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185. T 正体を知る

ドゥクランに案内されるがまま、ラスボスがいるような部屋の扉の前まで来ると、待ってました!! とばかりに扉が開く。う~ん、怖いけど、このメンツじゃやっぱり俺が最初に入るべきだよね……


腰が引けたまま、奥へと伸びるレッドカーペットを進む。主とやらがグロ系じゃありませんように!! 内心祈りながらある程度進むも、壁一面のステンドグラスのせいで逆光になり、眩しいうえに中央に置かれた物が真っ黒な影となってどうなっているのかハッキリ判別しずらい。


「ようこそ、ヒルダ神様、勇者マリア、それに魔王よ。」


影の中から声がする。見えないので見える位置まで恐る恐る移動すると、いかにも玉座です! という背もたれのやたらと大きな椅子に俺より少し年上のオッサンが一人。どこかで見た……


「あー!! あんた西の王の………えーっと、西は白虎だから……ビャクラ!! だったよな??」


正直、名前は合ってるかどうか自信はない。けど、西の王には間違いない。驚いていたら椅子の両サイドから見覚えのある男と、可愛らしい女の子が姿を表した。


女の子の方はマリアが名前を呼んだ。ローナらしい。……キャラをハッキリ覚えてないけど、あんな顔だったか?? 化粧もドレスもバッチリ着こんでお嬢様みたいになってるけど……


それより! 男の方……(とり)の対象者のモズだよな?? 何であんなにミイラみたいなの?? しかも血が滲んでるけど大丈夫なのか??


にしても、王様が悪役ってことはこの国どうなるの?? 西の護りの人獣達、揃って仕事放棄しすぎじゃね? 全員悪役になったら誰が西の民を護るの?? こいつ倒しちゃったらここの国は誰が統治するの? あ、倒すっていえばラスボスだったら、もしかして倒せば俺達向こうに帰れる?? 帰ったら味噌汁飲みてぇ……………………


じゃなくて!! いろいろ衝撃過ぎて思考が纏まらない。ここでお祈りし始めたらヤバいかなぁ……ハルさんとかプロデューサーの意見が聞きたい…………


「タイラ……こいつホントに人獣? フィル達より僕たち魔物に近い匂いがするけど!?」


「我らと言うより、神の言う人造魔王に近いかと……うむ、たまに出会う魔物の異種と同じ匂い。」


ノリアスとイチカちゃんお気に入りの『おひげちゃん』がビャクラを見ながら言う。


うわぁ……マジでラスボスかよ……話の流れからすると西(ここ)に戦力を集めて本土をぶっ潰す積もりらしいけど……残念! 印持ちの皆は各地に飛んでるよ!!


西に足止めしてるはずなのに、本土に居たことを知って射殺さんばかりに俺を睨んでるけど、マリアが移動魔法を使えることは知らないらしい。マリアの能力は黙って『竜王』の協力があったことを話して……………ってそばから移動魔法使える仲間が居ることばらしちゃったね。


しかも刃先を剥き出しにした剣を持ってるドゥクランに素手で向かってくとか、どんだけヤンチャなの!? ……あ、でもドゥクラン痛がってる……やっぱ主人公(マリア)は強ぇ……なんて思ってたら、コツコツと靴音が近づき、


「ドゥクラン様を放して!!」


驚いたことにローナがマリアを突き飛ばしてドゥクランを庇うように前に出た。すると、今度はドゥクランがローナを抱き抱えマリアに向かい剣を構える。ローナはうっとりとした顔でドゥクランの顔を見上げた。


……えぇ? 保護されたのは良いけどドゥクランとローナがそういう関係?? それより、ローナを守ろうとしてるのは分かるが、マリアはローナを傷つける事はしないと思うぞ??


「………ローナ? なんで……私はあなたを探して「魔物達から助けてくれたのはドゥクラン様だったわ!」……それは……」


ど、どうしよう……ローナは魔王城に居て、最後に助け出すシナリオだったから後回しにするようにマリアに言ったんだけど、まさか先に助け出されれるとは……


「ロ、ローナちゃん! マリアはすぐにでも君を助けに行こうと……」


「神様は黙ってて!!」


はいっ!!


「ビャクラ陛下は人々が魔物に怯えて暮らさなくても良いように、魔物も従える王様を目指しているの! ドゥクラン様もモズ様もそれに賛同していろいろと動いてる! 邪魔しないで!!」


魔物も従える? あぁ、だからただの王だけじゃなく魔王にもなりたかったのか……それなら、ノリアスと仲良くすれば解決じゃね?? でも……


「なんで本土を襲う? 言ってることとやってることが違わないか??」


玉座に座るビャクラに声をかけると、フンッと鼻で笑いながらも答えてくれた。


「私が守るべきは西の国とその民。本土などどうなろうと構わん。」


え……?? 西のみ?


「この国は島国。強力な魔物が出た場合、応援を要請しても間に合わずに幾つもの街や村が壊滅してきた過去がある。それ故、代々人獣の長たる王族自ら討伐に向かい、民も身を護る術を身につけ一丸となって魔物と戦ってきた。」


ビャクラはうつむいて拳をフルフルと震わせる。


「だが、本土はどうだ? 戦い、守るための力を与えられた王族どもは玉座でふんぞり返り、高みから指示を出すだけ。前線で戦う西の王(われら)を野蛮だと言い、命を散らせば応援が来るまで待たないからだと嗤う。」


……気のせいかも知れないが、ちょっと息苦しい気がする……


「民に関しては守られて当たり前。魔物によって怪我でも負おうものなら人獣が弱い、国の政策が悪いと文句ばかりで己の身を己で守る手段を持とうともしない。そんな国を、民を護る必要があるか?」


ビャクラが苛立たしげに椅子の肘掛けをコツコツと指で叩く。と、気のせいではなく本格的に呼吸がしずらい……見ればノリアスと『おひげちゃん』以外喉や胸を押さえてヒューヒューという呼吸音をたてながらなんとか立っているといった感じのようだ。


「フフッ、どうやらこのスキルはタイラ神様にも有効のようだ。

タイラ神様、……………………………………………………………………………」


喋ってる事は解るが、言ってる内容を理解出来ない。脳が働いてない気がする…………やっぱりなんかしてるんだよな……空気? 大気? に干渉する系のスキル?? なら風魔法で…………ハァ、苦しい…………ボンヤリとした頭で考える。


バリーーーンッ!! と何かが割れる音と共に呼吸が戻る。と同時にケホケホとむせながらみたものは、ノリアスがビャクラの頭を鷲掴みにして椅子ごとステンドグラスに投げつけている場面だった。

読んで頂き、ありがとう御座いました。

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