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コント集  作者: 河野吉田
PR
20/37

コント集20

コント集20


191・・・いっせーのーせ

192・・・作り過ぎちゃって

193・・・元カノ

194・・・合ってない

195・・・バランス

196・・・バランス2

197・・・慰謝料

1898・・・持ち帰りで

199・・・一服

200・・・すみません



『いっせーのーせ』



・登場人物


 北島

 藤原



・舞台


 引っ越し前の家






 明転。


 引っ越し前の家。ソファが一つに段ボール箱がいくつか。

 北島、藤原、板付き。


北島「まずはこのソファだな」

藤原「引っ越しって疲れるな」

北島「あぁ。悪いな。荷造りから手伝ってもらっちゃって」

藤原「良いよ別に。ただ、この後、飲みに行かねぇか?」

藤原「労働後のビールって美味いよな」

北島「そうそう。この後のは俺が奢るからさ」

藤原「悪いな」

北島「良いんだよ。バイト代って事で」

藤原「サンキュ」

北島「さて、運ぶか。そっち持ってくれ」

藤原「オッケー」

北島「息合わせていくぞー」

藤原「オッケー」


※同時に。

北島「せーのっ」

藤原「いっせーのーせっ」


北島「イッテ!腰が……!」

藤原「大丈夫か?」

北島「息が合わなかったな。分かった。『いっせーのーせっ』で行こう」

藤原「オッケー」

北島「行くぞー?」


※同時に。

北島「いっせーのーせっ」

藤原「いっせーのーせっ、はいっ」


北島「イッテ!また腰が……!」

藤原「大丈夫か?」

北島「もっと短くしろ。何だよ。『はいっ』って」

藤原「短くね?分かった」

北島「行くぞー?」


※同時に。

北島「いっせーのーせっ」

藤原「いっせーのーせっ、でっ」


北島「『でっ』!?イッテ……!また腰が……!」

藤原「大丈夫か?」

北島「『でっ』って何だよ?『でっ』って」

藤原「お前が短くしろって言ったんじゃん」

北島「『いっせーのーせっ』で良いだろ」

藤原「よくよく考えたらさぁ、『いっせーのーせっ』ってタイミングが合わないんだよな」

北島「じゃあどうする?」

藤原「『1、2、3』でどうだ?」

北島「分かった。じゃあ行くぞ」


※同時に。

北島「1、2、3っ」

藤原「1、2の3っ」


北島「『の』!?イッテ!また、また腰が……!」

藤原「大丈夫か?」

北島「タイミング!タイミングがズレてる!」

藤原「お前がズレてんだよ」

北島「お前が言ったんだろ!『1、2、3』で行こうって!」

藤原「あぁ、それは悪かった。じゃあ『1、2の3』で行こう」

北島「今度こそ合わせろよ?行くぞー?」


※同時に。

北島「1、2の3っ」

藤原「1、2の3、はいっ」


北島「『はい』!?イッテ!ま、また腰が……!」

藤原「大丈夫か?」

北島「『はい』って何だよ……!?お前、どれだ息を合わせる気が無いんだ!?」

藤原「あるよ。たまたま俺達の息が合わないだけだよ」

北島「これでもダメか……あ、じゃあ歌とかどうだ?」

藤原「何の歌?」

北島「B‘zの『ウルトラソウル』の最後の部分。盛り上がるところ」

藤原「あー、分かった」

北島「じゃあ行くぞー?」


※同時に。

北島「そしてーかーがやーく、ウルトラソウルっ」

藤原「そしてーかーがやーく、ウルトラソウルっ、はいっ」


北島「『はいっ』!?イッテェ!腰が!」

藤原「大丈夫か?」

北島「盛り上がるところって言ったろ!」

藤原「『はいっ』までがセットだろ」

北島「もう腰が限界だよ……」

藤原「重い物を持つ時って腰を使うんじゃなくて、膝で持ち上げるようにすると良いって聞いたぞ?」

北島「今、言うなよ!もっと早く教えてくれよ!」

藤原「だってこんな長引くとは思わなかったんだもん」

北島「いよいよどうするか……」

藤原「こんなのはどうだ?」

北島「何?」


 暗転。


 明転。


 引っ越し前の家。

 北島、藤原、板付き。


北島「行くぞー?」

藤原「おー」

北島「せーのっ」

北島藤原「なんじゃらかんじゃらすぺぺぺへーのうんじゃらかんじゃらぴんぽこほいっ!(ソファが持ち上がる)」

藤原「おぉ、持ち上がった」

北島「何でこれで持ち上がるんだよ」

藤原「俺達、生きピッタリだったな」

北島「それまでの過程が……これ覚えるのに一時間、掛かったんだぞ……」

藤原「まぁまぁ。早く積みに行こうぜ。重いし」

北島「これがまだ箪笥とかテーブルとかあるんだけど……」

藤原「全部これでいこう」

北島「時間掛かってしょうがないんだが!?(藤原と共にソファを持って舞台上手に退場)」
























―――終わり

『作り過ぎちゃって』



・登場人物


 北島(男性)

小川(女性)



・舞台


 北島宅






 明転。


 北島宅。舞台中央、玄関。玄関には扉とインターホン。


小川「(カレーが入った2Lペットボトル三本が入った袋を持って舞台上手から登場。SE、インターホンの音)」

北島「(舞台下手から登場)はいはい。どなた?」

小川「隣の小川です」

北島「あ、お隣さん。どうしたんですか?」

小川「もう夕食は食べられました?」

北島「いえ、今から作ろうかなって思ってたところです」

小川「丁度良かった。もし良かったらカレーをちょっと作り過ぎちゃったんで、貰ってくれませんか?」

北島「あぁ、それは有難いです。どれくらい余ってるんですか?」

小川「6Lです」

北島「6L!?どんだけ作ったんですか!?」

小川「20Lです」

北島「何でそんなに作ったんですか?」

小川「市販のカレーだと私からすると少し物足りないので濃い目に作ってみたんですよ。そしたら味が濃過ぎて、薄めたら今度は薄くなっちゃって、そしたら足して、薄めて、を繰り返してたら気付いたら30Lになってました」

北島「料理下手……とは少し違うのか……?」

小川「手伝って頂けますか?」

北島「断ったらどうするんですか?」

小川「捨てるだけです」

北島「せめて冷凍しましょうよ……」

小川「もう冷凍庫もカレーでパンパンでして」

北島「何でストックあるのに追加で作っちゃったんですか……」

小川「いえ、残りの14L分を入れたらもうスペースが無くなりました」

北島「はぁ……じゃあ折角なんで頂きます」

小川「ありがとうございます!ではこれ(袋を渡す)」

北島「重っ!?」

小川「6Lですからね」

北島「ってか袋なんですね。鍋じゃなくて」

小川「鍋にはまだ私の分が残ってますので」

北島「(袋の中からペットボトルを取り出す)ペットボトル?」

小川「はい。2Lペットボトル三本に入れてきました」

北島「どうやって食べればいいんですか……温めるにしてもレンジじゃ無理じゃないですか……」

小川「湯煎するとか」

北島「あぁ、その手があったか。でも何故ペットボトルに……?」

小川「タッパーは全部、冷凍庫用に使っちゃったので、余ってたペットボトルに入れました」

北島「あ、そうですか……せめて500mLのペットボトルに入れてくれれば良かったのに……一気に温めたら食べられなかった残りを冷凍庫に入れて、を繰り返したら傷むだろうし……」

小川「ほら、カレーは飲み物って言いますし、カレーを飲みながらカレーを食べれば良いんじゃないですか?」

北島「そんな無茶な……」

小川「では私はこれで失礼します」

北島「あぁ、はい」

小川「また作り過ぎたらお裾分けに来ても良いですか?」

北島「良いですけど、次は節度を持って作って下さいね?」

小川「はい」


 暗転。


 明転。


小川「(シチューが入った2Lペットボトル五本が入った袋を持って舞台上手から登場。SE、インターホンの音)」

北島「(舞台下手から登場)はいはい。どなた?」

小川「隣の小川です」

北島「何か?」

小川「シチューを作り過ぎちゃったのでお裾分けに来ました」

北島「えぇ?昨日の今日なんですが……」

小川「如何ですか?」

北島「まだ昨日のカレーが残ってるんですが……」

小川「ほら、カレーだけじゃ飽きるでしょう?」

北島「それはそうですが……」

小川「カレーのお味は如何でしたか?」

北島「まぁめっちゃ美味しかったですが……」

小川「シチューも美味しいですよ」

北島「今度はどれくらい持ってきたんですか?」

小川「10Lです」

北島「10L!?昨日より増えてるじゃないですか!」

小川「味見してたら止まらなくなっちゃって」

北島「合計、何L作ったんですか!?」

小川「30Lです」

北島「もう冷凍庫もいっぱいなんでしょう!?どうするんですか!?」

小川「他の住人さんに分けて凌ぎます」

北島「俺ももう冷凍庫も冷蔵庫もいっぱいなんです!帰って下さい!」

小川「そうですか……残念です」

北島「じゃ!(扉を閉める)」

小川「振られちゃった……」

北島「畜生……」

北島小川「好きだったのに……!」









―――終わり

『元カノ』


・登場人物


 小川

 藤原



・舞台


 藤原宅






 明転。


 藤原宅。卓袱台一つに座布団二つ、奥に棚が一つ。棚にはネックレスや指輪や女性が映った写真等が置いてある。


藤原「(小川と共に舞台上手から登場)いらっしゃい、美幸。まぁ座ってよ」

小川「ありがとう。正将君。お邪魔します」

藤原「初めてだね。お家デートは」

小川「そうだね。男の人の部屋だからもっと散らかってるかと思った」

藤原「そりゃ彼女を呼ぶんだもん。念を入れて掃除するさ」

小川「って事は、普段は散らかってるんだね?」

藤原「あ、バレた?」

小川「全く、将来のお嫁さんが大変ね」

藤原「自分の家くらい俺も掃除するさ。何も奥さんにだけ家事を押し付けるなんてしないよ」

小川「じゃあ普段から掃除は小まめにね?」

藤原「分かったよ。あ、今お茶持ってくるから(舞台下手に退場)」

小川「うん(ふと棚の写真等を見る)」

藤原「(お茶を持って舞台下手から登場)どうぞ。どうしたの?」

小川「いや、あの女の人の写真、誰かなと思って」

藤原「あぁ、あれ?愛真」

小川「誰?お姉さん?妹さん?」

藤原「いや、元カノ」

小川「ちょっとちょっと。今の彼女は私なんだから元カノさんの写真はしまうなり捨てるなりしてよ」

藤原「あー……それがさ、実は元カノとは死別しちゃったんだよね……」

小川「え、そうなの?」

藤原「美幸には悪いんだけど、四十九日が終わるまでは飾らせてほしい」

小川「そうだったんだ……なら仕方ないね」

藤原「ごめん」

小川「謝らないで。寧ろ私の方が元カノさんに悪いかな。正将君を取っちゃった形になっちゃって」

藤原「そんな事無いよ!きっと天国で愛真も祝福してくれてると思う!」

小川「そうかな?」

藤原「そうだよ。優しい奴だったもん」

小川「そっか。じゃああの写真の側にあった指輪は?それも元カノさんの?」

藤原「あ、それはその前の元カノの」

小川「それこそ捨ててよ」

藤原「その元カノとも死別しちゃって……」

小川「あ、そうなんだ……え?あのルージュと香水は?もしかしてそっちの趣味があった?」

藤原「それは前の前の前の元カノの」

小川「……もしかして死別した?」

藤原「よく分かったね」

小川「じゃ、じゃああの女物のネックレスは?」

藤原「前の前の前の前の元カノの」

小川「あのイヤリングは?」

藤原「前の前の前の前の前の元カノの」

小川「ピアスは?」

藤原「前の前の前の前の前の前の元カノの」

小川「あのペンダントは?」

藤原「前の前の前の前の前の前の前の元カノの」

小川「その人達ってさぁ、もしかして……」

藤原「うん。皆、死別した」

小川「……え?殺した?」

藤原「何が?」

小川「元カノさん達」

藤原「そんな訳無いじゃ~ん!」

小川「そうだよね!そんな訳無いよね!」

藤原「君で最後にするし」

小川「……え?それどういう意味で言った?」

藤原「もうこれっきりにするから」

小川「え?え?え?待って待って待って!?怖い怖い怖い!」

藤原「どうした?」

小川「殺すつもりでしょ!?」

藤原「誰が?」

小川「アンタが!」

藤原「誰を?」

小川「私を!」

藤原「何で?」

小川「それはアンタしか知らんわ!」

藤原「大丈夫だって。苦しまないようにするから」

小川「殺すつもりじゃん!」

藤原「待ってくれ。俺は俺達、二人の将来にお金の面で苦しませる事はしないってつもりで言ったんだよ」

小川「本当!?」

藤原「本当、本当」

小川「信じて良いのね!?」

藤原「そこまで信用無い?」

小川「今とても揺らいでる!」

藤原「酷いなぁ。傷付くよ?」

小川「私が物理的に傷付きそうなんですけど!?」

藤原「あぁ、ロープ使うから」

小川「やっぱり殺すつもりじゃない!」

藤原「待ってくれ。そういうプレイだと思ってだな」

小川「今この状況でその話が出る訳無くない!?」

藤原「自然な流れだと思ったんだけど」

小川「どこが!?」

藤原「まぁお茶でも飲んで落ち着けよ」

小川「(お茶を飲む)あ、良かった。毒は入ってないみたい」

藤原「血が出るのは嫌だからね」

小川「あぁ……やっぱり私、殺されるんだ……」

藤原「何でそんな怖がるかなぁ」

小川「大体さぁ、それどれくらいの期間の話?」

藤原「七ヶ月くらい?」

小川「じゃあ一ヶ月に一人、死んでるって事!?」

藤原「そうだねぇ」

小川「それ本当にアンタが殺してないのよね!?」

藤原「自然と死んでいくんだよね」

小川「じゃあ呪いじゃん!お祓いしに行こう!?」

藤原「前に行ったんだけど、事故とか殺人とか自殺とかで呪い的なものじゃないらしいから無理なんだってさ」

小川「えぇ……?本当に殺してないの?」

藤原「ある意味、惚れさせるという意味では悩殺はしてるかもしれない」

小川「そんなギャグを聞きたくて質問してんじゃないんだよ!」

藤原「上手い事、言ったつもりだったんだけど……」

小川「今そんな事、求めてない!」

藤原「ごめんなさい」

小川「一応、聞くけど元カノさん達との最後の会話は覚えてる?」

藤原「『どうしてこんな事するの……!?』だったかな?」

小川「やっぱりアンタが殺してるじゃないの!」

藤原「とりあえずさ、何かプレゼントくれない?」

小川「遺品のつもり!?」







―――終わり

『合ってない』



・登場人物


 北島

 藤原



・舞台


 会議室






 明転。


 会議室。長机一つに椅子三つ。

 北島、藤原、藤原、板付き。


北島「じゃあこれから企画会議を始める。今回のテーマは若い男性向けの化粧品だ。何か案はあるか?」

藤原「はい」

北島「はい、藤原君」

藤原「今回は男性向けという事ですが、最近の男性も美容に気を付けていて、化粧品にも敏感です。特に肌の手入れには念を入れています」

北島「それで?」

藤原「そこでしっとり肌になるこの商品を勧めます」

北島「成程。良いかもしれないな。キャッチコピーは考えてあるのか?」

藤原「はい。しっとりさ、そして男性に不可欠な清潔感を合わせた『しっとり爽やか』を押していきたいと思っております」

北島「ん?しっとりと爽やか?ちょっと合ってない気がする二つなんだけど」

藤原「行けると思います!」

北島「ちょっとそれ試してみても良い?」

藤原「どうぞ!(試作品を北島に渡す)」

北島「(試作品を手に塗る)えー?これー?」

藤原「何か問題が?」

北島「しっとりはするけど爽やかとは掛け離れてる気がするんだけど。これ行ける?」

藤原「行けると思います!」

北島「そう、か……?じゃあCM起用は誰にする?」

藤原「じゃあ今、駆け出しの売れっ子俳優の枝村拓さんを使いましょう」

北島「駆け出しなの?売れっ子なの?どっち?」

藤原「売れっ子ですが、まだ駆け出しなので仕事が少ないらしいです」

北島「合ってないんだよなぁ……売れっ子なのに仕事が無いの?」

藤原「まだ新人ですから」

北島「よく分からないな……どんな俳優さんなの?」

藤原「そうですねぇ……鬱蒼と生い茂る一輪の花、と言ったところでしょうか」

北島「また合ってない……生い茂ってるの?一輪の花なの?」

藤原「派手に咲いてる感じですかね?」

北島「ラフレシアか何か?」

藤原「あー!そんな感じです!」

北島「え、臭そう……」

藤原「臭い男ってミステリアスで格好良くないですか?」

北島「いいや?」

藤原「あ、そうですか」

北島「もっとこう、スタイルの良さとかは?」

藤原「ガリガリの太っちょですかね」

北島「またもや合ってないんだよなぁ……痩せてるの?太ってるの?」

藤原「中肉中背です」

北島「プラマイゼロって事?」

藤原「あー!そんな感じです!」

北島「じゃあ最初からそう言いなよ……写真とかある?」

藤原「(スマートフォンを取り出して北島に画面を見せる)この人です」

北島「えー?この人ー?」

藤原「何か問題が?」

北島「どこが一輪の花なの?芋臭い男じゃん」

藤原「今、人気なんですよ?」

北島「あ、そう……でもそんな売れっ子俳優をどうやってオファーするの?」

藤原「あのやり手窓際部署の西岡さんに交渉させましょう。あの人ならきっと上手くやってくれます」

北島「だから合ってないんだよなぁ……やり手なのに窓際部署なの?」

藤原「西岡さんはそこだけは評価されてるんですが、他が駄目なんです」

北島「えぇ……?仕事出来るの?出来ないの?」

藤原「交渉専門なんです」

北島「あっそう……どんな人?」

藤原「(スマートフォンの画面を北島に見せる)この人です」

北島「えー?この人ー?」

藤原「何か問題が?」

北島「見るからに不潔じゃん。この人が交渉を成功させられるとは思えないんだけど」

藤原「実績はあります」

北島「そ、そうか……?じゃあその西岡さんに頼もうか」

藤原「はい」

北島「でも大丈夫か?」

藤原「何がですか?」

北島「不安だらけなんだけど」

藤原「何とかなりますよ!」

北島「そうかなぁ……?」


 暗転。


 明転。


 会議室。

 北島、藤原、板付き。


北島「CM撮影、終わったな」

藤原「ですねぇ」

北島「正直どうだった?」

藤原「コレジャナイ感、凄かったですね」

北島「だよなぁ。イメージと全然、違った」

藤原「ですねぇ。もしかしたら俺達、感覚、合ってるんですかね?」

北島「合ってない」







―――終わり

『バランス』



・登場人物


 北島

 藤原



・舞台


 北島宅






 明転。


 北島宅。卓袱台一つに座布団二つ。

 北島、藤原、板付き。


北島「藤原ってさぁ、昔、新体操してたんだよな?」

藤原「うん。そうだよ」

北島「じゃあ結構、今でも体、柔らかい方?」

藤原「まぁそうかな。今でも柔軟体操してるし」

北島「じゃあY字バランスとか出来る?」

藤原「出来るよ」

北島「マジで?じゃあI字バランスは?」

藤原「出来るよ」

北島「マジか!?ちょっと見せてよ」

藤原「良いよ。(立ち上がり、腕を伸ばして足を揃える)ほれ」

北島「……何それ?」

藤原「I字バランス」

北島「腕を伸ばして直立してるだけじゃん」

藤原「バランス取ってるだろ。こうやって足、二本で」

北島「そんなん誰でも出来るわ!Y字バランスは?」

藤原「(腕を少し広げてYの字を取る)こう」

北島「だからそんなん誰でも出来るわ!」

藤原「じゃあT字バランスは?」

北島「T?」

藤原「(腕を真横に伸ばしてTの字を取る)こう」

北島「それのどこが凄いんだよ!?」

藤原「あぁ、こうか(首を下に俯かせる)」

北島「厳密なTの字は良いんだよ!」

藤原「部首の十も出来るぞ」

北島「どんなやつ?」

藤原「(腕を折りたたんで十の字を作る)こう」

北島「……あ、協力の協の字の左側の十!?分かり辛っ!」

藤原「立身便も出来るぞ」

北島「どんなよ?」

藤原「(腕を少し下す)こう」

北島「どんどん省エネになっていくな……」

藤原「1も出来るぞ」

北島「何となく分かってきたけど、やってみろよ」

藤原「(気を付けをする)ほれ」

北島「もうただの気を付けじゃねぇか!」

藤原「漢字の一も出来るぞ」

北島「まさか……」

藤原「(横になる)ほれ」

北島「寝てるだけだろ!これのどこが凄いんだよ!?」

藤原「これをバランスと言い張るメンタル?」

北島「自分でも分かってるんじゃねぇか!これが新体操のバランスじゃないって事!」 ―――終わり

『バランス2』



・登場人物


 北島

 藤原



・舞台


 北島宅







 明転。


 北島宅。卓袱台一つに座布団二つ。

 北島、藤原、板付き。


北島「藤原ってさぁ、昔、新体操してたんだよな?」

藤原「うん。そうだよ」

北島「じゃあ結構、今でも体、柔らかい方?」

藤原「まぁそうかな。今でも柔軟体操してるし」

北島「じゃあY字バランスとか出来る?」

藤原「出来るよ」

北島「マジで?じゃあI字バランスは?」

藤原「出来るよ」

北島「マジか!?ちょっと見せてよ」

藤原「良いよ。(立ち上がり、腕を伸ばして足を揃える)ほれ」

北島「……何それ?」

藤原「I字バランス」

北島「腕を伸ばして直立してるだけじゃん」

藤原「バランス取ってるだろ。こうやって足、二本で」

北島「そんなん誰でも出来るわ!Y字バランスは?」

藤原「(腕を少し広げてYの字を取る)こう」

北島「だからそんなん誰でも出来るわ!」

藤原「じゃあT字バランスは?」

北島「T?」

藤原「(腕を真横に伸ばしてTの字を取る)こう」

北島「それのどこが凄いんだよ!?」

藤原「あぁ、こうか(首を下に俯かせる)」

北島「厳密なTの字は良いんだよ!」

藤原「折角だからアルファベット全部やってみよう」

北島「出来んの?」

藤原「やってみないと分からん」


 暗転。


 明転。


北島「意外と出来るもんだな」

藤原「久し振りに体動かした」

北島「Oとか凄かったな。中国雑技団かよって思った」

藤原「だてに新体操やってなかったからな」

北島「それなら一般的なイメージのI字バランスも出来ただろ」

藤原「股関節がもう固くなっちゃっててな」

北島「そうか。それにしてもQも凄かったな。脚どうなってんの?みたいな」

藤原「頑張った」

北島「それを売りにユーチューバーでも始めたら?」

藤原「うん」 ―――終わり

『慰謝料』



・登場人物


 北島

 藤原

 美幸(最後だけ登場)



・舞台


 弁護士事務所






 明転。


 弁護士事務所。机一つに椅子が二つ。

 北島、板付き。

 SE、ノックの音。


北島「どうぞー」

藤原「(舞台下手から登場)失礼します」

北島「藤原さんですね?」

藤原「はい」

北島「どうぞ、お掛け下さい」

藤原「失礼します。あのー、受付でも聞いたんですけど、ここって不倫による離婚に強い法律事務所さんで良いんですよね?」

北島「はい。そうです。担当させて頂きます、北島と申します。ご依頼主は貴方で宜しいですか?」

藤原「はい」

北島「不倫による離婚を要求したいという事で宜しいですか?」

藤原「はい」

北島「では不倫の証拠となる写真や音声、動画等はありますか?」

藤原「これです(鞄から写真を取り出す)」

北島「えーっと……これは……貴方と奥様ですか?」

藤原「いえ、俺と不倫相手です」

北島「は?」

藤原「俺は不倫をしたので離婚したいんです」

北島「……あ、そういう……私の中では初めてのケースです。自分から不倫を切っ掛けに離婚を申し出るのは」

藤原「離婚出来ますかね……?」

北島「まぁ証拠が無くても自分から不倫したと言えばすぐに離婚は可能ですが、奥様はどう仰ってるんですか?」

藤原「離婚には応じると」

北島「そうですか?ではもう私から言える事は何も無いですが……」

藤原「慰謝料を払いたくてですね……」

北島「慰謝料を?払えば良いんじゃないですか?」

藤原「そこが問題でして……」

北島「金額が高いとかですか?」

藤原「いえ、受け取ってくれないんです」

北島「……はぁ」

藤原「俺としては慰謝料を受け取ってほしいんですけど、嫁が受け取ってくれなくて。どうにかして受け取ってほしいんですけど、どうにかなりませんか?」

北島「別にいらないと言われているならそれで良いんじゃないですか?」

藤原「筋は通したいじゃないですか」

北島「何その正義感……ちなみにおいくら払いたいんですか?」

藤原「俺の分の三百万と、不倫相手の分の百五十万の合計四百五十万です」

北島「あ、不倫相手の方の分も払うって事は結婚されるのですか?」

藤原「いえ?彼女とはこれっきりにして別れるつもりです」

北島「え?じゃあ何もかも失ったどころかマイナススタートになりますけど良いんですか?」

藤原「それが俺自身への罰なんです」

北島「はぁ……罰なら最初からやらなければ良かったじゃないですか」

藤原「自制が利かなかったんです」

北島「はぁ……」

藤原「嫁の事は愛していますが、ケジメとしてこれは払っておきたいなと思って」

北島「でも奥様が受け取りたくないと仰っているならそれを尊重するのも愛の形じゃないですか?」

藤原「成程。その考えもありますね」

北島「もう一度しっかりと話し合ったら如何ですか?」

藤原「そうですね。もう一度、話し合ってみます」

北島「ではこれで」

藤原「はい。ありがとうございました(舞台下手に退場)」

北島「ふぅ……何か疲れたな……」


 SE、ノックの音。


北島「どうぞー」

美幸「(舞台下手から登場)失礼します」

北島「藤原さんですね?ん?藤原?」

美幸「はい。ここは離婚に強い法律事務所と伺ったのですが……」

北島「はい。どうぞお掛け下さい。担当させて頂きます、北島と申します」

美幸「藤原です。宜しくお願い致します」

北島「今回はどのようなご用件で?」

美幸「夫が不倫をして、離婚したいと共に慰謝料を支払いたいと言ってきたんですが、それを拒否したら凄く揉めちゃって……」

北島「アンタかー!」
























―――終わり

『持ち帰りで』



・登場人物


 北島

 藤原



・舞台


 家電量販店






 明転。


 家電量販店。レジが一つに発泡スチロールで作られた冷蔵庫、洗濯機、掃除機がある。レジには電池が置いてある。

 北島、板付き。


藤原「(舞台下手から登場)」

北島「いらっしゃいませー!」

藤原「あのー」

北島「あ、いらっしゃいませ!」

藤原「掃除機、探してるんですけど」

北島「あぁ、御座いますよ。こちらです」

藤原「ハンディタイプが良いんですけど」

北島「丁度こちらがハンディタイプでして、軽くて容量も大きく、充電時間は短いですが長時間、使える物になっております」

藤原「へー。良いなぁ」

北島「しかも今はセール中でして、20%オフの上にポイント二倍のキャンペーンをやってります」

藤原「じゃあこれにします」

北島「ありがとうございます!」

藤原「じゃあ会計で」

北島「ではこちらへ。一万五千八百円になります」

藤原「カードで」

北島「はい。一括で宜しいですか?」

藤原「はい」

北島「畏まりました。一万五千八百円、カード一括ですね。えー、ポイント二倍なので、三千百六十ポイント付きますね」

藤原「はい」

北島「こちらクレジットカードとポイントカードとレシートのお返しです。発送になさいますか?」

藤原「いえ、持ち帰りで」

北島「畏まりました。少々お待ち下さい。只今ご用意致します」

藤原「あ、大丈夫ですよ、そのままで」

北島「え?」

藤原「(掃除機を担ぐ)じゃあ」

北島「ちょちょちょ!それは見本です!新品をご用意しますので!」

藤原「あ、そうですか?あ、そうだそうだ。冷蔵庫も欲しかったんですよ」

北島「冷蔵庫ですか?それならこちらです」

藤原「色は白で容量550L、幅70mm以下、観音開きで何かありますか?」

北島「それでしたらこちらなんか如何でしょう?」

藤原「おー。これ良いじゃないですか」

北島「如何でしょうか?」

藤原「うん。これにします。カードで」

北島「ありがとうございます。三十三万二千九百五十円、カードで。一括で宜しかったですか?」

藤原「はい」

北島「畏まりました。三十三万二千九百五十円、カード一括ですね。ポイントを六万六千五百九十ポイントお付け致します」

藤原「ありがとうございます」

北島「こちらクレジットカードとポイントカードとレシートのお返しです。お届け先をこちらにお書き下さい」

藤原「あ、そのままで大丈夫です」

北島「え?」

藤原「持ち帰りで(冷蔵庫を担ぐ)」

北島「え?え?」

藤原「じゃあ」

北島「待って下さい!?それは見本ですので持って行かないで下さい!?」

藤原「あ、そうなんですか?」

北島「新品をご用意致しますので、それを置いて下さい!?」

藤原「はーい。あ、洗濯機も見たかったんですよ」

北島「洗濯機ですか?それならこちらです」

藤原「目星は付けてたんで、これで」

北島「三十九万七千九百八十円になります」

藤原「カードで」

北島「畏まりました。一括で宜しかったですか?」

藤原「はい」

北島「畏まりました。三十九万七千九百八十円、カード一括ですね。ポイントを七万九千五百九十六ポイントお付け致します」

藤原「ありがとうございます」

北島「こちらクレジットカードとポイントカードとレシートのお返しです。お届け先をこちらにお書き下さい」

藤原「あ、そのままで良いです」

北島「まさか……」

藤原「持ち帰りで(洗濯機を担ぐ)。じゃあ」

北島「待って下さい!?それも見本です!持って行かないで下さい!?」

藤原「あ、そうなんですか?」

北島「何でもかんでもすぐに現物を持って行こうとしないで下さい!?」

藤原「すんません」

北島「何でそうすぐに現物を持って行こうとするんですか!?」

藤原「現物なら少し安くなるかなって」

北島「なりませんよ!?見本なんですから!」

藤原「新たな知見を得ました」

北島「そこまで大それた事じゃないですけどね!?」

藤原「じゃあ用意してもらえますか?」

北島「あぁ、はい。ではこちらにご住所をお書き下さい」

藤原「あのー……」

北島「何でしょうか?」

藤原「さっきから言ってるように、持ち帰りで構わないんですよ」

北島「え?あぁ、そうなんですか?トラックか何かで?」

藤原「大きめの車で来てます」

北島「軽トラとかではなくて?」

藤原「はい。大きめの車です」

北島「そうなんですね。では少々お待ち下さい(舞台上手に一旦退場し、掃除機と冷蔵庫と洗濯機が入った段ボール箱を台車に乗せて持ってくる)お待たせしました。掃除機と冷蔵庫と洗濯機です」

藤原「ありがとうございます(段ボールを担ぐ)」

北島「あの、台車がありますが……」

藤原「持ち帰りで、と何度も言っているでしょう?ダイエットがてらこれくらいは持って駐車場まで行くんです」

北島「あ、そうなんですね。ではお気を付けて」

藤原「それではー(舞台下手に退場)」

北島「ありがとうございましたー。またのご来店をお待ちしておりま―す。ふぅ……疲れた」

藤原「(舞台下手から登場)あのー」

北島「うわ。また来た。いらっしゃいませ」

藤原「電池ってありますか?」

北島「電池ですか?それならレジに御座います」

藤原「あー、これこれ。嫁に頼まれてたやつ。これ下さい」

北島「九百八十円になります」

藤原「カードで」

北島「折角ですし、ポイントでお支払いになさっては如何ですか?」

藤原「あぁ、そういえば数万ポイント貯まってるんだったな。じゃあポイントで」

北島「畏まりました。ポイントカードお預かり致します。十四万九千三百四十六ポイントから九百九十ポイント引かせて頂きます。ではこちらお先に商品のお渡しと、ポイントカードとレシートのお返しです」

藤原「あのー……」

北島「あ、申し訳ありません。袋に入れた方が宜しかったですか?」

藤原「あ、そうではなくでですね。配送にして頂けないかなと……」

北島「は?大きめの車で来ていらっしゃるんでしょう?持ち帰れば良いじゃないですか」

藤原「実はあれらを載せたらもうパンク寸前でして……帰りにスーパーで買い物もしなくちゃいけなくて、下手に荷物を増やしたらタイヤが破裂しちゃうかもしれないんですよ」

北島「はぁ。それで掃除機と冷蔵庫と洗濯機を配送しようと?」

藤原「いえ、この電池を」

北島「は?」

藤原「この電池分だけならギリ車が耐えられるみたいなんで、これだけ送りたいんです!」

北島「大して変わらんだろ!持ち帰りの基準が分からん!」


















―――終わり

『一服』



・登場人物


 北島

 藤原



・舞台


 会社のオフィス






 明転。


 会社のオフィス。デスク二つに椅子二つ。デスクの上にはノートPC。

 北島、板付き。


藤原「(舞台下手からコーヒーを二つ持って登場)コーヒー買ってきたぞ」

北島「サンキュ。しかし、今日も今日とて残業か」

藤原「しかも課長の尻拭いだぜ」

北島「あの課長も残ってやるくらいだし相当ヤバいよな」

藤原「自分で何とかしろよって話だよな。部下に手伝わせんなよって思うわ」

北島「だな」

藤原「そっちはどう?」

北島「まだまだ掛かりそう。そっちは?」

藤原「終電コースだな」

北島「そうか。まぁ俺達なら日付変更でも何とかなるだろ。家近いし」

藤原「にしてもだよ。ふざけんなよあの課長」

北島「いつもロクな事しないもんな」

藤原「あー、終わらねぇ」

北島「口動かす前に手を動かそうぜ」

藤原「このままじゃアカンわ。ちょっと一服してくる(舞台下手に退場)」

北島「休憩は大事だもんな。行ってら~」

藤原「(舞台下手から登場)さーて、仕事、再開するかぁ」

北島「あれ?一服してきたんじゃないの?」

藤原「してきたよ?」

北島「まだ一分も経ってないじゃないか」

藤原「まぁすぐ済んだし」

北島「一吸いで終わらせてきたとか?」

藤原「まぁそんな感じ」

北島「ふーん?」

男A「(声のみ)うわー!?」

男B「(声のみ)課長ー!?」

北島「何だ何だ?」

藤原「あ、効き目が出て来たみたい」

北島「は?」

藤原「さーて、仕事、仕事」

北島「え、ちょっと待って?」

藤原「何?」

北島「盛った?」

藤原「何を?」

北島「毒」

藤原「そんな訳無いじゃ~ん」

北島「だよなぁ!ちょっと様子、見てくる(舞台下手に退場し、すぐに戻ってくる)おい!課長が倒れてるぞ!」

藤原「だろうねぇ」

北島「やっぱり盛っただろ!毒!」

藤原「そんな事してないよ。俺は、一服してくる、って言っただけだよ」

北島「一服盛っただろ!」

藤原「あー、そういう言い方もあるかもねぇ」

北島「何をした!?」

藤原「コーヒーにちょっとね……」

北島「毒を盛ったのか!?」

藤原「毒じゃないよ」

北島「じゃあ何を入れた!?」

藤原「睡眠薬」

北島「は!?何で!?」

藤原「疲れてるだろうと思って。その労い」

北島「だからってこのタイミングでやらなくても良いだろ!?このクソ忙しい時に!」

藤原「どうせ居たって仕事しないで俺達に罵声浴びせてくるだけなんだし、居ない方が仕事が捗るだろ?」

北島「それはそうだけども!でも眠らせる事無かったろ!」

藤原「過労で倒れたって事にすれば会社から治療費は降りるだろ?この会社の未来を考えたら今の体制を変えられる良い機会になると思うけどね」

北島「だったら労基なりなんなりに相談すれば良かったろ!?」

藤原「バレた時が怖い」

北島「それより怖い事してるだろ!」

藤原「まぁまぁ良いじゃん。早く仕事、片付けて帰ろうぜ」

北島「お前、警察に捕まるぞ!?」

藤原「何で?」

北島「俺が通報するから!」

藤原「ここだけの話にしておけば良いじゃん」

北島「出来るかぁ!」

藤原「出来なかったら痛い目に遭うぞ」

北島「は?どういう事?」

藤原「そろそろ効き目が出始める頃かな?」

北島「えっ……?うっ!?コーヒーを飲んだ筈なのに何か急に眠気が……!?」

藤原「そのまま永遠の眠りに着く事になるかもよ」

北島「嫌だー!死にたくなーい!」

藤原「じゃあこの事は黙っててくれる?」

北島「分かった!分かったから!」

藤原「じゃあこれを飲むと良いよ(錠剤を渡す)」

北島「(飲む)……あ、目が覚めてきた。何これ?もしかしてヤバい薬?」

藤原「単なるカフェイン錠。すぐ効果が出てきてるのは多分プラシーボ効果」

北島「そう、か……じゃ、じゃあこの事は無かった事にしよう……」

藤原「ありがとう。あ、そういえばここの社長、脱税の疑いがあって警察に追われて逃げたんだっけか」

北島「あぁ。らしいな」

藤原「金が無くなったって情報が入ったから、今晩中に隠し金庫から金取りに来るんじゃないかな」

北島「どこからの情報?」

藤原「まぁそれは置いといて……」

北島「怖いんですけど……」

藤原「一緒に雲隠れした愛人が俺の友人でな。金が無くなったからもう社長に要は無いって連絡が来たんだ」

北島「ほーん?」

藤原「警察に通報するか」

北島「また逃げられるんじゃない?警察に手が回ってるって噂もあるし」

藤原「眠ってる間なら逃げられないだろ」

北島「まさか……」

藤原「ちょっと一服してくるかぁ」

北島「……行ってらっしゃい!」

















―――終わり

『すみません』



・登場人物


 北島

 藤原



・舞台


 スーパー






 明転。


 スーパー。

 北島、カートを押して舞台上手から登場。藤原、カートを押して舞台下手から登場。舞台中央でぶつかりそうになる。


北島「あ、すみません」

藤原「あ、すみません」


 北島、藤原、同じ方向にズレる。


北島「あ、すみません」

藤原「あ、すみません」


 北島、藤原、今度は反対の方に行こうとする。


北島「あ、すみません」

藤原「あ、すみません」


 北島、藤原お互いに反対方向にズレて進もうとする。


北島「あ、すみません」

藤原「あ、すみません」


 これを繰り返し、やがて半円を描いて反対方向に行き、向かい合わせになる。


北島「あ、すみません」

藤原「あ、すみません」


 既に自分が行きたい方向に行っている事に気付く。


北島藤原「あ、終わりか」


 北島、藤原、方向転換し、それぞれ舞台上手と舞台下手に退場。














―――終わり


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