コント集12
コント集12
111・・・リアクション
112・・・アンケート
113・・・握手会
114・・・借金
115・・・リポーター
116・・・上下関係
117・・・レンタルDVD
118・・・禁煙セミナー
119・・・三人の彼女
120・・・反抗期
『リアクション』
・登場人物
北島
藤原
枝村
西岡
小川
儀間
米山
・舞台
ゲーム部部室(大学)
明転
ゲーム部部室(大学)。テーブル一つにジェンガとトランプ。
北島、藤原、枝村、西岡、小川、儀間、米山、板付き。ジェンガをしている。
北島「(ジェンガを引き抜く)……よーしよしよし」
藤原「おー」
枝村「上手い上手い」
西岡「北島、ジェンガ上手いよなー」
北島「上に乗せるまでが勝負……!(乗せる)よし!行けた!」
小川「次は私ね……」
儀間「ガンバー」
米山「慎重にね」
小川「(ジェンガを崩す)」
※同時に。
北島「おっと」
藤原「オーマイガー」
枝村「ジーザス」
西岡「ガッデム」
小川「シット」
儀間「アウチ」
米山「ウップス」
北島「お、オーマイガー?何て?」
藤原「どした?」
北島「にや、何か皆それぞれリアクションが違う事を一斉に言ったから」
枝村「そりゃ違う人が言ってんだからリアクションは異なるだろ」
北島「そらまぁそうなんだけど……ちなみに皆なんて言ったの?」
藤原「オーマイガー」
枝村「ジーザス」
西岡「ガッデム」
小川「シット」
儀間「アウチ」
米山「ウップス」
北島「よくもまぁそんな言葉が被らないね」
西岡「人によって感情は様々だからね」
北島「感情……?ちなみに皆どういう感情で言ったの?」
藤原「ここまで積み上げてきたのになんてこった、みたいな」
枝村「畜生、みたいな」
西岡「何やってんだよ、みたいな」
小川「失敗したー、みたいな」
儀間「崩れて痛っ、みたいな」
米山「吃驚した、みたいな」
北島「じゃあそう日本語で言えば良いじゃん。何でわざわざ英語で?」
藤原枝村西岡小川儀間米山「それはほら、皆、帰国子女だからじゃない?」
北島「えぇ!?そうなの!?」
藤原枝村西岡小川儀間米山「そだよー」
北島「知らなかった!じゃあ英語堪能なんだね?」
小川「まぁそこそこ?」
儀間「自慢出来る程でもないけどね」
北島「いやいや、自慢できるって。じゃあこれからは英語の授業で分からない事は聞く事にするわ」
米山「アテにされても困るけどねー」
北島「頼りにしてるんだよ」
藤原「なぁ、いい加減ジェンガ飽きた。トランプしようぜ(トランプをシャッフルする)」
枝村「そうだな。何する?」
西岡「この人数だし、ババ抜きする?」
小川「良いねぇ」
儀間「やろやろ」
米山「北島君もそれで良い?」
北島「良いよ」
藤原「(トランプを配る)よーし、やるか。オーマイガー。いきなりババ持ちかよ」
北島「言うなよ」
枝村「(藤原から一枚抜く)ジーザス。ババ引いちまった」
北島「だから言うなよ」
西岡「(枝村から一枚抜く)ガッデム。ババ引いちまった」
小川「(西岡から一枚抜く)シット。ババ引いちゃった」
儀間「(小川から一枚抜く)アウチ。ババ引いちゃった」
米山「(儀間から一枚抜く)ウップス。ババ引いちゃった」
北島「(米山から一枚抜く)…………はい」
藤原「なぁ、ババ引いた?」
北島「言う訳無いだろ」
藤原「って事は引いたな~?オーマイガー!また巡って来たぜ!」
※同時に。
枝村「ジーザス」
西岡「ガッデム」
小川「シット」
儀間「アウチ」
米山「ウップス」
枝村西岡小川儀間米山「ドンマイ」
北島「なぁ、それって必ず言わないといけないの?」
藤原枝村西岡小川儀間米山「何が?」
北島「そのリアクションだよ」
枝村「必ずって訳じゃないけどな」
北島「でも言ってるじゃん」
西岡「条件反射みたいなもんだよ」
小川「あれだよ。熱いヤカン触って『熱っ!』って言っちゃうのと同じだよ」
儀間「北島君でも言っちゃうでしょ?」
北島「まぁ、言っちゃうけど……それにしたってオーバーリアクション過ぎない?これじゃあババ抜きずっと終わらないよ」
米山「それはババがずっと回ってるからであってリアクションのせいじゃないと思うよ」
北島「いきなり正論を言うなよ」
米山「ケチ付けてきたのはそっちじゃん」
北島「だから正論を言うなって……」
枝村「なぁ、ババ抜き続けても良い?」
北島「良いけど……あんまリアクションすんなよ?」
枝村「分かった分かった。皆も良いな?」
藤原西岡小川儀間米山「うん」
暫く無言でババ抜きをする。
北島「……なぁ、何か喋れよ」
西岡「何かって何?」
北島「無言過ぎるって」
米山「リアクションすんなって言ったの北島君じゃん」
北島「にしてもだって。ババ引いた時はリアクションしなくても良いっていうか、そういう楽しみ方だと思うんだけど、札が揃った時にすら何もリアクションしないってどういう事?嬉しくないの?」
儀間「嬉しいよ?」
北島「じゃあそういうリアクションしてくれよ」
米山「でもリアクションすんなって言ったの北島君じゃん」
北島「楽しめてるのか不安になるって」
藤原枝村西岡小川儀間米山「楽しいよ?」
北島「そ、そうかい……そうだったのか……?」
藤原「てかお前だってダンマリだったじゃないか」
北島「あれは皆を観察してたんだよ。またオーマイガーとか何とか言わないかなって」
枝村「言うなって言われたから黙ってたんだよ」
北島「でも引き算の仕方が悪いって」
西岡「俺達からリアクションを取ったらこうなるって事が分かったでしょ?」
北島「極端過ぎる。にしてもアレだな、それだけボキャブラリー豊富なメンバーなのにエフユーシーケーって言わないんだな」
小川「エフユーシーケー?あぁ、ファッ……アレはな、かなりキツイ言葉なんだよ」
西岡「軽々しく言うもんじゃないよ」
儀間「日本じゃそこまでの認知度じゃないけど、海外で使ったら最悪キルされるよ」
北島「何で英語で言ったの?帰国子女だから?」
米山「放送コードに配慮したんだよ」
北島「いきなりメタ発言止めろよ」
藤原「で、結局、俺達にどうしろと?」
北島「楽しいなら楽しいなりのリアクションしてって言ってんの」
※同時に。
藤原「オーマイガー」
枝村「ジーザス」
西岡「ガッデム」
小川「シット」
儀間「アウチ」
米山「ウップス」
藤原枝村西岡小川儀間米山「分かったよ」
北島「それどういう気持ちで言ってんの?」
藤原枝村西岡小川儀間米山「面倒臭い」
北島「もう友達辞めようかなぁ……」
藤原「オーマイガー」
枝村「ジーザス」
西岡「ガッデム」
小川「シット」
儀間「アウチ」
米山「ウップス」
北島「もうそれはいい!」
―――終わり
『アンケート』
・登場人物
北島
藤原
・舞台
代々木公園
明転。
代々木公園。
北島、板付き。
北島「(スマートフォンで電話を掛ける)……あ、もしもし?俺だけど。今日ってさぁ、午後0時に代々木公園で良いんだよね?お前、今どこにいんの?うん、うん……えぇ?家ぇ?分かったよ。待ってるから、ダッシュで来いよ。後、昼飯、奢りな。腹減らして待ってるからよ。二十分で来れる?分かった。早くしてくれよ?あい。あーい(電話を切る)どうすっかなぁ。微妙な時間、暇になっちゃったよ……」
藤原「(舞台上手から登場)あの~、ちょっとお時間宜しいですか?」
北島「はい?」
藤原「私、アンケートやってまして~」
北島「はぁ」
藤原「もしお時間あるようでしたらちょっとご協力お願いしたいんですけど~」
北島「今、連れ待ってるんですよ」
藤原「すぐ!すぐ終わるんで!」
北島「本当にすぐ?」
藤原「はい!」
北島「どれくらい?」
藤原「まぁ2~3、4、5、6、7、8分くらいですかね」
北島「結構掛かるじゃねぇか」
藤原「もうあ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っと言う前に終わるんで!」
北島「だから結構掛かるじゃねぇか」
藤原「すぐ!すぐ終わるんで!お願いします!」
北島「はぁ……分かりました。連れが来たらすぐに終わりにしますからね?」
藤原「はい!ではこれ私の名刺です(名刺を渡す)。藤原と申します」
北島「はい(名刺をしまう)」
藤原「私、渋谷の二十代OLを対象にアンケートをさせて頂いているのですが……」
北島「一個も当てはまらねぇよ!今すぐ渋谷に行って二十代OL探してこい!」
藤原「えぇ!?違うんですか!?」
北島「お前には俺がどう見えてんの!?俺、男だし、三十代だし、ここそもそも代々木だし!」
藤原「あぁ、もうそこはどうでも良いんです!どこだって誰だって適当で良いんです!」
北島「言葉に気を付けろ!で?何?何のアンケート?」
藤原「職業の意識調査です」
北島「意識調査?どういう事?」
藤原「端的に言うと、今の職業はどんなもので、どれだけ満足しているか、という事をお聞きします」
北島「ほーん?まぁ良いけど」
藤原「ではまずお名前をお聞かせ下さい」
北島「北島康介だ」
藤原「北島さんですね。ご年齢は?」
北島「35歳だ」
藤原「えーっ!?見た目お若いですねぇ!」
北島「そ、そう?幾つに見える?」
藤原「34歳かと思いました!」
北島「大して変わらんわ!」
藤原「次にご職業をお聞きしたいのですが……お客様はどこの反社の組の方ですか?」
北島「全然、違うわ!どこを見てそう言ってんだ!俺はパティシエだよ!」
藤原「あっ、パティシエなんですか!道理でふくよかなボディを……」
北島「言い方、気を付けろ!」
藤原「あっ、すみません。肥満体で……」
北島「言い換えても駄目だよ!デブって言いたいのか!」
藤原「あぁ!そうですそうです!」
北島「何だとお前!?もういい!俺は行く!」
藤原「待って下さい!先にコレ差し上げますから!(千円札を取り出して渡す)」
北島「……何コレ?千円?」
藤原「このアンケートに答えて頂いた方に謝礼で千円お渡ししてるんです!」
北島「……しょうがねぇなぁ~!もうちょっとだけだぞ?」
藤原「ありがとうございます!えー、パティシエとの事でしたが、お給料はどれくらいですか?」
北島「月収?年収?」
藤原「年収で」
北島「大体三百万円くらいかな」
藤原「へー、ほうほうほう……今の職場に派閥とかあると思うんですが」
北島「まぁ、あるねぇ」
藤原「饂飩派か蕎麦派かどっちの勢力に属してますか?」
北島「気にした事無ぇわ!」
藤原「どっちかと言えば!どっちかと言えばどっちですか!?」
北島「どっちかと言えば!?あー……まぁ、蕎麦かな」
藤原「成程……ちなみにコレ、う饂飩派に寝返る可能性は……?」
北島「あるよ?あるある。普通に饂飩、喰うし」
藤原「優柔不断なんですね」
北島「だから言葉に気を付けろ!それ程優柔不断でも無いだろ!」
藤原「今の職場にご不満はありませんか?」
北島「あ?あー……やっぱり給料かなぁ……」
藤原「と言うと?」
北島「重労働の割に給料が安いんだよね。もうちょっとあれば結婚とか考えるんだけど」
藤原「あっ、今、独身ですか?」
北島「うん」
藤原「寂しいですねー」
北島「言葉に気を付けろとあれ程言っておいただろう!」
藤原「(スマートフォンを取り出し、画面を見せる)コレ、私の家内と息子です」
北島「あら、綺麗な奥さんと可愛い息子さんだな。息子さんいくつ?」
藤原「5歳です」
北島「あらぁ~。もう可愛い盛りじゃないの~?」
藤原「いやいや~。もう言葉も達者になってきて父親の私に対しても生意気になってきてますよ~」
北島「そうなんだ~。大変だね~」
藤原「はい~」
北島藤原「あっはっはっはっは!」
北島「違う!一人身に対して馬鹿にしたろ!」
藤原「まぁまぁ、それは水に流して下さい」
北島「流せるか!何でお前の家族の写真を見せた!?」
藤原「家族を持つって良いでしょ~?って思って」
北島「自慢か!?」
藤原「はい!」
北島「清々しいにも程がある!逆に許したくなってきた!」
藤原「それにしてもパティシエって意外と安月給なんですねぇ」
北島「そういうお前はどうなんだよ。バイト風情が家族を養えるとは思えないが?」
藤原「バイトじゃないです。小川商事の正社員です」
北島「でもこれ下っ端の仕事だろ?」
藤原「私、専務です」
北島「はぁ!?その若さで!?」
藤原「そんな若く見えますかぁ~?もう今年で還暦ですよ~?」
北島「か、還暦……!?さっき俺の事、若いって言ってたけど、お前の方が全然見た目若いじゃん!」
藤原「そんな事無いですよ~」
北島「どんなアンチエイジングしたの!?」
藤原「よく食べよく寝る事、ですかね」
北島「えっ?でも奥さん、お若かったような……?」
藤原「三十路です。三十歳差の結婚でした」
北島「マジか!?どうやったらそうなったの!?」
藤原「婚活アプリですよ。年収三千万円って書いたら入れ食い状態でした」
北島「三千3万円も年収あんの!?えっ!?それで何でこんな仕事してんの!?」
藤原「もー、私の事はもう良いじゃないですか。質問してるのは私の方なんですから」
北島「あぁ、そうだったな……質問、どうぞ」
藤原「はい。役職ってどんな感じですか?」
北島「コミだね」
藤原「コミって何ですか?」
北島「見習い卒業って所。新米社員から平社員になった感じだね」
藤原「成程。その歳でようやく平社員ですか。しかも低収入。仕事、辞めたいと思った事ありませんか?」
北島「思った事無いねぇ。好きでやってるから」
藤原「それにしてもそのお歳で見習い卒業って、普通なんですか?」
北島「目指したのが遅かったってのもあるけど、俺は下手だったからね。なかなか見習いを卒業出来なかったんだよ。でも好きで続けたら、やっと昇給出来てな」
藤原「下手の横好きってやつですね!」
北島「好きこそものの上手なれ!」
藤原「えっ?」
北島「好きこそものの上手なれって言え!さっきから言葉選びが悪いんだよお前!よくそれで仕事やっていけてるな!?」
藤原「アンケート続けて三十年……これで喰って行けて来てますからね」
北島「専務ってそんな暇なの?こんな下っ端の仕事三十年もやり続けるなんて」
藤原「私は要領が良いので」
北島「時たま見せるそのマウント何?」
藤原「事実を言ってるだけです」
北島「それがマウントだって言ってんの!もういい!これ以上馬鹿にするなら俺は行く!」
藤原「あー!ちょっと!最後に!最後に一つだけ!」
北島「何だよ!?」
藤原「このアンケートをどこで知りましたか?」
北島「お前だよ!」 ―――終わり
『握手会』
・登場人物
小川
藤原
北島
・舞台
アイドル握手会場
明転。
アイドル握手会場。机一つ。
小川、板付き。
小川「また来て下さいねー!最後のファンの方、どうぞー!」
藤原「(舞台下手から登場)こんにちはー」
小川「こんにちは!お久し振りですね!」
藤原「お久し振りですー。って、俺の事覚えてます?」
小川「覚えてますよー!前回もライブ来てくれたじゃないですかー!」
藤原「俺、前回来てないですけど」
小川「あ、あれ?じゃあ記憶間違いですねー!あはは!すみません!」
藤原「気にしなくて良いですよ。ファンの方、沢山いますしね」
小川「すみません!では握手券を拝見致します!」
藤原「あっ、握手券は無くてー」
小川「あっ、いつも通りですねー。では今日もお話だけですか?」
藤原「はい」
小川「ではお喋り券拝見致します!」
藤原「はい(大量のお喋り兼を渡す)」
小川「凄っ……!?CD何枚買ったんですか……?」
藤原「三百枚ですかね」
小川「三百……!?じゃ、じゃあ一枚に付き三十秒なので、百五十分のお喋りになりますけど……」
藤原「はい、それで」
北島「(舞台上手から登場し、小川の後ろに着く)」
小川「何をお話ししますー?たっぷり時間ありますから、質問でも良いですよー?」
藤原「じゃあ単刀直入に聞きます。マネージャーさんとお付き合いされてますか?」
小川「えっ」
藤原「どうなんですか?」
小川「いや、そういうの無いので……私、アイドルですし……」
藤原「アイドルとかそういうのいいんで。実際どうなんですか?」
北島「はい、ストーップ。そこまで」
小川「北島マネージャー」
北島「お客様、そういったアイドルに対してのプライバシーに関わる事に関する質問はお控え下さい」
藤原「じゃあ付き合ってるんですか?」
北島「我々はあくまでビジネスパートナーです。そういった恋愛感情は持ち合わせておりません」
藤原「そうですか……よっしゃあああああああああああああ!!!」
小川「そこまで喜びます?」
藤原「だってこれからでしょう!?俺にもチャンスはあるって事でしょう!?」
小川「まぁ、その……私はファンの方とお付き合いするとは考えておりませんので……」
藤原「何言ってるんですか?貴方じゃありませんよ?」
小川「へ?」
藤原「北島さん、と仰るんですね」
北島「えっ?あ、はい。小川美幸のマネージャーの北島康介と申します」
藤原「北島康介さん……!素敵なお名前だ……!」
小川北島「へ?」
藤原「北島さん、俺は藤原正将と申します!」
北島「あぁ、はい」
藤原「北島さん、俺と、真剣に交際をして頂けませんか!?」
小川北島「はぁ!?」
藤原「どうでしょう!?」
北島「どうでしょうって……無理に決まってるじゃないですか」
藤原「何故!?」
北島「私、男色のケはありませんし」
藤原「俺が塗り替えてみせます!」
北島「貴方の事よく知りませんし」
藤原「付き合ってからお互いの事を知っていけば良いでしょう!」
北島「子供とか欲しいし」
藤原「養子縁組を申請しましょう!」
北島「めげないな!とにかく私は無理です!」
藤原「どうしてですか!俺はこんなにも好きなのに!」
小川「ねぇ、私もう帰って良い?」
北島「待って!一人にしないで!」
藤原「一人じゃありません!俺がずっと傍に居ます!」
北島「貴方はちょっと黙ってて!」
藤原「貴方じゃありません!藤原正将です!」
北島「分かりました!分かりましたから!藤原さんはちょっと黙ってて下さい!」
藤原「はい!」
北島「美幸さん!ちょっとこっち来て下さい!」
小川「何?」
北島「ちょっとこっちに(小川と共に少し離れる)。俺を一人にしないで!」
小川「だってあんなに真剣なのよ?期待に応えてあげたら?」
北島「そんな簡単に見捨てないで!俺と君の仲じゃないか!」
小川「あら、ビジネスパートナーでしょ?ビジネスパートナーのプライベートには干渉しないようにしてるの」
北島「このままじゃ俺の尻の穴が危険なんだよ!」
小川「あら、竿の方じゃない?」
北島「どっちも嫌だっての!頼むよ!恩人を助けると思って!」
小川「恩人とはおこがましいわね。分かったわよ。少し手助けしてあげる」
北島「ありがとう!美幸さん!(小川と共に元の位置に戻る)」
小川「藤原ー、さん?」
藤原「はい!」
小川「まずはお友達から始めたらどうでしょうか?」
北島「美幸さーん!?」
小川「何よ?」
北島「助けてくれるんじゃなかったの!?」
小川「『手助けしてあげる』って言ったのよ?これが妥協案じゃない?ねぇ、藤原さん?」
藤原「そうですよね!まずは段階を踏んでからでしたね!ごめんなさい!北島さん!」
北島「待て待て待て!私は認めませんよ!?第一、どこで私の事を知ったんですか!?」
藤原「あれはそう、一年前の事です。友人に誘われて好きでもない知りもしない興味も無い小川美幸さんのライブに行った時の事です。友人に握手券を渡されて小川美幸さんに握手しに行った時、後ろに控えてた北島さんを見て一目惚れしました」
小川「ガーン……私に興味無かったんかい……」
北島「そこじゃねぇ!一目惚れで私が最低な男だったらどうするつもりだったんですか!?」
藤原「そこは愛を以って矯正します!真人間になるまで徹底的に調教します!」
北島「そこまでして!?意志が固過ぎる!」
小川「はいはーい。じゃあ後はお二人さんで残り時間とことん話し合ってねー」
北島「待って!見捨てないで!」
藤原「俺の事も見捨てないで!」
北島「藤原さんは黙ってて!」
藤原「はい!」
北島「聞き分けは良いな!?」
小川「ばいばーい(舞台上手に退場)」
北島「待ってー!美幸さーん!」
暗転。
文字「2時間後」
明転。
北島、藤原、板付き。手を握り合って見詰め合っている。
小川「(舞台上手から登場)さーて、どうなったかな……!?えっ、ちょっ、どうしたの……?」
北島「あぁ、美幸さん。実は俺達……」
北島藤原「付き合う事になりました!」
小川「はぁ!?何があったの!?」
北島「何があったも何も、話し合った結果だよ」
小川「あ、そう……お、おめでてとう……」
北島藤原「ありがとうございます!」
小川「お、おう……」
藤原「じゃあ北島さん、またライブの握手会で」
北島「はい。お待ちしております。くれぐれもチケット予約は小川美幸でお願いしますね」
藤原「はい!ではまた!(舞台下手に退場)」
小川「ねぇ、本当に付き合うの?」
北島「それはまぁ追々って事で。真剣に付き合うかどうかはもう少し様子を見て、今は研修期間みたいなものです」
小川「あ、そう……」
北島「それにこれで定期的にお金を落としてくれる顧客が出来たし、恋人も出来たし、一石二鳥だよ」
小川「がめつっ」
―――終わり
『借金』
・登場人物
北島(金融屋)
枝村(負債者)
藤原(負債者)
西岡(金融屋)
・舞台
金融屋
・衣装
北島、西岡・・・スーツ
枝村・・・私服
藤原・・・私服に両脚と左腕にギプス、頭に血だらけの包帯、右目眼帯、松葉杖を突いている
明転。
金融屋。ソファ二つにテーブル一つ。
北島、枝村、板付き。
北島「枝村さぁん……困りますよぉ……?ちゃあぁんと期限通りに借金は返してもらわないとぉ……」
枝村「すみません……!来月にはまとまった金が入るので……!もう少し待って下さい!」
北島「それ何回目ですかぁ?もう一年はそうやって先延ばしされてこっちは迷惑してるんですよぉ?」
枝村「申し訳ありません!もう少し!もう少しだけ猶予を!」
北島「聞き飽きましたよ、その言葉……もう、出るとこ出ても良いんですよぉ?」
枝村「それだけは!それだけはご勘弁を!必ず!必ず返しますから!」
西岡「(舞台上手から現金が入った麻袋を持って登場)北島さん」
北島「何だ西岡?今、取り込み中だ」
西岡「あの藤原さんが借金を全額一括返済してきました」
北島「藤原?あぁ、三ヶ月前ウチで三千万借金した男か。本当に返してきたのか?利子付きで三千三百万超えだぞ?」
西岡「はい。こちらに(麻袋の中身をテーブルに広げる)」
北島「おぉ……マジか……ほら、こういう事ですよ、枝村さん。期限内にキッチリ耳を揃えて返すのが人の道理ってやつですよ。西岡、藤原さん、来てるのか?」
西岡「はい。すぐそこの扉の前に」
北島「入ってもらえ」
西岡「はい(舞台上手に退場)」
北島「枝村さんも今から来る人を見習って我が身を振り直して下さいね?」
枝村「……はい……」
西岡「(舞台上手から登場)どうぞ(舞台上手に退場)」
藤原「(舞台上手から登場)」
北島「藤原さん、この度はご返済……!?えっ!?どうしたんですかその体!?」
藤原「借金を返す為に払った代償です……」
北島「えぇ……?どういう事ですか……?」
藤原「ちゃんとした人達に頼んだので体は元に戻ります」
北島「ちゃんとした人達……?えっ、裏稼業って事ですか?」
藤原「それはトップシークレットで」
北島「えっ……やだ怖い……」
枝村「北島さん」
北島「はい?何ですか?」
枝村「俺、この人みたいに身を削って借金を返せば良いんですよね?」
北島「いやいや!まさに身を削って借金を返す必要は無いんですよ!?誠意を見せろって話で!」
枝村「でも誠意を見せるって借金を返すって事ですよね?じゃあ俺もこの人の事を見習って、体で払ってきます!」
北島「いやいやいや!そこまでしなくても!地道に働いて返せって言ってんですよ!」
枝村「地道に働くかぁ~……」
北島「そう!地道に働く!貴方、定職にも就かずギャンブル三昧。それで借金したんでしょう?地道に働いて少しずつで良いから返済していけば良いでしょう!?」
藤原「地道に働いて稼いできました!」
北島「藤原さんは黙ってて!絶対まともな職で稼いできたわけじゃないの目に見えて分かるから!」
枝村「藤原さんと仰いましたね?私にもその仕事教えて下さい!」
北島「止めとけって!絶対ヤバい仕事だから!」
藤原「簡単ですよ!競馬で一発当てたんです!」
北島「へ?じゃあその怪我は?」
藤原「競馬の帰りに事故りました!」
北島「狙われたとかじゃなくて?」
藤原「金が入ったバッグを狙われましたが、何とか死守しました!その時ボコボコにされて病院に搬送されました!」
北島「じゃあヤバい仕事をした訳じゃないんですね?」
藤原「まぁ、まともな仕事をした訳じゃないですけどね」
北島「あ、そう……」
枝村「藤原さん!どうしたら競馬で一発当てられますか!?」
北島「お前は一回ギャンブルから足を洗え!」
枝村「金を返せば一緒でしょう!?」
北島「高利貸しじゃないんだから地道に働けば返せるだろうが!」
藤原「まずは種馬と繁殖牝馬の配合で生まれた馬と実績とその馬の有利な馬場を捻出して計算すると……」
北島「お前も教えなくて良いよ!てかお前もギャンブルで借金したのかよ!?」
藤原「はい!クズなので!」
北島「そこの自覚はあるのか……でも自分の会社を興す為に借金したって言いませんでしたっけ?」
藤原「はい!そこはおかげさまでカバー出来ました!後は余ったお金で借金返済の為の金を作る為に競馬で大穴当てました!」
北島「ちなみにいくら当たったんですか?」
藤原「二億円です!」
北島「二億っ……!?へ、へぇ~、そうですか……」
枝村「藤原さん!是非、私に競馬の極意を教えて下さい!」
藤原「良いですよ~!じゃあ行きましょう!」
枝村「はい!」
北島「待て待て!枝村さん!貴方、来月にはまとまった金が入るんでしょう!?それで返せば良いじゃないですか!」
枝村「来月の競馬のレースで勝てばまとまった金が手に入るって意味です!」
北島「馬鹿か!」
枝村「はい!馬鹿です!」
北島「素直か!」
枝村「はい!素直な性格です!」
北島「皮肉だよ!」
藤原「じゃあ枝村さん、行きましょう(舞台上手に退場)」
枝村「はい!では北島さん、また来月!(舞台上手に退場)」
北島「あ、はい……」
暗転。
文字「一ヶ月後」
明転。
金融屋。
北島、枝村、板付き。枝村、パンツ一丁で土下座している。隣には畳んである私服。
北島「で?金は?」
枝村「用意出来ませんでした……」
北島「藤原さんから競馬の語気を学んだんじゃないんですか?」
枝村「一か八かで自分のフィーリングで大穴当てようとしたら有り金全部持って行かれました……」
北島「自分じゃなくて藤原さんを信じれば良かったのに……」
枝村「すみません……」
北島「もう百万やる(百万円を懐から取り出し、投げ渡す)。今度は藤原さんの言う事を聞いて、今度こそ借金を返す金を用意して下さい」
枝村「北島さん……!」
北島「でもこれは善意じゃありませんからね?これは借金に上乗せしますからね?」
枝村「ありがとうございます!必ず借金は返済します!」
北島「はいはい。早く金、作って来て下さい」
枝村「はい!ありがとうございます!このご恩は一生忘れません!(服を持って退場)」
暗転。
文字「一ヶ月後」
明転。
金融屋。
北島、枝村、西岡、板付き。枝村、パンツ一丁で土下座している。隣には畳んである私服。
北島「どうしてこうなった?」
枝村「騙されました……」
北島「誰に?」
枝村「藤原です……」
北島「藤原さんに?どういう事ですか?」
枝村「競馬で勝つには百万円の教材を買うよう言われて買いました……しかしその通りにやっても上手くいかず、有り金全て使い果たしました……」
北島「そうですか……じゃあ、仕方ないですね。裏に行ってもらいましょう」
枝村「そんな……!それだけはご勘弁を!」
北島「駄目です。西岡」
西岡「はい(枝村の服を拾い上げ、枝村を舞台上手に連れて行く)」
枝村「藤原が!藤原が悪いんです!俺は悪くなーい!(西岡と共に舞台上手に退場)」
北島「藤原さん」
藤原「(舞台下手から登場)はい」
北島「お怪我の方は?」
藤原「何とか回復に向かってます」
北島「それは良かった」
藤原「裏で何をするんですか?」
北島「何。少し眠ってもらって、起きた時には外国の離島で作業って話ですよ」
藤原「そうですか。相変わらず酷い事をしますね」
北島「藤原さん程では。わざわざ枝村さんを騙して金をせしめて沼に落とすなんて」
藤原「嘘は言ってませんよ?経験則に基づいた教材をそれなりの値段で売っていただけです」
北島「それにしたってたかが教材に百万円は無いでしょう」
藤原「百万円を貸したのは北島さんでしょう?それに、それだけの価値のある本を書いたつもりです」
北島「しかしよく続けられましたね。お金は大丈夫なんですか?」
藤原「北島さんの貸してくれたお金で起業した会社が元手ですからね。北島さんのおかげですよ」
北島「また貸しましょうか?」
藤原「いいやぁ、もう暫く借金はコリゴリです」
北島「ふふっ、そうですか」
北島藤原「ふふふふふふふふふ……」
―――終わり
『リポーター』
・登場人物
北島
藤原(事件の被害者に関係する人)
西岡(犯人。最後だけ出てくる)
・舞台
藤原宅玄関前
明転。
藤原宅玄関前。
北島、板付き。
北島「最近起きた都内のOL、小川美幸さん殺人事件。その犯人は未だ捕まっておりません。近隣住民の方に事情を聞いてみましょう(インターホンを押す)」
SE、ピンポーンという音。
藤原「(舞台下手から登場)はいはーい!どなたですかー!?」
北島「私、GMテレビのリポーターの北島と申します」
藤原「あー!テレビで見た事ある!握手して下さい!」
北島「あぁ、はい……(握手する)」
藤原「うわぁー!有名人と握手しちゃったー!感激だなぁー!」
北島「あの、本題、良いですか?」
藤原「あぁ!はいはい!どうぞ!」
北島「この辺りで、OLの小川美幸さんが殺害された事件は御存じですか?」
藤原「あぁー!ありましたねぇ!そんな事件!」
北島「小川さんとの交流はありましたか?」
藤原「ありましたよー!町内会の公園掃除とか、ゴミ捨ての時とか!」
北島「その時何か不審な点はありませんでしたか?」
藤原「ありましたよー!あのですねー!あの事件の前夜ねぇー!」
北島「ちょ、ちょっと待ってもらって良いですか?」
藤原「何ですか!?」
北島「ちょっとテンションの方が……」
藤原「どこかおかしいですか!?」
北島「元気過ぎるというか……」
藤原「これがデフォなんですけど!」
北島「一応、殺人事件なんで、神妙な感じでお願いします」
藤原「はぁ……分かりましたぁ……」
北島「そうそう、そんな感じでお願いします」
藤原「あ。ところで声とか変えなくて良いんですか?」
北島「こ、声……?」
藤原「あの、何かテレビだと変な声になるじゃないですか。あれやんなくて良いんですか?」
北島「あぁ、あれは後で加工してるんで作り声とかしなくて良いですよ」
藤原「うわーぉ!そうなんですねぇー!(裏声)」
北島「だからやんなくて良いですって!」
藤原「はーい」
北島「小川さんは普段どんな方でしたか?」
藤原「普段ですか……まぁ、基本あまり話さなかったので詳しくは分かりませんが、他の人とは笑顔で話してましたし、私とも会えば笑顔で会釈してくれる感じでしたね」
北島「成程。愛想の良い方だったと」
藤原「はい。普段からヘラヘラしてて……」
北島「ニコニコ」
藤原「はい?」
北島「ニコニコにしましょう。表現をね。ちょっとね、意味合いがね、変わってくるのでね」
藤原「はぁ」
北島「ところで先程、あの事件の前夜に何かあったのを目撃したとの事でしたが」
藤原「あぁ、その話ですか。見ましたよ。深夜AM午前0時にですね……」
北島「AMか午前で良いですよ」
藤原「あぁ、はい。日付変更の0時にですね……」
北島「何でわざわざ難しい言い方にしたんですか?まぁ良いですけど。それで?どうなったんですか?」
藤原「何か言い合いしてましたね、男と」
北島「新情報です!男と言い争いをしてたんですか!?」
藤原「はい!」
北島「どんな男でしたか!?」
藤原「中肉中肉な男でした!」
北島「何だよ中肉中肉って!贅だよ贅!」
藤原「あぁ!中肉贅肉!」
北島「だから何だよ中肉贅肉って!?デブって事!?」
藤原「あぁ!そうですそうです!」
北島「だったら最初からそう言え!そしてどうなったんですか!?」
藤原「話しがどんどんエスカレートして行って!最終的にはナイフでグサッ!と……!」
北島「成程……!」
藤原「そこでパッと目が覚めました!」
北島「夢かよ!」
藤原「もう体中ビッショビショで!」
北島「五月蠅ぇ!何で寝汗掻いてんだ!後、何でまたテンションが高くなってってるんですか?」
藤原「そっちがテンションが高くなったので、俺も良いのかなって」
北島「良くは無いですよ。本当に見たんですか?」
藤原「見ましたよ!」
北島「ちょっと再現してくれませんか?」
藤原「分かりました。こう、こうですよね?あ、あぁ!殺人だぁ……!」
北島「お前の再現じゃねぇ!言い争いと殺時現場の再現ですよ!」
藤原「あぁ、そっちですか。良いですよ。『貴方とはもう別れたの!もう帰って!』って小川さんが言ったら『俺から逃げられると思うな!』って男が言って、小川さんが『もう警察呼ぶよ!』と言ったんです。そしたらその男がナイフを取り出して『俺の物にならないなら殺してやるー!』って言ってナイフでグサッと刺したんです」
北島「皆さん、新情報です!ちなみにその話は警察には通報したんですか!?」
藤原「本人が止めてくれって言ったので言ってません」
北島「犯人とコンタクトが!?」
藤原「コンタクトって言うか、一緒に住んでます」
北島「一緒に住んでる!?何でですか!?」
藤原「何か可哀想だなって思って」
北島「殺された小川さんの方が可哀想でしょう!?」
藤原「それはそうですが……あの公園で愛する人を亡くして泣き崩れてるあの人見てたらいてもたってもいられなくて……」
北島「ちょっとその人呼んでもらえますか!?」
藤原「良いですよ。キヨちゃーん!」
北島「キヨちゃんって……」
西岡「(舞台下手から登場)はーい。何?タカたん?」
北島「キヨちゃん、タカたん呼びで呼び合ってるんですか?」
藤原「何か問題が?」
北島「いや、良いですけど……ちょっと貴方!貴方が小川美幸さんを殺したんですね!?」
西岡「いいえ?違いますよ?」
北島「言い逃れするつもりですか!?」
西岡「違いますって!俺はナイフを取り出しただけ!そしたら美幸が俺からナイフを奪って自分で自分の腹を刺したの!」
北島「じゃあ自殺って事ですか!?」
西岡「はい!」
北島「なら尚更、警察に行きましょう!身の潔白を証明しましょう!」
西岡「面倒臭い……」
北島「面倒臭いって何ですか!?人一人が亡くなってるんですよ!?」
西岡「あのナイフは俺のだし、絶対、犯人にされる……」
北島「本当に自分に非が無いなら余計に警察に行って説明しましょう!ほら!行きますよ!(西岡の手を掴んで連れて行こうとする)」
西岡「ちょっ、止めっ……!」
藤原「ちょっと止めて下さいよ!キヨちゃんが嫌がってるでしょう!?」
西岡「タカたん……」
北島「じゃあ今、警察に通報しますね!スタッフ!」
暗転。
北島「今回の事件は小川美幸の自暴自棄による自殺と警察は断定。その後のキヨちゃんとタカたんは仲良く今でもあの家で暮らしてるらしい」
―――終わり
『上下関係』
・登場人物
藤原
枝村
北島
・舞台
会社のオフィス
明転。
会社のオフィス。デスク三つに椅子が三つ。デスクの上にはそれぞれノートPC。
藤原、枝村、北島、板付き。
枝村「北島、書類出来たか?」
北島「はい。ここに出来たのがあります」
枝村「逐一報告してくれ。出来たらすぐに提出するように」
北島「すみません!」
枝村「いや、怒ってる訳じゃないんだ。注意程度だから。まだ入社して三ヶ月くらいだろ?」
北島「はい。今月で丁度三ヶ月ですね」
枝村「そうかー。もう三ヶ月かー。あっと言う間だなぁ。このままズルズルと一年が過ぎていくだろうから気を付けろよ?」
北島「はい!無能のままにならないように気を付けて日々、成長出来るよう努めます!」
枝村「はっはっは!その意気や良し!この調子で頑張れよ!」
北島「はい!枝村さんは入社、何年目でしたっけ?」
枝村「今年で三年目だね」
北島「へー。普通三年目じゃあ新人教育とかしないんじゃないですか?」
枝村「ウチは小さい会社だからねー。人手が足りなくてそうなったんだよ」
北島「そうだったんですか」
藤原「枝村さん、この資料ってどこにありましたっけ?」
枝村「前にも言ったでしょ?このファイルだって」
藤原「あぁ、そうでしたっけ?すみません……あと、例の資料って、期限、明日まででしたよね?」
枝村「あれは今日中だよ」
藤原「そうでしたか!?すみません!今すぐ作ります!」
枝村「頼むよ~……」
藤原「枝村さん、ここってどうやって処理するんですか?」
枝村「コレも前に言ったでしょ?コレはここをクリックすると……」
藤原「あぁ!そうでしたね!すみません!」
枝村「失敗するくらいなら聞いてくれた方が良いから。また何かあったら聞いて?」
藤原「はい!」
北島「枝村さん、あの方は?」
枝村「藤原。お前の先輩だよ」
北島「そうですか。前の新人歓迎会では見掛けませんでしたけど……」
枝村「その頃一方、残業してたからな。仕事出来ないから、あの人」
北島「そんな感じしますもんね」
枝村「こら。お前だってまだ新米だろ。一端に仕事出来るようになるまではそんな事は言うもんじゃないぞ」
北島「すみません!あの、ちょっと藤原さんに挨拶しに行っても良いですか?」
枝村「良いけど。今、仕事忙しいし、気難しい性格だから手短にな?」
北島「はい。(藤原の下へ行く)あの、藤原さん」
藤原「あ?誰?」
北島「私、新人の北島康介と申します。ご挨拶が遅れてしまい申し訳ありません。これからチームとして、宜しくお願いします」
藤原「あぁ、はい。宜しく。俺、仕事あるから」
北島「お仕事お邪魔して申し訳ありません。それではまた。(自分の席に戻る)何か、怖い感じの人でしたけど……」
枝村「自分の後輩だから先輩風吹かしてるんだろ」
北島「自分にもやっと後輩が出来て浮かれてるんですかね?」
枝村「いいや?最初の後輩は俺だよ?」
北島「えっ?ど、どういう事ですか?」
枝村「俺は藤原の後輩だ」
北島「え、で、でも呼び捨てだし、敬語使ってないし……」
枝村「上司命令でな。仕事出来る人間の方を上にするシステムなんだよ」
北島「でも枝村さん、主任とかじゃないですよね?」
枝村「平だよ。でも実力絶対主義なのがこの会社のスローガンなんだよね」
北島「あ、そう、ですか……ちなみに藤原さんって仕事歴何年なんですか?」
枝村「確か十年とかだよ」
北島「ベテランじゃないですか!えっ、中途採用ですか?」
枝村「いいや?」
北島「じゃあコネ入社とか?」
枝村「いいや?」
北島「じゃあ別の会社で別の仕事しててまだ不慣れとか?」
枝村「いいや?」
北島「じゃあ本当に単純に仕事出来ないってだけですか?」
枝村「そうだよ?」
北島「えぇ……!?よくそんな無能を会社に置いておけますね……?」
枝村「それだけカツカツなんだよこの会社。それにお前だってまだ無能に近いんだからあまりそういう事言わない方が良いぞ」
北島「あの人よりはまともに出世出来そうな気がしますけどね」
藤原「(北島の席に来る)北島、この資料やっとけ」
北島「あっ、はい!えっ?でもこれ俺じゃあまだ出来ませんよ?」
藤原「先輩の頼みを断るのか?」
北島「あ、いえ、すみません……やります……」
枝村「ちょっと待ってくれ……おい、これ、さっきのお前の仕事じゃねぇか!」
藤原「あ、いや、その……」
枝村「後輩にパワハラすんな!自分の仕事は自分でやれ!」
藤原「はい……すみません……(自分の席に戻る)」
北島「枝村さん、ありがとうございます!」
枝村「あの人、目を離すとすぐ手を抜くからな。だからこうして隣の席に俺が居るんだ」
北島「それだけの理由でこの配置になってるんですか?」
枝村「そうだよ?」
北島「あ、そうですか……あの人、どれだけ仕事出来ないんですか?」
枝村「糞程、役に立たないよ。マジで邪魔」
北島「もう別の部署に飛ばせば良いのに」
暗転。
明転。
会社のオフィス。
藤原、枝村、北島、板付き。
枝村「北島、お前、ここに来てもう何年になる?」
北島「今年で二年ですね」
枝村「どうだ?仕事には慣れたか?」
北島「聞くのが遅いですよ~。もういい加減慣れました」
枝村「そうか。もうすぐ俺を抜いて上に立つかもしれないな」
北島「またまた~。枝村さんにはまだまだ敵いませんよ~」
藤原「(北島の席に行く)北島さん。これの資料ってどこでしたっけ?」
北島「またかぁ?左上の資料ファイルに入ってるだろ」
藤原「すみません……あ、後、この前の資料って期限、来週中で良いんでしたよね?」
枝村「いいや、今日中だよ」
藤原「すみません!すぐやります!」
北島「全く、しっかりしてくれよな!」
藤原「北島さん!PCがフリーズしちゃいました!」
北島「どれ(藤原の席に行く)。あぁ、これはこうすれば良いんだよ」
藤原「すみません!」
北島「また何かあったら呼べよな」
藤原「はい!」
枝村「北島も藤原の扱いに慣れてきたな」
北島「半年も続けばいい加減に慣れました」
枝村「ははは、そうかい」
北島「それにしても何であの人クビにならなんですか?あまりにも仕事出来てないじゃないですか」
枝村「凡ミスはするが、大きなミスはしない。仕事は最後までキッチリやる。それだけでギリギリ首を繋いでるんだ」
北島「マスコットだと思えば良いって事ですか?」
枝村「良いじゃん。フジワラ君で人形作るか」
北島「あら、ハンカチの方が良いんじゃないですか?」
枝村北島「あっはっはっは!」
藤原「…………(枝村と北島の方を見る)」
暗転。
明転。
会社のオフィス。
枝村、北島、板付き。
藤原「(藤原、舞台上手から被り物を被って登場)おはようございます」
枝村北島「おはっ……!?」
藤原「どうしました?」
枝村「藤原、どうした、その被り物……?」
藤原「お二人が仰ったじゃないですか。フジワラ君でマスコットになれって。それを実行したまでです」
北島「それにしたってお前……それで仕事出来んの?」
藤原「作業効率は悪くなりますが、何とか視界は見えます」
枝村北島「作業効率が良くなるように改善しろ!」
―――終わり
『レンタルDVD』(実話+脚色)
・登場人物
北島(客)
藤原(店員)
枝村(店員)
・舞台
レンタルDVDショップ
明転。
レンタルDVDショップ。カウンター一つに棚がいくつか。カウンターにはPC一つにレジが一つ。
北島、藤原、枝村、板付き。
北島「あれー?無いなぁ……」
枝村「お客様、何かお探しですか?」
北島「あぁ、はい。DVDを探してて」
枝村「ではカウンターでお伺いします(北島と共にカウンターに行く)。何てタイトルですか?」
北島「『ステルス』って洋画なんですけど」
枝村「ステレス?」
北島「ステルスです」
枝村「ステリス?」
北島「ステルスです」
枝村「テトリス?」
北島「もう全然違うじゃないですか。ステルスです、ステルス」
枝村「ストレス?」
北島「ステルスです!ステルス!」
藤原「あぁ、あの戦闘機の映画だよ」
枝村「戦闘機の映画?」
北島「そうですそうです!木曜洋画劇場でチラッと観て気になってたんですよ!」
枝村「どんな映画ですか?」
藤原「あの、最新戦闘機に乗った三人のパイロットに人工知能を持った戦闘機が加わるって映画」
北島「そうですそうです!流石プロだなぁ」
藤原「で、その人工知能を持った戦闘機が落雷を受けて異常を来して暴走して、政府から破壊を命令されたパイロットが一人殺害されるんだよ。で、その死んだパイロットの戦闘機の破片がぶつかってヒロインの戦闘機も破壊されて敵国に落ちるんだよ。紆余曲折あって負傷した人工知能を持った戦闘機も負傷して、主人公と共にアラスカの基地に避難するんだけど、そこでは人工知能を持った戦闘機の技術を盗もうと主人公を殺しにかかるんだけど、何とか人工知能を持った戦闘機に乗って脱出するんだよね。一方ヒロインは敵国で誰にも見付からないように同盟国に逃亡しようとするんだけど、子供に出会って追われる事になるんだよね。で、人工知能を持った戦闘機に乗ってヒロインを助けに行って、国境付近でヘリコプターで追い詰められて絶体絶命って時に、人工知能を持った戦闘機が『さよならだ』って言って自爆特攻して爆破するんだよね。で、主人公とヒロインは救出されて、死んだパイロットの葬式をして、その後に結ばれて結婚するってエピソードだよ」
北島「全部言うなよ!観る楽しみが無くなったわ!」
枝村「あぁ!それ観た事あります!面白かったですよね~!」
北島「お前もそこまで説明されないと思い出せないのかよ!?全然記憶に無いじゃん!」
枝村「説明されてようやく思い出したんですよ。いやぁ~、面白かったなぁ、アレ……」
北島「微塵も覚えてないのによくそんな事言えるな……」
枝村「あ、コレ取り寄せになりますね」
北島「しかも無いんかい!じゃあいいよ!」
枝村「他に何かお探しの物はありますか?」
北島「あー、『ザ・コア』って洋画なんですけど……」
枝村「ザコア?」
北島「いえ、ザ・コアです」
枝村「ザコア?」
北島「いえ、ザ、点、コア、です」
枝村「ザテンコア?」
北島「だから区切って言ってるだろ!ザ・コアだよ!」
藤原「あの地球滅亡系映画だよ」
枝村「どんな映画ですか?」
北島「おい」
藤原「突如地球の回転が止まってしまって世界各地で異常現象が発生して」
北島「おいおい!」
藤原「世界の有識者数人が地球探査機で地球の内部に入って核爆弾の衝撃で再び地球の自転を再開させようとするんだけど、道中、事故が起こって船長と爆発のプロが死んで、いざ地球の核の中に入ると核爆発の量が足りない事に気が付くんだ。で、実は代案があるって科学者が言うんだけど、実はそれが地球の自転を止めた原因だったんだ」
北島「おいおいおい!」
藤原「で、地中探査艇の各部位を切り離して爆弾を小分けして爆発量を増やそうとするだけど、切り離すには5000度の通路を辿って人力で解除装置を解除しなきゃならないんだ。で、そこで設計者が死んで、爆弾を小分け作業している最中に科学者が死んで、時間が来て爆発するんだ。もう帰れないと思った主人公とヒロインは何とか地球探査艇の構造を思い出して脱出。エコーだけ出せる状況で助けを待って、無事生還。最後にハッカーが極秘事項だったこの計画を世界に発信して終わる。ってストーリーだよ」
北島「だから全部言うなって!何で全部言っちゃうんだよ!?」
枝村「あぁ!あの映画ですか!アレ面白かったですよねぇ~!」
北島「いや、お前も!何で全部聞いてから思い出すんだよ!大して面白くなかったって事だろ!?」
枝村「そんな事無いですよ~。アレはオススメですよ~」
北島「観る気失せたわ!」
枝村「あ、これもお取り寄せになりますね」
北島「借りねぇわ!てかまた無いんかい!」
枝村「他に何か御座いますか?」
北島「インビジブル」
枝村「インビブル?」
北島「インビジブル」
枝村「インポッシブル?」
北島「それ全然違う映画。インビジブル」
枝村「インジビブル?」
北島「違う!インビジブル!もう全然通じないじゃんコイツ!」
藤原「サスペンスホラー物だよ、それ」
枝村「どんな映画ですか?」
藤原「えーっとね……」
北島「待った!良いか?絶対全部言うなよ?」
藤原「何でですか?」
北島「観る楽しみが減るからだよ!」
藤原「えー?でも間違ってたらお客様が困るでしょうし……」
北島「ザックリで良いんだよ!ザックリで!」
藤原「分かりました……」
枝村「で、どんな映画なんですか?」
藤原「えーっと、透明人間がドッタンバッタン大騒ぎする映画」
北島「ザックリし過ぎ!伝わるのそれ!?」
枝村「あぁ!あの映画ですか!良いですよね~!アレ!」
北島「伝わるんかい!じゃあ事細かに説明する必要無かったじゃん!」
枝村「あ、これもお取り寄せになりますね」
北島「また無いのかよ!?逆に何があるのココ!?」
枝村「如何致しますか?」
北島「あー!もう取り寄せで!」
藤原枝村「畏まりましたー」
枝村「何泊に致しましょうか?」
北島「一週間で」
枝村「取り寄せまで二、三日掛かりますが宜しいですか?」
北島「はい」
枝村「ではお取り寄せで。一週間のご利用で200円。お取り寄せなので別途料金が掛かりますが宜しいですか?」
北島「はい」
枝村「では別途料金追加で合計3480円になります」
北島「高っ!?何でそんな掛かんの!?」
枝村「北海道からのお取り寄せになりますので……」
北島「これが沖縄の悪い所かー!」
―――終わり
『禁煙セミナー』
・登場人物
北島
藤原
枝村
・舞台
禁煙セミナー会場
明転。
禁煙セミナー会場。壇上一つにパイプ椅子一つ。
北島、枝村、板付き。枝村、マイクを持っている。
枝村「皆さん、この度は藤原正将禁煙セミナーにお集まり頂きましてありがとうございます。これより、禁煙マスター藤原正将さんをお呼び致します。拍手を以ってお迎え下さい」
北島枝村「(拍手する)」
藤原「(舞台上手から登場)えー、只今ご紹介に預かりました藤原正将です。皆様、この度はお集まり頂きありがとうございます。禁煙は体に良い事です。肺癌のリスクだけでなく、胃癌のリスクも減ります」
北島「ほう。胃癌も」
藤原「それに貯金が出来ます。私は禁煙に成功してフェラーリを買いました」
北島「おぉ、それは凄い。これは信用出来るかも」
藤原「また煙草を吸う事は時間を取られます。禁煙すればその分、浮くので他の事に使えます。私はその結果、勉強してこのセミナーを開いて仕事にしました」
北島「成程。確かに時間は取られるかもなぁ……」
藤原「それに喫煙所をいちいち探して気にする必要も無くなりますし、飲食店でもストレス無く食事をする事が出来ます」
北島「あー、それはあるかもなぁ……」
枝村「藤原さんは禁煙成功者との事ですが、失敗談とかありますか?」
藤原「ありますよー。最初の頃は我慢出来ずにちょこっとなら、と一本吸ったら、また一本なら良いだろう、と続けていって、失敗した事がありますね」
北島「あんな凄い人でも失敗なんてあるんだなぁ」
枝村「今までどれくらい禁煙に失敗してきたんですか?」
藤原「年に三百六十五回くらいですかね」
北島「えっ!?」
枝村「何年くらいやってるんですか?」
藤原「かれこれ十年くらいですかね」
北島「えぇっ!?」
枝村「そんなに成功してるんですねー」
北島「いやいや!失敗しかしてないでしょ!」
枝村「ここからは質問タイムです。どなたか質問がある方はいらっしゃいますか?」
北島「はい」
枝村「はい、そこの方(マイクを渡す)」
北島「北島です。いくつか質問があります」
藤原「何でしょうか?」
北島「貴方、本当に禁煙に成功してるんですか?」
藤原「してますよー」
北島「一年で三百六十五回禁煙に成功してるとの事でしたが、この十年間で3650回禁煙に成功してるって事ですか?」
藤原「正確には三千六百五十二回ですねー」
北島「と言うと?」
藤原「閏年二回挟んでるんで二回増えてるんです」
北島「ジョークですか?」
藤原「禁煙ジョークです」
北島「何だそれ……一日にどれくらい禁煙してるんですか?」
藤原「八時間くらいですかね」
北島「八時間?それって禁煙に含まれるんですか?」
藤原「含まれますよー。少なくとも寝ている間は吸ってないんですから」
北島「睡眠中の吸わないは禁煙に含まれねぇよ!アンタ本当に禁煙する気あんのか!?」
藤原「事実、この十年で三千六百五十二回、禁煙に成功してます!」
北島「でも結局吸ってるんじゃん!」
藤原「八時間も寝てれば十分禁煙出来てるでしょう!?」
北島「出来ればもっと寝てないのか!?」
藤原「出来る事なら十六時間寝てたいです!」
北島「十六時間!?後の八時間何してんだよ!?」
藤原「煙草吸ってたいです!」
北島「禁煙出来てねぇじゃねぇか!吸いたいんだろ!?」
藤原「一日中吸ってたいです!」
北島「反省してねぇな!?さっきの肺癌と胃癌のリスクの話はどうした!?」
藤原「肺も胃も頑丈なんで健康診断には引っ掛からなかったです!」
北島「貯金とフェラーリは!?」
藤原「この講習会でガッポリ稼いでるので買えました!」
北島「禁煙で成功したんじゃないのかよ!?他の事に時間を使えるって話は!?」
藤原「上司と喫煙コミュニケーションを取る事で仕事に繋がりました!」
北島「喫煙所をいちいち探すストレスは!?」
藤原「今は便利なアプリがあるので!」
北島「お前絶対禁煙する気無いだろ!」
藤原「ところでここでお知らせです!今なら禁煙に成功した私の自伝を一冊、十万円で販売致します!(壇上から本を一冊取り出す)」
北島「皆騙されるな!コイツ絶対、嘘吐いてるから!」
藤原「嘘とはまた失礼な!」
北島「嘘じゃなきゃ詐欺だろ!こんな嘘っぱちの自伝なんか書きやがって!見せてみろ!……何々?一日、五時間の禁煙方法?何だこりゃ?」
藤原「一日五時間禁煙する方法を纏めました!」
北島「こんなん何の役に立つんだよ!?」
藤原「地道にコツコツと止めていくのが禁煙のコツです!」
北島「それっぽい事言うな!事実お前八時間しか持ってないじゃねぇか!」
藤原「一日、五時間から八時間まで成長したんですよ!」
北島「寝てるだけだろ!」
藤原「寝てる時間を削ってでも吸ってた自分からすれば大分、成長したんですよ!」
北島「何の自慢にもならん!」
藤原「吸ってる方が自慢にならんでしょ!」
北島「ちょこちょこ出て来る正論、止めろ!脳がバグる!」
藤原「それはきっと煙草のせいでしょう!今すぐ止める事をおススメします!」
北島「絶対違うから!皆騙されるな!こんなのに金払う必要無いからな!」
藤原「分かりました!そこまで言うなら私も男です!今回は貴方にこの本をプレゼントします!(本を北島に渡す)それで効果が無いならもうこの講習会は開きません!」
北島「何だってぇ?良いのか?」
藤原「はい!是非効果を教えて下さい!」
北島「分かった。試しにやってみようじゃないか」
藤原「はい!」
枝村「ではそろそろお時間です。講習会はこれでお開きとさせて頂きます。藤原さん、ありがとうございました」
藤原「ありがとうございましたー!(枝村と共に舞台上手に退場)」
北島「……試してみっか」
暗転。
明転。
禁煙セミナー会場。
北島、枝村、板付き。
枝村「では拍手を以って藤原正将さんをお迎え下さい」
北島「(拍手する)」
藤原「(舞台上手から登場)こんにちはー。あ、北島さん!」
北島「どうも」
藤原「どうでしたか?あの本は?」
北島「メルカリで売ったよ。良い値段になったからその分、煙草、買った」
藤原「そんな!酷い!」
北島「大して効果なかったよ、あの本」
藤原「そんな馬鹿な!」
北島「本当、そんな馬鹿なって感じだったよ。皆さんも売ったでしょ?」
一同「まぁ、はい……」
藤原「マジか……」
北島「アクドイ商売してたんだ。ツケが回ってきたんだな」
藤原「裏切者ー!」
北島「先に裏切ったのお前だろ!」
―――終わり
『三人の彼女』
・登場人物
北島康介
小川美幸
儀間愛真
米山菜奈美
枝村拓
・舞台
病室
病室の外
明転。
病室。ベッド一つに椅子が一つ。
北島、ベッドに寝ている。小川、椅子に座っている。
北島「(目が覚める)……ここは……」
小川「あ、康介君。目が覚めた?」
北島「君は?」
小川「何言ってんの?貴方の彼女の小川美幸よ?」
北島「か、彼女?僕は、一体誰なんだ……?」
小川「何言ってんの?」
北島「頭が……!頭が痛い……!何も、思い出せない……!」
小川「せ、先生呼んでくる!」
暗転。
明転。
病室。
小川「先生の話だと、康介君は階段から足を滑らせて頭を打って、記憶喪失になってるみたい」
北島「そうなんだ……君は?」
小川「さっきも言ったけど、私は貴方の彼女の小川美幸よ」
北島「ごめん、覚えてない……」
小川「まぁ、記憶喪失だもんね……仕方ないよ」
儀間「(舞台上手から慌てて登場)康介!」
北島「君は?」
儀間「記憶喪失って本当だったんだ!私の事、本当に覚えてない!?」
北島「ごめん、覚えてない……」
儀間「そんな……!?私だよ!君の彼女の儀間愛真だよ!」
北島「えぇ!?彼女ぉ!?」
儀間「そうだよ!」
北島「で、でも小川さんが僕の彼女だって……」
小川「儀間さん。嘘はいけないよ。私が本当の彼女なんだから」
儀間「貴方フラれたでしょう!?そっちこそ嘘吐かないでよ!」
小川「何よ!」
儀間「何よ!」
北島「止めてくれ!どっちが本当の事を言ってるんだ!?」
小川儀間「私よ!」
北島「頭痛くなってきた……」
米山「(舞台上手から登場)こーちゃん、具合どう?」
北島「君は?」
米山「やっぱり記憶喪失なのは本当だったんだ。私は貴方の彼女の米山菜奈美よ」
北島「はぁ!?三人目!?」
米山「三人目?」
小川「米山さん!嘘吐かないで!康介君の彼女は私よ!」
儀間「何言ってんの!康介の彼女は私よ!」
米山「あらあら余裕が無いこって……必死になり過ぎるとみっともないわよ?」
小川儀間「何ですって!?」
北島「止めてくれって!何!?僕ってそんなモテてたの!?」
小川儀間米山「モテてたのは確かね」
北島「節操も無く三人も彼女作ってたの!?」
小川儀間米山「いいや、彼女は私」
北島「また頭痛くなってきた……」
小川「あの日を覚えてない?学校から帰ってる時に、一緒に夕日を眺めて告白してくれたじゃない。そこで初めてキスしたのよ?」
北島「覚えてない……」
儀間「じゃあこれは?私達、幼馴染で幼稚園からずっと一緒だったじゃない。将来を誓い合ったじゃない。幼い頃だけど、そこで初めてキスしたのよ?」
北島「覚えてない……」
米山「そんな昔の事覚えてる訳無いじゃない。私のは覚ええるわよね?文化祭で告白して、キスまでしたのよ?」
北島「ねぇ、僕ってキス魔か何かなの?全然覚えてないけどロクでもない男じゃん」
小川儀間米山「まぁ、キス魔なのは認めるけどね」
北島「そんな節操の無い僕のどこに惚れたの?」
小川儀間米山「すぐにキスしてくれるところ」
北島「そんなロクでもない理由で!?」
小川儀間米山「大切な事よ」
北島「あ、そう、ですか……」
小川「キスしたら思い出すかも」
北島「えっ」
儀間「ナイスアイディア」
北島「えぇっ」
米山「貴方にしては良いアイディアね。やってみましょう」
北島「えぇっ!?ちょ、ちょっと!」
小川「誰からやる?」
儀間「私」
米山「いいや、私」
小川「いやいや、私からよ。発案者なんだから」
儀間「貴方が誰からやるかって聞いたんじゃない」
米山「そうよ。ここは素直に譲るべきよ」
小川「嫌よ!他人がした後にするなんて!」
儀間「私だって嫌よ!」
米山「私だって」
枝村「(舞台上手から登場)こんちはー。康介、生きているかー?」
小川儀間米山「あっ、やべっ」
北島「君は……!?あっ、あっ、思い出してきた……!俺は、北島康介だ!」
小川儀間米山「思い出したのね!?」
北島「あぁ!まだ自分の事だけだけど!君は?」
枝村「やっぱり記憶喪失かー。医者の話だと、思い出の場所とか行動をしたら記憶が蘇る可能性があるって言ってたな」
北島「どうしたら良いかな?」
枝村「こうしたらどう?(北島にキスをする)」
北島「……枝村……!(枝村にハグをする)」
枝村「良かった……全部、思い出したんだな……(北島を抱き返す)」
北島「あぁ……ありがとう、枝村……!」
小川儀間米山「あぁ……折角のチャンスが……」
北島「お前ら……!好き勝手言いやがって……!」
小川「あー……」
儀間「いやまぁその……」
米山「すみません……」
北島「俺はゲイだ!枝村を愛してる!お前らはノンケに戻したいのかバイセクシャルにしたいのか知らんが、もう邪魔するな!出ていけ!」
小川儀間米山「(舞台上手に退場)」
暗転。
明転。
病室の外。
枝村、板付き。
枝村「こういう日の為に北島をノンケからゲイに教育しといて良かった~!刺激的な方が記憶取り戻しやすいしね~!これからはちゃんとした彼氏として支えていこ~!」
―――終わり
『反抗期』
・登場人物
藤原正将(息子・高校生)
藤原愛真(母親)
藤原康介(父親)
・舞台
藤原家
・衣装
正将・・・詰襟上下、中にパジャマ
愛真・・・エプロン姿
康介・・・スーツ
明転。
藤原家。テーブル一つに椅子が二つ。
康介、席に着いている。愛真、料理を運んでいる。
正将「(舞台下手から登場)おはよう」
康介「あぁ」
愛真「うん」
正将「ちっ……俺には『おはよう』の一言も無いのかよ……(席に着く)頂きます」
愛真「うん」
正将「ちっ……俺には『召し上がれ』の一言も無いのかよ……」
一同、食事をする。
正将「ご馳走様でした」
愛真「うん」
正将「ちっ……俺には『お粗末様』の一言も無いのかよ……」
愛真「はい、お弁当(弁当を正将に渡す)」
正将「ありがとう、母さん」
愛真「うん」
正将「ちっ……俺には『どういたしまして』の一言も無いのかよ……じゃあ行ってきます」
愛真「うん」
正将「ちっ……俺には『行ってらっしゃい』の一言も無いのかよ……(舞台下手に退場)」
愛真「ねぇ、アナタ」
康介「何?」
愛真「あの子、様子がおかしくなかった?」
康介「あー……まぁ、おかしいちゃあおかしかったけど……」
愛真「反抗期かしら……」
康介「反抗期か、アレ……?あぁ、俺も仕事に行ってくるから」
愛真「うん。行ってらっしゃい」
康介「俺には言うのか……」
暗転。
明転。
藤原家。
康介「(舞台下手から登場)ただいま」
愛真「おかえりなさい」
康介「正将はまだか?」
愛真「部活が長引いてるんじゃない?」
正将「(舞台下手から登場)ただいま」
愛真「うん」
正将「ちっ……俺には『おかえり』の一言も無いのかよ……」
愛真「お風呂、沸いてるよ」
康介「俺は先にご飯にしようかな」
正将「じゃあ俺が先に風呂入るよ」
康介「よく温まってきなさい」
正将「じゃあお先します」
愛真「うん」
正将「ちっ……俺には『どうぞ』の一言も無いのかよ……(舞台下手に退場)」
愛真「……お年頃なのかしらねぇ……」
康介「お前のせいだと思うよ?」
愛真「私のせい?」
康介「うん。だってお前、あの子の挨拶に対して『うん』しか返事してないじゃん。俺には『行ってらっしゃい』とか『おかえりなさい』とか言う癖に」
愛真「そうだったかしら?」
康介「そうだよ。何かしら返事してあげなさいよ」
愛真「そんなつもり無かったんだけど……」
康介「意図的にやってるとしか思えない」
正将「(舞台下手からパジャマ姿で登場)お先しました」
愛真「うん」
正将「ちっ……俺には『どうぞ』の一言も無いのかよ……」
康介「ほら!そう言う所!」
正将「えっ?俺?」
康介「違う!母さん!」
愛真「私?何かした?」
康介「したんじゃなくて、しなかったの!また『うん』しか言わなかったよ!」
愛真「もう癖みたいなものだし、直しようが無いわよ」
康介「息子への愛は無いのか!?」
愛真「家族だからっていちいち返事する必要なんて無いでしょ?」
康介「寂しがってるだろ!愛息子が!」
愛真「私だって寂しいのよ!どうしてこんな息子に育っちゃったのかって!」
康介「これはお前が反抗期か!いい加減にしろ!」
―――終わり




