183. S 代表 ④
次回より本編に戻ります。
~マリア~(船内にて捜索)
きゃぁぁ…………スゴい!! 信じられない!!!! まさかこんなところで……
ドラド様に頼み込み、操舵室の窓に張り付き、船の先端からチロチロと見える背鰭をうっとりと見つめる。『シードラゴン』は北の国の漁師達の中では守り神として奉られている。滅多に姿を見ることが出来ず、最後に目撃されたのが数百年前と言われていて最早伝説の生き物と言っても過言ではない。
その伝説の生き物が私の乗った船を背に乗せて泳いでいる……あぁ!! もう!! もっと近くで見たい!! 出来れば一緒に泳ぎたい!! ……どなたか水着をお持ちでは無いかしら……あ、でも、この船は男性しか居ないんだった……どうしましょう……村に居た頃は下着姿でも気にせず泳いでいたけど、まさかここでそうするわけにもいかないし……
ハッ!! いくら慣れてるとはいえ、流石にこのスピードでは泳げないからどちらにしても無理かしら…………竜王様に頼んで少しだけでも触らせて貰えないかしら……ダメで元々、頼むだけ頼んでみよう!! そう思い立ち操舵室を後にする。と、ドアを開けたところでノリアス君とぶつかりそうになる。
「ご、ごめんね!」
「あ、良いところに……ハスキスに追われてるんだ……匿って!!」
匿う? 何か悪いことをするような子じゃ無いけど……ハスキス様って昔の魔王を討伐した英雄…………アッ、もしかして魔王だから追われてる!?
「わ、わかった。こっち!!」
操舵室に再び戻り、船長の椅子に椅子に胡座をかくように座らせ、背もたれから頭が出ないように屈ませる。そして入り口に背を向けるように椅子を回転させる。
「勇者殿、俺に良く似たノリアスと言う男を知らないか??」
確かに……ハスキス様に良く似てらっしゃる……けど、
「ノリアス君ですか? さあ……ここには来てませんけど……何故探してるんです? まさか魔王だからって討伐するつもりですか!!」
そう伝えると、
「そんなことはしない!! 『魔王』なんて言われているがとてもいい子なんだ! 俺の愛した女性が産んだ子だからな! でも、彼女はノリアスを残して死んでしまって彼には家族が居なくなってしまったそうなんだ。……だから彼女の代わりに彼の父お……後見人になろうかと思って!!」
父親って言おうとした様だけど、流石に無理があるんじゃ……
「そうか。来てないか……じゃあ別のフロアーかな? 勇者殿、邪魔をしたね!! …………ノーリアース!! 出ておいでー!!」
目を輝かせて叫びならがら船内を探し回るようだ。
「もう行ったよ。 ……って、大丈夫??」
「……あの人、数百年寝てたんだよね……? 何であんなに元気なの……!?」
「フフッ、ホントに元気だよね! でも、知り合いも居ない世界で目覚めたからきっと心細いんだよ。」
「ドラドが当時の記憶を持ってるって言ってたよ! 見た目は違っても知り合い同士だろ! 絶対一緒に住んだりしないから!! 僕はイチカとタイラに着いていくし!!」
「タイラ様達の世界に?」
「そう!! この世界には『魔王』なんて居ない方がいいだろうし、神の国には魔物自身が居ないそうだから僕が行っても『魔王』にはならないでしょ?」
「……そういうものなのかな……? 良く分からないけど、ノリアス君まで行っちゃうと寂しくなるね……」
「勇者が言う台詞じゃないでしょ!」
『魔王』になって見た目は大人になってしまったけど、笑った顔は子供の時と変わらない、かわいい笑顔だと思った。
「……そうだ、私、竜王様の所に行くんだった!」
「僕もイチカの所に行かなきゃ!! って、竜王は外でしょ? 船の中は魔法で自由に動けるけど、外は風と圧? だかでスゴいことになってるから到着まで出ない方が良いって団員達が言ってたよ!」
「そうなの? 竜王様は大丈夫なのかしら?」
「風を操るのが特異な種族だからね……全く問題ないと思うよ。」
「そっか、じゃあ、タイラ様と今後の打ち合わせでもさせて貰おうかな……」
「……そういえば、タイラ見てない。」
「え? 皆さんと一緒にいるんじゃ……」
この後、イチカ様に頂いた『オムスビ』を頬張りながら船内をくまなく探して歩くのだが、タイラ様を見つけたのは到着後でした。
◇◇◇◇
~ノリアス~(船尾にて発見)
マリアとふたてに別れハスキスに気を付けながらタイラを探す事にした。途中同じくタイラを探していたドラドと会い、まだ探して居ない場所を聞き出す。
ウロウロしていたら、フィルが大きな荷物を肩に担いでもう一方の手で持った物をモシャモシャと食べている。僕は味覚がない上にお腹が空かないので何かを『食べる』必要は無いのだが、人と同じ様な行動をすると、自分も仲間になれたような気がするので食べる事にしている。
「フィル!!」
「……あぁ、ノリアスか。どうした?」
「何してるの? あと、それなに? 食べ物??」
「あぁ、食堂の近くで仕事を手伝ってたんだが、他の雑用を頼まれてな荷運びの途中だ。それと、コレはイチカが作った『オムスビ』って食い物らしい。片手で食えてなかなか……」
「食堂だね!! 行ってくる!」
フィルの話もそこそこに食道に向かう。イチカは鼻の下を伸ばした団員に囲まれ、油紙の山を作っていた。
『コレで最後』イチカが油紙に何かを丁寧に包みながら発した言葉に俄に緊張感が漂った。たぶん団員達だろう。目線を追えば、皆がイチカの手もとに注目している。僕は慌ててイチカの後ろに回り、『最後』だと言う包みを受け取った。
イチカを囲んで居た団員達の顔!! 悔しそうでちょっと笑えた……
その後、船内を探し歩いたがタイラは見つからない。
「魔王様。神は船尾におりますぞ。」
おひげちゃんがフードの中から声をかけてきた。
「知ってたならもっと早く教えてよ……」
文句を言えば、
「いえ、もうすぐ到着の様で船のスピードが落ちました故、やっと匂いが辿れました。」
「そうか。ありがとう。」
陸が肉眼で確認出来るところまで来ていて、スピードは落ちたとはいえ、甲板は人が立っているには厳しいスピードだ。
自分自身に魔法をかけ、船尾にて向かう。と、ヒーヒーと苦しそうに息をする竜王と、必死に手すりに捕まり風を受けて凄い顔になったタイラが居た。
ひとしきり笑った後、タイラに魔法をかけてやる。ゼィゼィと肩で呼吸し、ぐったりと手すりに寄りかかる。
「アッ!!! 皆は?? 大丈夫か??」
自分が一番大変だったとも知らずにみんなの心配をする。笑ったことを少し反省しながら、皆魔法で無事なこと、タイラも自分で魔法を使えば良かった事を教えてやった。
「マージかぁー……」
疲れたようにゴロンと甲板に寝転ぶと同時に到着。そのまま寝てしまったタイラを抱いて船から下ろし、皆の準備が調うまで寝かしてやった。
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