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130. S と教会

フィルからジーマさんの奥さんと娘さんがが見つかったと連絡を受け、大急ぎで辰の領地の東部に戻る。


着いた途端、寮から大きな声が聞こえた。


「だーかーら、もうちょっと待てって!」


「大丈夫です! もう、傷も良くなりましたし、勇者様達は丑の領に行かれているのですよね? 待っていたら、約束に間に合いません!!」


「印持ちは特殊な伝達方法でやり取りするから、勇者様達と、向こうのフィルソン様達は俺達より情報が早い。もうこちらに向かってる筈だから、せめてもう1日待て!!」


「ですが!……」


名前が出て驚くマリア嬢を連れ、寮の扉を開く。カナル団長とジーマさんが同時にこちらをみて、顔を見るなり


「早えな!」

「遅いです!」


感想を聞かされた。苦笑いしながら、これでも急いで来ました……と言えば、ジーマさんはしまった! という顔をしてから謝ってくれた。


「グッドル公爵様とフィルソン様の連名で、昨日の夜に書簡が届いた。無事に保護されてたようで一安心だ。出発の準備は出来ているが、ジーマさんの傷は塞がりきってねぇ。ムチャはさせないようにしてやってくれ。」


「ありがとうございます。準備をしていただいただけでも助かります。馬車で移動ですので、ジーマさんは中でお休みになっていて下さい。」


「ありがとうございます! では、早速……」


気が急くのは分かるが、我々も寝ないでここまで来たのだ。今夜はベッドで寝たい……


「今日はムリ! 出発は明日!!」


ファジールがあくびをしながらスッパリ言い切る。内心拍手喝采である。


「しかし、約束の日まで2日しかありません! ここからセントリアまで間に合うのですか?」


正直ギリギリだが、このまま進んでも途中でバテること間違いなし。ならば、ガッツリ休んで飛ばした方がギリギリでも確実に到着するだろう。ってな事を説明する。


「いざとなれば、ここまで来るときみたいにセス兄様の魔法で馬車を浮かして、『だーく』に引っ張らせれば良いよ! スッゴい早いから……今度は街道通るから道も良いしね!」


良いことを思い付いたとばかりにファジールが提案するが、その方法でお前が酔って、俺は魔力が尽きて、二頭立てで『だーく』と並走していた俺の馬が使い物にならなくなったことを思い出せ……


ホラ見ろ、ジーマさんどころか、カナル団長まで目が輝いてるじゃないか……。ため息と共にそれは最終手段だと伝える。ジーマさんもそんな方法があるのならともう一晩ここに留まることを了承してくれた。その後、今回も寮の空き部屋を使わせて貰えることになったのだが……


「っと、そうだ!! ジョロウ、お前はちょっと話がある。後で部屋まで来い。」


私の胸元からヒョコっと顔を出したジョロウさんが、やっぱり覚えてたか……とぶつくさ言いながら目の前のテーブルに跳び移る。


「あの! ジョロウさんが来てくれてとても助かりました!! なのであまりに叱らないで下さい。お願いします。」


マリア嬢がカナル団長に頭を下げる。団長は困った顔で、


「いや、勇者殿。頭を上げてくれ。ジョロウを叱る気は……いや、黙って行ったことには一言言いてぇが、元々団員ではねぇからな。ただ、丑の領地で見聞きしたことを教えて欲しかっただけだ。」


マリア嬢はホッとしたように胸を撫で下ろしている。その後、食事を頂き、さて寝るかとなったときにカナル団長が部屋に訪ねて来た。


「寝る前にワリィな……。明日の事なんだが。」


歯切れ悪く、何か言うかどうか迷っているように見える。


「悪い話ですか? それともいい話?」


話すキッカケになればと聞いて見ると、私達にはいい話だと言う。


「ジョロウを連れていってやってくれねえか?」


虫族を手放すのか!?


「え、我々は助かるので大歓迎ですが、彼らは稀少な人材では?」


「あー、それはそうなんだが……。タランの方はここでの安定を望んで団に入ったが、ジョロウは元々落ち着かねぇっつーか、外に出たがってたんだ。だが、アイツらはちっせーし、戦うにも制限があるから、なかなかアイツの思うようにはしてやれなかったんだ。だが、勇者のパーティーには人獣のセレネス様も、印持ちのファジール様もいらっしゃる。旅に出るには最高の環境だ。だからどうか、あいつを頼みます。」


カナル団長が腰を折り、これでもかと頭を下げる。こちらこそよろしくと私も頭を下げ、次の日、新たな仲間を連れてセクトリアに向かって旅立った。


◇◇◇◇


初代勇者が築いたとされる、帝国フラジュ。城がある中央都市のセクトリアは城を中心に、放射線状に引かれた道沿いに家や商店が並ぶ街。城に近い方は貴族が住む屋敷が建ち並び、ぐるりと堀で囲まれている為、騎士が警備する跳ね橋を渡らなければ城までたどり着けないようになっている。


橋を渡ってすぐ、商人の中でも成功者と呼ばれるもの達が住む場所に、大きな教会が建てられている。ここは貴族や商人など、所謂お金持ち達が見栄の為に多額の寄付をして、豪華絢爛に造った教会。待ち合わせはこの教会なのだが、入ろうとしたら聖職者の格好をした男に止められた。


「貴方と貴方。……あと、貴方もまあいいでしょう。でも、貴方と貴方! はこの神聖な場所に入っていい格好では無いでしょう? そのネズミに関しては、絶対に中には入れないで下さいね!!」


旅を続けて来て、見た目よりも機能性重視だった我々の格好は受け入れられないと言うことらしい。今までの教会ではそんな事言われたことも無かったのだが……


「すまんが、ここで待ち合わせをして……」


話始めたら、入り口に居た男よりも位の上の法衣を纏った男が出てきて、我々を見るなり、


「ここは貴族や皇室御用達の商人等が祈りを捧げる場。お前達のような薄汚れた狩人(ハンター)達が来るところではない! ここより外に近い場所に庶民向けの教会がある。そっちに行くんだな!」


貴族向けと言う割には、身分を明かす間もなく扉を閉められてしまった。仕方がないので、ファジールに近くに居るであろう兄弟に言俐(コトリ)を頼む。


教会の入り口から少し離れて返事を待っていたら、先程閉められた教会の扉が勢い良く開き、先程の高位の衣を纏った男が、そのまま前に転がるんじゃないかと思う程頭を下げて我々を迎え入れる。


どうやらフィル達は先に到着していたらしい。

読んで頂きありがとうございました。

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