184. I お宅訪問
フィルやドラドさん達は最後まで私たちを気にしてくれていたが、ここら辺は人造魔王の気配はないと『魔王』であるノリアス君とプルプルとかわいいスライムの『おひげちゃん』(私命名)が保証すると、渋々といった感じでマリアちゃんとともにそれぞれの応援の地に移動していった。
その後、どうしようかとタイラさん達と話していたら、隣に座っていたノリアス君がギュッと握った手に力を入れた。ん? っと顔を見れば、タイラさんの方を険しい顔で見ている。
マリアちゃんとタイラさんが話しているだけなのだが……と、それ以外の第3者の声が聞こえて慌てて振り向く。タイラさんの真後ろに仮面を付けたドゥクランがいつの間にか立っていた。
ドゥクランは神であるタイラさんと、マリアちゃんを何処かに連れて行こうとする。悪いが、頼り無さそうなタイラさんと、勇者とはいえ未成年の美少女マリアちゃんを悪人だと分かっている人のところにみすみす送り出すわけには行かない。
反対をするも、何故か2人は行く気満々。まあ、マリアちゃんは必死で探していたローナちゃんからの手紙を見たから理由は分かるけれど……
取りあえず2人だけでは危ないからと私も着いていくことを提案するとなんだかんだとノリアス君まで巻き込込んで4人でドゥクランの主とやらに会うことになった。
ドゥクランにいわれるがまま目を閉じれば、直ぐに状況の変化に気づく。静かだ……そっと目を開けると、石が綺麗に組まれた床と壁に囲まれた場所に立っていた。促されるがまま、全員で移動する。と、アニメなどで描かれるような大きく、見事な装飾の施された扉の前にくる。
「うわぁ……ラスボスっぽい……」
横でタイラさんの呟く声が聞こえる。ラスボス? あー、たしかに……なんとなく納得していると迎え入れるように扉が開いた。ホントにラスボスの部屋っぽい……
赤いふかふかの絨毯が真っ直ぐ奥まで敷かれ、突き当たりには段差がつけられ、少し高い位置に大きな椅子が置かれている。壁には窓の代わりに双子神の描かれた大きなステンドグラスが嵌められており、そこから入る夕日を受けて椅子が大きな影を作っている。
「ようこそ、ヒルダ神様、勇者マリア、それに魔王よ。」
影になった椅子に誰かが座っているようで声だけが響く。恐る恐るといった感じにタイラさんが前に進み、椅子に座った人物を確かめる。
「あー!! あんた西の王の………えーっと、西は白虎だから……ビャクラ!! だったよな??」
タイラさんが自信無さげに聞く。
「覚えていて下さいましたか。ありがたき幸せ。」
西の王さま? え?? 王様がラスボス?? 私もソロソロとタイラさんに近づく。王様は渋い感じのイケオジで声も聞き惚れる感じのバリトンボイスなのだが、どういうわけか腕と脚だけが異常に鍛えられていてアンバランスな体型をしている。うん、とても残念だ……
前に出た私についてマリアちゃんとノリアス君も一緒に前に進むとマリアちゃんが小さく『あっ!!』と声を出した。
王様の椅子の両サイドから女の子が一人と、包帯だらけの男の人がスッと出てきた。
「ローナ!!」
呼びながら彼女に近づこうとすると、横から剣が出され足止めされた。
「それ以上近づくな。」
ドゥクランが威嚇するように言う。連れてきたくせに近づくなとか勝手過ぎるでしょ……
「勇者殿、魔物どもに連れ去られたローナは我々がこうして無事に保護致しております。ご心配召されるな。」
「……ローナ、ごめんなさい……私の「謝らないで! 私の方こそ、あの村が勇者を護るためのものだということも、父達が国と契約して貴方の成長を報告する役目を負っていた事も知らずに、村から外に連れ出してしまったんだもの……自業自得だわ。」……おじさん達がそんな役を……?」
「勇者の印を持っている者はね、有事の際までは監視や保護をする決まりでね。彼女の親はその役を負った内の一人だね。魔王が生まれなければ、君もローナもそのまま平民として何事もなく穏やかに生きていけたのだろうに……」
王様はニヤリと嫌な笑顔でノリアス君をみる。と、そこで初めて私の存在に気づいたようだ。
「………………誰だ?」
「イ、イチカ、カゲノです…………」
王様は、で? って顔をするも、それ以上の説明が思い浮かばない。
「彼女が以前お話しした女の天創人です。今は髪色が違いますが、以前は黒髪でした。戌の英雄ハスキスの目覚めにも関わりがあるかと……」
ドゥクランが捕捉してくれた。と、王様は『ほう。』とちょっと興味を持ったのか私をまじまじと観察する。と、その視線を遮るようにノリアス君が前に出た。
「…………お前、なに?」
「おやおや、魔王が天創人に懸想とは……」
そう言いながらまたニヤリと笑う
「タイラ……こいつホントに人獣? フィル達より僕たち魔物に近い匂いがするけど!?」
と、何処に隠れていたのかぴょんッと『おひげちゃん』がノリアス君の肩に乗って、
「我らと言うより、神の言う人造魔王に近いかと……うむ、たまに出会う魔物の異種と同じ匂い。」
鼻があるのか分からないけど、クンクンと王様を匂う真似をする。
「…………もしかして、魔物達が言ってた新たな魔王があんた? え? マジでラスボス……??」
タイラさんが青ざめた顔で聞く。
「さすが神!! 察しが良いですな。うまい具合に戦力の主軸がこの地に集結しましたからね。今頃各国は大混乱でしょう。唯一まともに戦えそうな南も他の国への参戦には時間がかかるでしょう!!」
ん? 戦力って印持ちの人や月組の人獣の人達だよね?? 皆、討伐に向かってるけど……
「お、恐れながら……」
ドゥクランが王様に話しかける。王様は『なんだ?』と先を促す。
「神も勇者も騎士隊の船までも、西の地ではなく本土の戌領の港に居りました……」
「……なんだと?」
王様の顔がみるみる不機嫌になる。と、椅子にどかっと座りタイラさんを睨み付ける。
「お、俺じゃないよ!! 皆を移動させ「移動魔法が使えるのがあなた方だけだと思わないことです!!」……マリアさーん……」
マリアちゃんは自分に剣先を突きつけるドゥクランの手首を握り声をあげる。ドゥクランは捕まれた手をはずそうともう片方の手でマリアちゃんの手首を掴みかえすもびくともしないようだ。タイラさんは何故か落ち込んでいる。
小さく『イテテ……』ってドゥクランの声が聞こえる……マリアちゃん、細い割にやっぱり握力凄いんだな……と、出会ったときの頭皮の痛みを思い出した。
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