爆心地
何をやっても手に付かない状態が続き、ようやく天明から連絡が来たのが雪村家での会合の二週間後であった。
「なんでそんな場所に呼び出したんだろう、うちじゃダメだったのかな?しかも、、、」
「しかも?」
「いや、なんでもない。」
指定された都心の貸し会議室に出向く途中、目的地の最寄駅で紫音とばったり出くわし他愛のない世間話をしながらその場へと向かう。二人とも約束の日についてはあえて触れないようにしていた。ただ、時々紫音から電話が掛かって来るようになっておりお互い全てを諦め思い出作りをしている訳ではないことは分かっていた。
既に天明が先に来ているのだろう、会議室の扉には鍵が掛かっておらずそのまま中へと入っていった。
「何故紫音さんが?」
椅子に座って待っていた天明が二人の姿を確認するなり驚いた表情を見せる。
「え?」
「私は如月さんにしか連絡を入れていなかったのですが。」
「え?当然知っているもんだと思って、、、、」
「ふふふ、最近全く天明さんがうちに寄り着かなくなっていたから怪しいと思って探りを入れてたんだ。」
「え?そうだったの?」
何だか紫音にしてやられたようで悔しさをひしひしと感じる聡介であった。
「、、、、、しょうがありませんね。お二人とも立っていないでお座りください。」
ホワイトボードと長机と椅子があるだけの殺風景な会議室だった。ホワイトボードに何か書くわけでもなく天明が話を始める。
「先日言っていた後輩がそれとなく情報を聞き出そうとはしてくれたようですが残念ながら場所しか分からなかったようです。」
「そうですか、、、でも場所さえ分かればなんとかなるかも知れませんよね?」
しかし天明の表情はとても暗い。
「その場所と言うのがスリンザ湖なんです。」
「スリンザ湖って有名な場所ですよね?大きい湖で確か世界遺産だった気がする。」
「確かにそうだな、地理の授業で昔習った、、、お前良く知ってたな。」
「前のテレビでやっていてお姉ちゃんといつか行ってみたいって話してたんだよね。パスポートないけど。」
「でも湖からどうやって、、、洪水って訳でもないでしょうし。」
「あの湖はカルデラ湖なんです。」
「、、、、マジか、、、、」
「何?カルデラ湖って?」
「あの湖が火山の火口だってことだよ。」
「ふぅん、そうなんだ、、、、、、って超大きいじゃない!」
「ただ、現在スリンザ湖の下にある火山は休止しているはずです。大噴火が起こるとしたら何かトリガーがあるのかも知れない。」
「じゃあ、やっぱりそこに行ってみれば何か出来るかも知れないですね。」
「はい、、、、ですが私も紫音さんと同様に残念ながらパスポートを持っていません。申し訳ないのですがパスポートを入手する伝手はありませんでした。」
「俺が一人で行くしかないって訳ですね。」
「とても危険なことです、お願いしてしまって良いでしょうか?」
この辺が姉妹を呼ばなかった理由がなんとなくここにあったのだろうと聡介は理解した。二人も同様にパスポートを持っておらず聡介だけに危険なことをやらせる訳にはいかないと反対されてしまう可能性を天明は危惧したのだろう。しかし流石の紫音は一歩も二歩も上をいっていた。
「この際、どこに居たって同じでしょ?よろしくね!」
「、、、、、おう。」
確かにそうなんだけどね、、、、、、
「必要な道具の準備であったり、チケットの手配など私で出来ることはなんでもしますので。」
「、、、、、、ん?」
「どうしました?」
「スリンザ湖がある国って島国でしたよね?」
「はい、湖の面積が30%程度を占める島国です。」
「空港っていくつあるんですかね?」
「恐らく一つだと思いますよ。」
「今日の『お目覚めニュース』で過激派組織が空港を占拠したって言ってたの、、、、その国じゃないかな?」




