第101話 後半戦。
七瀬先輩と約束を交わしたあと、俺は一度生徒会室へと戻り、“証拠”となる決定的なものこそ見つからなかったが、無実を証明できる糸口だけは掴んだと報告した。
もちろん、その過程で七瀬先輩のことは一切伏せている。
俺の必死な訴えが通じたのか、真偽の判断や処罰については体育祭終了後に持ち越されることとなり、会長としては到底納得できていないだろうが、一旦は保留という形でこの件は幕を下ろした。
そしてその後、午後の部が再開され、最初は昼応援から始まる。各団がこれまで積み重ねてきたダンスと、細部まで作り込まれた衣装を披露し、会場は大きな盛り上がりを見せた。
やがて昼応援が終わり、最後の団体種目へと移行する。
後半戦最初の種目は玉入れであり、ちょうど自分が出場する競技でもあったが、七瀬先輩のことが頭をよぎりつつも、それを一旦押し込めて目の前の競技に集中することにした。
各団が配置につき、開始の合図と同時に一斉に玉が宙を舞う。
正直なところ、玉入れという競技は観ていてもハラハラする場面が少なく、投げる側は一つ入るたびに達成感を得られるものの、観客側からすれば「今の入ったのか?」と判別しづらい場面も多い。もっと観る側も緊張感を味わえる種目の方が盛り上がる気もするが、こういう競技が一つくらいあってもいいのだろう――そんなことを考えているうちに、終了の笛が鳴り響いた。
結果は2位と上々の順位で、後半戦のスタートとしては悪くない滑り出しとなる。
◇
その後も午後の競技は順調に進み、ついに最後の種目――リレーの時間を迎えた。会場の熱気はこれまでで最も高まり、開始前からあちこちで必死な声援が飛び交っている。
そんな中で俺だけは声を上げることなく、ただ一箇所に視線を固定していた。
それはアンカーが待機する場所であり、そこにはA団代表として一ノ瀬会長、そしてB団代表として七瀬先輩が並んで座っている。
本来であれば、自分の立場的にC団のアンカーを応援するべきなのだろうが、今の俺の中にあるのは団の勝敗ではなく、ただ七瀬先輩がこの勝負に勝つことへの願いだけだった。
その二人に視線を向け続けていると、隣にいる咲が小さく声をかけてくる。
「とうとう始まるわね――二人の勝負が。」
「あぁ、そうだな。ここから先は七瀬先輩が自分の力で切り開くしかない。俺たちは、その結果を見守ることしか出来ない。」
「そうね。じゃあ私は雪の応援でもしようかしら。あの子もずっと頑張ってきたものね。」
「あぁ、頼む。」
雪が走るのは第一走者であり、その脚力は同学年の中でも群を抜いている。まず間違いなくトップでバトンを繋ぎ、そのまま流れを維持してC団は勝利を狙ってくるだろう。
実際、団としての勝敗だけで見ればC団の優勢は揺るがない。だからこそ俺は団の結果ではなく、あくまで二人の勝負に意識を集中させていた。
そして――ついにリレーが始まる瞬間を迎える。




