175. F の移動手段
後半、マリアのオマケがあり本編が短めとなっておりますm(._.)m
「なっ!! ヒルダ神様達が消えた!! おい、フィル!! 何処に行かれてしまったのだ?? 戻って来られるのか??」
「マリアの移動魔法でバリーに会いに行ったんでしょう。ドゥクランが目の前から消えたのと似たような魔法です。そんな事より、言われた通り出発の準備をしますよ!!」
転移魔法を見て驚くドラド様とハスキス様を急かして支度を始める。馬車ではイチカがまだ静かに寝ているので音を立てないように荷物などを纏める。
「俺達の移動はマリアちゃんに頼むとして、ドラド達はどうするか……流石に船ごと移動させるのは無理だろうしな……」
ホルス様が言う。確かに大型の船を3隻も移動させるのはいかに勇者でも無理そうだ……
「そうですね……それよりまず、マリアは港に行ったことが無いのでそこまでは馬車で行かなければ行けませんしね。騎士隊達兵士が本土に着くのは20日後位でしょうか……」
「印持ちの俺達だけでもマリアちゃんに先に運んでもらって本土に行くか……。」
「そうですね……でも、ホルス様もドラド様も隊長格ですよね??部隊から離れてしまって良いのですか??」
「ガキじゃねぇんだから大丈夫だろ……」
「のう……お前達、先程から大陸に渡る話をしておるのか??」
竜王が不思議そうに聞いてくる。
「……えぇ、今ここに居る者達で港まで行って、船で大陸に帰るのにどのくらいかかるかって話をしてました。大陸に一刻でも早く帰らねばならないので……」
ホルス様の話を竜王様は黙って聞いていたが、肩に乗る『シロノ』様に話しかけられコソコソと話をする。
「……んん? ああ、そうだな……わかった。」
話を終え、こちらに向き直ると、
「我らが連れていってやろう。それであの男への詫びとしたい。どうだ? …………あぁ、そうか、あの男は神と共にどこかへ行ったのだったな……」
竜王はセスが居ないことを思い出したのか、『まあいい。』と片手を上げ竜達を呼んだ。するとピィピィと鳴きながら上空を覆う程の竜が飛び交う。
そこにタイラ様とマリア、セスが戻ってきた。『なんじゃこりゃ!!』 とタイラ様が空の竜達に驚いていると
「そこの男への詫びに、我らが本土まで連れていってやる事にした。」
セスを見ながら竜王様が説明する。
「マジで!? ってえ? 騎士隊とかも?? 全員?? おぉー!! 助かるわぁ…… どうやって移動するか考えてたんだよ……あ、でも、どうやって?? もしかして馬の代わりに馬車引っ張ってくれるとか??」
答えは荷台や幌の部分に人を乗せたまま竜の背中にくくりつけ、馬は竜が掴んで飛んで運ぶ。だった……
竜の背は羽ばたく度にひどく揺れ、中の人は落ちないように馬車にしがみつき、馬達は軒並み気をう失っていたが、10日前後かかるはずの道のりを一瞬にして運んでくれた。
ただ到着した時、竜の群れを見た港町の住民達ががパニックに陥り、ちょっとした騒動になったのは言うまでもない。
その後、事態の確認に来た港町の管理を任されている伯爵にネチネチと嫌みを言われつつ、荷物を船に乗せる。
「我々はどうする? 印持ちだけでも先にマリアに連れていってもらって……」
タイラ様とホルス様に話しかければ、
「フン、お主達も乗っていれば良い。さして時間はかからぬ。……ほれ、来た来た!! 久しいの! シードラゴン!!」
ドーン、ドーンと立っていられない程の衝撃。
「うわ! ナニコレ? デッケェ魚??」
船の縁を覗き込んだタイラ様が驚きの声をあげる。それぞれの船の下にかなりの大きさの魚影があり、ゆらゆらと体をくねらせている。
「こやつらの背に乗っておれば直ぐにでも本土に着く。用意はいいな!」
良いも何も返事をする間もなく出発した船は、港で数名の隊員を振り落としつつも、無事、戌の領内の港に到着した。
「竜王……せめて出発する合図はくれ……落ちるところだった……」
必死に縁にしがみついていたタイラ様が文句をいえば、竜王はゲラゲラと笑いながら心のこもらない謝罪を口にする。
「さて、詫びはした。我等は帰る!! そうそう、あの仮面の小僧、我らが棲みかを西だと申しておったが、あの地に我等の国はは無い。祭壇も壊れ、竜脈が乱れた今、あの地がどうなろうと我等は構わぬ。」
そう言い残し、竜族達は去っていった。
「タイラ様……到着早々悪いんだが、俺とドラド、あと、フィルとファジール……それに魔王を一旦帝国に運んで欲しい。」
ホルス様が言えば、ドラド様が同意するように頷く。
「え? 良いけど、そのまま討伐に行くつもり??」
「状況を確認し、皇帝と上官の指示を仰ぎます。ドラドは指揮官ですから指示をするにもやはり現状把握が必要かと……そして、出来れば印持ちの我々はそのまま討伐に向かいます! マリアちゃん、悪いんだけど付き合ってくれる??」
「勿論です!! これでも勇者ですから!!」
胸を張り宣言するアリスの向こうで、楽しそうな声が聞こえる。見れば船に乗せた馬車をセスが降ろしてくる。御者台にはイチカも座って話をしていた。一瞬、ムッとするも、
「セレネス様!! こんな時にそんなに笑って……不謹慎です!! イチカ様も! 具合はどうなのですか?? よろしければ色々と皆さんを手伝って下さい!!」
マリアが腹立たしげに食って掛かる。どうしたのか……セレネスは驚き、イチカはマリアの言うとおりだと謝り、船の中に手伝いに戻った。と、なぜかマリアはひどく後悔したような顔をして『あぁ、私、なんて嫌な奴……』と呟いている。
「どうした? 具合が悪いのか?? ここまで色々とありすぎたからな……休めるときは休んでおけ。」
「……フィルソン様…………ありがとうございます。具合は特に悪くはありません……。あの、お聞きしたいのですが……セレネス様にはやはり婚や「マリアー!!」……な、何でもありません!」
話の途中でタイラ様に呼ばれると、慌てたようにマリアは走って行ってしまった。『セスにやはりコンヤ』こんや……今夜? 今夜なんだというのだろうか?? 討伐に向かう前に急ぎの話でもあるのだろうか……?
とりあえず伝言をしておいてやろうと、セスにマリアが急ぎの話があるらしいぞ! と伝言をしイチカを探しに船へ向かった。
◇◇◇◇
175.5 マリア オマケ
御者台でイチカ様と楽しそうにお話しながら船を降りるセレネス様を見て、胸の辺りがムカムカして思わず嫌な言い方をしてしまった……
普通、御者台に貴族が乗ることは無い。貴族は馬車が引く客車に乗って、お顔を見ることすら儘ならない、そんな方達。
そんな雲の上の存在のセレネス様の横に唯一、一緒に座れる場所が御者台、私にとって『特別』な場所……
そこに私以外の女性が座る。しかも、楽しげに話をしているのが嫌だった。…………はぁ……私は婚約者でもなければ恋人でも無い。『嫌だ』という気持ちを持つことすらおこがましい。分かってる……
そういえば、セレネス様は他の方のようにイチカ様を婚約者に! と仰らない……もしや、もうご婚約されているのでしょうか??
知ったところでどうにもなら無いのだが、聞かずには居られない。フィルソン様に思わず聞いて…………タイラ様の声で我に返る。婚約者の有無を確認してどうするつもりだ……相手は貴族。私は勇者とはいえ平民。そこを忘れてはいけない。気持ちに蓋をし、私は笑顔でタイラ様の元へ向かった。
読んで頂き、ありがとうございました。




