135. T の企み
帝国の城下町。ゲーム内で一番デカイ街の教会まで来た。街の規模も教会も、今まで行った中で一番立派だ。
フィルの家名を聞いてヘコヘコ頭を下げる神父……で良いのか? が案内してくれた部屋は、客間なんだろうが目がチカチカしそうな程派手で、眩しかった。
お菓子やら果物がやたらと運ばれてきて、ノリアスはまた興味深そうにお菓子を観察し食べ始め、リベルはお茶を飲み始めた。俺はと言えば、ある男を探す為に教会内を歩き回る。しかし見つからずに結局礼拝堂に来て、でっかい双子神の像を見上げる。……本来ならここで丑の対象者とマリアが出会うはずなんだがそれらしき男が居ない……。
誰も居ない礼拝堂で、呆然と立っていたら、入り口の方でなにやらごちゃごちゃ始まった。しばらくして扉の開く音がするので振り向けば、水色の髪をなびかせ、華奢な体をゴツい鎧で包み、腰に剣を差した主人公マリアが入ってきた。テレビで見る芸能人に会った気分……テンションが上がり、思わず声をかける。
ササッと2人の大男にマリアを隠された。右の男はハムスターを肩にのせ、人形を胸ポケットにしまったフィルそっくりな男。たぶんセレネスだろう。ってか、どうした!? と聞きたくなる出で立ちだ。もう1人、左側に立った男はセスより背は高いが、顔にまだ幼なさが残り、可愛い感じの男。ファジールだった。
2人は殺る気満々で俺の前に立ちはだかる。慌てて取り繕うも、カミカミでうまいこと伝わらない。と、マリアの顔色が変わり、まさか!! と叫んだ。多分、声を聞いて誰だか分かったのだろう。
でも、神父が何人かこちらを見ているところで『神です。』なんて名乗れるはずもなく、フィル達の居るところまで案内する。その際、多分この状況を見ているであろうハルさん達に一言残してみた。これで向こうに伝わるのなら、マリアが近くにいれば、こちらの声は届く事になる。
フィルとファジールが部屋に入ったことを確認し、マリアに話しかける。
「到着早々悪いんだけど、先にお祈りをしたいんだ。付き合ってもらえないかな?」
「……やはり、あの、ヒル「そう! それ!! 正解。後でセス達と一緒の時にちゃんと説明する。」……分かりました。」
大きめの声でマリアの声を遮る。目配せすれば、柱の陰でこちらを伺う人に気付いてくれたようだ。その後、マリアと共に祭壇のある部屋まで移動する。マリアは早速膝立ちになり祈り始める。と、マリアがコクコクと頷き始め、こちらをチラッと見る。
同じように膝まずき、見よう見まねで祈りのポーズをするとすぐに声が聞こえた。
『平良! 平良聞こえる? あんた大丈夫なの!?』
「プロデューサー? お久しぶり! 俺は全然大丈夫だよ?」
『全、全然って……バッカじゃないの!? こっちは……こっちは大変だっだんだがらぁぁぁ~』
エ!? プロデューサー!!?? もしかして泣いてる??
「奥村プロデュ『あの、すみません。カズヤです。プロデューサーさん、お話出来る状態ではないので代わりに……』……!!」
「カズヤさん! え? えっと……そっちではまだあまり時間は経ってない感じですか??」
「いや、岡本さんと飲みに行ってから3日経ってます。」
そう言うと、もう1人男性の声が聞こえ、更にハルさんの声がする。男性が3人? と思っていると、カズヤさんが説明してくれた。
「今、ゲームの進行は、僕の他に、一華と岡本さんの主治医をしている荻先生という方とで行っていて、ハル社長とプロデューサーさんは主に資料集めをしてくれています。で、昼間は皆、それぞれの仕事をしているのであまりゲームを進められないんです。」
「カズヤさんもお忙しいのに巻き込んじゃってスミマセン。で、荻先生ってのは……」
『ハル社長のお友だちで、岡本さんを病院に連れていって偶然お会いしたそうですよ。ミニゲームなんかは得意なようで助かってます。』
関係性が凄いな……と思いつつ、時間もないので本題に入る。
「説明ありがとうございます。早速なんですけど、マリアが教会に入ってきたとき、俺がそちらに向かって「また来ます」的な事を呟いたんですが、テロップとか出てました?」
聞けば、ムービーとして流れたそうで、俺のカミカミの弁明も全てテロップに出てたそう。……恥ずかしい…… 呟きもテロップにちゃんと表示されていたそうなので、祈らなくてもこちらの声は聞こえそうだ 。
それを聞いて、ノームの王族宣言に向け、幾つか検証する。ノリアスを呼んできて検証した結果分かったことは、
①前提として、マリアと共に礼拝堂に居ないといけない。
②声を出して喋れば俺の声はテロップに表示される。但し俺以外が話してもテロップには表示されないし、カズヤさん達の声も聞こえない
②1人で祈りをした場合、念じるだけで会話は可能。同じ空間に居ても会話の内容は聞こえない。
③マリアと共にお祈りをすると、祈ってる人全員に神の声は聞こえる。声を出して喋れば誰でも会話が可能。ということが分かった。
「ぶっちゃけ、ノームの話で時間をとられるのは避けたいので、偉い人をここに集めて、神の声としてリリアが正式な末裔って宣言して貰って良いですか? それでノームの騒動は終わると思いますので……」
『それで一華を探しに行けるのなら、私は大賛成です!!………………ハル社長もOKだそうです。』
「そうだ! イチカちゃん、西に向かう船に乗ったと情報を得ました。この件が片付き次第向かいます!!」
『一華の居場所が分かったんですね!! ならばすぐ始めましょう!!』
「ま、待って下さい! そちらとこちらで時間の流れが違います……しかも、皇族、王族の使いを集めるだけでも結構時間がかかります。戌の首領が色々とやってくれてますので、取りあえずフィル達の部屋にマリアと戻ります。話の流れに沿ってマリアを誘導してください。」
俺が祈っている最中、勇者と魔王が仲良く話してるのを横目に、神は現実世界との通信を終える。この状況に苦笑いをしながら、マリアとセス、それにファジールに説明するために一度教会内の部屋に戻り、3兄弟に頼んでウリーボの名で宿を貸し切って貰い、全員でそこに移動した。
読んで頂き、ありがとうございました。




