172. F のイライラ
「なぁーーーーー!!」
んてことしやがる!! このクソガキがぁぁ!! よりによってイチカにキスするとは……ピカピカ光ってもゆるさねぇぞ、一発ぶん殴って……って眩しいわ!!
キラキラと光始めたと思ったら、物凄い勢いで発光しやがる…… あぁ、もう! イチカ! 眩しくない……か? ………………誰だ??
黒目、黒色長髪の男がなんとも幸せそうな顔をしてイチカを抱き上げ、見つめている。
「ほぉ、この女の穢れを吸って成長したか? 魔王よ……」
竜王が男に話しかける。ん? 魔王ってことは、コイツがノリアス?? ほほーう……ガキの時は遠慮していたが、俺らと変わらないガタイなら1・2発殴っても…………いや、あれ? さっきまでイチカに抱っこされてたはず……
「イチカの穢れは僕が付けた傷では無いからね。番とするならちゃんと僕が付けた傷で穢れを纏って貰わないと……」
しれっと番とか言っているが、意味が分かっているのか?? それより、穢れってなんだ? イチカに穢れた所など無いだろうに!! イライラしていたら、竜王が不思議そうに
「お主、交じっておるのか?? 純粋な魔族では無いな……」
魔王に純粋も何もないと思うのだが……ユリノトとの交配の話をしているのか? そうか、そういう話ならば確かに奴の半分は魔力の多いとされるエルフだな……
と、俺の隣でドラド様が小さな声で、アッと声をあげた。
「どうしました?」
「い、いや……あの魔王、ハー様……じゃなく、ハスキス様に似ている気がして……まさかと思うが、あの男の言う最強魔導師はユリノト様の事では無かろうな、と……」
「ノリアスの母親は例の大戦の時に活躍したユリノト様ですよ。」
「なんだと!? 母親とは養子か何かか?? おい、魔王! ユリノト様はお元気か?? 今、何処にいらっしゃる??」
ドラド様の問いかけに、ノリアスはめんどくさそうに『死んだ』とだけ答えた。尚も色々と聞きたそうなドラド様を一瞥すると、タイラ様に向かい、
「ねぇ、これでいいでしょ? ここの魔物はもう襲ってこない。っていうか、僕が一緒にいる限り魔物も魔人も味方だと思っていいよ。ただ、人獣の血を入れられた奴らは制御出来ない……で、タイラ、本土に戻らないと困るんじゃないの??」
呆然とノリアスを見ていたタイラ様が、そうだった! と思い出したように言う。と、
『タイラ様ぁー!!』とセスの声が。我々のいる瓦礫の山を登ろうとして、ファジールとマリアがハラハラとしながら見守っている。
「セスー! ちょっと待ってて!! 俺達も降りるからぁー」
セスにそう言うと、タイラ様は竜王と先程パタパタと飛んで来た白竜に向き直り、
「さっき言えなかったんだけど、白の女王、無事に産まれてこれて良かった! おめでとう!! それと、ノリアス!! 魔王をやるからにはちゃんと魔物達を管理すること! 今までのノリアスなら問題なく出来ると思うけど、力を使うときは考えてから使うんだぞ!! 立派な魔王になるように!!」
と、白色の子竜とノリアスにどこからか光の粉が降り注ぐ。
「ハッ!! 全くこの神は何を考えておるのだ! 魔王にまで祝福を与えおったわ……」
竜王が呆れたように言う。
「え? ノリアスも祝福されてるの? 良かったなー!! よし、することしたし、とりあえず降りるか!! あ、竜王もごくろーさん!! 女王もちゃんと祝福出来たみたいだし、祭壇はまた落ち着いたら作り直せばいいよ。じゃ!!」
与えた本人が何故そんなに他人事なんでしょう?? タイラ様はノリアスにイチカを連れて降りるように言うと、危なっかしく降り始める。落ちられても困るので、仕方なくタイラ様を担ぎ上げヒョイヒョイと下まで降りた。
人間ジェットコースター……と青い顔で呟くタイラ様に、セスが待ってましたと話しかける。
「タイラ様、ダンが先程からバリー殿に何かあったと言っているようなのですが……」
ダンをはソワソワと落ち着きなくタイラ様を見ている。
「んー? ダン、バリーに何かあったの?」
ダンは一生懸命頷く。
「それは本体? ってか、肉体?? それとも、お前に憑いて話す思念体の方? 肉体なら頷いて、思念体ならジャンプして。」
ダンは1つジャンプをする。
「捕まってるんだな? さっきドゥクランが言ってたモズに!」
コクンとダンが頷いて、両手を上げてバタバタとし始めた。
「あー、モズのスキル『俯瞰』に見つかったんだな。アイツは多分、この国全体を見張ってたんだろ……にしても、モズもあちら側か……」
「あの、タイラ様。モズとは酉族の印持ちのモズ殿ですか?」
セスが聞くと、
「そう。アイツも対象者なんだよ……西の国、2人ともダメじゃん……ピックアップのミニゲームも……」
「対象者とはどういう……しまった!! タイラ様が自分の世界に入ってしまった……」
セスが頭を抱える。と、後ろで話を聞いていたドラド様が説明を求めてくる。先程の竜王の発言でバレているだろうからと、あっさりヒルダ神様だと言えば、ドラド様が最敬礼をする。
「あー、今、考え事をしているので返事はないと思います。あと、普通に接しても怒ったりしない方なので普通に……」
『だからいい加減に離せって! 糞ガキが!!』
『うるさいなぁ……イチカはこのままでもいいでしょ?』
気付けばホルス様とノリアスが言い合っている。イチカはノリアスの胸に顔をうずめて居るのが見える。
「ノリアス!! イチカをおろせ!」
「魔王が抱いていていい人ではありません!!」
「ノリアス、ずるいぞ!! 僕だってそんなに長く抱っこしてたこと無いんだからね!!」
「おい、イチカ苦しそうだが、全力で抱き締めすぎじゃ無いのか?」
慌てて俺もノリアスにイチカを離すように言うと、ドラド様、ファジール、多分ハスキス様? もイチカの周りに集まり、ノリアスに喰ってかかる。が、ハスキス様の言葉にノリアスが反応し、抱いている腕を緩めると、
「プハッ……ハァーハァー………ノリアス君、守ってくれるのはありがたいんだけど、ハァー……もうちょっと加減をお願いします……。」
真っ赤な顔をしてイチカが言う。
「ご、ごめんね……子供の時と同じようにギュッてしちゃった!!」
先程の無表情がウソのように、泣きそうな顔で謝る、
「そっか……フフッ………フゥー……じゃあ、次から気を付けようね…………………」
そう言ってイチカはそのまま気を失った。
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