コント集19
コント集19
181・・・食事
182・・・家臣カフェ
183・・・〇番
184・・・落とし物
185・・・浪人生活
186・・・弱み
187・・・手術の為の勇気
188・・・スパイだらけの会社
189・・・道理で
190・・・道理で2
『食事』
・登場人物
北島
藤原
枝村
・舞台
居酒屋
定食屋
・衣装
藤原・・・定食屋みたいな恰好
明転。
居酒屋。テーブル一つに椅子が二つ。テーブルの上には空いた皿がいくつかある。
藤原、板付き。酒を飲んでいる。
北島「(舞台上手から登場)」
枝村「いらっしゃーせー!(舞台下手から登場)お一人様ですか?」
北島「あ、待ち合わせです」
藤原「あ、おーい、北島ー。ここ、ここー」
北島「あ、じゃああそこなんで」
枝村「畏まりましたー」
北島「とりあえずビールで」
枝村「畏まりましたー(舞台下手に退場)」
北島「久し振り」
藤原「久し振り」
北島「悪いな、遅れちゃって」
藤原「良いよ。電車の遅延だろ?」
北島「まぁ、そうなんだけど。ところで何だその恰好?」
藤原「あぁ、これ?仕事が終わって直で来たからそのままなんだよ」
北島「仕事?ふぅん?あ、もう始めちゃった感じ?」
藤原「いいや、まだ」
北島「え?でも、もう空いた皿がいくつかあるじゃん」
藤原「これは食前食だよ」
北島「食前食?」
枝村「(ビールを持って舞台下手から登場)お待たせましたー。ビールでーす」
北島「あ、どうもー」
枝村「ごゆっくりどうぞ―(舞台下手に退場)」
藤原「とりあえず、乾杯」
北島「乾杯」
藤原「すいませーん」
枝村「はーい(舞台下手から登場)。モツ煮と枝豆と湯豆腐とあん肝、お願いします」
枝村「モツ煮と枝豆と湯豆腐とあん肝ですねー。畏まりましたー」
北島「結構、喰うねぇ」
藤原「腹、減ってるからね」
北島「結構、喰った後のように思えるんだけど?」
藤原「朝飯前よ。こんなの」
北島「なぁ、食前食って何?」
藤原「薬で食前に飲むみたいなのあるじゃん?」
北島「ん?うん」
藤原「あれの食事バージョン」
北島「食事の前に食事をするって事?」
藤原「そう」
北島「何だそれ?あ、今朝、朝食、抜いて来たとか?」
藤原「食べたよ」
北島「食べたんだ。それで更に喰うの?」
藤原「おう。朝飯は喰わないとその日一日、力が出ないからな。どんな日でも毎朝、欠かさず食べるようにしてる」
北島「朝飯は絶対に喰うんだな」
藤原「当り前よ。朝飯、喰うなんて朝飯前だよ」
北島「朝飯、二回、喰っちゃったよ」
藤原「まぁ食前食だからそうなるわな」
北島「それもそうか」
枝村「(モツ煮と枝豆と湯豆腐とあん肝を持って舞台下手から登場)お待たせしましたー。モツ煮と枝豆と湯豆腐とあん肝でーす」
北島藤原「ありがとうございまーす」
枝村「ではごゆっくりー(舞台下手に退場)」
北島「でも大変じゃないか?食費とか」
藤原「まぁ仕事で喰ってるからな」
北島「仕事で儲かってるって事?」
藤原「それもあるけど、俺フードファイター始めた」
北島「へー。あ、だからその恰好なの?」
藤原「そう。俺の勝負服」
北島「あっそー。でもフードファイターか。食費も浮いて賞金も貰えて一石二鳥じゃん」
藤原「それがそうでもないんだよ」
北島「何で?」
藤原「大食いメニューが置いてある店は必ずしも全部、時間制限内に喰い切れる訳じゃないから金を払う事もあるし、毎回、その大食いメニューが置いてある店や食べ放題の店に行ったら出禁になるし」
北島「へー。でも大会とかテレビ番組とかは?」
藤原「現地に行くのは基本、自腹だし、出演料払うし、優勝しなかったら腹は膨れても賞金は手に入らないし、その後お呼ばれもしない」
北島「ほーん?結構、厳しい世界なんだな」
藤原「そうなんだよ」
北島「あ、じゃあユーチューバーは?」
藤原「さっきも言ったように、基本的に外食がメインになる。同じ店には殆ど行けないし、チャレンジ失敗したら金を払う。日本全国回るにしても金が掛かる」
北島「自炊とか」
藤原「外食よりは安くは済むが、それでも、ね?」
北島「安く済ませたいなら別にインスタントラーメンとかで良くないか?」
藤原「駄目。栄養が偏る」
北島「フードファイターが気にする事か?あんなバカスカ喰っといて」
藤原「体が資本だからな。仕事が終わった次の飯は栄養バランスを考えた食事を摂る事にしている」
北島「はぁ~……大変なんだな」
藤原「そうなんだよ」
北島「料理はする方なの?」
藤原「割と。この仕事するようになってから始めた。料理教室にも通ってて、そこの先生曰く、プロ顔負けで、もう店を開いても良いレベルらしい」
北島「あ、そうなんだ。凄いね。先生のお墨付きとは」
藤原「それ程でも」
北島「それにしても、正直、舐めてたわ。フードファイターの事。ただ喰ってるだけだと思ってたよ」
藤原「結構、頭、使うんだぜ?」
北島「みたいだな。見方、変わったよ」
藤原「あ~、喰った喰った!」
北島「もう会計するか?」
藤原「いや?」
枝村「(舞台下手から登場)ラストオーダーのお時間でーす」
藤原「はーい。じゃあ醤油ラーメン一つ。お前は?」
北島「俺はいいや」
藤原「あ、そう。じゃあ醬油ラーメン一つで」
枝村「醬油ラーメンですねー。畏まりましたー(舞台上手から登場)」
北島「まだ喰うのか」
藤原「食後食を食べる」
北島「食後食?食事の後の食事って事?」
藤原「そう」
北島「よく入るな」
藤原「まぁ〆のラーメンみたいなものだな」
北島「じゃあそう言えよ」
枝村「(醤油ラーメンを持って舞台下手から登場)お待たせしましたー。醬油ラーメンでーす」
藤原「ありがとうございまーす」
枝村「では伝票、置かせて頂きまーす。それではー(舞台下手に退場)」
藤原「じゃあ頂きまーす」
北島「流石にまだ話し足りないし、二件目、行くか?」
藤原「そうだな」
北島「割り勘で良いか?」
藤原「えっ?悪いよ。俺が一番、喰ってんのに」
北島「遅れた詫びだよ。えーっと何々……?えっ!?五万!?」
藤原「まぁそんなもんか」
北島「流石にこれは……次行くとなれば手持ちが足りないかもしれない……」
藤原「だから良いよ。俺が喰った分は俺が払うから」
北島「悪いな……じゃあ俺は、三千円位か?」
藤原「オッケー。二件目どうする?」
北島「近くに知り合いの居酒屋があるんだ。そこに行こう」
藤原「分かった。腹ごなしにそこに行こう」
北島「腹ごなし?って事はまさか、腹ごしらえに飯、喰って来た?」
藤原「うん」
北島「よく喰えるな。まさかデザートも考えてる?」
藤原「勿論。食後の運動に食事もする予定だ」
北島「そんだけ四六時中、喰ってるみたいに見えるけど、逆にいつ喰わないの?」
藤原「寝てる時とトイレと風呂の時くらい?」
北島「よく健康診断で引っ掛からないな。流石フードファイター」
藤原「いや、最近は胃腸炎で胃と腸が荒れて、胃酸過多になってて寝てる間にいつ死んでもおかしくないと言われている」
北島「もうフードファイター辞めたら?」
藤原「それだと俺の収入減が無くなる」
北島「店、開けば良いじゃん。料理スキル、プロレベルなんだろ?」
藤原「どういう系統でやれば良いかな?」
北島「あー、そうだなぁ……元フードファイターが作る、ガチの大盛メニューのみの定食屋とか、居酒屋とか?」
藤原「良いな、それ。金が貯まったらやろうかな」
北島「頑張れよ。応援してるから」
藤原「店、開いたら一番最初の客になってくれよ」
北島「え?嫌だ」
藤原「何で?」
北島「だって俺、大喰いじゃないし。そんなボリュームのある飯を出されても喰い切れないよ」
藤原「そこはサービスして少な目に作るからさ」
北島「サービスなのに量を減らすって聞いた事無いよ」
藤原「まぁ当面は資金集めに専念するかぁ」
北島「そういえば一回の食事でどれくらい喰うの?」
藤原「普通の外食だと大体三万くらい。今回は高めの居酒屋だから五万くらいだけど。自炊だと一万円くらいかな」
北島「結構、掛かんなぁ。月どれくらい喰ってんの?」
藤原「大体三十万くらいかな」
北島「凄ぇな。それで家賃、水道光熱費、スマホ代、撮影機器類、移動費払ってんだろ?月どれくらい稼いでんの?」
藤原「大体、四十~五十万くらい?でも手元に残るのは数万円かな」
北島「稼いでいても殆どが食費で消えるのか。難儀だなぁ」
藤原「もう胃を切除しようかとも考えててさ」
北島「でも食欲は脳からの信号だろ?お腹いっぱいなのに空腹感が出て意味無いんじゃないか?というか精神的に悪化しちゃうんじゃないか?」
藤原「あ、そうか。その考えには至らなかったな」
北島「もう店開け」
藤原「ウケるかなぁ」
北島「自分を信じろ」
暗転。
明転。
定食屋。テーブル一つに椅子が二つ。
藤原、鉢巻を着けて板付き。伸びをしている。
北島「(舞台上手から登場)来たよー」
藤原「あ、いらっしゃい」
北島「今日からだよな?」
藤原「そう。今日から。ようこそ、藤原定食へ。お客さん第一号だよ」
北島「おう。ここで良いか?」
藤原「あいよ」
北島「フードファイターはもう辞めたのか?」
藤原「うん。今は定食屋としてやってくつもり」
北島「そうか。テレビで観るお前、楽しみだったんだけどな」
藤原「あら、それは悪かったな」
北島「もう未練は無いの?」
藤原「無いね」
北島「あっそー。残念」
藤原「さ、折角、来たんだから何か注文してくれ」
北島「何があんの?」
藤原「色々あるけどオススメは豚カツ定食かな」
北島「じゃあそれで」
藤原「あいよ。ちょっと待っててくれ‘舞台下手に退場し、暫くして山盛りの米を注いだ茶碗を含む豚カツ定食を持ってやってくる」おまたせ。サービスで量を少なめにしといたよ」
北島「カツは良いにしても米がまだ多いよ。減らしてくれ」
藤原「えー?若いんだからこれくらい喰えよ」
北島「若いったってもう三十代だぞ。流石に昔みたいに喰えんわ。減らしてくれ」
藤原「仕方ないなぁ……(茶碗を持って一旦、舞台下手に退場し、米を減らした茶碗を持って登場)はい」
北島「何これ?重さ変わらないんだけど」
藤原「気のせいだよ」
北島「……何これカッタ!?ギッチギチじゃん!」
藤原「何でだろうねー」
北島「お前、これしゃもじでギュって潰して見た目を減らしたようにしただろ」
藤原「バレたか」
北島「こんなん喰えんよ。注ぎ直してきて」
藤原「分かったよ(茶碗を持って一旦、舞台下手に退場し、普通サイズの米を注いだ茶碗を持って登場)。はいよ」
北島「こんな調子で量、減らしてくれって客を捌いてくの?」
藤原「うん」
北島「止めた方が良いよ。普通のサイズで売ってやれよ」
藤原「お前が言ったんじゃん。ガチの大盛メニューのみの定食屋って」
北島「言ったけど例えだよ。デブとかフードファイターしか来れない店はやっていけないと思うぞ?」
藤原「メニューの試作の段階で俺が喰うんだから自然と量がこれになるのは当然の事だろ」
北島「やっぱりお前、フードファイターに未練があるんじゃねぇか」
―――終わり
『家臣カフェ』
・登場人物
北島
藤原
家臣
・舞台
家臣カフェ
・衣装
北島、藤原、家臣・・・袴姿
明転。
家臣カフェ。座敷がある。座敷には机一つに座布団二つ。
家臣、板付き。
藤原「(北島と共に舞台下手から登場)ここ、ここ。俺の最近、見付けたコンセプトカフェ」
北島「ふぅん?和風な外観だな。あ、それでこの着物姿なん?」
藤原「世界観に入り込んだ方が楽しめると思ってな」
北島「まぁ良いけど。どんなカフェ?」
藤原「まぁ入ってみれば分かるよ(北島と共にカフェの中に入る)」
家臣「殿!よくぞ御無事で!」
藤原「今回は厳しい戦だった」
家臣「拙者は心配しておりましたぞ!ささ、どうぞ中でお休みになって下され!」
藤原「うむ」
家臣「そのお連れの方は?」
藤原「あぁ、土佐の方からの友人でな。もてなしてくれ」
家臣「畏まった!ささ、どうぞこちらへ!(北島、藤原と共に崎氏の方へ行く)」
藤原「(北島と共に下駄を脱いで座敷に上がり、座布団の上に座る)お茶を頼む」
家臣「畏まった!今、一覧表をお持ちするのでしばしお待ちを!(舞台上手に退場)」
北島「何か凄いな」
藤原「だろ?」
北島「しっかり世界観が作られているというか、店の雰囲気も良いし、結構、面白いな」
藤原「最初はノリに着いて行けずに恥ずかしかったんだけど、慣れたら楽しいんだよ」
北島「みたいだな」
家臣「(お茶とメニュー表を持って舞台上手から登場)お待たせ致した。お茶で御座いまする」
藤原「ありがとう」
家臣「勿体無きお言葉……こちら、一覧表になりまする」
藤原「どれにする?」
北島「うーん……あ、このざる蕎麦とか無難で良さそう」
藤原「そうだな。じゃあざる蕎麦二つ」
家臣「申し訳ありませぬ。今、蕎麦は兵糧攻めに遭っていて不足しておりまする」
北島「えっ」
藤原「そうか……じゃあ、塩結びと味噌汁なんかどうだ?」
北島「あ?あぁ、うん」
藤原「じゃあ、塩結びと味噌汁で」
家臣「畏まった。しばしお待ちを(舞台下手に退場)」
北島「兵糧攻めって何?」
藤原「敵の食糧補給路を断ち、兵糧を欠乏させることによって打ち負かす攻め方の事だよ」
北島「兵糧攻めが何かは分かってるよ。何?在庫が無いって事?」
藤原「多分もう売り切れなんだろうな」
北島「じゃあそう言えば良いのに……」
藤原「これがここのコンセプトだから」
北島「あっそう」
家臣「(一合分の塩結びと味噌汁を持って舞台上手から登場)お待たせ致した。塩結びで御座る」
北島「デカっ!?」
藤原「ありがとう」
家臣「勿体無きお言葉……」
北島「い、頂きます……」
家臣「お待ち下され!」
北島「えっ、何?」
家臣「毒が入ってるかもしれませぬ!拙者が毒見を!」
北島「自分達で用意したんですよね……?」
家臣「拙者が作った訳では御座いませぬ。念の為で御座る」
北島「えぇ……?」
藤原「頼む」
家臣「失礼仕る……(喜多嶋と藤原の塩結びを人齧りし、味噌汁を啜る)うむ、問題無いようですな。どうぞ、お召し上がり下され」
藤原「ありがとう」
家臣「勿体無きお言葉……では拙者は裏に回って敵の見張りを致しまする。何か御座ったら構わずお呼び下され」
藤原「分かった。見張り、宜しく頼む」
家臣「は。それでは……(舞台上手に退場)」
北島「見張りって?」
藤原「次のお客さんが来るのを待ってるって事だよ」
北島「そう言えば良いのに……」
藤原「まぁまぁ。とりあえず喰おうぜ」
北島「オッサンが口に付けた物を喰いたくないんだけど」
藤原「それがここのコンセプトだから」
北島「えぇ……?まぁ勿体無いし喰うけどさ……それにしてもデカいな、これ……」
藤原「こんなもんだよ。ここの塩結びは」
北島「あっそう……何これ!?しょっぱ!?」
藤原「ここの味だよ」
北島「味噌汁もしょっぱ!?」
藤原「こんなもんだよ。ここの味は」
北島「こんなの食べたら高血圧で死んじゃうよ!」
藤原「俺は慣れたけどな」
北島「流石にクレーム入れなきゃ。すみませーん!」
家臣「(舞台上手から登場)如何なすった?」
北島「この塩結びと味噌汁、しょっぱ過ぎるんですけど」
家臣「左様で御座ったか。作り直させますのでしばしお待ちを(北島の塩結びと味噌汁を持って舞台上手に退場)」
北島「何でここの塩結び、あんなにデッカくてしょっぱいの?」
藤原「戦国時代の塩結びってこんな感じだったらしいよ」
北島「味噌汁のあのしょっぱさも?」
藤原「うん」
北島「それは運動量とか当時は凄かったからだろ?現代でこれはマズいよ。二重の意味で」
藤原「当時の味を知れるって事で有名なんだけどな」
北島「藤原ってどれくらいの頻度でここに通ってるの?」
藤原「週三くらいかな。いつも塩結びと味噌汁を食べてる」
北島「絶対、健康診断で引っ掛かるよ!?早死にするよ!?」
藤原「だから毎日10kmジョギングしてる」
北島「健康的なんだか不健康なんだか分からん!でもこれだけの量の塩結びと味噌汁飲んでたら運動量、足りないんじゃないか!?」
藤原「今のところ、体調は何の問題も無い」
北島「今後、絶対、出てくるって!もうここに通うの止めよう!?」
藤原「大袈裟だなぁ。大丈夫だって」
北島「そう、か……ま、まぁ程々にな?」
藤原「うん」
北島「とりあえずこれ、喰い切れないから持って帰るわ。テイクアウト出来る?」
藤原「出来るよ」
北島「そうか。すいませーん」
家臣「(舞台上手から登場)お呼びでしょうか?」
北島「これ、テイクアウトで」
家臣「戦場にお持ちになるのですね?畏まった。少々お待ち下され(北島と藤原の塩結びを持って舞台上手に退場)」
北島「戦場……?」
藤原「まぁ、仕事に持って行くって事を考えると戦場に向かうのも案外、間違いじゃないんじゃないか?」
北島「仕事って、今日オフの日なんだけど?」
家臣「お待たせ致した。こちら、陣中食で御座る」
北島「陣中食……?」
藤原「まぁお弁当みたいな物だよ。携行食だな」
北島「だからそう言えば良いのに……」
家臣「もう出陣なさるか?」
藤原「あぁ。もう行くよ」
家臣「畏まった。では扶持の方を頂戴頂けると助かりまする」
藤原「いくらだ?」
家臣「現在の貨幣で二千円になりまする」
藤原「はい(財布から千円札を取り出し、家臣に渡す)」
北島「はい(財布から千円札を取り出し、家臣に渡す)」
家臣「有難き幸せ……」
藤原「じゃあ行ってくるよ」
家臣「ご武運を(火打石を鳴らす)」
北島、藤原、カフェを出る。家臣、舞台上手に退場。
藤原「どうだった?家臣カフェ」
北島「恥ずかしい思いをしただけだった」
―――終わり
『〇番』
・登場人物
北島
藤原
・舞台
ファミレスの休憩室
明転。
ファミレスの休憩室。テーブル一つに椅子が四つ。
藤原「(北島と共に舞台上手から登場)以上が店内の説明になります。北島さんはファミレスでのバイト経験は?」
北島「ファミレスでのバイト初めてです」
藤原「何でここで働こうと思ったんですか?」
北島「求人募集を見た時に、昼でも時給二千五百円で高めだったんで夜の時給三千円に目を付けて入ろうと思いました」
藤原「そうですか。最近なんですよね。時給が上がったの」
北島「そうなんですか」
藤原「何か質問はありますか?」
北島「ファミレスと言えば何か暗号みたいなのありますよね?」
藤原「暗号?」
北島「あの『一番入りまーす』みたいな」
藤原「あぁ、あるね。まぁいきなりは覚えられないだろうからとりあえず休憩の一番とトイレの百二十一番だけ覚えてくれれば良いよ」
北島「百二十一番!?そんなにあるんですか!?」
藤原「あるよ」
北島「どんな内容か聞いても良いですか?」
藤原「一番は純粋に休憩。二番は食事休憩一番、三番は食事休憩二番、四番は……」
北島「食事休憩一番って何ですか?」
藤原「まかないだね。ウチのメニューの一番最初の番号がそれ。三番は二番目のメニュー、四番は三番目のメニューって感じで続いていくよ」
北島「このファミレスのメニューって何品でしたっけ?」
藤原「七十九品だね」
北島「後の四十一個は何ですか?」
藤原「自前のお弁当休憩、スマホ休憩、メール休憩、電話休憩、ライン休憩、ネットサーフィン休憩、エックス休憩、インスタグラム休憩、ティックトック休憩、フェイスブック休憩、ユーチューブ休憩、ニコニコ動画休憩、後ー……」
北島「終わりませんよ?この話。SNS休憩は何個あるんですか?」
藤原「四十個だね」
北島「世界各国ですね」
藤原「うん」
北島「後の一個がトイレですか?」
藤原「うん」
北島「トイレも種類があるんですか?」
藤原「単純にトイレに行くのが百二十番。大中小がそれぞれ百二十一、百二十二、百二十三番。吐くのが百二十四番。トイレ掃除が百二十五番だよ」
北島「大、小は分かるとして中って何ですか?」
藤原「腹が下ってる時とか?」
北島「店長が分かってないでどうするんですか」
藤原「あ、自分バイトです」
北島「あ、そうすか……ってか吐きそうな時にいちいち報告出来ますかね?」
藤原「大抵は無理だね」
北島「じゃあ意味無いじゃないですか。ってか帰らせましょうよ」
藤原「そうしてるよ」
北島「良かった。そうじゃなからどうしようかと思いましたよ。単純にトイレに行くって何ですか?」
藤原「特に用は無いけど行く事だね」
北島「何の為に?」
藤原「さぁ?まぁ全部、覚えるまでこれだけ覚えていてくれれば良いから」
北島「はぁ。そうですか。これで全部ですか?」
藤原「後、八個ある」
北島「まだあるんですか……」
藤原「裏で在庫チェックするのが百二十六番。裏で調理の補佐するのが百二十七番。裏で食器を洗うのが百に十八番。裏で事務作業するのが百二十九番。注文を聞きに行くのが百三十番。食器を下げるのが百三十一番。呼び出しを聞いてお客様の所に伺うのが百三十二番。帰るのが百三十三番、かな」
北島「成程。ちなみにふと思ったんですけど、まかないで複数個、頼む場合ってどうするんですか?」
藤原「組み合わせだね。『三番と五番入りまーす』みたいな」
北島「ここのメニュー全部、覚えないといけないんですね」
藤原「まぁ最終的にはそうなるね」
北島「番号も全部、覚えないといけないんですね」
藤原「まぁその方が何がトラブルがあった時に対処出来るし」
北島「それもそうか……分かりました」
藤原「他に何か質問は?」
北島「藤原先輩はいつもこの時間帯に入ってるんですか?」
藤原「まぁ今日まではそうだね」
北島「今日までとは?」
藤原「俺はもう今日限りで辞めるし」
北島「何故?」
藤原「番号覚えきれないから」
北島「あれ?さっきスラスラと言ってませんでした?」
藤原「今度メニューと休憩とトイレの順番が総入れ替えされるんだよ」
北島「えぇ?じゃあ今、教えてくれたのって意味無くなるんですか?」
藤原「そうだね」
北島「ここの時給が高くなった理由ってもしかして……」
藤原「一から全部、覚え直しになるから一時的に高くなったんだよ」
北島「それで古参が辞めていって募集が掛かったんですね?」
藤原「そうだね」
北島「もう辞めようかな……始めても無いですけど……」
藤原「あ、じゃあ一緒に辞める?」
北島「辞めます。地獄を見る事になりそうですし」
藤原「じゃあ休憩に入って辞表を書こう。すみませーん!0番入りまーす!」
北島「これにも番号が振ってあるのか……」
―――終わり
『落とし物』
・登場人物
北島
藤原
・舞台
道端
・衣装
藤原、北島、地味な柄のリュックサックを背負っている。
明転。
道端。自動販売機一つにゴミ箱一つ。
藤原「(北島と共に舞台上手から登場)おっ、自販機あるじゃん。喉、乾いたし何か買おうかな(ポケットをまさぐる)あれ?あれ!?」
北島「どうした?」
藤原「財布が無い!」
北島「マジか。どっかで落とした?」
藤原「多分な!どうしよう!?」
北島「まぁ落ち着けって。全部のポケット探してみろよ」
藤原「うん!……無い!」
北島「リュックの中は?」
藤原「……無い!」
北島「よく探してみろよ」
藤原「(リュックサックをひっくり返して中身を全て出す)無い!無い!」
北島「おい、ここ道端だぞ」
藤原「お前のリュックの中も見せてくれ!」
北島「おいおい、友達を疑うのか?」
藤原「俺が間違えてお前のリュックに入れちゃったかもしれないだろ!?」
北島「分かったよ。ほれ」
藤原「(北島のリュックサックをひっくり返して中身を全て出す)無い!」
北島「そらそうだろ」
藤原「どうしよう!?どうしよう!?」
北島「落ち着けって。中身、何が入ってたんだ?」
藤原「現金!」
北島「いくら?」
藤原「三千円!」
北島「大した額じゃないな」
藤原「俺にとっては大金なの!」
北島「後は何が入ってたんだ?」
藤原「ヨドバシとヤマダとケーズとジョーシンとディオンとビックカメラとコジマとノジマのポイントカード!」
北島「大したもんじゃないだろ」
藤原「それぞれ一万円分くらいポイントが貯まってたんだよ!」
北島「あぁ、それは一大事だな。でも全部アプリにしてなかった?」
藤原「でも入れてたんだよ!使われたら困る!」
北島「他は?」
藤原「クレジットカード!」
北島「それは大変だな。すぐに止めてもらえ」
藤原「帰ったらそうする!」
北島「他は?」
藤原「色んな銀行の通帳とカードと印鑑!」
北島「何でそれ持ち歩いてんの……?カードは分かるとして通帳と印鑑は何だよ?」
藤原「いつどんな契約を結ぶか分からんから印鑑は常に持ち歩いてる!」
北島「あぁ、お前、医者だし、いつ契約が変わるか分からんしな。通帳は?」
藤原「自分の預金を見て楽しむ為!」
北島「嫌な奴っ。他は?」
藤原「キタカとスイカとトイカとマナカとイコカとニモカとピタパとスゴカとはやかけんとパスモ!」
北島「何でそんなに交通系ICカード持ってんの?」
藤原「地域によって使えるのが違うと思って作っちゃった!」
北島「あっそう。他は?」
藤原「保険証とマイナンバーカードと運転免許証!」
北島「保険証はもうほぼ意味無いけど、マイナンバーカードと運転免許証は辛いな。他は?」
藤原「職員証!」
北島「あぁ、それは厄介だな。お前、医者だし。他は?」
藤原「医師免許証と獣医師免許証とマタギの免許証!」
北島「何でそんなの持ち歩いてんの!?あれって賞状だろ!?」
藤原「過去の栄光だから!」
北島「分厚くてしょうがないだろ!?他は!?」
藤原「過去一年間の給与明細!」
北島「何で持ち歩いてんの!?何に使うの!?」
藤原「確定申告の為!」
北島「家でやれ!他は!?」
藤原「十社近いそれぞれ百万円分の株券!」
北島「だから何で持ち歩いてんのそれ!?」
藤原「株主優待を受けたくて!」
北島「株主優待券を使わないと意味無いだろ!」
藤原「だから株主優待券も全部、入れてた!」
北島「どれくらい入れてんだよ!?他には!?」
藤原「住民票と戸籍標本!」
北島「何で持ち歩いてんだよ!?どこで使うの!?」
藤原「職務質問された時とか!」
北島「マイナンバーカードと運転免許証で十分だろ!」
藤原「それもそうか!」
北島「馬鹿かな!?他は!?」
藤原「離婚届と婚姻届け!」
北島「情報量が多い!何!?離婚すんの!?」
藤原「不倫されて!」
北島「情報量がもう!で!?何!?結婚すんの!?」
藤原「離婚調停の時にお世話になった弁護士さんとね!」
北島「だから情報量が!他は!?」
藤原「スマホ!」
北島「何でポケットじゃなくて財布に入れてんだよ!?」
藤原「スマホ決済するから金の扱いになるかなと思って!」
北島「あっそ!他は!?」
藤原「もう無い!」
北島「あっそ!とりあえず飲み物、奢ってやるから一旦落ち着けよ」
藤原「分かった!」
北島「何が良い?」
藤原「コーヒー!」
北島「(自動販売機でコーヒーを買う)はいよ」
藤原「ありがとう!……ふぅ……」
北島「落ち着いた?」
藤原「うん!」
北島「まだ興奮してるじゃないか」
藤原「さっきよりは落ち着いた!」
北島「そうか。ってかそれさぁ、全部、財布に収まるの?」
藤原「財布って言うかリュックサックに入ってる!」
北島「だろうな。じゃあ今日、持って来てるリュックサックが違うんじゃね?」
藤原「えっ?あ、本当だ!」
北島「気付くの遅っ!」
藤原「今の嫁に聞いてみる!(スマートフォンで電話を掛ける)もしもし?俺だけど、そっちにレインボー柄のリュックサックある?」
北島「ダサっ」
藤原「うん、うん。あ、ある?中身は?うん、うん……あ、そう。分かった(電話を切る)」
北島「あった?」
藤原「リュックはあった」
北島「リュック『は』?」
藤原「中身が無い」
北島「えっ。じゃあ泥棒に入られた?」
藤原「前の嫁が取りに来たらしい」
北島「盗まれたの?」
藤原「うん」
北島「警察案件じゃん」
藤原「そこは今の嫁に任せる」
北島「あっそう。この後の飲みは?」
藤原「金、無いし帰るわ」
北島「あっそう。お大事に」
藤原「医者がそれを言わるとはな」
―――終わり
『浪人生活』
・登場人物
北島
藤原
・舞台
藤原宅
明転。
藤原宅。卓袱台一つに座布団二つ。
藤原、板付き。
SE、チャイムの音。
藤原「開いてるよー」
北島「(乾麺の蕎麦を入れた紙袋を持って部隊上手から登場)お邪魔します」
藤原「いらっしゃい」
北島「これ、引っ越し祝い(袋を渡す)」
藤原「ありがとう。お、蕎麦かぁ」
北島「引っ越し蕎麦かなと思って」
藤原「まだ食べてなかったから後で作るよ。お前も喰う?」
北島「ありがとう。じゃあ折角だから。それにしても、ようやく浪人生活が終わったのか」
藤原「あぁ、長かった……」
北島「四年だっけ?」
藤原「そう。お前が大学を卒業するのと入れ替わりだな」
北島「そうか。どこの大学、行くんだ?」
藤原「行かないよ?」
北島「え?じゃあ就職か?」
藤原「いいや?」
北島「じゃあフリーター?」
藤原「いいや?」
北島「じゃあ何?」
藤原「ニート」
北島「えっ?」
藤原「さて、蕎麦を茹でるかぁ」
北島「待て、待て。え?何?お前、ニートになるの?」
藤原「そうだよ?」
北島「浪人生活終わったんじゃないの?」
藤原「終わったよ?だからニートになるんじゃん」
北島「『なるんじゃん』じゃないよ。何の為の四年間だったんだよ?」
藤原「大学進学に決まってるじゃん。何言ってんの?」
北島「『何言ってんの?』じゃないよ。出来なかったんだろ?」
藤原「うん」
北島「じゃあ就活しろよ。せめてバイトとか」
藤原「やる気が起きなかった」
北島「えぇ……?ご両親は何て言ってんの?」
藤原「大学か専門学校に行くか、仕事を見付けるまでは家賃と光熱費と食費は払ってやるからどうにかしろと言われた」
北島「普通は放り出すけどね」
藤原「俺ん家、親と兄貴がかなり稼いでるから一生分くらいは面倒、見てくれるらしいんだ」
北島「じゃあもう働かなくて良いじゃん」
藤原「だからニートになるんだよ」
北島「えぇ……?家賃と光熱費が掛かるなら実家に置いておいた方が金掛からないんじゃないか?」
藤原「いつまでもニートの息子がいる家だと体裁が悪いから追い出された」
北島「じゃあ勉強する気も働く気も無いって事?」
藤原「うん」
北島「その謎の潔さは何なの?親が死んだらどうするつもりなの?」
藤原「遺産で喰ってく」
北島「そんなに遺産があるの?」
藤原「一生、遊んで暮らせるくらいには」
北島「増々、何故、進学と就職をしていたのか分からなくなってきたな……」
藤原「相続はちゃんと俺にもするって言ってくれてるから本当に働く意味が分からなくなってきてな。馬鹿馬鹿しいからニートになった」
北島「稀有なニートだな。普通ニートって実家住みになるのに」
藤原「まぁいずれ専門学校に通って資格を取ったら親父の会社で副社長をするつもりだ」
北島「学ぼうとする辺りニートでは無いな」
藤原「偉いだろ?」
北島「偉くは無い」
藤原「とりあえず今は休養期間って事で許してもらってる」
北島「浪人生活で疲れてるのは確かだろうから、まぁ意味はある、のかな……?」
藤原「このままじゃノイローゼになっちゃうからな。暫く自由にさせてもらう事にした」
北島「どれくらい休むつもりなんだ?」
藤原「十年くらい?」
北島「何で疑問形なんだ?」
藤原「特に決めてないから」
北島「あっそう。で?どこの専門学校に行くとか決めてんの?」
藤原「エンジニア系の学校ってくらいで特に目星は付けてない」
北島「何で十年くらいなんだ?」
藤原「十年後三十三歳だから、専門学校で二年過ごしたら三十四歳になるだろ?」
北島「うん」
藤原「三十五歳を過ぎたら就職が上手くいかなくなるって聞いてるからそれまでに資格をいっぱい取っておこうと思って」
北島「考えてるんだか考えてないんだかよく分からん……」
藤原「まぁ俺の人生だ。口出しするな」
北島「してはない。ってか親父さんの会社に行くなら就活しなくて良くない?」
藤原「下積みしてから親父の会社に来るようにって言われてるから」
北島「親父さん、何がしたいの?」
藤原「俺に言われても……」
北島「じゃあとりあえず勉強はしろよ。まずそこからだろ?」
藤原「その内ね」
北島「おいおい。ご両親とお兄さんに申し訳ないとか思わないのかよ?」
藤原「好きでこうなったわけじゃないし」
北島「ニートは誰しもそう言うんだよ」
藤原「だからニートだよ」
北島「そうか。そうだった。じゃあせめて運動はしろよ?」
藤原「うん。そのつもり」
北島「お、そこは自立してんだな」
藤原「ニートは体が資本だからな」
北島「お前もう性根から立派なニートだよ」
———終わり
『弱み』
・登場人物
北島
藤原
枝村
・舞台
北島宅
明転。
北島宅。卓袱台一つに座布団三つ。
北島、板付き。
SE、チャイムの音。
北島「開いてるよー」
藤原「(枝村と共に舞台上手から登場。両手には荷物を持っている)来たよー」
枝村「(『弱み』と書かれた小さいクッションを持っている)お邪魔しまーす」
藤原「土鍋とコンロと具材買ってきたよー」
北島「何?藤原が一人で荷物持ってきたの?」
藤原「うん」
北島「枝村にも半分、持たせてやれば良かったのに」
枝村「藤原は俺に負担を掛けられないんだよなー?」
藤原「本当は嫌なんだけど……」
枝村「(クッションを握る。プヒッという音)」
藤原「うっ……!はい……負担を掛けられません……」
北島「何で?その持ってるクッションに何か理由があるのか?」
藤原「うん。弱みを握られている」
北島「えっ」
枝村「じゃあ準備してくれよ」
藤原「えっ、コンロもガスも土鍋も具材も俺が金を出したんだけど……」
枝村「(クッションを握る。プヒッという音)」
藤原「うっ……!でも、流石に嫌なんだけど……」
枝村「(クッションを握る。プヒッという音)」
藤原「うっ……!分かったよ……北島、台所、借りるぞ」
北島「手伝うよ」
枝村「いいよ。藤原一人で。なぁ?」
藤原「手伝ってくれると助かる」
枝村「(クッションを握る。プヒッという音)」
藤原「うっ……!」
北島「一人で全部やらせるのは悪いよ」
枝村「悪くないよなぁ?なぁ?藤原?」
藤原「正直、嫌です……」
枝村「(クッションを握る。プヒッという音)」
藤原「うっ……!分かったよ……じゃあ台所、借りるな(コンロをセットして舞台上手に退場)」
北島「なぁ、何でアイツ、お前の言い成りなんだ?」
枝村「まぁ俺がアイツの弱みを握ってるからな」
北島「その『弱み』って書かれたクッションが何か関係あんの?」
枝村「概念の具現化だな」
北島「えぇ……?具体的に何を握ってるの?」
枝村「それはな……」
藤原「(土鍋を持って部隊上手から登場)お待たせー。後は煮込むだけだよー」
枝村「おう」
北島「悪いな」
枝村「良いんだよ。なぁ?藤原?」
藤原「うん。(さり気無くクッションを奪おうとする)」
枝村「(躱す)」
藤原「クソッ……」
枝村「そうそう渡すかよ」
藤原「分かったよ……」
北島「なぁ。何の弱みを握られてるんだ?」
藤原「嫁が……」
北島「えっ!?人質に取られたとか!?」
藤原「いや……」
北島「じゃあ浮気現場とかの写真とか?」
藤原「いや……」
北島「じゃあ何だよ?」
藤原「嫁が取られた……」
北島「寝取られたって事!?」
藤原「いや、嫁のグッズを全部、取られた……」
北島「グッズ……?ってかそもそも藤原って結婚してたっけ?」
藤原「してないです……」
北島「……ちょっと理解が追い付かない。どういう事?」
枝村「あるVチューバ―のグッズを俺が差し押さえた」
北島「Ⅴチューバ―?」
枝村「ユーチューバーは知ってるよな?」
北島「うん」
枝村「あれのバーチャル版。実在の人を3DCGでモデリングして絵を張り付けた感じのユーチューバーの事」
北島「あ、嫁ってそういう……何で差し押さえたの?」
枝村「コイツが俺に借金していつまでも返してこないから」
北島「くっだらねぇ理由」
藤原「何がくだらなねぇんだ!?俺にとっては一大事だぞ!?」
北島「だってくだらねぇだろ。大体、何に金、使ったんだよ?」
藤原「推し活……」
北島「いくら借りたんだよ?」
藤原「二百万程……」
北島「どれくらいの期間で?」
藤原「一年です……」
北島「何をどう使ったら二百万が一年で消えるんだよ?」
藤原「スパチャで……」
北島「スパチャ?」
枝村「スーパーチャットの事だよ。ユーチューブの生配信で、お金を投げられるチャットを送れるんだ」
北島「ほーん?一回でどれくらい投げてたんだよ?」
藤原「四、五万円程……」
北島「それって一年でどれくらい配信があんの?」
藤原「その子は週一のペースです……」
北島「何かVチューバ―の事はよく分からんけど、要するに二次元に現を抜かしてたから借金してたって認識で良い?」
藤原「二次元じゃない!彼女達は実在するんだ!」
北島「あ、そう。でも要はアイドルみたいなのにガチ恋して借金に追われてるんだろ?もう止めたら?」
藤原「もう俺の名前を憶えてくれたんだ!今ここで止めたら今までの苦労が水の泡になる!」
北島「金が水の泡になってるけどな」
藤原「五月蝿ぇ!」
北島「ってか、それ何の弱みになってるの?」
枝村「こんな事での借金がばれたら親から勘当される上に、今の婚約者から愛想尽かされて破談になるかもしれないから」
北島「あっそー……大変だな、お前」
藤原「同情するなら金をくれ……」
北島「嫌だよ」
藤原「薄情者……あ、具材、一つ忘れてた。ちょっと取ってくる」
北島「おう」
藤原「おらぁ!(枝村からクッションを奪う)」
枝村「あ」
藤原「こんな物で人を縛りやがって!もうこっちのもんだ!」
北島「根本的な解決になってないけどな」
枝村「それを奪っても借金は減らないぞ?」
藤原「五月蝿ぇ!こんな物、こうしてやる!(舞台下手にクッションを投げる)」
北島枝村「あ」
藤原「これでもう俺は自由だ!自由に金を返す!それで良いな!?」
枝村「別に良いけど……」
SE、プヒッ、という音。
藤原「うっ……!誰かに俺の弱みを握られた……!」
北島「どういう仕組みなんだ?」
枝村「自分で用意したんだよ」
北島「じゃあ自業自得やんけ」
―――終わり
『手術の為の勇気』
・登場人物
北島
藤原
・舞台
藤原の部屋
・衣装
北島・・・ロックバンド風の服にギター
藤原「拝啓、北島康介様。この度は突然のファンレター失礼します。今度、僕は手術をします。でも怖くてなかなか勇気が出ません。もし良かったら僕の為に、手術の為の勇気が出る曲を作って下さい。宜しくお願いします。敬具」
明転。
藤原の部屋。ベッドが一つに机一つ、椅子一つ。
藤原、ベッドの上で横になって咳き込んでいる。
北島「(舞台上手から登場)お母さん、ここですか?はい。じゃあ行きますね。(SE、ノックの音)正将くーん?」
藤原「(起き上がる)誰ー?ケホッ」
北島「北島康介だよー」
藤原「えー?嘘だー。ケホッ」
北島「入るよー(扉を開けて中に入る)」
藤原「わー!本物の北島康介さんだー!ケホッケホッ」
北島「嘘じゃなかったでしょ?」
藤原「何で僕の家に来たんですか?ケホッ」
北島「君がファンレターをくれたからだよ。君が手術をするって聞いて飛んできたんだ」
藤原「ありがとうございます!ケホッケホッ」
北島「横になってなくて大丈夫かい?」
藤原「大丈夫です。今日は調子良いので」
北島「手術、怖いかい?」
藤原「はい……受けなきゃいけないのは分かってるんですけど、怖いんです……」
北島「そんなに悪いのかい?」
藤原「もう血が出て、痛くて、歩くのも辛いんです……」
北島「そっか……でも手術、受けないと大変な事になるんだろう?」
藤原「それは分かってるんです。でも、やっぱり怖くて……」
北島「分かった。そんな君に勇気を送る歌を捧げよう」
藤原「本当ですか!?」
北島「あぁ。それじゃあ聞いて下さい。『明日への勇気』。(ギターを奏で、歌う)今を怯えるそこの君。少しで良いんだ。ほんの少しの一歩で未来が変わる。今を生きる為にその足を踏み出せばきっと明るい未来が待っている。明日への勇気。希望に満ちたその翼を広げてあの太陽を目指すんだ。明日への勇気。さぁ行こう。君だけの明日に向かって……以上です」
藤原「わー!ありがとうござまいます!素晴らしい歌ですね!」
北島「勇気、あげられたかな?」
藤原「はい!今度の手術、受けられそうです!」
北島「ちなみに何の病気なんだい?」
藤原「足の親指の巻き爪です!」
北島「えっ!?巻き爪!?」
藤原「はい!」
北島「え、あの、その、咳き込んでたのは……?」
藤原「単純に風邪です」
北島「すぐに手術した方が良いんじゃない?」
藤原「風邪を引いてるので感染症対策で完治してから手術をするそうです」
北島「じゃあ今度の手術って、風邪の完治待ちって事?」
藤原「はい」
北島「あ、そう……何で手術が怖いの?」
藤原「麻酔をするとは言っても神経にまで爪が到達してるのできっと痛いだろうな~、と思って」
北島「それくらい我慢しなよ。巻き爪って放っておくと感染症を起こしたり敗血症を起こしたり、最悪、指を切断する事になるんでしょ?だったらそんな事、言ってないで風邪が治ったらすぐに治してもらいなよ」
藤原「分かってるんですけど、痛いの嫌で……」
北島「一瞬の激痛が来るかもしれないってのと、ずっとズキズキと痛い上に指を切断するかもしれないのとどっちが良いの?」
藤原「痛くないのが一番、良いです……」
北島「じゃあ一択じゃない」
藤原「そうですね……俺、手術、受けます!」
北島「そんな一大決心するような事でもないよ」
藤原「っていうかよくよく考えたら、全身麻酔だから痛みなんて感じないでしょうしね!」
北島「え?普通、巻き爪って部分麻酔でしょ?」
藤原「えっ!?じゃあ痛いかもしれないんですか!?」
北島「もしかしたらね」
藤原「遺体の嫌です!どうにかなりませんか!?」
北島「そんな事、俺に言われても……俺、医者じゃないし」
藤原「で、でも痛くない可能性もありますよね……?」
北島「俺も巻き爪の手術した事あるけど、麻酔しても神経まで行ってたら普通に痛いよ?」
藤原「そんな……!?」
北島「ってか麻酔事態化がめっちゃ痛いよ?」
藤原「何でですか!?」
北島「あの小さい指に大量の麻酔薬を注入するんだよ?膨れ上がってめっちゃ痛いんだよ」
藤原「えぇ!?痛いの嫌だ!」
北島「でも指切断よりはマシでしょ?」
藤原「それは最悪の場合でしょ!?だったら自然治癒でどうにかします!」
北島「巻き爪は自然治癒しないよ。手術しないと治らないし、再発もあるし」
藤原「詰んだ……!」
北島「そこまで絶望するかね?」
藤原「北島さんには分からないでしょうね!この苦しみは!」
北島「さっきも言っただろ。俺も巻き爪だったって」
藤原「俺の今の苦しみが分からないって言ってんですよ!」
北島「分からんわ。俺は一刻も早く治したかったからな」
藤原「治したいのは俺も同じですよ!」
北島「別に俺は今、巻き爪じゃないんだけど……」
藤原「北島さん!どうにか痛くない方法はありませんか!?」
北島「えぇ……?だから俺に言われても……じゃあ前代未聞だけど、全身麻酔してもらったら?」
藤原「成程!」
北島「但し馬鹿みたいに金が掛かると思うけどね」
藤原「この際、金に糸目は付けません!」
北島「病院、儲かってしょうがないだろうな……」
藤原「吸引式ですかね?」
北島「何が?」
藤原「麻酔」
北島「吸引式って今はあまり使われないんじゃなかった?点滴式の注射だと思うよ?」
藤原「えぇ!?俺、注射、嫌いなんです!」
北島「何で?」
藤原「痛いから!」
北島「もう知らんわ!指、切断しろ!」
―――終わり
『スパイだらけの会社』
・登場人物
北島
藤原
枝村
西岡
小川
儀間
米山
高橋
藤縄
菅原
大島
中山
板垣
福島
藤沢
川田
島崎
今井
佐藤
村田
中田
王子
・舞台
会社のオフィス
明転。
会社のオフィス。机が三つに椅子が三つ。机と椅子の一セットは課長用で少し離れ、残り二セットはくっ付いている。机の上にはノートPC。
北島、板付き。ノートPCを弄っている。
北島「よし。これでこの会社のデータを全て盗み出せるぞ……!」
藤原「(舞台上手から登場)何してる!」
北島「しまった!あ、いや、これは、その……」
藤原「北島?ここで何してんだ?」
北島「あ、その……」
藤原「(ノートPCを覗き込む)何だ。同業者か」
北島「同業者?」
藤原「俺もこの会社の産業スパイだったんだよ。ついでだから俺も盗ませてもらうぞ(北島の弄っていたノートPCにUSBm江守を刺す)」
北島「お、おう……」
枝村「(舞台上手から登場)そこで何してる!」
北島「しまった!」
藤原「安心しろ。同業者だ」
北島「同業者……?」
枝村「何だ、藤原と北島か。お前もデータを盗みに?」
藤原「あぁ。お前もか?」
枝村「明日にはトンズラする予定だからな。コイツは?」
藤原「同業者だ」
枝村「そうか。じゃあ俺も(北島の弄っていたノートPCにUSBメモリを刺す)」
西岡「(舞台上手から登場)そこで何してる!」
北島「しまった!」
西岡「何だ。藤原と枝村と北島か。じゃあ俺も(隣の席のノートPCにUSBメモリを刺す)コイツは何だ?」
藤原枝村「同業者」
西岡「そうか」
北島「な、なぁ、さっきから同業者、同業者って、アンタら全員、産業スパイなのか?」
藤原「そうだよ?」
北島「何で知ってんの?」
枝村「飲み会の席でうっかり」
北島「えぇ!?じゃあ会社にバレてるじゃん!」
西岡「その点は大丈夫。新人の二次会でだけ言ったから」
北島「あっそー……あれ?俺、二次会に呼ばれてないけど?」
藤原「呼んでないからね」
北島「何で!?」
枝村「一番、産業スパイじゃなさそうだったから」
北島「あ、そう、ですか……あれ?今年の新人って確か七人だったような……?」
小川「(儀間と米山と共に舞台上手から登場)そこで何してるの!?」
北島「まさか!?」
儀間「何だ、藤原君と枝村君と西岡君と北島君か」
米山「(ノートPCを覗き込む)皆もデータを盗みに?」
西岡「うん」
小川「って事は北島君も同業者?」
北島「まぁ、うん……」
儀間「あっそー。じゃあ私達も(小川、米山と共にノートPCにUSBメモリを刺す)」
北島「あの……皆も産業スパイで?」
藤原枝村小川儀間米山「うん」
北島「大丈夫かよ、この会社……」
米山「この会社の心配してる余裕あるの?貴方も自分の会社があるんでしょ?」
北島「それはまぁそうなんだけど……」
高橋「(藤縄、菅原、大島、中山、板垣、、福島、藤沢、川田、島崎、今井、佐藤、村田、中田、王子と共に舞台下手から登場)そこで何してる!?」
北島「まさか!?」
藤原「あ、高橋社長に藤原専務に菅原部長に大島課長に中山主任先輩方」
北島「社長も産業スパイだったの!?」
枝村「会長と社主だけこの事を知らないんだ」
北島「えぇ……いよいよこの会社、終わったな……」
暗転。
明転。
会社のオフィス。
藤原 枝村、高橋、藤縄、菅原、大島、中山、板垣、福島、藤沢、川田、島崎、今井、佐藤、村田、中田、王子、板付き。
北島「(舞台上手から登場)おはようございまーす」
大島「おはよう」
藤原「おはよう」
北島「あれ?皆?何で会社に残ってるんですか?」
大島「会長と社主に買収された」
藤原「同じく」
北島「お二人共?俺もですよ」
大島「実は会長と社主が俺たちの事を知ってたみたいでな」
藤原「俺達を買収して逆に俺達が元の属していた会社の情報を得て会社を大きくしようとしてたんだと」
北島「え?じゃあ面接の時点で決めてたって事ですか?」
藤原大島「そうみたい」
北島「ちゃっかりしてるなぁ、この会社」
―――終わり
『道理で』
・登場人物
北島
藤原
枝村
・舞台
居酒屋
明転。
居酒屋。テーブル一つに椅子が二つ。枝村、海老の天ぷらと豚肉の焼肉、シュールストレミングを持って舞台上手から登場。
枝村「じゃあゆっくりしていってな」
北島「ありがとう。オジサン」
枝村「良いって事よ。親父さんに宜しくな」
北島「はいよー」
枝村、舞台上手に退場。
北島「じゃあカンパーイ」
藤原「カンパーイ。どうしたんだ?急に呼び出して」
北島「最近この居酒屋、来るようになってさ。紹介したくて」
藤原「へー」
北島「小ぢんまりしてる個人店だし、初見さんお断りなんだけどね」
藤原「じゃあどうしてここに入れたんだ?」
北島「親父がここの店主さんと友達でな。特別に許してもらえたんだよ」
藤原「あぁ、道理でここの店主さんと仲良さそうだったのか」
北島「そうなんだよ」
藤原「何か裏手の人がいなさそうだけど大丈夫なのか?」
北島「何か昨日になって唯一いた従業員が一人、突然いなくなったらしい」
藤原「あぁ、道理で寂しい感じがしたのか」
北島「元々ワンオペだったらしいし特に問題無いらしい」
藤原「そうなのかー。でも高そうだけど大丈夫なのか?」
北島「身内価格でやってくれるからおまけしてくれるらしい」
藤原「そうなのかー。じゃあ頂きます。色々あるな」
北島「ここは色んな国の料理を出してくれるんだ」
藤原「あぁ、道理でシッチャカメッチャカな組み合わせだと思った(海老の天ぷらを食べる)おっ、美味いな、これ」
北島「ここは日本料理も気合入れてるんだ」
藤原「そうなのかー(海老の天ぷらの尻尾まで食べる)」
北島「あれ?藤原、海老天は尻尾まで食べる派?」
藤原「うん」
北島「俺は食べないなー」
藤原「何で?」
北島「海老の尻尾ってゴキブリの羽根と同じ成分らしいよ」
藤原「へー。道理で」
北島「えっ?」
藤原「(豚の焼肉を食べる)」
北島「藤原って豚肉、本当に好きだよなー」
藤原「うん」
北島「いつか人を食べ始めたりして」
藤原「何で?」
北島「人肉と豚肉って似てる成分らしいよ」
藤原「へー。道理で」
北島「えっ?」
藤原「じゃあ次、これ食ってみるか。喰って見たかったんだよね(シュールストレミングを食べる)」
北島「何それ?」
藤原「あぁ、これ?シュールストレミング」
北島「シュールストレミングかぁ」
藤原「いる?」
北島「いや、いいや」
藤原「あ、そう」
北島「シュールストレミングってさぁ、死んだ金魚に近い臭いがするらしいよ」
藤原「へー。道理で」
北島「えっ?」
藤原「さーて、次は何を頼もうかなー」
北島「ちょっと良い?」
藤原「何?」
北島「喰った事あんの?」
藤原「何を?」
北島「ゴキブリと人肉と死んだ金魚」
藤原「あるよ?」
北島「えっ?」
藤原「ガッツり喰ったからなー。サラダ辺り行ってみるかー」
北島「ちょっと待って?何?喰った事あんの?」
藤原「だからあるって」
北島「ゴキブリと死んだ金魚はまだ分かるかもしれないけど、人肉は何で?」
藤原「外国旅行に行った時に、とある民族と出会ってそこで食べた」
北島「えぇ……美味しかった?」
藤原「美味しかったよ」
北島「美味しかったんかい……ゴキブリは何で食べたの?」
藤原「外国旅行に行った時に、昆虫食が勧められてる国だったんだけど、そこで素揚げを食べた」
北島「美味しかった?」
藤原「美味しかったよ」
北島「あ、そう……死んだ金魚は何で?」
藤原「幼い頃に、金魚って喰えるんじゃね?と思って死んだ金魚なら誰も文句言わないだろと思って食った」
北島「美味しかった?」
藤原「流石に不味かった」
北島「あ、良かった。そこ美味しいと思われてたらどうしようと思っちゃった。じゃあシュールストレミングはどうなの?」
藤原「案外、美味い」
北島「美味いと思ってんじゃないか」
藤原「美味しい不味いというより、懐かしさで食べてる」
北島「あ、そう、ですか……怖ぁ……」
藤原「何が?」
北島「お前の味覚」
藤原「普通だと思うけど」
北島「いや普通、人肉、喰ったら似た味、喰えなくなると思うぞ?」
藤原「美味い物を美味いと感じて何が悪いんだよ?」
北島「良いけどさ……普通トラウマになるって」
藤原「そんなもんかなぁ……?」
北島「そういうもんだよ。てかよくそれも喰えるな。海老天の尻尾とシュールストレミング」
藤原「何で?」
北島「嫌じゃない?」
藤原「喰い物は喰い物だろ」
北島「あっそー……割り切ってるんだな」
藤原「腹に入っちまえば一緒だからな」
北島「で、どうよ?ここの味は?」
藤原「うーん……」
北島「あれ?口に合わなかった?さっき美味いって言ってたのに」
藤原「これ、本当に豚肉かなぁ……」
北島「え、何、何?怖いんだけど。まさか人肉って言うんじゃないだろうな?」
藤原「いや、中国で食べた犬肉に似てる」
北島「お前、犬も喰ったの?」
藤原「喰ったよ」
北島「あ、そう……オジサーン!」
枝村「(舞台上手から登場)どうしたー?」
北島「これ、本当に豚肉?」
枝村「お、よく分かったね。これ、特別な肉なんだよ」
北島「犬?」
枝村「いや?」
北島「じゃあやっぱり豚?高級な」
枝村「いいや?」
北島「え?じゃあ何?」
枝村「まぁ、特別な肉だよ」
北島「……もしかして、昨日、突然いなくいった従業員と何か関係ある?」
枝村「さぁてね……まぁあまりこの話をすると、明日にはこの肉料理が増える事になるよ……」
北島「えぇ……?」
枝村「じゃあごゆっくり……あ、そうそう。あまり勘の良い人は、美味しく料理されちゃうから気を付けてね……(舞台上手に退場)」
北島枝村「……怖ぁ……」
―――終わり
『道理で2』
・登場人物
北島
藤原
枝村
・舞台
居酒屋
明転。
居酒屋。テーブル一つに椅子が三つ。テーブルの上には海老の天ぷらと豚肉の焼肉、シュールストレミング。
北島、藤原、枝村、板付き。
北島「じゃあカンパーイ」
藤原「カンパーイ」
枝村「カンパーイ。どうしたんだ?急に呼び出して」
北島「最近この居酒屋、来るようになってさ。紹介したくて」
藤原「へー」
北島「小ぢんまりしてる個人店だし、初見さんお断りなんだけどね」
枝村「じゃあどうしてここに入れたんだ?」
北島「親父がここの店主さんと友達でな。特別に許してもらえたんだよ」
藤原「あぁ、道理でここの店主さんと仲良さそうだったのか」
北島「そうなんだよ」
枝村「何か裏手の人がいなさそうだけど大丈夫なのか?」
北島「何か最近、唯一いたバイトが辞めちゃったらしい」
藤原「あぁ、道理で寂しい感じがしたのか」
北島「元々ワンオペだったらしいし特に問題無いらしい」
枝村「そうなのかー。でも高そうだけど大丈夫なのか?」
北島「身内価格でやってくれるからおまけしてくれるらしい」
藤原「そうなのかー。じゃあ頂きます。色々あるな」
北島「ここは色んな国の料理を出してくれるんだ」
藤原「あぁ、道理でシッチャカメッチャカな組み合わせだと思った(海老の天ぷらを食べる)おっ、美味いな、これ」
北島「ここは日本料理も気合入れてるんだ」
枝村「そうなのかー」
藤原「(海老の天ぷらの尻尾まで食べる)」
北島「あれ?藤原、海老天は尻尾まで食べる派?」
藤原「うん」
北島「俺は食べないなー」
枝村「何で?」
北島「海老の尻尾ってゴキブリの羽根と同じ成分らしいよ」
藤原「へー。道理で」
北島枝村「えっ?」
藤原「これは豚肉炒めか(豚の焼肉を食べる)」
北島「藤原って豚肉、本当に好きだよなー」
藤原「うん」
北島「いつか人を食べ始めたりして」
枝村「何で?」
北島「人肉と豚肉って似てる成分らしいよ」
藤原「へー。道理で」
北島枝村「えっ?」
藤原「じゃあ次、これ食ってみるか。喰って見たかったんだよね(シュールストレミングを食べる)」
枝村「何それ?」
北島「あぁ、これ?シュールストレミング」
北島「シュールストレミングかぁ」
藤原「いる?」
北島「いや、いいや」
枝村「俺も」
藤原「あ、そう」
北島「シュールストレミングってさぁ、死んだ金魚に近い臭いがするらしいよ」
藤原「へー。道理で」
北島枝村「えっ?」
藤原「さーて、次は何を頼もうかなー」
北島「ちょっと良い?」
藤原「何?」
北島「喰った事あんの?」
藤原「何を?」
北島「ゴキブリと人肉と死んだ金魚」
藤原「あるよ?」
北島「えっ?」
枝村「おいおい。流石に嘘だろ?」
藤原「本当だよ?さーて、ガッツり喰ったからなー。サラダ辺り行ってみるかー」
北島「ちょっと待って?何?喰った事あんの?」
藤原「だからあるって」
北島「ゴキブリと死んだ金魚はまだ分かるかもしれないけど、人肉は何で?」
藤原「外国旅行に行った時に、とある民族と出会ってそこで食べた」
北島「えぇ……?」
枝村「美味しかった?」
藤原「美味しかったよ」
北島「美味しかったんかい……ゴキブリは何で食べたの?」
藤原「外国旅行に行った時に、昆虫食が勧められてる国だったんだけど、そこで素揚げを食べた」
枝村「美味しかった?」
藤原「美味しかったよ」
北島「あ、そう……死んだ金魚は何で?」
藤原「幼い頃に、金魚って喰えるんじゃね?と思って死んだ金魚なら誰も文句言わないだろと思って食った」
枝村「美味しかった?」
藤原「流石に不味かった」
北島「あ、良かった。そこ美味しいと思われてたらどうしようと思っちゃった。じゃあシュールストレミングはどうなの?」
藤原「案外、美味い」
枝村「美味いと思ってんじゃないか」
藤原「美味しい不味いというより、懐かしさで食べてる」
北島「あ、そう、ですか……」
北島枝村「怖ぁ……」
藤原「何が?」
北島「お前の味覚」
藤原「普通だと思うけど」
枝村「いや普通、人肉、喰ったら似た味、喰えなくなると思うぞ?」
藤原「美味い物を美味いと感じて何が悪いんだよ?」
北島「良いけどさ……普通トラウマになるって」
藤原「そんなもんかなぁ……?」
枝村「そういうもんだよ。てかよくそれも喰えるな。海老天の尻尾とシュールストレミング」
藤原「何で?」
北島「嫌じゃない?」
藤原「喰い物は喰い物だろ」
北島「あっそー……割り切ってるんだな」
藤原「腹に入っちまえば一緒だからな」
北島「で、どうよ?ここの味は?」
藤原「美味いよ」
北島「あぁ、それは良かった」
藤原「ここって中華料理はあるのか?」
北島「あるよ」
北島「じゃあ犬肉、喰いたいな」
北島「え?」
藤原「犬肉だよ。犬肉。赤犬はよく中国で好まれて喰うんだよ。よく隣の家の犬を喰ったって話、聞くだろ?」
北島「あ、あぁ、まぁ、たまにネットで……」
藤原「猫肉も喰いたいな」
北島「え?」
藤原「猫肉だよ、猫肉。スイスやベトナムでは一般的だし、昔の日本でもよく好まれて喰ってたんだよ」
北島「怖っ!怖いよ、お前!俺、帰る!(舞台下手に退場)」
枝村「なぁ、本当に人肉とかゴキブリとか金魚とか犬とか猫とかって喰った事あるのか?」
藤原「無いよ?」
枝村「え?嘘って事?」
藤原「そう。嘘」
枝村「何でそんな嘘を?」
藤原「北島ってさぁ、アイツ飯、喰う時いらんウンチクを出してこない?」
枝村「あぁ、まぁ、うざったいよな」
藤原「だからこれで縁を切ろうと思って嘘を吐いた」
枝村「あー、道理でわざと遠ざけるようにしてた訳か」
北島「(舞台下手から登場)道理で」
藤原枝村「うわっ!?まだいたの!?」
―――終わり




