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第10話 重なりはじめる現実

書いててこっちの方が楽しいけどあんま伸びなくてなんだかなぁ…って感じ

朝。


目が覚めた瞬間、どこにいるのか一瞬分からなかった。


天井は見慣れているはずなのに、少しだけ遠い。


「……」


起き上がる。


身体は動く。


でも、“動かしている感覚”が薄い。


ワタシ。


ふと、その言葉が浮かぶ。


すぐに打ち消す。


私。


そう思い直す。


けれど、その確認に少し時間がかかる。


学校。


教室の扉を開けた瞬間、空気がほんの少しだけ変わった。


いつもと同じはずなのに、どこか違う。


陽菜が手を振る。


「氷月、おはよー!」


「……おはよう」


一瞬だけ間が空く。


陽菜は気づかない。


でも。


結菜は気づく。


雫も気づく。


視線が、少しだけ重なる。


席に座る。


机に触れる。


その瞬間、昨日の感触が蘇る。


握っていた感覚。


離した感覚。


思わず手を離す。


何もない。


当然だ。


それでも、何かが“そこにあった”気がする。


「氷月」


結菜の声。


「なに」


「昨日のこと」


少しだけ言いづらそうにする。


「……気にしないでいいから」


そう言われる。


でも、それが一番気になる。


「ごめん」


口から出る。


謝る理由が分からないまま。


結菜は少し驚いた顔をする。


「なんで謝るの」


答えられない。


雫が静かに言う。


「今の、“謝る理由”なかったよね」


その通りだと思う。


でも、謝らなければいけない気がした。


「……そうかも」


言葉が軽い。


自分の言葉じゃないみたいに。


昼休み。


陽菜が笑いながら話している。


いつも通りの話題。


いつも通りの距離感。


でも、その“いつも”が少しだけ遠い。


「氷月ってさ」


陽菜がふと言う。


「なんか最近、もう一人いるみたいだよね」


その一言で、空気が止まる。


「え?」


結菜が聞き返す。


「いや、なんていうかさ」


陽菜は言葉を探す。


「たまに話してる時、違う人と話してるみたいになるっていうか」


笑いながら言う。


冗談のつもり。


でも。


誰も笑えなかった。


雫が小さく呟く。


「……それ、分かる」


その言葉で、現実が一段ずれる。


放課後。


一人で教室に残る。


静か。


音がない。


机に手を置く。


目を閉じる。


すると、あの感覚が戻ってくる。


触れていた。


離した。


終わらせた。


「……違う」


否定する。


でも、否定するたびに強くなる。


その時。


背後で音がする。


振り返る。


誰もいない。


はずなのに。


気配だけがある。


「お兄ちゃん」


声がする。


振り向いても、誰もいない。


でも、確かに“近くにいる”。


「……緋月」


名前を呼ぶ。


返事はない。


ただ、気配だけが残る。


「ねぇ」


声。


今度は、すぐ後ろ。


「ワタシのこと」


振り返る。


やっぱり、誰もいない。


でも。


言葉だけが残る。


「忘れてないよね?」


呼吸が浅くなる。


「……忘れてない」


気づけば答えていた。


誰もいないのに。


「ちゃんと」


言葉が続く。


自分の意思とは関係なく。


「終わらせるから」


その瞬間、自分の声が“自分じゃない”と分かる。


静寂。


教室には誰もいない。


でも、確かに会話があった。


手を見る。


震えている。


そして、はっきり理解する。


ワタシは、もう一人じゃない。


いや。


最初から、一人じゃなかったのかもしれない。

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