126. S とジョロウ
『地底国 偽物女王あり 本物求む』
さっき来たフィルからの言俐。こちらから出した、王さま保護の返事だよね……偽物? 執事が本物かどうか分かるって言ってたから、その執事が偽物と判断したのか……? ならば、地底国に居るのはジーマさんの奥さんと娘さんではないか……。
本物求むってことは、西に行くのは女王絡み?? んー、悩んでても仕方ない。と、もう一度ジーマさんに会いに行く。
「失礼、ちょっとお聞きしたい。あなた方は西の国と何か繋がりが?」
「え!? えぇ。お仕えしていたお屋敷は西の国です。」
それでか。ジーマさん一家が帝国内に居るのを知らなかったんだな。ならば、帝国内に居ることが分かった今、西に行くのはやめて、フィル達は戌の領内で捜索するだろう……。
ジーマさんにお礼を言い、もう一度ファジールの元へ。コトリを頼むと、そのままディアン様とカナル団長へお礼をし、リリアとリィナが見つかったら知らせて欲しいと頼んでから丑の領土に向かって移動を開始した。
移動し始めてしばらく経つと、
「見つかるまで居た方が良かったんじゃないのぉー?」
ファジールが膨れっ面で言う。どうやら私兵団に友達が出来たようで、別れるのが名残惜しかったようだ。
「ディアン様が未領、カナル団長が辰、フィル達が戌を捜索するのなら、我々はさっさと丑領に移動して探した方が効率がいいだろ?」
「そうですね。イチカ様の捕まっている奴隷商の保管場所とやらがあるかも知れませんし。」
「奴隷商の保管場所?」
あらぬ所から声が聞こえ、ギョッとする。声がしたのは、私の胸元。普段、ダンが潜り込む胸元のポケットだ。
「え? あ、ジョ、ジョロウさん!?」
「はい。ジョロウです。」
「いや、はい。じゃなくて! え? ダンは??」
「気持ち良さそうに寝てらっしゃったので、タランに頼んで荷物の中に。私と交代してもらいました。」
「イヤイヤイヤ、荷物の中に居てもらったのはあの時だけで、今は我々、次の目的に地に向かっちゃってますよ? 私兵団の一員なんですよね? 勝手に抜けてきたら怒られちゃいます! それに、下手したら除籍されちゃう! ……戻りましょう!!」
貴重な虫人族。勝手に連れ出したら首領どころか、国同士の話になりかねない。
「待って! 大丈夫!! 私はタランに付いていただけで、正式な団員じゃないから!」
へ? と、3人とも間抜けな声を出す。カナル団長はジョロウさんも団員にしたかったようだが、めんどくさそうだからイヤ! という理由で断っていたそう。その代わり、タランには頼みにくい、団員では出来ないような情報収集なんかをしていたらしい。……って、それは聞いていいものなのだろうか。
うーーん、まあ、そう言うことなら……と、虫を使ってタランさんに伝言を頼み、イチカとリリアさん達を一緒に捜索することになった。
「ちょっと聞いた感じ、ここら辺には奴隷商の保管庫? みたいに誰かが捕らえられてる場所は無いみたい。でも、この下に広大な地下空洞があって、地底人達が住んでるそうよ。」
「ああ、では、フィル達はここの地下に居たんですね。」
「……そうね。ずっと向こうの、あの丘を越えた辺りにある岩の裂け目から、貴方に良く似た男女と、子供と男が一人、戌の領地に向かって行ったそうよ。」
子供と男? 思い当たる節と言えば、『タイラ入りました』のコトリ位だが、どちらかがタイラなのだろうか……。考えるも、答えは出ないので、ジョロウさんにもう一度確認する。
「情報収集の範囲は、丑の領地全てカバー出来るのでしょうか?」
「出来るわ。私たちは土の下にも、空にも何処にでも居るからね。少し時間を貰えれば、皇帝の睦事の甘い台詞まで分かっちゃうんだから!」
うん、知りたくは無いけど、恐ろしさは十分伝わった……ならば、捜査網を丑領全域に広げてもらい、保管庫とリリアさん達、それに、奴隷狩りの話を調べて貰う。
◇◇◇◇
「……うん、そう。……そんな事が!? ええ。分かったわ、ありがとう。」
領地全域となると流石に時間がかかるらしい。少しづつ移動して話を聞いて回る。広い湖があり、湖畔で休憩をとっている間、ジョロウさんが何かと話している。先程から見ているのだが、どういう訳か、話している相手が見えない。話終えたらしいジョロウさんに近づこうとすると、
「気をつけて!!」
と声がかかる。よくよく見ればフワフワキラキラと蜘蛛の糸が舞っている。
「遅かったか……ご免なさい。私の周りは今は糸だらけだから気をつけて。後、糸が無い貴方の足元には仲間が居るの。踏まないようにね!」
隊列を組んで歩く蟻、動き出す葉っぱに、土の中に潜るミミズ。飛び立つ蝶や蜂。思わず、ウワァ! と声を上げて飛び退いた。
マリア嬢とファジールがクスクスと遠くで笑っている。
「知っていたのか?」
「カメレオン洞窟の時に、タランさんとジョロウさんがお仲間と話始めたら、許可が出るまで近寄らないように、と注意を受けましたから。」
「そうか、あの時セス兄様はカナル団長と話してて聞いてなかったかも! 踏まないように気をつけてね!!」
慌てて、でもゆっくりと気を付けながら後ろに下がる。靴の裏を見ても虫を踏んだ痕跡はない。チロッとジョロウさんを見ても、別段怒っている風でもない。
「大丈夫ですよ。彼らは彼らで避けかたをキチンと習得してます。」
そう言われホッとする。と同時に先程のやり取りの内容が気になった。ジョロウさんにも言いたいことが伝わったようだ。
「先程の話ですが……この丑領で、狐族、ナマケモノ族、カンガルー族の集落が襲われ、成人の雄は皆殺し、雌と子供はどこかへ連れて行かれたそうです……」
「狐族の女性は美しい方が多いと聞いたことがあります。奴隷商等に連れて行かれたらどんな目に会うか……早いこと見つけなければ……」
「……そうですね。それと、襲ったのは魔物を操る人族だったり、猿だったりしたそうです。」
「ここでもやはり猿ですか……ダスキートも廃嫡されたとはいえ人獣ですからね。獣人や眷属は命令されれば強制力がかかってしまうこともあるでしょう。ただ、魔物が何故大人しく言うことを聞くのがが良く分かりませんね……」
話していると、ファジールが頭上のコトリに気づいた。フィルから、ノームの女王が発見されたとの知らせだった。
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