138. K の譲り合い
『じゃあ、そういう事で。よろしくお願いします。』
「分かりました。岡本さんも無理しないで下さいね。」
「また連絡しなさいよ!」
「体に気を付けてねぇ。」
「肉体の方に刺激を与えてみるから、そちらで異変があるかどうか後で報告して!!」
それぞれが言いたい事を言って通信を終える。荻先生が疑いまくって色々と質問していたが、岡本さんが動かなくなる直前、俺と食べた居酒屋メニューとか、コンビニで買った物などの本人しか知り得ない事等をきちんと答えた事で、先生の中では一応納得出来たらしい。
岡本さんからの話は、一華の居場所が判明したこと。リリア達の事が片付き次第追いかける事。その為に、本来のシナリオではないが、双子神に星を贈った『大神様』として神託を下して、一刻でも早くこの話を終わらせて欲しいということと、それに辺り、神託がマリア以外にどのように聞き取れるかの実験をした。概ね思った通りの結果を得られたようだ。
「宿に移りますね。」
興奮状態で岡本さんとの会話を振り返っている3人を横目に、マリアを操作して街にある宿に移動する。部屋に付き、岡本さんのキャラに話しかけると、つらつらとテロップに会話の内容が表示される。区切り区切りでボタンを押すように促されるので、只ひたすらに読んで押すを繰り返す。どうやらお互い自己紹介等をしているようだ。
一通り終わった所で、手紙を持った奴が訪ねてきた。受け取り読むと、皇帝が居る城まで来いとの事。そして、もう一通、グッドルからも手紙が来た。準備が終わったとの知らせだった。
宿で一晩過ごし、画面が明るくなると、何故かキャラ選択を迫られ、公式キャラのみを連れて城に向かう。城につくと、一通り城内を調べ、玉座のある部屋に向かう。
『よく来た、勇者マリア。それと、人獣達よ。今、西の国に魔王に匹敵する程の力を持った魔物が出ると噂になっておる。勇者の証を授ける故、是が非でもその魔物を討伐しておくれ。』
『ハッ!! この身に代えましても!!』
『勇者の証』の兜を受けとる。本来ならこれで城内の話は終了だが……
『して、此度、グッドル公より地底人達の話を聞いたのだが?』
マリアに代わり、リベルが発言の許可を得て説明をする。
『フム。神託とな……ではその末裔は間違いなく王族なのだな。神との対話……朕もそのお声、聞いてみたいものじゃ。さぞや威厳のあるお声なのだろうな……』
ピシッと固まる。え? 声?? そうか、こっちはテロップを読むだけだが、向こうには声で届くのか……威厳……俺では無理か……
「あの、ノームの女王の認定、どなたかやってもらえませんか?」
「問題発生?」
「いや、皇帝が神の声は威厳があると思っているらしくて……」
「あー、声か……威厳のある声……」
プロデューサーがハルさんと俺と荻先生を順に見て、
「無いわぁー……微塵も無いわぁー」
あ、いや、分かってるけどなんかその言い方釈然としない……。
「僕とプロデューサーは無理だね! 僕はヨルダで名乗ちゃってるし、プロデューサーはプロデューサーって神だと思われてるしね……」
「じゃあ先生!」
「俺? いや、何言うの? 発表とか人前に出るの苦手なんだけど……」
ノリノリで引き受けてくれると思いきや、意外な事を言う。俺も先生もお互いに譲り合っていると、プロデューサーにじゃんけんで! と提案を受け、結局大神役は先生に決まった。
そこからはゲームそっちのけで『威厳のある声』と『神らしい喋り方』なんかを話し合う。そもそも、神と話したことが無いので、あくまでもみんなの想像。想像故に、それぞれが違う神の像を持っていて話し合いは難航。結局、演じる荻先生のイメージの威厳のある神を体現することになった。
ゲームを再開する。城から帰り、岡本さん達と合流するとすぐ、宿に客が来た。はち切れそうなメイド服を着て、分厚い眼鏡をした、お下げ髪の女性。眼鏡をクイッとあげるとキラッと光るキャラ付けがされているらしく、自己紹介をしてキラッ、用件を言ってキラッ、とキャラが濃すぎて内容が頭に入らない……
履歴で読み直したところ、ノームの王族に仕えていたモグラの獣人の末裔らしい。フィル達と知り合いなのか、テロップではフィルと会話している。
内容は、(ゲーム内)明日に教会で戴冠式を執り行うと、皇帝の名前で通知がきたこと。それとは別に、リィナと言う子の使いのモグラも来て、要望通り、偽物反対派も賛成派も全部が式に出席する為に、地上に出てもうすぐ街に着く。という報告だった。
すると、メイドはリリア達に合わせて欲しいと言う。どうやら戴冠式で着るドレス等を持ってきて居るらしい。指示通り、メイドを連れてリリア達の部屋に行く。と、メイドはありがとうございました。とさっさと扉の中に入ってしまった。
あとは戴冠式を待つばかり。強制的に明日にするために寝室に向かい、昼間から寝てしまう。通信の確認をされたが、話すこともないので『いいえ』を選択して物語を進める。
音楽が流れ、次の日に移行する。宿を見て回るがリリア達の姿は無い。あのメイド辺りが先導して教会に連れて行ったのだろう。
急いで宿を出て教会に向かう。前回は入るのにひと悶着あった扉も、今回はスムーズに開く。
驚いたことに、皇帝始め、各国の国王が数人づつの護衛を連れて一段高い場所に設えられた椅子に座っている。
『私がノームの王族の末裔!! 証拠ならあるわ!!』
王達に囲まれた中央に女キャラが1人立っている。どうやら偽物が騒いでいるようだ。早速、荻先生の出番か……横で、エヘンエヘンッと空咳をしアーアーアーと喉を整えているようだ。
「先生、そろそろ出番ですよ。」
そう言って先生と席を替わった。
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