表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
4/10

④チユ

「クロウ、おはよう」


自宅で朝食の準備をしていると、サラが目を擦りながら歩いてきた。


本日のメニューは果物のサラダと豆のスープだ。


冒険者としては、まあまあの朝食といった所か。


「いただきます」


「いただきます」


二人で手を合わせて食事をする。


このいただきます、というのは、彼女が覚えていた前の世界の習慣らしい。


「今日から、チユちゃんが来るから楽しみ」


彼女は顔を綻ばせた。


「そうだな、チユは今日から僕らのパーティに入るから」


僕の妹であるチユは、名は体を表すとばかりに治癒魔法の使い手だ。


昨日も、夜遅くに帰ってきた僕達を治療してくれて、今は自室で出発ぎりぎりまで治癒魔法の勉強をしている。


朝食は置いて来たので、食べてはいるだろう。



食事が終わり二人でチユの部屋へ行くと、彼女は既に準備を終えていた。


「クロウお兄ちゃん、サラお姉ちゃん。今日からよろしくお願いします」


緊張した面持ちで改めて頭を下げる彼女に、僕達はつい笑ってしまった。





「お、今日は可愛い子がいるじゃねえか」


他の冒険者に囲まれてしどろもどろの妹を微笑ましく思いつつ、僕は門の外を見据える。


ここから一歩出れば、彼女とて冒険者。


命の危険だってある。


「クロウ、チユちゃんなら大丈夫」


僕を安心させるように、サラはにっこり笑って言う。


「そうだよ、お兄ちゃん!」


いつの間にか戻ってきていたチユは、杖をぶんぶん振り回して叫んだ。


「私だって、凄い治癒魔法使いなんだから!」


「…ああ、そうだな」


彼女の言葉は、決して誇張ではない。


チユもまた、勇者の仲間に選ばれる程には実力のある魔法使いだ。


そして、当然それ相応の覚悟も持って勇者の仲間に志願している。


やがて門が開き、冒険者達が一斉に動き出す。


「行こうか」


「了解。いつでも準備は出来ている」


「うん!」


力強く返事をする妹に、気付けば心配する気持ちは無くなっていた。





しかしそんな妹にも、今回の戦闘は衝撃だったらしい。


「サラお姉ちゃん、無茶しすぎだよ…」



チユの言葉には、僕も同意する。


自宅で治療してたとはいえ、いざ戦っている所を見ると、思う所もあるのだろう。





泣きそうになりながらも治癒魔法をかけ続ける妹は、努力の末に歴代でも最強の治癒魔法使いに成長した。


そこまで努力した理由は、僕と同じ。


この世界を救おうと戦う、サラの力になりたい。


その一心だった。





「お兄ちゃん、強いんだね」


ようやく一通り治癒を終えたチユは、僕に治癒魔法をかけながらこう言ってくれた。


「強いって言うのかな、あれは」


「強いよ、お兄ちゃんは。凄く強くなった」


チユは、そう言って照れ臭そうに笑った。


「だとしたら、サラのお陰だね」


「…うん、そうだね」


僕の言葉に、チユも同意する。


そうして二人で、未だに目を覚まさないサラに目をやった。




サラと出会う前、チユと僕はあまり仲良くなかった。


しかし、サラを助けたいという思いが同じだと分かった瞬間、僕達は結託した。


共に、サラの力になれる魔法使いになろうと。



サラの存在が、僕とチユを兄妹として繋いでくれたのだ。




僕の治療を終えてすぐに、サラが目を覚ました。


暫し視線をさ迷わせた後、涙目のチユを安心させる為か、サラはにっこりと笑った。


「チユちゃん、ありがとう」


力無く、でも優しく笑うサラに、チユは泣きながら抱きついた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ