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再会

二人だけが知るエピソードをいくつか仕入れておいて良かった。

 先ほど咄嗟に出たのもその一つで、小学生時代に鬼ごっこ中に誤って側溝に足を突っ込んでしまい捻挫をした徳井佳澄が間近に迫ったソフトボールの試合への出場のためそのことをずっと周囲に隠していたという内容だった。その時点で既にバッテリーを組んでいた濱田洋子にはすぐにばれてしまったが小学生であった彼女は流行っていたゲームのレンタルとジュース数本であっさりと買収されたという。

「本当に洋子に、洋子の霊に会えるの?」

 場所を通り沿いのベンチに移し濱田洋子から入手しった情報を織り交ぜながら事情の説明を続けていた。

「信じられないよね、俺が同じ立場でもそうだと思う。でも時間があんまりないんだ、、、だから何とか。」

「そもそもにおじさんが見えちゃったり、聞こえちゃったりする人っていうのもねぇ、、、洋子他には何か言ってた?」

「えっと、確か中学二年の時サッカー部の沢田君に二人別々に、、、」

「わ~、もういいや!そんなことまで言ったんかあいつは!!」

 沢田の名前が出て慌てて遮った。

「と、とりあえずおじさんを信じてみるよ、どこに行けば良いの?」

「ここに今日の午後六時位に来れるかな?」

 地図アプリを見せられそこがビルとビルの間と言うことが分かると彼女の薄れていた警戒心がまた上昇するのが見て取れ慌ててフォローする。

「防犯ブザーとかありとあらゆる装備して来て良いから、、、お願い。」

「、、、、分かった。」


 聡介は約束の時間の30分位前に濱田洋子の所に到着し、偶然町で佳澄と遭遇することが出来てここに来てもらうようお願いしたことを伝えた。

「すごいじゃん、おじさん!」

「まぁ、本当に来てくれるかどうかは分からないけどね、、、、」

 この頃になるとおじさんと呼ばれることに対して耐性も出来てしまっていた。

「あ、、、でもあいつには俺のこと見えないんじゃない?」

「その辺は大丈夫、この眼鏡を付ければ多分君を見ることが出来るようになるはず。」

「へぇ、そうなんだ、、、私の声も聞こえるようになるの?」

「それは微妙。何故か俺には声も聞こえちゃうようになったみたいなんだけど、そんなはずはないと死神は言ってた。」

「、、、あっ、佳澄!」

 そんなやり取りをしていると濱田洋子が急に叫び声を上げた。振り返ると手に防犯ブザーを握りしめた徳井佳澄が立っていた。

 いつからそこにいたのだろう、、、はたから見たらビルの間で独り言を言っている危ないおじさんだよなきっと、そんことを考えながら聡介は笑顔で彼女に近づき掛けていた眼鏡を差し出す。

「来てくれてありがとう。信じられないことだらけだろうけど、この眼鏡を掛けてあの辺を見てくれる?」

 そう言って濱田洋子の霊魂が漂う辺りを指差す。

 恐る恐るその眼鏡を掛けた徳井佳澄は先ほどの濱田洋子と全く同じリアクションをする。

「洋子!ホントに洋子が見える、何この眼鏡。」

「ちょっと特別な物でね、絶対他の人には言っちゃ駄目だよ。」

「うん、分かった、、、洋子には私の声聞こえてるんでしょ?」

「あぁ、君は洋子ちゃんの声聞こえない、、、かな。」

「うん。」

「そっかぁ、、、、」

 そしてここから霊魂の姿だけ認識できる者、霊魂の声だけ認識できる者、双方の姿と声を認識できる霊魂の三者による奇妙なやり取りが始まる。


「まず全国大会に一緒に行こうという約束守れなくてごめん、って言ってる。」

「そんな、気にしないで!私の方こそあの日、洋子が調子悪いことに気付かなくて、、、ごめん。」

「佳澄ちゃんが悪い訳じゃない、って言ってる。」

「でも、、、」

「ホント気にしないで、って言ってる。」

 しばしの沈黙が流れる。

「でもさぁ、いくら二人だけの秘密をって流れでも沢田君のことまでですのは酷くない?」

「そのおかげで俺のこと信じられたでしょ?って言ってる。」

「そうだけどさぁ、、、、恥ずかしい過去だから二人で墓場まで持って行こうって言ってたじゃん!」

 私はもう墓場まで持ってきちゃったよ、という濱田洋子の言葉はあえて伝えなかった。

 それから暫らくはおじさんを中継してのガールズトークが繰り広げられていった。

 本当に二人仲が良かったことが伺えこのまま夜通し話を続けるのではないかと少し心配になってきた頃、突如徳井佳澄が驚いた表情を見せる。

「どうしたの洋子?何で泣いてるの?」

「え?泣いているの?」

「うん、急に泣き出した、、、、」

 確かにうっすらとすすり泣く声が聞こえてきた。

「そうか、、、、」

「何かあったの?」

「う~ん、洋子ちゃんにはもう時間が残ってなくてさ、、、今首から下ぼんやりしてて見えないでしょ?

 最初俺が見つけた時はもっと下まで見えてたんだよね。

 そろそろ、、、、、本当のお別れが近いってことなんだ。」

 それを聞いた徳井佳澄の目にも涙が溢れてくる。

「そうなんだ、、、ずっと私のこと待っててくれたんだね、ありがとう。

 もう、会えないって思ってたから、、、今日はまた会えて本当に嬉しかった!

 洋子の分まで頑張って、、、絶対全国大会行くから、、、、

 私たちのこと見守っていてね。」

 彼女も今までいろいろと溜め込んでしまっていたのだろう、言い切るころにはその場に崩れ落ち大粒の涙を流している。

 今は見ることが出来ない濱田洋子の霊魂であるが、聞き取れるその声から同様に号泣しているということが手に取るように分かってしまい胸が張り裂けそうになってしまう聡介であった。

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