表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コント集  作者: 河野吉田
PR
21/37

コント集21

コント集21 



201・・・勘違い

202・・・浮気調査

203・・・思い出

204・・・ブラインドテイスティング

205・・・明日暇?

206・・・帰宅

207・・・自転車

208・・・血の気の多いデスゲーム

209・・・天然論破

210・・・何も分からない



『勘違い』



・登場人物


 北島

 藤原



・舞台


 藤原宅






 明転。


 藤原宅。卓袱台一つに座布団二つ。卓袱台の上には缶ビールやつまみ。

 北島、藤原、板付き。


藤原「あー、何か楽しい事、無ぇかなー」

北島「ソシャゲとかやってんじゃん」

藤原「あんなのただの作業課金ゲーじゃん。もっと楽しくて充実した事無いかなって言ってんだよ」

北島「じゃあソシャゲに使ってる分の金で何かしたら?」

藤原「そうだなー。もっとスリルあるもので遊びたいなー」

北島「スリルなものねぇ」

藤原「あ、そういえば近所の駄菓子屋、そろそろ無くなるらしいぞ」

北島「そうなの?何で?」

藤原「もうあそこのおじいちゃんが年齢的に厳しいんだと。息子さんもお孫さんも跡を継がないみたいだから潰すんだってさ」

北島「そっかー。俺達が子供の頃ももう大分おじいちゃんだったし、仕方ないかー」

藤原「懐かしいよな。よく二人でクジ引きしてたよな」

北島「お前、いつもハズレ引いてたよな」

藤原「お前ばっか良い物、引き当てやがって。久し振りに、最後に行くか」

北島「そうだな。思い出に」

藤原「万引きしようぜ」

北島「え?」

藤原「万引きだよ、万引き。大人の俺達なら可能だろ?」

北島「いやいやいや!万引きはアカンだろ!世間が許さないよ!」

藤原「最後くらいスリルある遊びをしたいだろ」

北島「スリルが過ぎるだろ!」

藤原「あの頃はお小遣いが少ししか無かったが、今は財力があるからな。クジをありったけ引いてやる!」

北島「……ん?万引きするのに金、払うの?」

藤原「当たり前だろ?何、言ってんだ?」

北島「だって万引きって窃盗だぞ?」

藤原「え?万引きって、万単位でありったけクジを引くって意味じゃないの?」

北島「違うよ!?万引きって金を払わずに商品を盗むって事だよ!?」

藤原「あ、そうなの!?勘違いしてた!」

北島「何でだよ……」

藤原「幼稚園の頃の夢、万引きって書いてたんだけど……」

北島「恥ずかしっ」

藤原「まぁ明日にでもおじいちゃんに会いに行くついでに思い出のクジ引きで運試ししようや」

北島「良いけどさ」

藤原「それにしてもソシャゲで金を使い尽くしたな。もう税金、取られて生活が成り立たないよ」

北島「ソシャゲ止めれば?」

藤原「俺の生きる糧だから。あー、早く脱税してーなー」

北島「脱税?してどうすんの?」

藤原「早く老後にならねぇかなって」

北島「……もしかして勘違いしてる?」

藤原「何が?」

北島「脱税って何て意味だって思ってる?」

藤原「もう税金を払わなくて良い歳になるか、一生分の税金を払えるだけの貯蓄があってアーリーリタイアする事」

北島「全然、違うよ!?納める義務がある税金の額を意図的に誤魔化して、納税額を不当に少なく抑える事だよ!?」

藤原「あ、そうなの!?勘違いしてた!」

北島「何でだよ……」

藤原「小学生の頃の夢、脱税って書いてたんだけど……」

北島「恥ずかしっ」

藤原「まぁアーリーリタイアするには当て逃げが一番かな」

北島「当て逃げ?」

藤原「うん。当て逃げする」

北島「あながちアーリーリタイアかもしれんが……そんな犯罪して何になるの?」

藤原「犯罪?何が?」

北島「……お前、また勘違いしてるだろ!?」

藤原「何を?」

北島「当て逃げって何て意味だと思ってる!?」

藤原「一発ギャンブルで当てて労働人生から逃げる事」

北島「全然違うよ!?当て逃げって事故を起こしても警察に通報せずに逃げる事だよ!?」

藤原「あ、そうなの!?勘違いしてた!」

北島「何でだよ……」

藤原「中学生の頃の夢、当て逃げって書いてたんだけど……」

北島「恥ずかしっ。てか何で毎回、書くんだよ?」

藤原「そう思ってたんだもん」

北島「それにしても、どれも犯罪を良いように捉えてたな」

藤原「この歳になっても勘違いしてたとか恥ずかし過ぎる……」

北島「本当だよ」

藤原「俺を犯罪に手を染めさせないようにしてくれてありがとう!北島!」

北島「やろうとしてた事は全然、犯罪じゃないけどな」

藤原「さて、金が溜まったら万馬券でも買おうかな」

北島「そんなに手持ちの金、無いの?」

藤原「えーっとね……二千円ある」

北島「じゃあその金で馬券、買えば良いじゃん」

藤原「え?だって万馬券だよ?そんなプレミア券、二千円じゃ買えないでしょ?」

北島「まーた勘違いしてるよ……魔馬券を何だと思ってたんだよ?」

藤原「万単位を払わないと買えないプレミア馬券」

北島「全く違うわ!購入金額、百円あたりの払戻金が一万円以上になった馬券の事だよ!」

藤原「あ、そうなの!?勘違いしてた!」

北島「今回は犯罪じゃなくて良かったね!恥ずかしいけど!」







―――終わり

『浮気調査』



・登場人物


 北島

 藤原



・舞台


 興信所






 明転。


 興信所。テーブル一つに椅子二つ。

 北島、板付き。


藤原「(舞台下手から登場)すみませーん」

北島「はい?」

藤原「先日、電話した藤原ですけどー……」

北島「あぁ、藤原さん。どうぞお掛け下さい。私、当興信所の職員の北島と申します。今回はどのようなご用件で?」

藤原「浮気してるみたいなんで、身辺調査をしてもらいたくて……」

北島「具体的にどのような物をお求めですか?」

藤原「浮気現場というか、ホテルの出入りの写真とか、密会してる時の音声なんかを撮って頂けると……」

北島「成程。スマホとかのメールとかは見ましたか?」

藤原「それが何も出てこないんですよ。消してるのかなって」

北島「そうですか。では奥様の身辺調査をさせて頂きますね」

藤原「あ、違います」

北島「あ、申し訳ありません。男性の方でしょうか……?」

藤原「いえ、私です」

北島「え?」

藤原「私の身辺調査をしてほしいんです」

北島「……ちょっと意味が理解出来ないんですが、依頼者が貴方で?」

藤原「はい」

北島「調査対象も貴方で?」

藤原「そうです」

北島「……分からない……あの、浮気してらっしゃるのですか?」

藤原「それが分からないんですよ……」

北島「えぇ……?どういう事……?」

藤原「妻が言うには三年位前ですかね?仕事が忙しくなったって言って夜遅くに帰ってくるようになったり……」

北島「はぁ」

藤原「飲み会が増えたり……」

北島「はぁ」

藤原「休日出勤が増えたり……」

北島「はぁ」

藤原「急な出張が入ったりして……明らかに不自然だって言うんです……」

北島「はぁ」

藤原「メールもSNSも女生徒の履歴が露骨に無いし、隠してるんじゃないかって……」

北島「あのー……」

藤原「何でしょうか?」

北島「本当に浮気してないんですか?」

藤原「それが分からないんですよ……」

北島「えぇ……?ご自身で分からないんですか?」

藤原「はい」

北島「断言しないで下さい。本当に身に覚えは無いんですか?」

藤原「私自身はそんな事は無いと信じているんですが、妻が言うには絶対に浮気してるって言うもんですから……」

北島「はぁ……ちなみにプライベートで奥様以外の親しい女性はいらっしゃいますか?」

藤原「母と姉と妹ですかね」

北島「その他は?」

藤原「何分モテないものでして……仕事での付き合いはあっても、プライベートで仲が良いのは家族以外はいませんね」

北島「あ、そうですか……じゃ、じゃあ一応、仕事として引き受けますが、依頼者である貴方ご自身の身辺調査で宜しいですか?」

藤原「はい。宜しくお願い致します」

北島「まぁ二週間程度で結果は出ますので、それまでお待ち下さい」

藤原「はい」


 暗転。


 明転。


 興信所。

 北島、藤原、板付き。


藤原「で、結果はどうでしたか?」

北島「不倫してました」

藤原「やっぱり……」

北島「週三で個人女性とホテルに入っているところを写真に捕らえました。こちら証拠写真です(写真を取り出す)」

藤原「あ、これ違います」

北島「え?」

藤原「これ、仕事の事で個人的な打ち合わせをしてただけです」

北島「その証拠は?」

藤原「毎回テープで録音してます。忘れない為に。こちらです(スマートフォンを取り出し、イヤホンを刺して北島に渡す)」

北島「……あ、確かに仕事の話しかしてないですね」

藤原「後この人、女性じゃなくて男性です」

北島「え?」

藤原「よく間違えられるんですが、この人、よく女性に間違えられるんですよ」

北島「これは早とちりをしてしまって……ちなみにそっちのケは……?」

藤原「ありません」

北島「あ、そうでしたか。申し訳ありません」

藤原「じゃあこの写真を持って妻に話を着けてきます」

北島「え?それは止めておいた方が……」

藤原「(懐から封筒を取り出す)こちら依頼料です。それではありがとうございました!(舞台下手に退場)」

北島「あ、ちょっと?あ、行っちゃった……まぁ良いか」


 SE、電話の音。


北島「はい、北島興信所です。あぁ、さっきの藤原さん。どうしました?あ、はい。あ、はい。あ、離婚された?何故?はい、はい。あ、奥さんの不倫で?そうですか。分かりました。お疲れさまでしたー(電話を切る)最初から奥さんの浮気調査するべきだったな……」






















―――終わり

『思い出』



・登場人物


 北島

 藤原



・舞台


 藤原宅






 明転。


 藤原宅。卓袱台一つに座布団二つ。卓袱台の上にはボロボロのぬいぐるみと裁縫セット。

 藤原、ぬいぐるみを縫っている。

 SE、チャイムの音。


藤原「はーい(舞台上手に退場し、すぐに北島と共に舞台上手から登場)いらっしゃい」

北島「お邪魔します。あれ?お前、裁縫すんの?」

藤原「趣味程度にな」

北島「何、作ってたの?」

藤原「作ってたんじゃなくて直してた。このぬいぐるみ」

北島「何これ?継ぎ接ぎだらけじゃん」

藤原「幼い頃に死んだ祖母ちゃんがくれたんだ。思い出だよ」

北島「そうなんだ。どこ直してたんだ?」

藤原「この左目の部分。取れただけじゃなくて割れちゃったから新しいのに変えてた」

北島「右目と違うボタンじゃん」

藤原「そこは前に直した」

北島「ふーん。鼻は?」

藤原「そこも新しいのに変えた」

北島「所々、継ぎ接ぎだな」

藤原「破れた所を別の布で補ってきたからな」

北島「腕も?」

藤原「うん」

北島「足も?」

藤原「うん」

北島「耳も?」

藤原「うん。元の皮の部分はもう無い」

北島「ふーん。ちょっと抱いてみて良い?」

藤原「良いけど、壊すなよ?」

北島「そん時ゃまた直せよ」

藤原「修繕費、請求するぞ」

北島「冗談言うな。あれ?これ何年前のぬいぐるみ?」

藤原「買ってもらったのはもう十九年前かな?」

北島「その割にはふわふわしてるな」

藤原「中の綿、入れ替えたからな」

北島「ふーん……?全部、変えたんだ?」

藤原「そうだな」

北島「……思い出、無くない?」

藤原「え?」

北島「思い出の部分、もう無くない?」

藤原「そんな事無いよ」

北島「だって皮も手足も耳も目も鼻も綿も全部新しくなってるじゃん。思い出要素どこ?」

藤原「物には魂が宿るんだよ」

北島「まぁ、それはよく言うけど」

藤原「よく見てみろ。この思い出が詰まった哀愁ある姿……」

北島「どうした?」

藤原「……思い出要素無いな」

北島「え?」

藤原「もう原型無いな」

北島「まぁ、そうだな」

藤原「捨てるか」

北島「待て待て。思い出なんだろ?」

藤原「でももう元の形しか残ってないし」

北島「そこが大事なんじゃないの?」

藤原「いや、思い出がもう無い。要らない」

北島「ほら、ここの切れ端。ここ着物だろ?お祖母ちゃんの着物じゃないのか?」

藤原「それは俺の着れなくなった浴衣の切れ端」

北島「ここの切れ端は?」

藤原「俺の着れなくなった舞踊の着物の切れ端」

北島「この目と鼻は?」

藤原「最近着れなくなった服のボタン」

北島「……本当に思い出、無いんだな」

藤原「無いね。捨てるわ」

北島「形は残ってるじゃないか」

藤原「形だけだろ?要らないわ」

北島「まぁお前が良いなら良いけどさ……」

藤原「思い出は形じゃない。心の中にあるものだ」

北島「それっぽい事を言ってるけど、単純にゴミ扱いしてるだけだぞ?」

藤原「形あるものいずれ壊れる。その時が来ただけだ」

北島「大分前からそれは来てたけどな」

藤原「もう!さっきから何なのさ!?人の事を心が無いみたいな言い方してさ!」

北島「そう言ってるんだが?」

藤原「お前から言い出したんだろ!思い出がもう無いって!」

北島「捨てろとは言ってねぇよ」

藤原「お前のせいだ!」

北島「何で俺のせいになるんだよ?」

藤原「思い出が無くなったから捨てる事になったんだぞ!」

北島「無くしたのはお前のせいだろ」

藤原「お前が言い出さなかったらこんな事にはならなかったんだぞ!?」

北島「じゃあ捨てなければ良いじゃん」

藤原「いいや、捨てる!男に二言は無い!」

北島「何その決意」

藤原「男のプライドだ!」

北島「大したプライドでもねぇよ」

藤原「五月蠅い!もう捨てるからな!(ぬいぐるみを持って舞台上手に退場)」

北島「勝手にしろよ」

藤原「(舞台上手から登場)捨ててきたぞ!」

北島「あっそう」

藤原「お前も何か捨てろ!」

北島「何で?」

藤原「お前も責任を取って何か捨てろ!それでお相子だ!」

北島「意味が分からん。何で俺が何か捨てなきゃいけないの?」

藤原「お前は俺の大切な物を捨てさせた。その責任としてお前も何か捨てろ!いいや、俺が捨てさせる!」

北島「増々、意味が分からん。分かったよ。捨てるよ。何を捨てても良いのか?」

藤原「良いぞ!思い出の品か!?財布か!?スマホか!?」

北島「今、捨てたよ」

藤原「何を!?」

北島「プライド」

















―――終わり

『ブラインドテイスティング』



・登場人物


 北島

 藤原



・舞台


 北島宅






 明転。


 北島宅。テーブル一つに椅子が二つ。テーブルの上にはグラスが二つにワインボトルがいくつかある。

 北島、藤原、舞台上手から登場。


北島「まぁ上がれよ」

藤原「お邪魔しまーす」

北島「今日はお前が店長になった記念にいっぱいワインを用意したぞ。と言っても安物だけどな」

藤原「安物だろうがなんだろうが嬉しいよ。ありがとう。わぁ!ワインがいっぱい!」

北島「お前と久し振りに飲むからな。結構、仕入れた。と言っても実家から海外旅行のお土産を送られてきて処理に困ってただけなんだけどな」

藤原「いやー、それでもありがとう!いっぱい飲むぞー!あれ?でもこれラベル貼ってなくない?」

北島「お前ソムリエだろ?ちょっと試してみたくなってさ」

藤原「どういう事?」

北島「どれがどのワインか当ててみてくれよ」

藤原「あぁ、そういう。良いよ。やってやるよ」

北島「カックイ~!じゃあまずこれな」

藤原「おう……うん、この芳醇な香り……フラムのカベルネ・ソーヴィニヨンだな?」

北島「……正解!流石だな!」

藤原「それ程でも」

北島「じゃあ次はこれだ」

藤原「……うん、この芳醇な香り……シーホースのアントワーヌだな?」

北島「……正解。じゃあ次はこれだ」

藤原「……うん、この芳醇な香り……ドメーヌのジュシオム・ペール・エ・フィスだな?」

北島「……正解。凄いな」

藤原「だろ?」

北島「凄いけどさ……もっと語彙力無いの?」

藤原「語彙力?」

北島「芳醇な香りしか言ってないじゃん」

藤原「だって芳醇な香りが一番、特徴的なんだもん」

北島「まだまだあるからさ、もっと語彙力を活かして当ててよ」

藤原「分かった」

北島「じゃあこれ」

藤原「おう……これは、甘い味が口の中に広がって、程良い酸味がある……」

北島「そうそう!そういうのだよ!」

藤原「芳醇な香り」

北島「あーあーあー、また出たよ」

藤原「アウストのメルロー・ルビコーネだな?」

北島「……合ってるけどさ……また出たよ、芳醇な香り……」

藤原「ワインは大体、芳醇な香りがするんだよ」

北島「途中までは良かったろ。甘さとか酸味とか」

藤原「独特な香りで嗅ぎ分けるもんなんだよ」

北島「その独特な香りを詳細に教えろって言ってんの」

藤原「難しいだぞ?言葉にするって」

北島「それをするのがソムリエの仕事なんじゃないの?」

藤原「ソムリエはワインの質や味の管理をするのが仕事だから表現するのは評論家とかの仕事なんだよな」

北島「にしてもだよ。もっとあるだろ?香りだけじゃなくて味についてとかさ」

藤原「うーん……甘さとか酸っぱさとかしかないんだよな」

北島「表現力は無いのか」

藤原「ってか俺、そもそも店長だからソムリエはソムリエだけど、従業員の管理が主な仕事だから最近はそこまでワイン飲んでない」

北島「店長って大変なんだな」
















―――終わり

『明日暇?』



・登場人物


 北島

 藤原

 枝村



・舞台


 喫煙所






 明転。


 喫煙所。灰皿台が二個。

 北島、藤原、板付き。


藤原「俺さぁ『明日、暇?』っていきなり聞いてくる奴、嫌いなんだよね」

北島「何で?」

藤原「だって、まず予定を言ってくれないと断り辛いじゃん」

北島「あー、分かるかも」

藤原「『明日、暇だよ』って言って、断りたい内容だった時、断り辛いと思わない?」

北島「何も全部、断るつもりじゃないけど、そういう時もあるからまず予定を提示してくれないと行くって選択肢しかないみたいになるよね」

藤原「だろ?ウチの会社にもさ、いるじゃん?アイツ」

北島「あー、アイツね。いきなり聞いてきて嫌な事を押し付けてくる奴」

藤原「そうそう。今度からアイツから『明日、暇?』って聞かれたら断ろうと思ってる」

北島「良いんじゃね?それで」

枝村「あ、ここにいたか。おーい、二人共ー(舞台上手から登場)」

藤原「出たよ。アイツが」

北島「無視、無視」

枝村「なぁ、明日、暇?」

北島藤原「出たよ……」

枝村「え?何が?」

藤原「いや……生憎、明日は予定があってな」

枝村「あ、そうなの?北島は?」

北島「俺も明日は予定がある」

枝村「そっかー。残念だなー。明日は女子大生と合コンがあったんだけど……」

藤原「行く!」

北島枝村「えっ!?」

北島「おい、藤原、話が違うぞ」

藤原「だって女子大生だぞ!?こんな機会が無ければ出会えないだろ!?」

北島「それはそうだけども……」

枝村「何?明日、予定があるんじゃないの?」

藤原「たった今、無くなった!行ける!」

枝村「あ、そう……じゃあ明日の十九時に駅前の居酒屋で」

藤原「分かった!」


 暗転。


 明転。


 喫煙所。

 北島、藤原、板付き。


北島「この前の合コンどうだった?」

藤原「それがさぁ、もう良い女、全然いなかった」

北島「そっかぁ。どんな子がいたの?」

藤原「やっぱり学生なだけあって話が通じなかった。それに金の事しか聞いてこない子しかいなくて、俺、終始ハブられてた」

北島「成程なぁ。行かなくて良かったー」

藤原「もうアイツ信用しない……」

枝村「(舞台上手から登場)あ、いたいた。お二人さーん」

藤原「出た……」

枝村「明日、暇?」

藤原「明日は予定がある」

北島「俺も」

枝村「そっかー……今日はキャビンアテンダントさん達と合コンがあったんだけどなぁ……」

藤原「行く!」

北島枝村「えっ!?」

北島「お前、もう枝村の事、信用しないんじゃなかったの?」

藤原「今回は行ける気がする!社会人だし!」

枝村「予定あるんじゃなかったの?」

藤原「たった今、無くなった!俺、行けます!」

枝村「そ、そっか。じゃあ明日、十九時に駅前の居酒屋でな」

藤原「分かった!」

北島「大丈夫かなぁ……」


 暗転。


 明転。


北島「この前の合コン、どうだった?」

藤原「話に全く着いていけなかった……」

北島「どんな感じで?」

藤原「ずっと英語、喋ってた。何、話してるか全くわからなかった」

北島「あー、国際線の人達?」

藤原「そう」

北島「成程なぁ。行かなくて良かったー」

藤原「もう二度と信用しない。アイツの事……」

枝村「(舞台上手から登場)あ、いたいた。お二人さーん」

藤原「また出たよ……」

枝村「明日、暇?」

藤原「今度こそ予定がある」

北島「右に同じく」

枝村「マジかぁ……残念だなぁ。明日はセクシー女優さん達と合コンがあるんだけどなぁ……」

藤原「行く!」

北島枝村「えっ!?」

北島「おい。もう二度と信用しないんじゃないのか?」

藤原「今回こそは絶対当たる!そんな気がする!」

北島「えぇ……?」

枝村「予定入ってるんじゃないのか?」

藤原「たった今、無くなった!」

枝村「そ、そうか……じゃあ十九時に駅前の居酒屋でな」

藤原「分かった!」


 暗転。


 明転。


喫煙所。

 北島、藤原、板付き。


北島「この前の合コン、どうだった?」

藤原「凄く良かった!」

北島「おっ?今回は当たりだった?」

藤原「割と!お持ち帰りした!」

北島「良かったな」

藤原「ただなぁ……」

北島「何だよ?」

藤原「八回戦とかするんだよな……それにちょっとメンヘラ気味で『これから毎日シようね』って言われちゃって毎日、搾り取られてるんだ……体力が持たないなぁとか思ったり」

北島「それはもう贅沢ってやつだろ」

藤原「兎に角、もうあの子とは関わらない。引っ越してメアドも電話番号も変更して、縁を切った」

北島「あっそー。何か勿体無いな」

藤原「もっと程良い女性を紹介してくれねぇかな……もう絶対アイツ信用しない」

枝村「(舞台上手から登場)あ、いたいた。お二人さーん」

藤原「やっぱり出たよ……」

枝村「明日、暇?」

藤原「今回ばっかりは外せない予定が入ってる」

北島「俺も」

枝村「そっかぁ……残念だなぁ。明日はうちの会社の受付嬢と合コンがあるんだけどなぁ」

藤原「行く!」

北島枝村「えっ!?」

北島「おい。絶対、信用しないんじゃなかったのか?」

藤原「今回は社内だし大丈夫だろ!」

北島「えぇ……?」

枝村「絶対に外せない予定があるんじゃなかったのか?」

藤原「たった今、無くなった!」

枝村「そ、そうか……じゃあ十九時に駅前の居酒屋でな」

藤原「分かった!(舞台上手に退場)」

北島「なぁ、何でそんなに合コンを開いてるんだ?」

枝村「藤原に彼女を作らせようと思って」

北島「何で?」

枝村「アイツ、女癖、悪いから」

北島「まぁ見境無いよな」

枝村「俺の彼女にも手を出そうとしてたし、彼女でも作って結婚でもすれば俺の彼女も安心だろうと思って」

北島「友達思いなのかと思ったらそうじゃなかったんだな」

―――終わり

『帰宅』



・登場人物


 北島

 藤原



・舞台


 舞台上手側・・・マンションの玄関前

 舞台下手側・・・部屋の中






 明転。


 舞台上手側、マンションの玄関前。機械が色々置いてある。舞台下手側、部屋。テーブル一つと椅子二つ。

 北島、藤原、舞台上手から登場。


北島「ここかぁ。藤原が引っ越したマンションは」

藤原「そうそう。新居祝いに飲んでってよ」

北島「おう。それにしても豪華なマンションだなぁ。駅からも近いし、駐車場もあって、スーパーとかコンビニも近所にあって……家賃とか大丈夫なのか?」

藤原「不思議と安かったんだよ。セキュリティーとか万全なのに」

北島「ほーん?何でだろうな?」

藤原「何か入居者が嫌になってどんどん引っ越していくらしい」

北島「事故物件?」

藤原「いや、そうじゃないらしい」

北島「何でだろうな?」

藤原「さぁ……じゃあ入るか。(機械に顔をかざす)」

北島「何してんの?」

藤原「顔認証。セキュリティー重視で何重にもロックが掛かってるんだ」

北島「へー。最新式ぃ」

藤原「(機械に指をかざす)」

北島「何してんの?」

藤原「指紋認証」

北島「へー。本格的ぃ」

藤原「(目をかざす)」

北島「今度は何してんの?」

藤原「網膜認証」

北島「へー……」

藤原「(マイクに向かって)ただいま」

北島「何?『ただいま』って」

藤原「声紋認証」

北島「へー……長くね?」

藤原「え?」

北島「まだ入れないの?」

藤原「もう少しだから」

北島「あっそー。早くしてよね」

藤原「分かった分かった。(財布からカードを一枚取り出し、スラッシュする)」

北島「それは?」

藤原「カード型の鍵」

北島「最新式なのは分かったから早くしてくれ」

藤原「はいはい。(財布から別のカードを取り出し、ピッとかざす)」

北島「それは?」

藤原「さっきのスラッシュ式とは別でIC式のカードの鍵」

北島「面倒臭っ。一つに纏めろよ」

藤原「俺に言われても……(鍵を取り出し、刺して回す)」

北島「やっと普通の鍵が出てきた……ようやく入れるな……」

藤原「(画面をタッチする)」

北島「何してんの?早く入ろうよ」

藤原「まだ入れないんだ」

北島「は?何で?」

藤原「暗証番号を入力しないといけない」

北島「もう何でも良いよ。早くしてくれ」

藤原「はいはい(画面をタッチし続ける)」

北島藤原「…………」

北島「ねぇ。暗証番号ってそんなに長いの?」

藤原「いいや?四桁だけど?」

北島「じゃあ何でそんな時間、掛かってんの?」

藤原「今、生年月日を入力してる」

北島「なっが……」

藤原「もう少しだから(画面をタッチし続ける)」

北島「……今は何してんの?」

藤原「電話番号を入力してる」

北島「マジで面倒臭ぇよ……」

藤原「(スマートフォンを確認する)あ、暗証番号、届いた(画面をタッチし続ける)」

北島「さっき暗証番号、入力しなかった?」

藤原「あれは家に帰る為の暗証番号。今回は本人確認の為の暗証番号」

北島「まさかとは思うけど、メールアドレスもやるのか?」

藤原「よく分かったね」

北島「『よく分かったね』じゃねぇよ!何でこんな面倒臭い所に住んでんだよ!?」

藤原「安かったし、立地条件が良いから」

北島「腹立ってきた……」

藤原「え?帰る?」

北島「いや、ここまで来たら最後まで見てやろうじゃねぇかって気持ちになってきた。続けてくれ」

藤原「分かった。あ、メール届いた。(画面をタッチし続ける)」

北島「次は何だ?」

藤原「マイナンバーカード」

北島「を?どうするんだ?スラッシュか?ICか?ナンバーか?」

藤原「全部」

北島「全部!?」

藤原「そう、全部。(マイナンバーカードをスラッシュし、ICをかざし、ナンバーを入力する)」

北島「これで最後?」

藤原「うん」


 SE、ガチャッ、という音。


北島「やっと入れる……(藤原と共に部屋の前まで行く)」

藤原「(部屋の前の機械に顔をかざす)」

北島「何やってんの?」

藤原「さっきの流れを部屋に入る前にもやるんだよ」

北島「もう帰る!」

藤原「出る時もこれやんなくちゃいけないんだよ」

北島「あぁー!」


 暗転。


 明転。


 舞台上手側、マンションの玄関前。機械が色々置いてある。舞台下手側、部屋。

 北島、藤原、板付き。


北島「やっと入れた……!」

藤原「今、お茶を淹れるからな」

北島「あぁ、うん……長かったからトイレ行きたいんだけど……」

藤原「奥だよー」

北島「(舞台下手に退場)……あ、これかぁ」


 SE、トイレの水が流れる音。


北島「あれ?あれ?おーい、出れないぞー?」

藤原「あぁ、トイレね、入る時は良いんだけど、出る時にこの部屋に入る時みたいな流れをしないと出れないんだよ」

北島「はぁ!?じゃあお前じゃないと出られないじゃねぇか!」

藤原「だから今からお前のパスコードをそれぞれ登録するからなー?」

北島「助けてくれー!」


―――終わり

『自転車』



・登場人物


 北島

 藤原

 枝村



・舞台


 道端






 明転。


 道端。自転車が一台。

 北島、藤原、枝村、板付き。藤原、自転車に乗っている。


藤原「じゃあ俺、帰るわ」

北島「おう。また明日、大学でな」

藤原「おう。じゃあな(舞台下手に自転車を漕いで退場)」

枝村「気を付けて帰れよー」

藤原「(声のみ)えっ?何ー?」


 SE、ドンガラガッシャーン!という音。


北島枝村「あ」

藤原「(脚を引き摺りながら舞台下手から登場)何ー?」

枝村「あの、気を付けて帰ってくれって話」

藤原「あ、そー。でもどうしよう。自転車壊れちゃった」

北島「俺の自転車、貸そうか?」

藤原「でも俺、脚、痛いし」

北島「じゃあどうする?」

藤原「泊めてくれない?」

北島「えー?でもこの後、彼女、来るし」

藤原「そっかぁ。枝村は?」

枝村「俺もこの後、両親が来るんだよね」

藤原「そっかぁ。じゃあ仕方ないな」

北島「あ、じゃあ車で送ってくよ」

藤原「えー?でも俺のアパートまでの道、お前の車じゃ通れない所もあるだろ?」

北島「そっかぁ。じゃあどうしようか?」

藤原「あ、じゃあ北島の自転車で北島が運転して、俺が後ろに乗るよ」

北島「でも籠、置いて荷台になってるからなぁ」

藤原「外せば良いじゃん」

北島「それに最近ここら辺で警察がパトロールしてるから二ケツしてるの見られたら何か罰金とか払わされそうだし」

藤原「そっかぁ。じゃあしょうがないな」

枝村「とりあえず自転車、修理屋に持ってく?」

藤原「もうこの時間じゃやってないだろ」

北島「そっかぁ。じゃあとりあえず病院に行く?」

藤原「一応、行こうかなぁ」

枝村「どうやって行く?徒歩?」

藤原「この脚で徒歩はキツイなぁ」

北島「そっかぁ。じゃあ救急車?」

藤原「あんまり大事にしたくないなぁ」

枝村「もしかしたら骨が折れてるかもしれないぞ?」

藤原「いや、折れてたら立ってられないから折れては無いと思う」

北島「そっかぁ。じゃあ車で送っていくよ」

藤原「あ、でもこの時間だと時間外診療になるから割高になっちゃう」

枝村「金、無いの?」

藤原「バイト代は入るの後一週間なんだよな」

枝村「じゃあ俺が出すよ。俺のせいでもあるし」

藤原「それは悪いよ。俺の前方不注意だし」

枝村「そっかぁ。じゃあ両方に責任があるってっ事で相殺かな?」

藤原「そうだねぇ」

北島藤原枝村「うーん」

北島「いよいよどうしようか」

藤原「とりあえず家に帰りたい」

北島「あ、じゃあちょっと待ってて?(舞台上手に退場し、松葉杖を持って舞台上手から登場)これ使ってよ」

藤原「何でこんなのあるの?」

北島「ついこの前まで演劇サークルで小道具として使ってたんだよ。結構しっかりしてるから使えると思うよ」

藤原「(松葉杖を受け取る)おっ、良いな。じゃあとりあえずこれで帰るわ」

北島「藤原の自転車どうする?」

藤原「枝村が良かったら暫く預かってくれないか?」

枝村「それくらい良いよ」

藤原「ありがとう」

枝村「困った時はお互い様だよ」

藤原「おう。じゃあ帰るわ」

枝村「送ってくよ」

藤原「いいよ」

枝村「でも俺のせいでもあるし」

藤原「それはもう相殺されただろ?それで良いじゃん」

枝村「そうかぁ」

藤原「それに北島は彼女さん、枝村はご両親が来るんだろ?女の子をこんな時間に待たせちゃ駄目だよ」

北島枝村「すまんな」

藤原「良いって事よ。じゃあまた明日(舞台下手に退場)」

北島「また明日。気を付けて帰れよー」

藤原「(声のみ)えっ、何ー?」


 SE、ドンガラガッシャーン!という音。


北島「あ」

藤原「(這いつくばって舞台下手から登場)何ー?」

北島「あ、いや、気を付けて帰れよって話」

藤原「そっかー。いやー、まさか自分の自転車に脚を引っ掛けてすっ転ぶとは思わなんだ」

北島「今度こそ救急車、呼ぶ?」

藤原「頼むわー」


 暗転。


 明転。


道端。

 北島、藤原、舞台上手から登場。藤原、自転車を押している。


北島「軽い捻挫で良かったな」

藤原「幸いもう自転車に乗れるくらいには回復したし、二人には迷惑掛けたな」

北島「別に大丈夫だよ」

枝村「うん」

藤原「じゃあ俺、帰るわ」

北島「おう。また明日、大学でな」

藤原「おう。じゃあなー(自転車に乗って舞台下手に退場)」

北島枝村「気を付けてなー」

藤原「(声のみ)えっ?何ー?」


 SE、ドンガラガッシャーン!という音。


北島枝村「あ、デジャヴ」









―――終わり

『血の気の多いデスゲーム』



・登場人物


 北島(デスゲーム主催者)

 藤原

 枝村



・舞台


 デスゲームの一室






 明転。


 デスゲームの一室。舞台奥の方に映像パネルが一つにテーブル一つ。テーブルの上にはリボルバー銃と弾が一つ置いてある。

 藤原、枝村、板付き。寝ている。


藤原枝村「うぅっ……」

藤原「な、何だここ……?」

枝村「アンタは誰だ……?」

藤原「アンタこそ……?」


 パネル、映像ON。


北島「目が覚めたようだな」

藤原「誰だお前は!?」

枝村「ここはどこだ!?」

北島「今から君達には死のゲームをしてもらう」

藤原枝村「何だって!?」

北島「ルールを説明する。まず……」

藤原枝村「うおおおおおおおおおおおお!!!(殴り合いを始める)」

北島「おい!何してる!?」

藤原「死のゲームをするんだろう!?」

枝村「だからやってるんだ!」

北島「ルールがあるからまず話を聞け!」

藤原枝村「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

北島「聞け!話を聞け!ルールを聞け!聞け!聞ーけ!俺の話を聞け!」

藤原枝村「はぁ……はぁ……はぁ……(殴り合いを止める)」

北島「人の話は最後まで聞きましょう!ではルールを説明する」

藤原「その前にちょっと良いか?」

北島「何だ?」

藤原「何故こんな事をする?」

北島「この部屋は今、全世界に向けてネットを通じて配信されている。それで賭けをやっているんだよ」

藤原枝村「賭け!?」

北島「この部屋から出る方法はただ一つ。生き残る事だ」

藤原枝村「うおおおおおおおおおおおお!!!(殴り合いを始める)」

北島「またか!?何で殴り合ってんだ!?」

藤原「だって生き残ったら帰れるんだろう!?」

枝村「だから早く決着を着けようと思って!」

藤原枝村「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

北島「いいから話を聞け!いいから聞け!最後まで聞け!いいから話を最後まで聞け!」

藤原枝村「はぁ……はぁ……はぁ……(殴り合いを止める)」

北島「全くお前らは……良いか?この部屋から出られたらベットされている金額の二十パーセント、まぁ日本円で二千万円を手に入れて出られる」

藤原枝村「うおおおおおおおおおおおお!!!(殴り合いを始める)」

北島「だから何で殴り合うんだよ!?」

藤原「金が貰えるんだろ!?」

枝村「だったら勝つしかない!」

藤原枝村「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

北島「だから聞け!聞ーけ!聞け!まずは聞け!落ち着け!」

藤原枝村「はぁ……はぁ……はぁ……(殴り合いを止める)」

北島「ルールがあると言っただろう……そこのテーブルにリボルバーがあるだろう?それを使って勝負するんだ」

藤原「(リボルバーを手に取り、枝村に殴り掛かる)」

藤原枝村「うおおおおおおおおおおおお!!!(殴り合いを始める)」

北島「おい!今度は何だ!?」

藤原「これを使って殴り殺せば良いんだろう!?」

枝村「寄越せ!俺が使うんだ!」

北島「まだ説明は終わってない!聞け!聞ーけ!聞け!最後までちゃんと聞きなさい!人の話は最後までキチンと聞きましょう!」

藤原枝村「はぁ……はぁ……はぁ……(殴り合いを止める)」

北島「全く……ここまでの奴らは初めてだよ……良いですか?今度こそちゃんと最後まで聞きなさいね?」

藤原枝村「はーい」

北島「まずそのリボルバーに弾を一つ込めなさい」

藤原「(リボルバー銃に弾を込める)」

北島「それのシリンダーを一人一回、回して交互に自分の頭に撃っていって……」

藤原「(枝村に向かって発砲する)」

枝村「うわぁ!?」

北島「何をする!?」

藤原「早めに決着を着けようと思って」

枝村「テメェ!」

藤原枝村「うおおおおおおおおおおおお!!!(殴り合いを始める)」

北島「あぁ!もう!落ち着け!」

藤原枝村「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

北島「弾の補充の為に今そっち行くからな!?待ってろよ!?(画面から消え、舞台上手から登場)おい!落ち着け!ゲームを始めるぞ!」

藤原枝村「(連係プレーで北島を取り押さえる)うおおおおお!!!」

北島「な、何だ!?何なんだ!?」

藤原「やっと捕まえたぞこの野郎!」

枝村「これでやっと脱出出来る!」

北島「最初からこの為に!?」

藤原「当たり前だろう!」

枝村「アンタ、銃を寄越せ!」

藤原「おう!(北島を取り押さえつつ、リボルバー銃を枝村に渡す)」

枝村「おらっ!(北島をリボルバー銃で殴り、気絶させる)」

藤原「よし!帰ろう!」

枝村「おう!」

藤原枝村「うおおおおおおおおおお!!!(走って舞台上手に退場)」



―――終わり

『天然論破』



・登場人物


 北島

 藤原

 枝村



・舞台


 居酒屋






 明転。


 居酒屋。テーブル一つに椅子が一つ。

 藤原、板付き。北島、舞台上手から登場。


藤原「っしゃっせーい。こちらの席へどうぞー」

北島「(席に着く)」

藤原「お客様。当店の利用は初めてですか?」

北島「あぁ」

藤原「当店は初めての方は……」

北島「この店お勧めの純米吟醸の冷やと冷や奴」

藤原「……畏まりましたー(舞台下手に退場し、酒と冷や奴を持って舞台下手から登場)お待たせしましたー。こちら当店お勧めの純米吟醸の冷やと冷や奴でーす」

北島「(酒を飲む)」

藤原「ごゆっくりどうぞー(立ち去ろうとする)」

北島「おい、ちょっと待て」

藤原「何でしょうか?」

北島「これ、冷やなのに冷えてないじゃないか!普通、冷やって言ったらキンキンに冷えてるもんだろ!」

藤原「(懐から温度計を取り出し、コップに入れる)……いえ、冷やですね」

北島「そんな訳あるか!」

藤原「冷や酒は温度二十度前後の常温で、十五度以下に冷やした物を冷酒と言います。これは二十度なので冷や酒です」

北島「じゃあ俺が間違ってるって言いたいのか!?」

藤原「そうです」

北島「何だその態度は!?そんなんじゃこの店のフインキ悪くなるぞ!?」

藤原「お客様。『フインキ』ではなく『ふんいき』です」

北島「また間違ってるって言いたいのか!?」

藤原「はい。そうです」

北島「何だと!?こんなにお客様を怒らせてどうするつもりだ!?」

藤原「ご自身で怒りをお鎮め下さい。大人なんですから」

北島「テメェ!お客様は神様だろうが!」

藤原「失礼ですが『お客様は神様』というのは三波春夫さんがオーディエンスに向けて『私にとって、お客様は神様のような存在です』と言ったのが切っ掛けで、商売、全てに適用されるものではありませんし、ご自身でご自身の事を神様というのは常識から外れています」

北島「長々と説教しやがって……!この俺に恥を掻かせた事についてどう思ってんだ!?」

藤原「そう仰いましても……」

北島「おい!敬語はちゃんと使え!『仰られる』だろ!」

藤原「『仰る』と『られる』は両方とも尊敬語なので両方使うと二重敬語になって逆に失礼に当たります」

北島「もうお前じゃ話にならん!店長を出せ!」

藤原「呼んだところでお客様が痴態を晒した事は覆ませんよ?」

北島「五月蠅ぇ!さっさと呼べ!」

藤原「畏まりました。少々お待ち下さい。店長ー」

枝村「(舞台下手から登場)はいはい。どうしたの?」

藤原「クレームです」

枝村「またか……お客様、どうされましたか?」

北島「どうもこうも無ぇよ!お前んとこの従業員はどういう教育受けてんだ!?」

枝村「何があったの?」

藤原「冷や酒の温度の話と、『雰囲気』を『ふいんき』って仰ってきた件と、『お客様は神様だ』と仰って来た件と、『仰る』を『仰られる』と言えと仰って来た件です」

枝村「はぁ……またやったのか……あのなぁ、藤原君。前々から言ってるだろう?そういう正論は言うんじゃないって」

北島「おぉ、店長さんは話の分かる奴だな」

枝村「こういう馬鹿な客は話を合わせて知能を下げて接客するんだと何回言ったら分かるんだ?」

北島「えぇ!?」

枝村「思い上がった客にはクレームが入らないように対応しなくちゃいけないんだ。正論だったとしてもどうせ自分の間違いを認める事なんか無いんだから適当に流さなきゃいけにんだ。分かった?」

藤原「非常に遺憾ですが、分かりました……」

枝村「申し訳ありません、お客様。ウチの馬鹿が」

北島「馬鹿はお前だよ!客の事を何だと思ってんだ!?」

藤原「金づる……」

北島「おい!何も反省してないぞ!?」

枝村「おい。正論だけじゃなくて本音を言うのも駄目だと前に言ったろ」

北島「正論って言ったか!?じゃあ俺が間違えてるって言いたいんだな!?」

藤原「こちらに落ち度がある一方でお客様にも落ち度はあります。ここは喧嘩両成敗で行きましょう?」

枝村「おい。真実を言うのが必ずしも正しいとは限らないと前にも言っただろう」

北島「もういい!俺は帰る!」

藤原「まだお酒とおつまみが残ってますよ?」

北島「勝手に廃棄しろ!」

藤原「勿体無い……食べ物は大事に最後まで食べ切れと親御さんから躾けられなかったんですか?」

北島「そんなの知ったこっちゃねぇよ!」

枝村「おい。育ちの悪い客だっているんだからあまり責めるなと前にも言っただろう」

北島「とことん失礼な店だな!後でクレームを入れさせてもらうぞ!」

藤原「どうぞどうぞ。仮にもお客様なので貴重なご意見をお聞かせ下さい」

北島「ふざけるな!もう二度と来ないからな!」

藤原「どうぞどうぞ。貴方のような悪質なお客様は店の雰囲気を悪く致しますので二度と来て頂かなくて結構です」

北島「何だと!?分かった!ここの口コミに悪口書いてやるからな!」

藤原「こちらは痛くも痒くもありませんのでどうぞご自由に」

枝村「お会計、千円になります」

北島「金まで取るのか!?」

枝村「支払って頂けない場合は無銭飲食で警察に通報致しますが……」

北島「なっ、がっ、ぐっ……!?分かったよ!払えば良いんだろ!払えば!(財布から千円を取り出してテーブルに叩きつける)じゃあな!(舞台上手に退場)」

藤原枝村「ありがとうございましたー」

枝村「一見さんお断りの看板、読めない人もいるんだなぁ」

藤原「ですねぇ」



―――終わり

『何も分からない』



・登場人物


 勇者

 魔王



・舞台


 魔王城






 明転。


 魔王城。

 勇者、魔王、板付き。


勇者「くっ……!」

魔王「ククク……今回の勇者は呆気無かったな。前の勇者の方がよっぽど手応えがあったぞ」

勇者「どういう意味だ!?」

魔王「前の勇者は我が倒した。そして今度は何の因果か貴様を葬る事になった」

勇者「どういう意味だ!?」

魔王「親子共々、我の手で葬られる気分はどうだ?」

勇者「どういう意味だ!?」

魔王「前の勇者の死に様は無様であった。貴様はどうなるかな?」

勇者「どういう意味だ!?」

魔王「前の勇者。つまり貴様の父親は我が殺したのだ!」

勇者「どういう意味だ!?」

魔王「えっ?何が?」

勇者「言ってる意味がさっぱり分からん!」

魔王「何が!?どこが分かんなかった!?」

勇者「全部だ!」

魔王「ぜ、全部!?」

勇者「一から説明してくれ!」

魔王「あ、えーっと……前の勇者が我に殺されたのは分かるか?」

勇者「そうなのか!?何て卑劣な奴だ!」

魔王「そこから!?で、前の勇者というのが貴様の父親という事だ」

勇者「何だって!?じゃあ俺を育ててくれた親父は血の繋がりの無い人だって言うのか!?」

魔王「あー、まぁ、そうなるかな」

勇者「俺はあの人を本当の父親だと思って接してきた……!それをこんな形で真実を聞かされるなんて……!」

魔王「…………」

勇者「俺はあの人の事を本当の父親だと思ってる!その気持ちはこれからも変わらない!こんな事で親k所の愛は割けないぞ!」

魔王「…………」

勇者「前の勇者、血の繋がりのある親父の仇は俺が絶対に討つ!それが最初で最後の親孝行ってもんだろ!?そうだろ!?」

魔王「……知らないよ。そっちの都合は……」

勇者「何だと!?」

魔王「知らないって言ってんの!どうせこれから殺されるんだから知ったこっちゃないよ!」

勇者「この人で無し!」

魔王「人じゃないからね!?魔王だからね!?」

勇者「どういう意味だ!?」

魔王「また!?我は魔族だから人間じゃないの!」

勇者「どういう意味だ!?」

魔王「今度は何が分からないの!?」

勇者「全部だ!」

魔王「えぇ……?じゃ、じゃあ一応、説明するけど、魔族と人間は全く違う種族だって事は分かる?」

勇者「そうなのか!?外国人みたいな感じじゃ無いのか!?」

魔王「全然違うからね!?まず、両者との間には子孫を残す事は出来ないし、食事内容も全然違います!」

勇者「そうなのか!?」

魔王「そうですよ!?そこから説明しなくちゃいけませんか!?」

勇者「子供にも分かるようにこの世の仕組みを一から説明して下さい!」

魔王「分かりました!」


 暗転。


 明転。


 魔王城。ホワイトボード一つに机一つ、椅子一つ。ホワイトボードには色々書かれている。

 勇者席に着いている。魔王、ホワイトボードの前に立って教鞭を持っている。


魔王「以上が、この世の仕組みでーす。ご理解頂けましたかー?」

勇者「はーい!」

魔王「何か分からない事はありますかー?」

勇者「何故、魔王先生は人類を滅ぼしたいんですかー!?」

魔王「滅ぼしたいのではなく、人類は食料として見ているので、家畜化したいと思っているのでーす」

勇者「つまりー!?」

魔王「人類も魔族を魔法の材料や道具の素材にしているでしょうー?それと同じでーす」

勇者「成程ー!分かりましたー!」

魔王「他に何か質問はありますかー?」

勇者「ではここは交渉で、人類と魔族の間にそれぞれ家畜用の者達を用意して交換しませんかー!?それで協定を結びませんかー!?」

魔王「それは良い考えですね!互いにこれ以上、傷付きませんし!じゃあそうしましょう!」

勇者「ありがとうございまーす!」

魔王「では誓約書を作成してくるのでここで少々お待ち下さーい!(舞台下手に退場)」

勇者「はーい!……父さん、俺、やったよ……平和的解決、完了!」

















―――終わり


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ