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141. T のほうれんそう

うぅ……この状況をどうしろと?? 自分のじいちゃんより確実に年上であろう皇帝と、威厳に満ちた王達、おっかない顔したお付きの人や、厳つい警護の兵士達が一様に俺に向かって頭を下げている……


助けを求めてリベルやセスを見るも、一緒になって頭を下げていてこちらを見てもいない。この状況の原因を作った、フィル、マリアを見れば『覚悟は出来てます!!』と言わんばかりの硬い表情をこちらに向けている。全く、後で2人とも覚えておけよ!! と若干涙目で睨み付ける。


◇◇◇◇


事の始まりは地底人(ノーム)達王族の戴冠式。現実世界(リアル)との通信で大まかな流れは決めていたのだが、彼らは最後に教会内の不正を遠回しに指摘して終了した。


ただ、遠回し過ぎて気づいたのは不正をしていた当人達のみ。殆どの人は信仰の厚い信者を激励したように聞こえたかも知れない。が、当人達はカタカタと震え顔色を失っていて、それに気づいたのか、右隣に居るフィルが小声で聞いてきた。


俺も小声で答えてやれば、左隣にいたセスが険しい顔で詳細を聞きたがったのでザックリと答えてやった。すると何故か、北の国の宰相を務める父親にその事を話したいという。ここは帝国の中央都市にある教会。皇帝に言えば良いのでは? と聞けば、そう簡単に皇帝や王様には会えないのだそうだ。


確かに。リアルで王室の方に言いたいことがあります! って言ったところで絶対会えない。むしろ何を言いたいのだとその場で尋問されるかも知れない……と2人の言うことに納得する。


宿に戻り、父親に話す為にとセスに詳しい話をする。そして、紹介したいからと、これから旅の同行者となる全員で城に向かった。城では何故か、地底国で着た七五三で着るような服に着替えさせられた。そして、案内されるがまま部屋に入ると、皇帝を始め、今回の戴冠式に集まった王や各国の重鎮と護衛達が揃い踏みで待っていた。


皇帝と王、それと役職に着いた人の前にはティーカップが置かれている。お茶でもしていたのだろうが、そんな時くらい王冠外せば良いのに……が、王様達を目の前にした俺の感想。


「キサマ!! 何をしておる!!」


おっかねぇ顔でオッサンに怒鳴られて、周りを見れば男衆は膝まづき、女性陣はスカートを持って頭を下げていた。何かに引っ張られる感覚で腰の辺りを見れば、ファジールが一生懸命俺の服の裾を引っ張っていた。


慌てて、見よう見まねで膝まづく。と、物凄く大きな声でフィルが話を始めた。


「畏れながら申し上げます!!」


ああ、皆の前で不正の話をするんだな! この場で言っちゃえば何回も説明しなくて良いもんね!!


「こちらに()られるお方はこの世界の神、ヒルダ神様にございます!」


フィルが俺を見て手のひらで俺を示しながら言う。……えぇ!? 今、俺のこと紹介した?? って皆こっち見て固まっちゃってるよ……??


「フィルソン!! お前、陛下達の御前で何を申しておるのだ!!」


フィルの親父さんのウリーボ公爵が慌てて止めに入る。


「も、申し上げます!! フィルソン様の仰る通り、こちらのお方は以前、私に神託を授けて下さったヒルダ神様に相違ございません! 今日の大神様の神託も、ヒルダ神様が取り計らって下さったものです!!」


マーリーアー!! 君まで何を……


「こんな姿で失礼致します。北のカピクール家、バリーで御座います。この方、私の鑑定でも『創造主』『神』の称号を確認しております。」


バリー……お前もか!!


◇◇◇◇


で、オッサン達の後頭部畑を眺める事になったのだが、ほんとどうしよう……ってか、ここまでされたら覚悟を決めるしかないか……さすがに今までのノリで『やめて~』はダメだよな……神……神……ってどんな感じ?? 思い立ったのは某芸人さんの神様ネタ。低めの声を意識してゆっくり喋る。


「お、面を上げよ。私はヒルダだ。ここではタイラと名乗っておる。えーっと……先ほどの大神様の神託について補足がある。セス、説明してあげなさい。」


ムリ! ムリムリ!! 俺には神様役なんて出来ない!!!! 涙目でどころか泣きながらこの場から走って逃げたい気分……。セス、君の兄弟の犯した暴挙を納めてくれ!! 顔を上げてこちらを見るセスをすがるように見つめる。すると、セスは心得ていると言わんばかりに、


「その役、謹んでお受け致します。」


そういうと、セスは皆に席に着くように促す。先程まで皇帝が座っていた真ん中の席を進められ、背中に大汗をかきながら着席し、セスの話を聞く。時たま質問され、覚えている範囲で答える。


一通り説明が終わると、中央の人族の宰相が俺に頭を下げて出ていった。多分教会に関しての調査を始めるのだろう。


「ヒルダ神様。」


皇帝が俺に向き直って話しかけてくる。ギギギギッと音がなりそうな程ぎこちなく、呼ばれた方に振り返る。


「私はこの帝国の皇帝、リアンと申します。」


「私は……」


各国の王が順番に自己紹介と挨拶を始めた。うん。名前は知らなかったけど、それぞれの王冠とマントの色でどの国の王様かは分かるよ。挨拶ありがとう。だから、もう帰っていいかな……ってか、そもそも、なんで俺の称号を明かしたさ!! とフィルを見ると、硬い表情のまま俺のうしろに立ち王達に話を始めた。


「タイラ様は、神の国よりこの世界に降り立ったイチカ様と言う方を探していらっしゃいます。」


この言葉に反応したのはウリーボ公爵と北と東の王さま。それと、東の王の護衛で来ていた寅族のアモイ。えっ! と驚いた表情をしてる。フィルはその様子に気づいているがそのまま話を続ける。


「我々は、そのイチカ様の行方を追って旅をして参りました。そして、イチカ様は今、噂になっている西の魔物の討伐隊の一員として騎士隊の船に同行していると情報を得ました。」


フィルがこんなに話すの、初めてきいたわ……。


「ですので、どうか、西への転移門の使用許可を頂きたいのですが……」


おぉ! そういうことか!! それを頼むのに俺の称号を出したのか。確かに、お願い事をするなら神の称号は便利!! 転移門って城と城を繋ぐワープゾーンみたいな奴だろ? 船酔いする俺にとってはありがたい話だ。


聞けば納得出来る理由。だが!! 出来れば事前に教えておいて欲しかった……フィルには後で「ホウレン草(報告・連絡・相談)」という概念を教えてあげよう。と心に誓った。

読んで頂き、ありがとうございました。

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