?虐めてた側だよな!?」
西岡「何?じゃあずっと虐めてなければいけないの?」
北島「だってお前、藤原を虐めてただろ?」
西岡「折角の更生のチャンスなのに?」
北島「あ、更生しようとしてたの!?じゃあ応援するけどさ!」
藤原「僕の話を無視しないでくれますか?」
北島「あ、ごめんごめん」
藤原「その『ごめん』は何に対しての『ごめん』ですか?」
北島「話を途切れさせてしまっての『ごめん』」
藤原「全く反省してないんですね。今はその『ごめん』じゃないでしょう?」
北島「別に罵ったり、蔑んでたりしてるつもりは無かったんだよ。それくらい許せよ」
藤原「受け取った側はそうは思わなかったと言っているんです。北島先生、本当に大学で講義、受けたんですか?」
北島「まだ大学に行ってない癖によく言うよ……」
藤原「あ、また馬鹿にした。先生たるもの、生徒を見下すだなんて言語道断ですよ?」
北島「あのねぇ、俺は藤原を助けに来てやったんだよ?お礼くらい言えないのか?」
藤原「『助けに来てやった』?何ですか?そんな上から目線で。風紀を守るのも教師の仕事でしょう?やって当然でしょう?」
北島「こんなゴチャゴチャした事は仕事に含まれません!善意でやってるんだ!」
藤原「じゃあその善意とやらで人を傷付けたんですね?」
北島「正義感だな」
藤原「先生の正義感は生徒を見下す事も含まれるんですか?」
北島「そんなつもりは無い!」
藤原「でも事実、僕は傷付けられた訳で」
北島「だからそんなつもりは無い!ただ助けようとしただけだ!」
藤原「助けようとして人の心を踏みにじるとかどういう神経してんですか?」
北島「酷い言い方!」
藤原「この事は教育委員会の方に報告させて頂きますね」
北島「待て待て待て!俺はお前を助けて、コイツを更正させようとしたんだぞ!?何でこんな事で報告されなくちゃいけないんだ!?」
藤原「『こんな事』?『こんな事』と仰いましたか?」
北島「あっ、やべっ。またいらん事、言っちゃった……?」
藤原「(ポケットからスマートフォンを取り出す)ちなみにこの一連の話は録音してるので、これも教育委員会に報告させて頂きますね」
北島「お、おい……ちょっと待ってくれよ……金か?金が欲しいのか……?」
藤原「あ、これも報告しますね。何でも金で解決出来ると思ったら大間違いだ!」
北島「何で俺がこんな目に!?」
藤原「(スマートフォンをタップし、北島に渡す)出てみて下さい」
北島「えっ、何が?」
藤原「電話」
北島「何で俺が今……?もしもし……?あっ!?教頭先生!?何で藤原のスマホに!?はい!はい!あ、今すぐ行きます!はい!(スマートフォンを藤原に返す)俺、クビになるかもしれない……」
藤原「でしょうね。この話、ずっと聞いてましたからね」
北島「何でこんな事をした!?」
藤原「それは直接、教頭先生にお聞きなったら如何ですか?」
北島「ぬっ、がっ、ぐっ……!クソッ!(舞台上手に走って退場しようとする)」
藤原「あ、先生。待って下さい。言い忘れた事、あるでしょ?」
北島「え……?何……?」
藤原「『ごめんなさい』は?」
北島「……ごめんなさーい!(舞台上手に走って退場)」
西岡「上手くいったな」
藤原「うん。ご協力ありがとう」
西岡「良いんだよ。前々からウザかったし」
藤原「今時、熱血教師って流行らないよねー」
西岡「コンプラ、コンプラ」
―――終わり
『暴れられない将軍』
・登場人物
将軍
隠密
代官
商人
部下A~D(何人でも良いが、最低でも四人)
・舞台
代官の家
・衣装
総じて和服
明転。
代官の家。和室。舞台奥に襖。
代官、商人、板付き。
代官「さて、今年の年貢は何かのう?」
商人「申し訳ありませぬ……今年は不作でして……こちらを代わりに……(重箱を差し出す)」
代官「何?代わりだと?(蓋を開ける)おやおやぁ?これは最中じゃないか。これじゃあ代わりにはならんなぁ」
商人「まぁお一つお召し上がり下され」
代官「どれどれ……(最中を一つ食べる)おやおやおや……中から小判が出てきたではないか!」
商人「そちらをお納め頂ければと思います」
代官「越後屋、お主も相当の悪よのう!」
商人「いえいえ。お代官様程では!」
代官「やはり菓子は山吹色に限るのう!」
代官商人「あーはっはっはっはっは!」
将軍「待てい!」
代官「何奴!?」
将軍「(舞台奥の襖から登場)その悪行、見過ごす訳にはいかぬ」
代官「私が何をしたと言うのだ!何もしておらぬ!菓子を食べていただけだ!」
将軍「余の目は節穴ではない。その狼藉、到底、許されるものではない。ここで腹を切るか、奉行所で罪を償うかどちらかを選べ」
代官「ええい!皆の者!出会え出会えー!」
部下A~D「(舞台上手と舞台下手から登場)」
将軍「余に逆らうか……貴様も随分、偉くなったものよ……」
代官「貴様、何者!?」
将軍「余の顔を忘れたか!?」
SE、カーン!という音。
部下A「……誰?」
部下B「誰?」
部下C「知ってる?」
部下D「知らない」
代官「誰だ!?」
将軍「え?覚えてない?余の顔」
代官「越後屋、知ってるか?」
商人「存じ上げませぬ」
将軍「え?え?余だよ?余。分からない?」
代官「分からない……」
将軍「え?え?え?城で会ったでしょ?」
代官「そんな行かないし……」
商人「私も城には出入りしておりませぬので……」
将軍「嘘……余、そんなに知られてないの……?」
代官「誰なんだ?」
隠密「(舞台奥から登場)上様」
将軍「おぉ、お蜜!お前からも何か言ってやってくれ!」
代官商人「上様……?」
将軍「えぇ!?上様と聞いても思い出せない!?」
代官商人部下A~D「分からない……」
将軍「もうこうなったら、全員、成敗するしかない……」
代官「成敗って具体的に何するの?」
将軍「殺す……」
代官「えぇ!?そんなの嫌だ!」
将軍「だって余の事は思い出してくれないし、悪行は働くし、余の事は思い出してくれないし……」
隠密「何で二回、言ったんですか?上様」
将軍「大切な事だから……」
代官「そっちがその気ならこっちも殺るしかないか……血を見るの嫌なんだけどなぁ……」
隠密「お前達。近頃、江戸で悪行を働いた多くの悪人達が皆殺しにされているのを知っているか?」
代官「あ?あぁ、あれね。大変だな」
隠密「あれは全てこの上様による成敗だ」
代官商人「何だって!?」
代官「じゃああの人数をたった一人で殺ったのか!?」
隠密「そうだ。その意味が分かるな?」
代官「わ、分かった!勝ち目がない事は認める!だがここは取り引きと行こうじゃないか!私の儲けの半分をそちらに収める!それで手を打とう!」
将軍「でもそれって元々、余の物だし……減ってる事に変わりは無いんだよなぁ……」
商人「では私からも商品の一部をそちらにご献上致します!それで如何ですか!?」
将軍「そんな汚らわしいの手に入れても仕方ないしなぁ……やっぱりコ~ロそっ」
代官商人「そんなぁ……!」
隠密「なぁ、もう奉行所に行って裁いてもらうのが一番、生き残る確率が高いんじゃないか?」
代官「そうだな……年貢の納め時だな……」
商人「そうしましょう……お代官様……」
将軍「えー!?殺せないのー!?」
隠密「だってもう罪を償おうとしてますし」
将軍「でも余の事、思い出してくれてないじゃなーい!殺すー!絶対殺すのー!」
隠密「駄々を捏ねるんじゃありません!」
将軍「殺すのー!大量殺戮するのー!」
隠密「もう!こうなったら聞かないんですから!好きにしなさい!」
代官商人「えぇ!?」
代官「ちょ、ちょっと待って!?殺させないで!?止めて止めて!?」
隠密「だってこの人、こうなったら手が付けられないのよ。お前達で解決して頂戴」
商人「そんな無茶な!」
将軍「余を思い出してくれないなら殺すー!」
代官「分かった!分かったから!思い出したから!いや、思い出しましたから!殺すのだけは勘弁して下され!」
将軍「本当ぉ……?」
代官「勿論ですとも!なぁ!?越後屋!?」
商人「私も思い出しました!あの方ですよね!?忘れていた事をお許し下さい!」
将軍「余の事、思い出してくれたぁ……?」
代官商人「思い出した、思い出した!」
将軍「良かったぁ……!」
代官「一緒に奉行所、行こ?」
将軍「うんー……ありがとうー……(隠密、代官、商人と共に舞台奥に退場)」
部下A「……で、誰だったんだ?」
部下B「さぁ……」
―――終わり
『ツンデレ?』
・登場人物
北島
藤原
小川
・舞台
高校の教室
明転。
高校の教室。机二つに椅子二つ、教卓一つ、黒板一つ。
北島、板付き。
藤原「(舞台上手から登場)おはよーっす」
北島「あぁ、おはよー」
藤原「今日、抜き打ちテストがあるってマジ?」
北島「え?そうなの?」
藤原「朝、美幸に起こされた時に言われたんだよね」
北島「あぁ、隣のクラスの小川さん?でも何でその事を?」
藤原「昨日、美幸のクラスで抜き打ちテストがあったんだって」
北島「へー」
藤原「その範囲も教えてもらったから一緒に予習しとこうぜ」
北島「おう。それにしても幼馴染の女の子に朝、起こしてもらえるなんて羨ましいな」
藤原「実はその事なんだけどさ……」
北島「どうした?」
藤原「俺、美幸の事、好きなんだよね……」
北島「だろうな」
藤原「どうしたら気持ちを伝えられるかな?」
北島「俺、小川さんの事そんなに知らないから何とも……」
藤原「そもそも美幸が俺の事を好きかどうかって問題もあるし……」
北島「好きでもない奴を毎朝、起こしに来るかぁ?」
藤原「もう習慣みたいなもんだから」
北島「でもなぁ……告白してみない事には状況は変わらないんじゃないか?」
藤原「それは分かってるんだけど、後押しされたいと言うか……」
北島「成程な。でも今のままじゃ進展は無いと思うぞ?」
藤原「だよなぁ……でもこの関係を壊してしまうんじゃないかと思うとなかなか……」
北島「やってみないと分からないじゃないか」
藤原「それにアイツの態度を見てると、ツンケンしててどうも俺の事を好きなようには見えないんだよな……」
北島「ふーん?どんな感じなの?」
小川「(舞台上手から登場)あ、いたいた!もう!正将!お弁当、忘れてるわよ!」
藤原「あぁ、悪いな」
小川「全く!しっかりしてよね!」
藤原「いつもありがとな。美幸」
小川「べ、別にアンタの為にしてるだけなんだからね!」
藤原「それに抜き打ちテストの範囲も教えてくれてありがとな」
小川「べ、別に今回だけじゃないんだからね!これからも教えてあげるんだからね!」
藤原「ありがとな」
小川「あ、そうだ!これ!(チョコレートを藤原に渡す)」
藤原「何これ?」
小川「バレンタインチョコ!毎年あげてるでしょ!」
藤原「本命にあげれば良いのに」
小川「べ、別にアンタの事が好きなだけなんだから勘違いしないでよね!」
藤原「そうか……」
小川「今晩はアンタの好きなカレーだからね!そのチョコと愛が隠し味なの忘れてないでしょうね!?」
藤原「あぁ、そうだったな。楽しみにしてる」
小川「じゃあね!テスト頑張ってね!(舞台上手に退場)」
藤原「はいはい。なぁ、北島、どう思う?」
北島「何が?」
藤原「アイツ、俺の事、好きだと思う?」
北島「は?」
藤原「どう思う?」
北島「どう思うも何も、お前の考えてる通りだよ」
藤原「そっか~!やっぱ俺の事、嫌いか~!」
北島「はぁ!?今ので何でその回答になるんだよ!?」
藤原「どういう意味?」
北島「ハッキリ言ってただろ!好きだって!」
藤原「あれは友達として好きって意味で……」
北島「そんな訳無いだろ!お前の為に朝、起こしてくれて?抜き打ちテストの事を教えてくれて?範囲も教えてくれて?バレンタインのチョコレートくれて?晩御飯にお前の好きなカレー作ってくれる幼馴染?どこにお前を嫌ってる要素があるんだよ!?」
藤原「昔から世話焼きなところあるから……」
北島「世話焼きの範疇を超えてるだろ!」
藤原「じゃあどういう意味?」
北島「小川さん、絶対お前の事、好きだって!」
藤原「そうかなぁ……?」
北島「何でそんな懐疑的なの!?後押しされたいんじゃなかったの!?」
藤原「応援してくれるのか……?」
北島「応援っていうか、このままだと小川さんが可哀想!」
藤原「俺は?」
北島「お前はある意味で可哀想!」
藤原「分かった。分かったよ。北島。俺、勇気を振り絞って告白してみる!」
北島「末永く爆発しろ!」
小川「(舞台上手から登場)あ、正将ー。明日のアンタの誕生日だけどさー。何か欲しいのある?」
藤原「…………」
小川「どしたの?」
北島「おい。今こそ言えよ」
藤原「わ、分かった。美幸」
小川「何?欲しいの決まってないの?一緒に考えてあげようか?」
藤原「美幸が欲しい」
小川「え?」
藤原「美幸が欲しい!好きだ!付き合ってくれ!」
小川「え?え?え?何の冗談?」
藤原「冗談じゃない!昔から美幸の事が好きだった!俺と付き合ってくれ!」
小川「…………」
北島「小川さん。答えてやりなよ」
小川「……分かった。じゃあ答えるね。宜しくお願いします!」
藤原「やった!やったぁ!」
北島「良かったな!藤原!」
藤原「あぁ!」
小川「全く……遅いわよ。ずっと待ってたんだから……」
藤原「じゃあ何であんな言い方してたんだ?」
小川「アンタが素直な子が好きって言ってたから」
北島「大分、素直だったぞ」
藤原「俺には分かり辛かったな」
北島「小川さん。もっと直接的に言ってやったら?」
小川「分かった。正将、大好きだよ!」
藤原「俺も大好きだ!」
北島「俺は何を見せられてるんだ……幸せなら良いけどよ」
―――終わり
『かもしれない』
・登場人物
北島
藤原
・舞台
高校の中庭
明転。
高校の中庭。
北島、舞台上手から登場。続いて藤原、舞台上手から登場。
藤原「北島!」
北島「藤原……」
藤原「お前、来週アメリカに引っ越すかもしれないって本当かよ!?」
北島「あぁ……」
藤原「小川さんに想いを伝えてないかもしれないってのも本当か!?」
北島「あぁ……」
藤原「今ならまだ間に合うかもしれないだろ!?想いを伝えて来いよ!」
北島「どうせ叶ったとしても遠距離恋愛になる。だったらこのままで良いんだ」
藤原「小川さんだってお前の事、好きかもしれないだろ!?」
北島「そんな事、分からないじゃないか。もし振られたらそれこそダメージがデカいよ」
藤原「絶対に大丈夫かもしれないだろ!?勇気を出せよ!応援してるから!」
北島「藤原……!ありがとう!俺、勇気出して告白してみる!」
藤原「俺達、親友かもしれないだろ!水臭い事、言うなよ!」
北島「おう!ところでさぁ」
藤原「何?」
北島「何でさっきから断定的じゃないの?」
藤原「断定的じゃない?」
北島「『かもしれない』ばっかり言ってたじゃん」
藤原「だって確証は無いし」
北島「せめてそこは言い切ってくれよ。勇気が出辛かったよ」
藤原「でも結果的に出てたかもしれないだろ?」
北島「ほら、今も。その『かもしれない』っての止めてくれない?」
藤原「どうせ海外に引っ越すんだからもう聞かないかもしれないし良いだろ」
北島「会ってくれよ!遊びに来いよ!それか俺が日本に帰ってくるから!」
藤原「でも来年から受験だし暫く会えないかもしれないだろ?」
北島「大学は日本にする予定だから、帰ってくるよ!」
藤原「でも大学によっては会えないかもしれないだろ?」
北島「どこ受けるつもりなの?」
藤原「北海道かもしれない」
北島「何で自分の事も『かもしれない』なんだよ?」
藤原「だって落ちるかもしれないだろ?偏差値、高いし」
北島「頑張れよ!応援するから!」
藤原「ありがとう。素直に受け取っておくよ。で?お前はどこの大学を受けるかもしれないんだ?」
北島「え?東大」
藤原「じゃあ物理的になかなか会えないかもしれないじゃないか」
北島「日本と海外よりは近いだろ!」
藤原「でも気軽に会える距離じゃないじゃん」
北島「それはそうだけども!」
藤原「まぁその内、会えるかもしれないな」
北島「絶対に会ってくれよな!?」
藤原「大学の都合とか家庭の事情とかあるし確証は無い」
北島「そんな事、言ったら何も言えないぞ!?お前!」
藤原「とりあえず告白しに行けよ」
北島「あぁ、その事すっかり忘れてた……じゃあちょっくら行ってくる(舞台下手に退場)」
藤原「頑張れー」
北島「(舞台下手から登場)ただいま……」
藤原「おう、早いな。どうした?そんな暗い顔して?」
北島「小川さん、彼氏いた……」
藤原「何でそんな事、分かるんだ?」
北島「すぐそこで男の腕に自分の腕を絡んで歩いてる小川さんの姿を見た……」
藤原「えぇ!?彼氏いたかもしれないの!?」
北島「いたんだよ!」
藤原「何か見間違いかもしれないし……」
北島「いや、しっかりと知らない男の腕に絡み付いてた……」
藤原「他人の空似かもしれないし……」
北島「いや、あのホクロの位置、絶対に小川さんだった……」
藤原「ご兄弟かもしれないし……」
北島「そうか!その手があったか!藤原!ありがとう!やっぱり勇気を出して告白してくる!(舞台下手に退場)」
藤原「おう!行ってこい!」
北島「(舞台下手から登場)ただいま!」
藤原「どうだった!?」
北島「OK貰った!やっぱりあれは弟さんだったらしい!」
藤原「良かったな!今日はめでたい日かもしれないな!」
北島「めでたいんだよ!」
藤原「じゃあもう思い残す事は無いな?」
北島「あぁ。今回ばかりはお前の『かもしれない』に助けられたよ」
藤原「それは何より。じゃあもう行けよ。荷造りあるかもしれないんだろ?」
北島「おう!じゃあな!元気で!(舞台上手に退場)」
藤原「またなー!春が来たかもしれないなぁ」
―――終わり
『引き語り』
・登場人物
北島
藤原
・舞台
公園
居酒屋
明転。
公園。ベンチが一つ。
北島、板付き。
北島「あー、飲み過ぎたな……」
藤原「(舞台下手から登場)はい、水、買ってきたよ」
北島「あぁ、悪いな。はー、疲れた……」
藤原「そんな会社勤めって疲れるのか?」
北島「良いよな、お前はフリーターで気が楽でさ」
藤原「一応、引き語りで喰って行こうと思ってるんだけどね」
北島「え?弾き語りしてんの?」
藤原「路上でちょっとね」
北島「売れそう?」
藤原「いいや。全然」
北島「まぁミュージシャンってそんなもんだよな」
藤原「ミュージシャンではないかな」
北島「じゃあシンガーソングライター?」
藤原「でもないかな」
北島「じゃあ何なのよ?」
藤原「今やってあげようか?」
北島「え?でもお前、今、楽器、持ってなくない?この公園にもピアノとか無いし」
藤原「楽器なんて無くても引き語りは出来るだろ」
北島「え?どういう事?」
藤原「百聞は一見に如かず。まぁとりあえずやってみるよ」
北島「おう」
藤原「……えぇ……?おま、お前、そんな事すんの……?無いわぁ……人としてどうなん……?もう友達、辞めるわ……本当もう無理だわ……さようなら……」
北島「ちょっと待って?」
藤原「何?」
北島「何これ?」
藤原「引き語り」
北島「何かドン引きしてるだけの演技を見せられてただけな気がするんだけど」
藤原「だから引き、語り」
北島「……あ、楽器を弾くんじゃなくて、気持ち的に引いて語ってるって事!?」
藤原「そうそう」
北島「えぇ……?こんなんでどれくらい稼いでるの……?」
藤原「(メモ帳を取り出して書き込む)月、二千円とか」
北島「えぇ……?需要あるんだ……どこに……?」
藤原「役者の卵だと思って勘違いして入れてくれる」
北島「えぇ……?お前はそれで良いの……?ってかジャンルは何……?」
藤原「語り部?」
北島「えぇ……?じゃあ作家じゃん……」
藤原「本とか出せたら良いよね」
北島「えぇ……?落語家とか漫談家とか目指せば良いじゃん……というか芸人……?そっちで食っていけば良いじゃん……」
藤原「あくまでクリエイターとして食っていきたいんだよね」
北島「えぇ……?よく分からない……ところで何、書いてんの?」
藤原「今のやり取りをメモしてた」
北島「何で?」
藤原「新たな引き語りのヒントとして」
北島「絶対に売れないからもう辞めた方が良いよ」
藤原「徐々に徐々にファンが増えつつあるんだよ。ここでは辞められない」
北島「それは役者として応援してくれているからだろ。勘違いさせて罪悪感は無いのか?」
藤原「それはそれで引き語りのヒントになるな。ファンの方々のその目線でのドン引き。これは良いアイディアが浮かびそうだ」
北島「無理、無理、無理。絶対に売れない」
藤原「やってみないと分からないじゃないか」
北島「月、二千円しか稼いでないのが何よりの証拠だろ」
藤原「これからだって」
北島「じゃあ売れたらお祝いに飲み、奢ってやるよ」
藤原「言ったな?待ってろよ。すぐに売れてやるから」
北島「期待しないで待ってるよ」
暗転。
明転。
居酒屋。テーブル一つに椅子が二つ。
北島、藤原、板付き。
北島「CDリリースおめでとう」
藤原「ありがとう」
北島「まさか本当に引き語りで売れるとはな」
藤原「ファンの皆様のお陰で御座います」
北島「約束通り、奢るから好きな物、何でも頼めよ」
藤原「マジで?お前も知ってる通り俺、、めっちゃ食うよ?」
北島「良いよ。男に二言は無い」
藤原「そうか。じゃあ大吟醸の冷やとフグの刺身と雲丹の刺身と馬刺しと生ハムと黒毛和牛のステーキを頼もうかな」
北島「えぇ……?俺、金、足りるかな……?」
藤原「(メモ帳を取り出して書き込む)それから?」
北島「もうちょっと遠慮するとかさ……」
藤原「お前から言ってきたんじゃん」
北島「だからってこんな高い物ばかり頼まなくても……」
藤原「それでそれで?」
北島「量も量だよ。多過ぎるよ」
藤原「成程ねぇ……」
北島「何?またメモってるの?」
藤原「うん」
北島「わざとやってる?」
藤原「こうでもしなきゃネタが掴めないからね」
北島「いつか刺されるぞ」
―――終わり
『副社長代行代理補佐』
・登場人物
北島
藤原
・舞台
社長室
明転。
社長室。ソファつにテーブル一つ。
北島、板付き。
藤原「(舞台上手から登場)お待たせしました。遅くなって申し訳ありません」
北島「いえ。こちらこそお時間を頂き誠にありがとうございます。私、小川商事の北島と申します」
藤原「藤原です。只今、社長は席を外しておりますので私が代わりに対応させて頂きます」
北島「あ、そうなんですね。こちら名刺です(名刺を取り出して藤原に渡す)」
藤原「(名刺を取り出して北島に渡す)北島さんですね」
北島「はい。藤原さんですね……ん?副社長さんなんですか?」
藤原「いえ、違います」
北島「何か見た事が無い肩書なのですが……」
藤原「副社長代行代理補佐です」
北島「つまりは?」
藤原「専務と副社長代行代理の間です」
北島「副社長代行代理補佐の上に副社長代行代理がいらしゃるんですか?」
藤原「はい。更に言うと副社長代行代理の上に副社長代行がいて、その上に副社長がいて、その上に社長代行代理補佐がいて……」
北島「あ、もう良いです」
藤原「良いんですか?」
北島「キリが無いので」
藤原「一応、会長と社主に続くんですけど」
北島「あ、本当キリが無さそうなんで、もう良いです」
藤原「そうですか」
北島「というか社長さんの下が副社長さんではないのですね」
藤原「まぁそれがウチの体制ですかね」
北島「そうですか」
藤原「それで、今回はどのようなご用件で?」
北島「あれ?お聞きになっていらっしゃらないんですか?」
藤原「えーっと、すみません。副社長からは何も……」
北島「そうでしたか。先日、御社で弊社の新製品のプレゼンをした際、厳正な審査をした上で回答、契約という流れになったのですが……」
藤原「そうでしたか。少々お待ち下さい。(スマホを取り出し、電話を掛ける)あ、もしもし。副社長ですか?今、小川商事の北島さんという方がいらっしゃってるのですが……はい、はい……あ、分かりました。そのように致します(電話を切る)副社長と話が着きました。契約致します」
北島「ありがとうございます!(鞄から書類を取り出す)それではこちらにサインと印鑑をお願いします」
藤原「はいはい……ちなみに製造はいつからですか?」
北島「来月から製造に入らせて頂きます」
藤原「来月ってもう来週ですが?」
北島「あ、そうですね」
藤原「ちょっと支払いの都合がありますので一旦、持ち帰っても良いですか?」
北島「構いませんよ。どれくらいお時間掛かりそうですか?」
藤原「副社長代行代理に話を通して、副社長代行から副社長に話を通して、社長代行代理補佐に話を通して、社長代行代理に話を通して、社長代行に話を通して、社長に話を通して、会長代行代理補佐に話を通して、会長代行代理に話を通して、会長代行に話を通して、代表取締役会長代行代理補佐に話を通して、代表取締会長役代行代理に話を通してら代表取締役会長代行に話を通して、代表取締役会長に話を通した上で精査致します」
北島「終わりませんよ?この話」
藤原「え?」
北島「大人しく聞いてましたけど、これどれくらい時間掛かるんですか?」
藤原「スケジュール的には三ヶ月は掛かりますね」
北島「じゃあそれまでこちらは待機という事ですか?」
藤原「出来ればそうして頂ければと思います」
北島「そうですか……ではこちらからご提案をさせて頂きましたが、申し訳ありませんが、今回は無かった事にして下さい」
藤原「そうですか……残念です」
北島「ではわたしはこれで(舞台上手に退場)」
藤原「この度は誠に申し訳ありませんでした。さて……(スマートフォンを取り出して電話を掛ける)あ、会長ですか?手筈通り、難癖付けてしつこかった例の会社を撃退しました」
―――終わり




