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コント集  作者: 河野吉田
PR
16/37

コント集16

コント集16 



151・・・・くすぐったい

152・・・・選ばれし者

153・・・言い間違い

154・・・迷推理

155・・・帰れ

156・・・プロポーズ

157・・・出席番号

158・・・四字熟語

159・・・何かあったの

160・・・いつもの



『くすぐったい』



・登場人物


 北島

 藤原



・舞台


 道端






 明転。


 道端。

 藤原、笑いながら舞台上手から登場。北島、舞台下手から登場。北島、藤原、肩がぶつかる。藤原、笑う。


藤原「フヒヒッ。サーセンッ」

北島「あぁ?テメェ、何だその態度は?」

藤原「え?何がですか?」

北島「肩がぶつかったんだぞ。何ヘラヘラしてんだ」

藤原「あぁ、すいません」

北島「ちゃんと謝れや!(藤原の肩を突く)」

藤原「ヒヒヒッ。すいやせんっ」

北島「だから何ヘラヘラしてんだ!」

藤原「すいません。俺、くすぐりに弱いんですよ」

北島「あぁ?くすぐり?」

藤原「はい。極度のくすぐったがりで、体のどこ触っても笑っちゃうんですよ」

北島「テメェ!いい加減な事言ってんじゃねぇぞ!」

藤原「だって事実なんですもん」

北島「んな訳あるか!テメェ、この落とし前どう着けるつもりだ!?(藤原の胸倉を掴む)」

藤原「フヒヒッ!ちょっ!胸はマズいッスよ!」

北島「はぁ!?マジでくすぐったがりなの!?」

藤原「フヒヒヒヒッ!離して下さい!よして下さい!」

北島「(手を離し、藤原の肩を掴む)これならどうだ!?」

藤原「肩は弱いんですってぇ~!フヒヒッ!」

北島「ふざけやがってぇ~!(藤原を突き放す)」

藤原「フヒッ!ヒッヒッヒッ!も~!」

北島「お前、酔ってんだろ?なぁ?そうだろ?」

藤原「さっきノンアルビール三本飲んできました」

北島「おい素面か!?」

藤原「はい」

北島「この野郎!只のくすぐったがりな訳無いだろ!ふざけてんだろ!(藤原の首を絞める)」

藤原「フヒヒッ!止めて下さい!」

北島「この野郎~!」

藤原「フヒヒヒヒッ!首は特に弱いんです~!」

北島「まだ言うか~!」

藤原「フヒッ!フヒヒヒヒッ!フヒヒヒヒヒヒヒヒッ!」

北島「怖いわ!(藤原を突き放す)」

藤原「ヒッヒッヒッ!もう~!笑い殺すつもりですか~?」

北島「そんなつもりねぇよ!」

藤原「でもこんなにくすぐってきたじゃないですか~」

北島「息の根を止めようとしてたのは確かだけど、何も笑わせようとしてた訳じゃねぇ!」

藤原「とりあえずお互いごめんなさいって事でこれで終わりにしましょう?」

北島「チッ……まぁ俺もぶつかった訳だからな。俺も悪かったよ」

藤原「じゃあ握手(手を差し出す)」

北島「ん(握手する)」

藤原「フヒヒッ!」

北島「何だよ?」

藤原「手の平がくすぐったくて。フヒヒッ」

北島「おい、これでもかよ!?」

藤原「じゃあこれで」

北島「あぁ。じゃあな」

藤原「(笑いながら歩いて舞台下手に行く)」

北島「なぁ。何で笑いながら歩いてんだ?」

藤原「あぁ、俺、足の裏弱いんスよ」

北島「日常生活ですらずっと笑ってんの!?」

藤原「生まれ付きですねぇ」

北島「病院で診てもらった方が良いよ!?」

藤原「来月、手術の予定です」

北島「どういう手術?」

藤原「全身の神経を鈍くする手術です」

北島「あっそ!お大事に!」

藤原「はい!(笑いながら舞台下手に退場)」

北島「軽いホラー映画よりホラーじゃん……」

藤原「フヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ!」




―――終わり

『選ばれし者』



・登場人物


 魔王

 勇者

 僧侶

 魔王の部下(部下・声のみ)



・舞台


 魔王城






 明転。


 魔王城。玉座が一つ。

 魔王、玉座に座っている。僧侶、舞台上手から登場。


僧侶「遂にここまで来たぞ、魔王!」

魔王「待っていたぞ、勇者よ」

僧侶「いいや、私は僧侶だ。聖なる剣『エクスカリバー』に選ばれた勇者は今そこにいる!」

魔王「じゃあ連れて来い!相手をしてやる!」

僧侶「勇者!どうぞこちらに!」

勇者「(台座が付いている剣を引き摺りながら舞台上手から登場)」

魔王「待っていたぞ勇者!我が四天王を倒しよくぞここまで……」

勇者「どうした?魔王」

魔王「あ、いや……その武器でここまで来たのかなって」

勇者「そうだが?」

魔王「あ、そう……聖剣は?」

勇者「これだが?」

魔王「えっ?その鈍器みたいなのが?」

勇者「そうだが?」

魔王「あ、そう……」

勇者「どうした?」

魔王「いや、剣、鞘に入れてないんだなって……」

勇者「あぁ、入れられる鞘が無くてな」

魔王「だろうね。ってか、お前、本当に選ばれし勇者?」

僧侶「何を失礼な!この方は聖剣を引き抜いた由緒ある勇者であるぞ!」

魔王「でもそれ、どうやって引き抜いたの?何か台座毎、引き抜かれてるけど……」

勇者「あぁ、引き抜きにくかったから力尽くで抜いたら台座毎、抜けてな」

魔王「それ選ばれた勇者って言える?フィジカル過ぎない?」

勇者「逆にロジカルな勇者って何?」

魔王「こう……神に選ばれた者が抜けるっていう理由があるとか」

勇者「神なんているのか?それこそロジカルじゃねぇよ」

魔王「魔王がいるんだから神だっているだろう」

僧侶「神は死んだ」

勇者「だから俺がここにいて、お前を倒す」

魔王「あ、そういう……まぁ、いいや。戦う?」

勇者「そのつもりだ(剣を構える)」

魔王「痛いだろうなぁ……それ……」

勇者「剣だからな」

魔王「そうじゃなくて、その台座の部分で殴られたら鈍痛が来るだろうなって思って」

勇者「まぁ、剣で切られても痛いだろう?」

魔王「いっそ首を一撃で切られたらすんなり死ねるだろうけど、鈍器で殴打されて死ぬのはなぁ……」

勇者「罪の無い人々を蹂躙してきたお前がよく言うよ」

魔王「返す言葉も御座いません」

部下「魔王様ー!」

勇者「僧侶、手下の相手をしてやってくれ」

僧侶「はい!(舞台上手に退場)」

勇者「先手必勝!(剣で魔王の腕を叩く)」

魔王「いってぇ!腕で折れた!」

勇者「切れなかったか」

魔王「そりゃ台座で殴ったからな!せめて刃の部分で切って!」

勇者「無茶言うな!(殴り掛かる)」

魔王「危ねっ!(避ける)分かった!ここは交渉といこうじゃないか!」

勇者「交渉?」

魔王「そうだ!世界の半分をお前にやる!それで我と手を組もうじゃないか!」

勇者「……悪くない話だな」

魔王「だろう!?ここは穏便に行こうじゃないか!」

勇者「地図はあるか?」

魔王「あ?あぁ……(玉座の後ろに行き、地図を持ってくる)」

勇者「(地図を受け取り、眺める)世界の半分と言ったな?どこでも良いのか?」

魔王「勿論」

勇者「じゃあ……この地域と、この地域と、この地域をくれ」

魔王「おいおいおい!そこら辺、作物と鉱石がよく取れる地域じゃないか!」

勇者「そうだが?」

魔王「『そうだが?』じゃない!そこを譲ったら我らはどうやって暮らしていけば良いんだ!?」

勇者「知らんよ。どこでも良いって言ったじゃないか」

魔王「言ったけども!こんな岩山だらけの辺境の地で何をして暮らせば良いんだ!」

勇者「鉱石でも残ってるんじゃないか?」

魔王「ここはもう採掘済みなんだよ!もう穴だらけで用は無い!」

勇者「じゃあこれでお前をたたっ切るだけだが?(剣を構える)」

魔王「それは困る……」

勇者「じゃあどうする?」

魔王「こっちの要求も飲んでほしい」

勇者「何だ?」

魔王「最低限の食料確保の為に、農作物の地域を一部譲ってくれ」

勇者「それは出来ない」

魔王「何で?」

勇者「人間の方がまだ数が多い。それを譲ってしまうと食糧危機に瀕してしまう」

魔王「でもこっちもそれなりの数がいるし……」

勇者「(スッと剣を振りかざす)」

魔王「分かった!要求を飲む!だからそれだけは!」

勇者「話が分かる奴で助かるよ」

魔王「はぁ……本当にもう……」

勇者「じゃあ停戦協定って事で今度こっちの城まで来てくれ。誓約書を書かせる」

魔王「分かった」

勇者「じゃあな(舞台上手に退場)」

魔王「どうすっかなぁ……これから……」

勇者「(舞台上手から登場)あぁ、言い忘れてたけど、お前の部下、全滅したから」

魔王「は?」

勇者「魔物はお前以外、全部、討伐した」

魔王「はぁ!?じゃあ独りぼっちになったの!?俺!?」

勇者「そうだよ」

魔王「マジかよ……」


 暗転。


 明転。


 魔王城。

 魔王、玉座に座っている。勇者、台座が付いている剣を持って舞台上手から登場。


勇者「入るぞ」

魔王「あぁ、これはこれは勇者様!ご機嫌、如何ですか?」

勇者「お陰様で何とか」

魔王「それは良かったです!」

勇者「その後、お前はどうだ?」

魔王「お陰様で一人でも何とか快適に過ごせています」

勇者「そうか。ところで今回は一つ話があってな」

魔王「何でしょう?」

勇者「前に世界の半分を折半したじゃん?あれ、お前には半分も要らないんじゃないかなって思って」

魔王「は?」

勇者「魔物はもうお前一人だし、世界の半分は贅沢なんじゃないかなって」

魔王「……どれくらいの領土を取られるんですか?」

勇者「十分の九だな」

魔王「いい加減にしろ!仲間を奪った挙句、シマまで取るのか!?」

勇者「俺は良いんだぜ?今ここでお前を倒しても(剣をチラつかせる)」

魔王「ヒィ!それだけは!」

勇者「(地図を取り出す)じゃあここら辺一帯を貰うから」

魔王「……はい」

勇者「じゃあそういう事で(舞台上手に退場)」

魔王「これじゃあどっちが魔王だか分かんねぇよ……」



















―――終わり

『言い間違い』



・登場人物


 北島

 藤原



・舞台


 居酒屋






 明転。


 居酒屋。テーブル一つに椅子が二つ。テーブルの上にはビールとつまみ。

 北島、藤原、板付き。


藤原「じゃあカンパーイ!」

北島「おう……」

藤原「(ビールを飲む)あー!やっぱり発泡酒じゃなくて生が一番だな!」

北島「そうだな……」

藤原「急にどうした?お前が奢るなんて?あ、高いの頼んでも良い?」

北島「良いよ……ここは俺が出すから……」

藤原「そうか?じゃあ刺身盛り合わせお願いしまーす!いやー、最近、金欠でさ!俺、助かっちゃったよ!」

北島「そうか……」

藤原「今日はゴチでーす!」

北島「おう……」

藤原「さっきからどうした?元気無いなぁ。そんな汚い面してどうした?」

北島「それを言うならシケた面だよ!さっきからお前、空気を読めよ!」

藤原「な、何だよ?何かあったのか?」

北島「あ、悪い……実は相談したい事があってさ……」

藤原「何だ?俺達の仲だろ?何でも相談してくれよ!」

北島「彼女が浮気してた……」

藤原「美幸さん?」

北島「そう……」

藤原「大学時代からだから、もう十年以上か。まだ結婚してないんだよな?」

北島「あぁ。まずは結婚資金を集めて、子供の事を考えて貯金してからって言われて、とりあえず同棲して、その通りにしてたんだけど、この前、美幸の通帳を見たら全然、貯金が出来てなくてさ……」

藤原「何かあったのか?」

北島「定期的に大金が引き落とされてて、俺の口座からも……どうやら借金もあるみたいで問い正したんだ。そしたら浮気相手に貢いでるって……」

藤原「いつから?」

北島「それが大学時代かららしい……」

藤原「相手は?」

北島「分からん……」

藤原「いつから?」

北島「俺が告白して付き合う前から付き合ってたみたい……」

藤原「何それ!?許せないな!」

北島「だよな……」

藤原「まるで腸を煮込むみたいな思いになってきた!」

北島「それを言うなら腸が煮えくり返る思いだよ!何モツ煮を喰おうとしてんだ!」

藤原「腹が立ったら腹が減ってきた!すみませーん!モツ煮一つ!」

北島「本当にモツ煮を頼むな!」

藤原「そんなに金が無いのに俺に奢ろうとしてたのか?」

北島「そうじゃねぇ!いや、美幸に金、使い込まれてたから金が無いのは事実なんだけども……」

藤原「じゃあ無理すんな!ここは割り勘にしよう!」

北島「それは悪いよ。俺の相談に乗ってもらうのに」

藤原「水臭い事、言うなよ!幼馴染だろ!?」

北島「藤原……!」

藤原「それにほら、畜生の友って言うだろ?」

北島「竹馬の友だよ!何で蔑むんだよ!?」

藤原「でも馬って畜生だろ?」

北島「今すぐ全酪農家と競走馬育成協会に謝れ!失礼だろ!」

藤原「あぁ!何か申し訳なくなってきたら腹が減ってきた!すみませーん!馬刺し一つ!」

北島「だから何でもかんでも頼むな!」

藤原「どうせ割り勘なんだから別に良いだろ?」

北島「良くねえ!お前、俺の相談に乗る気あるのか!?」

藤原「最初から相談があるって言ってくれりゃその気でここに来たよ」

北島「あぁ、そうだったか……それは悪い……」

藤原「そんな顔すんなよ。折角の生ハムが台無しだぞ?」

北島「生ハム……もしかしてハンサムって言いたいの!?」

藤原「生のハンサム、略して生ハムじゃないの!?」

北島「聞いた事無ぇわ!」

藤原「何か恥ずかしくなってきたら腹が減ってきた!すみませーん!生ハム一つ!」

北島「もう良いわ!何でも好きなの頼めよ!」

藤原「デブだなぁ!」

北島「デブ……太っ腹って言いたいの!?」

藤原「そうだよ!?」

北島「シンプル悪口!そんだけ食ってりゃお前の方がデブだろ!」

藤原「そう鼻イルカ立てるなよ!」

北島「鼻イルカ……?」

藤原「耳シャチだっけ?」

北島「……もしかして目くじらの事を言いたいのかな!?」

藤原「あぁ、それそれ!」

北島「お前、馬鹿だろ!?」

藤原「これでもお前と同じ国立くにたちの大学出てますけど!?」

北島「国立こくりつな!?読み方、間違えてるよ!」

藤原「えっ!?あれ『くにたち』じゃないの!?」

北島「地域が限定的過ぎるだろ!何でそこだけ特別に国指定されてると思ってたんだよ!?」

藤原「それもそうか!」

北島「もー!お前に相談しようと思った俺が馬鹿だった!」

藤原「お前も国立の大学出てるじゃないか」

北島「学歴の問題じゃ無ぇ!地頭の問題だよ!」

藤原「えっ!?お前、頭、痔なの!?」

北島「頭に痔が出来る訳無いだろ!元々の良さって事だよ!」

藤原「元々が良くなかったら国立大学行けてないだろ!」

北島「もういいよこの話!先に進まねぇ!」

藤原「元々の話題、何だったっけ?」

北島「俺の彼女が浮気してたって話!」

藤原「あぁ!そうだったな!で?どうしたんだ?」

北島「美幸は『今の男と付き合うから別れてほしい』って言ってきたんだよね……」

藤原「何それ!?勝手過ぎないか!?」

北島「だろ?しかもその日の内に荷物を纏めて出て行っちゃってさ……連絡を取ろうとしても電話も繋がらないし、LINEも未読のままだし、金も戻ってこないしで……」

藤原「もう警察に行くしか無くね?」

北島「あまり事を荒立てなくないんだよな……」

藤原「でも犯罪じゃん?金を勝手に使うなんて。返してほしいんだろ?」

北島「そりゃあまぁ……」

藤原「それっていつの話よ?」

北島「一昨日の話だけど」

藤原「じゃあ尚更だろ。ほら、ケツは熱いうちに打てって言うし」

北島「鉄は熱いうちに打てだよ!どんなプレイだよ!興奮してケツが熱くなってんのか!?」

藤原「怒れる者は内辛子って言うし、ここらで見切り付けといた方が後腐れ無く終わるだろ?」

北島「怒れる者は内空しだよ!あれ『むなし』じゃなくて『からし』って読んでたの!?」

藤原「てかさ、そもそも資金は別にして先に籍だけでも入れておけば良かったんじゃない?」

北島「それでも不倫は続いていたと思う。結婚したらより多くの貯金を使い込まれてたかもしれない」

藤原「成程なぁ。じゃあもう今日は全部、忘れて飲もうじゃないか!」

北島「そうだな……まぁ確かにグチグチ言ってるよりはマシか……このままじゃ病んじゃいそうだし……」

藤原「そうそう。病むくらいならさっさと行動してスパッと忘れよう。病は脇からって言うし」

北島「病は気からね!?何だよ!?俺、腋臭なのか!?」

藤原「そうだが?」

北島「えっ!?そうなの!?」

藤原「うん」

北島「マジかよ!?誰も言って来なかったぞ!?彼女ですら!」

藤原「言えなかっただけじゃね?結構、心を抉られる事だし」

北島「そうなのかぁ……お前もずっと臭いって思ってたの?」

藤原「うん。でも慣れたし」

北島「慣れるもんなの?でも就職してからずっと職場で嫌われてたのがようやく分かった気がする……電気工事士やってるから汗臭いと思われてるだけだと思ってた……この歳になっても昇進どころか給料も上がらなくて苛々して上司に噛み付いたりしてたし……」

藤原「お前みたいな世渡り下手な電気工事士の事を電線とか?って言うんだよな」

北島「泥船渡河でいせんとかね!?お前、言葉を知ってるようでいて全然知らねぇな!?」

藤原「下手な横槍ってやつだよ」

北島「下手の横好きね!?確かに下手だけど!」

藤原「吹き出物の上手なれって言うし、下手という腫れ物があればそれだけ伸びしろがあるって事だろ?」

北島「好きこそ物の上手なれね!?お前、いちいちそんな解釈して過ごしてきたの!?」

藤原「そうだが?」

北島「あっそ!」

藤原「ほら、もう元気になった」

北島「あ?」

藤原「さっきみたいに元気が無い状態じゃなくなったし、叫ぶだけの気力も戻ってきた。後は美幸さんとの一件が片付けばそれで終わりだろ?」

北島「あ?あぁ、まぁ……」

藤原「もうお金の事とかどうでも良くなってきたんじゃないか?」

北島「そうだな。馬鹿馬鹿しくなってきた」

藤原「そうそう!もう今日は楽しくパーッと飲んで美幸さんの事なんか忘れよう!」

北島「そうだな!あ、ちょっとトイレ行ってくる(舞台下手に退場)」

藤原「行ってらっしゃ~い!(スマートフォンを取り出し、電話を掛ける)……あ、もしもし?美幸?北島、もうお金の事、良いってさ!」























―――終わり

『迷推理』



・登場人物


 北島

 藤原

 枝村

 小川

 西岡



・舞台


 別荘






 明転。


 別荘。ロングソファが一つ、ミニソファが一つ、テーブル一つ。

 北島、藤原、枝村、小川、西岡、板付き。


枝村「何だよ、探偵さん?いきなり集まれだなんて」

藤原「皆さんに集まって頂いたのは他でもありません。今回、この別荘で起きた高橋さん殺害の犯人が分かったんです」

北島「犯人が分かった?」

西岡「地下室は密室だった。刑事の俺が自殺だと判断したが?」

藤原「それがそうでも無いんですよ。確かに高橋さんは地下室で亡くなっていました。鍵も掛かっていて密室でした。しかし背中をナイフで刺して自殺するとは到底思えません。よって、これは殺人事件です」

小川「で?犯人は誰なのよ?」

藤原「まぁそう慌てないで。これはワイヤーを使ったトリックで、誰でも出来るんです。よって、これは誰にでも出来る犯行です」

枝村「で?」

藤原「殺害現場は別の場所だったんです。本当の殺害現場は高橋さんの部屋だったんです」

北島「何でそんな事が言えるんだよ?」

藤原「この家はカーペットが全て黒です。血痕を見付けるのは困難です。しかし、血液は固まります。高橋さんの部屋でカーペットが一部、固まっているのを発見しました」

西岡「誰が運んだんだ?」

藤原「この時アリバイが無かったのは全員です。全員、自室で寝ていると言っていましたね?なので誰でも犯行は可能です」

枝村「じゃあ部屋が一番近かった小川さんが犯人なんじゃないの?」

小川「そんな!私はやってない!」

藤原「女性に大の男の遺体は運べません」

北島「じゃあ男か」

藤原「今回、たまたま道に迷ってここに来た刑事さんである西岡さんは無関係でしょう。何のメリットもありません」

西岡「じゃあ後は三人か」

藤原「ナイフはキッチンの奥にあった物でした。これの場所を知っているのは料理を担当した私と北島さんんのみです。よって枝村さんではありません」

小川「じゃあ二択か」

藤原「あの時アリバイが無く、ナイフの場所を知っていて、この家の構造を知っていて、高橋さんに恨みを持つ人物。それが犯人です」

枝村「それは?」

藤原「それは……私なんです」

北島藤原枝村小川西岡「はぁ!?」

藤原「ん~……困りましたねぇ……どう考えても私しか犯人は有り得ないんですよぉ……」

西岡「えぇ……?じゃあ、逮捕、で……?」

藤原「そうなりますねぇ……」

北島「ちょっと待て!自分で自分を犯人だって言う犯人がいるか!」

枝村「確かに」

小川「じゃあ誰?」

藤原「え~?じゃあやっぱり部屋が近かった小川さん?」

小川「私に男を担いで地下室まで運ぶなんて無理よ!貴方がそう言ったんじゃない!」

藤原「じゃあ西岡刑事?」

西岡「俺は道に迷ってここに来た上に、初対面の高橋さんを殺す動機が俺には無いってお前が言ったんじゃないか」

藤原「じゃあ枝村さん?」

枝村「あんなナイフがあったなんて俺は知らなかったよ。ここに来るの初めてだし。アンタが言ったんじゃないか」

藤原「じゃあ北島さん?」

北島「その可能性が一番高いだろ!」

西岡「自分で言っちゃうんだ」

藤原「でもねぇ……私は高橋さんに会社で手柄を取られたり、横領してるのを見逃せと言ってきたりと大分、恨みがあったんですよねぇ……」

北島「俺だってそうだよ!財布忘れたって突然、言って高い店で奢った事が何回もあるし、金を盗まれたりもした!挙句、女を寝取られたんだ!」

枝村「自分で言っちゃうんだ」

藤原「でもねぇ……あそこにナイフがあったの知ってていつでも使えたの私しかいないしねぇ……」

北島「それは俺だって知ってだだろ!」

藤原「でもねぇ……私にはアリバイが無いしねぇ……」

北島「俺だってそうだよ!いくらでもチャンスはあった!この家の事だって何度も来てるから知ってる!ナイフの隠し場所だってキッチンにならあっても不思議は無いって判断かもしれないだろ!」

小川「自分で言っちゃうんだ」

藤原「でもねぇ……トリックだって誰でも出来る簡単なものだったしねぇ……」

北島「そらそうよ!だってネットで調べたんだもん!」

枝村小川西岡「全部、自分で言っちゃったよ」

藤原「引っ掛かりましたねぇ」

北島藤原枝村小川西岡「え?」

藤原「正直、決定打に欠けてたんですよ。後は犯人が自ら口を割るのを待ってたんですよ」

北島「そんな……!?俺をハメる為にワザと……!?」

藤原「全ては計画通りです」

西岡「で、実際そうなの?」

北島「……あぁ、そうだよ!俺が犯人だよ!」

西岡「えぇ?あ、じゃあ、はい……(北島に手錠を掛ける)何で自白したの?」

北島「あんな雑な推理で俺の完全犯罪を滅茶苦茶にされてたまるか!」

西岡「あっそー……じゃあ行こうか。あ、皆さんも事情聴取したいんで着いてきて下さい」

藤原枝村小川「はい」


 北島、枝村、小川、西岡、舞台上手に退場。


藤原「……あぁ、良かった。正直ただの当てずっぽうだったんだけど……」








―――終わり

『帰れ』



・登場人物


 北島

 藤原

 お手伝いさん(手伝)



・舞台


 北島宅






 明転。


 北島宅。豪邸。テーブル一つに座布団二つ。テーブルの上には茶碗がいくつか重ねられている。

 北島、座布団の上に、手伝、テーブルの側に座っている。藤原、座布団の上に座ってぶぶ漬けを食べている。


藤原「あー!美味い!」

手伝「おかわり要りますか?」

藤原「お願いします!」

手伝「(舞台上手に退場)」

藤原「いやー、京都のぶぶ漬けってやっぱ美味いッスね!先輩!」

北島「帰れよ!」

藤原「え?」

北島「お前いい加減に帰れよ!」

藤原「何でですか!?」

北島「普通、京都でぶぶ漬け出されたら『帰れ』って意味なんだよ!」

藤原「そうなんですか!?知りませんでしたよ!」

北島「知らないにしてもこんなに他人の家でぶぶ漬け食うやつがあるか!一品しか出さない辺りで何か気付けよ!」

藤原「知りませんよそんなローカルルール!」

北島「ローカルルール!?いやまぁ全国的に見たらローカルルールかもしれんけど! 少しは察しろ!」

藤原「最初から言っといてくださいよ!」

北島「郷に入っては郷に従えって言うだろ!?事前に調べとけよ!」

藤原「そんな事を先輩がするとは思わなかったんですもん!」

北島「あぁあぁ!ありがとね!そこまで信頼してくれて!」

藤原「で、おかわり、まだですかね?」

北島「ここまで言われてまだ喰うの!?お前!?」

藤原「腹減ってるんで!」

手伝「(舞台上手からぶぶ漬けを持って登場)お待たせしましたー」

藤原「待ってました!(ぶぶ漬けを食べる)」

北島「待つな!お手伝いさん、もうコイツに出さなくて良いよ」

手伝「そうですか?まだお米ありますけど」

北島「何合炊いたの?」

手伝「十升ですけど?」

北島「十升!?十合でも多いのに十升!?」

手伝「多かったですか?」

北島「お前も十升も喰わせる気だったの!?」

手伝「フードファイターの後輩さんがいらっしゃるとの事でしたのでそれくらいは炊いておこうかと思いまして」

北島「早く帰ってもらいたくてぶぶ漬け出したのに何で長居させてんだよ!?」

手伝「あぁ!その考えには至りませんでした!」

北島「馬鹿かよ!?」

藤原「あー!美味い!おかわり下さい!」

手伝「はいはーい!只今ー!(舞台上手に退場)」

北島「おい!おかわりを注ぎに行くな!」

藤原「しっかし意味は置いといて」

北島「置いておくな」

藤原「この米とお茶、最高級の物を使ってますね。米は秋田県産のあきたこまち。それも秋に採れた物を天日干しにして自分の家で精米し、一粒一粒立つように最初は薪で炊き、仕上げは藁で火力調整した。そしてお茶は抹茶ですね。直射日光が当たらないようにして渋味成分が少なくなるにした覆下茶園で茶の木を栽培し、新芽だけを摘み、茶葉をムラのないように蒸気で蒸した後、茶葉を揉まないですぐに乾燥させ、茎や葉脈等を取り除き、柔らかな茶葉だけにした後、仕上碾茶を石臼で挽き、抹茶にし、適量適温の湯を入れ、茶筅で練り、飲みやすい濃さにした後にご飯に掛けた。そうでしょう?」

北島「お前よくそこまで読み取れるな!?凄いわ!」

藤原「これでも一流のフードファイターですから!」

北島「正直舐めてたわ。フードファイターって適当に喰ってるだけだと思ってた」

藤原「大食いは二流。ここまで出来て一流です!」

北島「でも俺の気持ちは読み取れないんだな」

藤原「仕方ないじゃないですか。自分の知り得ない文化だったんですから」

北島「知らなかったなら仕方ないけどさ……じゃあ次の食ったら帰れよ?」

藤原「どうしてそんなに帰らせたがるんですか?」

北島「朝からずっと居るからだよ!もう終電だし帰れよ!」

藤原「俺は今日、泊るつもりで来てたんですけど!?」

北島「今日、泊って明日も大量に飯を喰われたらたまったもんじゃないんだよ!」

藤原「良いじゃないですか!先輩の家、豪邸なんですから!」

北島「限度がある!何?お前、毎日、来るつもりだったの!?」

藤原「そうですけど?」

北島「ここで喰うんじゃなくて大会やテレビにでも出ろ!その方が儲かるだろ!」

藤原「大会やテレビに出るにしても、胃袋を広げる為のトレーニングとして大食いは常にしなくちゃいけないんです!」

北島「無料飯を喰おうとしてんじゃないよ!」

藤原「じゃあお金、払いますよ!いくらですか!?」

北島「ざっと計算して三十万円だよ!」

藤原「高っ!?賞金くらいするじゃないですか!」

北島「それを補う為に賞金を稼ぐんだろ!」

藤原「それにしてもですよ!俺と先輩の仲なんですから割り引いて下さい!」

北島「今ここで帰ったら無料で帰してやるよ!」

藤原「分かりましたよ……じゃあ次、食べ終わったら帰りますね」

北島「そうしてくれ」

手伝「(ぶぶ漬けを持って舞台上手から登場)お待たせしましたー」

藤原「あ、お手伝いさん。お米、後どれくらいあります?」

手伝「あと二合ですね」

藤原「じゃあそれ持ち帰りますんでタッパーか何かに入れてもらえます?」

手伝「分かりました。お茶も水筒に入れますね」

藤原「ありがとうございます!」

手伝「(舞台上手に退場)」

北島「残さず食べるつもりか」

藤原「当たり前でしょう」

北島「はぁ……もういいよ。お前、出禁な」

藤原「何でですか!?」

北島「さっきも言ったけど毎回、来られてこんなに飯を喰われたらたまったもんじゃないからだよ!」

藤原「そんなぁ……悲しくなってきたらまた腹気減ってきたんで食べますね(ぶぶ漬けを食べる)」

北島「神経、図太いな」

藤原「あー!美味い!良いもん食べてますね、先輩!」

北島「大したご馳走でも無いだろ」

藤原「(ぶぶ漬けを掻っ込む)あー!美味かった!ご馳走様でした!」

北島「お粗末様!」

手伝「(タッパーと水筒が入ったビニール袋を持って舞台上手から登場)お待たせしましたー」

藤原「ありがとうございます!(ビニール袋を受け取る)じゃあお邪魔しました!(舞台下手に退場)」

北島「お手伝いさん、塩」

手伝「ぶぶ漬け、塩気、足りませんでした?」

北島「違う!撒けって言ってんの!」

手伝「あ、もう来てほしくないですね?」

北島「当たり前だろ!」

手伝「(舞台下手に退場)」

北島「はぁ……疲れた……」

藤原「(舞台下手から登場)先輩」

北島「うわっ。何だ?」

藤原「この塩、沖縄産の高級の物を使ってますね?」

北島「お手伝いさん、そんな料理用の塩を投げたの!?しかも直で!?」

藤原「この塩も貰っても良いですか?」

北島「お前もう本当、帰れよ!」

―――終わり

『プロポーズ』



・登場人物


 北島

 藤原



・舞台


 居酒屋






 明転。


 居酒屋。テーブル一つに椅子二つ。テーブルの上にはビールが入ったジョッキとつまみ。

 北島、藤原、板付き。


北島「何?飲みっていつもお前ん家なのに」

藤原「あぁ、今日は美幸に聞かれたくない相談事があって」

北島「何?不倫関係?」

藤原「違う違う。美幸にプロポーズしようと思ってるんだけど、そのセリフの相談に乗ってほしいんだ」

北島「あぁ、そういう事?まぁ良いけど」

藤原「どういうのが良いかな?」

北島「まぁ、お前プロ野球選手だし、それっぽいのが格好良いんじゃない?」

藤原「例えば?」

北島「例えば……そうだな……こう、ホームラン打ったら、とかさ」

藤原「あぁ、成程ね。じゃあいくつか思い浮かんだわ」

北島「早いな」

藤原「じゃあ一個目ね?……明日の試合で誰かホームラン打ったら結婚してくれ」

北島「お前、打てよ!何で他人任せなんだよ!?」

藤原「そう言うと思って別のもある」

北島「じゃあ言うなよ」

藤原「二個目ね?……俺がいつかホームランを打ったら結婚してくれ」

北島「いつにすんだよ!?確定しろよ!」

藤原「あぁ。いつかホームランを打つ。結婚してくれ」

北島「そこじゃねぇ!もしも打ったらじゃなくて、打つ事は確定してんだよ!」

藤原「そう言うと思ってもう一つある」

北島「だからそう思ってるなら最初から言うなよ」

藤原「最後ね?……結婚してくれたらホームランを打つ。結婚してくれ」

北島「結婚しなくてもホームランは打つんだよ!何で脅してんだよ!?」

藤原「駄目かぁ……もうお手上げ」

北島「シンプルに、明日の試合で俺がホームランを打ったら結婚してくれ。で、良くない?」

藤原「その発想は無かったなぁ」

北島「何でだよ」

藤原「でもそんなシンプル過ぎるプロポーズで良いかな?」

北島「こういうのはシンプルで良いんだよ。凝り過ぎて失敗したら目も当てられないだろ」

藤原「そういうもんかぁ……」


 暗転。


 野球場の歓声。


 明転。


 居酒屋。

 北島、藤原、板付き。


北島「で、昨日の試合でプロポーズはどうだった?」

藤原「ちょっと考えさせてって言われた……」

北島「何で?」

藤原「まず一昨日、お前と飲みが終わった後、薔薇の花束を買って、以前から用意しておいた婚約指輪を美幸に渡しながら『明日の試合で俺がホームランを打ったら結婚してくれ』って言ったんだよ」

北島「おぉ、言えたのか」

藤原「うん。そしたら美幸が『まずはベンチ入りしないと……』って言われちゃってさ……」

北島「え?お前、ベンチ入りすらしてなかったの?」

藤原「去年、新入りにやられた。でも昨日は当日になって二人、体調不良で出られなくなったから急遽、出場する事が出来たんだ」

北島「あっそー。良かったね。で?」

藤原「見事ホームランを打てたんだけど……」

北島「凄ぇじゃん!」

藤原「でもそこからが問題でさ……」

北島「何で?スタメンに出れてホームラン打てたんでしょ?」

藤原「俺の打ったホームランボールが美幸の座席に真っ直ぐに飛んで行って、ビールを買おうとして目を離してた美幸の頭に直撃しちゃって……」

北島「マジで?それで破談になったの?」

藤原「破談と言うか……『ちょっと考えさせて』って保留にされた……」

北島「あぁ、まぁ、その……お気持ちお察しする」

藤原「そこで相談なんだが」

北島「何?」

藤原「野球選手らしい謝罪の言葉を考えてほしい」

北島「素直に『ごめんなさい』って言えば?」

藤原「それじゃあ格好付かないだろ。格好良く謝りたいんだ」

北島「既に格好悪いんだから今更、何を格好付ける必要があるんだ?」

藤原「ただ謝ったって許してくれないだろ。だったら、またホームランを打ったら許してくれ、ってのはどうだろうか?」

北島「まずはベンチ入りしないと……」

藤原「美幸と同じ事を言うな!」

北島「事実だろ!」

藤原「じゃあどうしろって言うんだよ!?」

北島「知らねぇよ!普通に土下座して謝ってこい!後、治療費もお前が出せばもう何も言ってこねぇだろ!」

藤原「分かったよ!」


 暗転。


 野球場の歓声。


 明転。


 居酒屋。

 北島、藤原、板付き。


北島「で?彼女さんは許してくれたのか?」

藤原「ベンチ入りしたら許してくれるって……」

北島「そっか。で?」

藤原「二軍落ちした……」

北島「あー、もう滅茶苦茶だよ……」























―――終わり

『出席番号』



・登場人物


 水田(生徒)

 藤原(教師)



・舞台


 学校の教室






 明転。


 学校の教室。黒板と教卓一つに机一つ、椅子一つ。教卓の上には教科書。机の上には教科書とノート、筆箱。

 水田、席に着いている。藤原、教卓の前に立っている。


藤原「はい、じゃあこの問題を誰かに解いてもらおうかな。えー、今日は二月二十八日なので、出席番号二十八番、水田」

水田「はぁ……またですかぁ……?」

藤原「何だ?何か問題があるか?」

水田「今月だけでもう何回目ですか?」

藤原「さぁ?気にした事無いけど」

水田「もう数えるの嫌になるくらい指されてますよ?」

藤原「そんなにかなぁ?」

水田「二月一日の時、俺を指しましたよね?」

藤原「そうだっけ?」

水田「そうですよ。二×一で二だから誕生日の二日の俺を指したんですよ。で、二月二日の時、俺を指しましたよね?」

藤原「そうだったっけ?」

水田「そうですよ。俺の誕生日だから俺を指したんですよ。二月四日の時も俺を指したんですよ?」

藤原「覚えてないなぁ」

水田「四を二で割ると二だから誕生日の俺を指したんですよ。で、二月七日に指したんですよ?」

藤原「よく覚えてるなぁ」

水田「二七、十四で出席番号十四番の枝村がその時、休んでたから更に二倍して二十八番の俺を指したんですよ。で、二月十四日にまた俺を指したんですよ?」

藤原「凄い記憶力だなぁ」

水田「二×十四で二十八だから二十八番の俺を指したんですよ。二月二十六日にも俺を指したんですよ?」

藤原「ほうほう。それで?」

水田「二足す二十六で二十八だから二十八番の俺を指したんですよ。で、昨日の二月二十七日にも俺を指したんですよ?」

藤原「どういう理由で?」

水田「昨日、出席番号二十七番の小川さんが休んでたから翌日の俺を指したんですよ」

藤原「流石、秀才の事だけあるわ!素晴らしい記憶力!」

水田「何でどれも覚えてないんですか!?結構な頻度で指されてるんですよ!?」

藤原「無意識だから仕方ないだろ」

水田「仕方ない訳あるかい!いっつも俺が指されてるんですよ!?」

藤原「でも毎日じゃないだろ?」

水田「そらそうですけども!」

藤原「毎日お前を指してるんだったら問題だろうけど、たまたまだろ?じゃあ良いじゃないか」

水田「良くはない!もっと公平に指して行ってほしい!」

藤原「えー?でもお前、成績良いじゃん。答えられるなら問題無くない?」

水田「それは先生がいっつも難癖付けて俺を指すから勉強せざるを得ない状況なんですよ!」

藤原「分かった分かった。別の人指すから。えーっと、今日は水曜日だから、水曜日の水で水田!」

水田「もういい加減にしてくれ!」

―――終わり

『四字熟語』



・登場人物


 北島

 藤原

 枝村



・舞台


 北島宅



※枝村は複数人でセリフを分担したり、少し増やしてくれても構いません。






 明転。


 北島宅。テーブル一つに座布団三つ。テーブルの上には缶ビールとつまみ。

 北島、藤原、枝村、板付き。


北島「なーんかこの面子だと話題ももう尽きた感じだな」

枝村「そんな時は藤原の出番よ」

北島「何?何か取って置きの話題でもあんの?」

藤原「仕方ねぇなぁ」

枝村「いよっ!待ってました!」

藤原「とある町に人の金を盗んで生活をしている男がいた。その男は盗んだ金でキャバクラに通っていた。そんな彼はとあるキャバ嬢に入れ込み、次第に体の関係を持つようになった。ある日いつものようにホテルに行くと、睡眠薬を飲まされ、財布の中身を全て抜き取られてしまった。男は酷く怒ったが、周りからは、いつも自分が人様から盗んでたんだろう?仕方ない事だ。と言われてしまった。そう、まさに『因果応報』ってね」

枝村「おぉ~!」

北島「……ん?何か掛かってた?」

枝村「何が?」

北島「いや、どこが凄いのか分からなかったから……」

枝村「じゃあもう一つ話してくれよ。藤原」

藤原「仕方ねぇなぁ。とある会社の部長はそれまでやり手の営業マンだったんだが、昇進していくに連れて次第に態度が横暴になっていった。そして自分の仕事も部下に押し付け、仕事で些細なミスをした部下を叱りつけ、それによって部下達の信頼は失っていった。そして部下達の抗議によって専務や社長からも信頼を失った。そう、まさに『四面楚歌』ってね」

枝村「おぉ~!」

北島「だからどこが?何が面白いの?」

枝村「四字熟語を教えてくれるところ」

北島「何それ?そんなん俺でも出来るわ」

枝村「じゃあやってみてよ」

北島「一生に一度だけの機会。生涯に一度限りであること。生涯に一回しかないと考えて、そのことに専念する意。もと茶道の心得を表した語で、どの茶会でも一生に一度のものと心得て、主客ともに誠意を尽くすべきことをいう。これを一期一会という」

枝村「…………」

北島「どう?」

枝村「で?」

北島「で?とは?」

枝村「それは意味の説明だろ?」

北島「まぁそうだけど」

枝村「藤原は例文を出してるんだよ。意味の説明も兼ねてな。それなのにお前は意味だけ言って何ドヤ顔してんだ?」

北島「そこまで言うかね!?酷くない!?」

枝村「藤原。手本をもう一度、見せてやれ」

藤原「仕方ねぇなぁ。例の感染症の影響でとあるブラック会社がテレワークを導入した。通勤時間が往復二時間くらいだった社員達はゆっくり体を休める事が出来るぞ、と喜んでいた。しかし社長は、通勤時間が無くなった分、働けるだろうという事で通勤時間の二時間分、多く働かせられる事になった。そう、まさに『本末転倒』ってね」

枝村「そうそうそう!これこれこれ!こういうのだよ!分かるか!?」

北島「分かんねぇよ!何が面白いのコレ!?」

枝村「この例文が良いんだよ!分かんねぇかな!?このセンスが!?」

北島「えぇ……?全然分かんない……てか、さっきから絶望系の例文しか出してないけど大丈夫か?」

藤原「何が?」

北島「何か会社であった?」

藤原「いや?特に」

北島「そうか。せめてもっと明るい話題にしてほしかったなぁ……」

藤原「じゃあ何か一つ明るい話でも。とある陶芸家はとても美しい壺を作る事で有名だった。弟子達はどうしたらこんなにも素晴らしい作品が出来るのだろうと考え、次第に師匠を越えたいだけの気持ちになって躍起になって作品を作り続けた。しかし一向に上手くならないどころか、悪くなる一方だった。それを見兼ねて師匠は言った。純粋な心に、純粋な作品が生まれるのだと。邪念があっては上達しないと。そう、まさに『明鏡止水』ってね」

枝村「おぉ~!」

北島「やっぱり病んでる?」

藤原「何で?」

北島「いや、何か良い話風だったけど、先の三つの話が追い込まれる話で今さっきのが邪念がうんたらかんたらって内容だったから、疲れてるのかなって」

藤原「まぁここ最近、毎日、二時間くらいしか寝れてないからなぁ」

北島「不眠症?」

藤原「いや、始発で行って終電で帰る生活を送ってる」

北島「寝よう?今日はもう良いから、俺のベッドで良いから寝よう?」

藤原「何する気?」

北島「他意は無い。ただ単純にお前の体調が心配なだけ」

藤原「俺は大丈夫だよ」

北島「そうか?でも無理するなよ?」

藤原「ありがとう」

枝村「どうだ?参考になったか?」

北島「まぁ言わんとしてる事は伝わった」

枝村「じゃあ北島の渾身の四字熟語まで3,2,1、キュー!」

北島「えぇ……?じゃあ……コホン。ある男が弁護士を目指してとある大学の法学部に通っていた。大学四年生の時に司法試験を受けたが落ちてしまった。そうしたら親友から、何度も頑張って諦めるな。努力はいずれ叶う。と言われ、その後何年も頑張って司法試験を受け続けて、八年目にようやく司法試験に受かり、見事、弁護士になった。その人生はさながら『七転八起』だった」

枝村「おぉ~!」

藤原「やるな……!」

北島「何このやり取り?」

枝村「こういうのだよ!こういうのが聞きたかったんだ!」

藤原「俺も負けてられないな」

北島「まるで『奇想天外』だな。このやり取り」

藤原枝村「おぉ~!」

北島「それはもういい!」




―――終わり

『何かあったの』



・登場人物


 北島(スーパー店員)

 藤原(警察)

 枝村(公安警察)

 西岡(FBI)

 小川(CIA)

 儀間(ICPO)

 高橋(MI6)

 藤縄(CSI)

 菅原(NSA)

 大島(CDC)

中山(NCIS)

板垣(DEA)

福島(ATF)

藤沢(DHS)

川田(IRS)

島崎(FEMA)

今井(ICE)

佐藤(万引き犯)

 村田(スーパー店員)



・舞台


 スーパー





 明転。


 スーパー。

 北島舞台上手で立っている。佐藤、舞台下手から登場し、舞台上手に退場しようとする。


北島「(無線で)例のターゲットが出てきました。はい。会計は済ませてありません。これから確保に向かいます。(佐藤に)お客さん」

佐藤「あ?何?」

北島「まだ会計、済ませてない商品がありますよね?」

佐藤「そんなもん無ぇよ」

北島「万引きGメンが見てたんだよ。さ、事務所まで来い(佐藤の腕を掴む)」

佐藤「離せよ!」

北島「いいから来い!」

藤原「(舞台下手から登場)何かあったの?」

北島「あ、お客様には関係ありませんので」

藤原「警察だけど(警察手帳を見せる)」

北島「あ、警察の方でしたか」

枝村「(舞台上手から登場)何かあったの?」

北島「あ、お客様には関係ありませんので」

枝村「公安警察だけど(警察手帳を見せる)」

北島「あ、公安警察の方でしたか」

西岡「(舞台下手から登場)何かあったの?」

北島「あ、お客様には関係ありませんので」

西岡「FBIだけど(身分証を見せる)」

北島「あ、FBIの方でしたか」

小川「(舞台上手から登場)何かあったの?」

北島「あ、お客様には関係ありませんので」

小川「CIAだけど(身分証を見せる)」

北島「あ、CIAの方でしたか」

儀間「(舞台下手から登場)何かあったの?」

北島「あ、お客様には関係ありませんので」

儀間「ICPOだけど(身分証を見せる)」

北島「あ、ICPOの方でしたか」

高橋「(舞台上手から登場)何かあったの?」

北島「あ、お客様には関係ありませんので」

高橋「MI6だけど(身分証を見せる)」

北島「あ、MI6の方でしたか」

藤縄「(舞台下手から登場)何かあったの?」

北島「あ、お客様には関係ありませんので」

藤縄「CSIだけど(身分証を見せる)」

北島「あ、CSIの方でしたか」

菅原「(舞台上手から登場)何かあったの?」

北島「あ、お客様には関係ありませんので」

菅原「NSAだけど(身分証を見せる)」

北島「あ、NSAの方でしたか」

大島「(舞台下手から登場)何かあったの?」

北島「あ、お客様には関係ありませんので」

大島「CDCだけど(身分証を見せる)」

北島「あ、CDCの方でしたか」

中山「(舞台下手から登場)何かあったの?」

北島「あ、お客様には関係ありませんので」

中山「NCISだけど(身分証を見せる)」

北島「あ、NCISの方でしたか」

板垣「(舞台上手から登場)何かあったの?」

北島「あ、お客様には関係ありませんので」

板垣「DEAだけど(身分証を見せる)」

北島「あ、DEAの方でしたか」

福島「(舞台下手から登場)何かあったの?」

北島「あ、お客様には関係ありませんので」

福島「ATFだけど(身分証を見せる)」

北島「あ、ATFの方でしたか」

藤沢「(舞台上手から登場)何かあったの?」

北島「あ、お客様には関係ありませんので」

藤沢「DHSだけど(身分証を見せる)」

北島「あ、DHSの方でしたか」

川田「(舞台下手から登場)何かあったの?」

北島「あ、お客様には関係ありませんので」

川田「IRSだけど(身分証を見せる)」

北島「あ、IRSの方でしたか」

島崎「(舞台上手から登場)何かあったの?」

北島「あ、お客様には関係ありませんので」

島崎「FEMAだけど(身分証を見せる)」

北島「あ、FEMAの方でしたか」

今井「(舞台上手から登場)何かあったの?」

北島「あ、お客様には関係ありませんので」

今井「ICEだけど(身分証を見せる)」

北島「あ、ICEの方でしたか」

佐藤「ちょ、ちょっと待って!事を大きくしないで!?俺、ただの万引き犯だから!」

北島「こんなに来たんだ。大人しく捕まれ!」

佐藤「分かった分かった!俺が悪かったって!大人しく自首するから国際問題にしないで!」

北島「やっと事の重大さに気付いたか」

佐藤「何かよく分からないけど、世界各国から凄い団体がここに集まってきてるのは分かった!もうしないから!反省するから!」

北島「じゃあとりあえず事務所に行こうか。(無線で)村田さん。お願いします」

村田「(舞台下手から登場)さ、行こうか」

佐藤「はい……(村田と共に舞台下手に退場)」

北島「皆さーん!ご協力ありがとうございましたー!」

藤原枝村西岡小川儀間高橋藤縄菅原大島中山板垣福島藤沢川田島崎今井「はーい!」

北島「これからもこうやって万引き犯を捕まえていきましょー!」

藤原枝村西岡小川儀間高橋藤縄菅原大島中山板垣福島藤沢川田島崎今井「はーい!」


―――終わり

『いつもの』



・登場人物


北島

藤原

店員



・舞台


居酒屋







明転。


居酒屋。お座敷にテーブル一つに座布団二つ。後方には「居酒屋 いつも」「会員『いつもの人』」と書かれた札。

北島、藤原、板付き。


藤原「ここよ。俺が最近、通ってる居酒屋」

北島「よく来んの?」

藤原「見付けてからは毎日」

北島「はぁん?常連さんなんだ?」

藤原「まぁね」

店員「(おしぼり二つとお通しを持って舞台下手から登場)おしぼりとお通しでーす」

北島「あ、どうもー」

藤原「(懐から会員カード『いつもの人』を見せる)」

店員「あ、いつもの方ですね?いつもありがとうございます」

藤原「いえいえ」

店員「『いつもの』で宜しいですか?」

藤原「うん。『いつもの』で」

店員「畏まりましたー(舞台下手に退場)」

北島「本当に常連だったんだな」

藤原「何で?」

北島「『いつもの』で通じるなんて、と思ってさ」

藤原「それがこの店の良い所よ」

店員「(焼き鳥とビールを持って舞台上手から登場)お待たせしましたー。いつものでーす」

北島「どうもー」

店員「それではごゆっくりー(舞台下手に退場)」

藤原「おっ、今日は焼き鳥かぁ」

北島「え?」

藤原「じゃあ食べようか」

北島「ちょっと待って?いつものじゃないの?」

藤原「いつものだよ?」

北島「じゃあ何で焼き鳥だって知らなかったみたいな言い方したの?」

藤原「そりゃいつも同じのが出るとは限らないからな」

北島「意味が分かんないんだけど。どういう事?いつもここに来てるんじゃないの?」

藤原「まぁ、さっきも言ったけど、最近はね」

北島「いつから通ってんの?」

藤原「つい三日前かな」

北島「は?じゃあ全然、常連じゃないじゃん」

藤原「そう言われると何も言えない」

北島「でも『いつもの』で通じてたよな?あれはどういう事?」

藤原「この店の商品名が『いつもの』シリーズなんだよ」

北島「いつものシリーズ?」

藤原「ただの『いつもの』なら所謂、何かしらの余り物が出てくる」

北島「他は?」

藤原「『いつもの肉』なら何か肉料理が、『いつもの魚』なら何か魚料理が、『いつものサラダ』なら何かその日によって違うサラダが出てくる」

北島「はぁん?だから今日はただの『いつもの』にしたのか」

藤原「そういう事」

北島「で?これはコース料理なの?」

藤原「そう。何が出てくるか分からない」

店員「(焼き鳥を持って舞台下手から登場)お待たせしましたー。焼き鳥でーす(舞台下手に退場)」

藤原「おっ、これも美味そう」

北島「また焼き鳥?」

藤原「今日はそうみたいだな」

店員「(焼き鳥を持って舞台上手から登場)お待たせしましたー。焼き鳥でーす」

藤原「おっ、今日は焼き取り尽くしかぁ」

北島「ちょっと店員さん」

店員「何でしょう?」

北島「何で焼き鳥ばかり出てくるんですか?」

店員「今日は急遽、予約のお客様がキャンセルになってしまったので在庫処分です」

北島「少しはオブラートに包みましょうよ……」

店員「そもそもここは焼き鳥メインのお店ですから」

北島「でも他の肉料理とか魚料理とか出すんでしょ?」

店員「お昼とかは定食で出したりしますね」

北島「あっそう」

店員「ではこちら伝票ですー。ごゆっくりー(舞台下手に退場)」

藤原「じゃあ喰うか」

北島「そうだな」

藤原「あ、ここは俺が払うから」

北島「え?いやいや。こんなに大量の焼き鳥を注文したんだから割り勘で行こうよ」

藤原「大した額じゃないから」

北島「えー?そんな事無いでしょー……って、五百円!?五千円ですらないの!?」

藤原「さっきも店員さんが言ってた通り、在庫処分だから安いんだよ」

北島「ただの『いつもの』ってそういう裏事情があんのね……?」

藤原「そういう事。二百五十円を貰ったところで小銭が増えて逆に困る」

北島「そうか。じゃあ、ご馳走様です」

藤原「はいよ」

北島「(焼き鳥を食べる)美味っ!?何コレ!?」

藤原「そう。値段の割に美味いんだよ、ここ」

北島「明日も来ようかな?」

藤原「あ、じゃあ俺も行く」


暗転。


明転。


居酒屋。

北島、藤原、板付き。


北島「すみませーん」

店員「はーい(舞台下手から登場)。お決まりでしょうか?」

北島「いつものお願いします」

店員「あー、すみません。今日は切らしてまして」

北島「あちゃー。そうですかー……」

店員「代わりに『いつものご馳走』ならありますよ?」

北島「いつものなのかご馳走なのか分かりませんね?」

店員「ちょっとお値段は張っちゃうんですが、それでも良いなら……」

北島「どうする?」

藤原「どれくらいしますか?」

店員「大体二千円くらいですね」

北島藤原「意外と安い……」

北島「それくらいなら、なぁ?」

藤原「うん。じゃあそれ二つで」

店員「ありがとうございます。畏まりました。少々お待ち下さい?(舞台下手に退場)」

北島「ごちそうって何だろうな?」

藤原「それこそ来てからのお楽しみだろ?」

北島「そうだな」

店員「(舞台下手から焼き鳥を持って登場)お待たせしましたー。ごちそうの焼き鳥でーす」

北島「なんだ。昨日と同じ焼き鳥か……」

藤原「まぁまぁ。美味しいんだから良いじゃないか」

店員「まま、一口どうぞ?」

北島「頂きます(焼き鳥を食べる)……美味っ!?」

藤原「マジで?……美味っ!?何これ!?」

店員「比内地鶏です」

藤原「比内地鶏って、あの高級鶏の?」

店員「そうです」

北島「え?あれって一人前四千五百円くらいするやつですよね……?」

店員「そうです。今日はこれのコースです」

藤原「本当に二千円で良いんですか……?」

店員「いやー。実は発注で一桁、間違えちゃって……今日で捌き切らないと腐っちゃって廃棄処分しなきゃいけないんですよー」

北島「だからオブラートに包みましょうよ……」

店員「包んでも良いですけど、味が薄くなりますよ?」

北島「そういう意味じゃなくてですね……まぁ良いです。忘れて下さい」

店員「では良いですか?」

北島藤原「はい。お願いします」

店員「畏まりましたー(舞台下手に退場)」

北島「いつもの雰囲気に慣れてきたよ」

藤原「お前もいつもの人になったもんな」

店員「(舞台下手から登場)こちら『いつものサービス』のビールになりまーす」

北島「え?ビールをジョッキでサービスしてもらっちゃって良いんですか?」

店員「はい。賞味期限が今日なんで。今日が後三時間で終わっちゃうんで早く処理しないといけないんですよー」

北島「だからオブラートに包んで下さいよ!」




―――終わり


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