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174. T 達とじいや

誰かが俺の服を引っ張る。考え事をしていた俺は思考を止めてフイッと顔を向ければ、ピチピチでボロボロの服……と言うか布切れで大事なところだけ隠しして、気を失ったイチカちゃんをションボリしながら抱くノリアス。


「タイラ……イチカが……」


図体はでかくなっても中身はあまり変わっていないようだ。とにかくイチカちゃんを馬車に寝かせ、ノリアスにフィルの服を着せる。


「で、だ……。まずどうしようか……」


先程まで新たに名前が出てきた、(とり)族の攻略対象者のモズについて可能な限り思い出して居たのだが、確かアイツって……


「失礼ですが……私、帝国の騎士隊、月組……「あ、うん。ドラドだよね? と、そっちがハスキス。」……その通りでございます。」


ドラドが自己紹介をしようとする。そういえば、初対面の奴も居るのか……とそれぞれ自己紹介をしてもらう。


「竜王の『黒の』じゃ。そしてこちらが(ツガイ)の『白の』。よろしくな!」


何故かシレッと竜王が混じっている。


「帰ったんじゃないのかよ……。」


「『白の』がその男に詫びをしたいそうでな、何がいいか思い付くまで一緒にいるそうだ。だからワシもここにいる。」


セスにアッパーを喰らわせたことを言っているらしい。確かにあれは痛そうだった……


「あの! ヒルダ神様!! 先程の仮面の男が言っていたように、本土に人造魔王が出たという連絡が入っております。勇者様をはじめ、1人でも多く戦力が欲しいのです!! 一緒に来ていただけないでしょうか??」


ドラドが言えば、


「待ってください!! バリーさんが何者かに捕まっているそうで……」


ダンから助けを求められたセスが止めにはいる。


「バリーさんなら、モズって人の所から逃げたとドゥクランが言っていましたよ!」


「そうなのかい?? ならば今は大丈夫なのか??」


皆が皆、それぞれ話し始めて話が纏まらない。パンッと1つ大きく手を叩き、順にこれからやるべきことを聞いてみる。と、バリーを助けたい派と本土に戻りたい派に別れた。


「んー、とりあえずバリーに会いに行くか。で、確認したらすぐ帰って来るから出発の準備しておいて!」


ドラドとフィル達に言い、マリアの方を見る。マリアは心得たとばかりに俺の肩に手を置く。


「何処に飛びますか?」


「んー……北の城の中って入ったことあったよね? そこでいいと思う。誰かしらいるでしょ。あ、セス! 一緒に来て!!」


そう言ってセスの手を取ると、マリアに北の城に飛んでもらう。


「こ……ここは……??」


セスは到着するなりキョロキョロと周りを見ると、ガバッと膝をついた。どうした? と振り返れば、北の王様が謁見中だったらしく、突然現れた我々に驚き、フリーズしていた。


「タ、タイラ様……それに勇者殿。あと、そちはウリーボの倅……セレネスか?」


ハッ!! と頭を下げるセスと慌てて傅くマリア。


「突然すみません、ちょっと、バリーに用があって……」


「さ、左様で……おい、案内して差し上げなさい!」


この国で1番偉い人を前に頭を掻きながら話す俺を驚いたように見ていた家臣たちは、王様の態度に更に驚きつつこちらですと案内してくれた。


バリーの執務室。入って直ぐに来客用のソファーとテーブル、その奥にバリーの机、更に奥に仮眠が出来るようになっている部屋があるらしい。


我々が訪ねていったとき、執務室のドアが開き中から白衣を来た人と、以前会ったバリーのじいやが出てきた。じいやは我々を見ると驚きつつも中に入れてくれた。


「バリー様は先ほどやっとお戻りになられまして……今しがた眠ってしまったところです……」


「あの、戻られたって何処に行っておられたのですか??」


マリアが聞く。


「皆様が西に行かれてからしばらくして、バリー様の精神をダン?……でしたか、そちらに繋げようと移動していた時に誰かに捕まったと……」


「今は無事なのですね?? 良かった……先ほど、ダンを通して何か仰ったようなのですが聞き取れなくて……」


セスが申し訳なさそうに聞く。


「はい。お体はずっと眠っておいででしたが、先ほど目を開けられまして、我々に『もう、心配ない』と……あと、『あのヤロウ! 絶対泣かせてやる!!』と仰ってまたお休みになられてしまいました……」


……あのヤロウとはモズの事か……モズを泣かせるとは場合によってはご褒美にしかならないと思うのだが……


まあ、とりあえず精神が戻って来たそうなので問題無さそうである。一安心。セスもバリーが何を言っていたか気になるようだが、寝てると聞き起こす気は無いようだ。と、執務室に誰かが尋ねて来た。


「失礼致します。陛下がお話があるとお待ちです。」


呼び出されて先ほど転移してきた部屋に戻って来る。と、玉座を勧められたので全力でお断りし、座って話が出来る部屋を用意して貰った。移動すると早速話が始まる。


「タイラ様、今、帝国との境辺りに山ほど大きな魔物が現れたと知らせが参ったのです……。西に人造魔王が出ると聞き、そちらに人員を派遣したため、この国……いや、本土の国は戦える者が多く残っておりません……お力添えを頂けませぬか?」


「そうそう、その話! 今、何体位が何処に出没したかとかって詳しい話は判る??」


「いえ、それが国境付近に出現したらしく……」


国同士の分断を狙ってるのか……。ドゥクランは西に戦力を集めただけで西の国自体をどうこうするつもりは無さそうだった。


「分かった。そこもちょっと調べつつ、西に居る兵士達を連れてくる方法を考える。」


そう言ってまた西に居る皆の元へ戻る。と、帰り支度をしているはずの兵士達が皆、空を見上げていた。


読んで頂き、ありがとうございました。

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