表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/12

第11話 繰り返す朝

すみません今日このシリーズしか更新できないです…直前すみません…

目を開けるたびに、少しだけ世界の位置がズレている気がする。


天井は同じ。

部屋も同じ。


それでも、“昨日と同じ自分”だとは言い切れない。


氷月は布団の中で手を見つめた。


何もない。


なのに、まだ残っている。


何かを握っていた感触だけが、指先に沈んでいる。


「……」


起き上がる。


その動作が、少し遅れる。


まるで、身体が一拍遅れて従っているみたいに。


学校。


教室の扉を開ける。


陽菜がいつも通り手を振る。


「おはよー、氷月!」


「おはよう」


返す声は、問題ない。


はずだった。


でも、結菜の視線が一瞬だけ止まる。


雫は最初から見ている。


その“見ている時間”だけが、少し長い。


席に座る。


机に触れる。


冷たい。


ただそれだけのはずなのに、指先が一瞬だけ反応する。


何かがここにあった気がする。


すぐに消える。


昼休み。


結菜が隣に座る。


少しだけ迷ってから口を開く。


「氷月」


「なに」


「最近さ」


「うん」


結菜は視線を少し逸らす。


「夜、ちゃんと寝れてる?」


一瞬、言葉が止まる。


「寝てるよ」


即答。


でも、その即答が少しだけ軽い。


結菜はそれ以上聞かない。


ただ、小さく頷く。


雫が教室の後ろで立っている。


こちらを見ているわけじゃない。


でも、見えている気がする。


「氷月」


雫が呼ぶ。


「なに」


「さっき」


少しだけ間を置く。


「一瞬だけ、違う呼び方した」


「してない」


「うん」


否定もしない。


肯定もしない。


ただ事実だけを置く。


放課後。


誰もいない教室。


窓の外は薄く赤い。


夕方なのか、夜なのか分からない色。


氷月は机に手を置く。


目を閉じる。


――終わらせた。


その言葉が、頭の奥から浮かぶ。


違う。


そう思う。


でも、もう一つの声が重なる。


――ちゃんと、終わらせたよ。


どちらが自分の声か分からない。


背後で、音がした。


振り返る。


誰もいない。


それでも、“そこにいる気配”だけが残っている。


「緋月」


呼ぶ。


返事はない。


でも、空気だけが少し変わる。


――お兄ちゃん。


声は、すぐ後ろからではなく、頭の中に響く。


「いるのか」


――うん。


即答。


まるで最初からそこにいたみたいに。


「何がしたい」


しばらく沈黙。


そして、静かに声が落ちる。


――確認したいだけ。


「何を」


――お兄ちゃんが、ちゃんと終わらせたのか。


その言葉で、呼吸が浅くなる。


「終わってる」


すぐに否定するように言う。


でも、その言葉はどこかで引っかかる。


――じゃあ


緋月の声が、少しだけ近くなる。


――なんでまだ、ワタシはここにいるの?


視界が揺れる。


机。


教室。


夕方の光。


全部が少しずつずれていく。


「知らない」


そう言うしかない。


その瞬間。


背中に、軽い感覚が落ちる。


誰かが、そこに立った気がした。


でも振り返っても、誰もいない。


ただ一つだけ分かる。


終わったはずのものが、まだ終わっていない。


それだけが、確かに残っている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ