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182. S 代表 ③

~ホルス~(船内でのミッション)


ドラドに話を通し、叢雲(むらくも)のメンツを何人か船に乗せて貰った。同じ城勤めだが、我々《雲》の部隊は殆ど城に居ないため珍しいのかじろじろと見られて居心地が悪い。


食堂かどこかで固まって報告でも聞こうかと思ったのだが、集中出来ないので部屋を空けてもらった。


「男ばっかりですね……」


俺のようになりたい!! と目を輝かせ、仕事もプライベートもできうる限り真似をしようとする新人が残念そうに呟く。それも俺の真似か!?


「医療班には何人か居るらしいが、イチカを目の敵にした奴らだからな。ドラドが別の船に乗せたそうだ。」


「イチカってお頭が連れて歩いてた可愛い子ですよね? お頭の守備範囲まであと数年ってとこですか?」


いやらしい笑顔を張り付け、軽口を叩くのは俺の右腕と言っていいベテランだ。


「イチカは俺と同い年、とっくに守備範囲内……ってなに言わせやがる!!」


「「……」」


2人はこちらをみたままポカンとしている。


「ど、どうした?」


「そんなに相性が良かったんすか? 彼女……」


「はぁ? お、お前なに言って……」


「お頭……スゲェデレッとしてました……俺の……俺の憧れのお頭はそんな顔しないっス!!」


2人の中の俺の印象がどんななのか気になるのだが……


「彼女は成り行きで看病と付き添いをしただけだ。変な関係じゃない。それに、ヒルダ神様と同郷だと言ってたからな。ハッキリとは言わないが彼女も女神の可能性がある。」


「看病?」


「あぁ、言わなかったか? ここの女性団員の策略でボロ屋に閉じ込められててな、そこで雨に打たれてびしょ濡れでガタガタ震えてた。風邪を引いてたんだろうな……だから看病を……」


その時の事を思い出しながら話をしていたら、不意に彼女の肢体を思い出した……女の体など見慣れているハズなのに、何故か顔がカッと熱くなる。


急いで立ち上がり、


「腹が減った……食堂で何か調達してくる!!」


慌てて部屋を出る。新人が不思議そうに『お頭?』と聞いてくるが、この顔を見られたらまた何を言われるか分からない。足早に食堂に向かうと、イチカがニコニコしながら団員達に囲まれ何か作っている。


とそこにドラドとハスキス様が通りかかる。と、イチカが油紙に包まれた何かを幾つか手渡した。2人はその場で開けてパクリと食いつくと、満面の笑みで旨い旨いと頬張っている。


イチカ達の前には山積みになった油紙。あれがイチカ達が作っている物だろう。中でも他のものより明らかに綺麗に包まれたものがイチカの目の前に数個ある! イチカが作ったものか……あれが欲しい。が、先程からイチカを見ると顔が火照ってしょうがない……たぶん部下2人が言っていたデレッとした顔になっている自覚がある。


アカデミーに通っていた頃に、好きな子の前に出るとそんな症状が出て困ると相談を受けたことがあったが、こういう事か!? その時は鼻で笑って適当にあしらったが、もう少し真面目に解決策を一緒に考えてやれば良かった……


この顔でイチカの前に出て大丈夫だろうか……いや、しかし……


悩みながら積まれていく油紙を見ていると、イチカの周りの男共がさりげなくイチカが作ったものを自分の方に寄せていることがわかった。渡してなるものか!!


俺は潜入任務を思い出す。どんなことがあろうと顔に出さず、態度を変えず、役に成りきりミッションを果たす。そう!! 俺はホルス! 来るもの拒まず、去るもの追わず、どんなレディでも受け入れ、1人の女に固執しないクールな遊び人。そのイメージを壊さぬよう、デレた顔を引き締め、イチカが作った飯を取りに行く!


後から思えば、この旅で一番難しいミッションだったと思う。


◇◇◇◇


~ファジール~(敵・味方)


イチカを馬車からベッドまで誰か移動させるか……タイラ様が教えてくれた方法で勝敗を決めた。参加者はドラド様、フィル兄様、それと、何故かノリアスだと言い張る男。僕の知ってるノリアスはもっと小さくて、ぶっきらぼうだけど笑うと可愛い弟みたいな男の子だったはず。間違ってもこんな色気を帯びた大人の男では無かった……


勝負は『あいこ』が続き、最初にドラド様が負け仕事に戻って行った。次にノリアスが負け、イチカが他かの男に触られるのが耐えられない!! と泣きながら走ってどこかに行ってしまった……態度はあの子供のノリアスにそっくりだ……


最後、僕とフィル兄様との一騎討ち……だが僕が負けてしまった……代わって欲しいとお願いしたがキッパリと断られる。プクッと頬を膨らませて後ろを付いて行こうとすると、セス兄がイチカが起きた時の為に飲み物を用意してやろうと言う。


確かに、起きたときに手渡してやればイチカなら笑顔で受け取ってくれるだろう。


「そうだね! ただのお水より果実水の方が美味しいから分けて貰おう!」


セス兄と連れだって厨房に向かい、戻る時になって気づいた!! イチカとフィル兄が二人っきりだ!! チラッとセス兄を見る。『マリア嬢にも少し持っていってやろう……』そう言いながら果実水をカップに少し移しかえている。


もしかしてセス兄の作戦?? 弟と想い人を一緒にしてやろうと、邪魔な僕を遠ざけた?? グッと眉間に皺が寄る。


「? どうした? 具合が悪いのか??」


「……なんでもない。」


プイッと横を向くと、作業している騎士達と目が合う。


「ファジール様!!」

「あ、坊ちゃーん!!」

「バカッ! ココじゃ様付けだ、ファジール様!!」


()の私兵から推薦され騎士になった人達だ! 懐かしい顔に思わず駆け寄る。と、フィル兄が果実水をイチカのところまで届けてくれると言う。


「絶対届けて下さいね!! あと、フィル兄様がイチカに変なことしないようにちゃんと見張って下さい!!」


いくら可愛がってくれていても、僕とフィル兄様ならセス兄は弟のフィル兄様の味方をするだろう……ならばッ!!


僕は元卯族の私兵達に事情を話、それとなくフィル兄様がイチカに近づけないように仕事を振ってくれるように頼んだ。

読んで頂き、ありがとうございました。

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