181. S 代表 ②
~ドラド・ハスキス~(船内にて)
ド「魔王・ノリアス…………殿、少々お時間を頂きたい。」
ハ「ノリアス? さっき女性団員が『ノリアス』と言う子供を見なかったかと言っていたがその名は多いのか??」
ド「彼女達が探していたのが彼ですよ。」
ハ「……子供って言ってたぞ?? どうみても子供では無いだろう。にしても君、……どっかで会ったこと無いか??」
ノ「………………」
ド「ダメか?」
ノ「イチカが起きるまでなら付き合ってやる……」
3人は船内の一室に移る。
ド「改めて、私はドラド、こちらが300年前の魔王を討伐なさったハスキス様だ。……そして、彼が『魔王ノリアス』です。」
ノ「!! やっぱり……」
ハ「ん? 魔王?? 君が?? 私の知ってる『魔王』とは大分形状が違うのだが……」
ド「それは私も思いました……。んん、それで、我々は貴方の養母であるユリノト様について聞きたいのだが……」
ハ「え!? ユリノトを知っているのか? あいつは元気か?? 今、何処にいる?」
ド「ハスキス様! 落ち着いて下さい!!」
ノ「養母……うん。まぁ、育てて貰ったのは間違い無いか……彼女は僕の妻であり母親だった。そして、半年位前に私を庇って死んだよ。」
ド「妻であり母親?」
ハ「………死んだ?」
ノ「そう。僕をそこの……ハスキスの身代わりにして愛し、僕を宿し、産んで、庇い死んだ。」
ハ「……俺の代わり?」
ノ「あぁ、唯一愛したのはハスキスって男だと言っていた。」
ハ「……………………………アッ! もしかして俺に似てる??」
ド「今更ですか?? 耳の形はユリノト様のエルフの特徴を受け継いでいますが、お顔はハスキス様のお若い頃に良く似ております。」
ハ「え!? お前を産んだ??」
ノ「そう言ってるじゃん……もうっ! 何なの?? ホント、落ち着きなよ!」
ハ「う、産んだって事は……その、あの……」
ノ「……はぁー、何を言いたいのかは大体分かる。あんたの想像通りだよ! 僕は元は魔人。あんたに似てるって理由でユリノトの元で保護されて色々と教え込まれて、生まれ変わって最終的にユリノトの知識と魔力を受け継いで『魔王』になった! 以上! もういい? イチカの元に戻る!」
ド「いや、それだけじゃ分からん! 生まれ変わったって? 改心したってことか……? 改心して『魔王』になっちゃダメだろ…… 良く分からないからもう少し詳しく……」
ノ「やだよ! 詳しくってなに? 閨の話なんてしないよ! あんた女嫌いでそっちの知識は疎そうだし!」
ド「ね、閨? え、ユリノト様は子供と??」
ノ「だーかーらー!! 元は魔人! その時は大人だったんだよ!!」
ハ「そ、その時は大人!?」
ノ「何に驚いてるんだよ……あぁ、もう、めんどくさいな! 詳しくはタイラに聞いてよ。全部知ってるから。」
ド「そ、そうか。ヒルダ神様ならご存じだろう……」
ハ「……俺がもう少し早く目覚めていれば……そうか。亡くなったのか……彼女に会うために旅をするつもりだったが……」
ノ「…………ユリノトは自分の魔法が失敗してあんたが消えたんじゃないかとずっと気に病んでた。北の森に住んでた家がある。セレネスかマリアに聞けば場所は分かると思う。今はもう、引っ越す積もりで片したから何にもないけど、ユリノトが作ったあんたの墓がある。隣にユリノトの名前も刻んでやんなよ。はい、鍵。」
ハ「はいって………君はどうするんだい? 君の家でもあるだろ?」
ノ「僕はイチカと居る。タイラがイチカを連れていくなら付いていくし。」
ド「待て、初耳だぞ!? イチカを連れていく?? 何処に??」
ノ「……説明面倒だからそこら辺もタイラに聞いて。」
ド「そうする! ……では、先に失礼!! ……………………ヒルダ神様ー!! タイラ様ー!! どこですかぁー!!」
ハ「……昔はもう少し大人しかった気がするんだが…………はぁ、ユリノト……」
ノ「落ち込んでるようだけど、折角ユリノトが生かすために魔法をかけたんだ。起きたからにはちゃんと寿命を全うしなよね!」
ハ「……そうだな。君は本当に私の戦った『魔王』とは違う。俺の愛したユリノトが産んだ心優しい『魔王』だな。………………そうだ、ユリノトが母になったなら、俺は父になろう! 私には妻も子供も、それどころか既に親も居ないしな! 家族になろう!!」
ノ「はぁ? 発想が斜め上すぎるだろ!」
「これからはパパと「呼ばねぇよ!」……そんな事言わずに!」
ココから暫く、3人は船内を走り回る事となる。
◇◇◇◇
~フィルソン~(船内)
馬車を船へ積み込み、部屋を借りてイチカを抱いて移動させる。この役はタイラ様達が教えてくれた『ジャンケン』で勝敗をつけ勝ち取ったもの。最後はファジールとの一騎討ちで、俺が勝った時には涙目で替わって欲しいと頼まれたが、この役は譲れない!!
スースーと寝息をたてるイチカは、この世界に来たときにこうして運んだ時よりも更に華奢になったように思う。守ってやるつもりで一緒に旅に出たのに、随分1人にしてしまった………
ベッドに寝かせ、そっと頭を撫でる。そのまま少し開いたよ唇に誘われるように顔を近づける。
「何をするつもり?」
ハッと顔を上げれば、ジトッとこちらを見るセス。
「気持ちは分からなくも無いけど、意識の無い女性にすることでは無いね。」
ごもっとも……頭を抱えて反省していると、ドシンッと船が大きく揺れた。とっさにイチカを守るために覆い被さる。
「セス、大丈夫か?」
「あぁ、フィルは? あ、イチカは大丈夫か??」
「…………だ、大丈夫……だけど……」
衝撃で目を覚ましたのか、首もとで声がする。息がかかりゾクゾクと反応する体を反射的にイチカから離す。
「す、すまん。船が揺れたから庇おうと思って……」
「ありがとう? ッえっと、ココはどこかな??……」
小首を傾げて質問するイチカが可愛い……
「騎士団の船内ですよ。これから戌の領まで戻ります。竜王がどうにか運んで下さるそうなので少し休んでいたらいかがです?」
簡単に現状を説明したあとセスがそう提案するも、ココから忙しくなるだろうからと簡単に皆が食べられるものを作ると食堂に向かっていった。
イチカの手料理……絶対入手しよう!! そう思い、常にイチカが見える位置での作業を買って出た。
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