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『神の手違いが生んだ報われぬ者の転生録』  作者: Lark224a


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第116話 ぶつかる意見。

咲のその言葉を聞いた俺達は、その場で足を止めたまま選択に迷っていた。


このまま主との戦闘に入るか、それとも主を避けて進むか――どちらかを選ばなければならない状況にあるにもかかわらず、すぐに決断を下すことが出来なかった。


何故なら、今のダンジョンは明らかに異常であり、全ての魔物が強化されているという現実が、判断そのものを鈍らせていたからだ。


その影響を主が受けていないとは考えにくく、恐らくだが通常よりも遥かに強く強化されていることが予想される。


だが同時に、より多くのマナを吸収した主を倒すことが出来ればスタンピートの抑制に繋がるのは明らかであり、それを目的としている以上、その選択から目を逸らすことも出来なかった。


「‥‥このタイミングで主か。」


小さく息を吐いた後、俺は言葉を継ぐ。


「俺としては討伐したいと思っている。やっぱり、主を倒すことで少しスタンピートの抑制に繋がるわけだから、やる価値はある。」


自分でも軽い判断ではないと理解している。


この選択を取るということは当然ながら、それに見合うだけの死のリスクを伴うものだ。


ダンジョン探索において何よりも優先されるべきは目先の利益ではなく命であり、少しでも危険だと判断した場合は撤退が義務付けられている。


それを踏まえれば、俺の言葉はその原則を踏み越えかねないものだったからこそ、パーティーメンバーである咲が即座に反応するのは当然だった。


「私は、反対よ。」


迷いなくそう言い切った咲は、そのまま視線を逸らさずに続ける。


「現状のダンジョンの状態、そして強化された魔物たち、それらを考慮して‥‥主に挑むのはあまりにもリスクがあり過ぎるわ。ここは迂回して別ルートを行くことを提案するわ。」


その言葉は感情ではなく、徹底して状況を見た上での判断だった。


「安全を取るってことか。」


思わず零れた俺の言葉に、咲は僅かに眉を寄せながらもすぐに言い返す。


「違うわ。これは現実的な判断よ。無理をして死ねばそれで終わりで、スタンピートの抑制どころか何も出来なくなる以上、ここで無謀な選択を取る意味はないわ。」


正論だった。それでも、俺は引かずに視線を逸らすことなく言葉を重ねる。


「それでもだ。ここで主を放置すれば状況は確実に悪化するし、俺達がやらなかった分だけ誰かがそのツケを払うことになるかもしれない。俺達で出来るなら俺達でやるべきだ。」


互いの視線がぶつかり、言葉以上に空気が張り詰める中で、どちらの主張も間違ってはいないからこそ簡単には折れず、意見は完全に真反対に割れていた。


なら、残るは三人目の雪の意見で決まるしかない。


悠真と咲が同時に雪の方を見ると、雪もまた二人を見返し、その瞳には迷いと恐怖が浮かんでいたが、それでも何かを決めようとしているのが分かる。


そして――


「私は――」


と言葉を発した、その瞬間だった。


「きゃあああああああ!!!」


耳を裂くような悲鳴が奥から響き、その方向が主の部屋であると理解した瞬間、三人は互いに顔を見合わせ、このまま悲鳴の方へ走れば主との戦闘に入ることを意味し、逆に無視して後ろに下がれば見殺しにすることになるという選択を突きつけられる。


雪は昔からそうだった。初めてスタンピートの被害を受けた時も自分のことなど考えず、泣いている子供を助けてしまうほどの正義感を持っており、そんな雪が人の死を見過ごせるはずもなく。


「私は―――行くね!!」


その一言と同時に雪は迷いなく駆け出し、それを見た悠真と咲も言葉を交わすことなくその背中を追うようにして走り出す。


そして三人は迷うことなく主の部屋の扉の前へと辿り着き、そのまま躊躇なく扉を開け放つのだった。

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