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身近な炎

「如月、ちょっと良いか?」

「はい。」

 なにかやらかしたかな?

 週初めにいきなり声を掛けられた聡介は立ち上がり上司である鈴木の机の前まで移動した。

「来月また本社で営業会議があって榎本と出張しようと考えているんだが今回はちょっと人手が必要になりそうなんだ、良い機会だからお前も同行しないか?」

「え、自分がですか?」

「あぁ、最近遅くまでいろいろと頑張っているみたいだしな。」

 ちょっと本業以外のことで立て込んでいたので、、、とは言えない。黄色い炎を探して今まで以上に積極的に歩き回っているのは確かである。

「いや、でも、、、」

「お前、せっかく課長が誘ってくれているのに何だよ。どうせ外せないような予定なんかないだろ?」

 本来真っ先に同行することに対して反対しそうな榎本が後ろから割り込んでくる、何か聡介に恥をかかせるような企みをしているのではないかと勘繰ってしまう。

「お前は黙ってろ、とりあえず考えておいて。今週中に返事くれれば良いから。」

「はい、分かりました。」

 目を合わせないように自分の席に戻ったが榎本の視線が自分に刺さっていることは容易に想像することが出来た。


 いつもの榎本の様子を見ている限り、出張前に膨大な資料の準備に追われることとなるであろう。そんなことをしていないで少しでも救える命を!と言う高貴な考えがある訳でもなく単純にそういった類の業務に携わりたくない。週半ばまで出張を断る良い言い訳がないかを必死に考えていたのだが、木曜日にそんなことを言っていられない事態となってしまう。

 ちょうど一か月後に二人で出張に行くことになっている鈴木・榎本両名の頭上に灯る炎がその日を境に黄色くなったのである。偶然という一言で片づける訳にも、見過ごす訳にもいかず結局その日のうちに本社へ同行させてもらいたいとの申し出を鈴木にすることとなってしまった。

「結局来るんだってな?だったらもったいぶらずに最初から快諾しろよ。ほら、このデータ来週中にまとめといてくれよ。」

「はいはい、了解。分からないことだらけだろうからよろしくな。」

 当然その情報が耳に入り早々に絡んでくる榎本に対して誰のせいで行くことになったと思ってんだよ、と心の中で文句を言いながらいつも通り適当に受け流す聡介であった。


 その日から慣れない資料作成で遅くまで残業することになってしまった。会社では基本的に煙草が吸えないためイライラも募っていくばかりで、とりあえず顔でも洗おうと向かったトイレでふと鏡をのぞき込む。今まであまり意識していなかったが当然自分の頭の上にも炎は灯っているんだよな?

そう思い眼鏡をしたまま自分の頭の上を見てみると、黄色い炎を灯した二人と行動を共にすることになったこの現状でも聡介の炎は緑色をしていた。それは何を意味するのか、、、、、、考えても結論は出なそうなので顔を洗い資料作りに戻ることにした。

 とりあえず、出張中は二人から目を離さないようにしなければ。

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