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蘇った記憶

 濱田洋子はソフトボールに青春を捧げる女子高生であった。

 その日いつも通りに真夏の炎天下で一日中ハードな練習をこなした後にチームメイトと一緒に駅に向かう最中に急に目の前が真っ暗になり道路へと倒れ込んでしまい、以降意識を取り戻すことがなかった。

 朝から体調はあまり良くなかったのだが三年生が抜け自分たちがチームの主力となったそのタイミングで練習を休むという選択肢が思いつかず、無理をした結果最悪の結末を迎えてしまうこととなってしまった。


「本当にごめん、真っ黒に日焼けした顔とショートカット、自分を俺と呼ぶことから勝手に男の子だと思っていた。」

「しょうがないよね、、、俺も気付いた時点で言えば良かったんだけど、ははは、、、、」

「じゃぁ、その佳澄ちゃんにどうやってコンタクトをするか、考えようか。」

 同様に近隣で起こった事故・事件に関連する女性の名前をいくつか投げかけていると今度はすぐにヒットした。名前を思い出してからというもの、急激に記憶が戻っていったようで通っていた高校や当時の様子、やり残したことについて情報を聞き出すことが出来た。

 以前あいつと言っていたのはソフトボールで小学生の頃からバッテリーを組む徳井佳澄と言う子で、今年こそ一緒に全国大会に行こうといっていた約束を守れなかったことについて謝りたいとのことだった。

 その内容は理解したのだが、ここで問題となってくるのは濱田洋子がこの場を離れられない今どのようにその子とコンタクトを取ってそれを伝えるのか、、、一歩間違えば聡介に社会的な死が訪れてしまう。

「俺の言った内容を手紙に書いてもらって、それを渡すとか。」

「そもそも佳澄ちゃんを知らないし、練習終わりにみんなを捕まえてどの子が佳澄ちゃん?なんて尋ねたらその場で通報されそうだし。」

「う~ん、、、確かに。あいつの特徴と言えば日焼けして、ショートカット、、、チームメイトは大体そうだね。

 住所教えるからそこで張ってもらって。」

「それこそお縄だよ、、、そもそもに上手く手紙渡せたとしても知らない人から渡されたそれを読む気になるかな?内容も普通の人からみたらぶっ飛んだ内容だから読んだとしても信じてもらえない可能性が大きい。」

「う~ん、、、確かに。」

 その後も何個かの提案があったがどれも上手く行きそうにない。状況が状況なだけに絶対に上手く行く方法なんてないのかも知れないが、、、、


 結局これと言った案もないまま次の日を迎えてしまった。

 その日の午後、外回りをしている時に濱田洋子が倒れたと言っていた現場近くを通りかかったため、折角なので昨日の会話の中で聞いていた生前彼女が好きだったというジュースをその場にお供えでもしようとそこに立ち寄ることにした。

 ジュースをその場に置き本人がそこにいないことは分かっているが手を合わせ仕事に戻ろうと振り返ったその時、一人の少女が怪訝な顔でこちらを見ていることに気が付いた。

 濱田洋子同様に日に焼けた顔にショートカット、身に着けている制服は昨日ネットで調べた限りでは彼女が通っていた高校のものと思われる。

 徳井佳澄か?当然確証はないがこの偶然を逃すことは得策ではないと聡介は判断した。それだけ濱田洋子に残された時間、彼女を彼女と認識出来るであろう時間は残されていないだろうと感じ取っているのだった。

 砕けたくはないけれど、、、当たって砕けろだ!


「濱田洋子さんとバッテリーを組んでいた徳井さん?」

 その言葉を聞いた瞬間、顔に恐怖が広がっていくのが分かった。

 今にも走って逃げだしそうな彼女を必死に引きとめようとする。

「ご、ごめん!信じられないだろうけど話だけ聞いて!」

「、、、、、、、、、」

「濱田さんから伝えて欲しいと言われていることがあるんだ、、、」

 見ず知らずの男の口から死んだ親友の名前が出た途端に彼女は走り出す。

「待って、小学生の時みたいに側溝に足突っ込んで捻挫したら大変だ!」

「、、、何でおじさんが、私と洋子しか知らないこと知ってるの?」

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