180. S 、代表
ここから各キャラの話になります。全④話
~セレネス~(旅立ち迄のひととき)
各地の被害が明かになり、タイラ様の指示で守護人獣達がそれぞれの地へ応援に向かうこととなった。マリア嬢の移動魔法を駆使し多い時は百人近い人数を一度に移動させる。フィルの伝言を聞いたモノの、今夜は会って話しを聞けそうに無いので先に話を聞こうとマリアを探していたのだ。
「かなり過酷な事をお願いしている状況ですが大丈夫ですか?」
ようやく見つけ、騎士隊達に分けて貰った果実水を渡しながら話しかける。
「え!?……え、えぇ、ありがとうございます。魔力もまだまだ残ってますし大丈夫ですよ。」
ニッコリと微笑んでいるが疲労の色が見え隠れしている。
「フィルから伝言を聞いたのですが、今夜は時間をとれそうにありません。話がてら少し休ませて貰いましょう。……タイラ様、マリアじ……「フィルソン様から?……今夜??………………ッ!! セ、セレネス様!! だ、大丈夫です……。で、伝言も頼んでないので何か行き違いがあったのだと思います!…………い、今は一刻も早く皆さんを現場に送らなければ被害が拡大してします。皆さんを送り届けたら少し休まさせて貰いますから!!」……そうですか。あまり無理をしないで…………」
何故か真っ赤になりながら徐々に距離を取って、最終的に走ってイチカの所に行ってしまった……船から降りてきたときといい、態度がおかしい気がする。何かしてしまったのだろうか……??
本来、勇者を支えていくのはその当代の守護人獣達の役目。1人であんなに頑張っているのに何故守護人獣彼女を気に掛けないのか……
自分が人獣でその直系の嫡男と認識し、姉弟・印の有る無しからして、自分が次期当主、フィルが守護人獣という立場に疑問も不満も抱いたことは無かったが、自分の手の甲をまじまじと見て思う……何故自分には印が無いのだろう……あれば彼女を支えられるのに………………………
「セレネス様、移動の準備が整いました。」
北の地へ共に討伐に向かう騎士が声をかけてくる。その声にハッと我に返り急いで皆に合流する。
……討伐が無事に終わり、また平和な日々が戻ったらマリア嬢の功労をねぎらい、宴を開こう!! そう心に決めて領地に戻った。
◇◇◇◇
~バリー~(討伐なのに……)
「坊ちゃま……」
「坊ちゃまはよせ!! ってさっき誰か来なかったか!?」
「……良くご存じで……ヒルダ神様と勇者様、それと、セレネス様がが参られました。」
「なんだと!? やっぱり夢じゃなかったか……起こしてくれれば良かったのに……」
頭を抱えながらため息をつく。
「恐れながら……今の坊ちゃまの姿とこの部屋を人に見せるなど出来ようも御座いません!! まったくだらしのない……」
幼い頃からの執事兼教育係のじぃやがため息をつきながら私の脱ぎ散らかした衣服を拾い集める。
「それに目覚めるなり、散々暴れた上に『風呂の用意だけして部屋に誰も入るな!』とおっしゃるのでその通りに致しましたが……あぁ、寝ている間に健康状態だけは見させて頂きましたよ。リュスト医師もこの部屋の参上には苦笑いでしたけどね!!」
口うるさいじぃやは部屋の惨状と、私の格好を見てまたため息を溢す。
「いや、それでも神を追い返すってどうなの!?」
「坊ちゃまの無事をお伝えしたところ、御気分を害された様子もなく、その後陛下に呼び出されて行ってしまわれました。『無理はせずにお大事に』と仰られておりました。」
「はぁー……まぁ、タイラ様はそう言うだろうね。寛大な方だから……」
「それより、陛下より起きたら伝えるようにと……」
「何?」
「中央との国境付近、子と亥の領地の境にそれぞれ魔物が出たと。国境付近はイーボ様達が御出陣なさりましたが、領地の方は知らせが先程来たらしく討伐に向かえるものが居ないとの事。坊ちゃまに出陣要請が来ております。」
「お、おま……小言よりそれを先に言え!!」
慌てて支度をし、久々の討伐に少し緊張しつつも兵を率いて現場に向かう。ずっと寝ていた上に、最近は諜報の仕事がメインで体を動かして無かったのでいい運動になるだろう。常に小言を言うじぃやも居ないし、思う存分暴れるぞー!!
「……坊ちゃま。手綱はきちんと握って下さいまし。背筋も伸ばして!!」
!! そろそろと振り返る。私の愛馬の斜め後ろ、ピシッと執事服を着こなし、姿勢正しく馬に乗るじぃや……
「えーっと……一緒に行くの?」
「もちろんでございます。坊ちゃまは昔から討伐に出ると羽目を外し過ぎて帰り道に馬から落ちたり、魔力を込めすぎて暴発させたりと無用な怪我をすることが多いですからな。討伐には役には立ちませんが、お戻りになるまで後方で見守らせて頂きます。」
「……そうか。」
思い当たる節が多過ぎて断れない……暴れるのは自重しよう……
◇◇◇◇
~騎士団~(魔王は敵だ!!)
「ライ!」
「出発時の衝撃で壁にぶち当たり負傷、治療中です。」
「エン!」
「出発時点で海に投げ出されました!」
「クス!」
「船酔いで寝ております!!」
竜王がシードラゴンを使って船ごと運んでくれたのはいいが、どうにかならなかったのか……
出発の掛け声も無く、突然ものすごいスピードで進み始めたものだから、甲板に居た者は船室の壁にぶつかるか、手摺にしがみつくか、海に落ちるか……陸地近くで落ちた者はまだいいが、海洋のど真ん中で落ちた者はドラゴンに鷲掴みにされ船に戻されて居た。助けてくれたのだろうが、掴まれる瞬間が怖かったらしく助け出されたものは形状が似た鳥の足がトラウマになったようだ。
甲板に居た者も何とか全員船内に回収し、あとは船尾の方で海の方を指差し、ゲラゲラと笑う竜王のみ。だが、怖くて皆声を掛けられない。何故海を指して笑っているのか……結局、楽しそうだからソッとしておこう。と言う結論に至り、竜王はかんぱんで過ごすこととなった。
船室は出発時に船内の物と人が片側に寄ってしまうハプニングがあったものの、風魔法と空間魔法が使える者が圧をコントロールしてくれたらしく、快適な船旅となった。
その間、途中まで別の船に乗っていたイチカと言う女性が『オムスビ』と言う物を作り皆に配ると言うので手の空いている団員で見よう見まねで作り油紙に包んでいく。
作ってる間、ニコニコと楽しそうにする姿に何人かの団員が好意を持ったようだ。かくいう私もその1人。となれば、イチカが握った『オムスビ』の争奪戦が起こるのは容易に想像できたのだが……
ドラド隊長、英雄ハスキス様、噂にしか聞いたことの無い影の部隊を率いるホルス様、亥族の次期当主のセレネス様、守護人獣のフィルソン様、ファジール様がイチカが握ったそばから持っていってしまった……
「あ、そろそろお米が無いのでこれで終わりですかね……全員行き渡りましたか?」
狙いは最後の1つ……彼女が出来上がった物を置いた瞬間!!……団員達との牽制合戦の中、物凄く綺麗な顔をした男が手を出した……
「あ、ノリアス君まだだった? ごめんね……どうぞ。」
ノリアス。森で負傷者の手当てを手伝ってくれた子供だったはずなのに、いつの間にかかなりの美男子の青年に成長した上に『魔王』だと言う。手伝ってくれた時にはなんていい子だ! とも思ったものだが、こちらを見る優越感に浸ったその顔!! クゥー、ムカつく!!
絶対ギャフンと言わせてやる!! 騎士団員数人を敵に回した『魔王』であった。
読んで頂き、ありがとう御座いました。




