第113話 見切られる一撃、重ねる刃。
「雪!!右を頼む!!咲は天啓を発動させて敵の動きを教えてくれ!!」
「了解よ!!」
「分かった!!」
渋谷ダンジョンへと足を踏み入れてからしばらく進んだ俺達は、現在22層で『デーモンスパイダー』と激しい戦闘を繰り広げていた。
視界の至る所から這い出るように現れる巨大な蜘蛛は、壁や天井を自在に駆け回りながら、不規則な軌道で鋭い脚を振り下ろしてくる。その動きは読みづらく、しかも通常よりも明らかに速い。
デーモンスパイダーの討伐推定ランクはC。本来であれば俺達が苦戦するような相手ではないが、ダンジョン内のマナが異常なまでに増加している影響なのか、その個体能力は明らかに引き上げられていた。
雪の放った氷の槍が一直線にデーモンスパイダーへと迫る。確実に捉えた――そう思った瞬間、魔物はギリギリのところで体を捻り、その直撃を回避した。
「‥‥チッ。」
心の中で舌打ちが漏れる。
さっきからずっと同じだ。
別に俺の速度が遅いわけじゃない。むしろ今の動きなら、普通のCランク相手であれば確実に仕留められているはずだが、こいつらは違い、死を感じ取る感覚だけが異様に鋭く“致命の一撃”だけを寸前で見切ってくる。
だからこそ――一撃ではなく、連撃で押し切るしかない。
「一撃で決めるな。重ねるぞ!!」
と駆け出そうとした、その瞬間――咲の声が飛ぶ。
「悠真、上よ!!避けて、そのまま踏み込める!!」
その声に従い、天井から糸を使って急降下してくるデーモンスパイダーの軌道を紙一重で躱し、そのまま懐へと踏み込む。振り抜いた剣は確かに急所を捉えた――が、その直前で僅かに体を逸らされ、致命打にはならない。
だが、それでいい。
続けざまに二撃、三撃と間を詰めるように斬撃を叩き込み、最初の一撃は避けられても続く攻撃までは対応しきれないその隙を突くように雪の氷刃が横から叩き込まれ、さらに咲の指示が動きを縛ることで、完全に連携で押し切る形へと持ち込む。
その僅かな隙を逃さず、俺は一気に加速し、デーモンスパイダーが雪の攻撃を避けるために体勢を崩したその一瞬、世界がスローモーションのように遅く流れた。
「もらった。」
次の瞬間にはその背後へと回り込み、迷いなく刃を突き立てると、肉を貫く確かな手応えが腕へと伝わり、魔物の身体は大きく痙攣した後、抵抗する間もなく力を失って地面へと崩れ落ちた。
その後も同じ連携で一体ずつ確実に仕留めていき、ようやく周囲の気配が完全に消えた。
「はぁ‥‥疲れた。攻撃が避けられ過ぎるな。」
「だね。この一撃で決めたと思ってもギリギリのところで避けてくるから、もう一撃必要になって余計に魔力を使うことになる。これをどうにかしないと‥‥目的地まで魔力が持たないかもね。」
「あぁ‥‥全くだ。俺もかなりスキルを使っちまった。ここで一旦戻ってもいいが、また戻ってくるのも面倒だし、俺達には時間があまりないからなぁ。もう少し進むか。」
「そうだね。咲ちゃん!!こっちのドロップ品は全部拾ったよー!!そっちは?」
「こっちはまだかかるわ。雪、手伝って頂戴。」
雪と咲がドロップ品を回収している間に、俺はその場で自身のステータスを確認する。
白瀬悠真 12歳 Lv90
体力 1363
筋力 1345
魔力 1333
速さ 1351
頭脳 1597
魅力 52
精神力 1611
運 60
・スキル
鑑定Lv5・身体強化Lv5・探知Lv5・自然治癒Lv4・速読Lv5・言語理解Lv3・潜伏Lv5・危機感知Lv5・神速Lv3・剣術Lv4・会心Lv3・並列思考Lv3・動体視力強化Lv4・New心眼Lv1・New連撃Lv1
・称号
『静かなる暗殺者』『限界を超えた者』
以前確認した時はLv80だったから、10レベルも上がっている。
体育祭の期間は探索が出来ずクエストだけはこなしていたが、それだけでここまで上がるとは考えにくい。恐らく、このダンジョンの強化された魔物を倒し続けている影響だろう。
それに――新しいスキルも増えている。
「‥‥心眼と連撃か。」
小さく呟きながら、その内容を確認する。
《心眼》
相手の内に秘めたものを見抜くことが出来る。
《連撃》
一度の攻撃で二度の攻撃を与えることが出来る。
内容を見た瞬間、自然と口元がわずかに緩んだ。
「‥‥このスキルは、今の俺達に最も必要なスキルじゃないか。」




